特許第6503204号(P6503204)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6503204被処理水の処理装置および被処理水の処理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6503204
(24)【登録日】2019年3月29日
(45)【発行日】2019年4月17日
(54)【発明の名称】被処理水の処理装置および被処理水の処理方法
(51)【国際特許分類】
   C02F 3/34 20060101AFI20190408BHJP
【FI】
   C02F3/34 101B
   C02F3/34 101A
   C02F3/34 101Z
【請求項の数】9
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2015-55164(P2015-55164)
(22)【出願日】2015年3月18日
(65)【公開番号】特開2016-174993(P2016-174993A)
(43)【公開日】2016年10月6日
【審査請求日】2017年11月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000232863
【氏名又は名称】三菱ケミカルアクア・ソリューションズ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504132881
【氏名又は名称】国立大学法人東京農工大学
(74)【代理人】
【識別番号】100104880
【弁理士】
【氏名又は名称】古部 次郎
(72)【発明者】
【氏名】狩野 久直
(72)【発明者】
【氏名】竹田 有之
(72)【発明者】
【氏名】沼野 哲朗
(72)【発明者】
【氏名】寺田 昭彦
【審査官】 佐々木 典子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−056383(JP,A)
【文献】 特開2012−245479(JP,A)
【文献】 特開2011−143365(JP,A)
【文献】 特開2007−050312(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0163482(US,A1)
【文献】 J. ZHANG, et al.,Bioresource Technology,ELSEVIER,2014年 7月21日,Vol.169,p.652-657
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 3/28− 3/34
C02F 1/58− 1/64
C12N 1/00− 7/08
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンモニアを含む第1の被処理水および水酸化テトラメチルアンモニウムを含む第2の被処理水を処理するための被処理水の処理装置であって、
前記第1の被処理水と前記第2の被処理水とは、別々の工程から排出される排水であり、
前記第1の被処理水に含まれるアンモニアを、アンモニア酸化細菌を含む硝化細菌を用いて亜硝酸性窒素および硝酸性窒素に酸化する硝化手段と、
前記硝化手段により処理された前記第1の被処理水と、前記第2の被処理水とを混合し、かつ、前記硝化手段により処理された前記第1の被処理水に含まれる亜硝酸性窒素および硝酸性窒素を前記第2の被処理水に含まれる水酸化テトラメチルアンモニウムを水素供与体として使用し脱窒する脱窒手段と、
を備えることを特徴とする被処理水の処理装置。
【請求項2】
前記脱窒手段は、通性嫌気性従属栄養細菌を用いて脱窒を行うことを特徴とする請求項1に記載の被処理水の処理装置。
【請求項3】
前記通性嫌気性従属栄養細菌は、キサントモナス科に属するものであることを特徴とする請求項2に記載の被処理水の処理装置。
【請求項4】
前記第1の被処理水は、洗浄工程から排出される洗浄排水であり、前記第2の被処理水は、現像工程から排出される現像排水であることを特徴とする請求項1に記載の被処理水の処理装置。
【請求項5】
前記硝化手段で前記第1の被処理水中に含まれるアンモニアの濃度を予め定められた範囲に維持する制御手段をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の被処理水の処理装置。
【請求項6】
前記アンモニア酸化細菌は、ベータプロテオバクテリアである複数種のアンモニア酸化細菌であることを特徴とする請求項5に記載の被処理水の処理装置。
【請求項7】
前記アンモニア酸化細菌は、ニトロソモナス属およびニトロソスピラ属のそれぞれに属するものを含むことを特徴とする請求項6に記載の被処理水の処理装置。
【請求項8】
前記制御手段は、アンモニアの濃度を、好塩性・耐塩性のニトロソモナス属に属するアンモニア酸化細菌の増殖速度がニトロソスピラ属に属するアンモニア酸化細菌の増殖速度より大きくなる領域で維持することを特徴とする請求項7に記載の被処理水の処理装置。
【請求項9】
アンモニアを含む第1の被処理水および水酸化テトラメチルアンモニウムを含む第2の被処理水を処理する被処理水の処理方法であって、
前記第1の被処理水と前記第2の被処理水とは、別々の工程から排出される排水であり、
前記第1の被処理水に含まれるアンモニアを、アンモニア酸化細菌を含む硝化細菌を用いて亜硝酸性窒素および硝酸性窒素に酸化する硝化工程と、
前記硝化工程により処理された前記第1の被処理水と、前記第2の被処理水とを混合し、かつ、前記硝化工程により処理された前記第1の被処理水に含まれる亜硝酸性窒素および硝酸性窒素を前記第2の被処理水に含まれる水酸化テトラメチルアンモニウムを水素供与体として使用し脱窒する脱窒工程と、
を含むことを特徴とする被処理水の処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被処理水の処理装置等に関し、より詳しくは、アンモニアを含む第1の被処理水と水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH:[(CHN][OH])を含む第2の被処理水をともに処理する被処理水の処理装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、半導体や液晶の製造を行う際、製造工程中に洗浄工程を含む場合がある。この洗浄工程から排出される洗浄排水には、アンモニアが含まれる。また同様に製造工程中に現像工程を含む場合がある。この現像工程から排出される現像排水には、TMAHが含まれる。
【0003】
特許文献1には、アンモニアを含有する廃水に空気と蒸気とを吹き込むことによりアンモニアガスを廃水から放散させた後、アンモニアガスを触媒により酸化分解するアンモニア含有廃水の処理方法であって、アンモニア含有廃水に吹込む空気として、アンモニアガスが酸化分解された後の処理ガスにより熱交換し加熱された空気を用いるものが開示されている。
また特許文献2には、アンモニア態窒素含有排水を触媒湿式酸化処理するに際し、触媒湿式酸化装置より排出される気液混合流体を気液分離した後、気相中の酸素濃度を測定し、測定された酸素濃度値があらかじめ設定された酸素濃度の範囲内または設定された濃度値となるように、装置内に流入させる酸素含有ガス量を制御することを特徴とする触媒湿式酸化装置の制御方法が開示されている。
さらに特許文献3には、微生物による第4級アンモニウム塩含有廃水処理において、アルカリ性の第4級アンモニウム塩含有廃水の中和に、中和剤として鉱酸と窒素栄養源となる硝酸とを用いて、この混合液を微生物を繁殖させた充填材層に通過させることで反応槽内のpHを変動させずに注入した廃液と同量の処理水を取り出す工程を複数回繰り返し行うものが開示されている。
またさらに特許文献4には、アルキルアンモニウム塩を含有する排水、炭素数6以下の有機物を含有する排水を嫌気的に生物処理する嫌気性生物処理方法であって、生物処理の立ち上げ時及び立ち上げ後に、糖蜜を供給するものが開示されている。
またさらに特許文献5には、排水を貯留し、排水中のアンモニアを酸化処理する反応手段の例である反応槽と、排水を反応槽に回分供給する排水供給手段の例である排水供給管と、反応槽に貯留された排水の上澄み液を槽外に排出する液排出手段の例である上澄み液排出管と、槽外からエア(大気)を供給する酸素供給手段の例であるエア供給器と、検出手段の例としてpH検出センサ、溶存酸素検出センサ、及びアンモニア濃度検出センサと、排水の回分供給制御等を担う制御装置とを備えている排水処理装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−197039号公報
【特許文献2】特開平7−265878号公報
【特許文献3】特開平8−80494号公報
【特許文献4】特開2010−274207号公報
【特許文献5】特開2012−245479号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来は、洗浄排水と現像排水とは個別に処理されるのが一般的である。
例えば、洗浄排水に含まれるアンモニアを、生物学的硝化・脱窒方法、または物理的処理方法で処理する方法がある。
【0006】
このうち生物学的硝化・脱窒方法は、洗浄排水に含まれるアンモニアが高濃度であり硝化が比較的行いにくい。また脱窒の際に必要とされる水素供与体として通常使用される有機物が、洗浄排水中にあまり含まれないため、メタノール等の有機物を添加する必要がある。そのため従来は、あまり採用されることはなかった。
また物理的処理方法では、アンモニアストリッピング法と触媒燃焼法の併用による方法や、触媒による湿式酸化法が使用される。ただしこれらの方法では、NOx排出を抑制するため厳密な運転条件管理と複雑な制御系が必要となる。
【0007】
一方、現像排水に含まれるTMAHを、生物学的に処理する方法、または蒸発濃縮により減量して産廃処理する方法がある。
【0008】
このうち生物学的に処理する方法は、TMAHが難分解性で毒性を有する物質であることから、処理が不安定になることが多い。そのため従来は、あまり採用されることはなかった。
また蒸発濃縮により減量して産廃処理する方法は、蒸発濃縮に要するエネルギーコストが大きくなりやすい問題がある。
【0009】
そして何れの方法を採用する場合でも、洗浄排水と現像排水とは個別に処理すると別々の処理装置が必要となる。そのため処理装置の設置スペースが大きくなりやすい。また処理装置の運転管理も複雑になりやすい。
【0010】
そこで本発明は、アンモニアを含む洗浄排水等の第1の被処理水と、TMAHを含む現像排水等の第2の被処理水とをともに処理することができ、設置面積が小さくなりやすく、運転管理も容易になりやすい被処理水の処理装置等を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
かくして本発明によれば、アンモニアを含む第1の被処理水および水酸化テトラメチルアンモニウムを含む第2の被処理水を処理するための被処理水の処理装置であって、第1の被処理水と第2の被処理水とは、別々の工程から排出される排水であり、第1の被処理水に含まれるアンモニアを、アンモニア酸化細菌を含む硝化細菌を用いて亜硝酸性窒素および硝酸性窒素に酸化する硝化手段と、硝化手段により処理された第1の被処理水と、第2の被処理水とを混合し、かつ、硝化手段により処理された第1の被処理水に含まれる亜硝酸性窒素および硝酸性窒素を第2の被処理水に含まれる水酸化テトラメチルアンモニウムを水素供与体として使用し脱窒する脱窒手段と、を備えることを特徴とする被処理水の処理装置が提供される。
【0012】
ここで、脱窒手段は、通性嫌気性従属栄養細菌を用いて脱窒を行うことが好ましく、通性嫌気性従属栄養細菌は、キサントモナス科に属するものであることが好ましい。
また第1の被処理水は、洗浄工程から排出される洗浄排水であり、第2の被処理水は、現像工程から排出される現像排水とすることができる。
さらに硝化手段で第1の被処理水中に含まれるアンモニアの濃度を予め定められた範囲に維持する制御手段をさらに備えることが好ましい。
またさらにアンモニア酸化細菌は、ベータプロテオバクテリアである複数種のアンモニア酸化細菌であることが好ましく、ニトロソモナス属およびニトロソスピラ属のそれぞれに属するものを含むことがさらに好ましい。
そして制御手段は、アンモニアの濃度を、好塩性・耐塩性のニトロソモナス属に属するアンモニア酸化細菌の増殖速度がニトロソスピラ属に属するアンモニア酸化細菌の増殖速度より大きくなる領域で維持することが好ましい。
【0013】
また本発明によれば、アンモニアを含む第1の被処理水および水酸化テトラメチルアンモニウムを含む第2の被処理水を処理する被処理水の処理方法であって、第1の被処理水と第2の被処理水とは、別々の工程から排出される排水であり、第1の被処理水に含まれるアンモニアを、アンモニア酸化細菌を含む硝化細菌を用いて亜硝酸性窒素および硝酸性窒素に酸化する硝化工程と、硝化工程により処理された第1の被処理水と、第2の被処理水とを混合し、かつ、硝化工程により処理された第1の被処理水に含まれる亜硝酸性窒素および硝酸性窒素を第2の被処理水に含まれる水酸化テトラメチルアンモニウムを水素供与体として使用し脱窒する脱窒工程と、を含むことを特徴とする被処理水の処理方法が提供される。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、アンモニアを含む第1の被処理水と、TMAHを含む第2の被処理水とをともに処理することができ、設置面積が小さくなりやすく、運転管理も容易になりやすい被処理水の処理装置等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本実施の形態の被処理水の処理装置の全体構成について説明した図である。
図2】(a)〜(b)は、洗浄排水を反応槽に回分供給した場合と、連続供給した場合とで、反応槽中のアンモニア濃度の変化について説明した図である。
図3】ニトロソモナス属のニトロソモナス・ユーロピア(Nitrosomonas europaea)と、ニトロソスピラ属のニトロソスピラ sp. AV(Nitrosospira sp. AV)とでアンモニア濃度に対する増殖速度の関係を示した図である。
図4】洗浄排水の組成を示した図である。
図5】硝化ユニットの運転条件を示した図である。
図6】硫酸アンモニウム((NHSO)の濃度の推移を示した図である。
図7】硝化ユニットの反応槽中の洗浄排水の水質変化を示した図である。
図8】硝酸性窒素の濃度と亜硝酸性窒素の濃度との割合で硝酸性窒素蓄積率を示した図である。
図9】硝化ユニットの反応槽内に生息する菌叢について説明した図である。
図10】混合液の水質変化を示した図である。
図11】反応槽内に生息する細菌の系統樹を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。尚、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することが出来る。また、使用する図面は本実施の形態を説明するためのものであり、実際の大きさを表すものではない。
以下、図面に基づき、本実施の形態が適用される被処理水の処理装置について説明を行う。
【0017】
<被処理水の処理装置全体の説明>
図1は、本実施の形態の被処理水の処理装置の全体構成について説明した図である。
図示する被処理水の処理装置1は、第1の被処理水である洗浄排水W1を貯留する第1の排水槽100と、第1の排水槽100の後段に配され、硝化手段の一例である硝化ユニット200と、硝化ユニット200で処理後の洗浄排水W1’を貯留する中間槽300と、第2の被処理水である現像排水W2を貯留する第2の排水槽400と、第2の排水槽400および中間槽300の後段に配され、脱窒手段の一例である脱窒ユニット500と、アルカリ性の中和液を貯留する第1の中和液槽600と、酸性の中和液を貯留する第2の中和液槽650と、脱窒ユニット500の後段に配される再曝気槽700と、汚泥と菌体とを分離する沈殿槽800と、処理装置1全体の動作を制御する制御手段の一例である制御ユニット900とを備える。
【0018】
本実施の形態の処理装置1では、第1の被処理水である洗浄排水W1は、まず第1の排水槽100に貯留される。次に洗浄排水W1は、ポンプP1の駆動により配管H1を通り硝化ユニット200に送出され、硝化ユニット200にて硝化処理が行われる。さらに硝化処理が行われた洗浄排水W1’は、ポンプP2の駆動により配管H2を通り中間槽300に一時的に貯留される。また洗浄排水W1’は、必要に応じポンプP6の駆動により配管H3を通り中間槽300から脱窒ユニット500に送出される。
【0019】
一方、第2の被処理水である現像排水W2は、まず第2の排水槽400に貯留される。次に現像排水W2は、ポンプP7の駆動により配管H4を通り脱窒ユニット500に送出される。現像排水W2は、脱窒ユニット500において硝化処理が行われた後の洗浄排水W1’と混合し、脱窒処理が行われる。また必要に応じて第1の中和液槽600からアルカリ性の中和液が、ポンプP4の駆動により配管H5を通り硝化ユニット200に供給される。そして必要に応じて第2の中和液槽650から酸性の中和液が、ポンプP5の駆動により配管H6を通り第2の排水槽400に供給される。
【0020】
さらに脱窒処理が行われた後の水は、ポンプP8の駆動により配管H7を通り再曝気槽700に送出され、再曝気槽700にて曝気が行われる。そして最後に処理水としてポンプP10の駆動により配管H8を通り沈殿槽800に送られる。
なお各ポンプの駆動は、制御ユニット900により制御される。
【0021】
<処理装置の各部の構成の説明>
次に処理装置1の各部の構成について詳述する。
硝化ユニット200は、洗浄排水W1に含まれるアンモニアを、アンモニア酸化細菌を含む硝化細菌を用いて亜硝酸性窒素および硝酸性窒素に酸化する。ただし以下に述べるように本実施の形態では、アンモニア酸化細菌は、アンモニアを、主に亜硝酸性窒素に酸化する。
【0022】
洗浄排水W1は、SC−1排水とも呼ばれ、半導体や液晶を製造する際の洗浄工程で使用するアンモニアを高濃度で含む。本実施の形態では、後述する反応槽210中に活性汚泥K1を導入し、この活性汚泥K1中にアンモニア酸化細菌が優占する環境とする。そしてこれによりアンモニアを酸化して亜硝酸性窒素および硝酸性窒素とする。
【0023】
ここでアンモニアを生物処理により酸化する際には、アンモニアを酸化する細菌として、アンモニア酸化細菌(AOB)と亜硝酸酸化細菌(NOB)が知られている。アンモニア酸化細菌や亜硝酸酸化細菌は、独立栄養性細菌であり、有機物を菌体合成に用いず、無機物を固定して菌体を合成する細菌である。
アンモニア酸化細菌は、アンモニアを亜硝酸性窒素に酸化する。また亜硝酸酸化細菌は、アンモニアを硝酸性窒素に酸化する。ただし亜硝酸酸化細菌がアンモニアを硝酸性窒素に酸化するには、アンモニア酸化細菌がアンモニアを亜硝酸性窒素に酸化するより、より多くの酸素を必要とする。この酸素は、空気(エア)を洗浄排水W1中に送り込むことで供給されるが、エアを送り込むポンプやブロワ等の運転コストがより大きくなる問題がある。
そのため反応槽210内を亜硝酸酸化細菌よりアンモニア酸化細菌が優占する環境とし、これによりアンモニアを亜硝酸性窒素に酸化する反応を優勢とすることが好ましい。
【0024】
またアンモニア酸化細菌は、複数種存在し、これらの増殖速度は互いに異なる。よって増殖速度のより速いアンモニア酸化細菌を優占する環境とし、これによりアンモニア酸化細菌が、アンモニアを亜硝酸性窒素に酸化する速度を向上させることができる。
【0025】
そこで本実施の形態では、硝化ユニット200を以下の構成とすることで、これを実現している。
【0026】
硝化ユニット200は、硝化処理を行う反応槽210と、反応槽210中にエアを供給し曝気を行うエア供給器220と、洗浄排水W1中の溶存酸素を検出する溶存酸素検出センサ230と、洗浄排水W1のpHを検出するpH検出センサ240と、洗浄排水W1中のアンモニア濃度を検出するアンモニア濃度検出センサ250とを備える。
【0027】
反応槽210内部には、洗浄排水W1とともに活性汚泥K1が貯留される。詳しくは後述するが、活性汚泥K1にはアンモニア酸化細菌が生息しており、このアンモニア酸化細菌により生物処理することで、酸化細菌の硝化を行う。
【0028】
エア供給器220は、エアを供給する配管である供給配管221と、供給配管221の一端に取り付けられエアを洗浄排水W1中に拡散する散気板222とを備える。供給配管221にはエア供給ポンプP3が設けられ、これによりエアが送出される。散気板222には、多数の孔が形成されており、この孔からエアは細かい気泡となって洗浄排水W1内に送り込まれる。また散気板222は、反応槽210の下部に配され、反応槽210の下部からエアを反応槽210内に送り込むことができる。反応槽210の下部から送り込まれたエアは、その浮力により洗浄排水W1内を上昇し、洗浄排水W1中に浮遊する活性汚泥K1内に広く拡散する。これにより、洗浄排水W1全体にアンモニア酸化細菌を浮遊させることができるとともに、アンモニア酸化細菌に十分に酸素を供給することができる。その結果、アンモニアの酸化反応を効率よく進行させることができる。
【0029】
洗浄排水W1中の溶存酸素(DO)濃度は、溶存酸素検出センサ230により検出される。溶存酸素検出センサ230としては、溶存酸素電極により洗浄排水W1中の溶存酸素濃度を測定する既存の装置を使用することができる。
本実施の形態では、硝化処理の際に、溶存酸素検出センサ230により溶存酸素量のモニタリングを行う。そして検出された溶存酸素量に基づき、制御ユニット900が、エア供給ポンプP3を制御することでエアの供給量を調整し、洗浄排水W1中の溶存酸素量を調整する。
【0030】
アンモニア酸化細菌と亜硝酸酸化細菌は、酸素に対する親和性が異なり、溶存酸素が比較的低濃度の領域では、亜硝酸酸化細菌よりもアンモニア酸化細菌の方がより優占となりやすい。よって洗浄排水W1中の溶存酸素量を調整することでアンモニア酸化細菌が優占となりやすい環境を作り出すことができる。
【0031】
また洗浄排水W1のpHは、pH検出センサ240により検出される。pH検出センサ240としては、pH電極により洗浄排水W1中の水素イオン濃度を測定する既存の装置を使用することができる。
本実施の形態では、硝化処理の際に、pH検出センサ240によりpHのモニタリングを行う。そして検出されたpHが予め定められた値(例えば、pH=7.0)を下回った場合、第1の中和液槽600に貯留されたアルカリ性の中和液を添加する。即ち、制御ユニット900が、ポンプP4を駆動することで中和液を硝化ユニット200に導入し、洗浄排水W1のpHを上昇させる。アルカリ性の中和液としては、例えば、炭酸水素ナトリウム(NaHCO)、水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化カリウム(KOH)を使用することができる。
【0032】
pHが比較的高い領域では、亜硝酸酸化細菌よりもアンモニア酸化細菌の方がより優占となりやすい。よって洗浄排水W1中のpHを調整することでアンモニア酸化細菌が優占となりやすい環境を作り出すことができる。
【0033】
さらに洗浄排水W1のアンモニア濃度は、アンモニア濃度検出センサ250により検出される。アンモニア濃度検出センサ250としては、アンモニア電極により洗浄排水W1中のアンモニウムイオン(NH)の濃度を測定する既存の装置を使用することができる。
【0034】
本実施の形態では、洗浄排水W1を反応槽210に連続供給せずに、回分供給(間欠供給)することで、反応槽210中のアンモニア濃度を維持する。ここで連続供給は、反応槽210に洗浄排水W1を連続的に供給しつつ、反応槽210から洗浄排水W1を連続的に排出する供給方法である。対して回分供給とは、反応槽210中の洗浄排水W1を所定の時間硝化処理し、その後、洗浄排水W1の一部を排出し、さらに排出した分の洗浄排水W1を新たに供給することを繰り返す供給方法である。
【0035】
図2(a)〜(b)は、洗浄排水W1を反応槽210に回分供給した場合と、連続供給した場合とで、反応槽210中のアンモニア濃度の変化について説明した図である。
このうち図2(a)は、洗浄排水W1を反応槽210に回分供給したときのアンモニア濃度の推移を示している。また図2(b)は、洗浄排水W1を反応槽210に連続供給したときのアンモニア濃度の推移を示している。図2(a)〜(b)において、横軸は時間を表し、縦軸はアンモニア濃度(NH濃度)を表す。
【0036】
図2(a)に図示するように、洗浄排水W1を反応槽210に回分供給したときは、時間の経過に伴い、アンモニア濃度は増加と減少を繰り返す。この場合、アンモニア濃度が増加するときは、洗浄排水W1を反応槽210に供給したときである。またアンモニア濃度は、その後時間が経過し、硝化処理が進行するに従い、減少する。
【0037】
一方、図2(b)に図示するように、洗浄排水W1を反応槽210に連続供給したときは、時間の経過に対し、アンモニア濃度は一定となる。
図2(a)と図2(b)を比較すると、全体的には、洗浄排水W1を反応槽210に連続供給するよりも反応槽210に回分供給したときの方が、アンモニア濃度は高くなる傾向にある。
【0038】
一般的にアンモニア酸化細菌は、アンモニアの濃度の増加により、まず増殖速度は直線的に増大し、そして徐々に増大の度合いが減衰し、最大値である最大比増殖速度に収束する。このアンモニア濃度に対するアンモニア酸化速度の増殖曲線は、種類によって大きく2種類に大別することができる。このうちの一方は、アンモニアが高濃度で増殖速度が高くなるr−ストラテジストと呼ばれるものである。また他方はアンモニアが高濃度の場合、増殖速度がr−ストラテジストほど高くないものの、低濃度において増殖速度がr−ストラテジストを上回るK−ストラテジストと呼ばれるものである。この2種類のアンモニア酸化細菌の増殖曲線は、あるアンモニア濃度において交点を有し、反応槽210内のアンモニア濃度がこの交点より低い場合は、K−ストラテジストのアンモニア酸化細菌がより多く増殖し、アンモニア濃度がこの交点より高い場合はr−ストラテジストのアンモニア酸化細菌がより多く増殖する。つまり反応槽210内のアンモニア濃度を調整することにより、反応槽210内にK−ストラテジストもしくはr−ストラテジストのアンモニア酸化細菌の何れかを優占化させることが可能である。
【0039】
高濃度にアンモニアを含む洗浄排水W1中で優占化するアンモニア酸化細菌としては、好塩性・耐塩性のニトロソモナス(Nitrosomonas)属およびニトロソスピラ属(Nitrosospira)が存在する。ニトロソモナス属はr−ストラテジストであり、ニトロソスピラ属はK−ストラテジストである。なおこれらはベータプロテオバクテリアである。
【0040】
図3は、ニトロソモナス属のニトロソモナス・ユーロピア(Nitrosomonas europaea)と、ニトロソスピラ属のニトロソスピラ sp. AV(Nitrosospira sp. AV)とでアンモニア濃度に対する増殖速度の関係を示した図である。図3では、この両者の増殖曲線を図示している。ここで横軸はアンモニア濃度(NH concentration)を表わし、縦軸は、増殖速度(Specific growth rate)を表す。
【0041】
図示するようにアンモニア濃度が比較的低い領域では、ニトロソスピラ属のニトロソスピラ sp. AVの方が、ニトロソモナス属のニトロソモナス・ユーロピアの方より増殖速度は速い。しかしアンモニア濃度が大きくなると、この関係は逆転し、ニトロソモナス属のニトロソモナス・ユーロピアの方が増殖速度は速くなる。
【0042】
反応槽210内の溶存酸素濃度が例えば1.5mg/Lで一定の場合、両者の増殖曲線の交点は、35mg−N/Lである。よってアンモニア濃度35mg−N/L以上であると、ニトロソモナス属のニトロソモナス・ユーロピアが優占化し、この濃度未満の場合はニトロソスピラ属のニトロソスピラ sp. AVが優占化する。このように反応槽210中のアンモニア濃度を調整することにより、アンモニア酸化の性能の異なるアンモニア酸化細菌を優占化させることが可能になる。
【0043】
本実施の形態では、洗浄排水W1を反応槽210に回分供給して、洗浄排水W1中のアンモニア濃度をより高く設定することで、ニトロソモナス属のニトロソモナス・ユーロピアを優占化させる。このアンモニア酸化細菌は、図3に示すようにアンモニア濃度が高い領域において増殖速度が非常に速いため、洗浄排水W1中により多く存在するようになる。その結果、硝化処理をより効率よく行うことができる。
【0044】
本実施の形態では、硝化処理の際に、アンモニア濃度検出センサ250によりアンモニア濃度のモニタリングを行う。そして検出されたアンモニア濃度が予め定められた値を下回った場合、制御ユニット900が、ポンプP2を駆動することで洗浄排水W1の一部を排出する。さらに制御ユニット900が、ポンプP1を駆動することで排出した分の洗浄排水W1を補充する。なお洗浄排水W1の排出は、活性汚泥K1をいったん沈殿させた後、洗浄排水W1の上澄み液を排出することで行う。本実施の形態では、洗浄排水W1を回分供給することにより、洗浄排水W1中に含まれるアンモニアの濃度を予め定められた範囲に維持する。そしてアンモニアの濃度を、ニトロソモナス属に属するアンモニア酸化細菌の増殖速度がニトロソスピラ属に属するアンモニア酸化細菌の増殖速度より大きくなる領域で維持する。
【0045】
脱窒ユニット500は、硝化ユニット200により処理された洗浄排水W1’に含まれる亜硝酸性窒素および硝酸性窒素を現像排水W2に含まれる水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)を水素供与体として使用し脱窒する。
【0046】
脱窒ユニット500には、第2の排水槽400から現像排水W2が供給されるとともに、中間槽300から洗浄排水W1’が供給される。ただし現像排水W2はアルカリ性であり、脱窒ユニット500で脱窒処理を行うには、そのままでは適さない。よって第2の中和液槽650から第2の排水槽400に酸性の中和液を添加し、第2の排水槽400で予め中和を行っておく。
【0047】
脱窒ユニット500は、反応槽510と、反応槽510中の洗浄排水W1’および現像排水W2(以下、「混合液W3」と言うことがある)を攪拌するための撹拌翼520とを備える。
【0048】
反応槽510内部には、混合液W3とともに活性汚泥K2が貯留される。反応槽510では、硝化ユニット200と同様に生物処理が行われ、これにより亜硝酸性窒素および硝酸性窒素を脱窒処理する。本実施の形態では、活性汚泥K2にキサントモナス科の通性嫌気性従属栄養細菌が生息し、これにより生物処理による脱窒が行われる。
【0049】
このとき洗浄排水W1’に含まれる亜硝酸性窒素および硝酸性窒素を脱窒する際に、現像排水W2に含まれる水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)が水素供与体となる。
この反応は、具体的には、以下の(1)式、および(2)式となる。(1)式は、亜硝酸性窒素を脱窒する反応であり、(2)式は、硝酸性窒素を脱窒する反応である。
【0050】
13ON+8NO+8H=4N+3CO+NH+HCO+8H
…(1)
13ON+4.8NO+4.8H=2.4N+3CO+NH+HCO+6.4HO …(2)
【0051】
また本実施の形態でも混合液W3は、回分供給される。即ち、反応槽510中の混合液W3を所定の時間脱窒処理し、その後、混合液W3の一部を排出し、さらに排出した分の洗浄排水W1’と現像排水W2を新たに供給することを繰り返す。なお混合液W3の排出は、活性汚泥K2をいったん沈殿させた後、混合液W3の上澄み液を排出することで行う。
【0052】
脱窒処理の際は、撹拌翼520により反応槽510内部が撹拌される。これにより混合液W3と活性汚泥K2が撹拌され、両者が高頻度に接触することで、脱窒処理を促進することができる。
【0053】
再曝気槽700は、脱窒ユニット500から排出された混合液W4に再曝気を行うことで残存する有機物を除去する。
再曝気槽700は、エア供給器720を備える。エア供給器720は、エアを供給する配管である供給配管721と、供給配管721の一端に取り付けられエアを混合液W4中に拡散する散気板722とを備える。供給配管721にはエア供給ポンプP9が設けられ、これによりエアが送出される。そして散気板722には、多数の孔が形成されており、この孔からエアは細かい気泡となって混合液W4内に送り込まれる。
【0054】
沈殿槽800は、再曝気が行われた後の処理済水W5を貯留し、静置を行なう。これにより汚泥を沈殿させ、汚泥と菌体とが分離される。
【0055】
以上詳述した処理装置1によれば、アンモニアを含む洗浄排水W1と、TMAHを含む現像排水W2とをともに処理することができる。そのため処理装置1の設置面積が小さくなりやすく、運転管理も容易になりやすい。また脱窒処理の際に、TMAHを水素供与体とする。これにより有機物等を別途添加することが不要であるか、添加量を削減することができる。
【0056】
また以上詳述した処理装置1が行う処理方法は、アンモニアを含む第1の被処理水である洗浄排水W1およびTMAHを含む第2の被処理水である現像排水W2を処理する被処理水の処理方法であって、洗浄排水W1に含まれるアンモニアを、アンモニア酸化細菌を含む硝化細菌を用いて亜硝酸性窒素および硝酸性窒素に酸化する硝化工程と、硝化工程により処理された洗浄排水W1に含まれる亜硝酸性窒素および硝酸性窒素を現像排水W2に含まれるTMAHを水素供与体として使用し脱窒する脱窒工程と、を含むことを特徴とする被処理水の処理方法として捉えることもできる。
【実施例】
【0057】
以下、本発明を実施例を用いてより詳細に説明するが、本発明は、その要旨を越えない限りこれらの実施例により限定されるものではない。
【0058】
図1に示す処理装置1を使用して洗浄排水W1および現像排水W2の処理を行った。
まず硝化ユニット200において、アンモニア酸化細菌を優占化させることを試みた。
【0059】
図4に示す組成からなる洗浄排水W1を用意し、第1の排水槽100に貯留した。また活性汚泥K1として種汚泥を反応槽210内に8.4Lの2/3の容積になるように導入した。
【0060】
次に(i)ポンプP1を駆動して、洗浄排水W1を反応槽210内に導入した。このとき導入した洗浄排水W1は、容積が8.4Lの1/3の容積になるようにした。またこのときエア供給ポンプP3を駆動し、エア供給器220によりエアを供給し、洗浄排水W1を曝気した。
さらに(ii)洗浄排水W1の導入後、引き続きエア供給器220によりエアを供給し、洗浄排水W1を曝気した。曝気時間は、(i)と合わせて465分となった。その後、エア供給ポンプP3を停止し、活性汚泥K1を沈殿させた。
次に(iii)ポンプP2を駆動し、8.4Lの1/3の容積に相当する上澄み液を中間槽300に排出した。
【0061】
以上の(i)〜(iii)を1サイクルとして、1サイクルに要する時間を8時間に設定した。この1サイクルの詳細な運転条件を図5に示す。この場合、1日に3サイクル繰り返すことができる。そしてこの運転状況で、硝化ユニット200を3年間運転した。
【0062】
そして反応槽210に生息する亜硝酸化能、細菌の群集構造の評価を行った。なお図4に示すアンモニア性窒素の濃度は、図6に示すように、100mLから運転を開始し、アンモニアの除去が安定した時点で濃度を徐々に上昇させた。
なお1サイクルにおける洗浄排水W1の導入量および排出量は、8.4Lの1/3であるため、1日(3サイクル)で8.4Lの洗浄排水W1を処理することができることになる。なお反応槽210内の洗浄排水W1の温度は、28℃とした。
【0063】
図7は、反応槽210中の洗浄排水W1の水質変化を示した図である。
ここでは、横軸は日数(Time)を表し、縦軸は、洗浄排水W1に含まれる成分の濃度(N-concentration)を表す。この場合、成分は、亜硝酸性窒素、硝酸性窒素およびアンモニアとしている。
また図8は、硝酸性窒素の濃度と亜硝酸性窒素の濃度との割合で硝酸性窒素蓄積率を示した図である。ここでは、横軸は日数(Time)を表し、縦軸は、図7で示す成分中の亜硝酸性窒素の割合(Nitrite accumulatuion efficiency)を表す。
【0064】
図7に示すように、初期(20日)では、亜硝酸性窒素および硝酸性窒素の双方の蓄積が見られる。しかしながら100日目以降から安定して亜硝酸性窒素が蓄積していくことがわかる。
この結果により、図5の運転条件により、安定してアンモニアが硝化処理され、亜硝酸性窒素が蓄積することがわかる。
【0065】
次に反応槽210内に生息する菌叢をリアルタイム定量PCR法を適用して観察した。その結果を図9に示す。
図9では、アンモニア酸化細菌(AOB)と、亜硝酸酸化細菌(NOB)であるNitrobacter(ナイトロバクター)属およびNitrospira(ナイトロスパイラ)属と、全菌とのそれぞれの存在量を示している。ここで横軸は、日数(Time)を表し、縦軸は、存在量(Abundance)を表す。
図示するように時間の経過とともにアンモニア酸化細菌(AOB)が、有意に存在量が増加していくことがわかる。またNOBであるNitrobacter(ナイトロバクター)属は、日数の経過とともに存在量があまり変化しないのに対し、Nitrospira(ナイトロスパイラ)属は、途中から検出下限値以下(0.1%以下)となったため、硝化ユニット200の運転によりウオッシュアウトしたことがわかる。
【0066】
また上記(iii)で中間槽300に排出した洗浄排水W1’を、ポンプP6を駆動して脱窒ユニット500の反応槽510に導入した。洗浄排水W1’の亜硝酸窒素の濃度は、900mg−N/Lであり、硝酸窒素の濃度は、60mg−N/Lであった。また模擬現像排水W2を第2の排水槽400に貯留した。そし第2の中和液槽650から酸性の中和液として希塩酸(0.1M)を導入し、pHを7.8とした。そして中和後の現像排水W2を、ポンプP7を駆動して反応槽510に導入した。反応槽510に導入される洗浄排水W1’と現像排水W2の混合液W3はTMAH濃度が1000mg−C/Lとなるようにした。
【0067】
混合液W3を反応槽510内に2.5Lの容積になるように導入した。また活性汚泥K2として種汚泥を反応槽510内に導入した。
【0068】
次に(iv)混合液W3を反応槽510内に1.5L導入した。
さらに(v)撹拌翼520を回転させ、3日間脱窒処理を行った。その後、撹拌翼520を停止し、活性汚泥K2を沈殿させた。
次に(vi)ポンプP7を駆動し、1.5Lの容積に相当する上澄み液を再曝気槽700に排出した。
【0069】
以上の(iv)〜(vi)を1サイクルとして、これを約2ヶ月繰り返した。なお反応槽510内の混合液W3の温度は、28℃とした。
そして反応槽510内の混合液W3中のTMAHの減少量とNOxの減少量の評価を行った。
【0070】
図10は、混合液W3の水質変化を示した図である。
ここでは、横軸は日数(Time)を表し、縦軸は、TMAHの減少量をTOCの減少量(dTOC)として表すとともにNOxの減少量(dNOx)を表す。
図示するようにTOCとNOxは双方とも減少している。これは約10%の有機物が脱窒により処理されたことを示す。
【0071】
次に反応槽510内に生息する菌叢をPCR−DGGE法を適用して観察した。そして脱窒ユニット500の運転により顕著に増加していた菌を含むバンドを切り出し、その後シーケンス解析を行い系統樹を作成した。
【0072】
結果を図11に示す。図示する系統樹において最も顕著に増加していた細菌をNo1で示している。No1で示す細菌は、脱窒素機能のあるXanthomonadaceae(キサントモナス科)のTermomonasと近い種(相同性98%)であった。このことから現像排水W2中のTMAHを水素供与体として脱窒処理が可能であることがわかる。
【符号の説明】
【0073】
1…処理装置、200…硝化ユニット、500…脱窒ユニット、900…制御ユニット、W1…洗浄排水、W2…現像排水、W3、W4…混合液、W5…処理済水、K1、K2…活性汚泥
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11