【文献】
西田幸博,スーパーハイビジョンの映像パラメータと国際標準化,NHK技研 R&D No.137,日本,日本放送協会,2013年 1月15日,第137号,p.10-19
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
放送システムにおいては、複数の機器を相互に接続して、信号伝送及び信号処理がなされ、機器の間の信号の接続状態を確認するために基準となる信号が用いられる。放送で使用される業務用機器は基準信号を発生することができ、後段の機器との接続テストの際に用いられている。
【0003】
図10にハイビジョンの基準信号の例を示す(非特許文献1)。
図10の基準信号パターン500は、大きく4つのパターン501〜504からなり、垂直方向の7/12を占める上側の領域に、両外側の無彩色信号(40%グレイ)、その内側に左から、白、黄、シアン、緑、マゼンタ、赤、青の7本の帯状の75%カラーバーが配置されたパターン501が設けられている。次のパターン502は、モニタのクロマ調整用信号等とその外側のシアン及び青信号で構成され、その次のパターン503は、ランプ信号とその外側の黄、赤信号で構成される。また、一番下のパターン504は、モニタの黒レベル輝度設定用信号等で構成されている。
【0004】
この基準信号は、通常「カラーバー信号」と呼ばれ、機器と機器の信号の接続テストや映像モニタの輝度調整・色調整などに使用されている。
【0005】
近年、スーパーハイビジョン等のハイビジョンを上回る解像度を持つ超高精細度システムの研究開発が進められている。スーパーハイビジョンを含む超高精細度テレビジョン(Ultra High Definition Television : UHDTV)映像システムの映像パラメータは、国内規格(非特許文献2)として制定されている。なお、本明細書において、「超高精細度テレビジョン」とは、上記国内規格(非特許文献2)に規定された精細度を有するテレビジョンを意味する。
【0006】
超高精細度テレビジョンは従来のハイビジョン放送と比較して、高精細な水平7680×垂直4320(いわゆる、8K)又は水平3840×垂直2160(いわゆる、4K)の画素数を有し、ITUの国際規格(勧告)であるITU−R BT.2020で規定される色域の広い表色系(広色域表色系)を採用している。各画素のビット数は、10ビット又は12ビットの2種類の形式、サンプリング構造は、R’G’B’4:4:4形式、Y’Cb’Cr’4:4:4形式、Y’Cb’Cr’4:2:2形式、Y’Cb’Cr’4:2:0形式と複数の形式が規格化されている。また、ベイヤー配列(非特許文献3)を持った映像信号をデモザイキングすることで超高精細映像を得ているケースもある。
【0007】
このような超高精細度テレビジョンに対応した基準信号が求められている。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【0024】
(実施の形態1)
図1に、本発明の実施の形態1である基準信号パターン100の実施例を示す。実際の基準信号パターン100はカラーパターンである。
【0025】
ここでは、超高精細映像の例としてスーパーハイビジョン解像度の動画像(8K解像度:水平7680画素×垂直4320画素)に対応した基準信号パターン100としている。4K解像度の動画像の場合は、
図1の縦横2ピクセルごとにサブサンプリングし(すなわち、8K画像の4画素を4K画像の1画素とし)、水平3840画素、垂直2160画素にする。ただし、後述の8Kパターン122、4Kパターン132については別途記載する。
【0026】
本実施例における基準信号パターン100は、エリア101からエリア132により構成される。
【0027】
図1で基準信号パターン100の周囲に記載された数値は、各エリアの幅と長さを示すピクセル数である。ただし、このピクセル数は一つの例示であって、各エリアの幅と長さは、必要に応じて適宜調節することができる。
【0028】
表1に、各エリアの色、及び映像信号(R’、G’、B’)の画素値(出力階調)を示す。
【0030】
表1の各欄の数値は、各画素が12ビットシステムで示される場合の画素値であり、カッコ内の数値は、10ビットの場合である。映像信号R’、G’、B’の信号レベルと画素値(出力階調:量子化レベル)の関係は、100%が3760(940)であり、0%が256(64)としている。なお、各エリアの画素値は、一つの例示であって、この数値に限定されるものではない。
【0031】
表1の画素値は、さらに8ビットへの変換の容易性を考慮して選択されたものであり、例えば、エリア102〜108は、厳密に75%信号レベルを表示するものではない。
【0032】
図2は、映像パラメータの異なる複数の映像機器が接続された映像システムについて説明する図である。
【0033】
図2で、8K機器10は、BT.2020で規定される広色域表色系、12ビット映像、4:4:4方式サンプリングシステムの映像パラメータで信号処理を行う映像機器(これを、「フルスペックSHV」の映像機器ということがある。)であり、また、画像モニタ11も、8K機器10の出力映像に対応した表示機能を有している。ここで、8K機器10と画像モニタ11との間に、フルスペックSHVの基準を満たさない映像パラメータの機器が介在すると、画像モニタ11上の画質が劣化する。
【0034】
例えば、
図2(a)のように、BT.2020で規定される広色域表色系の8K機器10の信号を、従来のハイビジョン色域(BT.709色域)しか処理できない機器21を介して接続した場合、その後の機器22で超高精細映像システム色域(BT.2020色域)へ変換したとしても、8K対応のモニタ11で表示したとき、元の8K機器10の出力した色が失われる場合がある。
【0035】
また、
図2(b)のように、12ビット映像に対応した8K機器10の信号を、10ビット映像しか処理できない機器31を介して接続した場合、10ビットへの変換により2ビット分のデータが失われ、その後の機器32で12ビットの映像へ再変換したとしても、8K対応のモニタ11で表示したとき、元の8K機器10の出力した高階調の画像として表示されない場合がある。
【0036】
また、
図2(c)のように、サンプリング構造が4:4:4方式に対応した8K機器10の信号を、4:2:2方式又は4:2:0方式の機器41を介して接続した場合、方式変換により一部の色差情報が失われ、その後の機器42で4:4:4方式の画像へ再変換を行ったとしても、8K対応のモニタ11で表示したとき、元の8K機器10の出力した高精細な画像や色彩が変化する場合がある。
【0037】
また、
図2(d)のように、全画素が3原色を有する画像に対応した8K機器10の信号を、ベイヤー変換した機器51を介して接続した場合、その後の機器52でデモザイク変換をしたとしても、8K対応のモニタ11で表示したとき、元の8K機器10の出力した高精細な画像や色彩が変化する場合がある。
【0038】
本発明の基準信号パターン100は、信号処理を行う映像機器の映像パラメータの少なくとも一つが所定の基準(BT.2020で規定される広色域表色系、12ビット映像、4:4:4方式サンプリングシステム)を満たさないときに、パターンの色又は形状が変化する。
【0039】
したがって、8K機器10から基準信号パターン100を発生し、その後、8K対応のモニタ11で基準信号パターンを表示させたときに、信号がどのような映像パラメータの変換経路を経たかが視覚的に把握できる。
【0040】
以下、基準信号パターン100と映像パラメータとの関係を説明する。
【0041】
(色域変換の検出)
図1において、基準信号パターン100のエリア101から109まで、110から113まではハイビジョンの基準信号パターンと同様である。すなわち、両外側に無彩色信号(40%グレイ)のエリア101と109が配置され、その内側に、エリア102から108まで、左から、白、黄、シアン、緑、マゼンタ、赤、青の7本の帯からなる75%カラーバーが並んでいる。また、エリア110から113は、100%のシアン、黄、青、赤のパターンである。これらのエリア103〜108,110〜113の純色は、従来のハイビジョン機器の色域(BT.709色域)では表示できない色である。なお、ここでは色の異なる7本のカラーバーを用いているが、これらのすべての色をこの順で配置することは必須ではなく、適宜選択することができる。
【0042】
本実施例の基準信号パターン100は、さらに、BT.2020で規定される広色域表色系のエリア103から108のカラーバーに隣接して、同系色の領域であるエリア115から120が配置されている。エリア115から120は、それぞれ、従来のハイビジョン機器の色域(BT.709色域)の黄、シアン、緑、マゼンタ、赤、青のパターンである。なお、エリア102と114は75%白であって完全に同色である。
【0043】
既に述べたように、超高精細度テレビジョン方式の映像システムは、従来のハイビジョン放送と比較して、色域の広い表色系(BT.2020で規定される広色域表色系)を採用している。そのため、
図2(a)のように、従来のハイビジョン機器の色域(BT.709色域)システムを使用するためには色域の変換を行う必要がある。また、BT.709色域に変換された信号は、広色域システムで使用する場合に、再度色域を広色域に変換する必要がある。
【0044】
図3に、BT.2020色域210とBT.709色域220との関係を示す。
【0045】
図3で、スペクトル軌跡200は、単色可視光の波長を変えたすべての色を表す色度図上の曲線である。BT.2020色域210は、スペクトル軌跡200上の色を赤、緑、青の3原色としており、広い色域の色を表示でき、従来のハイビジョンの色域であるBT.709色域220をすべて包含している。
【0046】
BT.2020色域で表現された色をBT.709色域に変換する方法は、多くが考案されているが、基本的コンセプトとしてBT.709色域の外側にある広い色域の色を狭い色域(BT.709色域)に押し込み、BT.709色域内のものはそのまま再配置する方法を用いているものが多い。反対に、BT.709色域から、BT.2020色域へ変換する方法は色域を広げるのでなく、そのまま割り当てる場合が多数である。
【0047】
したがって、BT.2020で規定される広色域表色系の色であるエリア113からエリア118、及びエリア115からエリア120は、一度ハイビジョン色域(BT.709色域)への変換を行なうと色が変化し、その後、BT.2020で規定される広色域表色系への再変換を行っても、もとの色には戻らない。
【0048】
図4は、
図1の基準信号パターン100に対し、従来のハイビジョン機器の色域(BT.709色域)への色域変換を行った後の、変化したパターン100’を示す。
【0049】
BT.709色域の外側にあるBT.2020色域の色であるブロック1の領域230(エリア103からエリア108)の色は、一度BT.709色域に押し込まれて元に戻らないため、色の鮮やかさが抜ける。一方、ブロック2の領域240(エリア115からエリア120)の色は、もともとBT.709色域の色であるから、ほとんど変化しないこととなる。結果として、ブロック1の領域230とブロック2の領域240の色が、ほぼ同一となる。
【0050】
本発明の基準信号パターン100は、従来のハイビジョン機器の色域(BT.709色域)では表示できない、BT.2020で規定される広色域表色系の色の領域(エリア103〜108,110〜113)を設けており、この色の鮮やかさが変化したかで、ハイビジョンの色域を経由したかどうかを目視で確認できる。
【0051】
特に、本実施例においては、BT.2020色域の色であるブロック1の領域230(エリア103からエリア108)に隣接して、それぞれ同系色のBT.709色域の色であるブロック2の領域240(エリア115からエリア120)を設けているので、ブロック1の領域230の色が変化したかを、両者の色の比較により視認性良く判断することができる。
【0052】
このように、本発明の基準信号パターン100は、映像がハイビジョンの色域(BT.709色域)を経由してきたか、容易に識別できる。
【0053】
(ビット数変換の検出)
基準信号パターン100のエリア121は、ビット落ちをチェックするためのランプ(Ramp)信号の例である。ランプ信号は、0%から100%の輝度信号である。
【0054】
図5に、8K解像度のランプ波形の設定を示す。
【0055】
12ビットシステムにおいては、0%の信号レベルの画素値が256であり、100%の信号レベルの画素値が3760であるから、その間の画素値は3504段階ある。そこで、本実施例では、水平方向に5760ピクセルのエリア121のうち、左側の1128ピクセルの領域を画素値256(0%黒)、右側の1128ピクセルの領域を画素値3760(100%白)とし、その間の3504ピクセルの領域を、水平方向1ピクセルごとに値が1上昇するように設定する。なお、各画素において、映像信号R’、G’、B’は、すべて同じ画素値とする。
【0056】
既に述べたように、12ビット映像に対応した信号を、10ビット映像に対応した機器に接続した場合(
図2(b))、2ビット分の情報が削除され、その後に12ビットの映像へ再変換したとしても、一般に失われた2ビット分の情報は復元できない。
【0057】
10ビットシステムにおいては、0%の信号レベルの画素値が64であり、100%の信号レベルの画素値が940であるから、その間の画素値は876段階である。したがって、
図5のランプ波形を10ビットシステムで表示した場合、水平方向4ピクセルごとに値が1上昇することになる。このことから12ビットシステムと10ビットシステムの違いが分かる。また、12ビットシステムが10ビットシステムを経由して再び12ビットシステムに変換された場合にも、水平方向4ピクセルごとに値が1上昇することになる。
【0058】
このように、本発明の基準信号パターン100は、映像機器のパラメータが10ビット、12ビットのどちらの信号となっているか、または、映像が10ビット映像を経由してきたかが、容易に識別できる。
【0059】
なお、
図5では、8K解像度のランプ波形について説明したが、
図1のエリア111、エリア121、エリア113に隣接して、4K解像度に対応したランプ波形を設けることもできる(図示せず)。
【0060】
例えば、エリア111及びエリア113の水平方向の長さを336ピクセルに狭めて、エリア121の水平方向を、8K解像度で7008ピクセルとする。そして、水平方向2ピクセルで画素値が1ずつ上昇するように構成する。4K解像度の動画像の場合は、8K画像の縦横2ピクセルが4K画像の1画素となるから、8K解像度の水平7008ピクセルは、4K解像度では、水平3504画素となる。したがって、12ビット映像において、この4Kの水平1画素ごとに画素値が1上昇するように設定する。このように設定することにより、4K解像度においても、12ビットシステムと10ビットシステムの違いが分かるように、設計できる。
【0061】
(色差補間又はデモザイキングの検出)
基準信号パターン100のエリア122は、色差補間(サンプリング方式の変換)又はデモザイキング(ベイヤー配列からの変換)を検出するためのパターンであり、特に、8K解像度に対応した検査パターン(以下、「8Kパターン」ということがある。)が設定されている。また、エリア132は、同様に色差補間又はデモザイキングを識別するためのパターンであり、特に、4K解像度に対応した検査パターン(以下、「4Kパターン」ということがある。)が設定されている。
【0062】
なお、エリア122とエリア132に挟まれた、エリア123からエリア131は、表1に示すとおり、白又は所定の濃度の黒パターンが配置されており、ハイビジョンの基準信号の黒レベル輝度設定用信号と同じものが設定されている。
【0063】
図6に、エリア122のパターン構造の例を示す。
図6(a)に示されるように、エリア122は、マゼンタの水平方向のストライプ構造のパターン(Horizontal magenta stripe)310、マゼンタの垂直方向のストライプ構造のパターン(Vertical magenta stripe)320、サイクロン構造パターン(Cyclone)330、100%マゼンタ340、及び100%白350から構成される。
図6に示された各パターン領域の広さは一例である。
【0064】
図6(b)に、水平方向のストライプ構造のパターン(Horizontal magenta stripe)310の概要と、その隣接する2×2ピクセルの拡大図を示す。パターン310は、100%マゼンタでなる画素が水平方向に連続した、垂直方向1ピクセル、水平方向400ピクセルの水平方向のマゼンタライン311と、100%白でなる画素が水平方向に連続した、垂直方向1ピクセル、水平方向400ピクセルの水平方向の白ライン312とが交互に配置された、ストライプ構造のパターンである。
【0065】
また、
図6(c)に、垂直方向のストライプ構造のパターン(Vertical magenta stripe)320の概要と、その隣接する2×2ピクセルの拡大図を示す。パターン320は、100%マゼンタでなる画素が垂直方向に連続した、水平方向1ピクセル、垂直方向540ピクセルの垂直方向のマゼンタライン321と、100%白でなる画素が垂直方向に連続した、水平方向1ピクセル、垂直方向540ピクセルの垂直方向の白ライン322とが交互に配置された、ストライプ構造のパターンである。
【0066】
図6(d)は、サイクロン構造パターン(Cyclone)330の概要と、その1つの渦巻状のパターン(10×9ピクセル)の拡大図を示す。パターン330は、100%白の画素が連続して形成された、幅が1画素の複数個所で屈折したライン331と、100%黒の画素が連続して形成された、幅が1画素の複数個所で屈折したライン332とが隣接して、白黒が互いに渦巻きを描くように構成されたパターンを、単位パターンとしている。なお、
図6(d)では、単位パターンとして10×9ピクセルの螺旋形状のパターンが示されているが、正確な螺旋形状である必要はなく、不規則に折れ曲がる白と黒のラインが組み合わされたパターンであって、デモザイキングにより偽色が生じるパターンであれば良い。また、単位パターンのサイズも、任意のn×mピクセルのパターンであって良い。パターン330は、この単位パターンが縦横に繰り返されて構成されている。
【0067】
これらのパターン310〜330は、後述のように、色差補間やデモザイク変換を経たときに変化する。他方、100%マゼンタ340、及び100%白350は、パターン310〜330の色彩の変化を確認するための参照色である。
【0068】
パターン310〜350の領域の大きさは、適宜設定することができ、また、このパターンを構成するマゼンタ、白、黒の各画素値は、例えば次のように設定される。
・マゼンタ: 100% Magenta R':3760(940) G':256(64) B':3760 (940)
・白 : 100% White R':3760(940) G':3760(940) B':3760(940)
・黒 : 0% Black R':256(64) G':256(64) B':256 (64)
【0069】
なお、ストライプ構造パターンの色は白とマゼンタに限定されるものではないが、白は輝度Yが大きくて色差がなく、他方、マゼンタは色差(Cb,Cr)が大きい値を持つので、色差補間されたときに、パターンの色の変化を感知しやすいという利点がある。
【0070】
図7は、
図6の各パターンが異なるサンプリング方式、又はベイヤー変換を経て、再び4:4:4方式サンプリング構造に変換されたときのパターンの変化を示している。
【0071】
図7において、一番左側の列が、R’G’B’4:4:4方式サンプリング構造のオリジナルのパターンであり、Y’Cb’Cr’4:4:4システムの機器を経由する場合には、パターンは変化しない。次の列より左側から順に、ベイヤー変換後にデモザイク変換されたとき、Y’Cb’Cr’4:2:2方式を経て再びR’G’B’4:4:4方式に変換されたとき、Y’Cb’Cr’4:2:0方式を経て再びR’G’B’4:4:4方式に変換されたときのそれぞれのパターン変化を示している。各列において、一番上の行が水平方向ストライプ構造のパターンであり、2番目の行が垂直方向ストライプ構造のパターンであり、一番下の行がサイクロンパターンである。
【0072】
水平方向ストライプパターン310は、4:2:2方式を経ても変化が生じない。しかしながら、4:2:0方式を経た場合は、白ラインの部分にマゼンタの色が混ざり、パターンがぼやける。
【0073】
垂直方向ストライプパターン320は、4:2:2システムを経た場合と、4:2:0システムを経た場合とで、同様のパターンの変化(ラインパターンの色のぼやけ)が発生する。
【0074】
したがって、水平パターン、垂直パターンと白・マゼンタの4か所を比較することで、システムが4:2:2方式を経由(垂直パターンのみ変化した場合)、4:2:0方式を経由(水平パターンと垂直パターンが共に変化した場合)、あるいは4:4:4方式のまま(パターン変化なしの場合)であることを目視で判別することができる。
【0075】
サイクロン構造パターン330は、ベイヤー変換とデモザイク変換を経由しているかどうかを判別するために用いる。
図6(c)のように、白黒のラインが交互に隣接すると共に不規則に屈折するパターンは、ベイヤー配列画像からの各画素の色の復元が困難である。
図7に示す例ではデモザイクの手法として非特許文献3の方法を用いたが、どのデモザイクの方法を用いてもこのサイクロン構造パターンでは偽色が生じることが非常に高いため目視による判断が容易である。
【0076】
さらに、エリア122は1ピクセル構造を用いているため、8K解像度に満たない機器を経由した場合に、特にサイクロン構造パターン330が正確に再現されないため、機器の解像度の識別にも用いることができる。そのため、4K解像度の基準信号としてはこのエリアは信号種類を定義しない。
【0077】
図8に、エリア132のパターン構造の例を示す。
図8(a)に示されるように、エリア132は、マゼンタの水平方向のストライプ構造のパターン(Double Horizontal magenta stripe)410、マゼンタの垂直方向のストライプ構造のパターン(Double Vertical magenta stripe)420、サイクロン構造パターン(Double Cyclone)430、100%マゼンタ440、及び100%白450から構成される。このエリア132は、4K解像度の基準としても用いる。
【0078】
図8(b)に、水平方向のストライプ構造のパターン(Double Horizontal magenta stripe)410の概要と、その隣接する4×4ピクセルの拡大図を示す。パターン410は、100%マゼンタでなる画素が水平方向に連続した、垂直方向2ピクセル、水平方向400ピクセルの水平方向のマゼンタライン411と、100%白でなる画素が水平方向に連続した、垂直方向2ピクセル、水平方向400ピクセルの水平方向の白ライン412とが交互に配置された、ストライプ構造のパターンである。なお、ここでは8K(7680×4320)のピクセルを前提にパターンを示しているが、4K解像度の基準信号パターンとしてはこのエリアは縦横2ピクセルごとにサブサンプルされる。すなわち、4K解像度の映像では、このパターンは、1画素幅のマゼンタラインと1画素幅の白ラインが交互に並んだ水平方向のストライプパターンとなる。
【0079】
また、
図8(c)に、垂直方向のストライプ構造のパターン(Double Vertical magenta stripe)420の概要と、その隣接する4×4ピクセルの拡大図を示す。パターン420は、100%マゼンタでなる画素が垂直方向に連続した、水平方向2ピクセル、垂直方向540ピクセルの垂直方向のマゼンタライン421と、100%白でなる画素が垂直方向に連続した、水平方向2ピクセル、垂直方向540ピクセルの垂直方向の白ライン422とが交互に配置された、ストライプ構造のパターンである。パターン410と同様に、4K解像度の基準信号パターンとしてはこのエリアは縦横2ピクセルごとにサブサンプルした構造とする。これにより、4K解像度の映像では、このパターンは、1画素幅のマゼンタラインと1画素幅の白ラインが交互に並んだ垂直方向のストライプパターンとなる。
【0080】
図8(d)は、サイクロン構造パターン(Double Cyclone)430の概要と、その1つの渦巻状のパターン(20×18ピクセル)の拡大図を示す。パターン430は、100%白の画素で形成された、幅が2ピクセルの複数個所で屈折したライン431と、100%黒の画素で形成された、幅が2ピクセルの複数個所で屈折したライン432とが組み合わされて、白黒が互いに渦巻きを描くように構成されたパターンを、単位パターンとしている。パターン410,420と同様に、4K解像度の画像では、このパターンは、1画素幅のマゼンタラインと1画素幅の白ラインが交互に螺旋状に並んだサイクロンパターンとなる。パターン430は、この単位パターンが縦横に繰り返されて構成されている。
【0081】
これらの各パターン410,420,430は、サンプリング方式等により、
図7と同様のパターン変化を生じるので、4K解像度のシステムにおいて、ベイヤー配列からのデモザイキングを経由しているかどうか、或いは、4:2:2方式、又は4:2:0方式の色差補間を経由しているかどうかを目視で判別可能である。
【0082】
また、システムが4K解像度未満の場合はこれらのパターンが正確に再現されない。したがって、4K以上の解像度を備えているかを、このエリア132により、視覚的に容易に判断できる。
【0083】
本発明の基準信号パターンは、上述したカラーバーパターン、ランプ信号パターン、水平及び垂直ストライプ構造パターン、サイクロン構造パターンの、少なくとも何れか一つを備えていればよい。これにより、少なくともBT.2020で規定される広色域表色系、12ビット映像、4:4:4方式サンプリングシステムのいずれかの基準について、基準を満たしているか否かを、パターンの色又は構造の変化で検出できる。
【0084】
(実施の形態2)
本発明の実施の形態2である基準信号発生装置について説明をする。
図9は、本発明の基準信号発生装置とそれを用いた放送機器の概念図である。
【0085】
放送機器(放送で使用される業務用機器)10は、フルスペックSHVの8K機器であり、その内部に基準信号発生装置90を備えており、独自に基準信号を発生することができる。
【0086】
ここで、基準信号発生装置90は、
図1ないし
図8で説明された基準信号パターン100を生成する。生成された基準信号により、モニタ11の輝度調整・色調整が視覚的に確認できる。また、基準信号発生装置90を備えた放送機器10に、
図2で示す映像機器21〜52を接続してその画像を表示することにより、各映像機器のパラメータ(色域、ビット数、サンプリング方式等)を視覚的に確認することができる。なお、基準信号発生装置90は、機器の識別のため基準信号に機器10を表すIDコードを付加することができる(図示せず)。
【0087】
本発明を諸図面や実施例に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形や修正を行うことが容易であることに注意されたい。従って、これらの変形や修正は本発明の範囲に含まれることに留意されたい。
【0088】
上述の実施形態は代表的な例として説明したが、本発明の趣旨及び範囲内で、多くの変更及び置換ができることは当業者に明らかである。したがって、本発明は、上述の実施形態によって制限するものと解するべきではなく、特許請求の範囲から逸脱することなく、種々の変形や変更が可能である。