特許第6507054号(P6507054)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6507054
(24)【登録日】2019年4月5日
(45)【発行日】2019年4月24日
(54)【発明の名称】焼成用油脂食品
(51)【国際特許分類】
   A23D 9/00 20060101AFI20190415BHJP
   A23C 19/09 20060101ALI20190415BHJP
【FI】
   A23D9/00 518
   A23C19/09
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-138386(P2015-138386)
(22)【出願日】2015年7月10日
(65)【公開番号】特開2017-18031(P2017-18031A)
(43)【公開日】2017年1月26日
【審査請求日】2018年4月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001421
【氏名又は名称】キユーピー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】濱田 奈保子
(72)【発明者】
【氏名】山根 真希
【審査官】 柴原 直司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−215566(JP,A)
【文献】 特開2010−124760(JP,A)
【文献】 特開平10−262559(JP,A)
【文献】 特開2012−143195(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/102004(WO,A1)
【文献】 特開平02−261344(JP,A)
【文献】 特開2002−345404(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2002/0155198(US,A1)
【文献】 特開平03−232456(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23D 7/00−9/06
A01J 1/00−99/00
A23C 1/00−23/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
食用油脂及びチーズを配合し、水分含有量が3%以下である焼成用油脂食品において、
食用油脂として少なくとも、上昇融点40℃以上の高融点油脂を含有し、
前記食用油脂とチーズの比率が2:1〜50:1(質量部)であり、
前記チーズが、30メッシュオンが80%以上の粒状チーズと、50メッシュパスが80%以上の粉末状チーズとを1:10〜10:1(質量部)の比率で含有するものである、
焼成用油脂食品。
【請求項2】
請求項1に記載の焼成用油脂食品において、
さらに乳糖を配合する、焼成用油脂食品。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の焼成用油脂食品において、
さらにクエン酸を配合する、焼成用油脂食品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水分含有量が3%以下の焼成用油脂食品であるにも拘らず、食材に塗布して焼成した時に香ばしいチーズの風味を得ることができ、さらに、食材表面のサクサク感と食材内部のジューシー感とが一体となった美味しさを感じることができる、焼成用油脂食品に関する。
【背景技術】
【0002】
スライスチーズをパンに乗せてオーブントースター等で焼成したチーズトーストは、代表的なパンの調理方法である。このようなチーズトーストは、調理方法が手軽であること、焼成時に香ばしいチーズの香りを有することから人気のメニューであり、朝食などで喫食されている。
【0003】
一方で、バター、ガーリック等の風味を付与したペースト状の油脂組成物をパンに塗ったメニューも、アルコール類のおつまみ等として好まれている。ペースト状の油脂組成物であると、食パンのみならずフランスパン等にも塗りやすいものとなり、様々なメニューに用いることができる。また、嗜好の多様化に対応させるため、油脂組成物に具材として野菜等を混入したものも知られている(特許文献1参照)。
【0004】
本発明者等は、食用油脂をベースとしたペースト状の油脂組成物中にチーズを配合し、手軽にチーズトーストを調理できる油脂ペーストを製した。しかしながら、食用油脂をベースとした場合、特に、水分含量が3%以下の油脂ペーストとした場合には、食用油脂によるマスキング効果によるものか、食材に塗付し焼成した時に、チーズの風味が得られにくく、食材表面のサクサク感と食材内部のジューシー感とが一体となった美味しさを感じにくいという問題が発生した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−124760号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明の目的は、水分含有量が3%以下の焼成用油脂食品であるにも拘らず、食材に塗布して焼成した時に香ばしいチーズの風味を得ることができ、さらに、食材表面のサクサク感と食材内部のジューシー感とが一体となった美味しさを感じることができる、焼成用油脂食品を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた。その結果、食用油脂とチーズの含有比率を特定範囲に調整し、サイズの異なるチーズを配合するならば、意外にも、水分含有量が3%以下の焼成用油脂食品であるにも拘らず、食材に塗布して焼成した時に香ばしいチーズの風味を得ることができ、さらに、食材表面のサクサク感と食材内部のジューシー感とが一体となった美味しさを感じることができる焼成用油脂食品が得られることを見出し、遂に本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、
(1)食用油脂及びチーズを配合し、水分含有量が3%以下である焼成用油脂食品において、
食用油脂として少なくとも、上昇融点40℃以上の高融点油脂を含有し、
前記食用油脂とチーズの比率が2:1〜50:1(質量部)であり、
前記チーズが、30メッシュオンが80質量%以上の粒状チーズと、50メッシュパスが80質量%以上の粉末状チーズとを1:10〜10:1(質量部)の比率で含有するものである、
焼成用油脂食品、
(2)(1)に記載の焼成用油脂食品において、
さらに乳糖を配合する、焼成用油脂食品、
(3)(1)又は(2)に記載の焼成用油脂食品において、
さらにクエン酸を配合する、焼成用油脂食品、
である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、水分含有量が3%以下の焼成用油脂食品であるにも拘らず、食材に塗布して焼成した時に香ばしいチーズの風味を得ることができ、さらに、食材表面のサクサク感と食材内部のジューシー感とが一体となった美味しさを感じることができる、焼成用油脂食品を提供することができる。これにより、食パンなどに塗布し焼成して食するための調味スプレッド、そしてこれを用いたメニューの更なる拡大が期待される。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。なお、本発明において「%」は「質量%」を、「部」は「質量部」を意味する。
【0011】
<本発明の特徴>
本発明の焼成用油脂食品は、食用油脂及びチーズを配合し、水分含有量が3%以下である焼成用油脂食品において、食用油脂として少なくとも上昇融点40℃以上の高融点油脂を含有し、前記食用油脂とチーズの比率が2:1〜50:1であり、前記チーズが、30メッシュオンが80%以上の粒状チーズと、50メッシュパスが80%以上の粉末状チーズとを1:10〜10:1の比率で含有させることにより、パン類などの食材に塗布して焼成した時に香ばしいチーズの風味を得ることができ、さらに、食材表面のサクサク感と食材内部のジューシー感とが一体となった美味しさを感じることに特徴を有する。
【0012】
<焼成用油脂食品>
本発明の焼成用油脂食品とは、油脂を主原料とする食品であって、当該食品を他の食材の表面に塗布等により付着させ、前記他の食材と共に焼成する食品をいう。このような焼成用油脂食品は例えば、パン類等の食材に塗布し焼成して喫食して用いることができる。
【0013】
<チーズ>
本発明に用いるチーズは、ナチュラルチーズや、ナチュラルチーズを原料として加工されたプロセスチーズ、あるいは他の添加材等を含有したチーズ加工品を、後述する粒状あるいは粉末状に加工したものを用いる。ナチュラルチーズとしては例えば、パルミジャーノ・レッジャーノ、グラナパダーノ、ペコリーノ・ロマーノ、パルメザンチーズ、ゴーダチーズ、チェダーチーズ、ブルーチーズなどが挙げられる。
【0014】
<粒状チーズ>
本発明の粒状チーズには、30メッシュオン(目開き0.5mm)が80%以上のものを用いることが必須であり、22メッシュオン(目開き0.71mm)が80%以上であるとよい。前記条件を満たす粒状チーズを配合しない場合は、焼成用油脂食品を食材に塗布して焼成した時に食材内部のジューシー感を感じにくく、香ばしいチーズの風味が得られにくいものとなる。
なお、上述した粒状チーズの上限の大きさは特に限定されないが、焼成用油脂食品を食材に塗布して焼成した時に食材内部のジューシー感をより感じやすく、香ばしいチーズの風味が得られやすいことから、3.5メッシュパス(目開き5.6mm)が80%以上、さらに4.7メッシュパス(目開き4mm)が80%以上、特に5.5メッシュパス(目開き3.35mm)が80%以上であるとよい。
また、本発明のメッシュ(篩)は、Tyler規格に基づく。
【0015】
<粉末状チーズ>
本発明の粉末状チーズには、50メッシュパス(目開き0.3mm)が80%以上のものを用いることが必須であり、60メッシュパス(目開き0.25mm)が80%以上、さらに70メッシュパス(目開き0.212mm)が80%以上であるとよく、特に100メッシュパス(目開き0.15mm)が80%以上であるとよい。
前記条件を満たす粉末状チーズを配合しない場合は、焼成用油脂食品を食材に塗布して焼成した時に食材表面のサクサク感と食材内部のジューシー感とが一体となった美味しさを感じにくく、香ばしいチーズの風味が得られにくいものとなる。
【0016】
<粒状チーズと粉末状チーズの比率>
粒状チーズと粉末状チーズとの比率は、1:10〜10:1であり、さらに1:8〜8:1であるとよい。
粒状チーズの含有比率が前記範囲より少ない場合は、焼成用油脂食品を食材に塗布して焼成した時に、食材内部のジューシー感が得られにくく、その結果、香ばしいチーズの風味が得られにくくなる。
一方、粒状チーズの含有比率が前記範囲より多い場合は、焼成用油脂食品を食材に塗布して焼成した時に、食材表面のサクサク感と食材内部のジューシー感とが一体となった美味しさを感じにくく、その結果、香ばしいチーズの風味が得られにくくなる。
【0017】
<チーズ含有量>
粒状チーズと粉末状チーズの合計のチーズ含有量は、本発明の焼成用油脂食品がチーズ風味の食品であること、後述する食用油脂とのバランスを考慮し、0.5〜40%であるとよく、1〜30%であるとよい。
【0018】
<高融点油脂>
本発明の焼成用油脂食品は、食用油脂として少なくとも上昇融点40℃以上の高融点油脂を含有し、特に、上昇融点50℃以上の油脂であるとよい。また、高融点油脂の上昇融点の上限は、あまり高すぎると口どけが悪くなる場合があることから、70℃以下であるとよい。
このような高融点油脂としては、例えば高融点部分を集めたパーム油脂等の分画油脂、パーム油脂や植物油脂、牛脂等の動物油脂を水添して得られる硬化油脂等を挙げることができる。
前記高融点油脂を含有しない食用油脂を用いた場合は、焼成用油脂食品を調製後、長期間にわたってチーズが略均一に分散し難く、安定した品質で保存しにくいものとなる。
【0019】
<高融点油脂の含有量>
高融点油脂の含有量は、保存中のチーズの分散性を維持させやすいことから、食用油脂全体に対し1〜35%とするとよく、5〜20%とするとよい。なお、前記高融点油脂を少なくとも含有する食用油脂の含有量は、後述するチーズとのバランスを考慮し55〜95%であるとよく、60〜90%であるとよい。
【0020】
<低融点油脂>
本発明の焼成用油脂食品に含有する食用油脂は、少なくとも前記高融点油脂を含有したものを用いる必要があるが、焼成用油脂食品が食パン等の食材に塗りやすい性状となりやすいことから、前記高融点油脂以外に上昇融点が20℃以下、特に上昇融点0〜15℃の低融点油脂を用いるとよく、低融点油脂の含有量は、食用油脂全体に対し65〜99%とするとよく、さらに80〜95%とするとよい。
【0021】
<食用油脂とチーズの比率>
本発明の焼成用油脂食品において、食用油脂とチーズとの比率は2:1〜50:1であり、5:1〜40:1であるとよい。
食用油脂の比率が前記範囲より少ない場合は、食材に塗布して焼成した時に、食材表面のサクサク感と食材内部のジューシー感とが一体となった美味しさを感じにくいものとなる。また、食用油脂の比率が前記範囲より多い場合も、焼成用油脂食品を食材に塗布して焼成した時に食材表面のサクサク感と食材内部のジューシー感とが一体となった美味しさを感じにくく、香ばしいチーズの風味を得られにくいものとなる。
【0022】
<乳糖>
本発明の焼成用油脂食品は、焼成用油脂食品を食材に塗布して焼成した時に香ばしいチーズの風味がより得られやすく、さらに、食材表面のサクサク感と食材内部のジューシー感とが一体となった美味しさを感じやすいものとなることから、乳糖を含有させることがよく、当該含有量としては、1〜20%であるとよく、5〜15%であるとよい。
【0023】
<クエン酸>
本発明の焼成用油脂食品は、焼成用油脂食品を食材に塗布して焼成した時に香ばしいチーズの風味がより得られやすく、さらに、食材表面のサクサク感と食材内部のジューシー感とが一体となった美味しさを感じやすいものとなることから、クエン酸を含有させることがよく、当該含有量としては、0.05〜1%であるとよく、0.1〜0.5%であるとよい。
【0024】
<乳化剤>
本発明の焼成用油脂食品は、長期間にわたってチーズが略均一に分散し、食材に塗布して焼成した時に香ばしいチーズの風味を得られやすく、さらに、食材表面のサクサク感と食材内部のジューシー感とが一体となった美味しさを感じやすいことから、乳化剤を配合することができる。焼成用油脂食品の乳化剤の含有量は、0.01〜5%であるとよく、0.05〜3%であるとよい。
乳化剤としては、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル等が挙げられる。
【0025】
<水分含有量>
本発明の焼成用油脂食品は、製品の水分含有量が3%以下であるが、食材に塗布して焼成した時に香ばしいチーズの風味を得られやすく、さらに、食材表面のサクサク感と食材内部のジューシー感とが一体となった美味しさを感じやすい点から、製品の水分含有量は2%以下であるとよい。
前記製品の水分含有量は、栄養表示基準(平成15年4月24日厚生労働省告示第176号)別表第2の第3欄記載の減圧加熱乾燥法に準じて測定した値である。
【0026】
<その他配合原料>
本発明の焼成用油脂食品には、本発明の効果を損なわない範囲で、他に食塩、糖類、香辛料、旨味調味料等の調味成分や、ガム類、澱粉等の粘度調整剤、その他種々の添加剤等を配合することができる。
【0027】
<焼成用油脂食品を用いる食材>
油脂食品を塗付する食材としては、焼成して喫食される食材であれば限定されず、食パンやフランスパンなどのパン類、クラッカー等の穀類加工品、ジャガイモ等の野菜類、肉類、魚介類などが挙げられる。
中でも、焼成用油脂食品を食材に塗布して焼成した時に香ばしいチーズの風味を得ることができ、さらに、食材表面のサクサク感と食材内部のジューシー感とが一体となった美味しさを感じやすいことから、オーブントースター等でトーストして喫食される、食パンやフランスパン等のパン類に対して特に好適に使用することができる。
【0028】
<焼成用油脂食品の製造方法>
本発明の焼成用油脂食品の具体的な製造方法としては、例えば、下記のように製造することができる。
まず、高融点油脂及びその他の油脂(例えば、低融点油脂)、並びに必要に応じ乳化剤を60〜100℃で加熱混和する。次いで、粒状チーズ、粉末状チーズ、乳糖、クエン酸及びその他配合原料を加えて混和する。続いて、0〜15℃の水等の冷媒で混和しながら常温(25℃)に冷却した後、容器に充填し、容器中で6時間から1日静置させる。
【0029】
以下、本発明について、実施例、比較例及び試験例に基づき具体的に説明する。なお、本発明は、これらに限定するものではない。
【実施例】
【0030】
[実施例1]
<焼成用油脂食品の製造>
表1の低融点油脂、高融点油脂及び乳化剤(グリセリン脂肪酸エステル)を撹拌しながら80℃に達したところで、表1の粒状チーズ、粉末状チーズ、その他配合原料を投入し、さらに10分間撹拌した。
続いて、10℃の冷却水で常温(25℃)に冷却した後、PE/EVOH/PEの多層材料からなる蓋付軟質チューブに充填密封し、常温(25℃)で1日間保管して本発明の焼成用油脂食品を得た。
得られた焼成用油脂食品の食用油脂とチーズの比率は20:1、粒状チーズと粉末状チーズの比率は1:1、食用油脂中の低融点油脂と高融点油脂の割合は、低融点油脂が87%、高融点油脂が13%であった。
【0031】
[表1]
低融点油脂(*1) 70%
高融点油脂(*2) 10%
粒状チーズ(プロセスチーズ)(*3) 2%
粉末状チーズ(プロセスチーズ)(*4) 2%
乳糖 12%
粉塩 2%
クエン酸 0.1%
乳化剤(グリセリン脂肪酸エステル) 0.5%
ブラックペッパー 0.4%
グルタミン酸ナトリウム 1%
―――――――――――――――――――――――――――
計 100%
表注(*1)菜種微水添油(上昇融点5℃)
(*2)菜種硬化油(上昇融点55℃)
(*3)5.5メッシュパスかつ22メッシュオンが全体の80%以上
(*4)100メッシュパスが全体の80%以上
【0032】
[実施例2]
実施例1において、食用油脂の配合量を70%、チーズの配合量を14%に変更することで、食用油脂とチーズの比率を5:1に変更する以外は、実施例1と同様に焼成用油脂食品を得た。なお、食用油脂中の低融点油脂と高融点油脂の割合、粒状チーズと粉末状チーズの割合は、実施例1と同様に調整した。
【0033】
[実施例3]
実施例1において、チーズの配合量を2%、乳糖の配合量を14%に変更することで、食用油脂とチーズの比率を40:1に変更する以外は、実施例1と同様に焼成用油脂食品を得た。なお、食用油脂中の低融点油脂と高融点油脂の割合、粒状チーズと粉末状チーズの割合は、実施例1と同様に調整した。
【0034】
[実施例4]
実施例1において、食用油脂の配合量を60%、チーズの配合量を30%、乳糖の配合量を7%、粉塩の配合量を1%に変更することで、食用油脂とチーズの比率を2:1に変更する以外は、実施例1と同様に焼成用油脂食品を得た。なお、食用油脂中の低融点油脂と高融点油脂の割合、粒状チーズと粉末状チーズの割合は、実施例1と同様に調整した。
【0035】
[実施例5]
実施例1において、チーズの配合量を1.6%、乳糖の配合量を14.5%に変更することで、食用油脂とチーズの比率を50:1に変更する以外は、実施例1と同様に焼成用油脂食品を得た。なお、食用油脂中の低融点油脂と高融点油脂の割合、粒状チーズと粉末状チーズの割合は、実施例1と同様に調整した。
【0036】
[実施例6]
実施例1において、粒状チーズの配合量を0.4%、粉末状チーズの配合量を3.6%に変更し、粒状チーズと粉末状チーズの割合を1:9に変更する以外は、実施例1と同様に焼成用油脂食品を得た。
【0037】
[実施例7]
実施例2において、粒状チーズの配合量を1.75%、粉末状チーズの配合量を12.25%に変更し、粒状チーズと粉末状チーズの割合を1:7に変更する以外は、実施例1と同様に焼成用油脂食品を得た。
【0038】
[実施例8]
実施例2において、粒状チーズの配合量を12.25%、粉末状チーズの配合量を1.75%に変更し、粒状チーズと粉末状チーズの割合を7:1に変更する以外は、実施例1と同様に焼成用油脂食品を得た。
【0039】
[実施例9]
実施例1において、粒状チーズの配合量を3.6%、粉末状チーズの配合量を0.4%に変更し、粒状チーズと粉末状チーズの割合を9:1に変更する以外は、実施例1と同様に焼成用油脂食品を得た。
【0040】
[比較例1]
実施例1において、食用油脂の配合量を55%、チーズの配合量を1%、乳糖の配合量を40%に変更することで、食用油脂とチーズの比率を55:1に変更する以外は、実施例1と同様に焼成用油脂食品を得た。なお、食用油脂中の低融点油脂と高融点油脂の割合、粒状チーズと粉末状チーズの割合は、実施例1と同様に調整した。
【0041】
[比較例2]
実施例1において、粉末状チーズ全量を粒状チーズに置き換えて配合する以外は、実施例1と同様に焼成用油脂食品を得た。
【0042】
[比較例3]
実施例1において、粒状チーズ全量を粉末状チーズに置き換えて配合する以外は、実施例1と同様に焼成用油脂食品を得た。
【0043】
[試験例1]
焼成用油脂食品において、食用油脂とチーズの比率の違いが、焼成用油脂食品に与える影響を検討するため、実施例1〜5、比較例1により得られた焼成用油脂食品を、下記評価方法により評価した。
【0044】
[評価方法]
6枚切り食パン(表面積140cm)に焼成用油脂食品を20g塗布し、860W(三洋電気(株)製)のトースターで3分間焼成した。得られた焼成食品(トースト)について、外観及び食味を評価した。
【0045】
実施例1〜5により得られた、食用油脂及びチーズを配合し、水分含有量が3%以下であり、食用油脂として少なくとも上昇融点40℃以上の高融点油脂を含有し、前記食用油脂とチーズの比率が2:1〜50:1であり、前記チーズが、30メッシュオンが80%以上の粒状チーズと、50メッシュパスが80%以上の粉末状チーズとを1:10〜10:1の比率で含有する焼成用油脂食品は、食材に塗布して焼成した時に香ばしいチーズの風味を得ることができ、さらに、食材表面のサクサク感と食材内部のジューシー感とが一体となった美味しさを感じることができるものであった。
特に、食用油脂とチーズの比率が5:1〜40:1である実施例1〜3の焼成用油脂食品は、食材に塗布して焼成した時の香ばしいチーズの風味、食材表面のサクサク感と食材内部のジューシー感とが一体となった美味しさが強く感じられ、大変好ましいものであった。
一方、食用油脂とチーズの比率を55:1に変更した比較例1の焼成用油脂食品は、食材に塗布して焼成した時に、香ばしいチーズの風味、食材表面のサクサク感と食材内部のジューシー感とが一体となった美味しさともに感じにくいものであった。
【0046】
[試験例2]
焼成用油脂食品において、粒状チーズと粉末状チーズの比率の違いが焼成用油脂食品に与える影響を検討するため、実施例1、6〜9、比較例2〜3により得られた焼成用脂食品を、試験例1と同様の方法により評価した。
【0047】
実施例1、実施例6〜9により得られた、食用油脂及びチーズを配合し、水分含有量が3%以下であり、食用油脂として少なくとも上昇融点40℃以上の高融点油脂を含有し、前記食用油脂とチーズの比率が2:1〜50:1であり、前記チーズが、30メッシュオンが80%以上の粒状チーズと、50メッシュパスが80%以上の粉末状チーズとを1:10〜10:1の比率で含有する焼成用油脂食品は、食材に塗布して焼成した時に香ばしいチーズの風味を得ることができ、さらに、食材表面のサクサク感と食材内部のジューシー感とが一体となった美味しさを感じることができるものであった。
特に、実施例1、5〜6により得られた、粒状チーズと粉末状チーズの比率が1:8〜8:1である焼成用油脂食品は、食材に塗布して焼成した時の香ばしいチーズの風味、食材表面のサクサク感と食材内部のジューシー感とが一体となった美味しさが強く感じられ、大変好ましいものであった。
一方、チーズ全量を粒状チーズに変更した比較例2の焼成用油脂食品は、食材に塗布して焼成した時に、食材表面のサクサク感と食材内部のジューシー感とが一体となった美味しさを感じにくく、その結果、香ばしいチーズの風味が得られにくいものであった。
また、チーズ全量を粉末状チーズに変更した比較例3の焼成用油脂食品は、食材に塗布して焼成した時に、食材内部のジューシー感が得られにくく、その結果、香ばしいチーズの風味が得られにくいものであった。
【0048】
[実施例10]
実施例1において、食用油脂中の低融点油脂と高融点油脂の割合を、低融点油脂が80%、高融点油脂が20%に変更する以外は、実施例1と同様に焼成用油脂食品を得た。なお、食用油脂とチーズの比率、粒状チーズと粉末状チーズの割合は、実施例1と同様に調整した。
【0049】
[実施例11]
実施例1において、粒状チーズを4.7メッシュパスかつ30メッシュオンが80%以上の粒状チーズに変更し、粉末状チーズを50メッシュパスが80%以上の粉末状チーズに変更する以外は、実施例1と同様に焼成用油脂食品を得た。
【0050】
実施例10〜11により得られた焼成用油脂食品を、試験例1と同様の方法により評価したところ、実施例1と同様、食材に塗布して焼成した時の香ばしいチーズの風味、食材表面のサクサク感と食材内部のジューシー感とが一体となった美味しさが強く感じられ、大変好ましいものであった。
【0051】
[実施例12]
実施例1において、クエン酸を配合せず、粉塩の配合量を2.1%に変更する以外は、実施例1と同様に焼成用油脂食品を得た。
【0052】
[実施例13]
実施例1において、乳化剤を配合せず、粉塩の配合量を2.5%に変更する以外は、実施例1と同様に焼成用油脂食品を得た。
【0053】
実施例12〜13により得られた焼成用油脂食品を、試験例1と同様の方法により評価したところ、実施例1の評価よりはやや劣るものの、いずれも食材に塗布して焼成した時に香ばしいチーズの風味を得ることができ、さらに食材表面のサクサク感と食材内部のジューシー感とが一体となった美味しさを感じることができるものであった。