【文献】
Database GenBank,2009年 8月 5日,GQ337868,[平成27年1月9日検索],URL,http://www.ncbi.nlm.nih.gov/nuccore/GQ337868
【文献】
Database GenBank,2011年 4月10日,HQ721275,[平成27年1月9日検索],URL,http://www.ncbi.nlm.nih.gov/nuccore/HQ721275
【文献】
西田智,自然免疫を活性化する乳酸菌による感染症予防,第62回日本感染症学会東日本地方会学術集会、第60回日本化学療法学会東日本支部総会 合同学会プログラム・抄録集,2013年10月 7日,p.76, S8-4
【文献】
THE JOURNAL OF BIOLOGICAL CHEMISTRY,2008年,vol.283 no.4,pp.2185-2191
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
独立行政法人製品評価技術基盤機構(NITE)の特許微生物寄託センター(NPMD)における受託番号がNITE BP−01694であるラクトコッカス(Lactococcus)属に属する乳酸菌。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明について説明するが、本発明は、以下の具体的態様に限定されるものではなく、技術的思想の範囲内で任意に変形することができる。
【0023】
<態様1>
本発明の態様1は、独立行政法人製品評価技術基盤機構(NITE)の特許微生物寄託センター(NPMD)における受
託番号がNITE
BP−01694であるラクトコッカス(Lactococcus)属に属する乳酸菌である。
【0024】
以下、この新規乳酸菌株(11/19−B1株)について詳述する。
形態:本11/19−B1株は、グラム陽性の桿菌であり、鞭毛は認められず、運動性がない。本株は、果実を分離源として分離された。
【0025】
培地における生育状況:
(1)GAM及びMRS寒天培地上では白色のコロニーを形成する。拡散性の色素は認められない。
(2)炭酸カルシウム入りMRS寒天培地上では乳酸の生成に伴う透明帯の形成が認められる。
【0026】
生理学的性質:本11/19−B1株の生理学的、化学分類学的性質は以下の通りである。
(1)酸素に対する態度:嫌気的
(2)カタラーゼ:−
(3)アルカリフォスファターゼ:−
(4)エステラーゼ:−
(5)エステラーゼリパーゼ:−
(6)リパーゼ:−
(7)ロイシンアリルアミダーゼ:−
(8)バリンアリルアミダーゼ:−
(9)シスチンアリルアミダーゼ:−
(10)トリプシン:−
(11)α−キモトリプシン:−
(12)酸性フォスファターゼ:+
(13)ナフトール−AS−BI−フォスフォヒトロラーゼ:+
(14)α−ガラクトシダーゼ:−
(15)β−ガラクトシダーゼ:−
(16)β−グルクロニダーゼ:−
(17)α−グルコシダーゼ:−
(18)β−グルコシダーゼ:−
(19)N−アセチル−β−グルコサミニダーゼ:−
(20)α−マンノシダーゼ:−
(21)α−フコシダーゼ:−
【0027】
(22)下記の糖類等からの酸及びガスの生成能
グリセロール(Glycerol):−
エリトリトール(Erythritol):−
D−アラビノース(D−Arabinose):−
L−アラビノース(L−Arabinose):+
D−リボース(D−Ribose):+
D−キシロース(D−Xylose):+
L−キシロース(L−Xylose):−
D−アドニトール(D−Adonitol):−
メチル−β−D−キシロピラノサイド(methyl−β−D−xylopyranoside):−
D−ガラクトース(D−Galactose):±
D−グルコース(D−Glucose):+
D−フルクトース(D−Fructose):+
D−マンノース(D−Mannose):+
L−ソルボース(D−Sorbose):−
L−ラムノース(L−Rhamnose):−
ズルシトール(Dulcitol):−
イノシトール(Inositol):−
D−マンニトール(D−Mannitol):+
D−ソルビトール(D−Sorbitol):−
メチル−α−D−マンノピラノサイド(methyl−α−D−mannopyranoside):−
メチル−α−D−グルコピラノサイド(methyl−α−D−glucopyranoside):−
N−アセチルグルコサミン(N−Acetyl glucosamine):+
アミグダリン(Amygdalin):±
アルブチン(Arbutin):+
エスクリン(Esculin):+
サリシン(Salicin):+
D−セロビオース(D−Cellobiose):−
D−マルトース(D−Maltose):+
D−ラクトース(D−Lactose):+
D−メリビオース(D−Melibiose):−
D−スクロース(D−Sucrose):+
D−トレハロース(D−Trehalose):+
インスリン(Insulin):−
D−メレジトース(D−Melezitose):−
D−ラフィノース(D−Raffinose):−
スターチ(Starch):−
グリコーゲン(Glycogen):−
キシリトール(Xylitol):−
ゲンチオビオース(Gentiobiose):+
D−ツラノース(D−Turanose):−
D−リキソース(D−Lyxose):−
D−タガトース(D−Tagatose):−
D−フコース(D−Fucose):−
L−フコース(L−Fucose):−
D−アラビトール(D−Arabitol):−
L−アラビトール(L−Arabitol):−
グルコネート(Gluconate):±
2−ケト−グルコネート(2−Keto−gluconate):−
5−ケト−グルコネート(5−Keto−gluconate):−
【0028】
分子生物学的解析結果:分子生物学的な系統分類の指標として用いられている16S rRNAに関する11/19−B1株の解析結果は以下の通りである。
11/19−B1株のゲノムDNAから、PCRにより、16S rRNA領域の塩基配列を増幅し、シーケンサーによる解析を行った結果、5’末端側、3’末端側のいくつかの塩基を除く16S rRNAのほぼ全長に当たる塩基配列が見出された。この塩基配列を配列表の配列番号1に示す。配列表の配列番号1の塩基配列は、16S rRNAの全長ではないため、16S rRNA「領域」とした。
この塩基配列をNCBIのBLASTで相同性検索を行ったところ、11/19−B1株の16S rRNA領域の塩基配列は、ラクトコッカス属であるLactococcus lactis subsp.lactis IL1403、Lactococcus lactis subsp.hordniae NCDO 2181、Lactococcus lactis subsp.lactis NCDO 604株の塩基配列(NR_103918,NR_040956,NR_040955)と相同率99%を示した。しかしながら、完全には一致していないので、11/19−B1株とは異なるものである。
【0029】
以上の11/19−B1株の性質を、バージース・マニュアル・オブ・システマティックバクテリオロジー(Bergey’s Manual of Systematic Bacteriology,vol.3 1989)による分類及びその他の文献の記載内容に照らし合わせ、更に、16S rRNA解析の結果を考慮して総合的に判断した結果、11/19−B1株は、ラクトコッカス(Lactococcus)属に属する微生物であると判断した。
【0030】
また、11/19−B1株の16S rRNA領域の塩基配列に一致する16S rRNA領域の塩基配列を有する微生物が存在しないこと、ラクトコッカス・ラクティスに属する既知の株と比べて、高い自然免疫活性化能を示すこと等を含め総合的に判断した結果、11/19−B1株は、新規な微生物株であると判断した。
【0031】
11/19−B1株は、千葉県木更津市かずさ鎌足2−5−8、独立行政法人製品評価技術基盤機構(Natural Institute of Technology and Evaluation、以下、「NITE」と略記する)の特許微生物寄託センター(NPMD)に国内寄託され、受託番号:NITE P−01694(寄託日:2013年8月20日)として受託された微生物である。
「11/19−B1」は、その後、千葉県木更津市かずさ鎌足2−5−8、独立行政法人製品評価技術基盤機構(NITE)の特許微生物寄託センター(NPMD)に、原寄託申請書を提出して、国内寄託(原寄託日:2013年8月20日)から、ブ
ダペスト条約に基づく寄託への移管申請を行
い(移管日(国際寄託日):2014年10月15日)、生存が証明され、ブダペスト条約に基づく寄託(国際寄託)への移管申請が受領された結果、受託番号「NITE BP−01694」を受けているものである。
【0032】
バクテリアの一般的な性状として、その菌株としての性質は変異し易いため、11/19−B1株は、先に示した生理学的性状の範囲内に留まらない可能性も有している。また、かかる「変異」には、自然的な変異と人工的な変異の両方を含むことは言うまでもない。
【0033】
以下に、11/19−B1株の培養方法について記載する。11/19−B1株の培養方法は、ラクトコッカス属の微生物に対して行われる一般的な培養方法に準じて行えばよい。
培養は嫌気条件下で行うことが好ましい。培地中の炭素源としては、例えば、L−アラビノース、D−リボース、D−キシロース、D−ガラクトース、D−マンノース、D−マンニトール、N−アセチルグルコサミン、アミグダリン、アルブチン、エスクリン、サリシン、D−セロビオース、D−マルトース、D−ラクトース、D−トレハロース、ゲンチオビオース、グルコネート、D−グルコース、D−フラクトース、シュクロース、糖蜜、水飴、油脂類等の有機炭素化合物が用いられ、窒素源としては、肉エキス、カゼイン、ペプトン、酵母エキス、乾燥酵母、胚芽、大豆粉、尿素、アミノ酸、アンモニウム塩等の有機・無機窒素化合物を用いることができる。
また、塩類は、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、リン酸塩、鉄塩、銅塩、亜鉛塩、コバルト塩等の無機塩類を必要に応じて適宜添加する。更に、ビオチン、ビタミンB1、シスチン、オレイン酸メチル、ラード油等の生育促進物質を添加することが、目的物の産生量を増加させる点で好ましい。
また、シリコン油、界面活性剤等の消泡剤を添加してもよい。調製済みの培地としては、例えば、MRS培地、GAM培地等を用いることが好ましい。
【0034】
培養条件は、先に記したようにラクトコッカス属の微生物に対して行われる一般的な培養条件に準じて行えばよい。液体培養法であれば静置培養が望ましい。小規模であれば蓋付きガラス瓶による静置培養法を用いてもよい。培養温度は、25℃〜37℃間に保つことが好ましく、37℃近辺で行うことがより好ましい。培養pHは、7付近で行うことが好ましい。培養期間は、用いた培地組成、培養温度等により変動するファクターであるが、11/19−B1株の場合、通常は12〜48時間程度、好ましくは12〜24時間程度の短期間に充分な量の目的物を確保することができる。
【0035】
<態様2>
本発明の態様2は、態様1の乳酸菌、該乳酸菌の死菌、又は、該乳酸菌の処理物を有効成分とする自然免疫活性化剤であって、
上記乳酸菌の処理物は、乳酸菌の培養物、濃縮物、ペースト化物、噴霧乾燥物、凍結乾燥物、真空乾燥物、ドラム乾燥物等の乾燥物、液状化物、希釈物、破砕物、殺菌加工物及び該培養物からの抽出物よりなる群から選ばれる少なくとも1つの処理物であることを特徴とする自然免疫活性化剤である。
すなわち、本発明の態様2は、態様1の乳酸菌、該乳酸菌の死菌、又は、該乳酸菌の処理物を有効成分とする自然免疫活性化剤である。
【0036】
本発明の自然免疫活性化剤は、態様1の乳酸菌を種々の状態で含むことができ、例えば、乳酸菌懸濁液、乳酸菌培養物(菌体、培養上清液(培地成分を含む))が挙げられる。
【0037】
本発明の自然免疫活性化剤は、態様1の乳酸菌をそのまま含んでもよく、又は、態様1の乳酸菌に何らかの処理を施した乳酸菌処理物として含んでもよい。
本発明の自然免疫活性化剤に用いられる乳酸菌の処理物としては、具体的には、例えば、乳酸菌の培養物;濃縮物;ペースト化物;噴霧乾燥物、凍結乾燥物、真空乾燥物、ドラム乾燥物等の乾燥物;液状化物;希釈物;破砕物;殺菌加工物;該培養物からの抽出物;等が挙げられる。
【0038】
乳酸菌としては、生菌体、湿潤菌、乾燥菌等が適宜使用可能である。
また、殺菌、すなわち、加熱殺菌処理、放射線殺菌処理、破砕処理等を施した死菌であってもよい。
【0039】
本発明の自然免疫活性化剤中の有効成分である、乳酸菌、該乳酸菌の死菌、該乳酸菌の処理物の、自然免疫活性化剤全体に対する含有量は、特に制限がなく、目的に応じて適宜選択することができるが、自然免疫活性化剤全体を100質量部としたときに、乳酸菌、該乳酸菌の死菌、該乳酸菌の処理物の合計量として、0.001〜100質量部の含量で配合することが好ましく、より好ましくは0.01〜99質量部、特に好ましくは0.1〜95質量部、更に好ましくは1〜90質量部の含量で配合することができる。
【0040】
また、前記有効成分は、何れか1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。2種以上を併用する場合の、前記自然免疫活性化剤中の各々の有効成分の含有比についても、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0041】
本発明の自然免疫活性化剤は、粉ミルク等、生物学的規格を有する医薬品及び/又は飲食品においても添加することも可能であり、医薬品及び/又は飲食品の形態等によらず様々な医薬品及び/又は飲食品に応用できる。
【0042】
また、本発明の自然免疫活性化剤は、有効成分である、乳酸菌、該乳酸菌の死菌、該乳酸菌の処理物に加えて、「その他の成分」を含有することができる。
【0043】
前記自然免疫活性化剤における、上記「その他の成分」としては、特に制限はなく、本発明の効果を損なわない範囲内で、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、薬学的に許容され得る担体等が挙げられる。
かかる担体としては、特に制限はなく、例えば、後述する剤型等に応じて適宜選択することができる。また、前記自然免疫活性化剤中の前記「その他の成分」の含有量としても、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0044】
本発明の自然免疫活性化剤の剤型としては、特に制限はなく、例えば、後述するような所望の投与方法に応じて適宜選択することができる。
具体的には、例えば、経口固形剤(錠剤、被覆錠剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤等)、経口液剤(内服液剤、シロップ剤、エリキシル剤等)、注射剤(溶剤、懸濁剤等)、軟膏剤、貼付剤、ゲル剤、クリーム剤、外用散剤、スプレー剤、吸入散布剤等が挙げられる。
【0045】
前記経口固形剤としては、例えば、前記有効成分に、賦形剤、更には必要に応じて結合剤、崩壊剤、滑沢剤、着色剤、矯味・矯臭剤等の添加剤を加え、常法により製造することができる。
前記賦形剤としては、例えば、乳糖、白糖、塩化ナトリウム、ブドウ糖、デンプン、炭酸カルシウム、カオリン、微結晶セルロース、珪酸等が挙げられる。
前記結合剤としては、例えば、水、エタノール、プロパノール、単シロップ、ブドウ糖液、デンプン液、ゼラチン液、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルスターチ、メチルセルロース、エチルセルロース、シェラック、リン酸カルシウム、ポリビニルピロリドン等が挙げられる。
前記崩壊剤としては、例えば、乾燥デンプン、アルギン酸ナトリウム、カンテン末、炭酸水素ナトリウム、炭酸カルシウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸モノグリセリド、乳糖等が挙げられる。
前記滑沢剤としては、例えば、精製タルク、ステアリン酸塩、ホウ砂、ポリエチレングリコール等が挙げられる。
前記着色剤としては、例えば、酸化チタン、酸化鉄等が挙げられる。
前記矯味・矯臭剤としては、例えば、白糖、橙皮、クエン酸、酒石酸等が挙げられる。
【0046】
前記経口液剤としては、例えば、前記有効成分に、矯味・矯臭剤、緩衝剤、安定化剤等の添加剤を加え、常法により製造することができる。
前記矯味・矯臭剤としては、例えば、白糖、橙皮、クエン酸、酒石酸等が挙げられる。前記緩衝剤としては、例えば、クエン酸ナトリウム等が挙げられる。前記安定化剤としては、例えば、トラガント、アラビアゴム、ゼラチン等が挙げられる。
【0047】
前記注射剤としては、例えば、前記有効成分に、pH調節剤、緩衝剤、安定化剤、等張化剤、局所麻酔剤等を添加し、常法により皮下用、筋肉内用、静脈内用等の注射剤を製造することができる。
前記pH調節剤及び前記緩衝剤としては、例えば、クエン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、リン酸ナトリウム等が挙げられる。前記安定化剤としては、例えば、ピロ亜硫酸ナトリウム、EDTA、チオグリコール酸、チオ乳酸等が挙げられる。前記等張化剤としては、例えば、塩化ナトリウム、ブドウ糖等が挙げられる。前記局所麻酔剤としては、例えば、塩酸プロカイン、塩酸リドカイン等が挙げられる。
【0048】
前記軟膏剤としては、例えば、前記有効成分に、公知の基剤、安定剤、湿潤剤、保存剤等を配合し、常法により混合し、製造することができる。
前記基剤としては、例えば、流動パラフィン、白色ワセリン、サラシミツロウ、オクチルドデシルアルコール、パラフィン等が挙げられる。前記保存剤としては、例えば、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル等が挙げられる。
【0049】
前記貼付剤としては、例えば、公知の支持体に前記軟膏剤としてのクリーム剤、ゲル剤、ペースト剤等を、常法により塗布し、製造することができる。前記支持体としては、例えば、綿、スフ、化学繊維からなる織布、不織布、軟質塩化ビニル、ポリエチレン、ポリウレタン等のフィルム、発泡体シート等が挙げられる。
【0050】
本発明の自然免疫活性化剤は、例えば、自然免疫機構の活性化を必要とする個体(例えば、健康維持や疲労回復を必要とする個体;癌や生活習慣病の予防や治療を必要とする個体;細菌、真菌、ウイルス等に感染した個体;等)に投与することにより使用することができる。
【0051】
本発明の自然免疫活性化剤の投与対象動物としては、特に制限はないが、例えば、ヒト;マウス;ラット;サル;ウマ;ウシ、ブタ、ヤギ、ニワトリ等の家畜;ネコ、イヌ等のペット;等が挙げられる。
【0052】
また、前記自然免疫活性化剤の投与方法としては、特に制限はなく、例えば、前記自然免疫活性化剤の剤型等に応じ、適宜選択することができ、経口投与、腹腔内投与、血液中への注射、腸内への注入等が挙げられる。
また、前記自然免疫活性化剤の投与量としては、特に制限はなく、投与対象である個体の年齢、体重、所望の効果の程度等に応じて適宜選択することができるが、例えば、成人への1日の投与量は、有効成分の量として、1mg〜30gが好ましく、10mg〜10gがより好ましく、100mg〜3gが特に好ましい。
また、前記自然免疫活性化剤の投与時期としても、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、予防的に投与されてもよいし、治療的に投与されてもよい。
【0053】
<態様3>
本発明の態様3は、上記本発明の乳酸菌又は上記本発明の自然免疫活性化剤を含有する飲食品である。
【0054】
上記乳酸菌又は上記自然免疫活性化剤を含有する飲食品(以下、「本発明の飲食品」と略記する場合がある)中の、乳酸菌又は自然免疫活性化剤の含有量は、特に制限がなく、目的や飲食品の態様(種類)に応じて、適宜選択することができるが、飲食品全体を100質量部としたときに、上記自然免疫活性化剤の合計量で、0.001〜100質量部で含有することが好ましく、より好ましくは0.01〜100質量部、特に好ましくは0.1〜100質量部の含量である。
【0055】
また、乳酸菌又は自然免疫活性化剤の何れか1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。2種以上を併用する場合の、前記飲食品中の各々の物質の含有量比には、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0056】
本発明の態様3の飲食品は、自然免疫活性化作用を有する。
本発明の飲食品は、本発明の態様2の自然免疫活性化剤に加えて、更に、「その他の成分」を含有することができる。
【0057】
かかる自然免疫活性化作用を有する本発明の飲食品における、前記「その他の成分」としては、特に制限はなく、本発明の効果を損なわない範囲内で目的に応じて適宜選択することができ、例えば、各種食品原料等が挙げられる。また、「その他の成分」の含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0058】
前記飲食品の種類としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ゼリー、キャンディー、チョコレート、ビスケット等の菓子類;緑茶、紅茶、コーヒー、清涼飲料等の嗜好飲料;発酵乳、ヨーグルト、アイスクリーム等の乳製品;野菜飲料、果実飲料、ジャム類等の野菜・果実加工品;スープ等の液体食品;パン類、麺類等の穀物加工品;各種調味料;等が挙げられる。中でも、ヨーグルト、発酵乳等の乳製品が好ましい。
これらの飲食品の製造方法としては、特に制限はなく、例えば、通常の各種飲食品の製造方法に応じて、適宜製造することができる。
【0059】
また、前記飲食品は、例えば、錠剤、顆粒剤、カプセル剤等の経口固形剤や、内服液剤、シロップ剤等の経口液剤として製造されたものであってもよい。前記経口固形剤、経口液剤の製造方法は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記した薬剤の経口固形剤、経口液剤の製造方法にならい、製造することができる。
【0060】
前記飲食品は、自然免疫機構の活性化を目的とした、機能性食品、健康食品等として、特に有用であると考えられる。
【0061】
上記11/19−B1株は、キウイフルーツから人為的に分離された、新規の乳酸菌である。キウイフルーツ以外には、自然界において、11/19−B1株は単離された形では存在しない。従って、人為的に分離された11/19−B1株は自然界に存在する物質そのものでない。従って、該11/19−B1株を含有する自然免疫活性化剤も、該11/19−B1株を含有する飲食品も、何れも自然産物には該当しない。
況や、自然界では、上記11/19−B1株と乳とが接触することはなく、上記菌株が飲食品として存在することもないので、本発明の発酵乳と飲食品は自然界に存在していたことはなく、従ってこれらは何れも自然産物には該当しない。
【0062】
本発明の乳酸菌又は自然免疫活性化剤を飲食品の製造に使用する場合、製造方法は当業者に周知の方法によって行うことができる。当業者であれば、本発明の乳酸菌の菌体又は処理物を他の成分と混合する工程、成形工程、殺菌工程、発酵工程、焼成工程、乾燥工程、冷却工程、造粒工程、包装工程等を適宜組み合わせ、目的の飲食品を作ることが可能である。
【0063】
また、本発明の乳酸菌を各種発酵乳の製造に使用する場合、当業者に周知の方法を用いて製造することができる。例えば、本発明の乳酸菌を発酵乳に死菌として所要量添加する工程を用いて製造された飲食品や、乳酸菌スターターとして本発明の乳酸菌を用いて発酵する工程を用いて製造された飲食品が挙げられる。
乳酸菌スターターとして本発明の乳酸菌を用いて発酵を行う場合、本発明の乳酸菌の培養条件と同様の条件等で行うことができる。
【0064】
<態様4>
本発明の態様4は、上記本発明の乳酸菌を含有する発酵乳であり、該発酵乳は、メチシリン感受性黄色ブドウ球菌、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌、緑膿菌、及び、エンテロコッカス・ムンディディからなる群から選ばれる少なくとも1つの菌に対して抵抗性を有することを特徴とする発酵乳である。
【0065】
発酵乳とは、牛等の乳を、乳酸菌や酵母で発酵させた乳製品であり、例えば、ヨーグルト、等が挙げられる。
【0066】
上記本発明の乳酸菌を含有する発酵乳が、メチシリン感受性黄色ブドウ球菌(Methicillin−sensitive Staphylococcus aureus(MSSA))、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(Methicillin−resistant Staphylococcus aureus(MRSA))、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、及び、エンテロコッカス・ムンディディ(Enterococcus mundtii)の何れの菌についても抵抗性を有することは、実施例4〜6の結果に示されている。
【0067】
上記発酵乳の接種対象者は、健常者も種々の感染症に対する抵抗力を高めるという意味でもちろん摂取対象者であり、各種の感染症を有する者も自然免疫機能の低下に伴う疾患者に限定することなく、全身の自然免疫機能の活性化を目的としてほとんどの疾患を有する者に使用することができる。更に動物に対しても、飼料や動物用薬品等種々の形態で適用することができる。
上記発酵乳は、メチシリン感受性黄色ブドウ球菌、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌、緑膿菌、及び、エンテロコッカス・ムンディディによる感染の予防又は治療に用いられることが好ましく、特に緑膿菌感染の予防又は治療に用いられることが好ましい。
【実施例】
【0068】
以下、実施例及び検討例に基づき本発明を更に詳細に説明するが、本発明は以下の実施例等の具体的範囲に限定されるものではない。
【0069】
実施例において使用する「11/19−B1株」は、上述の如く、キウイフルーツから分離されたものである。ラクトコッカス・ラクティス(Lactococcus lactis)に属する乳酸菌11/19−B1株として、独立行政法人製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センター(NPMD)(千葉県木更津市かずさ鎌足2−5−8)に寄託されている(受託番号:NITE P−01694、寄託日:2013年8月20日)。
「11/19−B1」は、その後、千葉県木更津市かずさ鎌足2−5−8、独立行政法人製品評価技術基盤機構(NITE)の特許微生物寄託センター(NPMD)に、原寄託申請書を提出して、国内寄託(原寄託日:2013年8月20日)から、ブ
ダペスト条約に基づく寄託への移管申請を行
い(移管日(国際寄託日):2014年10月15日)、生存が証明され、ブダペスト条約に基づく寄託(国際寄託)への移管申請が受領された結果、受託番号「NITE BP−01694」を受けているものである。
【0070】
実施例1
<自然免疫活性化活性の測定>
GAM培地で一晩培養した11/19−B1株を、121℃、20分で滅菌処理後、50μLを5齢カイコの断頭筋肉標本に注射し、緩行性筋収縮により自然免疫活性化活性を測定した。
緩行性筋収縮による自然免疫活性化活性の測定は、Ishii K.,Hamamoto H., Kamimura M., Sekimizu K., J.Biol.Chem. Jan.25;283(4):2185-91(2008)に記載の方法に従って行った。
すなわち、5齢カイコの断頭筋肉標本に、上記試料0.05mLを血液内投与し、C値が最大となったとき(約10分後)に体長を測定して、注射前の体長から注射後の体長を引き算し、その値を注射前の体長で割り算した値であるC値(Contraction Value)を測定した。
【0071】
比較例1
GAM培地で一晩培養した培養したラクトバチルス・ブルガリクス OLL1073株を、121℃、20分で滅菌処理後、50μLを断頭カイコに注射し、筋収縮により自然免疫活性化活性を測定した。
【0072】
比較例2
GAM培地で一晩培養した培養したラクトバチルス・カゼイ YIT9029株を、121℃、20分で滅菌処理後、50μLを断頭カイコに注射し、筋収縮により自然免疫活性化活性を測定した。
【0073】
比較例3
GAM培地で一晩培養した培養したラクトコッカス・ラクティス JCM5805株を、121℃、20分で滅菌処理後、50μLを断頭カイコに注射し、筋収縮により自然免疫活性化活性を測定した。
【0074】
実施例1及び比較例1〜3の結果を表1に示す。C値=0.15を、1(U)ユニットと定義する。
【0075】
【表1】
【0076】
比較例1〜3の乳酸菌は、実際に市販の発酵乳の製造に用いられている乳酸菌である。
表1に示されるように、実施例1の乳酸菌は、比較例1〜3に比べてより高い自然免疫活性化能を有することが分かった。
11/19−B1株、及び、その死菌は、自然免疫活性化能が高いことから、11/19−B1株は、自然免疫を活性化させる「発酵乳等の飲食品」の生産菌として有望であることが示唆された。
【0077】
検討例1
<16S rRNA解析>
11/19−B1株の16S rDNAの塩基をゲノムDNAからPCR法によって増幅し、増幅できたDNA断片についてシーケンサーによって解析し、5’末端側、3’末端側のいくつかの塩基を除く配列番号1に示すほぼ16S rRNA領域全長に相当する塩基配列を決定した。
この塩基配列を元に、NCBIのBLASTを用いて既存の菌株との相同性検索を行った。その結果、11/19−B1株は、既存のLactococcus lactis IL1403株と99%の相同性を示したことから、ラクトコッカス(Lactococcus)属に属する微生物であると考えられた。
【0078】
<11/19−B1株の新規性について>
11/19−B1株は、糖の発酵能と化学的性質について既存のLactococcus lactisに相似する点が多く、細菌944株のapi web v5.1 database(シスメックス・ビオメリュー)による解析では、Lactococcus lactis ssp lactis 1と77.2%の同一性を示し、Lactobacillus brevis 1と21.9%の同一性を示した点で全く異なっている。この点は、既存の菌株との大きな相違点である。尚、Lactobacillus brevisである可能性は11/19−B1株のグラム染色像がグラム陽性球菌であることから排除される。よって、以上の結果から、11/19−B1株は、ラクトコッカス(Lactococcus)属に属する新規な微生物であると判定した。
【0079】
実施例2
<自然免疫活性化剤の製造>
<<錠剤>>
培養した11/19−B1株を、121℃、20分で滅菌処理後、濃縮した。該濃縮させた11/19−B1株の培養液20.0mg、ラクトース40mg、デンプン20mg、及び、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース5mgを均一に混合した後、ヒドロキシプロピルメチルセルロース8質量%水溶液を結合剤として湿式造粒法で打錠用顆粒を製造した。これに、滑沢性を与えるのに必要なステアリン酸マグネシウムを0.5mg〜1mg加えてから打錠機を用いて打錠し、錠剤とした。
【0080】
<<液剤>>
上記濃縮させた11/19−B1株の培養液10.0mgを、2質量%の2−ヒドロキシプロピル−β−サイクロデキストリン水溶液10mLに溶解し、注射用液剤とした。
【0081】
実施例3
<発酵乳の製造>
牛乳を95℃で5分間殺菌した後、40℃に冷却し、11/19−B1株を0.001質量部加えた。そして、37℃、72時間で発酵して、発酵乳を得た。該発酵乳を10℃以下で冷却してから、風味と物性を確認した。
その結果、風味と物性は何れも極めて良好であった。
【0082】
実施例4
<11/19−B1ヨーグルトのプロバイオティクス効果>
生体外の実験では、11/19−B1株の培養液、培養上清、及び、11/19−B1株を用いて製造されたヨーグルトには抗菌活性が見られなかった(図示せず)。
11/19−B1株を用いて製造されたヨーグルトのプロバイオティクス効果(生菌を利用して腸内バランスを改善し、抵抗力や免疫力を高める効果)を検証した。
【0083】
<<カイコ菌感染モデルの作製>>
LB培地で一晩培養した緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa PAO1)又はメチシリン感受性黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus MSSA1)の培養液を、滅菌した0.9質量%NaCl溶液で希釈し、5齢2日目のカイコ幼虫(平均体重2g)に50μLずつ血液内注射した。
【0084】
<<ヨーグルトの作製>>
乳酸菌(11/19−B1株)末50mgを生理食塩水(滅菌済み0.9質量%NaCl溶液)1mLに懸濁し、懸濁液50μLを、0.267質量%グルコース及び0.025質量%カザミノ酸を含む牛乳200mL中に混ぜ、滅菌したガラス瓶中で、37℃、3日間保温した。以下、作製したヨーグルトを、「11/19−B1ヨーグルト」と略記する。
【0085】
<<検証方法>>
11/19−B1ヨーグルトを含有する餌、又は、対照として通常の餌をカイコに一晩与えた後、カイコに菌を感染させた。通常の餌として、人工飼料シルクメイト2S(日本農産工業)を用いた。ここで、「11/19−B1ヨーグルトを含有する餌」とは、通常の餌に、11/19−B1ヨーグルトを混合させた餌である。
1群当たりのカイコの総数は7匹とし、緑膿菌又はメチシリン感受性黄色ブドウ球菌の接種2日後に生死を判定し、生存曲線からLD
50(50%半数致死量)を算出した。ネガティブコントロールには0.9質量%NaCl溶液を用いた。結果を
図1に示す。
図1中、縦軸は生存率(Survival%)、横軸は感染2日後の生存率における菌の用量依存性を表す(OD
600)。
【0086】
また、同様の手法を用い、グラム陽性細菌である、メチシリン感受性黄色ブドウ球菌(S.aureus MSSA1)、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(S.aureus MRSA4)、又は、エンテロコッカス・ムンディディ(Enterococcus mundtii 12/5−1)をカイコに感染させ、プロバイオティクス効果を検証した。結果を
図2に示す。
【0087】
図1及び
図2の結果より、カイコに感染させたP.aeruginosa PAO1、S.aureus MSSA1、S.aureus MRSA4及びエンテロコッカス・ムンディディについて、11/19−B1ヨーグルトを含有させた餌を食用させることにより、カイコは何れの菌についても高い抵抗性を示した。
【0088】
以上の結果から、11/19−B1ヨーグルトのプロバイオティクス効果が認められた。特に、緑膿菌を感染させたとき(
図1(A))に強い効果が認められたことより、緑膿菌感染の予防の可能性が示唆された。
【0089】
実施例5
<カイコ緑膿菌感染モデルでの11/19−B1ヨーグルト及び11/19−B1生菌粉末の効果の比較>
次に、緑膿菌を感染させたときに強い効果を示した要因を検証した。
10リットルスケールで11/19−B1株を培養し、生菌粉末を作製した。以下、作製した生菌粉末を、「11/19−B1生菌粉末」と略記する。
実施例4と同様の手法により、11/19−B1ヨーグルト(8×10
7 cfu/g、0.5g/個体)を含有する餌、11/19−B1生菌粉末(4×10
8 cfu/g、0.1g/個体)を含有する餌、又は、通常の餌をカイコに一晩与えた後、カイコに緑膿菌(P.aeruginosa PAO1)を感染させた。
結果を
図3及び表2に示す。
【0090】
【表2】
【0091】
また、
図3及び表2の結果より、カイコに感染させた緑膿菌(P.aeruginosa PAO1)について、11/19−B1生菌粉末によるプロバイオティクス効果が認められた。
また、11/19−B1ヨーグルト及び11/19−B1生菌粉末は同等の効果であったから、11/19−B1による緑膿菌感染死の予防効果は、菌自体に含まれる成分によるプロバイオティクス効果であるものではないかと示唆された。
【0092】
実施例6
<カイコ緑膿菌感染モデルでの11/19−B1ヨーグルト摂取量とLD
50との相関性>
実施例4と同様の手法により、餌全体に対して、11/19−B1ヨーグルトを6質量%、11質量%、20質量%、33質量%をそれぞれ含有する餌、又は、対照として通常の餌をカイコに一晩与えた後、カイコに緑膿菌(P.aeruginosa PAO1)を感染させた。
【0093】
結果を
図4に示す。
図4Bは、ヨーグルト摂食量と、(P.aeruginosa PAO1)のLD
50との相関性を示したグラフである。
図4B中、縦軸は、LD
50比((11/19−B1ヨーグルトを含有する餌を与えた場合のLD
50値)/(11/19−B1ヨーグルトを含有していない通常の餌を与えた場合のLD
50値))であり、横軸は、餌全体に対するヨーグルトの割合(質量%)である。
【0094】
図4の結果、ヨーグルト摂食量とLD50とは相関性があることがわかった。