(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6500797
(24)【登録日】2019年3月29日
(45)【発行日】2019年4月17日
(54)【発明の名称】枚葉式ウェーハ洗浄処理装置及びウェーハ洗浄処理方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20190408BHJP
【FI】
H01L21/304 648L
H01L21/304 643A
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-22872(P2016-22872)
(22)【出願日】2016年2月9日
(65)【公開番号】特開2017-143141(P2017-143141A)
(43)【公開日】2017年8月17日
【審査請求日】2018年1月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000190149
【氏名又は名称】信越半導体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【弁理士】
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(74)【代理人】
【識別番号】100194881
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 俊弘
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 健作
(72)【発明者】
【氏名】阿部 達夫
【審査官】
堀江 義隆
(56)【参考文献】
【文献】
特開平10−070100(JP,A)
【文献】
特開平11−111664(JP,A)
【文献】
特開2002−075951(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
H01L 21/306
H01L 21/027
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
チャンバー内に配置されたカップ部と、該カップ部内に配置され、ウェーハを保持し回転するテーブル部と、前記ウェーハに薬液を供給するノズル部とを具備する枚葉式のウェーハ洗浄処理装置であって、
前記チャンバーに設けられた給気部と、
該給気部の風量を調整する給気風量可変機構と、
前記チャンバーに設けられた排気部と、
該排気部の風量を調整する排気風量可変機構と、
前記テーブル部に保持されるウェーハの端部の位置の風速を測定する風速計とを備え、
前記風速計は、前記ウェーハの端部の測定位置から退避可能なものであることを特徴とする枚葉式ウェーハ洗浄処理装置。
【請求項2】
前記チャンバーの内外の差圧を測定する圧力計をさらに備えるものであることを特徴とする請求項1に記載の枚葉式ウェーハ洗浄処理装置。
【請求項3】
チャンバー内に配置されたカップ部を有し、該カップ部内に配置されたテーブル部により保持され、回転されるウェーハに、ノズル部から薬液を供給しつつ前記ウェーハを枚葉式で洗浄処理するウェーハ洗浄処理方法であって、
前記テーブル部が回転していない時の、前記テーブル部に保持されたウェーハの端部の位置の風速を風速計により測定しつつ、該風速が1.0m/sec以上となるように、前記チャンバー内への給気の風量と前記チャンバー外への排気の風量のうち1つ以上を調整した状態で、前記テーブル部を回転させつつ前記ウェーハを洗浄処理し、
前記風速の測定後、前記ウェーハを洗浄処理する前に、前記風速計を前記ウェーハの端部の測定位置から退避させることを特徴とするウェーハ洗浄処理方法。
【請求項4】
前記ウェーハの端部の位置の風速を調整する際に、前記チャンバーの内外の差圧を0〜5Paの範囲内とすることを特徴とする請求項3に記載のウェーハ洗浄処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、枚葉式ウェーハ洗浄処理装置及びウェーハ洗浄処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウェーハ等のウェーハを洗浄する装置としては、複数枚のウェーハを薬液が充填された薬液槽に浸漬して洗浄するバッチ方式の洗浄処理装置と、1枚のウェーハを回転させ、そのウェーハに対して薬液を噴射して洗浄する枚葉方式の洗浄処理装置がある。近年では、半導体デバイスの微細化やウェーハの大型化にともない、洗浄効果の高い枚葉方式の洗浄処理装置が用いられる傾向にある(特許文献1)。
【0003】
枚葉方式の洗浄処理装置として、チャンバーと呼ばれる洗浄処理装置筐体と、チャンバーの上部に設けられエアーを給気する給気部と、チャンバーの下部に設けられ排気を行う排気部と、ウェーハを保持し回転させるテーブル部と、ウェーハ上に薬液を供給するノズル部と、飛散した薬液を回収又は排液するためのカップ部で構成される枚葉式洗浄処理装置が知られている。
【0004】
このような従来の枚葉式洗浄処理装置においては、給気部と排気部の風速や風量を計測(監視)し、それらのバランスを調整することによって洗浄処理装置内部の圧力を制御している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−35866号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような枚葉式洗浄処理装置を使用した場合の問題について本発明者らは鋭意研究を行い、以下のことを見出した。ウェーハの洗浄を行うにあたり最も問題となるのが、回転しているウェーハへ吐出した薬液が飛散した際に起きるカップ部からの跳ね返りや、ウェーハとテーブル部が回転する際にウェーハの端部で発生する乱流により薬液のミストがウェーハ上へ付着し、ウェーハを汚染することである。飛散した薬液の跳ね返りやミストにより薬液がウェーハに付着すれば、単にウェーハ表面を汚染するだけでなく、ウェーハ表面の表面粗さを悪化させる要因やエッチング等の原因ともなる。また、純水やオゾン水などがウェーハに付着するとウォーターマークの原因となる。
【0007】
従来の枚葉式洗浄処理装置では、給気部や排気部での風量や風速を制御しているが、それは装置内部の圧力を制御するためであり、ウェーハ端で発生する乱流の制御は行っていない。
【0008】
このウェーハ端で発生する乱流が制御されていないと、給気部や排気部での風速や風量を制御しても、結局、ウェーハとテーブル部の回転中に供給された薬液が飛散した際にカップ部にあたりミストとなったものがウェーハ上に付着し、パーティクル、ウォーターマーク、エッチング等の汚染源となってしまっていた。
【0009】
また、この乱流を抑制するために、給気部や排気部での風速を大きく上昇させると、カップ構造と強い気流による渦が発生し、ミストの巻き戻りが発生するなどの問題が生じていた。
【0010】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであって、枚葉式のウェーハ洗浄処理装置を用いてウェーハの洗浄を行う場合に、乱流の影響により発生する、薬液のミスト等によるウェーハ表面の欠陥を抑制することができる枚葉式ウェーハ洗浄処理装置及びウェーハ洗浄処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明は、チャンバー内に配置されたカップ部と、該カップ部内に配置され、ウェーハを保持し回転するテーブル部と、前記ウェーハに薬液を供給するノズル部とを具備する枚葉式のウェーハ洗浄処理装置であって、
前記チャンバーに設けられた給気部と、
該給気部の風量を調整する給気風量可変機構と、
前記チャンバーに設けられた排気部と、
該排気部の風量を調整する排気風量可変機構と、
前記テーブル部に保持されるウェーハの端部の位置の風速を測定する風速計とを備えるものであることを特徴とする枚葉式ウェーハ洗浄処理装置を提供する。
【0012】
このように、ウェーハの端部の位置の風速を測定する風速計を備える枚葉式ウェーハ洗浄処理装置であれば、回転していない時のウェーハの端部の位置の風速を測定しつつ、給気風量可変機構と排気風量可変機構により該風速を適切な値に調整することができる。そして、調整した状態でウェーハを回転させつつ洗浄処理することができる。これにより、ウェーハの端部の位置での洗浄時の乱流の発生とそれによるミスト等の巻き上がりを抑制することができ、洗浄処理する際にウェーハ表面にミスト等の付着による欠陥が発生することを防止することができる。
【0013】
このとき、前記風速計は、前記ウェーハの端部の測定位置から退避可能なものであることが好ましい。
【0014】
このように、風速計が退避可能であれば、ウェーハの洗浄処理を開始する前に、風速計をウェーハの端部の測定位置から退避させ、飛散した薬液が風速計に当たらないようにすることができ、風速計からの薬液の跳ね返りをより確実に防止することができる。さらに、風速計に薬液が付着し風速測定に影響を与えることをより確実に防ぐことができる。
【0015】
このとき、前記枚葉式ウェーハ洗浄処理装置は、前記チャンバーの内外の差圧を測定する圧力計をさらに備えるものであることが好ましい。
【0016】
このような圧力計を備えることで、チャンバーの内外の差圧を測定することができ、給気風量可変機構と排気風量可変機構を調整することによりチャンバー内の圧力をチャンバー外の圧力に比べて適切な範囲内とすることができる。すなわち、チャンバー内が過度の陰圧又は陽圧になることを防ぎ、それらを起因としてウェーハ表面に欠陥が発生することをより効果的に防止することができる。
【0017】
また、上記目的を達成するために、本発明は、チャンバー内に配置されたカップ部を有し、該カップ部内に配置されたテーブル部により保持され、回転されるウェーハに、ノズル部から薬液を供給しつつ前記ウェーハを枚葉式で洗浄処理するウェーハ洗浄処理方法であって、
前記テーブル部が回転していない時の、前記テーブル部に保持されたウェーハの端部の位置の風速を風速計により測定しつつ、該風速が1.0m/sec以上となるように、前記チャンバー内への給気の風量と前記チャンバー外への排気の風量のうち1つ以上を調整した状態で、前記テーブル部を回転させつつ前記ウェーハを洗浄処理することを特徴とするウェーハ洗浄処理方法を提供する。
【0018】
このように、回転していない時のウェーハの端部の位置の風速を風速計により測定しつつ、該風速が1.0m/sec以上になるように調整することができる。そして、調整した状態でウェーハを回転させつつ洗浄処理を行えば、洗浄時の乱流の発生とそれによるミスト等の巻き上がりを抑制することができ、洗浄処理する際にウェーハ表面にミスト等が付着することによる欠陥の発生を防止することができる。
【0019】
このとき、前記風速の測定後、前記ウェーハを洗浄処理する前に、前記風速計を前記ウェーハの端部の測定位置から退避させることが好ましい。
【0020】
このように、ウェーハを洗浄処理する前に風速計を測定位置から退避させることにより、飛散した薬液が風速計に当たらないようにすることができ、風速計からの薬液の跳ね返りをより確実に防止することができる。さらに、風速計に薬液が付着し風速測定に影響を与えることをより確実に防ぐことができる。
【0021】
このとき、前記ウェーハの端部の位置の風速を調整する際に、前記チャンバーの内外の差圧を0〜5Paの範囲内とすることが好ましい。
【0022】
このようにチャンバーの内外の差圧を0〜5Paの範囲内にすることで、チャンバー内が過度の陰圧や陽圧にならないようにして、陰圧又は陽圧に起因する欠陥がウェーハ表面に発生することをより効果的に防止することができる。
【発明の効果】
【0023】
以上のように、本発明の枚葉式ウェーハ洗浄処理装置及びウェーハ洗浄処理方法によれば、ウェーハの回転時にウェーハの端部で発生する乱流によるミスト等のウェーハへの付着を防止し、ミスト等によるウェーハ表面の欠陥数の増加を効果的に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の枚葉式ウェーハ洗浄処理装置の一例を示す概略図である。
【
図2】実施例及び比較例による、ウェーハの端部の位置の風速と増加欠陥数の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明について、実施態様の一例として、図を参照しながら詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0026】
まず、本発明の枚葉式ウェーハ洗浄処理装置について、
図1を参照して説明する。
図1は、本発明の枚葉式ウェーハ洗浄処理装置の一例を示す概略図である。
【0027】
図1の枚葉式ウェーハ洗浄処理装置100は、チャンバー1と、カップ部2と、チャンバー1に設けられた給気部3と、該給気部3の風量を調整する給気風量可変機構4と、チャンバー1に設けられた排気部5と、該排気部5の風量を調整する排気風量可変機構6と、ウェーハWを保持し、回転駆動するテーブル部7と、ウェーハWに薬液13を供給するノズル部8と、テーブル部7に保持されるウェーハWの端部の位置の風速を測定する風速計9とを備えている。さらに、枚葉式ウェーハ洗浄処理装置100は、チャンバー内とチャンバー外の差圧を測定する圧力計10と、風速計9をウェーハWの端部の位置から退避させることができる機構(風速計退避機構)11とを備えていてよい。
【0028】
チャンバー1は、枚葉式ウェーハ洗浄処理装置100を構成する筐体であり、カップ部2、テーブル部7、及びノズル部8などを収容している。カップ部2は、チャンバー内に設けられ、ウェーハWの回転により周囲に飛散した薬液12を回収又は排液するためのものであり、ウェーハWを取り囲むように設けられている。カップ部2は、
図1に示すように、上部に内側に向かって傾斜のついた部分を有しており、この傾斜のついた部分の水平との角度は、例えば、15〜30°とすることができる。
【0029】
給気部3は、チャンバー1の上部に設けられ、例えば、温度及び湿度が制御された空気(エアー)をチャンバー1内に供給する機能を有する。しかしながら、給気部3がチャンバー1内に供給する気体は空気に限定されるものではない。給気風量可変機構4は、給気部3によりチャンバー1内に供給する気体の風量(及び/又は風速)を調整する機能を有する。給気風量可変機構4は、例えば、ファンの形態とすることができ、ファンの回転数を増減することで、風量を調整することが可能であるが、ファンの形態に限定されるものではない。
【0030】
排気部5は、チャンバー1の下部に設けられ、チャンバー1内の排気を行う機能を有する。排気風量可変機構6は、排気部5、例えば排気部5のダクト等に設けられ、排気部5における排気の風量(及び/又は風速)を調整する機能を有する。排気風量可変機構6は、例えば、ダンパの形態とすることができ、ダンパの開閉を制御することで、排気部5の風量を調整することが可能であるが、ダンパの形態に限定されるものではない。
【0031】
テーブル部7は、回転駆動するテーブル14と該テーブル14上に設けられた複数の保持ピン15から構成され、保持ピン15でウェーハWを外周側から保持する。ノズル部8は、ウェーハWの上方に設けられ、ウェーハWの主表面に、例えば、フッ酸等の薬液、オゾン水、及び純水等を供給する複数のノズルを有していてもよい。
【0032】
風速計9は、風速測定位置がウェーハWの端部の位置となるように設けられる。このウェーハWの端部の位置において、ウェーハWとテーブル部7が回転する際に(洗浄時に)乱流が発生する。風速計9により、洗浄時に乱流が発生する位置においてテーブル部7が回転していない時(非洗浄時)の風速を正確に測定することができる。風速計9として、例えば、熱線式風速計を用いることができるが、これに限定されるものではない。
【0033】
このように、風速計9を備えているので、ウェーハWの端部の位置での、非洗浄時における風速を正確に測定し、給気風量可変機構4と排気風量可変機構6により該風速を適切な値に調整することができる。ここで言う非洗浄時の適切な風速値とは、その風速の条件(給気風量や排気風量など)の下、洗浄を始めても(テーブル部7を回転させても)、ウェーハWの端部で乱流が発生しないような値を意味する。これにより、洗浄時に乱流の発生とそれによるミスト等の巻き上がり(巻き戻し)を抑制することができ、洗浄処理する際にウェーハWの表面にミスト等による欠陥が発生することを防止することができる。
【0034】
風速計9は、位置や高さを調整可能な構成とすることができる。また、風速計9は、風速計退避機構11により、手動又は自動で、飛散した薬液12が当たらない位置(待機位置)まで退避させることができる。風速計9がウェーハWの端部の位置に固定されたままであると、ウェーハWの洗浄処理の間に、ウェーハWから飛散した薬液12が風速計9に当たることがある。風速計退避機構11により、風速計9を待機位置まで移動させることにより、飛散した薬液12の風速計9による跳ね返りをより確実に防止することができる。さらに、風速計9に飛散した薬液12が付着して、その後の風速測定に影響を与えることを防止することができる。風速計退避機構11は、例えば、複数の方向に移動可能とするロボットアームとすることができる。あるいは、風速計退避機構11は、
図1における上方向、又は左上方向などの特定の方向のみに手動又は自動で移動可能な簡易なものでもよい。また、風速計9は、風速測定位置から取り外し可能なものとすることもでき、風速の測定と調整が終了した後に枚葉式ウェーハ洗浄処理装置100から取り外されてもよい。
【0035】
ウェーハWの端部の位置での風速の調整は、給気風量可変機構4によるチャンバー1内への給気と排気風量可変機構6によるチャンバー1からの排気のバランスを調整することにより、実施することができる。この風速の調整は、手動で給気風量可変機構4と排気風量可変機構6を調整することにより行うことができ、また、風速の値を設定し、風速がその値となるように給気風量可変機構4と排気風量可変機構6を自動で制御する構成とすることもできる。さらに、手動と自動とによる調整を組み合わせた制御とすることもできる。
【0036】
枚葉式ウェーハ洗浄処理装置100は、さらに、チャンバー1の内外の差圧を測定する圧力計10を備えていてもよい。圧力計10は、チャンバー1の内外にそれぞれ圧力検出部を有し、それにより差圧を求めるものとすることができる。あるいは、例えば、枚葉式ウェーハ洗浄処理装置100が所定の圧力のクリーンルーム等に設置されている場合は、チャンバー1の内部の圧力だけを測定して、測定されたチャンバー内圧力と所定のチャンバー外圧力を比較して差圧を求めてもよい。
【0037】
ここで、チャンバー1内が過度に陰圧(負圧)の時には、外気のチャンバー1内への流入が発生しパーティクル等の汚染源となりうる。一方、チャンバー1内が過度に陽圧の時は、発生しているミストが給気部から供給された気体により巻き上がり排気されずにウェーハ上に付着して汚染源となることがある。圧力計10により、チャンバー1の内外の差圧を適切な範囲内に調整することができ、その状態で洗浄処理を行えば、チャンバー1内の過度の陰圧や陽圧によるウェーハWへの汚染源の付着及びそれによる欠陥の発生をより確実に防止することができる。
【0038】
次に、本発明のウェーハ洗浄処理方法について、
図1を参照して説明する。
本発明のウェーハ洗浄処理方法は、例えば、
図1に示した枚葉式ウェーハ洗浄処理100を用いたウェーハ洗浄処理方法である。本発明のウェーハ洗浄処理方法では、テーブル部7が回転していない時の、テーブル部7に保持されたウェーハWの端部の位置の風速を風速計9により測定しつつ、該風速が1.0m/sec以上となるように、チャンバー1内への給気の風量とチャンバー1外への排気の風量のうち1つ以上を、対応する給気風量可変機構4と排気風量可変機構6により調整した状態で、テーブル部7を回転させつつウェーハWを洗浄処理する。
【0039】
ここで、ウェーハWの端部の位置の風速を測定及び調整するタイミングは、乱流が発生していないウェーハWの非回転時であるが、1.0m/sec以上の風速に調整しておくことで、洗浄後のウェーハにおける増加欠陥数を十分に低減することが可能である。これは、風速測定位置が乱流発生位置と同じ位置であるために、ウェーハWの非回転時の風速の値と乱流の発生状況(発生の有無)に一定の相関関係があるためであると推測される。
【0040】
また、ウェーハWの端部の位置の風速は、上限は特に限定されないが、例えば、1.0〜5.0m/secの範囲内とすることができる。装置上の上限等からも5.0m/secもあれば十分であるし、風速が5.0m/sec以下であればより効果的に増加欠陥数を抑制できる。このことから、風速が5.0m/sec以下であれば、渦の発生によるミストの巻き戻りや気流によるミストの巻き込み、及びそれらによるウェーハ表面の欠陥はほとんど発生しない。
【0041】
また、風速の測定後、ウェーハWを洗浄処理する前に、風速計9をウェーハWの端部の測定位置から退避させることが好ましい。風速計9を、飛散した薬液12が当たらない位置まで退避させることにより、薬液の風速計9からの跳ね返りや、風速計9への薬液の付着をより確実に防止することができる。
【0042】
また、ウェーハWの端部の位置の風速を調整する際に、チャンバー1の内外の差圧を0〜5Paの範囲内とすることが好ましい。このような差圧の範囲とすることにより、チャンバー1の内部が、過度の陰圧や陽圧になることを防ぐことができる。従って、過度の陰圧や陽圧によるウェーハWへの汚染源の付着及びそれによる欠陥の発生をより確実に防止することができる。
【実施例】
【0043】
以下、実施例及び比較例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0044】
(実施例)
図1に示した本発明の枚葉式洗浄処理装置100を用いて、直径300mmの鏡面研磨されたシリコンウェーハを一つの条件について100枚洗浄し、洗浄前後で各シリコンウェーハの表面の欠陥数を測定し、洗浄による増加欠陥数を求めた。シリコンウェーハの端部の位置の風速の測定や調整は、テーブル部7が回転していない時に、給気風量可変機構4と排気風量可変機構6によりチャンバー1内への給気の風量とチャンバー1外への排気の風量を調整して行った。そして、その調整された状態でシリコンウェーハの洗浄を行った。
【0045】
洗浄は、オゾン水とフッ酸を用いた一般的な洗浄とし、洗浄フローは、オゾン水、純水、フッ酸、純水、オゾン水、純水、乾燥をこの順に行うフローとし、テーブル部7の回転数は1500rpmとした。
【0046】
シリコンウェーハの表面の欠陥数は、KLA−Tencor社製のSurfscan SP3を使用して測定した。風速は、日本カノマックス社製のアネモマスター風速計を用いて測定した。
【0047】
シリコンウェーハの端部の位置の非洗浄時の風速が、それぞれ、1.0、1.2、1.4、1.6、1.8、2.0、2.2m/secとなるように調整を行い、これら7条件でのシリコンウェーハ表面の増加欠陥数を求めた。それらの結果を
図2の右側部分に示す。
図2は、横軸にウェーハの端部の位置の風速、縦軸に増加欠陥数をとったグラフであり、それぞれの条件の増加欠陥数は100枚のシリコンウェーハについての増加欠陥数の平均値である。また、
図2には、それぞれの条件の100枚のウェーハの増加欠陥数の最大値と最小値を太線で併せて示してある。ウェーハの端部の位置の風速が1.0m/sec以上であれば、増加欠陥数が十分に抑制されているのとともに、増加欠陥数のバラツキ(最大値と最小値の差、すなわちレンジ)も抑制されていた。このように、非洗浄時におけるウェーハの端部の位置の風速が1.0m/sec以上となるように調整することにより、洗浄時のウェーハへのミスト等の付着による欠陥数の増加が著しく低減された。
【0048】
(比較例)
風速と欠陥数を実施例と比較するため、実施例と同様に、
図1に示した本発明の枚葉式洗浄処理装置100を用いて、直径300mmの鏡面研磨されたシリコンウェーハを一つの条件について100枚洗浄し、洗浄前後でシリコンウェーハの表面の欠陥数を測定し、増加欠陥数を求めた。風速の測定と調整はシリコンウェーハの非回転時に行い、その調整された状態でシリコンウェーハの洗浄を行った。風速値に関する条件以外は実施例に記載したのと同様とし、風速計も実施例と同様のものを使用した。
【0049】
そして、シリコンウェーハの端部の位置の風速が、それぞれ、0.4、0.6、0.8m/secとなるように調整を行い、これら3条件でのシリコンウェーハの増加欠陥数を求めた。
それらの結果を表1及び
図2に示す。
【0050】
【表1】
【0051】
表1の風速は、ウェーハWの非回転時にウェーハWの端部の位置で測定した風速である。そして、上述したように、ウェーハWの非回転時に給気風量可変機構4と排気風量可変機構6を調整して表1に記載したそれぞれの風速が得られている。また、表1において、増加欠陥数は、洗浄処理後に測定したウェーハ表面の欠陥数から、洗浄処理前に測定したウェーハ表面の欠陥数を引いて算出した値の100枚のシリコンウェーハについての平均値である。
【0052】
表1及び
図2より、実施例と比較例の結果を比較した。比較例のように、風速が0.4m/secでは、増加欠陥数は38個と非常に多く、増加欠陥数のバラツキも極めて大きかった。風速0.6及び0.8m/secでは0.4m/secと比較し、増加欠陥数は減少しているものの、実施例の風速1.0m/sec以上の条件と比較すると増加欠陥数及びバラツキの抑制効果は十分ではなかった。
【0053】
一方、実施例の風速1.0m/sec以上では増加欠陥数はほぼ1個レベルまで低減されている。このように、ウェーハWの端部の位置の風速を1.0m/sec以上とすることにより、確実に顕著な増加欠陥数の抑制効果が得られる。
【0054】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0055】
1…チャンバー、 2…カップ部、 3…給気部、 4…給気風量可変機構、
5…排気部、 6…排気風量可変機構、 7…テーブル部、 8…ノズル部、
9…風速計、 10…圧力計、 11…風速計退避機構、 12…飛散した薬液、
13…薬液、 14…テーブル、 15…保持ピン、
100…本発明の枚葉式ウェーハ洗浄処理装置、 W…ウェーハ。