特許第6502006号(P6502006)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6502006横電界駆動型液晶表示素子用液晶配向膜を有する基板の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6502006
(24)【登録日】2019年3月29日
(45)【発行日】2019年4月17日
(54)【発明の名称】横電界駆動型液晶表示素子用液晶配向膜を有する基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/1337 20060101AFI20190408BHJP
   C08F 20/02 20060101ALI20190408BHJP
【FI】
   G02F1/1337 520
   C08F20/02
【請求項の数】4
【全頁数】43
(21)【出願番号】特願2013-132568(P2013-132568)
(22)【出願日】2013年6月25日
(65)【公開番号】特開2015-7702(P2015-7702A)
(43)【公開日】2015年1月15日
【審査請求日】2016年6月21日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成25(2013)年3月8日発行の日本化学会第93春季年会(2013)講演予稿集I〜IV 3PA−041「種々の分子量の光架橋性高分子液晶の合成と光配向」。
(73)【特許権者】
【識別番号】000003986
【氏名又は名称】日産化学株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】513099603
【氏名又は名称】公立大学法人兵庫県立大学
(74)【代理人】
【識別番号】100097102
【弁理士】
【氏名又は名称】吉澤 敬夫
(74)【代理人】
【識別番号】100094640
【弁理士】
【氏名又は名称】紺野 昭男
(74)【代理人】
【識別番号】100103447
【弁理士】
【氏名又は名称】井波 実
(74)【代理人】
【識別番号】100111730
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 武泰
(74)【代理人】
【識別番号】100180873
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 慶政
(72)【発明者】
【氏名】後藤 耕平
(72)【発明者】
【氏名】根木 隆之
(72)【発明者】
【氏名】名木 達哉
(72)【発明者】
【氏名】川月 喜弘
(72)【発明者】
【氏名】近藤 瑞穂
【審査官】 岩村 貴
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−098619(JP,A)
【文献】 特開2002−155113(JP,A)
【文献】 特開2010−143989(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/081066(WO,A1)
【文献】 特表2009−512903(JP,A)
【文献】 Nobuhiro KAWATSUKI et al.,Molecular-Oriented Photoalignment Layer for Liquid Crystals,Japanese Journal of Applied Physics,2007年 1月10日,Vol.46, No.1,pp.339-341,ISSN:0021-4922
【文献】 後藤耕平、外6名,面内配向LCDのための分子配向性光配向剤,第62回高分子学会年次大会予稿集,高分子学会,2013年 5月14日,Vol.62, No.1,p.1667(3Pc109)
【文献】 Nobuhiro KAWATSUKI,Photoalignment and Photoinduced Molecular Reorientation of Photosensitive Materials,Chemistry Letters,2011年 5月11日,Vol.40,No.6,p.548-554
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/1337
C08F 20/02
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
[I] (A)所定の温度範囲で液晶性を発現する感光性の側鎖型高分子であって数平均分子量が4,000以上である側鎖型高分子、及び
(B)有機溶媒
を含有する重合体組成物を、横電界駆動用の導電膜を有する基板上に塗布して塗膜を形成する工程;
[II] [I]で得られた塗膜に偏光した紫外線を照射する工程;及び
[III] [II]で得られた塗膜を加熱する工程;
を有することによって配向制御能が付与された横電界駆動型液晶表示素子用液晶配向膜を得る、前記液晶配向膜を有する基板の製造方法であって、
前記(A)成分が、下記式(8)〜(10)
(式中、A、B、Dはそれぞれ独立に、単結合、−O−、−CH−、−COO−、−OCO−、−CONH−、−NH−CO−、−CH=CH−CO−O−、又は−O−CO−CH=CH−を表す;
は、1価のベンゼン環、ナフタレン環、ビフェニル環、フラン環、ピロール環および炭素数5〜8の脂環式炭化水素から選ばれる環を表すか、それらの置換基から選ばれる同一又は相異なった2〜6の環が結合基Bを介して結合してなる基であり、それらに結合する水素原子はそれぞれ独立に−COOR(式中、Rは水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基を表す)、−NO、−CN、−CH=C(CN)、−CH=CH−CN、ハロゲン基、炭素数1〜5のアルキル基、又は炭素数1〜5のアルキルオキシ基で置換されても良い;
Xは、単結合、−COO−、−OCO−、−N=N−、−CH=CH−、−C≡C−、−CH=CH−CO−O−、又は−O−CO−CH=CH−を表す;
lは1〜12の整数を表す;
mは、0〜2の整数を表し、m1、m2は1〜3の整数を表す;
nは0〜12の整数(ただしn=0のときBは単結合である)を表す;
は、2価のベンゼン環、ナフタレン環、ビフェニル環、フラン環、ピロール環、炭素数5〜8の脂環式炭化水素、および、それらの組み合わせからなる群から選ばれる基であり、それらに結合する水素原子はそれぞれ独立に−NO、−CN、−CH=C(CN)、−CH=CH−CN、ハロゲン基、炭素数1〜5のアルキル基、又は炭素数1〜5のアルキルオキシ基で置換されても良い;
Rは、ヒドロキシ基、炭素数1〜6のアルコキシ基を表すか、又はYと同じ定義を表す)
からなる群から選ばれるいずれか1種の感光性側鎖を有する、上記方法。
【化1】
【請求項2】
前記(A)側鎖型高分子の数平均分子量が10,000以上である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
(A)成分が、光架橋、光異性化、または光フリース転移を起こす感光性側鎖を有する請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
(A)成分が、下記式(21)〜(31)(式中、A及びBは上記と同じ定義を有する;
は、1価のベンゼン環、ナフタレン環、ビフェニル環、フラン環、窒素含有複素環、及び炭素数5〜8の脂環式炭化水素、および、それらの組み合わせからなる群から選ばれる基であり、それらに結合する水素原子はそれぞれ独立に−NO、−CN、ハロゲン基、炭素数1〜5のアルキル基、又は炭素数1〜5のアルキルオキシ基で置換されても良い;
は、水素原子、−NO、−CN、−CH=C(CN)、−CH=CH−CN、ハロゲン基、1価のベンゼン環、ナフタレン環、ビフェニル環、フラン環、窒素含有複素環、炭素数5〜8の脂環式炭化水素、炭素数1〜12のアルキル基、又は炭素数1〜12のアルコキシ基を表す;
q1とq2は、一方が1で他方が0である;
lは1〜12の整数を表し、mは0から2の整数を表し、但し、式(25)〜(26)において、全てのmの合計は2以上であり、式(27)〜(28)において、全てのmの合計は1以上であり、m1、m2およびm3は、それぞれ独立に1〜3の整数を表す;
は、水素原子、−NO、−CN、ハロゲン基、1価のベンゼン環、ナフタレン環、ビフェニル環、フラン環、窒素含有複素環、及び炭素数5〜8の脂環式炭化水素、および、アルキル基、又はアルキルオキシ基を表す;
、Zは単結合、−CO−、−CHO−、−CH=N−、−CF−を表す)からなる群から選ばれるいずれか1種の液晶性側鎖を有する請求項1〜のいずれか1項に記載の方法。
【化2】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、横電界駆動型液晶表示素子用液晶配向膜を有する基板の製造方法に関する。さらに詳しくは、焼き付き特性に優れる液晶表示素子を製造するための新規な方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示素子は、軽量、薄型かつ低消費電力の表示デバイスとして知られ、近年では大型のテレビ用途に用いられるなど、目覚ましい発展を遂げている。液晶表示素子は、例えば、電極を備えた透明な一対の基板により液晶層を挟持して構成される。そして、液晶表示素子では、液晶が基板間で所望の配向状態となるように有機材料からなる有機膜が液晶配向膜として使用されている。
【0003】
すなわち、液晶配向膜は、液晶表示素子の構成部材であって、液晶を挟持する基板の液晶と接する面に形成され、その基板間で液晶を一定の方向に配向させるという役割を担っている。そして、液晶配向膜には、液晶を、例えば、基板に対して平行な方向など、一定の方向に配向させるという役割に加え、液晶のプレチルト角を制御するという役割を求められることがある。こうした液晶配向膜における、液晶の配向を制御する能力(以下、配向制御能と言う。)は、液晶配向膜を構成する有機膜に対して配向処理を行うことによって与えられる。
【0004】
配向制御能を付与するための液晶配向膜の配向処理方法としては、従来からラビング法が知られている。ラビング法とは、基板上のポリビニルアルコールやポリアミドやポリイミド等の有機膜に対し、その表面を綿、ナイロン、ポリエステル等の布で一定方向に擦り(ラビングし)、擦った方向(ラビング方向)に液晶を配向させる方法である。このラビング法は簡便に比較的安定した液晶の配向状態を実現できるため、従来の液晶表示素子の製造プロセスにおいて利用されてきた。そして、液晶配向膜に用いられる有機膜としては、耐熱性等の信頼性や電気的特性に優れたポリイミド系の有機膜が主に選択されてきた。
【0005】
しかしながら、ポリイミドなどからなる液晶配向膜の表面を擦るラビング法は、発塵や静電気の発生が問題となることがあった。また、近年の液晶表素子の高精細化や、対応する基板上の電極や液晶駆動用のスイッチング能動素子による凹凸のため、液晶配向膜の表面を布で均一に擦ることができず、均一な液晶の配向を実現できないことがあった。
【0006】
そこで、ラビングを行わない液晶配向膜の別の配向処理方法として、光配向法が盛んに検討されている。
【0007】
光配向法には様々な方法があるが、直線偏光またはコリメートした光によって液晶配向膜を構成する有機膜内に異方性を形成し、その異方性に従って液晶を配向させる。
【0008】
主な光配向法としては、分解型の光配向法が知られている。例えば、ポリイミド膜に偏光紫外線を照射し、分子構造の紫外線吸収の偏光方向依存性を利用して異方的な分解を生じさせる。そして、分解せずに残されたポリイミドにより液晶を配向させるようにする(例えば、特許文献1を参照のこと。)。
【0009】
また、光架橋型や光異性化型の光配向法も知られている。例えば、ポリビニルシンナメートを用い、偏光紫外線を照射し、偏光と平行な2つの側鎖の二重結合部分で二量化反応(架橋反応)を生じさせる。そして、偏光方向と直交した方向に液晶を配向させる(例えば、非特許文献1を参照のこと。)。また、アゾベンゼンを側鎖に有する側鎖型高分子を用いた場合、偏光紫外線を照射し、偏光と平行な側鎖のアゾベンゼン部で異性化反応を生じさせ、偏光方向と直交した方向に液晶を配向させる(例えば、非特許文献2を参照のこと。)。
【0010】
以上の例のように、光配向法による液晶配向膜の配向処理方法では、ラビングを不要とし、発塵や静電気の発生の懸念が無い。そして、表面に凹凸のある液晶表示素子の基板に対しても配向処理を施すことができ、工業的な生産プロセスに好適な液晶配向膜の配向処理の方法となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特許第3893659号公報
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】M.Shadt et al., Jpn. J. Appl. Phys. 31, 2155(1992)
【非特許文献2】K.Ichimura et al., Chem. Rev. 100, 1847(2000)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
以上のように、光配向法は、液晶表示素子の配向処理方法として従来から工業的に利用されてきたラビング法と比べてラビング工程そのものを不要とし、そのため大きな利点を備える。そして、ラビングによって配向制御能がほぼ一定となるラビング法に比べ、光配向法では、偏光した光の照射量を変化させて配向制御能を制御することができる。しかしながら、光配向法では、ラビング法による場合と同程度の配向制御能を実現しようとする場合、大量の偏光した光の照射量が必要となったり、安定な液晶の配向が実現できない場合がある。
【0014】
例えば、上記した特許文献1に記載の分解型の光配向法では、ポリイミド膜に出力500Wの高圧水銀灯からの紫外光を60分間照射する必要があるなど、長時間かつ大量の紫外線照射が必要となる。また、二量化型や光異性化型の光配向法の場合においても、数J(ジュール)〜数十J程度の多くの量の紫外線照射が必要となる場合がある。さらに、光架橋型や光異性化型の光配向法の場合、液晶の配向の熱安定性や光安定性に劣るため、液晶表示素子とした場合に、配向不良や表示焼き付きが発生するといった問題があった。特に横電界駆動型の液晶表示素子では液晶分子を面内でスイッチングするため、液晶駆動後の液晶の配向ズレが発生しやすく、AC駆動に起因する表示焼き付きが大きな課題とされている。
【0015】
したがって、光配向法では、配向処理の高効率化や安定な液晶配向の実現が求められており、液晶配向膜への高い配向制御能の付与を高効率に行うことができる液晶配向膜や液晶配向剤が求められている。
【0016】
本発明は、高効率で配向制御能が付与され、焼き付き特性に優れた、横電界駆動型液晶表示素子用液晶配向膜を有する基板及び該基板を有する横電界駆動型液晶表示素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明者らは、上記課題を達成するべく鋭意検討を行った結果、以下の発明を見出した。
<1> [I] (A)所定の温度範囲で液晶性を発現する感光性の側鎖型高分子であって数平均分子量が4,000以上、好ましくは6,000以上、より好ましくは10,000以上である側鎖型高分子、及び
(B)有機溶媒
を含有する重合体組成物を、横電界駆動用の導電膜を有する基板上に塗布して塗膜を形成する工程;
[II] [I]で得られた塗膜に偏光した紫外線を照射する工程;及び
[III] [II]で得られた塗膜を加熱する工程;
を有することによって配向制御能が付与された横電界駆動型液晶表示素子用液晶配向膜を得る、前記液晶配向膜を有する基板の製造方法。
【0018】
<2> 上記<1>において、(A)成分が、光架橋、光異性化、または光フリース転移を起こす感光性側鎖を有するのがよい。
<3> 上記<1>又は<2>において、(A)成分が、下記式(1)〜(6)からなる群から選ばれるいずれか1種の感光性側鎖を有するのがよい。
【0019】
【化1】
【0020】
式中、A、B、Dはそれぞれ独立に、単結合、−O−、−CH−、−COO−、−OCO−、−CONH−、−NH−CO−、−CH=CH−CO−O−、又は−O−CO−CH=CH−を表す;
Sは、炭素数1〜12のアルキレン基であり、それらに結合する水素原子はハロゲン基に置き換えられていてもよい;
Tは、単結合または炭素数1〜12のアルキレン基であり、それらに結合する水素原子はハロゲン基に置き換えられていてもよい;
は、1価のベンゼン環、ナフタレン環、ビフェニル環、フラン環、ピロール環および炭素数5〜8の脂環式炭化水素から選ばれる環を表すか、それらの置換基から選ばれる同一又は相異なった2〜6の環が結合基Bを介して結合してなる基であり、それらに結合する水素原子はそれぞれ独立に−COOR(式中、Rは水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基を表す)、−NO、−CN、−CH=C(CN)、−CH=CH−CN、ハロゲン基、炭素数1〜5のアルキル基、又は炭素数1〜5のアルキルオキシ基で置換されても良い;
は、2価のベンゼン環、ナフタレン環、ビフェニル環、フラン環、ピロール環、炭素数5〜8の脂環式炭化水素、および、それらの組み合わせからなる群から選ばれる基であり、それらに結合する水素原子はそれぞれ独立に−NO、−CN、−CH=C(CN)、−CH=CH−CN、ハロゲン基、炭素数1〜5のアルキル基、又は炭素数1〜5のアルキルオキシ基で置換されても良い;
Rは、ヒドロキシ基、炭素数1〜6のアルコキシ基を表すか、又はYと同じ定義を表す;
Xは、単結合、−COO−、−OCO−、−N=N−、−CH=CH−、−C≡C−、−CH=CH−CO−O−、又は−O−CO−CH=CH−を表す;
Couは、クマリン−6−イル基またはクマリン−7−イル基を表し、それらに結合する水素原子はそれぞれ独立に−NO、−CN、−CH=C(CN)、−CH=CH−CN、ハロゲン基、炭素数1〜5のアルキル基、又は炭素数1〜5のアルキルオキシ基で置換されても良い;
q1とq2は、一方が1で他方が0である;
q3は0または1である;
P及びQは、各々独立に、単結合、2価のベンゼン環、ナフタレン環、ビフェニル環、フラン環、ピロール環、炭素数5〜8の脂環式炭化水素、および、それらの組み合わせからなる群から選ばれる基である。ただし、Xが−CH=CH−CO−O−、−O−CO−CH=CH−である場合、−CH=CH−が結合する側のP又はQは芳香環である;
H及びIは、各々独立に、2価のベンゼン環、ナフタレン環、ビフェニル環、フラン環、ピロール環、およびそれらの組み合わせから選ばれる基である。
【0021】
<4> 上記<1>又は<2>において、(A)成分が、下記式(7)〜(10)からなる群から選ばれるいずれか1種の感光性側鎖を有するのがよい。
式中、A、B、D、Y、X、Y、及びRは、上記と同じ定義を有する;
lは1〜12の整数を表す;
mは、0〜2の整数を表し、m1、m2は1〜3の整数を表す;
nは0〜12の整数(ただしn=0のときBは単結合である)を表す。
【0022】
【化2】
【0023】
<5> 上記<1>又は<2>において、(A)成分が、下記式(11)〜(13)からなる群から選ばれるいずれか1種の感光性側鎖を有するのがよい。
式中、A、X、l、m及びRは、上記と同じ定義を有する。
【0024】
【化3】
【0025】
<6> 上記<1>又は<2>において、(A)成分が、下記式(14)又は(15)で表される感光性側鎖を有するのがよい。
式中、A、Y、X、l、m1及びm2は上記と同じ定義を有する。
【0026】
【化4】
【0027】
<7> 上記<1>又は<2>において、(A)成分が、下記式(16)又は(17)で表される感光性側鎖を有するのがよい。
式中、A、X、l及びmは、上記と同じ定義を有する。
【0028】
【化5】
【0029】
<8> 上記<1>又は<2>において、(A)成分が、下記式(18)又は(19)で表される感光性側鎖を有するのがよい。
式中、A、B、Y、q1、q2、m1、及びm2は、上記と同じ定義を有する。
は、水素原子、−NO、−CN、−CH=C(CN)、−CH=CH−CN、ハロゲン基、炭素数1〜5のアルキル基、又は炭素数1〜5のアルキルオキシ基を表す。
【0030】
【化6】
【0031】
<9> 上記<1>又は<2>において、(A)成分が、下記式(20)で表される感光性側鎖を有するのがよい。
式中、A、Y、X、l及びmは上記と同じ定義を有する。
【0032】
【化7】
【0033】
<10> 上記<1>〜<9>のいずれかにおいて、(A)成分が、下記式(21)〜(31)からなる群から選ばれるいずれか1種の液晶性側鎖を有するのがよい。
式中、A、B、q1及びq2は上記と同じ定義を有する;
は、1価のベンゼン環、ナフタレン環、ビフェニル環、フラン環、窒素含有複素環、及び炭素数5〜8の脂環式炭化水素、および、それらの組み合わせからなる群から選ばれる基であり、それらに結合する水素原子はそれぞれ独立に−NO、−CN、ハロゲン基、炭素数1〜5のアルキル基、又は炭素数1〜5のアルキルオキシ基で置換されても良い;
は、水素原子、−NO、−CN、−CH=C(CN)、−CH=CH−CN、ハロゲン基、1価のベンゼン環、ナフタレン環、ビフェニル環、フラン環、窒素含有複素環、炭素数5〜8の脂環式炭化水素、炭素数1〜12のアルキル基、又は炭素数1〜12のアルコキシ基を表す;
lは1〜12の整数を表し、mは0から2の整数を表し、但し、式(25)〜(26)において、全てのmの合計は2以上であり、式(27)〜(28)において、全てのmの合計は1以上であり、m1、m2およびm3は、それぞれ独立に1〜3の整数を表す;
は、水素原子、−NO、−CN、ハロゲン基、1価のベンゼン環、ナフタレン環、ビフェニル環、フラン環、窒素含有複素環、及び炭素数5〜8の脂環式炭化水素、および、アルキル基、又はアルキルオキシ基を表す;
、Zは単結合、−CO−、−CHO−、−CH=N−、−CF−を表す。
【0034】
【化8】
【0035】
<11> 上記<1>〜<10>のいずれにより製造された横電界駆動型液晶表示素子用液晶配向膜を有する基板。
<12> 上記<11>の基板を有する横電界駆動型液晶表示素子。
【0036】
<13> 上記<11>の基板(第1の基板)を準備する工程;
[I’] 第2の基板上に
(A)所定の温度範囲で液晶性を発現する感光性の側鎖型高分子であって数平均分子量が4,000以上、好ましくは6,000以上、より好ましくは10,000以上である側鎖型高分子、及び
(B)有機溶媒
を含有する重合体組成物を、塗布して塗膜を形成する工程;
[II’] [I’]で得られた塗膜に偏光した紫外線を照射する工程;及び
[III’] [II’]で得られた塗膜を加熱する工程;
を有することによって配向制御能が付与された液晶配向膜を得る、該液晶配向膜を有する第2の基板を得る工程;及び
[IV] 液晶を介して第1及び第2の基板の液晶配向膜が相対するように、第1及び第2の基板を対向配置して液晶表示素子を得る工程;
を有することにより、横電界駆動型液晶表示素子を得る、該液晶表示素子の製造方法。
【0037】
<14> 上記<13>により製造された横電界駆動型液晶表示素子。
<15> (A)所定の温度範囲で液晶性を発現する感光性の側鎖型高分子であって数平均分子量が4,000以上、好ましくは6,000以上、より好ましくは10,000以上である側鎖型高分子、及び
(B)有機溶媒
を含有する、横電界駆動型液晶表示素子用液晶配向膜製造用組成物。
【発明の効果】
【0038】
本発明により、高効率で配向制御能が付与され、焼き付き特性に優れた、横電界駆動型液晶表示素子用液晶配向膜を有する基板及び該基板を有する横電界駆動型液晶表示素子を提供することができる。
本発明の方法によって製造された横電界駆動型液晶表示素子は、高効率に配向制御能が付与されているため長時間連続駆動しても表示特性が損なわれることがない。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1】本発明に用いる液晶配向膜の製造方法における異方性の導入処理を模式的に説明する一つの例の図であり、感光性の側鎖に架橋性の有機基を用い、導入された異方性が小さい場合の図である。
図2】本発明に用いる液晶配向膜の製造方法における異方性の導入処理を模式的に説明する一つの例の図であり、感光性の側鎖に架橋性の有機基を用い、導入された異方性が大きい場合の図である。
図3】本発明に用いる液晶配向膜の製造方法における異方性の導入処理を模式的に説明する一つの例の図であり、感光性の側鎖にフリース転移又は異性化を起こす有機基を用い、導入された異方性が小さい場合の図である。
図4】本発明に用いる液晶配向膜の製造方法における異方性の導入処理を模式的に説明する一つの例の図であり、感光性の側鎖にフリース転移又は異性化を起こす有機基を用い、導入された異方性が大きい場合の図である。
図5】実施例2〜実施例6及び比較例1で得られたメタクリレートポリマーP1〜P6についての異方性の発現を示すS値のグラフ(横軸:DP(Degree of photoreaction)値)である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
本発明者は、鋭意研究を行った結果、以下の知見を得て本発明を完成するに至った。
本発明の製造方法において用いられる重合体組成物は、液晶性を発現し得る感光性の側鎖型高分子(以下、単に側鎖型高分子とも呼ぶ)を有しており、前記重合体組成物を用いて得られる塗膜は、液晶性を発現し得る感光性の側鎖型高分子を有する膜である。この塗膜にはラビング処理を行うこと無く、偏光照射によって配向処理を行う。そして、偏光照射の後、その側鎖型高分子膜を加熱する工程を経て、配向制御能が付与された塗膜(以下、液晶配向膜とも称する)となる。このとき、偏光照射によって発現した僅かな異方性がドライビングフォースとなり、液晶性の側鎖型高分子自体が自己組織化により効率的に再配向する。その結果、液晶配向膜として高効率な配向処理が実現し、高い配向制御能が付与された液晶配向膜を得ることができる
【0041】
以下、本発明の実施形態について詳しく説明する。
<液晶配向膜を有する基板の製造方法>及び<液晶表示素子の製造方法>
本発明の液晶配向膜を有する基板の製造方法は、
[I] (A)所定の温度範囲で液晶性を発現する感光性の側鎖型高分子であって数平均分子量が4,000以上、好ましくは6,000以上、より好ましくは10,000以上である側鎖型高分子、及び
(B)有機溶媒
を含有する重合体組成物を、横電界駆動用の導電膜を有する基板上に塗布して塗膜を形成する工程;
[II] [I]で得られた塗膜に偏光した紫外線を照射する工程;及び
[III] [II]で得られた塗膜を加熱する工程;
を有する。
上記工程により、配向制御能が付与された横電界駆動型液晶表示素子用液晶配向膜を得ることができ、該液晶配向膜を有する基板を得ることができる。
【0042】
また、上記得られた基板(第1の基板)の他に、第2の基板を準備することにより、横電界駆動型液晶表示素子を得ることができる。
第2の基板は、横電界駆動用の導電膜を有する基板に代わって、横電界駆動用の導電膜を有しない基板を用いる以外、上記工程[I]〜[III](横電界駆動用の導電膜を有しない基板を用いるため、便宜上、本願において、工程[I’]〜[III’]と略記する場合がある)を用いることにより、配向制御能が付与された液晶配向膜を有する第2の基板を得ることができる。
【0043】
横電界駆動型液晶表示素子の製造方法は、
[IV] 上記で得られた第1及び第2の基板を、液晶を介して第1及び第2の基板の液晶配向膜が相対するように、対向配置して液晶表示素子を得る工程;
を有する。これにより横電界駆動型液晶表示素子を得ることができる。
【0044】
以下、本発明の製造方法の有する[I]〜[III]、および[IV]の各工程について説明する。
<工程[I]>
工程[I]では、横電界駆動用の導電膜を有する基板上に、所定の温度範囲で液晶性を発現する感光性の側鎖型高分子であって数平均分子量が4,000以上、好ましくは6,000以上、より好ましくは10,000以上である側鎖型高分子及び有機溶媒を含有する重合体組成物を塗布して塗膜を形成する。
【0045】
<基板>
基板については、特に限定はされないが、製造される液晶表示素子が透過型である場合、透明性の高い基板が用いられることが好ましい。その場合、特に限定はされず、ガラス基板、またはアクリル基板やポリカーボネート基板等のプラスチック基板等を用いることができる。
また、反射型の液晶表示素子への適用を考慮し、シリコンウェハなどの不透明な基板も使用できる。
【0046】
<横電界駆動用の導電膜>
基板は、横電界駆動用の導電膜を有する。
該導電膜として、液晶表示素子が透過型である場合、ITO(Indium Tin Oxide:酸化インジウムスズ)、IZO(Indium Zinc Oxide:酸化インジウム亜鉛)などを挙げることができるが、これらに限定されない。
また、反射型の液晶表示素子の場合、導電膜として、アルミなどの光を反射する材料などを挙げることができるがこれらに限定されない。
基板に導電膜を形成する方法は、従来公知の手法を用いることができる。
【0047】
<重合体組成物>
横電界駆動用の導電膜を有する基板上、特に導電膜上に、重合体組成物を塗布する。
本発明の製造方法に用いられる、該重合体組成物は、(A)所定の温度範囲で液晶性を発現する感光性の側鎖型高分子であって数平均分子量が4,000以上である側鎖型高分子;及び(B)有機溶媒;を含有する。
<<(A)側鎖型高分子>>
(A)成分は、所定の温度範囲で液晶性を発現する感光性の側鎖型高分子であって数平均分子量が4,000以上である側鎖型高分子である。
(A)側鎖型高分子は、250nm〜400nmの波長範囲の光で反応し、かつ100℃〜300℃の温度範囲で液晶性を示すのがよい。
(A)側鎖型高分子は、250nm〜400nmの波長範囲の光に反応する感光性側鎖を有することが好ましい。
(A)側鎖型高分子は、100℃〜300℃の温度範囲で液晶性を示すためメソゲン基を有することが好ましい。
【0048】
(A)側鎖型高分子は、主鎖に感光性を有する側鎖が結合しており、光に感応して架橋反応、異性化反応、または光フリース転位を起こすことができる。感光性を有する側鎖の構造は特に限定されないが、光に感応して架橋反応、または光フリース転位を起こす構造が望ましく、架橋反応を起こすものがより望ましい。この場合、熱などの外部ストレスに曝されたとしても、実現された配向制御能を長期間安定に保持することができる。液晶性を発現し得る感光性の側鎖型高分子膜の構造は、そうした特性を満足するものであれば特に限定されないが、側鎖構造に剛直なメソゲン成分を有することが好ましい。この場合、該側鎖型高分子を液晶配向膜とした際に、安定な液晶配向を得ることができる。
【0049】
該高分子の構造は、例えば、主鎖とそれに結合する側鎖を有し、その側鎖が、ビフェニル基、ターフェニル基、フェニルシクロヘキシル基、フェニルベンゾエート基、アゾベンゼン基などのメソゲン成分と、先端部に結合された、光に感応して架橋反応や異性化反応をする感光性基とを有する構造や、主鎖とそれに結合する側鎖を有し、その側鎖がメソゲン成分ともなり、かつ光フリース転位反応をするフェニルベンゾエート基を有する構造とすることができる。
【0050】
液晶性を発現し得る感光性の側鎖型高分子膜の構造のより具体的な例としては、炭化水素、(メタ)アクリレート、イタコネート、フマレート、マレエート、α−メチレン−γ−ブチロラクトン、スチレン、ビニル、マレイミド、ノルボルネン等のラジカル重合性基およびシロキサンからなる群から選択される少なくとも1種から構成された主鎖と、下記式(1)から(6)の少なくとも1種からなる側鎖を有する構造であることが好ましい。
【0051】
【化9】
【0052】
式中、A、B、Dはそれぞれ独立に、単結合、−O−、−CH−、−COO−、−OCO−、−CONH−、−NH−CO−、−CH=CH−CO−O−、又は−O−CO−CH=CH−を表す;
Sは、炭素数1〜12のアルキレン基であり、それらに結合する水素原子はハロゲン基に置き換えられていてもよい;
Tは、単結合または炭素数1〜12のアルキレン基であり、それらに結合する水素原子はハロゲン基に置き換えられていてもよい;
は、1価のベンゼン環、ナフタレン環、ビフェニル環、フラン環、ピロール環および炭素数5〜8の脂環式炭化水素から選ばれる環を表すか、それらの置換基から選ばれる同一又は相異なった2〜6の環が結合基Bを介して結合してなる基であり、それらに結合する水素原子はそれぞれ独立に−COOR(式中、Rは水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基を表す)、−NO、−CN、−CH=C(CN)、−CH=CH−CN、ハロゲン基、炭素数1〜5のアルキル基、又は炭素数1〜5のアルキルオキシ基で置換されても良い;
は、2価のベンゼン環、ナフタレン環、ビフェニル環、フラン環、ピロール環、炭素数5〜8の脂環式炭化水素、および、それらの組み合わせからなる群から選ばれる基であり、それらに結合する水素原子はそれぞれ独立に−NO、−CN、−CH=C(CN)、−CH=CH−CN、ハロゲン基、炭素数1〜5のアルキル基、又は炭素数1〜5のアルキルオキシ基で置換されても良い;
Rは、ヒドロキシ基、炭素数1〜6のアルコキシ基を表すか、又はYと同じ定義を表す;
Xは、単結合、−COO−、−OCO−、−N=N−、−CH=CH−、−C≡C−、−CH=CH−CO−O−、又は−O−CO−CH=CH−を表す;
Couは、クマリン−6−イル基またはクマリン−7−イル基を表し、それらに結合する水素原子はそれぞれ独立に−NO、−CN、−CH=C(CN)、−CH=CH−CN、ハロゲン基、炭素数1〜5のアルキル基、又は炭素数1〜5のアルキルオキシ基で置換されても良い;
q1とq2は、一方が1で他方が0である;
q3は0または1である;
P及びQは、各々独立に、単結合、2価のベンゼン環、ナフタレン環、ビフェニル環、フラン環、ピロール環、炭素数5〜8の脂環式炭化水素、および、それらの組み合わせからなる群から選ばれる基である。ただし、Xが−CH=CH−CO−O−、−O−CO−CH=CH−である場合、−CH=CH−が結合する側のP又はQは芳香環である;
H及びIは、各々独立に、2価のベンゼン環、ナフタレン環、ビフェニル環、フラン環、ピロール環、およびそれらの組み合わせから選ばれる基である。
【0053】
側鎖は、下記式(7)〜(10)からなる群から選ばれるいずれか1種の感光性側鎖であるのがよい。
式中、A、B、D、Y、X、Y、及びRは、上記と同じ定義を有する;
lは1〜12の整数を表す;
mは、0〜2の整数を表し、m1、m2は1〜3の整数を表す;
nは0〜12の整数(ただしn=0のときBは単結合である)を表す。
【0054】
【化10】
【0055】
側鎖は、下記式(11)〜(13)からなる群から選ばれるいずれか1種の感光性側鎖であるのがよい。
式中、A、X、l、m及びRは、上記と同じ定義を有する。
【0056】
【化11】
【0057】
側鎖は、下記式(14)又は(15)で表される感光性側鎖であるのがよい。
式中、A、Y、X、l、m1及びm2は上記と同じ定義を有する。
【0058】
【化12】
【0059】
側鎖は、下記式(16)又は(17)で表される感光性側鎖であるのがよい。
式中、A、X、l及びmは、上記と同じ定義を有する。
【0060】
【化13】
【0061】
また、側鎖は、下記式(18)又は(19)で表される感光性側鎖であるのがよい。
式中、A、B、Y、q1、q2、m1、及びm2は、上記と同じ定義を有する。
は、水素原子、−NO、−CN、−CH=C(CN)、−CH=CH−CN、ハロゲン基、炭素数1〜5のアルキル基、又は炭素数1〜5のアルキルオキシ基を表す。
【0062】
【化14】
【0063】
側鎖は、下記式(20)で表される感光性側鎖であるのがよい。
式中、A、Y、X、l及びmは上記と同じ定義を有する。
【0064】
【化15】
【0065】
また、(A)側鎖型高分子は、下記式(21)〜(31)からなる群から選ばれるいずれか1種の液晶性側鎖を有するのがよい。
式中、A、B、q1及びq2は上記と同じ定義を有する;
は、1価のベンゼン環、ナフタレン環、ビフェニル環、フラン環、窒素含有複素環、及び炭素数5〜8の脂環式炭化水素、および、それらの組み合わせからなる群から選ばれる基であり、それらに結合する水素原子はそれぞれ独立に−NO、−CN、ハロゲン基、炭素数1〜5のアルキル基、又は炭素数1〜5のアルキルオキシ基で置換されても良い;
は、水素原子、−NO、−CN、−CH=C(CN)、−CH=CH−CN、ハロゲン基、1価のベンゼン環、ナフタレン環、ビフェニル環、フラン環、窒素含有複素環、炭素数5〜8の脂環式炭化水素、炭素数1〜12のアルキル基、又は炭素数1〜12のアルコキシ基を表す;
lは1〜12の整数を表し、mは0から2の整数を表し、但し、式(25)〜(26)において、全てのmの合計は2以上であり、式(27)〜(28)において、全てのmの合計は1以上であり、m1、m2およびm3は、それぞれ独立に1〜3の整数を表す;
は、水素原子、−NO、−CN、ハロゲン基、1価のベンゼン環、ナフタレン環、ビフェニル環、フラン環、窒素含有複素環、及び炭素数5〜8の脂環式炭化水素、および、アルキル基、又はアルキルオキシ基を表す;
、Zは単結合、−CO−、−CHO−、−CH=N−、−CF−を表す。
【0066】
【化16】
【0067】
<<感光性の側鎖型高分子の製法>>
上記の液晶性を発現し得る感光性の側鎖型高分子は、上記の感光性側鎖を有する光反応性側鎖モノマーおよび液晶性側鎖モノマーを重合することによって得ることができる。
【0068】
[光反応性側鎖モノマー]
光反応性側鎖モノマーとは、高分子を形成した場合に、高分子の側鎖部位に感光性側鎖を有する高分子を形成することができるモノマーのことである。
側鎖の有する光反応性基としては下記の構造およびその誘導体が好ましい。
【0069】
【化17】
【0070】
光反応性側鎖モノマーのより具体的な例としては、炭化水素、(メタ)アクリレート、イタコネート、フマレート、マレエート、α−メチレン−γ−ブチロラクトン、スチレン、ビニル、マレイミド、ノルボルネン等のラジカル重合性基およびシロキサンからなる群から選択される少なくとも1種から構成された重合性基と、上記式(1)〜(6)の少なくとも1種からなる感光性側鎖、好ましくは、例えば、上記式(7)〜(10)の少なくとも1種からなる感光性側鎖、上記式(11)〜(13)の少なくとも1種からなる感光性側鎖、上記式(14)又は(15)で表される感光性側鎖、上記式(16)又は(17)で表される感光性側鎖、上記式(18)又は(19)で表される感光性側鎖、上記式(20)で表される感光性側鎖を有する構造であることが好ましい。
【0071】
本願は、光反応性側鎖モノマーとして、以下の式(1)〜(11)で表される新規化合物(1)〜(11)を提供する。
式中、Rは水素原子またはメチル基を示す;Sは炭素数2〜10のアルキレン基を表す;R10はBrまたはCNを示す;Sは炭素数2〜10のアルキレン基を表す;uは0または1を表す;及びPyは2−ピリジル基、3−ピリジル基または4−ピリジル基を表す。
【0072】
【化18】
【0073】
【化19】
【0074】
[液晶性側鎖モノマー]
液晶性側鎖モノマーとは、該モノマー由来の高分子が液晶性を発現し、該高分子が側鎖部位にメソゲン基を形成することができるモノマーのことである。
側鎖の有するメソゲン基として、ビフェニルやフェニルベンゾエートなどの単独でメソゲン構造となる基であっても、安息香酸などのように側鎖同士が水素結合することでメソゲン構造となる基であってもよい。側鎖の有するメソゲン基としては下記の構造が好ましい。
【0075】
【化20】
【0076】
液晶性側鎖モノマーのより具体的な例としては、炭化水素、(メタ)アクリレート、イタコネート、フマレート、マレエート、α−メチレン−γ−ブチロラクトン、スチレン、ビニル、マレイミド、ノルボルネン等のラジカル重合性基およびシロキサンからなる群から選択される少なくとも1種から構成された重合性基と、上記式(21)〜(31)の少なくとも1種からなる側鎖を有する構造であることが好ましい。
【0077】
(A)側鎖型高分子は、上述した液晶性を発現する光反応性側鎖モノマーの重合反応により得ることができる。また、液晶性を発現しない光反応性側鎖モノマーと液晶性側鎖モノマーとの共重合や、液晶性を発現する光反応性側鎖モノマーと液晶性側鎖モノマーとの共重合によって得ることができる。さらに、液晶性の発現能を損なわない範囲でその他のモノマーと共重合することができる。
【0078】
その他のモノマーとしては、例えば工業的に入手できるラジカル重合反応可能なモノマーが挙げられる。
その他のモノマーの具体例としては、不飽和カルボン酸、アクリル酸エステル化合物、メタクリル酸エステル化合物、マレイミド化合物、アクリロニトリル、マレイン酸無水物、スチレン化合物及びビニル化合物等が挙げられる。
【0079】
不飽和カルボン酸の具体例としてはアクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸などが挙げられる。
アクリル酸エステル化合物としては、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、イソプロピルアクリレート、ベンジルアクリレート、ナフチルアクリレート、アントリルアクリレート、アントリルメチルアクリレート、フェニルアクリレート、2,2,2−トリフルオロエチルアクリレート、tert−ブチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、イソボルニルアクリレート、2−メトキシエチルアクリレート、メトキシトリエチレングリコールアクリレート、2−エトキシエチルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、3−メトキシブチルアクリレート、2−メチル−2−アダマンチルアクリレート、2−プロピル−2−アダマンチルアクリレート、8−メチル−8−トリシクロデシルアクリレート、及び、8−エチル−8−トリシクロデシルアクリレート等が挙げられる。
【0080】
メタクリル酸エステル化合物としては、例えば、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、ナフチルメタクリレート、アントリルメタクリレート、アントリルメチルメタクリレート、フェニルメタクリレート、2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレート、tert−ブチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、2−メトキシエチルメタクリレート、メトキシトリエチレングリコールメタクリレート、2−エトキシエチルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、3−メトキシブチルメタクリレート、2−メチル−2−アダマンチルメタクリレート、2−プロピル−2−アダマンチルメタクリレート、8−メチル−8−トリシクロデシルメタクリレート、及び、8−エチル−8−トリシクロデシルメタクリレート等が挙げられる。 グリシジル(メタ)アクリレート、(3−メチル−3−オキセタニル)メチル(メタ)アクリレート、および(3−エチル−3−オキセタニル)メチル(メタ)アクリレートなどの環状エーテル基を有する(メタ)アクリレート化合物も用いることができる。
【0081】
ビニル化合物としては、例えば、ビニルエーテル、メチルビニルエーテル、ベンジルビニルエーテル、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、フェニルビニルエーテル、及び、プロピルビニルエーテル等が挙げられる。
スチレン化合物としては、例えば、スチレン、メチルスチレン、クロロスチレン、ブロモスチレン等が挙げられる。
マレイミド化合物としては、例えば、マレイミド、N−メチルマレイミド、N−フェニルマレイミド、及びN−シクロヘキシルマレイミド等が挙げられる。
【0082】
本実施の形態の側鎖型高分子の製造方法については、特に限定されるものではなく、工業的に扱われている汎用な方法が利用できる。具体的には、液晶性側鎖モノマーや光反応性側鎖モノマーのビニル基を利用したカチオン重合やラジカル重合、アニオン重合により製造することができる。これらの中では反応制御のしやすさなどの観点からラジカル重合が特に好ましい。
【0083】
ラジカル重合の重合開始剤としては、ラジカル重合開始剤や、可逆的付加−開裂型連鎖移動(RAFT)重合試薬等の公知の化合物を使用することができる。なお、ラジカル重合法として、可逆的付加−開裂型連鎖移動(RAFT)法を用いることにより、本発明の(A)側鎖型高分子の数平均分子量を制御し、上記数平均分子量の範囲とすることができる。
RAFT重合試薬として、A)ジチオベンゾエート系RAFT剤;B)トリチオカーボネート系RAFT剤;C)ジチオカルバメート系RAFT剤;D)キサンタート系RAFT剤を挙げることができる。RAFT重合試薬として、具体的には、2-シアノ-2-プロピルドデシルトリチオカーボネート、4-シアノ‐ペンタノール酸ジチオベンゾエート、4-シアノ-4-[(ドデシルスルファニル-チオカルボニル)スルファニル]ペンタノール酸、4-シアノ-4-[(ドデシルスルファニル-チオカルボニル)スルファニル]ペンタノール、ポリ(エチレングリコール)メチルエーテル 4-シアノ-4-[(ドデシルスルファニル-チオカルボニル)スルファニル]ペンタノエート、ポリ(エチレングリコール)メチルエーテル (4-シアノ-4-ペンタノエート ドデシルトリチオカーボネート)、2-フェニル-2-プロピルベンゾジチオエート、1-(メトキシカルボニル)エチルベンゾジチオエート、2-シアノ-2-プロピル-4-シアノベンゾジチオエート、4-シアノ-4-(フェニルカルボノチオイルチオ)ペンタノール酸、2-シアノ-2-プロピルベンゾジチオエート、ベンジルベンゾジチオエート、エチル2-メチル-2-(フェニルチオカルボニルチオ)プロピオネート、メチル-2-フェニル-2-(フェニルチオカルボノチオイルチオ)アセテート、4-シアノ-4-(フェニルカルボノチオイルチオ)ペンタノール酸 N-スクシンイミジルエステル、エチル2-(フェニルカルボノチオイルチオ)プロピオネート、2-(ドデシルチオカルボノチオイルチオ)プロピオン酸、2-(ドデシルチオカルボノチオイルチオ)-2-メチルプロピオン酸、メチル2-(ドデシルチオカルボノチオイルチオ)-2-メチルプロピオネート、2-(ドデシルチオカルボノチオイルチオ)-2-メチルプロピオン酸 N-ヒドロキシスクシンイミジルエステル、ポリ(エチレングリコール)メチルエーテル(2-メチル-2-プロピオン酸ドデシルトリチオカーボネート)、ポリ(エチレングリコール)ビス[2-(ドデシルチオカルボノチオイルチオ)-2-メチルプロピオネート]、2-(ドデシルチオカルボノチオイルチオ)-2-メチルプロピオン酸3-アジド-1-プロパノールエステル、2-(ドデシルチオカルボノチオイルチオ)-2-メチルプロピオン酸ペンタフルオロフェニルエステル、ポリ(エチレングリコール)メチルエーテル(2-ドデシルチオカルボノチオイルチオ)-2-メチルプロピオネート、シアノメチルドデシルトリチオカーボネート、シアノメチルメチル(フェニル)カルバモジチオエート、シアノメチルジフェニルカルバモジチオエート、ベンジル1H-ピロール-1-カルボジチオエート、ビス(チオベンゾイル)ジスルフィド、ビス(ドデシルスルファニルチオカルボニル)ジスルフィド、1-スクシンイミジル-4-シアノ-4-[N-メチル-N-(4-ピリジル)カルバモチオイルチオ]ペンタノエート、2-シアノプロパン-2-イルN-メチル-N-(ピリジン-4-イル)カルバモジチオエート、シアノメチルメチル(4-ピリジル)カルバモジチオエート、メチル2-プロピオネートメチル(4-ピリジニル)カルバモジチオエート、N,N’-ジメチルN,N’-ジ(4-ピリジニル)チウラムジスルフィド、好ましくは2-シアノ-2-プロピルドデシルトリチオカーボネート、4-シアノ‐ペンタノール酸ジチオベンゾエートなどを挙げることができるが、これらに限定されない。
【0084】
ラジカル熱重合開始剤は、分解温度以上に加熱することにより、ラジカルを発生させる化合物である。このようなラジカル熱重合開始剤としては、例えば、ケトンパーオキサイド類(メチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド等)、ジアシルパーオキサイド類(アセチルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド等)、ハイドロパーオキサイド類(過酸化水素、tert−ブチルハイドパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド等)、ジアルキルパーオキサイド類 (ジ−tert−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジラウロイルパーオキサイド等)、パーオキシケタール類(ジブチルパーオキシ シクロヘキサン等)、アルキルパーエステル類(パーオキシネオデカン酸−tert−ブチルエステル、 パーオキシピバリン酸−tert−ブ
チルエステル、パーオキシ 2−エチルシクロヘキサン酸−tert−アミルエステル等)、過硫酸塩類(過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等)、アゾ系化合物(アゾビスイソブチロニトリル、および2,2′−ジ(2−ヒドロキシエチル)アゾビスイソブチロニトリル等)が挙げられる。このようなラジカル熱重合開始剤は、1種を単独で使用することもできるし、あるいは2種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0085】
ラジカル光重合開始剤は、ラジカル重合を光照射によって開始する化合物であれば特に限定されない。このようなラジカル光重合開始剤としては、ベンゾフェノン、ミヒラーズケトン、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、キサントン、チオキサントン、イソプロピルキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−エチルアントラキノン、アセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−4’−イソプロピルプロピオフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、イソプロピルベンゾインエーテル、イソブチルベンゾインエーテル、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、カンファーキノン、ベンズアントロン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]
−2−モルホリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、4,4’−ジ(t−ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,4,4’−トリ(t−ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、2−(4’−メトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(3’,4’−ジメトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(2’,4’−ジメトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(2’−メトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4’−ペンチルオキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、4−[p−N,N−ジ(エトキシカルボニルメチル)]−2,6−ジ(トリクロロメチル)−s−トリアジン、1,3−ビス(トリクロロメチル)−5−(2’−クロロフェニル)−s−トリアジン、1,3−ビス(トリクロロメチル)−5−(4’−メトキシフェニル)−s−トリアジン、2−(p−ジメチルアミノスチリル)ベンズオキサゾール、2−(p−ジメチルアミノスチリル)ベンズチアゾール、2−メルカプトベンゾチアゾール、3,3’−カルボニルビス(7−ジエチルアミノクマリン)、2−(o−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾール、2,2’−ビス(2−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラキス(4−エトキシカルボニルフェニル)−1,2’−ビイミダゾール、2,2’−ビス(2,4−ジクロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾール、2,2’ビス(2,4−ジブロモフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾール、2,2’−ビス(2,4,6−トリクロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾール、3−(2−メチル−2−ジメチルアミノプロピオニル)カルバゾール、3,6−ビス(2−メチル−2−モルホリノプロピオニル)−9−n−ドデシルカルバゾール、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ビス(5−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)−フェニル)チタニウム、3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラ(t−ヘキシルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’−ジ(メトキシカルボニル)−4,4’−ジ(t−ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,4’−ジ(メトキシカルボニル)−4,3’−ジ(t−ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、4,4’−ジ(メトキシカルボニル)−3,3’−ジ(t−ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、2−(3−メチル−3H−ベンゾチアゾール−2−イリデン)−1−ナフタレン−2−イル−エタノン、又は2−(3−メチル−1,3−ベンゾチアゾール−2(3H)−イリデン)−1−(2−ベンゾイル)エタノン等を挙げることができる。これらの化合物は単独で使用してもよく、2つ以上を混合して使用することもできる。
【0086】
ラジカル重合法は、特に制限されるものでなく、乳化重合法、懸濁重合法、分散重合法、沈殿重合法、塊状重合法、溶液重合法等を用いることができる。
【0087】
液晶性を発現し得る感光性の側鎖型高分子の重合反応に用いる有機溶媒としては、生成した高分子が溶解するものであれば特に限定されない。その具体例を以下に挙げる。
【0088】
N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン、N−メチルカプロラクタム、ジメチルスルホキシド、テトラメチル尿素、ピリジン、ジメチルスルホン、ヘキサメチルスルホキシド、γ−ブチロラクトン、イソプロピルアルコール、メトキシメチルペンタノール、ジペンテン、エチルアミルケトン、メチルノニルケトン、メチルエチルケトン、メチルイソアミルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ブチルカルビトール、エチルカルビトール、エチレングリコール、エチレングリコールモノアセテート、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコール−tert−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノアセテートモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノアセテートモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノアセテートモノプロピルエーテル、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、トリプロピレングリコールメチルエーテル、3−メチル−3−メトキシブタノール、ジイソプロピルエーテル、エチルイソブチルエーテル、ジイソブチレン、アミルアセテート、ブチルブチレート、ブチルエーテル、ジイソブチルケトン、メチルシクロへキセン、プロピルエーテル、ジヘキシルエーテル、ジオキサン、n−へキサン、n−ペンタン、n−オクタン、ジエチルエーテル、シクロヘキサノン、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、乳酸メチル、乳酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸プロピレングリコールモノエチルエーテル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸メチルエチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸、3−メトキシプロピオン酸、3−メトキシプロピオン酸プロピル、3−メトキシプロピオン酸ブチル、ジグライム、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン、3−メトキシ−N,N−ジメチルプロパンアミド、3−エトキシ−N,N−ジメチルプロパンアミド、3−ブトキシ−N,N−ジメチルプロパンアミド等が挙げられる。
【0089】
これら有機溶媒は単独で使用しても、混合して使用してもよい。さらに、生成する高分子を溶解させない溶媒であっても、生成した高分子が析出しない範囲で、上述の有機溶媒に混合して使用してもよい。
また、ラジカル重合において有機溶媒中の酸素は重合反応を阻害する原因となるので、有機溶媒は可能な程度に脱気されたものを用いることが好ましい。
【0090】
ラジカル重合の際の重合温度は30℃〜150℃の任意の温度を選択することができるが、好ましくは50℃〜100℃の範囲である。また、反応は任意の濃度で行うことができるが、濃度が低すぎると高分子量の重合体を得ることが難しくなり、濃度が高すぎると反応液の粘性が高くなり過ぎて均一な攪拌が困難となるので、モノマー濃度が、好ましくは1質量%〜50質量%、より好ましくは5質量%〜30質量%である。反応初期は高濃度で行い、その後、有機溶媒を追加することができる。
【0091】
上述のラジカル重合反応においては、ラジカル重合開始剤の比率がモノマーに対して多いと得られる高分子の分子量が小さくなり、少ないと得られる高分子の分子量が大きくなるので、ラジカル開始剤の比率は重合させるモノマーに対して0.1モル%〜10モル%であることが好ましい。また重合時には各種モノマー成分や溶媒、開始剤などを追加することもできる。
【0092】
[重合体の回収]
上述の反応により得られた、液晶性を発現し得る感光性の側鎖型高分子の反応溶液から、生成した高分子を回収する場合には、反応溶液を貧溶媒に投入して、それら重合体を沈殿させれば良い。沈殿に用いる貧溶媒としては、メタノール、アセトン、ヘキサン、ヘプタン、ブチルセルソルブ、ヘプタン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、エタノール、トルエン、ベンゼン、ジエチルエーテル、メチルエチルエーテル、水等を挙げることができる。貧溶媒に投入して沈殿させた重合体は、濾過して回収した後、常圧あるいは減圧下で、常温あるいは加熱して乾燥することができる。また、沈殿回収した重合体を、有機溶媒に再溶解させ、再沈殿回収する操作を2回〜10回繰り返すと、重合体中の不純物を少なくすることができる。この際の貧溶媒として、例えば、アルコール類、ケトン類、炭化水素等が挙げられ、これらの中から選ばれる3種類以上の貧溶媒を用いると、より一層精製の効率が上がるので好ましい。
【0093】
本発明の(A)側鎖型高分子の分子量は、得られる塗膜の強度、塗膜形成時の作業性、および塗膜の均一性を考慮した場合、GPC(Gel Permeation Chromatography)法で測定した重量平均分子量が、2000〜1000000が好ましく、より好ましくは、5000〜200000である。
また、本発明の(A)側鎖型高分子の数平均分子量は、4,000以上、好ましくは6,000以上、より好ましくは10,000以上であり、100,000以下であるのがよい。なお、数平均分子量は、GPC法で測定することができる。
【0094】
[重合体組成物の調製]
本発明に用いられる重合体組成物は、液晶配向膜の形成に好適となるように塗布液として調製されることが好ましい。すなわち、本発明に用いられる重合体組成物は、樹脂被膜を形成するための樹脂成分が有機溶媒に溶解した溶液として調製されることが好ましい。ここで、その樹脂成分とは、既に説明した液晶性を発現し得る感光性の側鎖型高分子を含む樹脂成分である。その際、樹脂成分の含有量は、1質量%〜20質量%が好ましく、より好ましくは3質量%〜15質量%、特に好ましくは3質量%〜10質量%である。
【0095】
本実施形態の重合体組成物において、前述の樹脂成分は、全てが上述した液晶性を発現し得る感光性の側鎖型高分子であってもよいが、液晶発現能および感光性能を損なわない範囲でそれら以外の他の重合体が混合されていてもよい。その際、樹脂成分中における他の重合体の含有量は、0.5質量%〜80質量%、好ましくは1質量%〜50質量%である。
そのような他の重合体は、例えば、ポリ(メタ)アクリレートやポリアミック酸やポリイミド等からなり、液晶性を発現し得る感光性の側鎖型高分子ではない重合体等が挙げられる。
【0096】
<有機溶媒>
本発明に用いられる重合体組成物に用いる有機溶媒は、樹脂成分を溶解させる有機溶媒であれば特に限定されない。その具体例を以下に挙げる。
N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、N−メチルカプロラクタム、2−ピロリドン、N−エチルピロリドン、N−ビニルピロリドン、ジメチルスルホキシド、テトラメチル尿素、ピリジン、ジメチルスルホン、ヘキサメチルスルホキシド、γ−ブチロラクトン、3−メトキシ−N,N−ジメチルプロパンアミド、3−エトキシ−N,N−ジメチルプロパンアミド、3−ブトキシ−N,N−ジメチルプロパンアミド、1,3−ジメチル−イミダゾリジノン、エチルアミルケトン、メチルノニルケトン、メチルエチルケトン、メチルイソアミルケトン、メチルイソプロピルケトン、シクロヘキサノン、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジグライム、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン、プロピレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコール−tert−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノアセテートモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノアセテートモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノアセテートモノプロピルエーテル、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、トリプロピレングリコールメチルエーテル等が挙げられる。これらは単独で使用しても、混合して使用してもよい。
【0097】
本発明に用いられる重合体組成物は、上記(A)及び(B)成分以外の成分を含有してもよい。その例としては、重合体組成物を塗布した際の、膜厚均一性や表面平滑性を向上させる溶媒や化合物、液晶配向膜と基板との密着性を向上させる化合物等を挙げることができるが、これに限定されない。
【0098】
膜厚の均一性や表面平滑性を向上させる溶媒(貧溶媒)の具体例としては、次のものが挙げられる。
例えば、イソプロピルアルコール、メトキシメチルペンタノール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ブチルカルビトール、エチルカルビトール、エチルカルビトールアセテート、エチレングリコール、エチレングリコールモノアセテート、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコール−tert−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノアセテートモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノアセテートモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノアセテートモノプロピルエーテル、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、トリプロピレングリコールメチルエーテル、3−メチル−3−メトキシブタノール、ジイソプロピルエーテル、エチルイソブチルエーテル、ジイソブチレン、アミルアセテート、ブチルブチレート、ブチルエーテル、ジイソブチルケトン、メチルシクロへキセン、プロピルエーテル、ジヘキシルエーテル、1−ヘキサノール、n−へキサン、n−ペンタン、n−オクタン、ジエチルエーテル、乳酸メチル、乳酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸プロピレングリコールモノエチルエーテル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸メチルエチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸、3−メトキシプロピオン酸、3−メトキシプロピオン酸プロピル、3−メトキシプロピオン酸ブチル、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール、1−ブトキシ−2−プロパノール、1−フェノキシ−2−プロパノール、プロピレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールジアセテート、プロピレングリコール−1−モノメチルエーテル−2−アセテート、プロピレングリコール−1−モノエチルエーテル−2−アセテート、ジプロピレングリコール、2−(2−エトキシプロポキシ)プロパノール、乳酸メチルエステル、乳酸エチルエステル、乳酸n−プロピルエステル、乳酸n−ブチルエステル、乳酸イソアミルエステル等の低表面張力を有する溶媒等が挙げられる。
【0099】
これらの貧溶媒は、1種類でも複数種類を混合して用いてもよい。上述のような溶媒を用いる場合は、重合体組成物に含まれる溶媒全体の溶解性を著しく低下させることが無いように、溶媒全体の5質量%〜80質量%であることが好ましく、より好ましくは20質量%〜60質量%である。
【0100】
膜厚の均一性や表面平滑性を向上させる化合物としては、フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤およびノ二オン系界面活性剤等が挙げられる。
より具体的には、例えば、エフトップ(登録商標)301、EF303、EF352(トーケムプロダクツ社製)、メガファック(登録商標)F171、F173、R−30(DIC社製)、フロラードFC430、FC431(住友スリーエム社製)、アサヒガード(登録商標)AG710(旭硝子社製)、サーフロン(登録商標)S−382、SC101、SC102、SC103、SC104、SC105、SC106(AGCセイミケミカル社製)等が挙げられる。これらの界面活性剤の使用割合は、重合体組成物に含有される樹脂成分の100質量部に対して、好ましくは0.01質量部〜2質量部、より好ましくは0.01質量部〜1質量部である。
【0101】
液晶配向膜と基板との密着性を向上させる化合物の具体例としては、次に示す官能性シラン含有化合物などが挙げられる。
例えば、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、2−アミノプロピルトリメトキシシラン、2−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、N−エトキシカルボニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−エトキシカルボニル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−トリエトキシシリルプロピルトリエチレントリアミン、N−トリメトキシシリルプロピルトリエチレントリアミン、10−トリメトキシシリル−1,4,7−トリアザデカン、10−トリエトキシシリル−1,4,7−トリアザデカン、9−トリメトキシシリル−3,6−ジアザノニルアセテート、9−トリエトキシシリル−3,6−ジアザノニルアセテート、N−ベンジル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−ベンジル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−ビス(オキシエチレン)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−ビス(オキシエチレン)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0102】
さらに、基板と液晶配向膜の密着性の向上に加え、液晶表示素子を構成した時のバックライトによる電気特性の低下等を防ぐ目的で、以下のようなフェノプラスト系やエポキシ基含有化合物の添加剤を、重合体組成物中に含有させても良い。具体的なフェノプラスト系添加剤を以下に示すが、この構造に限定されない。
【0103】
【化21】
【0104】
具体的なエポキシ基含有化合物としては、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、2,2−ジブロモネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,3,5,6−テトラグリシジル−2,4−ヘキサンジオール、N,N,N’,N’,−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、N,N,N’,N’,−テトラグリシジル−4、4’−ジアミノジフェニルメタンなどが例示される。
【0105】
基板との密着性を向上させる化合物を使用する場合、その使用量は、重合体組成物に含有される樹脂成分の100質量部に対して0.1質量部〜30質量部であることが好ましく、より好ましくは1質量部〜20質量部である。使用量が0.1質量部未満であると密着性向上の効果は期待できず、30質量部よりも多くなると液晶の配向性が悪くなる場合がある。
【0106】
添加剤として、光増感剤を用いることもできる。無色増感剤および三重項増感剤が好ましい。
光増感剤としては、芳香族ニトロ化合物、クマリン(7−ジエチルアミノ−4−メチルクマリン、7−ヒドロキシ4−メチルクマリン)、ケトクマリン、カルボニルビスクマリン、芳香族2−ヒドロキシケトン、およびアミノ置換された、芳香族2−ヒドロキシケトン(2−ヒドロキシベンゾフェノン、モノ−もしくはジ−p−(ジメチルアミノ)−2−ヒドロキシベンゾフェノン)、アセトフェノン、アントラキノン、キサントン、チオキサントン、ベンズアントロン、チアゾリン(2−ベンゾイルメチレン−3−メチル−β−ナフトチアゾリン、2−(β−ナフトイルメチレン)−3−メチルベンゾチアゾリン、2−(α−ナフトイルメチレン)−3−メチルベンゾチアゾリン、2−(4−ビフェノイルメチレン)−3−メチルベンゾチアゾリン、2−(β−ナフトイルメチレン)−3−メチル
−β−ナフトチアゾリン、2−(4−ビフェノイルメチレン)−3−メチル−β−ナフトチアゾリン、2−(p−フルオロベンゾイルメチレン)−3−メチル−β−ナフトチアゾリン)、オキサゾリン(2−ベンゾイルメチレン−3−メチル−β−ナフトオキサゾリン、2−(β−ナフトイルメチレン)−3−メチルベンゾオキサゾリン、2−(α−ナフトイルメチレン)−3−メチルベンゾオキサゾリン、2−(4−ビフェノイルメチレン)−3−メチルベンゾオキサゾリン、2−(β−ナフトイルメチレン)−3−メチル−β−ナフトオキサゾリン、2−(4−ビフェノイルメチレン)−3−メチル−β−ナフトオキサゾリン、2−(p−フルオロベンゾイルメチレン)−3−メチル−β−ナフトオキサゾリン)、ベンゾチアゾール、ニトロアニリン(m−もしくはp−ニトロアニリン、2,4,6−トリニトロアニリン)またはニトロアセナフテン(5−ニトロアセナフテン)、(2−[(m−ヒドロキシ−p−メトキシ)スチリル]ベンゾチアゾール、ベンゾインアルキルエーテル、N−アルキル化フタロン、アセトフェノンケタール(2,2−ジメトキシフェニルエタノン)、ナフタレン、アントラセン(2−ナフタレンメタノール、2−ナフタレンカルボン酸、9−アントラセンメタノール、および9−アントラセンカルボン酸)、ベンゾピラン、アゾインドリジン、メロクマリン等がある。
好ましくは、芳香族2−ヒドロキシケトン(ベンゾフェノン)、クマリン、ケトクマリン、カルボニルビスクマリン、アセトフェノン、アントラキノン、キサントン、チオキサントン、およびアセトフェノンケタールである。
【0107】
重合体組成物には、上述したものの他、本発明の効果が損なわれない範囲であれば、液晶配向膜の誘電率や導電性などの電気特性を変化させる目的で、誘電体や導電物質、さらには、液晶配向膜にした際の膜の硬度や緻密度を高める目的で、架橋性化合物を添加してもよい。
【0108】
上述した重合体組成物を横電界駆動用の導電膜を有する基板上に塗布する方法は特に限定されない。
塗布方法は、工業的には、スクリーン印刷、オフセット印刷、フレキソ印刷またはインクジェット法などで行う方法が一般的である。その他の塗布方法としては、ディップ法、ロールコータ法、スリットコータ法、スピンナ法(回転塗布法)またはスプレー法などがあり、目的に応じてこれらを用いてもよい。
【0109】
横電界駆動用の導電膜を有する基板上に重合体組成物を塗布した後は、ホットプレート、熱循環型オーブンまたはIR(赤外線)型オーブンなどの加熱手段により50〜200℃、好ましくは50〜150℃で溶媒を蒸発させて塗膜を得ることができる。このときの乾燥温度は、側鎖型高分子の液晶相発現温度よりも低いことが好ましい。
塗膜の厚みは、厚すぎると液晶表示素子の消費電力の面で不利となり、薄すぎると液晶表示素子の信頼性が低下する場合があるので、好ましくは5nm〜300nm、より好ましくは10nm〜150nmである。
尚、[I]工程の後、続く[II]工程の前に塗膜の形成された基板を室温にまで冷却する工程を設けることも可能である。
【0110】
<工程[II]>
工程[II]では、工程[I]で得られた塗膜に偏光した紫外線を照射する。塗膜の膜面に偏光した紫外線を照射する場合、基板に対して一定の方向から偏光板を介して偏光された紫外線を照射する。使用する紫外線としては、波長100nm〜400nmの範囲の紫外線を使用することができる。好ましくは、使用する塗膜の種類によりフィルター等を介して最適な波長を選択する。そして、例えば、選択的に光架橋反応を誘起できるように、波長290nm〜400nmの範囲の紫外線を選択して使用することができる。紫外線としては、例えば、高圧水銀灯から放射される光を用いることができる。
【0111】
偏光した紫外線の照射量は、使用する塗膜に依存する。照射量は、該塗膜における、偏光した紫外線の偏光方向と平行な方向の紫外線吸光度と垂直な方向の紫外線吸光度との差であるΔAの最大値(以下、ΔAmaxとも称する)を実現する偏光紫外線の量の1%〜70%の範囲内とすることが好ましく、1%〜50%の範囲内とすることがより好ましい。
【0112】
<工程[III]>
工程[III]では、工程[II]で偏光した紫外線の照射された塗膜を加熱する。加熱により、塗膜に配向制御能を付与することができる。
加熱は、ホットプレート、熱循環型オーブンまたはIR(赤外線)型オーブンなどの加熱手段を用いることができる。加熱温度は、使用する塗膜の液晶性を発現させる温度を考慮して決めることができる。
【0113】
加熱温度は、側鎖型高分子が液晶性を発現する温度(以下、液晶発現温度という)の温度範囲内であることが好ましい。塗膜のような薄膜表面の場合、塗膜表面の液晶発現温度は、液晶性を発現し得る感光性の側鎖型高分子をバルクで観察した場合の液晶発現温度よりも低いことが予想される。このため、加熱温度は、塗膜表面の液晶発現温度の温度範囲内であることがより好ましい。すなわち、偏光紫外線照射後の加熱温度の温度範囲は、使用する鎖型高分子の液晶発現温度の温度範囲の下限より10℃低い温度を下限とし、その液晶温度範囲の上限より10℃低い温度を上限とする範囲の温度であることが好ましい。加熱温度が、上記温度範囲よりも低いと、塗膜における熱による異方性の増幅効果が不十分となる傾向があり、また加熱温度が、上記温度範囲よりも高すぎると、塗膜の状態が等方性の液体状態(等方相)に近くなる傾向があり、この場合、自己組織化によって一方向に再配向することが困難になることがある。
なお、液晶発現温度は、側鎖型高分子または塗膜表面が固体相から液晶相に相転移がおきるガラス転移温度(Tg)以上であって、液晶相からアイソトロピック相(等方相)に相転移を起こすアイソトロピック相転移温度(Tiso)以下の温度をいう。
【0114】
加熱後に形成される塗膜の厚みは、工程[I]で記した同じ理由から、好ましくは5nm〜300nm、より好ましくは50nm〜150nmであるのがよい。
【0115】
以上の工程を有することにより、本発明の製造方法では、高効率な、塗膜への異方性の導入を実現することができる。そして、高効率に液晶配向膜付基板を製造することができる。
【0116】
<工程[IV]>
[IV]工程は、[III]で得られた、横電界駆動用の導電膜上に液晶配向膜付を有する基板(第1の基板)と、同様に上記[I’]〜[III’]で得られた、導電膜を有しない液晶配向膜付基板(第2の基板)とを、液晶を介して、双方の液晶配向膜が相対するように対向配置して、公知の方法で液晶セルを作製し、横電界駆動型液晶表示素子を作製する工程である。なお、工程[I’]〜[III’]は、工程[I]において、横電界駆動用の導電膜を有する基板の代わりに、該横電界駆動用導電膜を有しない基板を用いた以外、工程[I]〜[III]と同様に行うことができる。工程[I]〜[III]と工程[I’]〜[III’]との相違点は、上述した導電膜の有無だけであるため、工程[I’]〜[III’]の説明を省略する。
【0117】
液晶セル又は液晶表示素子の作製の一例を挙げるならば、上述の第1及び第2の基板を用意し、片方の基板の液晶配向膜上にスペーサを散布し、液晶配向膜面が内側になるようにして、もう片方の基板を貼り合わせ、液晶を減圧注入して封止する方法、または、スペーサを散布した液晶配向膜面に液晶を滴下した後に、基板を貼り合わせて封止を行う方法、等を例示することができる。このとき、片側の基板には横電界駆動用の櫛歯のような構造の電極を有する基板を用いることが好ましい。このときのスペーサの径は、好ましくは1μm〜30μm、より好ましくは2μm〜10μmである。このスペーサ径が、液晶層を挟持する一対の基板間距離、すなわち、液晶層の厚みを決めることになる。
【0118】
本発明の塗膜付基板の製造方法は、重合体組成物を基板上に塗布し塗膜を形成した後、偏光した紫外線を照射する。次いで、加熱を行うことにより側鎖型高分子膜への高効率な異方性の導入を実現し、液晶の配向制御能を備えた液晶配向膜付基板を製造する。
本発明に用いる塗膜では、側鎖の光反応と液晶性に基づく自己組織化によって誘起される分子再配向の原理を利用して、塗膜への高効率な異方性の導入を実現する。本発明の製造方法では、側鎖型高分子に光反応性基として光架橋性基を有する構造の場合、側鎖型高分子を用いて基板上に塗膜を形成した後、偏光した紫外線を照射し、次いで、加熱を行った後、液晶表示素子を作成する。
【0119】
以下、光反応性基として光架橋性基を有する構造の側鎖型高分子を用いた実施の形態を第1の形態、光反応性基として光フリース転位基又は異性化を起こす基を有する構造の側鎖型高分子を用いた実施の形態を第2の形態と称して説明する。
【0120】
図1は、本発明における第1の形態において、光反応性基として光架橋性基を有する構造の側鎖型高分子を用いた液晶配向膜の製造方法における異方性の導入処理を模式的に説明する一つの例の図である。図1(a)は、偏光照射前の側鎖型高分子膜の状態を模式的に示す図であり、図1(b)は、偏光照射後の側鎖型高分子膜の状態を模式的に示す図であり、図1(c)は、加熱後の側鎖型高分子膜の状態を模式的に示す図であり、特に導入された異方性が小さい場合、すなわち、本発明の第1の形態において、[II]工程の紫外線照射量が、ΔAを最大にする紫外線照射量の1%〜15%の範囲内である場合の模式図である。
【0121】
図2は、本発明における第1の形態において、光反応性基として光架橋性基を有する構造の側鎖型高分子を用いた液晶配向膜の製造方法における異方性の導入処理を模式的に説明する一つの例の図である。図2(a)は、偏光照射前の側鎖型高分子膜の状態を模式的に示す図であり、図2(b)は、偏光照射後の側鎖型高分子膜の状態を模式的に示す図であり、図2(c)は、加熱後の側鎖型高分子膜の状態を模式的に示す図であり、特に導入された異方性が大きい場合、すなわち、本発明の第1の形態において、[II]工程の紫外線照射量が、ΔAを最大にする紫外線照射量の15%〜70%の範囲内である場合の模式図である。
【0122】
図3は、本発明における第2の形態において、光反応性基として光異性化性基か、上述の式(18)で表される、光フリース転位基を有する構造の側鎖型高分子を用いた液晶配向膜の製造方法における異方性の導入処理を模式的に説明する一つの例の図である。図3(a)は、偏光照射前の側鎖型高分子膜の状態を模式的に示す図であり、図3(b)は、偏光照射後の側鎖型高分子膜の状態を模式的に示す図であり、図3(c)は、加熱後の側鎖型高分子膜の状態を模式的に示す図であり、特に導入された異方性が小さい場合、すなわち、本発明の第2の態様において、[II]工程の紫外線照射量が、ΔAを最大にする紫外線照射量の1%〜70%の範囲内である場合の模式図である。
【0123】
図4は、本発明における第2の形態において、光反応性基として上述の式(19)で表される、光フリース転位基を有する構造の側鎖型高分子を用いた液晶配向膜の製造方法における異方性の導入処理を模式的に説明する一つの例の図である。図4(a)は、偏光照射前の側鎖型高分子膜の状態を模式的に示す図であり、図4(b)は、偏光照射後の側鎖型高分子膜の状態を模式的に示す図であり、図4(c)は、加熱後の側鎖型高分子膜の状態を模式的に示す図であり、特に導入された異方性が大きい場合、すなわち、本発明の第2の態様において、[II]工程の紫外線照射量が、ΔAを最大にする紫外線照射量の1%〜70%の範囲内である場合の模式図である。
【0124】
本発明における第1の形態において、塗膜への異方性の導入処理で、[II]工程の紫外線照射量が、ΔAを最大にする紫外線照射量の1%〜15%の範囲内である場合は、先ず、基板上に塗膜1を形成する。図1(a)に示すように、基板上に形成された塗膜1では、側鎖2がランダムに配列する構造を有する。塗膜1の側鎖2のランダム配列に従い、側鎖2のメソゲン成分および感光性基もランダムに配向しており、その塗膜1は等方性である。
【0125】
本発明における第1の形態において、塗膜への異方性の導入処理で、[II]工程の紫外線照射量が、ΔAを最大にする紫外線照射量の15%〜70%の範囲内である場合は、先ず、基板上に塗膜3を形成する。図2(a)に示すように、基板上に形成された塗膜3では、側鎖4がランダムに配列する構造を有する。塗膜3の側鎖4のランダム配列に従い、側鎖4のメソゲン成分および感光性基もランダムに配向しており、その塗膜2は等方性である。
【0126】
本発明における第2の形態において、塗膜への異方性の導入処理で、光異性化性基か、上述の式(18)で表される、光フリース転位基を有する構造の側鎖型高分子を用いた液晶配向膜を用いた場合において、[II]工程の紫外線照射量が、ΔAを最大にする紫外線照射量の1%〜70%の範囲内である場合は、先ず、基板上に塗膜5を形成する。図3(a)に示すように、基板上に形成された塗膜5では、側鎖6がランダムに配列する構造を有する。塗膜5の側鎖6のランダム配列に従い、側鎖6のメソゲン成分および感光性基もランダムに配向しており、その側鎖型高分子膜5は等方性である。
【0127】
本発明における第2の形態において、塗膜への異方性の導入処理で、上述の式(19)で表される、光フリース転位基を有する構造の側鎖型高分子を用いた液晶配向膜を用いた場合において、[II]工程の紫外線照射量が、ΔAを最大にする紫外線照射量の1%〜70%の範囲内である場合は、先ず、基板上に塗膜7を形成する。図4(a)に示すように、基板上に形成された塗膜7では、側鎖8がランダムに配列する構造を有する。塗膜7の側鎖8のランダム配列に従い、側鎖8のメソゲン成分および感光性基もランダムに配向しており、その塗膜7は等方性である。
【0128】
本実施の第1の形態で、[II]工程の紫外線照射量が、ΔAを最大にする紫外線照射量の1%〜15%の範囲内である場合において、この等方性の塗膜1に対し、偏光した紫外線を照射する。すると、図1(b)に示すように、紫外線の偏光方向と平行な方向に配列する側鎖2のうちの感光性基を有する側鎖2aの感光性基が優先的に二量化反応などの光反応を起こす。その結果、光反応をした側鎖2aの密度が照射紫外線の偏光方向で僅かに高くなり、結果として塗膜1に非常に小さな異方性が付与される。
【0129】
本実施の第1の形態で、[II]工程の紫外線照射量が、ΔAを最大にする紫外線照射量の15%〜70%の範囲内である場合において、この等方性の塗膜3に対し、偏光した紫外線を照射する。すると、図2(b)に示すように、紫外線の偏光方向と平行な方向に配列する側鎖4のうちの感光性基を有する側鎖4aの感光性基が優先的に二量化反応などの光反応を起こす。その結果、光反応をした側鎖4aの密度が照射紫外線の偏光方向で高くなり、結果として塗膜3に小さな異方性が付与される。
【0130】
本実施の第2の形態で、光異性化性基か、上述の式(18)で表される、光フリース転位基を有する構造の側鎖型高分子を用いた液晶配向膜を用いて、[II]工程の紫外線照射量が、ΔAを最大にする紫外線照射量の1%〜70%の範囲内である場合において、この等方性の塗膜5に対し、偏光した紫外線を照射する。すると、図3(b)に示すように、紫外線の偏光方向と平行な方向に配列する側鎖6のうちの感光性基を有する側鎖6aの感光性基が優先的に光フリース転位などの光反応を起こす。その結果、光反応をした側鎖6aの密度が照射紫外線の偏光方向で僅かに高くなり、結果として塗膜5に非常に小さな異方性が付与される。
【0131】
本実施の第2の形態で、上述の式(19)で表される、光フリース転位基を有する構造の側鎖型高分子を用いた塗膜を用いて、[II]工程の紫外線照射量が、ΔAを最大にする紫外線照射量の1%〜70%の範囲内である場合において、この等方性の塗膜7に対し、偏光した紫外線を照射する。すると、図4(b)に示すように、紫外線の偏光方向と平行な方向に配列する側鎖8のうちの感光性基を有する側鎖8aの感光性基が優先的に光フリース転位などの光反応を起こす。その結果、光反応をした側鎖8aの密度が照射紫外線の偏光方向で高くなり、結果として塗膜7に小さな異方性が付与される。
【0132】
次いで、本実施の第1の形態で、[II]工程の紫外線照射量が、ΔAを最大にする紫外線照射量の1%〜15%の範囲内である場合において、偏光照射後の塗膜1を加熱し、液晶状態にする。すると図1(c)に示すように、塗膜1では、照射紫外線の偏光方向と平行な方向と垂直な方向との間で、生じた架橋反応の量が異なっている。この場合、照射紫外線の偏光方向と平行方向に生じた架橋反応の量が非常に小さいため、この架橋反応部位は可塑剤としての働きをする。そのため、照射紫外線の偏光方向と垂直方向の液晶性が平行方向の液晶性より高くなり、照射紫外線の偏光方向と平行な方向に自己組織化してメソゲン成分を含む側鎖2が再配向する。その結果、光架橋反応で誘起された塗膜1の非常に小さな異方性は、熱によって増幅され、塗膜1においてより大きな異方性が付与されることになる。
【0133】
同様に、本実施の第1の形態で、[II]工程の紫外線照射量が、ΔAを最大にする紫外線照射量の15%〜70%の範囲内である場合において、偏光照射後の塗膜3を加熱し、液晶状態にする。すると図2(c)に示すように、側鎖型高分子膜3では、照射紫外線の偏光方向と平行な方向と垂直な方向との間で、生じた架橋反応の量が異なっている。そのため、照射紫外線の偏光方向と平行な方向に自己組織化してメソゲン成分を含む側鎖4が再配向する。その結果、光架橋反応で誘起された塗膜3の小さな異方性は、熱によって増幅され、塗膜3においてより大きな異方性が付与されることになる。
【0134】
同様に、本実施の第2の形態で、光異性化性基か、上述の式(18)で表される、光フリース転位基を有する構造の側鎖型高分子を用いた塗膜を用いて、[II]工程の紫外線照射量が、ΔAを最大にする紫外線照射量の1%〜70%の範囲内である場合において、偏光照射後の塗膜5を加熱し、液晶状態にする。すると図3(c)に示すように、塗膜5では、照射紫外線の偏光方向と平行な方向と垂直な方向との間で、生じた光フリース転位反応の量が異なっている。この場合、照射紫外線の偏光方向と垂直方向に生じた光フリース転位体の液晶配向力が反応前の側鎖の液晶配向力より強いため、照射紫外線の偏光方向と垂直な方向に自己組織化してメソゲン成分を含む側鎖6が再配向する。その結果、光フリース転位反応で誘起された塗膜5の非常に小さな異方性は、熱によって増幅され、塗膜5においてより大きな異方性が付与されることになる。
【0135】
同様に、本実施の第2の形態で、上述の式(19)で表される、光フリース転位基を有する構造の側鎖型高分子を用いた塗膜を用いて、[II]工程の紫外線照射量が、ΔAを最大にする紫外線照射量の1%〜70%の範囲内である場合において、偏光照射後の塗膜7を加熱し、液晶状態にする。すると図4(c)に示すように、側鎖型高分子膜7では、照射紫外線の偏光方向と平行な方向と垂直な方向との間で、生じた光フリース転位反応の量が異なっている。光フリース転位体8(a)のアンカリング力は転位前の側鎖8より強いため、ある一定量以上の光フリース転位体が生じると、照射紫外線の偏光方向と平行な方向に自己組織化してメソゲン成分を含む側鎖8が再配向する。その結果、光フリース転位反応で誘起された塗膜7の小さな異方性は、熱によって増幅され、塗膜7においてより大きな異方性が付与されることになる。
【0136】
したがって、本発明の方法に用いる塗膜は、塗膜への偏光した紫外線の照射と加熱処理を順次行うことにより、高効率に異方性が導入され、配向制御能に優れた液晶配向膜とすることができる。
【0137】
そして、本発明の方法に用いる塗膜では、塗膜への偏光した紫外線の照射量と、加熱処理における加熱温度を最適化する。それにより高効率な、塗膜への異方性の導入を実現することができる。
【0138】
本発明に用いられる塗膜への高効率な異方性の導入に最適な偏光紫外線の照射量は、その塗膜において感光性基が光架橋反応や光異性化反応、若しくは光フリース転位反応する量を最適にする偏光紫外線の照射量に対応する。本発明に用いられる塗膜に対して偏光した紫外線を照射した結果、光架橋反応や光異性化反応、若しくは光フリース転位反応する側鎖の感光性基が少ないと、十分な光反応量とならない。その場合、その後に加熱しても十分な自己組織化は進行しない。一方、本発明に用いられる塗膜で、光架橋性基を有する構造に対して偏光した紫外線を照射した結果、架橋反応する側鎖の感光性基が過剰となると側鎖間での架橋反応が進行しすぎることになる。その場合、得られる膜は剛直になって、その後の加熱による自己組織化の進行の妨げとなることがある。また、本発明に用いられる塗膜で、光フリース転位基を有する構造に対して偏光した紫外線を照射した結果、光フリース転位反応する側鎖の感光性基が過剰となると、塗膜の液晶性が低下しすぎることになる。その場合、得られる膜の液晶性も低下し、その後の加熱による自己組織化の進行の妨げとなることがある。さらに、光フリース転位基を有する構造に対して偏光した紫外線を照射する場合、紫外線の照射量が多すぎると、側鎖型高分子が光分解し、その後の加熱による自己組織化の進行の妨げとなることがある。
【0139】
したがって、本発明に用いられる塗膜において、偏光紫外線の照射によって側鎖の感光性基が光架橋反応や光異性化反応、若しくは光フリース転位反応する最適な量は、その側鎖型高分子膜の有する感光性基の0.1モル%〜40モル%にすることが好ましく、0.1モル%〜20モル%にすることがより好ましい。光反応する側鎖の感光性基の量をこのような範囲にすることにより、その後の加熱処理での自己組織化が効率良く進み、膜中での高効率な異方性の形成が可能となる。
【0140】
本発明の方法に用いる塗膜では、偏光した紫外線の照射量の最適化により、側鎖型高分子膜の側鎖における、感光性基の光架橋反応や光異性化反応、または光フリース転位反応の量を最適化する。そして、その後の加熱処理と併せて、高効率な、本発明に用いられる塗膜への異方性の導入を実現する。その場合、好適な偏光紫外線の量については、本発明に用いられる塗膜の紫外吸収の評価に基づいて行うことが可能である。
【0141】
すなわち、本発明に用いられる塗膜について、偏光紫外線照射後の、偏光した紫外線の偏光方向と平行な方向の紫外線吸収と、垂直な方向の紫外線吸収とをそれぞれ測定する。紫外吸収の測定結果から、その塗膜における、偏光した紫外線の偏光方向と平行な方向の紫外線吸光度と垂直な方向の紫外線吸光度との差であるΔAを評価する。そして、本発明に用いられる塗膜において実現されるΔAの最大値(ΔAmax)とそれを実現する偏光紫外線の照射量を求める。本発明の製造方法では、このΔAmaxを実現する偏光紫外線照射量を基準として、液晶配向膜の製造において照射する、好ましい量の偏光した紫外線量を決めることができる。
【0142】
本発明の製造方法では、本発明に用いられる塗膜への偏光した紫外線の照射量を、ΔAmaxを実現する偏光紫外線の量の1%〜70%の範囲内とすることが好ましく、1%〜50%の範囲内とすることがより好ましい。本発明に用いられる塗膜において、ΔAmaxを実現する偏光紫外線の量の1%〜50%の範囲内の偏光紫外線の照射量は、その側鎖型高分子膜の有する感光性基全体の0.1モル%〜20モル%を光架橋反応させる偏光紫外線の量に相当する。
【0143】
以上より、本発明の製造方法では、塗膜への高効率な異方性の導入を実現するため、その側鎖型高分子の液晶温度範囲を基準として、上述したような好適な加熱温度を定めるのがよい。したがって、例えば、本発明に用いられる側鎖型高分子の液晶温度範囲が100℃〜200℃である場合、偏光紫外線照射後の加熱の温度を90℃〜190℃とすることが望ましい。こうすることにより、本発明に用いられる塗膜において、より大きな異方性が付与されることになる。
【0144】
こうすることにより、本発明によって提供される液晶表示素子は光や熱などの外部ストレスに対して高い信頼性を示すことになる。
【0145】
以上のようにして、本発明の方法によって製造された横電界駆動型液晶表示素子用基板又は該基板を有する横電界駆動型液晶表示素子は、信頼性に優れたものとなり、大画面で高精細の液晶テレビなどに好適に利用できる。
【実施例】
【0146】
実施例で使用する略号は以下のとおりである。
(メタクリルモノマー)
下記のMA3を用いた。該MA3は、非特許文献(Macromolecules 2002, 35, 706−713)に記載の合成法にて合成した。
【0147】
【化22】
【0148】
(有機溶媒)
THF:テトラヒドロフラン
NMP:N−メチル−2−ピロリドン
BC:ブチルセロソルブ
CHCl:ジクロロメタン
(重合開始剤)
AIBN:2,2’−アゾビスイソブチロニトリル
(RAFT剤)
CPDT:2-シアノ-2-プロピルドデシルトリチオカーボネート
【0149】
[相転移温度の測定]
実施例により得られたポリマーの液晶相転移温度は示差走査熱量測定(DSC)DSC3100SR(マック・サイエンス社製)を用いて測定した。
【0150】
<実施例1>
MA3(10.29g、20.0mmol)をNMP(94.1g)中に溶解し、ダイアフラムポンプで脱気を行った後、AIBN(0.164g、1.0mmol)を加え再び脱気を行った。この後50℃で30時間反応させメタクリレートのポリマー溶液を得た。このポリマー溶液をメタノール(1000ml)に滴下し、得られた沈殿物をろ過した。この沈澱物をメタノールで洗浄し、40℃のオーブン中で減圧乾燥しメタクリレートポリマー粉末(C)を得た。このポリマーの数平均分子量は19000、重量平均分子量は39000であった。
【0151】
得られたメタクリレートポリマーの液晶相転移温度は150℃〜300℃であった。
得られたメタクリレートポリマー粉末(C)(1.0g)にCHCl(99.0g)を加え、室温で5時間攪拌して溶解させ液晶配向剤(C1)を得た。
【0152】
[液晶セルの作製]
上記で得られた液晶配向剤(C1)を用いて下記に示すような手順で液晶セルの作製を行った。
基板は、30mm×40mmの大きさで、厚さが0.7mmのガラス基板であり、ITO膜をパターニングして形成された櫛歯状の画素電極が配置されたものを用いた。
画素電極は、中央部分が屈曲したくの字形状の電極要素を複数配列して構成された櫛歯状の形状を有する。各電極要素の短手方向の幅は10μmであり、電極要素間の間隔は20μmである。各画素を形成する画素電極が、中央部分の屈曲したくの字形状の電極要素を複数配列して構成されているため、各画素の形状は長方形状ではなく、電極要素と同様に中央部分で屈曲する、太字のくの字に似た形状を備える。
そして、各画素は、その中央の屈曲部分を境にして上下に分割され、屈曲部分の上側の第1領域と下側の第2領域を有する。各画素の第1領域と第2領域とを比較すると、それらを構成する画素電極の電極要素の形成方向が異なるものとなっている。すなわち、後述する液晶配向膜の配向処理方向を基準とした場合、画素の第1領域では画素電極の電極要素が+15°の角度(時計回り)をなすように形成され、画素の第2領域では画素電極の電極要素が−15°の角度(時計回り)をなすように形成されている。すなわち、各画素の第1領域と第2領域とでは、画素電極と対向電極との間の電圧印加によって誘起される液晶の、基板面内での回転動作(インプレーン・スイッチング)の方向が互いに逆方向となるように構成されている。
上記で得られた液晶配向剤(C1)を、準備された上記電極付き基板にスピンコートした。次いで、70℃のホットプレートで90秒間乾燥し、膜厚100nmの液晶配向膜を形成した。次いで、塗膜面に偏光板を介して313nmの紫外線を300mJ/cm照射した後に180℃のホットプレートで10分間加熱し、液晶配向膜付き基板を得た。
【0153】
また、対向基板として電極が形成されていない高さ4μmの柱状スペーサーを有するガラス基板にも、同様に塗膜を形成させ、配向処理を施した。一方の基板の液晶配向膜上にシール剤(協立化学製XN−1500T)を印刷した。次いで、もう一方の基板を、液晶配向膜面が向き合い配向方向が0°になるようにして張り合わせた後、シール剤を熱硬化させて空セルを作製した。この空セルに減圧注入法によって、液晶MLC−2041(メルク株式会社製)を注入し、注入口を封止して、IPS(In−Planes Switching)モード液晶表示素子の構成を備えた液晶セルを得た。
この液晶セルの配向状態を確認したところ、流動配向等の配向不良は見られず、良好に液晶が配向していることが確認された。
【0154】
<実施例2>
MA3(10.3g、20.0mmol)をTHF(94.0g)中に溶解し、ダイアフラムポンプで脱気を行った後、AIBN(0.098g、0.6mmol)を加え再び脱気を行った。この後、50℃で30時間反応させメタクリレートのポリマー溶液を得た。このポリマー溶液をメタノール(1000ml)に滴下し、得られた沈殿物をろ過した。この沈澱物をメタノールで洗浄し、40℃のオーブン中で減圧乾燥しメタクリレートポリマー粉末(P5)を得た。このポリマーの数平均分子量は39,000、重量平均分子量は81,000であった。
このポリマー粉末を用いて、実施例1と同様の方法にて液晶配向剤を調製し、その液晶配向剤を用いて実施例1と同様に液晶セルを作成し、その配向状態を確認したところ、流動配向等の配向不良は見られず、良好に液晶が配向していることが確認された。
【0155】
<実施例3>
実施例2において、AIBN(0.098g、0.6mmol)の代わりにAIBN(0.036g、0.22mmol)を用いた以外、実施例2と同様に、メタクリレートポリマー粉末(P6)を得た。このポリマーの数平均分子量は59,000、重量平均分子量は118,600であった。
このポリマー粉末を用いて、実施例1と同様の方法にて液晶配向剤を調製し、その液晶配向剤を用いて実施例1と同様に液晶セルを作成し、その配向状態を確認したところ、流動配向等の配向不良は見られず、良好に液晶が配向していることが確認された。
【0156】
<実施例4>
MA3(3.7g、7.2mmol)、CPDT(252mg、0.73mmol)、及びAIBN(46mg、0.28mmol)をTHF(30ml)に溶解し、脱気を行った。この後、55℃で1日間加熱後、溶液をジエチルエーテル中に注入し、淡黄色のポリマーを得た。該ポリマーをクロロホルムからジエチルエーテルへと変える再沈殿法で3回精製し、ポリマー(2.6g、収率64wt%)を得た。得られたポリマーをn-ブチルアミンと共に、クロロホルムに溶解し、攪拌後、得られた溶液をジエチルエーテルへ注ぎ、無色のメタクリレートポリマー(P2)を得た。該ポリマー(P2)をクロロホルムからジエチルエーテルへと変える再沈殿法で2回精製した。
このポリマー(P2)の数平均分子量は4,600、重量平均分子量は6,600であった。
このポリマー粉末を用いて、実施例1と同様の方法にて液晶配向剤を調製し、その液晶配向剤を用いて実施例1と同様に液晶セルを作成し、その配向状態を確認したところ、流動配向等の配向不良は見られず、良好に液晶が配向していることが確認された。
【0157】
<実施例5>
実施例4におけるCPDT/MA3/AIBNのモル比を、実施例4(0.73/7.2/0.28)から実施例5(0.064/1.3/0.025)へと変更した以外、実施例4と同様の方法により、メタクリレートポリマー(P3)を得た。
このポリマー(P3)の数平均分子量は10,200、重量平均分子量は12,000であった。
このポリマー粉末を用いて、実施例1と同様の方法にて液晶配向剤を調製し、その液晶配向剤を用いて実施例1と同様に液晶セルを作成し、その配向状態を確認したところ、流動配向等の配向不良は見られず、良好に液晶が配向していることが確認された。
【0158】
<実施例6>
実施例4におけるCPDT/MA3/AIBNのモル比を、実施例4(0.73/7.2/0.28)から実施例6(0.067/4/0.026)へと変更した以外、実施例4と同様の方法により、メタクリレートポリマー(P4)を得た。
このポリマー(P4)の数平均分子量は18,200、重量平均分子量は22,200であった。
このポリマー粉末を用いて、実施例1と同様の方法にて液晶配向剤を調製し、その液晶配向剤を用いて実施例1と同様に液晶セルを作成し、その配向状態を確認したところ、流動配向等の配向不良は見られず、良好に液晶が配向していることが確認された。
【0159】
<比較例1>
実施例4におけるCPDT/MA3/AIBNのモル比を、実施例4(0.73/7.2/0.28)から比較例1(1.4/7/0.56)へと変更した以外、実施例4と同様の方法により、メタクリレートポリマー(P1)を得た。
このポリマー(P1)の数平均分子量は3,100、重量平均分子量は4,800であった。
このポリマー粉末を用いて、実施例1と同様の方法にて液晶配向剤を調製し、その液晶配向剤を用いて実施例1と同様に液晶セルを作成し、その配向状態を確認したところ、流動配向等の配向不良が見られた。
なお、実施例2〜実施例6及び比較例1のメタクリレートポリマーP1〜P6の合成スキームを以下に示す。
【0160】
【化23】
【0161】
<<異方性の発現>>
実施例2〜実施例6及び比較例1で得られたメタクリレートポリマーP1〜P6について、異方性が発現するのか否かについて測定した。
<測定試料>
各メタクリレートポリマーの塩化メチレン溶液(1w/w%)を準備し、該溶液を石英基板上にスピンコーティングし、70℃のホットプレートで90秒間乾燥することにより、ポリマーフィルム(0.1〜0.2μm)を得た。
該ポリマーフィルムに、偏光板を介して314nmの紫外線を3mJ/cmから3J/cmまで変化させて照射した後(ポリマーP1〜P6の光反応性側鎖の光反応量が40mol%までに相当する)、180℃のホットプレートで10分間加熱することにより、波長314nmにおけるS値及びDP(Degree of photoreaction)値を求め、異方性の発現について調べた。
【0162】
波長λにおけるSλ値は、異方性の発現を量る尺度である。具体的には、A(偏光紫外線の電界ベクトルに対して垂直方向の、ある波長λにおける吸光度)及びA(A値と同一波長λにおける、偏光紫外線の電界ベクトルに対して平行方向の吸光度)から、以下の式により求められる。なお、Aの測定値及びAの測定値の大小により、以下のi)又はii)に分けて求められる。
【0163】
【数1】
【0164】
DP値は、UV吸収の吸光度の変化による反応の進み具合の指標である。具体的には、膜中のシンナモイル基が全く反応していない場合における、シンナモイル基が示す、ある波長におけるUV吸収の状態(光照射前)を0%とし、光照射後、シンナモイル基を示すUV吸収が全くなくなった状態を100%として換算される値である。
【0165】
図5は、実施例2〜実施例6及び比較例1で得られたメタクリレートポリマーP1〜P6についての異方性の発現を示すグラフである。図5は、縦軸が波長314nmにおけるS値を示し、横軸にDP値を示す。
図5を見ると、P3〜P6についてのS値の最大値が0.7を越えていることがわかる。また、P2についてのS値の最大値は0.2を越えていることがわかる。一方、P1についてのS値の最大値は、0.1程度であることがわかる。一般に、S値の最大値が0.2を越えると、異方性の発現がある、と言われている。このことから、実施例2〜実施例6のメタクリレートポリマーP2〜P6(数平均分子量4,600〜59,000)は異方性が発現されることがわかる。特に、実施例2〜3、5〜6(数平均分子量10,200〜59,000)のメタクリレートポリマーP3〜P6は、S値の最大値が0.7を越えており、異方性の発現が顕著であることがわかる。一方、比較例1のメタクリレートポリマーP1(数平均分子量3,100)は、Sの値の最大値が0.1程度であり、異方性が発現しないことがわかる。
【符号の説明】
【0166】
図1
1 側鎖型高分子膜
2、2a 側鎖
図2
3 側鎖型高分子膜
4、4a 側鎖
図3
5 側鎖型高分子膜
6、6a 側鎖
図4
7 側鎖型高分子膜
8、8a 側鎖
図1
図2
図3
図4
図5