特許第6500998号(P6500998)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6500998
(24)【登録日】2019年3月29日
(45)【発行日】2019年4月17日
(54)【発明の名称】比抵抗値調整装置及び比抵抗値調整方法
(51)【国際特許分類】
   B01F 15/04 20060101AFI20190408BHJP
   B01F 1/00 20060101ALI20190408BHJP
   B01F 3/04 20060101ALI20190408BHJP
   B01F 3/08 20060101ALI20190408BHJP
   B01F 5/06 20060101ALI20190408BHJP
   C02F 1/68 20060101ALI20190408BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20190408BHJP
【FI】
   B01F15/04 A
   B01F1/00 A
   B01F3/04 Z
   B01F3/08 Z
   B01F5/06
   C02F1/68 510A
   C02F1/68 520B
   C02F1/68 520C
   C02F1/68 530A
   C02F1/68 530K
   C02F1/68 530L
   H01L21/304 648G
【請求項の数】13
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2017-565883(P2017-565883)
(86)(22)【出願日】2017年8月10日
(86)【国際出願番号】JP2017029164
(87)【国際公開番号】WO2018030525
(87)【国際公開日】20180215
【審査請求日】2017年12月18日
(31)【優先権主張番号】特願2016-158664(P2016-158664)
(32)【優先日】2016年8月12日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100185591
【弁理士】
【氏名又は名称】中塚 岳
(74)【代理人】
【識別番号】100130052
【弁理士】
【氏名又は名称】大阪 弘一
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 政人
(72)【発明者】
【氏名】大井 和美
(72)【発明者】
【氏名】羽田 尚樹
【審査官】 宮部 裕一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−010660(JP,A)
【文献】 特開2012−223725(JP,A)
【文献】 特開2000−265945(JP,A)
【文献】 特開2011−082495(JP,A)
【文献】 国際公開第2016/042933(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01F 15/04
B01D 53/22
B01D 61/00−71/82
B01F 1/00− 5/26
B01F 15/00−15/06
B01J 4/00
C02F 1/44
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
超純水が供給される液相側領域と前記超純水の比抵抗値を調整するための調整ガスが供給される気相側領域とが中空糸膜により分けられており、前記中空糸膜を透過した前記調整ガスを前記超純水に溶解させて前記超純水に前記調整ガスが溶解した調整ガス付加液体を生成する中空糸膜モジュールと、
前記中空糸膜モジュールに前記調整ガスを供給するガス供給管と、
前記超純水が供給される液体供給管と、
前記液体供給管を分岐する分岐部を介して前記液体供給管に連通されて、前記中空糸膜モジュールを経由するモジュール経由管と、
前記分岐部を介して前記液体供給管に連通されて、前記中空糸膜モジュールをバイパスするバイパス管と、
前記モジュール経由管と前記バイパス管とを前記中空糸膜モジュールの下流側において合流する合流部を介して前記モジュール経由管及び前記バイパス管と連通される液体排出管と、
前記液体供給管に供給される前記超純水の第一流量を検出する第一流量検出部と、
前記モジュール経由管を開閉する制御弁と、
前記第一流量検出部で検出された前記第一流量に応じて前記制御弁の開度を設定する制御部と、を備える、
比抵抗値調整装置。
【請求項2】
前記モジュール経由管は、
前記中空糸膜モジュールの上流側に配置されて、前記中空糸膜モジュールに前記超純水を供給する供給側モジュール経由管と、
前記中空糸膜モジュールの下流側に配置されて、前記中空糸膜モジュールから前記調整ガス付加液体が排出される排出側モジュール経由管と、を備え、
前記制御部は、前記排出側モジュール経由管に取り付けられて前記排出側モジュール経由管を開閉する、
請求項1に記載の比抵抗値調整装置。
【請求項3】
前記第一流量検出部は、前記液体排出管を流れる前記超純水の流量を検出する
請求項2に記載の比抵抗値調整装置。
【請求項4】
前記モジュール経由管を流れる前記超純水の第二流量を検出する第二流量検出部を更に備え、
前記制御部は、前記第二流量検出部で検出された前記第二流量に応じて前記開度を補正する、
請求項1〜3の何れか一項に記載の比抵抗値調整装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記第一流量が設定流量以下である場合に、前記第一流量が前記設定流量よりも大きい場合に比べて、前記開度を大きくする、
請求項1〜4の何れか一項に記載の比抵抗値調整装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記第一流量が前記設定流量以下である場合に、前記第一流量が小さくなるほど前記開度を大きくする、
請求項5に記載の比抵抗値調整装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記第一流量が前記設定流量よりも大きい場合に、前記第一流量が小さくなるほど前記開度を大きくする、
請求項6に記載の比抵抗値調整装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記第一流量が設定流量以下である場合に、前記第一流量が前記設定流量よりも大きい場合に比べて、前記第一流量の変化量に対する前記開度の変化量の割合を大きくする、
請求項7に記載の比抵抗値調整装置。
【請求項9】
前記調整ガス付加液体は、前記超純水に前記調整ガスが飽和状態で溶解された調整ガス飽和液体である、
請求項1〜8の何れか一項に記載の比抵抗値調整装置。
【請求項10】
超純水が供給される液相側領域と前記超純水の比抵抗値を調整するための調整ガスが供給される気相側領域とが中空糸膜により分けられており、前記中空糸膜を透過した前記調整ガスを前記超純水に溶解させて前記超純水に前記調整ガスが溶解した調整ガス付加液体を生成する中空糸膜モジュールを用いて、前記超純水の比抵抗値を調整する比抵抗値調整方法であって、
液体供給管に前記超純水を供給し、
液体供給管に供給された前記超純水を、前記中空糸膜モジュールを経由するモジュール経由管と前記中空糸膜モジュールをバイパスするバイパス管とに分岐し、
前記中空糸膜モジュールに前記調整ガスを供給して、前記中空糸膜モジュールにおいて、前記超純水に前記調整ガスが飽和状態で溶解された前記調整ガス付加液体を生成し、
前記中空糸膜モジュールで生成された前記調整ガス付加液体と前記中空糸膜モジュールをバイパスした前記超純水とを合流して、液体排出管に排出し、
前記液体供給管に供給される前記超純水の第一流量に応じて、前記モジュール経由管を開閉する制御弁の開度を設定する、
比抵抗値調整方法。
【請求項11】
前記第一流量が設定流量以下である場合に、前記第一流量が前記設定流量よりも大きい場合に比べて、前記開度を大きくする、
請求項10に記載の比抵抗値調整方法。
【請求項12】
前記モジュール経由管を流れる前記超純水の第二流量を検出し、前記第二流量に応じて前記開度を補正する、
請求項10又は11に記載の比抵抗値調整方法。
【請求項13】
前記第一流量が設定流量以下である場合に、
前記第一流量が前記設定流量よりも大きい場合に比べて、前記開度を大きくし、
前記第一流量が小さくなるほど前記開度を大きくし、
前記第一流量が前記設定流量よりも大きい場合に比べて、前記第一流量の変化量に対する前記開度の変化量の割合を大きくし、
前記第一流量が前記設定流量よりも大きい場合に、前記第一流量が小さくなるほど前記開度を大きくする、
請求項10〜12の何れか一項に記載の比抵抗値調整方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体の比抵抗値を調整する比抵抗値調整装置及び比抵抗値調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体又は液晶の製造工程では、超純水を使用して基板を洗浄する。この場合、超純水の比抵抗値が高いと、静電気が発生する。これにより、絶縁破壊して、又は微粒子が再付着して、製品歩留まりに著しく悪影響を及ぼす。このような問題を解決するために、疎水性の中空糸膜モジュールを用いた方法が提案されている。この方法は、中空糸膜モジュールを用いて超純水中に炭酸ガス又はアンモニアガス等のガスを溶解させる。すると、解離平衡によりイオンが発生し、この発生したイオンにより超純水の比抵抗値が低下する。
【0003】
また、基板の洗浄、ダイシング等の工程では、超純水の流動変動が激しい。そこで、特許文献1及び2では、流量が変動しても比抵抗値を安定させる技術が提案されている。特許文献1に記載された技術では、小流量のガス付加超純水を生成する中空糸膜モジュールと、大流量の超純水を通過させるバイパス管路と、を設ける。そして、生成されたガス付加超純水とバイパス管路を通過した超純水とを合流する。これにより、容易に超純水の比抵抗値を調整できる。しかしながら、特許文献1に記載された技術では、超純水が低流量になると、中空糸膜モジュールをバイパスする超純水の流量に対して中空糸膜モジュールに供給される超純水の流量が低下するため、超純水の比抵抗値が上昇する場合がある。そこで、特許文献2に記載された技術では、複数のバイパス管路を設け、1又は複数のバイパス管路にシャット弁を設ける。そして、超純水の流量が低下すると、一部又は全部のシャット弁を開ける。これにより、超純水が低流量になっても、中空糸膜モジュールをバイパスする超純水の流量に対して中空糸膜モジュールに供給される超純水の流量が低下するのを抑制できるため、超純水の比抵抗値が上昇するのを抑制できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3951385号公報
【特許文献2】特開2012−223725号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献2に記載された技術では、複数のバイパス配管を設ける必要があるため、規模が大きくなるという問題がある。
【0006】
そこで、本発明は、規模の拡大を抑制しつつ、液体が低流量になっても液体の比抵抗値が上昇するのを抑制できる比抵抗値調整装置及び比抵抗値調整方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面に係る比抵抗値調整装置は、液体が供給される液相側領域と液体の比抵抗値を調整するための調整ガスが供給される気相側領域とが中空糸膜により分けられており、中空糸膜を透過した調整ガスを液体に溶解させて液体に調整ガスが溶解した調整ガス付加液体を生成する中空糸膜モジュールと、中空糸膜モジュールに調整ガスを供給するガス供給管と、液体が供給される液体供給管と、液体供給管を分岐する分岐部を介して液体供給管に連通されて、中空糸膜モジュールを経由するモジュール経由管と、分岐部を介して液体供給管に連通されて、中空糸膜モジュールをバイパスするバイパス管と、モジュール経由管とバイパス管とを中空糸膜モジュールの下流側において合流する合流部を介してモジュール経由管及びバイパス管と連通される液体排出管と、液体供給管に供給される液体の第一流量を検出する第一流量検出部と、モジュール経由管を開閉する制御弁と、第一流量検出部で検出された第一流量に応じて制御弁の開度を設定する制御部と、を備える。
【0008】
本発明の一側面に係る比抵抗値調整装置では、液体供給管に供給された液体は、分岐部により中空糸膜モジュールに供給される液体と中空糸膜モジュールをバイパスする液体とに分配される。中空糸膜モジュールでは、中空糸膜を透過した調整ガスが液体に溶解されて、液体に調整ガスが溶解した調整ガス付加液体が生成される。中空糸膜モジュールで生成された調整ガス付加液体と中空糸膜モジュールをバイパスした液体とは、合流部で合流して比抵抗値調整液体となり、液体排出管に排出される。
【0009】
そして、液体供給管に供給される液体の第一流量に応じて、モジュール経由管を開閉する制御弁の開度が設定される。このため、液体供給管に供給される液体が小流量になった場合に、制御弁の開度を大きくすることで、中空糸膜モジュールに供給される液体の流量を大きくすることができる。つまり、液体が低流量になっても、中空糸膜モジュールに供給される液体の流量と中空糸膜モジュールをバイパスする液体の流量との分配比率が変わるのを抑制することができる。これにより、規模の拡大を抑制しつつ、液体が低流量になっても液体の比抵抗値が上昇するのを抑制することができる。
【0010】
しかも、液体供給管に供給される液体の第一流量を変更する場合は、変更後の第一流量に応じて制御弁の開度が設定されるため、第一流量の変更に伴う液体の比抵抗値の変動を抑制することができる。特に、液体供給管に供給される液体の第一流量を小さく変更した場合は、中空糸膜モジュールに液体が供給されにくくなるが、この場合でも、第一流量の変更に伴い液体の比抵抗値が上昇するのを抑制することができる。
【0011】
一実施形態として、モジュール経由管は、中空糸膜モジュールの上流側に配置されて、中空糸膜モジュールに液体を供給する供給側モジュール経由管と、中空糸膜モジュールの下流側に配置されて、中空糸膜モジュールから調整ガス付加液体が排出される排出側モジュール経由管と、を備え、制御部は、排出側モジュール経由管に取り付けられて排出側モジュール経由管を開閉してもよい。制御弁の圧力損失が大きい場合、供給側モジュール経由管に制御弁を取り付けると、中空糸膜モジュールでは、調整ガスのガス圧に対して液体の液圧が小さくなり過ぎてバブリングが発生する可能性がある。そこで、この比抵抗値調整装置では、排出側モジュール経由管に制御弁を取り付けることで、制御弁の圧力損失が大きい場合であっても、中空糸膜モジュールでバブリングが発生するのを抑制することができる。
【0012】
一実施形態として、第一流量検出部は、液体排出管を流れる液体の流量を検出してもよい。液体供給管に供給される液体の流量と液体排出管を流れる比抵抗値調整液体の流量とは同じであるため、第一流量検出部は、第一流量として、液体供給管を流れる液体の流量及び液体排出管を流れる比抵抗値調整液体の流量の何れを検出してもよい。しかしながら、制御弁が取り付けられる排出側モジュール経由管は、液体供給管よりも液体排出管に近い位置に配置される。そこで、この比抵抗値調整装置では、第一流量検出部は、第一流量として、この液体排出管を流れる液体の流量を検出することで、第一流量検出部と制御弁とを接続する配線の規模を小さくすることができる。
【0013】
一実施形態として、モジュール経由管を流れる液体の第二流量を検出する第二流量検出部を更に備え、制御部は、第二流量検出部で検出された第二流量に応じて開度を補正してもよい。この比抵抗値調整装置では、第二流量検出部は、モジュール経由管を流れる液体の第二流量を検出し、制御部は、第二流量検出部で検出された第二流量に応じて開度を補正するため、液体が低流量になっても、中空糸膜モジュールに供給される液体の流量と中空糸膜モジュールをバイパスする液体の流量との分配比率が変わるのを更に抑制することができる。
【0014】
一実施形態として、制御部は、第一流量が設定流量以下である場合に、第一流量が設定流量よりも大きい場合に比べて、開度を大きくしてもよい。液体供給管に供給される液体が低流量になって第一流量が設定流量以下になると、第一流量が設定流量よりも大きい場合に比べて、中空糸膜モジュールに液体が供給されにくくなる。そこで、この比抵抗値調整装置では、第一流量が設定流量以下である場合に、第一流量が設定流量よりも大きい場合に比べて、制御弁の開度を大きくして中空糸膜モジュールに供給される液体の流量を大きくする。これにより、第一流量が設定流量以下になっても、中空糸膜モジュールに供給される液体の流量と中空糸膜モジュールをバイパスする液体の流量との分配比率が変わるのを抑制することができる。
【0015】
一実施形態として、制御部は、第一流量が設定流量以下である場合に、第一流量が小さくなるほど開度を大きくしてもよい。液体供給管に供給される液体が低流量になって第一流量が設定流量以下になると、第一流量が小さくなるほど中空糸膜モジュールに液体が供給されにくくなる。そこで、この比抵抗値調整装置では、第一流量が設定流量以下である場合に、第一流量が小さくなるほど、制御弁の開度を大きくして中空糸膜モジュールに供給される液体の流量を大きくする。これにより、第一流量が設定流量以下になっても、中空糸膜モジュールに供給される液体の流量と中空糸膜モジュールをバイパスする液体の流量との分配比率が変わるのを更に抑制することができる。
【0016】
一実施形態として、制御部は、第一流量が設定流量よりも大きい場合に、第一流量が小さくなるほど開度を大きくしてもよい。第一流量が設定流量よりも大きい場合においても、第一流量が小さくなるほど中空糸膜モジュールに液体が供給されにくくなる傾向にある。そこで、この比抵抗値調整装置では、第一流量が設定流量よりも大きい場合に、第一流量が小さくなるほど、制御弁の開度を大きくして中空糸膜モジュールに供給される液体の流量を大きくする。これにより、第一流量が設定流量よりも大きい場合においても、中空糸膜モジュールに供給される液体の流量と中空糸膜モジュールをバイパスする液体の流量との分配比率が変わるのを抑制することができる。
【0017】
一実施形態として、制御部は、第一流量が設定流量以下である場合に、第一流量が設定流量よりも大きい場合に比べて、第一流量の変化量に対する開度の変化量の割合を大きくしてもよい。第一流量が小さくなるほど中空糸膜モジュールに液体が供給されにくくなる傾向は、第一流量が設定流量以下になるほど大きくなる。そこで、この比抵抗値調整装置では、第一流量が設定流量以下である場合に、第一流量が設定流量よりも大きい場合に比べて、第一流量の変化量に対する制御弁の開度の変化量の割合を大きくする。これにより、中空糸膜モジュールに供給される液体の流量と中空糸膜モジュールをバイパスする液体の流量との分配比率が変わるのを更に抑制することができる。
【0018】
一実施形態として、調整ガス付加液体は、液体に調整ガスが飽和状態で溶解された調整ガス飽和液体であってもよい。この比抵抗値調整装置では、中空糸膜モジュールにより、調整ガス付加液体として、液体に調整ガスが飽和状態で溶解された調整ガス飽和液体が生成される。これにより、中空糸膜モジュールに供給される液体の流量と中空糸膜モジュールをバイパスする液体の流量との分配比率を調整することのみで、液体の比抵抗値を高精度に調整することができる。
【0019】
本発明の一側面に係る比抵抗値調整方法は、液体が供給される液相側領域と液体の比抵抗値を調整するための調整ガスが供給される気相側領域とが中空糸膜により分けられており、中空糸膜を透過した調整ガスを液体に溶解させて液体に調整ガスが溶解した調整ガス付加液体を生成する中空糸膜モジュールを用いて、液体の比抵抗値を調整する比抵抗値調整方法であって、液体供給管に液体を供給し、液体供給管に供給された液体を、中空糸膜モジュールを経由するモジュール経由管と中空糸膜モジュールをバイパスするバイパス管とに分岐し、中空糸膜モジュールに調整ガスを供給して、中空糸膜モジュールにおいて、液体に調整ガスが飽和状態で溶解された調整ガス付加液体を生成し、中空糸膜モジュールで生成された調整ガス付加液体と中空糸膜モジュールをバイパスした液体とを合流して、液体排出管に排出し、液体供給管に供給される液体の第一流量に応じて、モジュール経由管を開閉する制御弁の開度を設定する。
【0020】
本発明の一側面に係る比抵抗値調整方法では、液体に調整ガスが飽和状態で溶解された調整ガス付加液体を生成し、中空糸膜モジュールで生成された調整ガス付加液体と中空糸膜モジュールをバイパスした液体とを合流することで、液体の比抵抗値を容易に調整することができる。
【0021】
そして、液体供給管に供給される液体の第一流量に応じて制御弁の開度を設定するため、液体供給管に供給される液体が小流量になった場合に、制御弁の開度を大きくして、中空糸膜モジュールに供給される液体の流量を大きくすることができる。つまり、液体供給管に供給される液体が低流量になっても、中空糸膜モジュールに供給される液体の流量と中空糸膜モジュールをバイパスする液体の流量との分配比率が変わるのを抑制することができる。これにより、規模の拡大を抑制しつつ、液体供給管に供給される液体が低流量になっても液体の比抵抗値が上昇するのを抑制することができる。
【0022】
しかも、液体供給管に供給される液体の第一流量を変更する場合は、変更後の第一流量に応じて制御弁の開度が設定されるため、第一流量の変更に伴う液体の比抵抗値の変動を抑制することができる。特に、液体供給管に供給される液体の第一流量を小さく変更した場合は、中空糸膜モジュールに液体が供給されにくくなるが、この場合でも、第一流量の変更に伴い液体の比抵抗値が上昇するのを抑制することができる。
【0023】
一実施形態として、第一流量が設定流量以下である場合に、第一流量が設定流量よりも大きい場合に比べて、開度を大きくしてもよい。液体供給管に供給される液体が低流量になって第一流量が設定流量以下になると、第一流量が設定流量よりも大きい場合に比べて、中空糸膜モジュールに液体が供給されにくくなる。そこで、この比抵抗値調整方法では、第一流量が設定流量以下である場合に、第一流量が設定流量よりも大きい場合に比べて、制御弁の開度を大きくして中空糸膜モジュールに供給される液体の流量を大きくする。これにより、第一流量が設定流量以下になっても、中空糸膜モジュールに供給される液体の流量と中空糸膜モジュールをバイパスする液体の流量との分配比率が変わるのを抑制することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、規模の拡大を抑制しつつ、液体が低流量になっても液体の比抵抗値が上昇するのを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】第一実施形態の比抵抗値調整装置の模式図である。
図2】第一流量と制御弁の開度との関係を示したテーブルの一例を示す図である。
図3】第二実施形態の比抵抗値調整装置の模式図である。
図4】比較例の合流装置の模式図である。
図5】実施例1及び比較例1の計測結果を示す図である。
図6】実施例2及び比較例2の計測結果を示す図である。
図7】実施例3及び比較例3の計測結果を示す図である。
図8】実施例4の計測結果を示す図であり、図8(a)は、経過時間と比抵抗値との関係を示す図であり、図8(b)は、経過時間と流量との関係を示す図である。
図9】比較例4の計測結果を示す図であり、図9(a)は、経過時間と比抵抗値との関係を示す図であり、図9(b)は、経過時間と流量との関係を示す図である。
図10】実施例5の計測結果を示す図であり、図10(a)は、経過時間と比抵抗値との関係を示す図であり、図10(b)は、経過時間と流量との関係を示す図である。
図11】比較例5の計測結果を示す図であり、図11(a)は、経過時間と比抵抗値との関係を示す図であり、図11(b)は、経過時間と流量との関係を示す図である。
図12】実施例6の計測結果を示す図であり、図12(a)は、経過時間と比抵抗値との関係を示す図であり、図12(b)は、経過時間と流量との関係を示す図である。
図13】比較例6の計測結果を示す図であり、図13(a)は、経過時間と比抵抗値との関係を示す図であり、図13(b)は、経過時間と流量との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照して、実施形態の比抵抗値調整装置及び比抵抗値調整方法について詳細に説明する。なお、全図中、同一または相当部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0027】
(第一実施形態)
図1は、第一実施形態の比抵抗値調整装置の模式図である。図1に示すように、本実施形態の比抵抗値調整装置1は、中空糸膜モジュール2と、ガス供給管3と、液体供給管4と、モジュール経由管5と、バイパス管6と、液体排出管7と、第一流量検出部8と、制御弁9と、制御部10と、を備える。
【0028】
中空糸膜モジュール2は、比抵抗値の調整対象である液体Lに、液体Lの比抵抗値を調整するための調整ガスGを溶解させる。液体Lとして用いる液体は、特に限定されないが、例えば、半導体、液晶等を洗浄するための超純水とすることができる。通常、超純水の比抵抗値は、17.5[MΩ・cm]以上18.2[MΩ・cm]の範囲である。調整ガスGとしても用いるガスは、特に限定されないが、例えば、炭酸ガス又はアンモニアガスとすることができる。中空糸膜モジュール2は、複数本の中空糸膜21と、これらの中空糸膜21を内部に収容するハウジング22と、を備える。
【0029】
中空糸膜21は、気体は透過するが液体は透過しない中空糸状の膜である。中空糸膜21の素材、膜形状、膜形態等は、特に制限されない。ハウジング22は、中空糸膜21を内部に収容する密閉容器である。
【0030】
中空糸膜モジュール2のハウジング22内の領域は、中空糸膜21により、液相側領域と気相側領域とに分けられる。液相側領域は、中空糸膜モジュール2のハウジング22内内の領域のうち、液体Lが供給される領域である。気相側領域は、中空糸膜モジュール2のハウジング22内の領域のうち、調整ガスGが供給される領域である。中空糸膜モジュール2の種類としては、内部灌流型及び外部灌流型がある。本実施形態では、内部灌流型及び外部灌流型の何れであってもよい。外部灌流型の中空糸膜モジュール2では、中空糸膜21の内側(内表面側)が気相側領域となり、中空糸膜21の外側(外表面側)が液相側領域となる。内部灌流型の中空糸膜モジュール2では、中空糸膜21の内側(内表面側)が液相側領域となり、中空糸膜21の外側(外表面側)が気相側領域となる。そして、中空糸膜モジュール2は、中空糸膜21を透過した調整ガスGを液体Lに溶解させて、液体Lに調整ガスGが溶解した調整ガス付加液体L1を生成する。このとき、例えば、中空糸膜モジュール2に供給する調整ガスGのガス圧を一定にし、中空糸膜モジュール2に供給する液体Lの流量を調整することで、調整ガス付加液体L1として、液体Lに調整ガスGが飽和状態で溶解された調整ガス飽和液体を生成することが好ましい。なお、中空糸膜モジュール2に供給する液体Lの流量は、制御弁9により調整することができる。
【0031】
ハウジング22には、ガス供給口23と、液体供給口24と、液体排出口25と、が形成されている。ガス供給口23は、気相側領域に調整ガスGを供給するためにハウジング22に形成された開口である。液体供給口24は、液相側領域に液体Lを供給するためにハウジング22に形成された開口である。液体排出口25は、液相側領域から調整ガス付加液体L1を排出するためにハウジング22に形成された開口である。このため、ガス供給口23は、気相側領域に連通され、液体供給口24及び液体排出口25は、液相側領域に連通される。ガス供給口23、液体供給口24、及び液体排出口25の位置は特に限定されない。
【0032】
ガス供給管3は、内周側に流路が形成された管状の部材である。ガス供給管3は、ガス供給口23に接続されている。ガス供給管3は、中空糸膜モジュール2の気相側領域に連通されており、中空糸膜モジュール2の気相側領域に調整ガスGを供給する。ガス供給管3の素材、特性(硬さ、弾性等)、形状、寸法等は、特に限定されない。
【0033】
ガス供給管3には、圧力調整弁11と、圧力計12と、が接続されている。圧力調整弁11は、ガス供給管3を流れる調整ガスGのガス圧を調整する。つまり、気相側領域における調整ガスGのガス圧は、圧力調整弁11により調整される。圧力調整弁11としては、周知の様々な圧力調整弁を採用することができる。圧力計12は、ガス供給管3を流れる調整ガスGのガス圧を計測する。圧力計12は、ガス供給管3における圧力計12の下流側、すなわち、ガス供給管3における圧力計12の気相側領域側に接続されている。圧力計12としては、周知の様々な圧力計を採用することができ、例えば、ダイヤフラム弁を採用することができる。そして、比抵抗値調整装置1を制御する制御部(不図示)は、ガス供給管3を流れる調整ガスGのガス圧、すなわち、気相側領域における調整ガスGのガス圧が、所定値(又は所定範囲内)となるように、圧力計12で計測した調整ガスGのガス圧に基づいて圧力調整弁11を制御する。
【0034】
なお、本実施形態では、中空糸膜モジュール2の気相側領域から調整ガスGが排出されないものとして説明するが、中空糸膜モジュール2の気相側領域から調整ガスGが排出されるものとしてもよい。この場合、中空糸膜モジュール2のハウジング22に、気相側領域から調整ガスGを排出するための開口であるガス排出口(不図示)を形成する。そして、このガス排出口に、中空糸膜モジュール2の気相側領域から調整ガスGが排出されるガス排出管(不図示)を接続する。ガス排出管は、内周側に流路が形成された管状の部材である。
【0035】
液体供給管4は、内周側に流路が形成された管状の部材である。液体供給管4には、比抵抗値調整装置1に供給される液体Lの全量が供給される。液体供給管4は、分岐部13により、モジュール経由管5とバイパス管6とに分岐されている。つまり、分岐部13の上流側には、液体供給管4が接続されており、分岐部13の下流側には、モジュール経由管5とバイパス管6とが接続されている。そして、分岐部13は、液体供給管4を流れる液体Lを、モジュール経由管5とバイパス管6とに分岐して排出する。
【0036】
モジュール経由管5は、内周側に流路が形成された管状の部材である。モジュール経由管5は、分岐部13を介して液体供給管4に連通されている。モジュール経由管5は、中空糸膜モジュール2を経由している。つまり、モジュール経由管5の途中に、中空糸膜モジュール2が接続されている。このため、モジュール経由管5は、液体Lを中空糸膜モジュール2に供給する供給側モジュール経由管5Aと、中空糸膜モジュール2から調整ガス付加液体L1が排出される排出側モジュール経由管5Bと、を備える。
【0037】
供給側モジュール経由管5Aは、中空糸膜モジュール2の上流側に配置されて、中空糸膜モジュール2の液体供給口24に接続されている。供給側モジュール経由管5Aは、中空糸膜モジュール2の液相側領域に連通されており、中空糸膜モジュール2の液相領域に液体Lを供給する。供給側モジュール経由管5Aの素材、特性(硬さ、弾性等)、形状、寸法等は、特に限定されない。
【0038】
排出側モジュール経由管5Bは、中空糸膜モジュール2の下流側に配置されて、中空糸膜モジュール2の液体排出口25に接続されている。排出側モジュール経由管5Bは、中空糸膜モジュール2の液相側領域に連通されており、中空糸膜モジュール2の液相側領域から調整ガス付加液体L1が排出される。排出側モジュール経由管5Bの素材、特性(硬さ、弾性等)、形状、寸法等は、特に限定されない。
【0039】
バイパス管6は、内周側に流路が形成された管状の部材である。バイパス管6は、分岐部13を介して液体供給管4に連通されている。バイパス管6は、中空糸膜モジュール2をバイパスしている。このため、バイパス管6を流れる液体Lは、中空糸膜モジュール2に供給されずに、中空糸膜モジュール2をバイパスする。バイパス管6は、合流部14により、モジュール経由管5の排出側モジュール経由管5Bと合流されている。
【0040】
合流部14の上流側には、排出側モジュール経由管5Bとバイパス管6とが接続されており、合流部14の下流側には、液体排出管7が接続されている。そして、合流部14は、排出側モジュール経由管5Bを流れる調整ガス付加液体L1とバイパス管6を流れる液体Lとを、中空糸膜モジュール2の下流側において合流する。そして、合流部14は、液体Lと調整ガス付加液体L1とが合流してなる比抵抗値調整液体L2を、液体排出管7に排出する。
【0041】
液体排出管7は、内周側に流路が形成された管状の部材である。液体排出管7は、合流部14に接続されており、液体排出管7は、合流部14を介して排出側モジュール経由管5B及びバイパス管6と連通されており、合流部14から比抵抗値調整液体L2が排出される。液体排出管7の素材、特性(硬さ、弾性等)、形状、寸法等は、特に限定されない。
【0042】
第一流量検出部8は、液体供給管4に供給される液体Lの流量を、第一流量として検出する。ここで、液体供給管4に供給される液体Lは、分岐部13で供給側モジュール経由管5Aとバイパス管6に分岐され、更に、合流部14で合流される。このため、液体排出管7を流れる比抵抗値調整液体L2の流量は、液体供給管4に供給される液体Lと等価となる。そこで、本実施形態では、第一流量検出部8は、液体排出管7に接続されて、液体排出管7を流れる比抵抗値調整液体L2の流量を第一流量として検出する。そして、第一流量検出部8は、検出した第一流量の情報を制御部10に送信する。第一流量検出部8としては、周知の様々な流量計を採用することができる。
【0043】
制御弁9は、モジュール経由管5の流路を開閉する弁である。制御弁9は、制御部10により開閉制御されるとともに、制御部10により設定された開度でモジュール経由管5の流路を開く。制御弁9としては、比例制御弁などの周知の様々な電磁弁を採用することができる。
【0044】
制御部10は、制御弁9と電気的に接続されている。そして、制御部10は、モジュール経由管5を開く開度を設定するとともに、制御弁9の開度が設定した開度となるように制御弁9の開閉制御を行う。このため、制御部10が制御弁9の開度を設定することで、モジュール経由管5を流れる液体Lの流量、つまり、中空糸膜モジュール2に供給する液体Lの流量を調整することができる。
【0045】
制御部10は、中空糸膜モジュール2で生成される調整ガス付加液体L1(調整ガス飽和液体)が、バイパス管6を経た液体Lと合流して比抵抗値調整液体L2となるように、制御弁9の開度を設定する。ここで、飽和状態とは、完全な飽和状態だけでなく、飽和状態に近い状態も含む。飽和状態に近い状態とは、中空糸膜モジュール2に供給される液体Lの流量と中空糸膜モジュール2をバイパスする液体Lの流量との分配比率のみによって液体Lの比抵抗値を調整できる程度に、液体Lに調整ガスGが溶解されている状態をいう。
【0046】
また、制御部10は、第一流量検出部8とも電気的に接続されている。そして、制御部10は、第一流量検出部8から送信された第一流量の情報(第一流量検出部8が検出した第一流量)に応じて、制御弁9の開度を設定する。
【0047】
具体的に説明すると、制御部10は、第一流量が設定流量以下である場合に、第一流量が設定流量よりも大きい場合に比べて、制御弁9の開度を大きくする。設定流量としては、任意の流量とすることができ、例えば、制御弁9の開度を固定した場合に、中空糸膜モジュール2に供給される液体Lの流量と中空糸膜モジュール2をバイパスする液体Lの流量との分配比率が変わることにより液体Lの比抵抗値が大きく上昇し始める流量とすることができる。
【0048】
この場合、制御部10は、第一流量が設定流量以下である場合に、制御弁9の開度を一定にしてもよいが、第一流量が小さくなるほど制御弁9の開度を大きくすることが好ましい。また、制御部10は、第一流量が設定流量よりも大きい場合に、制御弁9の開度を一定にしてもよいが、第一流量が小さくなるほど制御弁9の開度を大きくすることが好ましい。更に、第一流量が設定流量以下である場合及び第一流量が設定流量よりも大きい場合の双方で、第一流量が小さくなるほど制御弁9の開度を大きくする場合、制御部10は、第一流量が設定流量以下である場合に、第一流量が設定流量よりも大きい場合に比べて、第一流量の変化量に対する制御弁9の開度の変化量の割合を大きくする。
【0049】
制御部10は、制御弁9の開度を設定する際は、第一流量と制御弁9の開度との関係を示したテーブルを用意しておき、このテーブルから、第一流量検出部8が検出した第一流量から制御弁9の開度を求めることが好ましい。但し、制御部10は、このようなテーブルから制御弁9の開度を求めるのではなく、計算により制御弁9の開度を求めてもよい。
【0050】
ここで、第一流量と制御弁9の開度との関係を示したテーブルの一例を図2に示す。図2に示すテーブルでは、第一流量の流量域が、第一流量域A1、第二流量域A2、及び第三流量域A3の三領域に分けられている。第一流量域A1は、設定流量よりも大きい流量域である。第二流量域A2は、第一流量検出部8が検出可能(保証可能)な最低流量以上であって、設定流量以下の流量域である。第三流量域A3は、第一流量検出部8が検出可能な最低流量未満の流量域である。
【0051】
第一流量域A1では、線分S1により、第一流量と制御弁9の開度との関係が示されている。第二流量域A2では、線分S2により、第一流量と制御弁9の開度との関係が示されている。第三流量域A3では、線分S3により、第一流量と制御弁9の開度との関係が示されている。
【0052】
線分S1は、以下の式(1)で表わされる直線である。
【0053】
V=−HB・x+HG …(1)
式(1)において、xは、第一流量[L/min]であり、Vは、制御弁9の開度[%]であり、HBは、第一流量の変化量に対する制御弁9の開度の変化量の割合であり(以下、「バイアスHB」という。)、HGは、第一流量を0[L/min]とした場合の制御弁9の開度である(以下、「ゲインHG」という。)。バイアスHBは、例えば、第一流量域A1全域における第一流量の変化量Haに対する第一流量域A1全域における制御弁9の開度の変化量Hbの割合(Hb/Ha)により表される。
【0054】
バイアスHB及びゲインHGは、次のように設定される。まず、調整ガス飽和液体が生成されやすくするために、第一流量が小さくなるほど制御弁9の開度が大きくなるように、バイアスHBを設定する。上述したように、中空糸膜モジュール2では、調整ガス付加液体L1として、液体Lに調整ガスGが飽和状態で溶解された調整ガス飽和液体を生成することが好ましい。一方、中空糸膜モジュール2では調整ガスGのガス圧が一定に保たれているため、中空糸膜モジュール2に供給する液体Lの流量に応じて、液体Lに対する調整ガスGの溶解割合が変わる。そこで、第一流量域A1の全域又は略全域において、中空糸膜モジュール2において調整ガス飽和液体が生成されるように、バイアスHB及びゲインHGを設定する。この場合、事前実験により、第一流量域A1において第一流量を変えながら、中空糸膜モジュール2において調整ガス飽和液体が生成される場合の制御弁9の開度を計測しておく。そして、この計測結果に基づいて、バイアスHB及びゲインHGを設定することが好ましい。
【0055】
線分S2は、以下の式(2)で表わされる直線である。
【0056】
V=−MB・x+MG …(2)
式(2)において、xは、第一流量[L/min]であり、Vは、制御弁9の開度[%]であり、MBは、第一流量の変化量に対する制御弁9の開度の変化量の割合であり(以下、「バイアスMB」という。)、MGは、第一流量を0[L/min]とした場合の制御弁9の開度である(以下、「ゲインMG」という。)。バイアスMBは、例えば、第二流量域A2全域における第一流量の変化量Maに対する第二流量域A2全域における制御弁9の開度の変化量Mbの割合(Mb/Ma)により表される。
【0057】
バイアスHB及びゲインHGは、次のように設定される。まず、第一流量域A1と第二流量域A2との境界で第一流量が急激に変動すると、第一流量を変えたときに、液体Lの比抵抗値が大きく変動する可能性がある。そこで、線分S1と線分S2と連続するように、バイアスMB及びゲインMGを設定する。また、第一流量域A1に比べて第二流量域A2の第一流量が大きくなり、第一流量が小さくなるほど制御弁9の開度が大きくなり、バイアスMB(第二流量域A2における第一流量の変化量Maに対する制御弁9の開度の変化量Mbの割合)がバイアスHB(第一流量の変化量Haに対する制御弁9の開度の変化量Hbの割合)よりも大きくなるように、バイアスMB及びゲインMGを設定する。なお、第二流量域A2においても、調整ガス飽和液体が生成されるように、事前実験により、第二流量域A2において第一流量を変えながら、中空糸膜モジュール2において調整ガス飽和液体が生成される場合の制御弁9の開度を計測しておく。そして、この計測結果に基づいて、バイアスMB及びゲインMGを設定することが好ましい。
【0058】
線分S3は、以下の式(3)で表わされる直線である。
【0059】
V=LG …(3)
式(3)において、Vは、制御弁9の開度[%]であり、LGは、第二流量域A2における制御弁9の最大開度よりも大きい値である。つまり、第三流量域A3では、第一流量検出部8により第一流量を正確に検出することができない。そこで、第三流量域A3では、エラー防止の観点から、制御弁9の開度を、第二流量域A2における制御弁9の最大開度よりも高い開度で固定しておく。
【0060】
このように、本実施形態では、液体供給管4に供給された液体Lは、分岐部13により中空糸膜モジュール2に供給される液体Lと中空糸膜モジュール2をバイパスする液体Lとに分配される。中空糸膜モジュール2では、中空糸膜21を透過した調整ガスGが液体Lに溶解されて、液体Lに調整ガスGが溶解した調整ガス付加液体L1が生成される。中空糸膜モジュール2で生成された調整ガス付加液体と中空糸膜モジュール2をバイパスした液体Lとは、合流部14で合流して比抵抗値調整液体L2となり、液体排出管7に排出される。
【0061】
そして、液体供給管4に供給される液体Lの第一流量に応じて、モジュール経由管5を開閉する制御弁9の開度が設定される。このため、液体供給管4に供給される液体Lが小流量になった場合に、制御弁9の開度を大きくすることで、中空糸膜モジュール2に供給される液体Lの流量を大きくすることができる。つまり、液体Lが低流量になっても、中空糸膜モジュール2に供給される液体Lの流量と中空糸膜モジュール2をバイパスする液体Lの流量との分配比率が変わるのを抑制することができる。これにより、規模の拡大を抑制しつつ、液体Lが低流量になっても液体Lの比抵抗値が上昇するのを抑制することができる。
【0062】
しかも、液体供給管4に供給される液体Lの第一流量を変更する場合は、変更後の第一流量に応じて制御弁9の開度が設定されるため、第一流量の変更に伴う液体Lの比抵抗値の変動を抑制することができる。特に、液体供給管4に供給される液体Lの第一流量を小さく変更した場合は、中空糸膜モジュール2に液体Lが供給されにくくなるが、この場合でも、第一流量の変更に伴い液体Lの比抵抗値が上昇するのを抑制することができる。
【0063】
ところで、制御弁9の圧力損失が大きい場合、供給側モジュール経由管5Aに制御弁9を取り付けると、中空糸膜モジュール2では、調整ガスGのガス圧に対して液体Lの液圧が小さくなり過ぎてバブリングが発生する可能性がある。そこで、排出側モジュール経由管5Bに制御弁9を取り付けることで、制御弁9の圧力損失が大きい場合であっても、中空糸膜モジュール2でバブリングが発生するのを抑制することができる。
【0064】
また、液体供給管4に供給される液体Lの流量と液体排出管7を流れる比抵抗値調整液体L2の流量とは同じであるため、第一流量検出部8は、第一流量として、液体供給管4を流れる液体Lの流量及び液体排出管7を流れる比抵抗値調整液体L2の流量の何れを検出してもよい。しかしながら、制御弁9が取り付けられる排出側モジュール経由管5Bは、液体供給管4よりも液体排出管7に近い位置に配置される。そこで、第一流量検出部8は、第一流量として、液体排出管7を流れる比抵抗値調整液体L2の流量を検出することで、第一流量検出部8と制御弁9とを接続する配線の規模を小さくすることができる。
【0065】
また、液体供給管4に供給される液体Lが低流量になって第一流量が設定流量以下になると、第一流量が設定流量よりも大きい場合に比べて、中空糸膜モジュール2に液体Lが供給されにくくなる。そこで、第一流量が設定流量以下である場合に、第一流量が設定流量よりも大きい場合に比べて、制御弁9の開度を大きくして中空糸膜モジュール2に供給される液体Lの流量を大きくする。これにより、第一流量が設定流量以下になっても、中空糸膜モジュール2に供給される液体Lの流量と中空糸膜モジュール2をバイパスする液体Lの流量との分配比率が変わるのを抑制することができる。
【0066】
また、液体供給管4に供給される液体Lが低流量になって第一流量が設定流量以下になると、第一流量が小さくなるほど中空糸膜モジュール2に液体Lが供給されにくくなる。そこで、第一流量が設定流量以下である場合に、第一流量が小さくなるほど、制御弁9の開度を大きくして中空糸膜モジュール2に供給される液体Lの流量を大きくする。これにより、第一流量が設定流量以下になっても、中空糸膜モジュール2に供給される液体Lの流量と中空糸膜モジュール2をバイパスする液体Lの流量との分配比率が変わるのを更に抑制することができる。
【0067】
また、第一流量が設定流量よりも大きい場合においても、第一流量が小さくなるほど中空糸膜モジュール2に液体Lが供給されにくくなる傾向にある。そこで、第一流量が設定流量よりも大きい場合に、第一流量が小さくなるほど、制御弁9の開度を大きくして中空糸膜モジュール2に供給される液体Lの流量を大きくする。これにより、第一流量が設定流量よりも大きい場合においても、中空糸膜モジュール2に供給される液体Lの流量と中空糸膜モジュール2をバイパスする液体Lの流量との分配比率が変わるのを抑制することができる。
【0068】
また、第一流量が小さくなるほど中空糸膜モジュール2に液体Lが供給されにくくなる傾向は、第一流量が設定流量以下になるほど大きくなる。そこで、第一流量が設定流量以下である場合に、第一流量が設定流量よりも大きい場合に比べて、第一流量の変化量に対する制御弁9の開度の変化量の割合を大きくする。これにより、中空糸膜モジュール2に供給される液体Lの流量と中空糸膜モジュール2をバイパスする液体Lの流量との分配比率が変わるのを更に抑制することができる。
【0069】
また、中空糸膜モジュール2により、調整ガス付加液体L1として、液体Lに調整ガスGが飽和状態で溶解された調整ガス飽和液体が生成される。これにより、中空糸膜モジュール2に供給される液体Lの流量と中空糸膜モジュール2をバイパスする液体Lの流量との分配比率を調整することのみで、液体Lの比抵抗値を高精度に調整することができる。
【0070】
(第二実施形態)
次に、第二実施形態について説明する。第二実施形態は、基本的に第一実施形態と同様であり、比抵抗調整装置に第二流量検出部を新たに備える点のみ、第一実施形態と相違する。このため、以下では、第一実施形態と相違する事項のみを説明し、第一実施形態と同様の事項の説明を省略する。
【0071】
図3は、第二実施形態の比抵抗値調整装置の模式図である。図3に示すように、本実施形態の比抵抗値調整装置1Aは、中空糸膜モジュール2と、ガス供給管3と、液体供給管4と、モジュール経由管5と、バイパス管6と、液体排出管7と、第一流量検出部8と、制御弁9と、制御部10と、第二流量検出部8Aと、を備える。
【0072】
第二流量検出部8Aは、モジュール経由管5を流れる液体の流量を、第二流量として検出する。ここで、供給側モジュール経由管5Aを流れる液体Lの流量と排出側モジュール経由管5Bを流れる調整ガス付加液体L1の流量とは同じである。このため、第二流量検出部8Aは、第二流量として、供給側モジュール経由管5Aを流れる液体Lの流量及び排出側モジュール経由管5Bを流れる調整ガス付加液体L1の流量の何れを検出してもよい。但し、中空糸膜モジュール2に供給する液体Lの液圧が下がるのを抑制する観点から、第二流量検出部8Aは、排出側モジュール経由管5Bに取り付けられて、排出側モジュール経由管5Bを流れる調整ガス付加液体L1の流量を検出することが好ましい。なお、図面では、第二流量検出部8Aは、排出側モジュール経由管5Bに取り付けられて、排出側モジュール経由管5Bを流れる調整ガス付加液体L1の流量を検出する場合を示している。そして、第二流量検出部8Aは、検出した第二流量の情報を制御部10に送信する。第二流量検出部8Aとしては、周知の様々な流量計を採用することができる。
【0073】
制御部10は、第二流量検出部8Aとも電気的に接続されている。そして、制御部10は、第二流量検出部8Aから送信された第二流量の情報(第二流量検出部8Aが検出した第二流量)に応じて、設定した制御弁9の開度を修正する。つまり、制御部10は、第一流量に応じて制御弁9の開度を設定すると、モジュール経由管5には、制御弁9の開度に対応した規定流量の液体Lが流れる。しかしながら、実際には、中空糸膜モジュール2の経年変化等により、モジュール経由管5を流れる液体Lの流量が、制御弁9の開度に対応した規定流量から乖離する場合がる。そこで、制御部10は、まず、第一流量に応じて制御弁9の開度を設定する。そして、制御部10は、モジュール経由管5を流れる液体Lの流量が制御弁9の開度に対応した規定流量から乖離しないように、第二流量に応じて制御弁9の開度を補正する。
【0074】
このように、本実施形態では、液体供給管4に供給される液体Lの第一流量に応じて制御弁9の開度を設定するとともに、モジュール経由管5を流れる液体の第二流量に応じて制御弁9の開度を補正するため、液体供給管4に供給される液体Lが低流量になっても、中空糸膜モジュール2に供給される液体Lの流量と中空糸膜モジュール2をバイパスする液体Lの流量との分配比率が変わるのを更に抑制することができる。
【0075】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態では、第一流量検出部8は、第一流量として、液体排出管7を流れる比抵抗値調整液体L2の流量を検出するものとして説明したが、第一流量として、液体供給管4を流れる液体Lの流量を検出するものとしてもよい。
【実施例】
【0076】
次に、本発明の実施例を説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0077】
(実施例1)
実施例1では、図1に示す第一実施形態の比抵抗値調整装置1を用いた。
【0078】
液体供給管4に供給する液体Lとしては、25[℃]における比抵抗値が18.2[MΩ・cm]の超純水を用いた。液体供給管4に供給する超純水の流量は、1〜15[L/min]の間で変動させた。一定流量を維持する流量維持時間は、30秒とし、段階的に当該流量を変動させた。液体供給管4に供給する超純水の水圧は、0.2[MPa]とした。
【0079】
ガス供給管3に供給する調整ガスGとしては、炭酸ガスを用いた。炭酸ガスの供給源には、7[m]の炭酸ガスボンベを用いた。圧力調整弁11として、二段式圧力調整器及びプレッシャーレギュレーティングバルブを用い、中空糸膜モジュール2の気相側領域に供給する炭酸ガスのガス圧を、0.1[MPa]とした。
【0080】
中空糸膜モジュール2として、ポリ−4−メチルペンテン−1を素材とする内径200[μm]、外径250[μm]の中空糸膜21を束にし、PP樹脂製のハウジング22内で、中空糸膜21の束の両端を樹脂で固め、0.5[m]の膜面積を有する外部灌流型の気体給気用中空糸モジュール(DIC(株)製 SEPAREL PF−001L)を得た。中空糸膜21の炭酸ガス透過速度は、3.5×10−5[cm/cm・sec・cmHg]であった。
【0081】
そして、液体供給管4に超純水を供給するとともに、ガス供給管3に炭酸ガスを供給した。液体供給管4に供給した超純水は、分岐部13により、供給側モジュール経由管5Aから中空糸膜モジュール2の液相側領域に供給される比較的小流量の流れと、中空糸膜モジュール2をバイパスしてバイパス管6に供給される比較的大流量の流れと、に分配された。ガス供給管3に供給した炭酸ガスは、圧力調整弁11により0.1[MPa]に調整された後、中空糸膜モジュール2の気相側領域に供給された。中空糸膜モジュール2では、炭酸ガスは、中空糸膜21を透過して液相側領域を流れる超純水に溶解され、超純水は、炭酸ガスが溶解された炭酸ガス付加超純水となった。中空糸膜モジュール2から排出側モジュール経由管5Bに排出された炭酸ガス付加超純水と、バイパス管6を流れる超純水とは、合流部14により合流されて目的とする比抵抗値調整超純水となり、液体排出管7に排出された。
【0082】
このとき、液体供給管4に供給する超純水の流量が15[L/min]のときに、比抵抗値調整超純水の比抵抗値が0.7[MΩ・cm]となるように、制御部10により制御弁9の開度を設定して、排出側モジュール経由管5Bを流れる炭酸ガス付加超純水の流量を調整した。そして、液体供給管4に供給する超純水の流量を段階的に減少させるとともに、第一流量に応じて制御弁9の開度を調整して、各流量における比抵抗値調整超純水の比抵抗値を計測した。
【0083】
(実施例2)
実施例2では、実施例1と同様に、図1に示す第一実施形態の比抵抗値調整装置1を用いた。
【0084】
この比抵抗値調整装置1において、液体供給管4に供給する超純水の流量が15[L/min]のときに、比抵抗値調整超純水の比抵抗値が0.5[MΩ・cm]となるように、制御部10により制御弁9の開度を設定して、排出側モジュール経由管5Bを流れる炭酸ガス付加超純水の流量を調整した。その他の条件は、実施例1と同一とした。そして、液体供給管4に供給する超純水の流量を段階的に減少させるとともに、第一流量に応じて制御弁9の開度を調整して、各流量における比抵抗値調整超純水の比抵抗値を計測した。
【0085】
(実施例3)
実施例3では、実施例1と同様に、図1に示す第一実施形態の比抵抗値調整装置1を用いた。
【0086】
この比抵抗値調整装置1において、液体供給管4に供給する超純水の流量が15[L/min]のときに、比抵抗値調整超純水の比抵抗値が0.3[MΩ・cm]となるように、制御部10により制御弁9の開度を設定して、排出側モジュール経由管5Bを流れる炭酸ガス付加超純水の流量を調整した。その他の条件は、実施例1と同一とした。そして、液体供給管4に供給する超純水の流量を段階的に減少させるとともに、第一流量に応じて制御弁9の開度を調整して、各流量における比抵抗値調整超純水の比抵抗値を計測した。
【0087】
(比較例1)
比較例1では、図4に示す比抵抗値調整装置31を用いた。
【0088】
比抵抗値調整装置31は、基本的に比抵抗値調整装置1(図1参照)と同様であり、第一流量検出部8、制御弁9、及び制御部10の代わりに流量調整バルブ32を備える点のみ、比抵抗値調整装置1と相違する。流量調整バルブ32は、供給側モジュール経由管5Aの流路を開閉するとともに、その開度を手動で調整する流量調整バルブである。このため、流量調整バルブ32は、供給側モジュール経由管5Aを流れる液体Lの流量を手動で調整する。
【0089】
この比抵抗値調整装置31において、実施例1と同様に、液体供給管4に供給する超純水の流量が15[L/min]のときに、比抵抗値調整超純水の比抵抗値が0.7[MΩ・cm]となるように、流量調整バルブ32で供給側モジュール経由管5Aを流れる超純水の流量を調整した。その他の条件は、実施例1と同一とした。そして、液体供給管4に供給する超純水の流量を段階的に減少させて、各流量における比抵抗値調整超純水の比抵抗値を計測した。
【0090】
(比較例2)
比較例2では、比較例1と同様に、図4に示す比抵抗値調整装置31を用いた。
【0091】
この比抵抗値調整装置31において、液体供給管4に供給する超純水の流量が15[L/min]のときに、比抵抗値調整超純水の比抵抗値が0.5[MΩ・cm]となるように、流量調整バルブ32で供給側モジュール経由管5Aを流れる超純水の流量の流量を調整した。その他の条件は、実施例1と同一とした。そして、液体供給管4に供給する超純水の流量を段階的に減少させて、各流量における比抵抗値調整超純水の比抵抗値を計測した。
【0092】
(比較例3)
比較例3では、比較例1と同様に、図4に示す比抵抗値調整装置31を用いた。
【0093】
この比抵抗値調整装置31において、液体供給管4に供給する超純水の流量が15[L/min]のときに、比抵抗値調整超純水の比抵抗値が0.3[MΩ・cm]となるように、流量調整バルブ32で供給側モジュール経由管5Aを流れる超純水の流量の流量を調整した。その他の条件は、実施例1と同一とした。そして、液体供給管4に供給する超純水の流量を段階的に減少させて、各流量における比抵抗値調整超純水の比抵抗値を計測した。
【0094】
(評価1)
図5に、実施例1及び比較例1の計測結果を示し、図6に、実施例2及び比較例2の計測結果を示し、図7に、実施例3及び比較例3の計測結果を示す。図5図7において、横軸は、液体供給管4に供給する超純水の流量を示しており、縦軸は、比抵抗値調整超純水の比抵抗値を示している。
【0095】
図5図7に示すように、超純水の流量が大流量である場合は、実施例1〜3と比較例1〜3とで、比抵抗値に大きな違いは無かった。一方、超純水の流量が小流量になるほど、比較例1〜3では、比抵抗値が大きく上昇したのに対し、実施例1〜3では、比抵抗値が上昇するのが抑制された。
【0096】
このような結果から、液体供給管4に供給する超純水の流量に応じて制御弁9の開度を設定することで、超純水が低流量になっても超純水の比抵抗値が上昇するのを抑制することができることが分かった。
【0097】
(実施例4)
実施例4では、実施例1と同様に、図1に示す第一実施形態の比抵抗値調整装置1を用いた。
【0098】
この比抵抗値調整装置1において、液体供給管4に供給する超純水の流量が15[L/min]のときに、比抵抗値調整超純水の比抵抗値が0.7[MΩ・cm]となるように、制御部10により制御弁9の開度を設定して、排出側モジュール経由管5Bを流れる炭酸ガス付加超純水の流量を調整した。その他の条件は、実施例1と同一とした。
【0099】
そして、液体供給管4に供給する超純水の流量を、3分おきに15[L/min]と1[L/min]との間で変化させて、時間の経過に伴う比抵抗値調整超純水の比抵抗値の変化を計測した。
【0100】
(実施例5)
実施例5では、実施例1と同様に、図1に示す第一実施形態の比抵抗値調整装置1を用いた。
【0101】
この比抵抗値調整装置1において、液体供給管4に供給する超純水の流量が15[L/min]のときに、比抵抗値調整超純水の比抵抗値が0.5[MΩ・cm]となるように、制御部10により制御弁9の開度を設定して、排出側モジュール経由管5Bを流れる炭酸ガス付加超純水の流量を調整した。その他の条件は、実施例1と同一とした。
【0102】
そして、液体供給管4に供給する超純水の流量を、3分おきに15[L/min]と1[L/min]との間で変化させて、時間の経過に伴う比抵抗値調整超純水の比抵抗値の変化を計測した。
【0103】
(実施例6)
実施例6では、実施例1と同様に、図1に示す第一実施形態の比抵抗値調整装置1を用いた。
【0104】
この比抵抗値調整装置1において、液体供給管4に供給する超純水の流量が15[L/min]のときに、比抵抗値調整超純水の比抵抗値が0.3[MΩ・cm]となるように、制御部10により制御弁9の開度を設定して、排出側モジュール経由管5Bを流れる炭酸ガス付加超純水の流量を調整した。その他の条件は、実施例1と同一とした。
【0105】
そして、液体供給管4に供給する超純水の流量を、3分おきに15[L/min]と1[L/min]との間で変化させて、時間の経過に伴う比抵抗値調整超純水の比抵抗値の変化を計測した。
【0106】
(比較例4)
比較例4では、比較例1と同様に、図4に示す比抵抗値調整装置31を用いた。
【0107】
この比抵抗値調整装置31において、実施例4と同様に、液体供給管4に供給する超純水の流量が15[L/min]のときに、比抵抗値調整超純水の比抵抗値が0.7[MΩ・cm]となるように、流量調整バルブ32で供給側モジュール経由管5Aを流れる超純水の流量を調整した。その他の条件は、実施例1と同一とした。そして、液体供給管4に供給する超純水の流量を、3分おきに15[L/min]と1[L/min]との間で変化させて、時間の経過に伴う比抵抗値調整超純水の比抵抗値の変化を計測した。
【0108】
(比較例5)
比較例5では、比較例1と同様に、図4に示す比抵抗値調整装置31を用いた。
【0109】
この比抵抗値調整装置31において、実施例5と同様に、液体供給管4に供給する超純水の流量が15[L/min]のときに、比抵抗値調整超純水の比抵抗値が0.5[MΩ・cm]となるように、流量調整バルブ32で供給側モジュール経由管5Aを流れる超純水の流量を調整した。その他の条件は、実施例1と同一とした。そして、液体供給管4に供給する超純水の流量を、3分おきに15[L/min]と1[L/min]との間で変化させて、時間の経過に伴う比抵抗値調整超純水の比抵抗値の変化を計測した。
【0110】
(比較例6)
比較例6では、比較例1と同様に、図4に示す比抵抗値調整装置31を用いた。
【0111】
この比抵抗値調整装置31において、実施例6と同様に、液体供給管4に供給する超純水の流量が15[L/min]のときに、比抵抗値調整超純水の比抵抗値が0.3[MΩ・cm]となるように、流量調整バルブ32で供給側モジュール経由管5Aを流れる超純水の流量を調整した。その他の条件は、実施例1と同一とした。そして、液体供給管4に供給する超純水の流量を、3分おきに15[L/min]と1[L/min]との間で変化させて、時間の経過に伴う比抵抗値調整超純水の比抵抗値の変化を計測した。
【0112】
(評価2)
図8に、実施例4の計測結果を示し、図9に、比較例4の計測結果を示し、図10に、実施例5の計測結果を示し、図11に、比較例5の計測結果を示し、図12に、実施例6の計測結果を示し、図13に、比較例6の計測結果を示す。図8(a)、図9(a)、図10(a)、図11(a)、図12(a)及び図13(a)は、経過時間と比抵抗値との関係を示している。図8(a)、図9(a)、図10(a)、図11(a)、図12(a)及び図13(a)において、横軸は、計測を開始してからの経過時間を示しており、縦軸は、比抵抗値調整超純水の比抵抗値を示している。図8(b)、図9(b)、図10(b)、図11(b)、図12(b)及び図13(b)は、経過時間と流量との関係を示している。図8(b)、図9(b)、図10(b)、図11(b)、図12(b)及び図13(b)において、横軸は、計測を開始してからの経過時間を示しており、縦軸は、液体供給管4に供給する超純水の流量を示している。
【0113】
図9図11及び図13に示すように、比較例4〜6では、液体供給管4に供給する超純水の流量を15[L/min]から1[L/min]に変えると、比抵抗値が大きく上昇した。しかも、液体供給管4に供給する超純水の流量を15[L/min]から1[L/min]に変えた後、比抵抗値が安定するまでに長時間を要した。
【0114】
図8図10及び図12に示すように、実施例4〜6では、液体供給管4に供給する超純水の流量を15[L/min]から1[L/min]に変えても、比抵抗値が殆ど上昇しなかった。一方、液体供給管4に供給する超純水の流量を1[L/min]から15[L/min]に変えると、比抵抗値が上昇した。しかしながら、この上昇の程度は、比較例4〜6において液体供給管4に供給する超純水の流量を15[L/min]から1[L/min]に変えた場合の比抵抗値の上昇の程度に比べて、かなり小さいものとなった。また、液体供給管4に供給する超純水の流量を1[L/min]から15[L/min]に変えた後、短時間で比抵抗値が安定した。
【0115】
このような結果から、液体供給管4に供給する超純水の流量に応じて制御弁9の開度を設定することで、液体供給管4に供給する超純水の流量の変更に伴い超純水の比抵抗値が上昇するのを抑制することができることが分かった。
【符号の説明】
【0116】
1…比抵抗値調整装置、1A…比抵抗値調整装置、2…中空糸膜モジュール、3…ガス供給管、4…液体供給管、5…モジュール経由管、5A…供給側モジュール経由管、5B…排出側モジュール経由管、6…バイパス管、7…液体排出管、8…第一流量検出部、8A…第二流量検出部、9…制御弁、10…制御部、11…圧力調整弁、12…圧力計、13…分岐部、14…合流部、21…中空糸膜、22…ハウジング、23…ガス供給口、24…液体供給口、25…液体排出口、31…比抵抗値調整装置、32…流量調整バルブ、A1…第一流量域、A2…第二流量域、A3…第三流量域、G…調整ガス、L…液体、L1…調整ガス付加液体、L2…比抵抗値調整液体。
図1
図2
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