(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
精製前の炭素前駆中のカリウムの含有量K(a)、マグネシウムの含有量Mg(a)およびカルシウムの含有量Ca(a)に対する精製後の炭素前駆体中のカリウムの含有量K(b)、マグネシウムの含有量Mg(b)およびカルシウムの含有量Ca(b)の割合は、
K(b)/K(a)≦0.15
Mg(b)/Mg(a)≦0.25
Ca(b)/Ca(a)≦0.25
である、請求項1に記載の方法。
【背景技術】
【0002】
炭素材は、コンデンサー用電極、電解用電極、活性炭、担持体など様々な用途に用いられており、今後更なる開発が期待されている分野および素材である。これらの炭素材は従来、椰子殻、石炭コークス、石炭または石油ピッチ、フラン樹脂またはフェノール樹脂等を原料として製造される。近年、化石燃料資源の使用は、地球環境に影響を与え、および埋蔵量の減少による価格高騰にも起因して今後の使用が困難になることが予想されている。
【0003】
そこで、地球環境に優しい素材として天然素材を原料として用いて製造された炭素材が注目されている。しかしながら、天然素材には、生物の生命活動維持に必要である種々の金属が含まれている。したがって、天然由来の炭素材を電子材料に用いた場合、このような金属が不純物となり、電気的な障害が生じることが懸念される。また、水のろ過等に用いられる活性炭などの吸着剤では、吸着した物質と金属とが反応し、水溶性物質が形成され、水中へ再び放出される等の問題が生じる上に、炭化賦活時に、残留する金属により、孔形成反応が加速され、必要以上に多孔化が進行する。さらに、触媒担持体においては、担持する触媒金属と含有不純物金属との反応により、目的とした粒径または組成で触媒成分を担持できない等の問題が生じる。しかしながら、植物に由来する金属を積極的に除去および精製する方法に関する技術開発はあまり行われていない。
【0004】
このような状況下、炭化物を塩酸のような鉱酸や水酸化ナトリウムのような塩基と併せて精製する方法が提案されている(例えば特許文献1)。
【0005】
しかしながら、特許文献1において提案されている方法は、材料を800℃〜1400℃にて炭化した後、酸またはアルカリで処理する方法であるため、金属分が炭化時に炭素と化合するため十分に除去されない。また、特許文献1では、炭素と化合後のケイ素を除去するために、腐食性が高い毒劇物であるフッ化水素酸がケイ素化合物に対して過剰量添加されている。しかしながら、フッ化水素酸は、マグネシウムやカルシウムの除去効果は十分でなく、リンについては除去することが困難である。さらに、特許文献1の方法では、植物に由来する金属元素の含有量は、季節や地域により含有量が異なり、工業原料として平滑化することが難しい等の問題もある。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明では、炭素前駆体とは、炭化を行う前の植物由来物質を意味する。本発明の方法では、炭素前駆体として、植物由来の炭素前駆体を用いる。植物由来の炭素前駆体としては、特に限定されるものではなく、籾殻、珈琲抽出殻、椰子殻等を用いることができる。
【0012】
本発明では、入手可能性および金属元素の含有量の低減効果の観点から椰子殻を使用することが好ましい。また、椰子殻としては、特に限定されないが、ココ椰子、パーム椰子等の椰子殻を用いることができる。
【0013】
椰子殻としては、椰子炭等の燃料や活性炭等の原料として一般的に用いられる椰子殻チップと呼ばれる椰子の実の種子の殻部分を破砕したものを用いる。椰子殻チップは、シェルと呼ばれる組織が緻密である部分から主に構成されることから炭素前駆体として好適に用いることができる。
【0014】
椰子殻チップの大きさの上限としては、好ましくは椰子殻を1/2程度に割ったもの、より好ましくは1/4程度に割ったもの、さらに好ましくは1/8程度に割ったもの、特に好ましくは1/10程度に割ったものである。また、椰子殻チップの大きさの下限としては、好ましくは2mm角程度に粉砕したもの、より好ましくは5mm角程度に粉砕したもの、さらに好ましくは10mm角程度に粉砕したものである。上記の上限および下限の組合わせの範囲内であれば、金属元素および/または非金属元素の除去を効率的に行うことができる。本発明では、上記の上限および下限の範囲内の大きさの椰子殻チップであれば、異なった大きさの椰子殻チップを組み合わせて用いることができる。
【0015】
一般に、植物は、カリウム、マグネシウムおよびカルシウム等のアルカリ金属元素およびアルカリ土類金属元素およびリン等の非金属元素を多く含んでいる。しかしながら、これらの金属元素を含んだ植物由来の炭素前駆体を炭化すると、炭化時に必要な炭素質が分解されるおそれがある。また、リン等の非金属元素は酸化し易いので、炭化物の表面の酸化度が変化し、炭化物の性状が大きく変化するため、好ましくない。
【0016】
また、炭素前駆体を炭化した後に行う精製方法では、リン、カルシウムおよびマグネシウムについては十分に除去することができない場合がある。さらに、炭化物中の金属元素および/または非金属元素の含有量によって、脱灰実施時間や脱灰後の炭化物中の金属元素および/または非金属元素の残存量が大きく異なる。したがって、炭素前駆体中の金属元素および/または非金属元素の含有量を、炭化前に十分に除去しておくことは好ましい。
【0017】
このような観点から、本発明の方法は、炭素前駆体を有機酸水溶液中に浸漬することにより、炭素前駆体中の金属元素および/または非金属元素の含有量を低下させる工程を含んでなる。ここで、炭素前駆体を有機酸水溶液中に浸漬することにより、炭素前駆体中の金属元素および/または非金属元素の含有量を低下させることを、以下、脱灰とも称する。
【0018】
本発明では、上記脱灰において、植物由来の炭素前駆体からアルカリ金属元素、アルカリ土類金属元素および/または非金属元素を除去するために有機酸水溶液を用いる。有機酸は、リンや硫黄、ハロゲン等の不純物源となる元素を含まないことが好ましい。有機酸がリンや硫黄、ハロゲン等の元素を含まない場合には、脱灰後の水洗を省略し、有機酸が残存する椰子殻チップを炭化した場合であっても、炭素材として好適に用いることできる炭化物が得られるため有利である。また、使用後の有機酸の廃液処理を特別な装置を用いることなく比較的容易に行うことができるため有利である。
【0019】
有機酸の例としては、飽和カルボン酸、例えば蟻酸、酢酸、プロピオン酸、蓚酸、酒石酸、クエン酸等、不飽和カルボン酸、例えばアクリル酸、メタアクリル酸、マレイン酸、フマル酸等、芳香族カルボン酸、例えば安息香酸、フタル酸、ナフトエン酸等が挙げられる。入手可能性、酸性度による腐食および人体への影響の観点から、酢酸、蓚酸およびクエン酸が好ましい。
【0020】
本発明では、有機酸は、溶出する金属化合物の溶解度、廃棄物の処理、環境適合性等の観点から、水性溶液と混合して有機酸水溶液として用いる。水性溶液としては、水、水と水溶性有機溶媒との混合物などが挙げられる。水溶性有機溶媒としては、例えばメタノール、エタノール、プロピレングリコール、エチレングリコールなどのアルコールが挙げられる。
【0021】
有機酸水溶液中の酸の濃度としては、特に限定されるものではなく、用いる酸の種類に応じて濃度を調節して用いることができる。本発明では、通常、有機酸水溶液の総量を基準として0.001重量%〜20重量%、より好ましくは0.01重量%〜18重量%、さらに好ましくは0.02重量%〜15重量%の範囲の酸濃度の有機酸水溶液を用いる。酸濃度が上記範囲内であれば、適切な金属元素および/または非金属元素の溶出速度が得られるため実用的な時間で脱灰を行うことが可能となる。また、炭素前駆体における酸の残留量が少なくなるので、その後の製品への影響も少なくなる。
【0022】
有機酸水溶液のpHは、好ましくは3.5以下、好ましくは3以下である。有機酸水溶液のpHが上記の値を超えない場合には、金属元素および/または非金属元素の有機酸水溶液への溶解速度が低下することなく、金属元素および/または非金属元素の除去を効率的に行うことができる。
【0023】
炭素前駆体を浸漬する際の有機酸水溶液の温度は、特に限定されないが、好ましくは45℃〜120℃、より好ましくは50℃〜110℃、さらに好ましくは60℃〜100℃の範囲である。炭素前駆体を浸漬する際の有機酸水溶液の温度が、上記範囲内であれば、使用する酸の分解が抑制され、実用的な時間での脱灰の実施が可能となる金属の溶出速度が得られるため好ましい。また、特殊な装置を用いずに脱灰を行うことができるため好ましい。
【0024】
炭素前駆体を有機酸水溶液に浸漬する時間としては、用いる酸に応じて適宜調節することができる。本発明では、浸漬する時間は、経済性および脱灰効率の観点から、通常1〜100時間、好ましくは2〜80時間、より好ましくは2.5〜50時間の範囲である。
【0025】
有機酸水溶液の重量に対する浸漬する炭素前駆体の重量の割合は、用いる有機酸水溶液の種類、濃度および温度等に応じて適宜調節することが可能であり、通常0.1重量%〜200重量%、好ましくは1重量%〜150重量%、より好ましくは1.5重量%〜120重量%の範囲である。上記範囲内であれば、有機酸水溶液に溶出した金属元素および/または非金属元素が有機酸水溶液から析出しにくく、炭素前駆体への再付着が抑制されるため好ましい。また、上記範囲内であれば、容積効率が適切となるため経済的観点から好ましい。
【0026】
脱灰を行う雰囲気としては、特に限定されず、浸漬に使用する方法に応じて異なっていてよい。本発明では、脱灰は、通常大気雰囲気中で実施する。
【0027】
これらの操作は、好ましくは1回〜5回、より好ましくは2回〜4回繰り返して行うことができる。
【0028】
本発明では、脱灰後、必要に応じて洗浄工程および/または乾燥工程を行うことができる。
【0029】
本発明の方法によれば、精製前の炭素前駆中のカリウムの含有量K(a)に対する精製後の炭素前駆体中のカリウムの含有量K(b)の割合は、好ましくはK(b)/K(a)≦0.15、より好ましくはK(b)/K(a)≦0.1である。
【0030】
また、本発明の方法によれば、精製前の炭素前駆体中のマグネシウムの含有量Mg(a)、カルシウムの含有量Ca(a)リンの含有量P(a)に対する精製後の炭素前駆体中のマグネシウムの含有量Mg(b)、カルシウムの含有量Ca(b)リンの含有量P(b)の割合はそれぞれ、
Mg(b)/Mg(a)≦0.25
Ca(b)/Ca(a)≦0.25
P(b)/P(a)≦0.8
であり、より好ましくは
Mg(b)/Mg(a)≦0.2
Ca(b)/Ca(a)≦0.2
P(b)/P(a)≦0.75
である。
【0031】
本発明に従って精製された炭素前駆体は、カリウムを通常500ppm以下、好ましくは400ppm以下、より好ましくは300ppm以下の量で含む。炭素前駆体中のカリウムの含有量が上記の含有量であれば、炭素材の原料として好適に用いることができる。
【0032】
本発明に従って精製された植物由来の炭素前駆体は、マグネシウムを好ましくは50ppm以下、より好ましくは40ppm以下、さらに好ましくは30ppm以下の量で含有する。
【0033】
本発明に従って精製された植物由来の炭素前駆体は、カルシウムを好ましくは80ppm以下、より好ましくは50ppm以下、さらに好ましくは30ppm以下の量で含有する。
【0034】
本発明に従って精製された植物由来の炭素前駆体は、リンを好ましくは100ppm以下、より好ましくは80ppm以下、さらに好ましくは50ppm以下の量で含有する。
【0035】
上記の植物由来の炭素前駆体中の金属元素および非金属元素の含有量は、以下に説明する金属元素/非金属元素含有量の測定に従って求めた値である。
【0036】
さらに、本発明は、本発明の精製方法により精製された炭素前駆体を炭化する工程を含む炭化物の製造方法にも関する。
【0037】
炭化工程における加熱温度としては特に限定されるものではなく、通常250℃〜800℃の範囲で行われる。上記範囲を超える温度では、結晶化により炭素骨格が剛直化し、様々な電子材料に用いる炭化物として好ましくない。また、上記範囲より低い温度では、蓄熱発火の可能性が高く、また空気中の酸素により容易に酸化され保存安全性が低くなる問題がある。本発明では、炭化工程は、好ましくは270℃〜750℃の範囲、より好ましくは280℃〜700℃の範囲、更に好ましくは400〜650℃の範囲で行う。上記範囲で炭化を行うことは、得られた炭化物の酸化等による変質の抑制、保存安定性確保の観点から好ましい。
【0038】
また、加熱速度としては、特に限定されるものではなく、加熱の方法により異なるが、好ましくは1℃/分〜100℃/分、より好ましくは1℃/分〜60℃/分である。昇温速度が上記範囲内であれば、炭化時の縮合が進行し、良好な炭化物の回収率が得られるため好ましい。また、用いる機器の稼働時間が適切なものとなるため、経済的観点から好ましい。
【0039】
炭化工程における温度制御のパターンとしては、所望の温度にまで一気に昇温することもできるし、250〜400℃の範囲で一旦温度を維持し、再び昇温して所望の温度まで昇温することもできる。上記範囲内で一旦温度を維持することは、炭化時の縮合を容易に進め、炭化率、炭素密度および炭化物の回収率の向上に寄与する場合がある。
【0040】
炭化工程における最高温度での保持時間は、特に限定されないが、通常、10分〜300分程度保持すればよく、好ましくは30分〜240分程度保持すればよい。
【0041】
炭化する雰囲気としては、不活性ガス雰囲気中で行うことが好ましく、窒素雰囲気中で行うことがより好ましい。炭化中、酸化による炭素材の構造変化および酸化分解助長による炭化物の回収率低下を回避し易くするために、酸化性ガス、即ち酸素の存在は、好ましくは1容積%以下、より好ましくは0.5容積%以下である。
【0042】
炭化時の不活性ガス気流は特に限定されるものではなく、通常0.001メートル/秒〜1メートル/秒の範囲であればよい。
【0043】
炭化処理後の取り出し温度としては、空気中の酸素により酸化されない温度であれば特に限定されるものではなく、通常200℃以下、より好ましくは100℃以下で空気中に取り出すことが好ましい。
【0044】
炭化の方法としては、特に限定されるものではなく、バッチ式および連続式の何れの方式でもよく、外熱式および内熱式の何れの方式でもよい。
【0045】
炭化物を製造した後、必要に応じて、除金属工程、粉砕工程および/または焼成工程を実施することができる。しかしながら、本発明の方法により精製した炭素前駆体を用いて炭化物を製造した場合には、精製工程において金属成分が十分に除去されるため、さらなる除金属工程を省略することができる。
【0046】
本発明の方法により精製された植物由来の炭素材前駆体は、例えばコンデンサー用電極や二次電池用電極等の電子部品、水ろ過用活性炭や消臭用活性炭等の多孔体、触媒用担持体などの種々の用途に用いる炭素材の製造に用いることができる。
【実施例】
【0047】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されない。
【0048】
[金属元素/非金属元素含有量の測定]
椰子殻チップ中の金属元素含有量は、蛍光X線分析装置(株式会社リガク製ZSX Primusμ)を用いて評価した。ここで、植物中の金属元素および非金属元素の含有量は、採取季節等に応じて部位によりバラツキが存在する。また、金属元素分析では、金属存在形態(結晶化度)によりX線の強度が異なる。したがって、炭化物中の金属が同等の結晶化度となるように以下の炭化条件に統一して椰子殻チップを炭化した後、得られた炭化物中の金属元素および非金属元素の含有量について蛍光X線分析を行った。
実施例1〜5では、精製前の椰子殻チップおよび精製後の椰子殻チップを、以下の炭化条件に従って炭化し、得られた植物由来チャーの蛍光X線分析結果および炭化物の回収率に基づいて精製前の椰子殻チップおよび精製後の椰子殻チップ中の金属元素および非金属元素の含有量をそれぞれ算出した。
比較例1では、椰子殻チップを以下の炭化条件に従って炭化し、得られた植物由来チャーの蛍光X線分析結果および炭化物の回収率に基づいて椰子殻チップ中の金属元素および非金属元素の含有量を算出した。
なお、本条件下で、金属成分および非金属成分が揮発して外部に気散しないことは、別途排気ガスの分析により確認した。
【0049】
[炭化条件]
回収物20gを坩堝に入れ、光洋サーモ製KTF1100炉(内径70mmΦ)を用いて、酸素含量15ppmの窒素気流3L/分(0.012メートル/秒)の流量下、10℃/分で500℃まで昇温、60分保持した後、6時間かけて冷却し、50℃以下で取り出した。
【0050】
<実施例1>
約10mm角のフィリピン ミンダナオ島産椰子殻チップ150gを7.4重量%クエン酸水溶液2000gに浸漬し、90℃に加温し、3時間加熱した。その後室温まで冷却し、ろ過により脱液した。この操作を3回行い、脱灰を行った。脱灰した椰子殻を真空1Torr下、80℃で24時間乾燥した。このように精製した椰子殻チップを上記炭化条件にて炭化した。炭化物の回収率は28.4%であった。
【0051】
<実施例2>
実施例1において2.4重量%酢酸水溶液を用いたことを除いて、実施例1と同様に炭化物を製造した。炭化物の回収率は、28.6%であった。
【0052】
<実施例3>
実施例1において1.2%酢酸水溶液を用いたことを除いて、実施例1と同様に炭化物を製造した。炭化物の回収率は、28.9%であった。
【0053】
<実施例4>
実施例1において0.74%クエン酸水溶液を用いたことを除いて、実施例1と同様に炭化物を製造した。炭化物の回収率は、28.7%であった。
【0054】
<実施例5>
実施例1において60℃、5時間で脱灰を行ったことを除いて、実施例1と同様に炭化物を製造した。炭化物の回収率は、28.3%であった。
【0055】
<比較例1>
実施例1において脱灰を行わなかったことを除いて、実施例1と同様に炭化物を製造した。炭化物の回収率は、27%であった。
【0056】
上記の金属元素含有量の測定に従って算出した実施例1〜5における精製後の椰子殻チップ中の金属元素および非金属元素の含有量および比較例1における炭化前の椰子殻チップ中の金属元素および非金属元素の含有量を以下の表1に示す。
【0057】
【表1】
【0058】
実施例1〜5における精製前の椰子殻チップ中の金属元素および非金属元素の含有量に対する精製後の椰子殻チップ中の金属元素および非金属元素の含有量の割合〔K(b)/K(a)、Mg(b)/Mg(a)、Ca(b)/Ca(a)およびP(b)/P(a)〕を以下の表2に示す。なお、精製前の炭素前駆体中のカリウムの含有量をK(a)、マグネシウムの含有量をMg(a)、カルシウムの含有量をCa(a)およびリンの含有量をP(a)とし、精製後の炭素前駆体中のカリウムの含有量をK(b)、マグネシウムの含有量をMg(b)、カルシウムの含有量をCa(b)およびリンの含有量をP(b)とする。
【0059】
【表2】
【0060】
表1において、実施例1と比較例1とを比べると、実施例1で得られた炭化物中の金属元素および非金属元素の含有量はそれぞれ、比較例1で得られた炭化物中の金属元素および非金属元素の含有量より低い値となった。また、有機酸の種類および濃度を変更した場合(実施例2〜4)および脱灰条件を変更した場合(実施例5)においても炭化物中の金属元素および非金属元素の含有量は低く、良好な結果となった。このように、本発明の炭素前駆体の精製方法によれば、植物由来の炭素前駆体から金属元素および/または非金属元素の除去を簡単かつ効率的に行うことができる。
【0061】
また、表2から、本発明によれば、精製前の椰子殻チップ中の金属元素および非金属元素の含有量に対して精製後の椰子殻チップ中の金属元素および非金属元素の含有量が低減されていることが分かる。
【0062】
実施例1〜5および比較例1において得られた炭化物中の金属元素の含有量および非金属元素の含有量を、以下の表3に示す。
【0063】
【表3】
【0064】
実施例1〜5における精製前の椰子殻チップから得られた炭化物中の各金属元素および非金属元素の含有量に対する精製後の椰子殻チップから得られた炭化物中の各金属元素および非金属元素の含有量の割合〔K(B)/K(A)、Mg(B)/Mg(A)、Ca(B)/Ca(A)およびP(B)/P(A)〕をそれぞれ、以下の表4に示す。なお、精製前の炭素前駆から得られた炭化物中のカリウムの含有量をK(A)、マグネシウムの含有量をMg(A)、カルシウムの含有量をCa(A)およびリンの含有量をP(A)とし、精製後の炭素前駆体から得られた炭化物中のカリウムの含有量をK(B)、マグネシウムの含有量をMg(B)、カルシウムの含有量をCa(B)およびリンの含有量をP(B)とする。
【0065】
【表4】
【0066】
<実施例6>
実施例1において、上記の炭化条件において昇温速度を毎分2℃としたことを除いて、実施例1と同様に炭化物を製造した。得られた炭化物の金属元素および非金属元素の含有量は実施例1と同じ結果であった。炭化物の回収率は31.6%であった。
【0067】
<実施例7>
実施例1において、300℃で昇温を停止、30分間保持したのち500℃まで昇温したことを除いては、実施例1と同様に炭化物を製造した。炭化物の回収率は33.0%であった。
【0068】
以下の表5に、実施例1、6および7および比較例1における炭化物の回収率を示す。
【0069】
【表5】
【0070】
表5から、実施例1、6および7では、脱灰を行わなかった比較例1と比べて良好な回収率で炭化物が得られた。