(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
  本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
 
【0012】
  互いに交差する上下方向と左右方向とを有し、複数の溶着部によって接合された第1シートと第2シートとの間に、前記左右方向に沿って伸縮可能な弾性部材が前記上下方向に間隔を空けて複数配置された伸縮性シートであって、複数の前記弾性部材のうち或る弾性部材の上側に、第1溶着部と、前記第1溶着部の前記左右方向の一方側に隣り合う第3溶着部とを有し、前記或る弾性部材の下側に、第2溶着部と、前記第2溶着部の前記一方側に隣り合う第4溶着部とを有し、前記或る弾性部材は、前記左右方向に収縮した状態において、前記第1溶着部と前記第2溶着部とによって前記上下方向に挟み込まれると共に、前記第3溶着部と前記第4溶着部とによって前記上下方向に挟み込まれることによって、前記第1シート及び前記第2シートに取り付けられており、前記第1溶着部と前記第3溶着部とは、前記上下方向において重複する部分を有し、前記第1溶着部の下端位置と前記第3溶着部の下端位置とは、前記上下方向においてずれている、ことを特徴とする伸縮性シート。
 
【0013】
  このような伸縮性シートによれば、上下方向における第3溶着部と第2溶着部との間隔が、第1溶着部と第2溶着部との間隔よりも狭くなる。したがって、自然状態から左右方向に伸長された場合に弾性部材の外径寸法が細くなったとしても、第3溶着部の下端と第2溶着部の上端とによって弾性部材に摩擦力が作用し、弾性部材が左右方向へ位置ずれすることを抑制できる。したがって、弾性部材が接着剤等で接合されていないため柔軟性を有し、かつ、弾性部材の位置ずれが生じにくい伸縮性シートを実現することができる
 
【0014】
  かかる伸縮性シートであって、前記上下方向において、前記第1溶着部と前記第3溶着部とが重複している部分の長さは、前記上下方向において、前記第1溶着部の最下端と前記第3溶着部の最下端との間の長さよりも長い、ことが望ましい。
 
【0015】
  このような伸縮性シートによれば、左右方向に隣り合う2つの溶着部の上下方向におけるずれ量が所定の大きさに制限されるため、溶着部のずれに応じて弾性部材が傾斜して取り付けられてしまうことが抑制される。したがって、弾性部材の伸縮力が上下方向に作用してしまうことが抑制され、吸収性物品の胴回りにおけるフィット性が損なわれること等を抑制しやすくなる。
 
【0016】
  かかる伸縮性シートであって、前記左右方向において前記弾性部材を伸長可能な最大の長さまで伸長させたときの前記弾性部材の外径長さは、前記上下方向において、前記第1溶着部の最下端と前記第3溶着部の最下端との間の長さよりも長い、ことが望ましい。
 
【0017】
  このような伸縮性シートによれば、溶着部の間に弾性部材を配置する際に、弾性部材の上下方向に対する傾斜が相対的に大きくなることによって該弾性部材が湾曲したり蛇行したりすることが抑制される。したがって、弾性部材の伸縮力が上下方向に作用してしまうことが抑制され、吸収性物品の胴回りにおけるフィット性が損なわれること等をより抑制しやすくなる。
 
【0018】
  かかる伸縮性シートであって、前記第1溶着部の前記左右方向における長さは、前記第1溶着部の前記上下方向における長さよりも長い、ことが望ましい。
 
【0019】
  このような伸縮性シートによれば、溶着部の形状が横長であることにより、弾性部材と溶着部との間の左右方向における接触部分の面積(長さ)が大きくなるため、当該接触部分に生じる摩擦力を大きくすることができる。したがって、溶着部によって固定されている弾性部材の位置ずれが生じにくくなり、伸縮性シートに安定した伸縮性を付与することができる。
 
【0020】
  かかる伸縮性シートであって、前記第2溶着部及び前記第3溶着部は、長方形の4隅が切り欠かれた形状である、ことが望ましい。
 
【0021】
  このような伸縮性シートによれば、溶着部の4隅に切り欠きが形成されている分だけ、弾性部材と溶着部とが接触可能な長さが長くなり、より大きな摩擦力が発生するため、弾性部材の位置ずれを抑制しやすくなる。
 
【0022】
  かかる伸縮性シートであって、前記第2溶着部及び前記第3溶着部は、楕円形状である、ことが望ましい。
 
【0023】
  このような伸縮性シートによれば、溶着部の曲線(楕円)に沿って弾性部材が接触するため、弾性部材と溶着部とが接触可能な長さが長くなり、より大きな摩擦力が発生するため、弾性部材の位置ずれを抑制しやすくなる。
 
【0024】
  かかる伸縮性シートであって、前記第1溶着部〜前記第4溶着部は、いずれも同じ形状である、ことが望ましい。
 
【0025】
  このような伸縮性シートによれば、超音波溶着装置等を用いて溶着部を形成する際に、装置の構成を単純にすることができるため、製造コストを低減し、また、装置のメンテナンスが容易になる。
 
【0026】
  かかる伸縮性シートであって、前記左右方向において前記弾性部材を伸長可能な最大の長さまで伸長させたときの前記弾性部材の外径長さは、前記上下方向における前記第1溶着部の最下端と前記第2溶着部の最上端との間の長さ、及び、前記上下方向における前記第3溶着部の最下端と前記第4溶着部の最上端との間の長さよりも短い、ことが望ましい。
 
【0027】
  このような伸縮性シートによれば、上下方向に隣り合う溶着部対の間に弾性部材を配置しやすくすることができる。つまり、弾性部材と重複することなく溶着部対を形成することができる。これにより、製造工程において、弾性部材に重ねて超音波振動が投与される等により、弾性部材が切断されてしまうことを抑制することができる。
 
【0028】
  かかる伸縮性シートであって、前記左右方向において前記弾性部材を伸長可能な最大の長さまで伸長させたときの前記弾性部材の外径長さは、前記上下方向における前記第3溶着部の最下端と前記第2溶着部の最上端との間の長さよりも短い、ことが望ましい。
 
【0029】
  このような伸縮性シートによれば、上下方向に隣り合う1対の溶着部対の間隔よりもさらに狭い間隔の間に弾性部材を配置することができる。つまり、第3溶着部及び第2溶着部のいずれとも重複することなく溶着部対を形成することができる。これにより、製造工程において弾性部材が切断されてしまうことを、より抑制しやすくなる。
 
【0030】
  かかる伸縮性シートであって、前記或る弾性部材の上側に、前記第3溶着部の前記左右方向の一方側に隣り合う第5溶着部を有し、前記左右方向において前記弾性部材を伸長可能な最大の長さまで伸長させたときの前記弾性部材の外径長さは、前記上下方向における前記第5溶着部の最下端と前記第2溶着部の最上端との間の長さよりも短い、ことが望ましい。
 
【0031】
  このような伸縮性シートによれば、第3溶着部と第2溶着部との上下方向における間隔よりもさらに狭い、第5溶着部と第2溶着部との間に弾性部材を配置することができる。これにより、製造工程において弾性部材が切断されてしまうことを、より抑制しやすくなる。
 
【0032】
  かかる伸縮性シートであって、前記上下方向における前記第1溶着部の最下端と前記第2溶着部の最上端との間の長さと、前記上下方向における前記第3溶着部の最下端と前記第4溶着部の最上端との間の長さとが等しい、ことが望ましい。
 
【0033】
  このような伸縮性シートによれば、各々の溶着部が均等に配置された溶着部列が形成される。これにより、腹側帯部材(背側帯部材)において第1シートと第2シートとの接合強度が局所的に弱くなって破れやすくなったり、逆に接合強度が局所的に強くなって肌触りが悪化したりすることが抑制される。
 
【0034】
  かかる伸縮性シートであって、前記左右方向において前記弾性部材を伸長可能な最大の長さの70%まで伸長させたときの前記弾性部材の外径長さは、前記上下方向における前記第3溶着部の最下端と前記第2溶着部の最上端との間の長さよりも長い、ことが望ましい。
 
【0035】
  このような伸縮性シートによれば、吸収性物品の通常の使用態様において、弾性部材の外径が、第3溶着部の最下端と第2溶着部の最上端との上下方向の間隔よりも常に太くなっているため、第3溶着部と第2溶着部とによって弾性部材の位置ずれをより確実に抑制することができる。
 
【0036】
  かかる伸縮性シートであって、前記左右方向において、隣り合う2つの前記溶着部の間隔は6mm以下である、ことが望ましい。
 
【0037】
  このような伸縮性シートによれば、左右方向に隣り合う2つの溶着部同士の間隔が短かいため、当該2つの溶着部と弾性部材との間に有効な摩擦力を発生させやすく、弾性部材の左右方向における位置ずれを抑制しやすくなる。
 
【0038】
  また、伸縮性シートであって、互いに交差する上下方向と左右方向とを有し、排泄物を吸収する吸収性本体と、前記左右方向に沿って設けられ、前記吸収性本体の前側上端部に接合された腹側帯部材と、前記腹側帯部材とは別体として前記左右方向に沿って設けられ、前記吸収性本体の後側上端部に接合された背側帯部材と、を備えた吸収性物品であって、前記腹側帯部材及び前記背側帯部材は、複数の溶着部によって接合された第1シート及び第2シートと、前記左右方向に沿って伸縮可能な弾性部材とを有し、前記弾性部材は、前記第1シートと前記第2シートとの間に、前記上下方向に間隔を空けて複数配置されており、複数の前記弾性部材のうち或る弾性部材の上側に、第1溶着部と、前記第1溶着部の前記左右方向の一方側に隣り合う第3溶着部とを有し、前記或る弾性部材の下側に、第2溶着部と、前記第2溶着部の前記一方側に隣り合う第4溶着部とを有し、前記或る弾性部材は、前記左右方向に収縮した状態において、前記第1溶着部と前記第2溶着部とによって前記上下方向に挟み込まれると共に、前記第3溶着部と前記第4溶着部とによって前記上下方向に挟み込まれることによって、前記第1シート及び前記第2シートに取り付けられており、前記第1溶着部と前記第3溶着部とは、前記上下方向において重複する部分を有し、前記第1溶着部の下端位置と前記3溶着部の下端位置とは、前記上下方向においてずれている、ことを特徴とする吸収性物品、が明らかとなる。
 
【0039】
  このような吸収性物品によれば、着用者の胴回りに当接する腹側帯部材(背側帯部材)において、弾性部材の位置ずれが生じにくくなるため、該弾性部材による伸縮力が局所的に集中したり、作用しにくくなったりすることが抑制される。これにより、着用者の胴回り部における良好なフィット性を維持することができる。
 
【0040】
  かかる吸収性物品であって、前記腹側帯部材に設けられた前記弾性部材の前記上下方向における間隔と、前記背側帯部材に設けられた前記弾性部材の前記上下方向における間隔とが異なる、ことが望ましい。
 
【0041】
  このような吸収性物品によれば、腹側帯部材と背側帯部材とで表面に形成される皺の大きさや形状を異ならせることができる。これにより、腹側帯部材と背側帯部材とが厚さ方向に密着しにくくなり、吸収性物品の使用時に腹側帯部材と背側帯部材とを前後に開いて胴回り開口を形成しやすくすることができる。
 
【0042】
  かかる吸収性物品であって、前記腹側帯部材に設けられた前記弾性部材の前記上下方向における間隔が、前記背側帯部材に設けられた前記弾性部材の前記上下方向における間隔よりも狭い、ことが望ましい。
 
【0043】
  このような吸収性物品によれば、上下方向における弾性部材間のピッチが広い背側帯部材において、大きな皺を形成しやすくすることができる。これにより、身体の動きが大きい臀部領域において背側帯部材が身体の動きに追従して伸びやすくなり、フィット性が向上する。
 
【0044】
  ===実施形態===
  <使い捨ておむつの構成>
  本実施形態に係る伸縮性シートを用いた吸収性物品の一例として使い捨ておむつ1(以下、「おむつ1」とも呼ぶ)について説明する。同おむつ1では、伸縮性シートを胴回りの帯部材(後述する腹側帯部材31と背側帯部材41)として使用している。
図1は、おむつ1の概略斜視図である。
図2は、展開かつ伸長した状態のおむつ1を着用者の肌側から見た概略平面図である。
図3は、
図2中のA−A断面図であるとともに、同
図2中のB−B断面図でもある。
 
【0045】
  このおむつ1は、
図1のような着用前のパンツ型状態において、「上下方向」と、上下方向と直交する「左右方向」と、上下方向及び左右方向と直交する「前後方向」と、を有している。なお、上下方向については、上側が、着用者の胴回り開口側に対応し、下側が、着用者の股下側に対応している。また、前後方向については、前側が着用者の腹側に対応し、後側が着用者の背側に対応している。
 
【0046】
  図1のパンツ型状態において、おむつ1は、左右方向に沿って伸縮性を有する腹側帯部材31と、この腹側帯部材31の後側に位置しつつ、当該腹側帯部材31と共同して、上下方向の上側に胴回り開口BHを形成するための左右方向に沿って伸縮性を有する背側帯部材41と、腹側帯部材31と背側帯部材41との間に設けられた股下部としての吸収性本体10と、を備えている。そして、吸収性本体10は、腹側帯部材31及び背側帯部材41よりも上下方向の下方に突出して位置している。
 
【0047】
  また、腹側帯部材31における左右方向の各端部31e,31eと、対応する背側帯部材41における左右方向の各端部41e,41eとは、溶着部としてのサイドシール部SSで接合されている。そして、これにより、腹側帯部材31及び背側帯部材41が、吸収性本体10と共同して、下側かつ左右方向の両側にそれぞれ脚回り開口LH,LHを一つずつ形成している。
 
【0048】
  ここで、「展開状態」とは、
図1のパンツ型状態のおむつ1が左右方向の両側に有する前述のサイドシール部SSの接合を解くことで、腹側帯部材31と背側帯部材41とを分離するとともに、おむつ1を上下方向に開くことで、おむつ1を平面上に展開した状態のことである。また、「伸長状態」とは、製品(おむつ1)を皺無く伸長させた状態、具体的には、おむつ1を構成する各部材(例えば、吸収性本体10や腹側帯部材31等)の寸法がその部材単体の寸法と一致又はそれに近い長さになるまで伸長した状態のことを言う。
 
【0049】
  展開状態において、おむつ1は、互いに直交する三方向として長手方向と左右方向と厚さ方向(
図2では紙面を貫通する方向)とを有している。なお、長手方向は、前述の上下方向に沿っている。そして、長手方向の一方側が腹側(前側)に対応し、他方側が背側(後側)に対応している。また、長手方向の外側が、上下方向の上側(胴回り開口側)に対応し、長手方向の内側が、上下方向の下側(股下側)に対応している。そして、このように長手方向と上下方向とは互いに似通った方向であることから、以下では、説明の都合上、この展開状態においても、長手方向に代えて上下方向を用いて説明することもある。一方、左右方向は、前述のパンツ型状態における左右方向と同義である。また、厚さ方向については、一方側が、着用者の身体に接する肌側に対応し、他方側が、その逆側の非肌側に対応している。なお、厚さ方向は、前述の前後方向に沿っている。
 
【0050】
  図2の展開状態においては、腹側帯部材31は、左右方向に沿って配されており、また、背側帯部材41は、腹側帯部材31と長手方向に所定の間隔を空けた位置で、左右方向に沿って配されている。そして、これら腹側帯部材31と背側帯部材41との間に吸収性本体10が長手方向に沿って掛け渡されつつ、同吸収性本体10の長手方向の各端部10ea,10eb(すなわち、パンツ型状態における前側上端部10ea及び後側上端部10eb)が、それぞれ最寄りの各帯部材31,41に接合固定されていて、これにより、その外観形状は、平面視略H型状をなしている。また、この状態から、吸収性本体10における長手方向の所定位置CL1(長手方向におけるおむつ1の中央位置CL1)を折り位置としておむつ1が二つ折りされるとともに、この二つ折りの状態において互いに対向する帯部材31,41の左右方向の端部31e,41e同士が前述のサイドシール部SSで接合されると、これら帯部材31,41同士が環状に繋がって、これにより、
図2に示すような胴回り開口BH及び一対の脚回り開口LH,LHが形成されたパンツ型のおむつ1となる。
 
【0051】
  吸収性本体10は、
図2の展開状態において平面視略長方形状をなしている。そして、吸収性本体10の長手方向が、おむつ1の長手方向に沿うように配されている。また、
図3に示すように、吸収性本体10は、吸収体11と、同吸収体11を肌側から覆って吸収性本体10の肌側面をなす液透過性のトップシート13と、同吸収体11を非肌側から覆って吸収性本体10の非肌側面をなす液不透過性のバックシート15と、を備えている。
 
【0052】
  吸収体11は、液体吸収性の吸収性コア11cと、同コア11cの外周面を被覆する不図示のコアラップシートと、を有する。吸収性コア11cは、パルプ繊維や高吸収性ポリマー等の液体吸収性素材を所定形状の一例としての平面視略砂時計形状に成形した成形体である。また、コアラップシートには、ティッシュペーパーや不織布等の液透過性シートを使用可能であるが、コアラップシートについては無くても良い。更に、吸収性コア11cの形状は、何等上記の平面視略砂時計形状に限らず、他の形状でも良い。
 
【0053】
  トップシート13は、不織布等の液透過性の柔軟なシートである。また、バックシート15は、液不透過性の柔軟なシートである。そして、同バックシート15の一例としては、ポリエチレンフィルムやポリプロピレンフィルム等の液不透過性の防漏シートと、防漏シートの非肌側に貼り合わされた不織布製の外装シートとを有した二層構造のラミネートシートが挙げられる。
 
【0054】
  なお、
図2に示すように、少なくともバックシート15は、吸収体11から長手方向及び左右方向に突出するような平面サイズのシートである。そして、左右方向に突出した部分に、それぞれ長手方向に伸縮するレッグギャザーLGが形成されている。すなわち、当該突出した部分には、弾性部材として長手方向に沿った糸ゴム17が長手方向に伸長した状態で固定されていて、これにより、当該部分に伸縮性のレッグギャザーLGが形成されている。
 
【0055】
  また、
図2及び
図3に示すように、吸収性本体10は、横漏れを防止する目的で左右方向の各端部に防漏壁部としての立体ギャザーLSG,LSGを有している。すなわち、立体ギャザーLSGとなるシート状部分に弾性部材として長手方向に沿った糸ゴム18が長手方向に伸長した状態で取り付けられた構成が、吸収性本体10の左右方向の各端部に設けられている。
 
【0056】
  図2に示すように、腹側帯部材31は、厚さ方向に積層された第1シート32及び第2シート33を素材とした平面視略矩形形状のシート部材である。すなわち、
図3に示すように、第1シート32,第2シート33は、互いに厚さ方向に重ねられた状態にあるとともに、互いに対向する一対の対向面同士が、後述の
図4に示すように上下方向及び左右方向に離散的に配された複数の溶着部50,50…(接合部に相当)によって接合されている。そして、
図2に示すように、当該腹側帯部材31は、吸収性本体10よりも左右方向の両側に突出するように配されつつ、同吸収性本体10における腹側の端部(前側上端部)10eaに非肌側から重ねられて接合されている。
 
【0057】
また、背側帯部材41も、腹側帯部材31と同様に、厚さ方向に積層された第1シート42及び第2シート43を素材とした平面視略矩形形状のシート状部材である。すなわち、
図3に示すように、第1シート32,第2シート33士は、互いに厚さ方向に重ねられた状態にあるとともに、互いに対向する一対の対向面同士が、
図4の腹側帯部材31の場合と同様に、上下方向(長手方向)及び左右方向に離散的に配された複数の溶着部50,50…(接合部に相当)で接合されている。そして、
図2に示すように、当該背側帯部材41は、吸収性本体10よりも左右方向の両側に突出するように配されつつ、同吸収性本体10における背側の端部(後側上端部)10ebに非肌側から重ねられて接合されている。
 
【0058】
  また、この例では、腹側帯部材31(41)に係る第1シート32(42),第2シート33(43)のいずれも、スパンボンド不織布が使用されている。但し、何等これに限らず、SMS(スパンボンド/メルトブローン/スパンボンド)不織布等、別の種類の不織布を用いても良い。また、この例では、不織布の構成繊維として熱可塑性樹脂の代表例のポリプロピレン(PP)の単独繊維を用いているが、何等これに限らない。例えば、ポリエチレン(PE)などの他の熱可塑性樹脂の単独繊維を用いても良いし、更に、PE及びPP等の鞘芯構造を有した複合繊維を用いても良い。
 
【0059】
  <腹側帯部材31について>
  続いて、本実施形態に係る伸縮性シートたる腹側帯部材31及び背側帯部材41の具体的な構成について説明する。上述したように、本実施形態の腹側帯部材31及び背側帯部材41はほぼ同様の構成を有している。そこで、以下の説明では腹側帯部材31及び背側帯部材41の両者に共通する内容については、両者を代表して腹側帯部材31についてのみ説明する。背側帯部材41については、腹側帯部材31に対応する部材等の符号を必要に応じて括弧書きで示す等として、具体的な説明は省略する。
 
【0060】
  図4は、展開かつ伸長させた状態の腹側帯部材31(伸縮性シート)を非肌側から見た概略平面図である。なお、
図4では、おむつ1の構成部材としての腹側帯部材31(41)が示されているが、同帯部材31,41は伸縮性シートとしておむつ1以外の用途にも適用できるものである。すなわち、
図4は、本実施形態に係る伸縮性シートの基本的な構成について表す図でもある。
 
【0061】
  図4に示すように、腹側帯部材31(41)に係る第1シート32(42),第2シート33(43)において互いに対向する一対の対向面同士の間には、左右方向に沿って伸縮可能な糸ゴム等の弾性部材35,35…(45,45…)が上下方向に間隔を空けて複数並んで介挿されつつ、同シート32,33(42,43)に前述の溶着部50,50…に基づいて取り付けられている。これにより、腹側帯部材31(41)には左右方向の伸縮性が付与されている。すなわち、溶着部50,50…は、第1シート32(42)及び第2シート33(43)の一対の対向面同士を接合する機能だけでなく、第1シート32(42)及び第2シート33(43)に弾性部材35(45)を取り付ける機能も有している。
 
【0062】
  本実施形態の腹側帯部材31(41)では、複数の溶着部50,50…が上下方向に隣り合って並ぶことにより、上下方向に沿った溶着部列60が形成され、左右方向に間隔を空けて複数の溶着部列60が設けられている。
図4の例では、各々の溶着部列60が、上下方向に沿って真っ直ぐ配置されているが、溶着部列60が左右方向に蛇行していても良い。すなわち、溶着部列60を構成する複数の溶着部50が、各々左右方向にずれて配置されているのであっても良い。また、
図4では視認しにくいが、左右方向に隣り合う2つの溶着部列60,60は、上下方向に所定の大きさだけずれて配置されている。すなわち、左右方向に隣り合う2つの溶着部50,50は、上下方向における位置が互いに異なっている(後述する
図6参照)。
 
【0063】
  図4に示されるように、複数の溶着部50が上下方向、及び左右方向に所定の間隔を空けて設けられていることにより、腹側帯部材31(41)の柔軟性を維持しつつ、おむつ1を着用した際の肌触りが悪化することを抑制することができる。仮に、上下方向若しくは左右方向に長く連なった(連続した)線状の溶着部が形成されていた場合、当該溶着部が形成されている部分において不織布が硬くなり、また、当該溶着部が線状(帯状)に形成されている方向に不織布が変形することが阻害されやすくなる。これに対して、本実施形態では、小さな溶着部が分散して配置されているため、おむつ1の使用者(着用者)に不織布が硬化していることを感じさせにくく、上下方向及び左右方向に対する変形が阻害されにくい柔軟なシート部材を提供することができる。また、詳細については後述するが、左右方向に隣り合う2つの溶着部50,50が上下方向にずれて配置されていることにより、腹側帯部材31(41)に取り付けられた弾性部材35(45)の位置がずれてしまったり、帯部材31(41)から外れたりすることを抑制することができる。
 
【0064】
  腹側帯部材31(41)では、溶着部列60に含まれる複数の溶着部50のうち、上下方向に隣り合う2つの溶着部50,50によって弾性部材35が上下に挟み込まれることにより、該弾性部材35が腹側帯部材31(41)に取り付けられている。すなわち、弾性部材35の上下方向の両側に並ぶ一対の溶着部50,50同士が、溶着部対50sをなし、該溶着部対50sによって弾性部材35が取り付けられている。
図5A及び
図5Bは、弾性部材35の取り付け機能の説明図であり、
図4中のC部の概略拡大図である。
 
【0065】
  図5Aに示すように、溶着部対50sをなす一対の溶着部50,50は、上下方向に間隔GH50を空けて並んでいる。そして、間隔GH50大きさは、目標の伸長倍率まで左右方向に伸長した状態での糸ゴム等の弾性部材35(45)の外径D35t(D45t)と同寸又はそれよりも若干大きい寸法に設定されている(GH50≧D35t)。つまり、伸長状態の弾性部材35は、溶着部対50sの上下方向の間に配置される。このような構成であれば、おむつ1(腹側帯部材31)の製造工程において、第1シート32及び第2シート33の間に伸長した状態の弾性部材35を配置した後、第1シート32と第2シート33とを溶着する際に、弾性部材35と重複させること無く溶着部50を形成することができる。
 
【0066】
  そして、弾性部材35(45)が伸長状態から緩和されると、
図5Bに示すように、弾性部材35(45)は左右方向に収縮しつつ上下方向に拡大し、拡大した後の外径D35t´は溶着部対50sの上下方向の間隔GH50よりも大きくなる(D35t´>GH50)。したがって、溶着部対50sの間では弾性部材35(45)の上下方向の拡大が規制され、これにより、溶着部50,50同士で、弾性部材35(45)は実質的に上下方向に挟圧された状態となる。その結果、弾性部材35(45)が腹側帯部材31(41)に取り付けられる。なお、
図1のパンツ型状態のおむつ1においては、弾性部材35(45)は、上記の伸長状態から緩和された状態である。また、パンツ型状態のおむつ1では、腹側帯部材31の左右方向の両端部31eにおいてサイドシール部SSによって弾性部材35が接合されているため、おむつ1の着用時において腹側帯部材31(弾性部材35)が左右方向に伸長されたとしても、弾性部材35が腹側帯部材31から外れてしまうことは無い。
 
【0067】
  ちなみに、上記の伸長倍率とは、弾性部材35(45)の全長L1を、自然長たる無負荷状態の全長L0の何倍まで伸ばしているかを示す値R(=L1/L0)のことである。
 
【0068】
  図6は、
図4の領域Xを自然状態において拡大して表した図であり、溶着部50の配置について説明する図である。なお、「自然状態」とは、おむつ1や腹側帯部材31(41)を所定時間放置したときの状態である。例えば、おむつ1の腹側帯部材31及び背側帯部材41を左右方向の両外側に引っ張り、帯部材31,41を「伸長した状態」として、この伸長状態を15秒間継続させた後、おむつ1の引っ張りを解除して机等の平面に置く。そして、このような平面平置きで5分間経過させた状態を自然状態とする。
 
【0069】
  図6では、第1溶着部列61と、該第1溶着部列61の左右方向の一方側(
図6では右側)に隣り合って配置された第2溶着部列62と、該第2溶着部列62の左右方向の一方側に隣り合って配置された第3溶着部列63とが示されている。第1溶着部列61は第1溶着部51と、第1溶着部51の上下方向の下側に隣り合う第2溶着部52とを有している。この第1溶着部51と第2溶着部52とによって溶着部対50sが形成され、
図5Bで説明したのと同様に弾性部材35(45)を上下に挟み込んで固定する。同様に、第2溶着部列62は第3溶着部53と、第3溶着部53の上下方向の下側に隣り合う第4溶着部54とを有し、第3溶着部53と第4溶着部54とによって溶着部対50sを形成している。同様に、第3溶着部列63は第5溶着部55と、第5溶着部55の上下方向の下側に隣り合う第6溶着部56とを有し、第5溶着部55と第6溶着部56とによって溶着部対50sを形成している。
 
【0070】
  左右方向において互いに隣り合って配置された第1溶着部51と第3溶着部53とは上下方向において重複する部分を有しつつ、上下方向における位置が異なっている。具体的には、少なくとも第1溶着部51の下端位置(
図6において最下端51b)と、第3溶着部53の下端位置(
図6において最下端53b)とが上下方向において異なるっている。
図6の例では、第1溶着部51と第3溶着部53とは上下方向において重複しており、重複している部分の上下方向の長さがOL50で表されている。また第3溶着部53の最下端53bは、第1溶着部51の最下端51bよりもdh50だけ上下方向の下側にずれて配置されている。第3溶着部53と第5溶着部55との関係も同様である。
 
【0071】
  ところで、腹側帯部材31(弾性部材35)を
図6の状態から再び左右方向に伸長させると、弾性部材35が伸長するのに応じて外径D35tが細くなっていく。そして、D35tが溶着部対50sの上下方向における間隔GH50よりも小さくなると、挟圧された状態が解除され、弾性部材35は溶着部対50sに対して左右方向に相対的に移動可能となり、弾性部材35の位置ずれが生じるおそれがある。しかしながら、本実施形態では、第1溶着部51と第3溶着部53とを上述のような位置関係とすることにより、弾性部材35の横方向における位置ずれを効果的に抑制することができる。
 
【0072】
  図7は、腹側帯部材31を自然状態から左右方向に伸長させたときの、弾性部材35と溶着部対50sとの関係について説明する概略平面図である。上述のように、本実施形態では第3溶着部53の最下端53bの位置が第1溶着部51の最下端51bよりも低くなっている。そのため、第1溶着部51の最下端51bと第2溶着部52の最上端52tとの上下方向の間隔GH50Aよりも、第3溶着部53の最下端53bと第2溶着部52の最上端52tとの上下方向の間隔(GH50A−dh50)の方が狭くなっている。したがって、伸長状態において、仮に弾性部材35の外径D35tが間隔GH50Aよりも細くなったとしても、第3溶着部53の最下端53bと第2溶着部52の最上端52tとの上下方向の間隔(GH50A−dh50)が外径D35tよりも狭ければ、弾性部材35は第3溶着部53と第2溶着部52とによって上下に挟まれることになる。つまり、第3溶着部53の最下端53bと第2溶着部52の最上端52tとによって弾性部材35に摩擦力が作用し、弾性部材35が左右方向に移動することが抑制される。
 
【0073】
  また、第5溶着部55の最下端55bと第2溶着部の最上端52tとの上下方向の間隔(GH50A−dh50×2)は、第3溶着部53の最下端53bと第2溶着部52の最上端52tとの上下方向の間隔(GH50A−dh50)よりもさらに狭いため、当該部分においても弾性部材35の左右方向への移動が抑制される。
 
【0074】
  このように、本実施形態の腹側帯部材31では、左右方向に伸長されることによって弾性部材35の外径D35tが細くなった場合であっても、該弾性部材35の横方向における位置ずれが抑制される。したがって、おむつ1を着用する際に、使用者が腹側帯部材31(おむつ1の胴回り部)の左右両端部を掴んで両外側方向に引っ張る等の動作を行うことで、腹側帯部材31が左右方向に伸長されたとしても、弾性部材35の取り付け位置がずれてしまうことが抑制され、おむつ1着用時において胴回りのフィット感が悪化する等の問題を生じにくくすることができる。
 
【0075】
  なお、おむつ1を着用する際に、腹側帯部材31(弾性部材35)が左右方向の引っ張られる場合の最大長さは、弾性部材35の最大伸長時における長さの70%程度である。すなわち、おむつ1の通常の使用態様において、弾性部材35は、それ以上伸長できない長さまで伸ばしたときの70%程度まで伸長される可能性がある。そこで、本実施形態では、弾性部材35を最大伸長時の70%まで伸ばしたときの外径D35t(70%)が第3溶着部53の最下端53bと第2溶着部52の最上端52tとの上下方向の間隔(GH50A−dh50)よりも大きくなるように、間隔(GH50A−dh50)を設定しているD35t(70%)>(GH50A−dh50))。これにより、おむつ1の通常の使用態様において、弾性部材35の外径D35tは、第3溶着部53の最下端53bと第2溶着部52の最上端52tとの上下方向の間隔(GH50−dh50)よりも太くなっているため、第3溶着部53と第2溶着部52とによって弾性部材35の横ずれをより確実に抑制しやすくすることができる。
 
【0076】
  また、腹側帯部材31(41)では、左右方向に隣り合う2つの溶着部50,50の上下方向におけるずれ量を所定の大きさに制限している。具体的には、上下方向における第1溶着部51の最下端51bと第3溶着部53の最下端53bとのずれ量dh50が、上下方向において第1溶着部51と第3溶着部53とが重複している部分の長さOL50よりも小さくなるように、第1溶着部51及び第3溶着部53が配置されている。2つの溶着部50の上下方向におけるずれ量が大きすぎると、当該ずれに応じて弾性部材35が左右方向に対して斜めに傾いて取り付けられる可能性がある。例えば、
図6において、dh50がOL50よりも大きい場合、弾性部材35は、左右方向の他方側から一方側に向かって、上下方向の下側に傾斜した状態で取り付けられる。この場合、弾性部材35の伸縮力が上下方向にも作用するようになり、腹側帯部材31を左右方向に伸縮させる機能が悪化する。また、腹側帯部材31が上下方向に収縮することにより、おむつ1の胴回り領域におけるフィット性が損なわれたり、余計な皺が発生して肌触りが悪化したりするおそれがある。そのため、本実施形態では、dh50<OL50として、弾性部材35が傾斜して配置されることを抑制している。
 
【0077】
  また、上下方向における第1溶着部51の最下端51bと第3溶着部53の最下端53bとのずれ量dh50は、弾性部材35を100%伸長させたとき(最大伸長時)の外径D35t(100%)よりも小さい。上述のように第1溶着部51と第3溶着部53とが上下方向にずれている場合、弾性部材35を左右方向に沿って配置する際に、該弾性部材35が上下方向へ傾斜することがある。仮に、ずれ量dh50が弾性部材35の外径D35t(100%)よりも大きかったとすると、弾性部材35の上下方向への傾斜が相対的に大きくなり、弾性部材35が湾曲したり蛇行したりするおそれがある。この場合も、腹側帯部材31を左右方向に伸縮させる機能が悪化する。そこで、本実施形態では。dh50<D35t(100%)となるように溶着部50の配置を調整している。
 
【0078】
  また、各々の溶着部50の形状は、
図6に示されるように左右方向における長さW50が上下方向における長さH50よりも長い横長の矩形状である(W50>H50)。本実施形態では、自然状態において、弾性部材35が溶着部50によって上下方向に挟み込まれることによって腹側帯部材31(41)に取り付けられる。したがって、溶着部50の形状を横長にすることにより、弾性部材35と溶着部50との間の左右方向における接触面積(長さ)が大きくなり、その分左右方向の摩擦力も大きくなるため、弾性部材35を固定しやすくすることができる。これにより、弾性部材35の左右方向の位置ずれをより抑制しやすくなる。
 
【0079】
  なお、
図6の例では、溶着部51〜56の形状が全て同一形状であるが、各々の溶着部の形状が異なっていても良い。例えば、第1溶着部51及び第3溶着部53の最上端位置が同じであり、際下端位置のみが異なっている形状、つまり、第1溶着部51の方が第3溶着部53よりも上下方向における長さが長くなっていても良い。
 
【0080】
  また、各々の溶着部50は、
図6のような矩形状ではなく、多角形や楕円形等の他の形状であっても良い。
図8A及び
図8Bは、溶着部50の形状の変形例について説明する図である。
図8Aは、矩形状の溶着部50の4隅が切り欠かれた略8角形状の溶着部50について表している。例えば、第3溶着部53は、左下隅に切り欠き53blを有し、右下隅に切り欠き53brを有し、左上隅に切り欠き53tlを有し、右上隅に切り欠き53trを有している。
 
【0081】
  図7の伸長状態において、第2溶着部52の最上端52tと第3溶着部53の最下端53bとによって弾性部材35が挟まれることを説明したが、第3溶着部53が横長の矩形状である場合、第3溶着部53の矩形の底辺が最下端53bとなる。すなわち、弾性部材35が第3溶着部53の底辺全体と接触することによって生じる摩擦力により、弾性部材35が左右方向にずれてしまうことが抑制される。一方、第3溶着部53が
図8Aのような切り欠きを有している場合、弾性部材35は、第3溶着部53の最下端53bを含む底辺と、切り欠き53blと、切り欠き53brと接触する。この場合、切り欠き53bl,53brの分だけ弾性部材35と第3溶着部53とが接触する長さが長くなり、その分大きな摩擦力が発生し、弾性部材35の位置ずれを抑制しやすくなる。このように、溶着部50の形状を変更することにより、弾性部材35と溶着部50とが接触する部分の長さ(面積)を変化させ、摩擦力の大きさを調整することができる。なお、切り欠き53bl,53brは、
図8Aのような直線的に形成されるのではなく、曲線的に形成されるのであっても良い。
 
【0082】
  図8Bは、溶着部50が横長の楕円形状である場合について表している。
図8Bでは、自然状態において、弾性部材35が第3溶着部53の最下端53bを含む下側の曲線53bcに沿って接触する。同様に、弾性部材35が第2溶着部52の最上端52tを含む上側の曲線52tcに沿って接触する。この場合も、矩形の底辺部分とだけ接触するのと比較して、弾性部材35と第3溶着部53(第2溶着部52)とが接触する長さが長くなる。したがって、より大きな摩擦力が発生し、弾性部材35の位置ずれを抑制しやすくすることができる。なお、ここで言う「楕円」には長円形等の所謂オーバル形状も含まれるものとする。また、溶着部50の形状は
図8A、
図8Bの例に限られるものではなく、他の形状としても良い。
 
【0083】
  上述したように、溶着部50の形状はそれぞれ異なっていても良いが、以下では、説明の便宜上、全ての溶着部50が
図6に示されるような同一形状で形成されているものとする。なお、溶着部50は、おむつ1(腹側帯部材31)の製造工程において、公知の超音波溶着装置やヒートシール装置等を用いて形成される。腹側帯部材31の具体的な製造方法の一例として超音波溶着装置(不図示)を用いる場合、アンビルロールの外周面に巻き付けられた状態で該アンビルロールの回転方向に搬送される第1シート32及び第2シート33(及び弾性部材35)の連続部材に対して、アンビルロールの外周面と対向して配置された超音波ホーンからシート32,33の厚さ方向に超音波振動を投入することによって溶着部50が形成される。アンビルロールの外周面には複数の凸部が突出して形成されており、当該凸部の形状及び配置に応じて溶着部50が形成される。したがって、溶着部50の形状が同一であれば、アンビルロール外周面の凸部形状を全て同一とすることができるため、凸部が摩耗しにくく検査やメンテナンスが容易となり、また製造コストを安く抑えることが可能となる。
 
【0084】
  本実施形態の腹側帯部材31(41)では、100%伸長させたとき(最大伸長時)の弾性部材35の外径D35t(100%)が、第1溶着部51と第2溶着部52との上下方向の間隔GH50Aよりも小さい。同様に、100%伸長させたとき(最大伸長時)の弾性部材35の外径D35t(100%)が、第3溶着部53と第4溶着部54との上下方向の間隔GH50Bよりも小さい。このような構成であれば、上下方向における溶着部対50sの間隔GH50A及びGH50Bの間に、弾性部材35を配置しやすい。言い換えると、上下方向に隣り合う一対の溶着部50,50と重複することなく弾性部材35を配置することができる。上述のように、腹側帯部材31の製造工程では、アンビルロールの凸部(すなわち溶着部50が形成される領域)と重複する部分において超音波振動が投入され溶着が行われるため、仮に、弾性部材35とアンビルロールの凸部(溶着部50)とが重複する場合、弾性部材35が超音波振動を受けて切断されてしまうおそれがある。これに対して、D35t(100%)<GH50A,GH50Bの関係であれば、製造工程において、伸長状態の弾性部材35が、アンビルロール外周面の凸部と凸部との間に配置されやすくなるため、弾性部材35が超音波振動によって切断されてしまうことを抑制しやすくなる。
 
【0085】
  また、100%伸長させたとき(最大伸長時)の弾性部材35の外径D35t(100%)が、第2溶着部52と第3溶着部53との上下方向の間隔(GH50A−dh50)よりも小さいことが望ましい。
図6に示されるように、上下方向における第3溶着部53と第2溶着部52との間隔(GH50A−dh50)は、第1溶着部51と第2溶着部52との間隔GH50Aよりも狭くなっている。そのため、弾性部材35の外径D35t(100%)が、より狭い方の間隔(GH50A−dh50)よりもさらに小さいことにより、弾性部材35が超音波振動によって切断されてしまうリスクをより低減することができる。
 
【0086】
  さらに、100%伸長させたとき(最大伸長時)の弾性部材35の外径D35t(100%)が、第2溶着部52と第5溶着部55との上下方向の間隔(GH50A−dh50×2)よりも小さいことが望ましい。上下方向における第5溶着部55と第2溶着部52との間隔(GH50A−dh50×2)は、第3溶着部53と第2溶着部52との間隔(GH50A−dh50)よりもさらに狭くなっている。そのため、弾性部材35の外径D35t(100%)が、より狭い間隔(GH50A−dh50×2)よりも小さいことにより、弾性部材35が超音波振動によって切断されてしまうリスクをさらに低減することができる。
 
【0087】
  なお、第1溶着部51と第2溶着部52との上下方向の間隔GH50Aと、第3溶着部53と第4溶着部54との上下方向の間隔GH50Bとは等しいことが望ましい。各々の溶着部50の形状が等しく、かつ、上下方向における間隔が等しいことにより、溶着部列61,62において、各々の溶着部50が均等に形成されることとなる。溶着部50が均等に形成されることにより、腹側帯部材31において第1シート32と第2シート33との接合強度が局所的に弱くなってその部分が破れやすくなったり、逆に接合強度が局所的に強くなってその部分の肌触りが悪化したりすることが抑制される。
 
【0088】
  また、左右方向に隣り合う2つの溶着部列60,60の間隔GW60(
図6において、第2溶着部52と第3溶着部53との間の左右方向の距離)は6mm以下であることが望ましい。間隔GW60が大きすぎると、第2溶着部52の最上端52tと第3溶着部53の最下端53bとによって弾性部材35を上下に挟み込む力が弱くなり、十分な摩擦力が発生せず、弾性部材35の位置ずれを生じさせるおそれがある。これに対して、少なくとも間隔GW60が6mm以下であれば、自然状態において第2溶着部52及び第3溶着部53と弾性部材35との間に有効な摩擦力を発生させることが可能であり、弾性部材35の左右方向における位置ずれを抑制しやすくなる。
 
【0089】
  以上に説明したように、おむつ1等の吸収性物品の胴回り部材として、上述のような特性を有する腹側帯部材31(41)を用いることにより、良好なフィット性を実現することができる。すなわち、弾性部材35(45)による伸縮力が腹側帯部材31(41)の全体に亘って均等に作用し、おむつ1の着用時等に腹側帯部材31(41)を伸長させた場合であっても弾性部材35(45)の位置ずれが生じにくいため、該弾性部材35(45)による伸縮力が局所的に集中したり作用しにくくなったりすることが抑制される。したがって着用者の胴回り部における良好なフィット性を維持しやすくなる。
 
【0090】
  なお、腹側帯部材31における弾性部材35の上下方向のピッチと、背側帯部材41における弾性部材45の上下方向のピッチとが異なっていることが望ましい。弾性部材35,45の上下方向におけるピッチを異ならせることにより、腹側帯部材31及び背側帯部材41で単位面積あたりに作用する弾性部材の収縮力に差が生じ、おむつ1の腹側と背側とで収縮時に形成される皺の大きさや形状を異ならせることができる。表面に形成される皺の大きさや形状が異なることにより、腹側帯部材31と背側帯部材41とが厚さ方向に密着しにくくなり、おむつ1の取り扱いが容易になる。例えば、おむつ1が製造工場から出荷される際には、腹側帯部材31と背側帯部材41とが厚さ方向に重ね合わされた状態で圧縮され、包装される。使用者(購入者)がおむつ1を使用する際には、腹側帯部材31と背側帯部材41とを前後に開いて胴回り開口を形成する必要があるが(
図1参照)、このとき腹側帯部材31と背側帯部材41とが互いに密着していないため簡単に胴回り開口を開くことができる。
 
【0091】
  さらに、背側帯部材41における弾性部材45の上下方向のピッチが、腹側帯部材31における弾性部材35の上下方向のピッチよりも広いことが望ましい。上下方向における弾性部材間のピッチが広いほど、弾性部材35,45の収縮時に帯部材31,41に形成される皺が大きくなりやすく、この場合、背側帯部材41において大きな皺が形成されやすくなる。したがって、身体の動きが大きい臀部領域において背側帯部材41に大きな皺が形成されることにより、背側帯部材41が身体(臀部)の動きに追従して伸びやすくなり、フィット性が悪化することを抑制しやすくなる。
 
【0092】
  ===その他の実施の形態===
  以上、本発明の実施形態について説明したが、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。また、本発明は、その趣旨を逸脱すること無く、変更や改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれるのは言うまでも無い。例えば、以下に示すような変形が可能である。
 
【0093】
  上述の実施形態においては、サイドシール部SSは必ずしも矩形形状である必要は無い。矩形形状に限らず、楕円形状、円形状、平行四辺形状等、任意の形状を採用することができる。また、サイドシール部SSは、必ずしも複数のサイド溶着部SSを上下方向に間欠に配置しなくても良い。例えば、おむつ1の左右方向の端部の上端から下端まで設けられたサイドシール部SSを両側部に1つずつ設けるものであっても良い。
 
 
【解決手段】複数の溶着部(50)によって接合された第1シート(32)と第2シート(33)との間に、弾性部材(35)が複数配置された伸縮性シート(31)であって、
或る弾性部材(35)の上側に、第1溶着部(51)と第3溶着部(53)とを有し、或る弾性部材(35)の下側に、第2溶着部(52)と第4溶着部(54)とを有し、前記或る弾性部材は、第1溶着部(51)と第2溶着部(52)とによって上下方向に挟み込まれると共に、第3溶着部(53)と第4溶着部(54)とによって上下方向に挟み込まれることによって取り付けられており、第1溶着部(51)と第3溶着部(53)とは、上下方向において重複する部分を有し、第1溶着部(51)の下端位置と第3溶着部(53)の下端位置とは、上下方向においてずれている。