特許第6501596号(P6501596)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ADEKAの特許一覧 ▶ ADEKAクリーンエイド株式会社の特許一覧

特許6501596ベルトコンベア用潤滑剤組成物、及びベルトコンベアの潤滑性付与方法
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6501596
(24)【登録日】2019年3月29日
(45)【発行日】2019年4月17日
(54)【発明の名称】ベルトコンベア用潤滑剤組成物、及びベルトコンベアの潤滑性付与方法
(51)【国際特許分類】
   C10M 173/02 20060101AFI20190408BHJP
   C10M 161/00 20060101ALI20190408BHJP
   C10M 149/14 20060101ALN20190408BHJP
   C10M 135/36 20060101ALN20190408BHJP
   C10M 145/36 20060101ALN20190408BHJP
   C10M 133/06 20060101ALN20190408BHJP
   C10N 30/00 20060101ALN20190408BHJP
   C10N 40/00 20060101ALN20190408BHJP
【FI】
   C10M173/02
   C10M161/00
   !C10M149/14
   !C10M135/36
   !C10M145/36
   !C10M133/06
   C10N30:00 Z
   C10N30:00 B
   C10N40:00 Z
【請求項の数】10
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2015-79777(P2015-79777)
(22)【出願日】2015年4月9日
(65)【公開番号】特開2016-199655(P2016-199655A)
(43)【公開日】2016年12月1日
【審査請求日】2018年3月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000387
【氏名又は名称】株式会社ADEKA
(73)【特許権者】
【識別番号】593085808
【氏名又は名称】ADEKAクリーンエイド株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077573
【弁理士】
【氏名又は名称】細井 勇
(74)【代理人】
【識別番号】100126413
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 太亮
(72)【発明者】
【氏名】海老根 和
(72)【発明者】
【氏名】草野 公雄
【審査官】 牟田 博一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−163784(JP,A)
【文献】 特開平10−158681(JP,A)
【文献】 特開2007−119557(JP,A)
【文献】 特開2012−153843(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10M 101/00〜177/00
C10N 10/00〜 80/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)成分としてグアニジン系除菌剤、
(B)成分としてベンズイソチアゾリン系除菌剤、
(C)成分としてノニオン界面活性剤
(D)成分として水、及び
(E)成分として両性界面活性剤、
を含有し、(A)成分と(B)成分の質量比が、(A)/(B)=0.05〜400であり
(A)成分と(C)成分の質量比が、(A)/(C)=0.01〜20であり、かつ
(A)成分と(E)成分の質量比が、(A)/(E)=0.05〜5であり、
pH4〜pH7であることを特徴とするベルトコンベア用潤滑剤組成物。
【請求項2】
(A)成分がポリヘキサメチレンビグアナイド塩酸塩、ポリヘキサメチレンビグアナイドリン酸塩、ポリヘキサメチレングアニジン塩酸塩、ポリヘキサメチレングアニジンリン酸塩から選ばれる1種以上のグアニジン系除菌剤である請求項1記載のベルトコンベア用潤滑剤組成物。
【請求項3】
(B)成分が1、2−ベンズイソチアゾリン−3−オンである請求項1又は2記載のベルトコンベア用潤滑剤組成物。
【請求項4】
(C)成分のノニオン界面活性剤が炭素数10〜22の脂肪族アルコールに酸化エチレン及び/又は酸化プロピレンを付加して生成されるポリオキシアルキレンエーテル型ノニオン界面活性剤である請求項1〜3の何れか1項に記載のベルトコンベア用潤滑剤組成物。
【請求項5】
(C)成分のノニオン界面活性剤がラウリルアルコールもしくはオレイルアルコールに酸化エチレン及び酸化プロピレンを付加して生成されるポリオキシアルキレンアルキルエーテル型ノニオン界面活性剤であり、ポリオキシアルキレン基中のオキシエチレン基の含有量が80〜95モル%である請求項4に記載のベルトコンベア用潤滑剤組成物。
【請求項6】
(C)成分のノニオン界面活性剤が、ポリオキシアルキレン基の重合度が40〜100モルであり、該ポリオキシアルキレン基中のオキシエチレン基の含有量が80〜95モル%である請求項4又は5に記載のベルトコンベア用潤滑剤組成物。
【請求項7】
(E)成分の両性界面活性剤が、アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン、アルキルアミドプロピルベタイン、アルキルアミノモノプロピオン酸及び/又はその塩、アルキルアミノジプロピオン酸及び/又はその塩、2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、2−アルキル−N−カルボキシエチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、アルキルアミノエチルグリシン及び/又はその塩、アルキルジアミノエチルグリシン及び/又はその塩、アルキルポリアミノエチルグリシン及び/又はその塩、グリシンN−(3−アミノプロピル)−C10〜16アルキル誘導体、及びアルキルヒドロキシスルホベタインから選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載のベルトコンベア用潤滑剤組成物。
【請求項8】
上記請求項1〜7の何れかに記載のベルトコンベア用潤滑剤組成物の(A)成分の濃度を0.001〜0.05質量%とした処理液を、被搬送物を搬送するベルトコンベアのベルト上及び/又は被搬送物上に供給して潤滑性を付与することを特徴とするベルトコンベアの潤滑性付与方法。
【請求項9】
処理液を、ホローコーン、フルコーン、フラットスプレー、広角スプレー又は微細スプレーから選択されるスプレーノズル又はジェットノズルを使用して噴霧して供給する請求項8記載のベルトコンベアの潤滑性付与方法。
【請求項10】
被搬送物が、炭酸飲料を充填したPETボトルである請求項8又は9に記載のベルトコンベアの潤滑性付与方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンベア用潤滑剤組成物に関し、更に詳しくは、牛乳、ビール、酒、清涼飲料等の飲料類のビン詰め工程、缶詰め工程等の容器詰め工程に使用されるベルトコンベア用潤滑剤組成物、特に、コンベア稼働の際の潤滑性に優れることは勿論のこと、一般細菌やカチオン系除菌剤に対して抵抗性を持つ菌への除菌効果、抑制効果、長期保存安定性に優れ、且つ、炭酸飲料入りペットボトルへの影響を低減したベルトコンベア用潤滑剤組成物に関する。また本発明は、この潤滑剤組成物を使用したベルトコンベアの潤滑性付与方法に関する。
【背景技術】
【0002】
飲用水、清涼飲料、牛乳、ジュース、酒類、ドリンク剤等の容器には、ポリエチレンテレフタレート等のプラスチック製容器、紙製容器、金属製容器、ガラス製容器、セラミック製容器等が使用されるが、飲料製造工場におけるこれら容器への充填や包装工程において、連続的に大量の容器を移動搬送するために一般的にベルトコンベアが使用されている。このような工場においては、ベルトコンベアを連続運転させ、容器等の被搬送物を高速搬送することが一般的であるが、このとき容器同士あるいは容器とベルトコンベアとの接触面に発生する摩擦により、容器の変形や容器の転倒等が起こる場合があり、こうした障害を防ぐために潤滑剤をベルトコンベア上等に塗布あるいは噴霧して、容器等の被搬送物とベルトコンベアとの間の摩擦係数を下げることが一般的である。
【0003】
ベルトコンベア用潤滑剤は、通常、界面活性剤を含むため、ベルト表面上に泡が発生し易く、ベルト上の泡が容器に付着することがあるが、泡の付着は容器の外観を見苦しいものとする。しかも容器がビンの場合、空ビンや実ビン検査機でビンの破損状態や洗浄不良、更には内容量不足等を検査するのが通例であり、このときビンに泡が付着していると泡がビンの破損や汚れ等として誤って検出される恐れがある。そのため、ベルトコンベア用潤滑剤は、潤滑性に優れるのみならず、抑泡性にも優れることが望まれている。
【0004】
また、衛生上の問題から、この種のコンベアには雑菌汚染の防止が要求されている。そのため潤滑剤と共に、雑菌汚染防止のために除菌剤が併用されている。しかしながら、塩素系除菌成分を併用した場合、塩素成分による潤滑成分の酸化分解等の各種反応が起こり、固形物などの汚染物を発生したり、除菌効果が損なわれたり、あるいは潤滑効果、抑泡効果が低下するなどの問題を生じている。そのため、除菌剤と併用しても何ら問題を生じず、除菌効果、潤滑効果、抑泡効果を損なわないベルトコンベア用潤滑剤、あるいは優れた除菌効果を持つベルトコンベア用潤滑剤が必要とされている。
【0005】
除菌成分を含有したベルトコンベア用潤滑剤として、特許文献1には、カチオン界面活性剤と高級脂肪酸石鹸とを用いた例が、特許文献2には、第四級アンモニウム型カチオン界面活性剤とポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステルを用いた例等が提案されている。
【0006】
しかしながら、従来の除菌成分として用いられているカチオン系除菌剤に対する抵抗性菌が出現することにより、ベルト上を汚染していることが現状である。カチオン系除菌剤に抵抗性のある菌としては、アルカリゲネス属の細菌、バークホルデリア属の細菌、エンテロバクター属の細菌、クレブシエラ属の細菌、MRSA、シュードモナス属の細菌、スタフィロコッカス属の細菌、セラチア属の細菌、エルウィニア属の細菌、フラボバクテリウム属の細菌、プロテウス属の細菌、及びキサントモナス属の細菌(非特許文献1を参照)が挙げられる。
【0007】
このため、カチオン系除菌剤に対する抵抗性菌を除菌又は抑制できる効果を有するベルトコンベア用潤滑剤として、特許文献3には、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンとカチオン界面活性剤、水を用いた例が提案されている。また特許文献4には、HLBが16を超えるポリエチレングリコール型ノニオン界面活性剤と、水と、カチオン界面活性剤及び/又は両性界面活性剤を含有し、非イオン界面活性剤と、カチオン界面活性剤及び/又は両性界面活性剤との割合を特定の範囲としたベルトコンベア用潤滑剤が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平1−96294号公報
【特許文献2】特開平2−97592号公報
【特許文献3】特開2009−96997号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】仲川義人:ICTにおける薬剤師の役割 医療機関における院内感染対策の基盤整備に関する緊急特別研究.主任研究者 賀来満夫、厚生労働科学特別研究事業 平成15年度総括分担研究報告書pp.41−48, 2004(平成16年4月)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献3記載の除菌性潤滑剤組成物に含まれる5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンは、アレルギー反応等人体に悪影響を引き起こすだけでなく、産業排水中のAOX値(有機塩素等の濃度)を高めるため、産業排水規制の観点から、その使用が望まれない等の欠点がある。さらに、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンは、長期間にわたって保存すると分解してしまい、使用時に優れた除菌効果を得ることができないという不具合がある。
【0011】
近年、飲料類の容器類は、PETボトルが特に好んで使用されているが、コンベア用潤滑剤がPETボトルに付着すると、PETボトルの表面に細い線状のヒビ(クレージング)が入ったり、さらに進んで割れ(クラック)が発生する問題があった。特に炭酸飲料等をPETボトルに充填した場合に、保存時等にストレスクラックが発生し、PETボトルの破裂等を発生する問題があるため、PET材質への影響が少ないコンベア潤滑剤が必要とされている。特許文献4に記載されているコンベア用潤滑剤組成物は、PETボトルのストレスクラック防止性や潤滑性には優れているが、泡立ちが大きく、運転しているベルトコンベアに長時間適用していると蓄積した泡によるトラブルが発生する場合があった。すなわちベルトコンベア下部に設置された排水ピット等から泡があふれて製造ラインの床を汚染し、また容器に泡が付着すると外観検査機器による自動検査で泡を汚れとして誤検知してしまうなどの問題、及びカチオン系除菌剤に対する抵抗性菌の増殖により、コンベアが著しく汚れてしまう問題があった。
【0012】
従って、本発明は、このような不具合に鑑みなされたもので、その目的とするところは、カチオン系除菌剤に対する抵抗性菌を除菌又は抑制でき、長期間にわたって保存しても分解が際立って少なく、優れた除菌効果、抑泡効果、炭酸飲料入りPETボトルに対するストレスクラック等の悪影響性を低減することのできるベルトコンベア用潤滑剤組成物及びこの潤滑剤組成物を用いたベルトコンベアの潤滑性付与方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、本発明者等は鋭意検討した結果、(A)成分として、グアニジン系除菌剤、(B)成分としてベンズイソチアゾリン系除菌剤、(C)成分としてノニオン界面活性剤、(D)成分として水を含有し、(A)成分に対する(B)成分、(C)成分の質量比を特定の範囲としたベルトコンベア用潤滑剤組成物が、潤滑性に優れ、カチオン系除菌剤に対する抵抗性菌を除菌又は抑制でき、長期間にわたって保存しても分解が際立って少なく、優れた除菌効果を保持し、泡立ちも少なく、さらに炭酸飲料を充填し内圧負荷のかかったPETボトルに接触した際でも、ボトルへの亀裂やひび割れ発生が抑制されることを発見し、本発明を完成するに至った。
【0014】
即ち本発明は、
(1)(A)成分としてグアニジン系除菌剤、
(B)成分としてベンズイソチアゾリン系除菌剤、
(C)成分としてノニオン界面活性剤
(D)成分として水、及び
(E)成分として両性界面活性剤
を含有し、(A)成分と(B)成分の質量比が、(A)/(B)=0.05〜400であり
(A)成分と(C)成分の質量比が、(A)/(C)=0.01〜20であり、かつ
(A)成分と(E)成分の質量比が、(A)/(E)=0.05〜5であり、
pH4〜pH7以下であることを特徴とするベルトコンベア用潤滑剤組成物、
(2)(A)成分がポリヘキサメチレンビグアナイド塩酸塩、ポリヘキサメチレンビグアナイドリン酸塩、ポリヘキサメチレングアニジン塩酸塩、ポリヘキサメチレングアニジンリン酸塩から選ばれる1種以上のグアニジン系除菌剤である上記(1)のベルトコンベア用潤滑剤組成物、
(3)(B)成分が1、2−ベンズイソチアゾリン−3−オンである上記(1)又は(2)のベルトコンベア用潤滑剤組成物、
(4)(C)成分のノニオン界面活性剤が炭素数10〜22の脂肪族アルコールに酸化エチレン及び/又は酸化プロピレンを付加して生成されるポリオキシアルキレンエーテル型ノニオン界面活性剤である上記(1)〜(3)の何れかのベルトコンベア用潤滑剤組成物、
(5)(C)成分のノニオン界面活性剤がラウリルアルコールもしくはオレイルアルコールに酸化エチレン及び酸化プロピレンを付加して生成されるポリオキシアルキレンアルキルエーテル型ノニオン界面活性剤であり、ポリオキシアルキレン基中のオキシエチレン基の含有量が80〜95モル%である上記(4)のベルトコンベア用潤滑剤組成物、
)(C)成分のノニオン界面活性剤が、ポリオキシアルキレン基の重合度が40〜100モルであり、該ポリオキシアルキレン基中のオキシエチレン基の含有量が80〜95モル%である上記(4)又は(5)のベルトコンベア用潤滑剤組成物、
(7)(E)成分の両性界面活性剤が、アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン、アルキルアミドプロピルベタイン、アルキルアミノモノプロピオン酸及び/又はその塩、アルキルアミノジプロピオン酸及び/又はその塩、2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、2−アルキル−N−カルボキシエチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、アルキルアミノエチルグリシン及び/又はその塩、アルキルジアミノエチルグリシン及び/又はその塩、アルキルポリアミノエチルグリシン及び/又はその塩、グリシンN−(3−アミノプロピル)−C10〜16アルキル誘導体、及びアルキルヒドロキシスルホベタインから選ばれる少なくとも一種である上記(1)〜(6)の何れかのベルトコンベア用潤滑剤組成物、
(8)上記(1)〜(7)の何れかのベルトコンベア用潤滑剤組成物の(A)成分の濃度を0.001〜0.05質量%とした処理液を、被搬送物を搬送するベルトコンベアのベルト上及び/又は被搬送物上に供給して潤滑性を付与することを特徴とするベルトコンベアの潤滑性付与方法、
(9)処理液を、ホローコーン、フルコーン、フラットスプレー、広角スプレー又は微細スプレーから選択されるスプレーノズル又はジェットノズルを使用して噴霧して供給する上記(8)のベルトコンベアの潤滑性付与方法、
(10)被搬送物が、炭酸飲料を充填したPETボトルである上記(8)又は(9)のベルトコンベアの潤滑性付与方法、
を要旨とするものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明のベルトコンベア用潤滑剤組成物は、一般細菌だけでなく、カチオン系除菌剤に対する抵抗性菌にも優れた除菌効果を示し、泡立ちが少なく、潤滑性に優れ、長期間にわたって保存しても分解が際立って少なく、さらには炭酸飲料を充填し内圧負荷のかかったPETボトルに接触した際でも、PETボトルに亀裂やひび割れが発生する虞がない等の効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明のベルトコンベア用潤滑剤組成物における(A)成分であるグアニジン系除菌剤としては、ポリヘキサメチレンビグアナイド塩酸塩、ポリヘキサメチレンビグアナイドリン酸塩、ポリヘキサメチレングアニジン塩酸塩、ポリヘキサメチレングアニジンリン酸塩等が挙げられ、1種又は2種以上を用いることができる。なかでも、汎用性及び除菌性の点からポリヘキサメチレンビグアナイド塩酸塩が好ましい。
【0017】
本発明のベルトコンベア用潤滑剤組成物における(B)成分であるベンズイソチアゾリン系除菌剤としては、1、2−ベンズイソチアゾリン−3−オン、N−n−ブチル−ベンズイソチアゾリン−3−オン等が挙げられ、1種又は2種以上を用いることができる。なかでも、汎用性及び除菌性の点から1、2−ベンズイソチアゾリン−3−オンが好ましい。
【0018】
本発明のベルトコンベア用潤滑剤組成物における(C)成分であるノニオン界面活性剤としては、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリル脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミド、ポリオキシエチレンひまし油、ポリオキシエチレン硬化ひまし油、ポリオキシエチレンロジンエステル、ポリオキシエチレンラノリンエーテル、アセチレングリコール酸化エチレン(EO)付加物等が挙げられるが、炭素数10〜22の脂肪族アルコールに酸化エチレン及び/又は酸化プロピレンを付加して生成されるポリオキシアルキレンアルキルエーテル型ノニオン界面活性剤が好ましい。
【0019】
上記炭素数10〜22の脂肪族アルコールとしては、デシルアルコール、イソデシルアルコール、ラウリルアルコール、トリデシルアルコール、イソトリデシルアルコール、ミリスチルアルコール、ペンタデシルアルコール、セチルアルコール、パルミトレイルアルコール、ヘプタデシルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、エライジルアルコール、オレイルアルコール、リノレイルアルコール、エライドリノレイルアルコール、リノレニルアルコール、エライドリノレニルアルコール、ノナデシルアルコール、アラキジルアルコール、ヘニコシルアルコール、ベヘニルアルコールが挙げられる。これらの脂肪族アルコールのうち、比較的安価に入手できるラウリルアルコール、トリデシルアルコール、イソトリデシルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、オレイルアルコール、ベヘニルアルコールが好ましく、生成するノニオン界面活性剤の性能と水への溶解性の点でラウリルアルコールとオレイルアルコールがより好ましい。
【0020】
上記ポリオキシアルキレンエーテル型ノニオン界面活性剤は、脂肪族アルコールに酸化エチレンと酸化プロピレンとがランダム付加重合したもの、ブロック付加重合したもの、ランダム/ブロック付加重合したもののいずれでも良いが、より泡立ちが低いことからブロック付加重合したものがより好ましい。上記炭素数10〜22の脂肪族アルコールに酸化エチレン及び/又は酸化プロピレンを付加して生成されるポリオキシアルキレンエーテル型ノニオン界面活性剤は、ポリオキシアルキレン基(酸化エチレン+酸化プロピレン)の重合度が40〜100が好ましいが、より好ましくは45〜80であり、更に好ましくは50〜60である。重合度が40未満であると潤滑性及びPETボトルの亀裂やひび割れ抑制性が低下し、100を超えると性能が飽和し、また凝固点が高くなるためハンドリング性が低下し、製造も困難であるため好ましくない。
【0021】
また、上記ポリオキシアルキレンエーテル型ノニオン界面活性剤は、ポリオキシアルキレン基に占めるオキシエチレン基の割合が80〜95モル%となるように酸化エチレンと酸化プロピレンの配合比を調整して付加重合したものが好ましく、オキシエチレン基の割合が90〜95モル%のものがより好ましい。オキシエチレン基の割合が80モル%未満になると潤滑性が不足する場合やPETボトル適合性が低下する場合があり、また、95モル%を超えると使用時の泡立ちが大きくなり、ベルトコンベアに長時間供給すると蓄積した泡によるトラブルが発生する等の問題を生じる。
【0022】
(D)成分の水は、特に限定されず、水道水、工業用水、再生水、イオン交換水、RO水、蒸留水等を用いることができる。
【0023】
本発明のベルトコンベア用潤滑剤組成物は、(A)成分と(B)成分の質量比、(A)成分と(C)成分の質量比は、(A)/(B)=0.05〜400、(A)/(C)=0.01〜20であることが必要であるが、(A)/(B)=0.2〜160、(A)/(C)=0.03〜13.3が好ましく、(A)/(B)=0.6〜20、(A)/(C)=0.1〜1がより好ましい。(A)/(B)が0.05未満であると、カチオン系除菌剤に対する抵抗性菌の除菌性が低下する場合があり、400超であると、カチオン系除菌剤に対する抵抗性菌の除菌性が低下する場合がある。また(A)/(C)が0.01未満であると、除菌性が低下する場合があり、20超であると、潤滑性が低下する場合があることやコスト的に好ましくない。
【0024】
本発明のベルトコンベア用潤滑剤組成物には、更に(E)成分として両性界面活性剤を含んでいても良い。両性界面活性剤としては、アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン、アルキルアミドプロピルベタイン、アルキルアミノモノプロピオン酸及び/又はその塩、アルキルアミノジプロピオン酸及び/又はその塩、2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、2−アルキル−N−カルボキシエチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、アルキルアミノエチルグリシン及び/又はその塩、アルキルジアミノエチルグリシン及び/又はその塩、アルキルポリアミノエチルグリシン及び/又はその塩、グリシンN−(3−アミノプロピル)−C10〜16アルキル誘導体(CAS NO.84777−38−8)、及びアルキルヒドロキシスルホベタインから選ばれる少なくとも一種が好ましく、アルキルアミノエチルグリシン及び/又はその塩、アルキルジアミノエチルグリシン及び/又はその塩、アルキルアミノモノプロピオン酸がより好ましい。更に(E)成分を含有していると、PETボトルに対する亀裂やひび割れの発生を抑制し、かつ水の硬度成分の影響を受けずにステンレス製ベルトコンベアの潤滑性を向上させることができる。
【0025】
本発明のベルトコンベア用潤滑剤組成物が更に(E)成分の両性界面活性剤を含有する場合、(E)成分は(A)/(E)=0.01〜5となる範囲で添加することが好ましいが、(A)/(E)=0.02〜2が好ましく、(A)/(E)=0.05〜1がより好ましい。(A)/(E)が0.01未満であると、泡立ちが多くなってしまう場合があり、5超であると、ステンレスコンベアへの十分な潤滑性が得られない場合がある。
【0026】
本発明のベルトコンベア用潤滑剤組成物には、更に公知の潤滑用添加剤が添加されていても良く、使用目的に応じて、キレート剤、可溶化剤、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、粘稠剤、香料などを本発明の効果を損なわない範囲で配合することができる。
【0027】
本発明のベルトコンベア用潤滑剤組成物に配合できるアニオン界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸やその塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステルやその塩等が挙げられ、カチオン界面活性剤としては、アルキルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロライド、ジデシルジメチルアンモニウムクロライド、ジデシルジメチルアンモニウムアジペート、ジデシルジメチルアンモニウムグルコネート、ジデシルモノメチルハイドロキシエチルアンモニウムクロライド、ジデシルモノメチルハイドロキシエチルアンモニウムアジペート、ジデシルモノメチルハイドロキシエチルアンモニウムグルコネート、ジデシルモノメチルハイドロキシエチルアンモニウムスルホネート、ジデシルジメチルアンモニウムプロピオネート、ジデシルジメチルアンモニウムメトサルフェート、1,4−ビス(3,3’−(1−デシルピリジニウム)メチルオキシ)ブタンジブロマイド、N,N’−ヘキサメチレンビス(4−カルバモイル−1−デシルピリジニウムブロマイド)、アルキルジメチルハイドロキシエチルアンモニウムクロライド、アルキルトリメチルアンモニウムクロライド、アルキルジメチルエチルアンモニウムエチルサルフェート、セチルピリジニウムクロライド、アルキルジメチルエチルベンジルアンモニウムクロライド、デシルイソノニルジメチルアンモニウムクロライド、ジオクチルジメチルアンモニウムクロライド、オクチルデシルジメチルアンモニウムクロライド、ジデシルメチルポリオキシエチレンアンモニウムプロピオネート、およびベンゼトニウムクロライド等の第四級アンモニウム塩、ポリヘキサメチレンビグアナイドハイドロクロライド、ポリヘキサメチレングアニジンホスフェート、ポリヘキサメチレングアニジンクロライド、グルコン酸クロルヘキシジン等のグアニジン系カチオン界面活性剤、ヘキサデシルトリブチルフォスフォニウム、アルキルジアミン又はその塩等が挙げられる。これらは単独でも2種以上を組み合わせて用いても良い。
【0028】
本発明のベルトコンベア用潤滑剤組成物に配合できる可溶化剤としては、例えば、キシレンスルホン酸、キシレンスルホン酸ナトリウム、キシレンスルホン酸カリウム、トルエンスルホン酸、トルエンスルホン酸ナトリウム、トルエンスルホン酸カリウム、安息香酸、安息香酸ナトリウム、安息香酸カリウム、クメンスルホン酸、クメンスルホン酸ナトリウム、クメンスルホン酸カリウム、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ヘキシレングリコール、イソプレングリコール、グリセリン、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等が挙げられ、なかでも、組成物の安定性向上効果、潤滑性向上効果の点からグリセリン、1,3−ブチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、キシレンスルホン酸、クメンスルホン酸、安息香酸、トルエンスルホン酸が好ましい。これらは単独で用いても、2種以上を組み合わせても良い。可溶化剤はベルト上及び/又は被搬送物に供給する処理液中の割合が0.1〜50重量%となるように配合することが好ましい。可溶化剤の処理中の割合が0.1重量%未満の場合、潤滑性が向上することがなく、50重量%を超えるとコスト的に好ましくない。
【0029】
本発明のベルトコンベア用潤滑剤組成物は、(A)成分濃度を0.001〜0.05質量%とした処理液を、ベルトコンベアのベルト上及び/または被搬送物に、滴下、塗布あるいは噴霧して供給し使用することができるが、ベルトコンベア、処理液は潤滑剤組成物の原液であっても、潤滑剤組成物を希釈したものであっても良いが、輸送コスト及び在庫スペースを削減するために潤滑剤組成物は濃厚液として予め調製し、使用時に水で希釈することが好ましい。処理液は塩基成分や酸成分を添加して、pHを4.0から9.5の範囲に調整することが好ましく、4.5〜7.0に調整することがより好ましい。pHが4.0未満であるとベルトコンベアや飲料製造工程中の機器が腐食する問題や、ベルトコンベアや飲料製造工程中の機器が腐食する問題が生じる虞がある。またpHが9.5を超えるとPETボトルに対する亀裂やひび割れ抑制性が低下し、亀裂やひび割れを発生する等の問題が生じる虞がある。pH調整のための塩基成分としては水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン等が挙げられ、好ましくはモノエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミンが挙げられる。これらは単独でも2種以上を組み合わせても良い。また、pH調整のための酸成分としては、塩酸、酢酸、プロピオン酸、乳酸、リンゴ酸、クエン酸、安息香酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、グルコン酸、キシレンスルホン酸、クメンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、エチレンジアミン四酢酸、ホスホノブタントリカルボン酸、リン酸などが挙げられるが、好ましくは、酢酸、クエン酸、エチレンジアミン四酢酸である。これらは単独でも2種以上を組み合わせても良い。
【0030】
ベルトコンベアのベルト上及び/又は被搬送物上へ処理液を滴下する方法としては、処理液を0.1〜0.3MPaの圧力で送液し、樹脂製またはSUS製のチューブを通して40〜100ml/分の流量で滴下する方法を採用することができる。また広範囲に比較的少量の潤滑剤組成物を無駄なく均一に供給できるためスプレー等で噴霧することが好ましい。噴霧の形態はスプレーノズル又はジェットノズルの種類によって変わるが、用途に応じて使い分ければよく、公知のものであればいずれも使用することはできる。中でも、ホロコーンタイプ、フルコーンタイプ、フラットスプレー、広角スプレー、微細スプレーより選ばれたスプレーノズル、ジェットノズルが好ましく、ジェットノズルとしてはストレートタイプのジェットノズルの使用が好ましい。これらのスプレーノズル、ジェットノズルを使用する場合、10〜50ml/分の流量でベルトコンベアのベルト上及び/または被搬送物上に供給することが好ましい。
【0031】
処理液の供給方法としては連続供給または間欠供給のいずれの方法でもよい。間欠供給は、供給時間に対して0.5〜3倍の停止時間を設ける短時間間欠と、供給時間に対して40〜720倍の停止時間を設ける長時間間欠による供給方法が可能である。間欠供給において、供給停止時にも潤滑性が保たれる理由は、一度供給した潤滑剤がコンベアベルト上に残存しているためである。供給方法としては、廃棄物が削減でき、潤滑剤および水の使用量も削減できることから、間欠供給による方法が好ましい。更に、長時間間欠供給の場合は、供給を停止している間の潤滑機能を良好に保つためにシリコーンエマルジョン、又はグリセリン、プロピレングリコール等の溶剤を添加することが好ましい。シリコーンエマルジョン、又は溶剤は、処理液に適量を後添加し供給することが好ましい。
【0032】
被搬送物の形状、構造、材質等は特に規定されないが、飲料物用の容器が好ましく、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)製、ポリエチレン製、ポリプロピレン製、ポリスチレン製、ポリアミド製、ポリカーボネート製等のプラスチック製容器;紙パック等の紙製容器(ワックス仕上げや樹脂コーティングを含む);鉄製、アルミニウム製、錫製、銅製、亜鉛製、あるいはこれらの複合材料等からなる金属製容器;ガラス製容器;セラミックス製容器等が挙げられる。これらの容器の中でも、本発明の効果が顕著に表れることから、ペットボトル等のPET製容器や紙パック、アルミ製容器が好ましく、特に炭酸飲料を充填したPETボトルへの使用が好ましい。
【実施例】
【0033】
以下、本発明を実施例により、具体的に説明する。なお、以下の実施例等において「%」は特に記載が無い限り質量基準である。
試験に使用した化合物を下記に記す。なお、アルコールの後の括弧内は脂肪族アルコールの炭素数を、EOはエチレンオキシド、POはプロピレンオキシドの略であり、その後の数字はそれぞれEO、POの付加モル数を表す。
【0034】
(A)成分
A−1:ポリヘキサメチレンビグアナイド塩酸塩
A−2:ポリヘキサメチレングアニジンリン酸塩
【0035】
(A’)成分[(A)成分の比較成分]
A’−1:5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン
A’−2:塩化ベンザルコニウム
【0036】
(B)成分
B−1:1、2−ベンズイソチアゾリン−3−オン
【0037】
(C)成分
C−1:ラウリルアルコール(12)EO47モルPO3モル付加物(EO94モル%)
C−2:ラウリルアルコール(12)EO38モルPO2モル付加物(EO95モル%)
C−3:オレイルアルコール(18)EO80モルPO20モル付加物(EO80モル%)
C−4:ベヘニルアルコール(22)EO55モルPO5モル付加物(EO91.7モル%)
C−5:ステアリルアルコール(18)EO34モルPO23モル付加物(EO59.6モル%)
C−6:トリデシルアルコール(13)EO22モルPO3モル付加物(EO88モル%)
C−7:ラウリルアルコール(12)EO52モル付加物(EO100モル%)
C−8:ラウリルアルコール(12)EO8モルPO3モル付加物(EO72.7モル%)
【0038】
(C’)成分[(C)成分の比較成分]
C’−1:ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸・トリエタノールアミン塩
【0039】
(D)成分
D−1:東京都荒川区の水道水(pH=7.6、総アルカリ度(炭酸カルシウム換算として)40.5mg/L、ドイツ硬度8.1°DH(そのうち、カルシウム硬度6.3°DH、マグネシウム硬度2.1°DH)、塩化物イオン21.9mg/L、ナトリウム及びその化合物13mg/L、硝酸態窒素及び亜硝酸態窒素1.1mg/L、フッ素及びその化合物0.09mg/L、ホウ素及びその化合物0.04mg/L、総トリハロメタン0.014mg/L、残留塩素0.4mg/L、有機物(全有機炭素量)0.5mg/L)
【0040】
(E)成分
E−1:塩酸アルキルジアミノエチルグリシン 商品名:レボンT−2(純分40%)、三洋化成工業社製
E−2:ナトリウムアルキルジアミノエチルグリシン 商品名:レボンS(純分30%)、三洋化成工業社製
E−3:コカミノプロピオン酸ナトリウム 商品名:レボンAPL−D(純分29%)、三洋化成工業社製
【0041】
任意成分
F−1:プロピレングリコール
F−2:グリセリン
F−3:クメンスルホン酸
F−4:キシレンスルホン酸
【0042】
実施例1〜26、比較例1〜7
表1〜4に示す配合で調製したベルトコンベア用潤滑剤組成物から、(A)成分を各表に示す濃度に調製した潤滑剤処理液を用いて以下の試験を行った。処理液の調製に際して希釈を行う場合は水道水(東京都荒川区東尾久)を用いておこなった。
【0043】
(1)潤滑性試験
〔試験方法〕
容積900mlの角底ポリエチレンテレフタレート(PET)製容器をベルトコンベアの樹脂製ベルト上に置き、ベルトを30m/分で移動させながらベルト上に、潤滑剤処理液を60ml/分の供給速度で5分間供給した後、潤滑剤処理液の供給を続けながら摩擦係数を測定し下記基準で評価した。なお、摩擦係数は、容器と荷重測定器を連結させ、コンベア稼動中の引張り荷重値を測定し、以下の計算式より算出したものである。
摩擦係数(μ)=引張り荷重(g)/容器重量(g)
潤滑性評価基準:
○:摩擦係数(μ)=0.08以上0.10未満(滑りが良好)
△:摩擦係数(μ)=0.10以上0.12未満(問題なく滑る)
×:摩擦係数(μ)=0.12以上(滑りが悪い)0.08未満(滑りすぎる)
【0044】
(3)泡立ち評価試験
スピード60m/分で移動する樹脂ベルト上に、潤滑剤処理液を60ml/分の供給速度で30分供給した後、ベルトコンベアの稼動を続けたまま、潤滑剤処理液の供給を停止し、2分後のコンベア表面の泡立ちについて評価を行った。
泡立ち評価基準:
○:泡が見られない
△:少量の泡が見られる
×:明らかな泡が見られる
【0045】
(4)炭酸飲料入りPETボトル適合性試験
〔試験方法〕
炭酸飲料入りPETボトルとして市販の500ml容量のコーラ入りボトルを用い、ボトルの底部が、潤滑剤処理液10gを入れたビーカーの潤滑剤処理液中にボトル底部が浸るように処理液に接触させ、40℃、湿度90%で1週間保存した後、ボトル底面のひび割れの状態を観察した。
炭酸飲料入りPETボトル適合性評価基準:
○:ボトル底面にひび割れが発生していない。
△:僅かにボトル底面にひび割れが発生している。
×:無数のひび割れがボトル底面に発生している。
とし、△、○を実用性のあるものとして判定した。
【0046】
(5)一般細菌に対する除菌性試験
〔試験方法〕
供試潤滑剤処理液(作成直後のもの、40℃にて20日間貯蔵したもの)10mLに、菌液0.1mLを添加し、25℃にて5分間接触させた後、この1mLをSCD寒天培地で混釈培養し生菌数を確認し、下記基準で評価した。供試菌株としては、財団法人発酵研究所のPseudomonas aeruginosa NBRC13736(10CFU/mLレベル)、Staphylococcus aureus NBRC13276(10CFU/mLレベル)、Alcaligenes faecalis NBRC14479(10CFU/mLレベル)、Serratia marcescens NBRC12648(10CFU/mLレベル)を用いた。
〔評価基準〕
1点:供試菌のlog reductionが5以上の菌数減少
2点:供試菌のlog reductionが4以上、5未満の菌数減少
3点:供試菌のlog reductionが4未満の菌数減少
として上記各菌種について菌数減少を点数で評価し、4菌種の菌数減少の点数の平均値を求め、以下の基準で除菌性を評価した。
○:平均値が1点以上1.5点未満。
△:平均値が1.5点以上2.5点未満。
×:平均値が2.5点以上。
とし、△、○を実用性のあるものとして判定した。
【0047】
(6)カチオン系除菌剤抵抗性菌に対する除菌性試験
〔試験方法〕
各供試潤滑剤試験液(作成直後のもの、40℃にて20日間貯蔵したもの)99mLに、カチオン系除菌剤抵抗性菌液を1mL添加し、25℃にて4日間接触させた後、この1mLをSCD寒天培地で混釈培養し生菌数を確認した。なお、使用する希釈水は硬度50ppmの人工硬水を用いた。
〔供試菌株〕
飲料工場で採取し、分離同定したカチオン抵抗性菌株であるAlcaligenes faecalis (10CFU/mLレベル)、食品工場で採取し、分離同定したカチオン系除菌剤抵抗性菌株であるSerratia marcescens(10CFU/mLレベル)を用いた。
〔評価基準〕
1点:供試菌のlog reductionが5以上の菌数減少
2点:供試菌のlog reductionが4以上、5未満の菌数減少
3点:供試菌のlog reductionが4未満の菌数減少
として上記各菌種について菌数減少を点数で評価し、2菌種の菌数減少の点数の平均値を求め、以下の基準で除菌性を評価した。
○:平均値が1点以上1.5点未満。
△:平均値が1.5点以上2.5点未満。
×:平均値が2.5点以上。
とし、△、○を実用性のあるものとして判定した。
【0048】
【表1】
【0049】
【表2】
【0050】
【表3】
【0051】
【表4】