【実施例】
【0034】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明する。なお、本発明はこれらの実施例にのみ限定されるものではない。
「実施例1」
以下に示す方法により、
図1に示す薄膜トランジスタ10を形成し、評価した。
まず、ゲート電極2を兼ねた基板1として、高ドープシリコン基板を用意し、表面のシリコンを熱酸化することにより、厚さ100nmのSiO
2熱酸化膜からなるゲート絶縁膜3を形成した。
【0035】
その後、ゲート絶縁膜3の上に、スパッタ法により、WO
3を5.0質量%、ZnOを0.5質量%、In
2O
3を94.5質量%含む酸化インジウムタングステン亜鉛で形成された厚さ30nmの酸化物半導体層4を形成した。スパッタは、印加電力を高周波(RF)で100Wとし、成膜時のガス流量を、Arガスを18.0sccm、O
2ガスを2.0sccmとして行った。
【0036】
次に、酸化物半導体層4上に、メタルマスクを用いて、
図1に示すソース電極5およびドレイン電極6を形成した。ソース電極5およびドレイン電極6としては、厚さ10nmのMo合金層と、厚さ30nmのAl層と、厚さ10nmのMo合金層とが、下から順に積層された3層構造のものを形成した。Mo合金層は、MTD−46(商品名:日立金属株式会社製)を用いて形成した。Al層は、一般的な材料を用いて形成した。
【0037】
次に、ソース電極5およびドレイン電極6までの各層の形成された基板1に対して、ホットプレートを用いて、大気中で200℃、1時間の熱処理を行った。
【0038】
以上の工程により、実施例1の薄膜トランジスタを得た。なお、実施例1の薄膜トランジスタは、チャネル長が200μm、チャネル幅が1000μmとなるように作製した。
このようにして得られた実施例1の薄膜トランジスタについて、半導体パラメータアナライザを用いて、ゲート電圧−ドレイン電流特性の測定を行った。ゲート電圧−ドレイン電流特性は、ソース電極に0V、ドレイン電極にドレイン電圧として10Vを印加し、ゲート電極に加えるゲート電圧を変化させて、その時のドレイン電流を測定した。その結果を
図4に示す。
【0039】
図4は、実施例1の薄膜トランジスタのゲート電圧−ドレイン電流特性を示したグラフである。実施例1の薄膜トランジスタは、
図4に示すように、良好なトランジスタ特性を有するものであった。また、実施例1の薄膜トランジスタは、移動度が16.5cm
2/Vsであり、高い移動度を有するものであった。
【0040】
「実施例2」
実施例1と同様にして形成したゲート絶縁膜3の上に、スパッタ法により、WO
3を10.0質量%、ZnOを0.5質量%、In
2O
3を89.5質量%含む酸化インジウムタングステン亜鉛で形成された厚さ10nmの酸化物半導体層4を形成した。スパッタは、印加電力を高周波(RF)で100Wとし、成膜時のガス流量を、Arガスを19.6sccm、O
2ガスを0.4sccmとして行った。
【0041】
次いで、実施例1と同様にして酸化物半導体層4上に、ソース電極5およびドレイン電極6を形成した。
その後、ソース電極5およびドレイン電極6までの各層の形成された基板1に対して、ホットプレートを用いて、大気中で250℃、1時間の熱処理を行った。
【0042】
以上の工程により、実施例2の薄膜トランジスタを得た。なお、実施例2の薄膜トランジスタは、実施例1の薄膜トランジスタと同様に、チャネル長が200μm、チャネル幅が1000μmとなるように作製した。
このようにして得られた実施例2の薄膜トランジスタについて、実施例1と同様にして、ゲート電圧−ドレイン電流特性の測定を行った。その結果を
図5に示す。
【0043】
図5は、実施例2の薄膜トランジスタのゲート電圧−ドレイン電流特性を示したグラフである。実施例2の薄膜トランジスタは、
図5に示すように、良好なトランジスタ特性を有するものであった。また、実施例2の薄膜トランジスタは、移動度が17.0cm
2/Vsであり、高い移動度を有するものであった。
【0044】
「実施例3」
実施例1と同様にして形成したゲート絶縁膜3の上に、スパッタ法により、WO
3を15.0質量%、ZnOを0.5質量%、In
2O
3を84.5質量%含む酸化インジウムタングステン亜鉛で形成された厚さ10nmの酸化物半導体層4を形成した。スパッタは、印加電力を高周波(RF)で100Wとし、成膜時のガス流量を、Arガスを19.6sccm、O
2ガスを0.4sccmとして行った。
その後、酸化物半導体層4の形成された基板1に対して、ホットプレートを用いて、大気中で300℃、1時間の熱処理を行った。
【0045】
次いで、実施例1と同様にして酸化物半導体層4上に、ソース電極5およびドレイン電極6を形成した。
その後、ソース電極5およびドレイン電極6までの各層の形成された基板1に対して、ホットプレートを用いて、大気中で250℃、1時間の熱処理を行った。
【0046】
以上の工程により、実施例3の薄膜トランジスタを得た。なお、実施例3の薄膜トランジスタは、実施例1の薄膜トランジスタと同様に、チャネル長が200μm、チャネル幅が1000μmとなるように作製した。
このようにして得られた実施例3の薄膜トランジスタについて、実施例1と同様にして、ゲート電圧−ドレイン電流特性の測定を行った。その結果を
図6に示す。
【0047】
図6は、実施例3の薄膜トランジスタのゲート電圧−ドレイン電流特性を示したグラフである。実施例3の薄膜トランジスタは、
図6に示すように、良好なトランジスタ特性を有するものであった。また、実施例3の薄膜トランジスタは、移動度が10.5cm
2/Vsであり、高い移動度を有するものであった。
【0048】
「実施例4」
実施例1と同様にして形成したゲート絶縁膜3の上に、スパッタ法により、WO
3を12.5質量%、ZnOを0.5質量%、In
2O
3を87.0質量%含む酸化インジウムタングステン亜鉛で形成された厚さ10nmの酸化物半導体層4を形成した。スパッタは、印加電力を高周波(RF)で100Wとし、成膜時のガス流量を、Arガスを19.6sccm、O
2ガスを0.4sccmとして行った。
【0049】
次いで、実施例1と同様にして酸化物半導体層4上に、ソース電極5およびドレイン電極6を形成した。
その後、ソース電極5およびドレイン電極6までの各層の形成された基板1に対して、ホットプレートを用いて、大気中で250℃、1時間の熱処理を行った。
【0050】
以上の工程により、実施例4の薄膜トランジスタを得た。なお、実施例4の薄膜トランジスタは、実施例1の薄膜トランジスタと同様に、チャネル長が200μm、チャネル幅が1000μmとなるように作製した。
このようにして得られた実施例4の薄膜トランジスタについて、ドレイン電圧として20Vを印加したこと以外は、実施例1と同様にして、ゲート電圧−ドレイン電流特性の測定を行った。その結果を
図7に示す。
【0051】
図7は、実施例4の薄膜トランジスタのゲート電圧−ドレイン電流特性を示したグラフである。実施例4の薄膜トランジスタは、
図7に示すように、良好なトランジスタ特性を有するものであった。また、実施例4の薄膜トランジスタは、移動度が16.1cm
2/Vsであり、高い移動度を有するものであった。
【0052】
「実施例5」
以下に示す方法により、
図1に示す薄膜トランジスタ10を形成し、評価した。
まず、ゲート電極2を兼ねた基板1として、高ドープシリコン基板を用意し、表面のシリコンを熱酸化することにより、厚さ100nmのSiO
2熱酸化膜からなるゲート絶縁膜3を形成した。
【0053】
その後、ゲート絶縁膜3の上に、スパッタ法により、WO
3を15.0質量%、ZnOを0.5質量%、In
2O
3を84.5質量%含む酸化インジウムタングステン亜鉛で形成された厚さ10nmの酸化物半導体層4を形成した。スパッタは、印加電力を高周波(RF)で100Wとし、成膜時のガス流量を、Arガスを19.6sccm、O
2ガスを0.4sccmとして行った。
その後、酸化物半導体層4の形成された基板1に対して、ホットプレートを用いて、大気中で300℃、1時間の熱処理を行った。
【0054】
次に、
図2に示すように、酸化物半導体層4上に、ソース電極5およびドレイン電極6となる電極層51を形成した。電極層51としては、厚さ10nmのMo合金層と、厚さ30nmのAl層と、厚さ10nmのMo合金層とが、下から順に積層された3層構造のものを形成した。Mo合金層は、MTD−46(商品名:日立金属株式会社製)を用いて形成した。Al層は、一般的な材料を用いて形成した。
【0055】
次に、
図3に示すように、電極層51上に、公知の方法を用いて所定の形状にパターニングされたマスク52を形成した。続いて、電極層51の一部を酸化物半導体層4の一部が露出するまでウェットエッチングにより除去した。エッチング液としては、関東化学株式会社製の混酸Alエッチング液を用いた。
その後、マスク52を除去することにより、所定の形状を有するソース電極5およびドレイン電極6を得た。
次に、ソース電極5およびドレイン電極6までの各層の形成された基板1に対して、ホットプレートを用いて、大気中で200℃、1時間の熱処理を行った。
【0056】
以上の工程により、実施例5の薄膜トランジスタを得た。なお、実施例5の薄膜トランジスタは、チャネル長が100μm、チャネル幅が1000μmとなるように作製した。
このようにして得られた実施例5の薄膜トランジスタについて、実施例4と同様にして、ゲート電圧−ドレイン電流特性の測定を行った。その結果を
図8に示す。
【0057】
図8は、実施例5の薄膜トランジスタのゲート電圧−ドレイン電流特性を示したグラフである。実施例5の薄膜トランジスタは、
図8に示すように、良好なトランジスタ特性を有するものであった。また、実施例5の薄膜トランジスタは、移動度が11.0cm
2/Vsであり、高い移動度を有するものであった。
【0058】
実施例1〜実施例5の結果から、本発明の薄膜トランジスタは、ガリウムを含まない酸化物半導体層を有するものであり、しかも10.0cm
2/Vs以上の高い移動度が得られるものであることが確認できた。