特許第6507705号(P6507705)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東ソー株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6507705
(24)【登録日】2019年4月12日
(45)【発行日】2019年5月8日
(54)【発明の名称】発泡積層体
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/10 20060101AFI20190422BHJP
   B32B 5/24 20060101ALI20190422BHJP
   B32B 27/32 20060101ALI20190422BHJP
   B65D 3/22 20060101ALI20190422BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20190422BHJP
【FI】
   B32B27/10
   B32B5/24 101
   B32B27/32 E
   B65D3/22 C
   B65D65/40 D
【請求項の数】11
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-30874(P2015-30874)
(22)【出願日】2015年2月19日
(65)【公開番号】特開2016-150575(P2016-150575A)
(43)【公開日】2016年8月22日
【審査請求日】2018年1月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】増田 淳
(72)【発明者】
【氏名】幸田 真吾
【審査官】 増永 淳司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−113774(JP,A)
【文献】 特開2008−247399(JP,A)
【文献】 特表2003−520913(JP,A)
【文献】 特開2014−124797(JP,A)
【文献】 特開2013−078928(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B1/00−43/00
B65D65/00−79/02
81/18−81/30、81/38、85/88
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも紙基材層に隣接して(A)層が配置され、もう一方の紙基材の面に、紙基材と隣接する発泡層である(B)層とこの(B)層に隣接する(C)層と(C)層より外面に(D)層が配置された発泡積層体であって、(A)層が、JIS K 6922−1(2011年)により測定された密度が925kg/m以上970kg/m以下であるポリエチレン系樹脂(a)、(B)層がJIS K 6922−1(2011年)により測定された密度が910kg/m以上930kg/m以下である高圧法低密度ポリエチレン(b)、(C)層がJIS K 6922−2(2010年)により測定された溶融温度が高圧法低密度ポリエチレン(b)よりも6℃以上高いポリエチレン系樹脂(c)、(D)層がガスバリア性コート剤(d)から構成されることを特徴とする発泡積層体。
【請求項2】
(C)層がJIS K 6922−2(2010年)により測定された溶融温度が高圧法低密度ポリエチレン(b)よりも6℃以上19℃以下の範囲で高いポリエチレン系樹脂(c)から構成されていることを特徴とする請求項1に記載の発泡積層体。
【請求項3】
(D)層の厚みが0.2μm以上2.0μm以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の発泡積層体。
【請求項4】
ポリエチレン系樹脂(a)が、JIS K 6922−1(2011年)により測定された密度が935kg/m以上970kg/m以下であることを特徴とする請求項1乃至3いずれか一項に記載の発泡積層体。
【請求項5】
ポリエチレン系樹脂(a)が、JIS K 6922−1(2011年)により測定された密度が945kg/m以上970kg/m以下であることを特徴とする請求項1乃至4いずれか一項に記載の発泡積層体。
【請求項6】
ポリエチレン系樹脂(a)が、JIS K 6922−1(2011年)により測定された密度が950kg/m以上965kg/m以下であることを特徴とする請求項1乃至5いずれか一項に記載の発泡積層体。
【請求項7】
ポリエチレン系樹脂(a)が、JIS K 6922−1(2011年)により測定された密度が935〜980kg/mである低圧法エチレン単独重合体(e)及び/又はJIS K 6922−1(2011年)により測定された密度が935〜980kg/mであるエチレン・α−オレフィン共重合体(f)10〜90重量%、並びに高圧法低密度ポリエチレン(g)10〜90重量%((e)と(f)と(g)の合計は100重量%)を含むエチレン系樹脂組成物(h)であることを特徴とする請求項1乃至6いずれか一項に記載の発泡積層体。
【請求項8】
紙基材の坪量が150g/m以上400g/m以下であることを特徴とする請求項1乃至7いずれか一項に記載の発泡積層体。
【請求項9】
(C)層の厚みが1〜20μmであることを特徴とする請求項1乃至8いずれか一項に記載の発泡積層体。
【請求項10】
(C)層の厚みが7μm以上12μm以下であることを特徴とする請求項に記載の発泡積層体。
【請求項11】
請求項1乃至10いずれか一項に記載の発泡積層体からなる容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡層の厚みが大きく、良好な断熱性を示すとともにガスバリア性に優れる発泡積層体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、断熱性を有する容器として、合成樹脂、特にポリスチレンを発泡させたものが多く使用されている。しかし、発泡ポリスチレン容器は、廃棄時の環境への負荷が高い、印刷適性に劣るなどの欠点があり、他の素材への代替が検討されている。そのような中、紙カップ胴部の外周面にコルゲートした紙を貼り合わせて断熱層を形成した容器、紙カップの胴部外周面にパルプ製の不織布とコート紙との積層体を接合した容器などが開発され、使用されている。
【0003】
しかしながら、いずれの方法も加工、成形が容易でなく、コスト高になるという欠点があった。そこで、水分を含んだ基材の少なくとも一面に低融点の熱可塑性合成樹脂フィルムをラミネートし、加熱することにより、基材に含まれている水分を利用して合成樹脂フィルムを凹凸に発泡させる技術が考案された(例えば、特許文献1〜3参照。)。しかし、このようにして得られる材料は、発泡層の厚みが薄く、断熱性が不十分であった。
【0004】
また、発泡層の厚い発泡体を得る手段として、容器胴部材及び底板部材からなり、容器胴部材及び底板部材の原紙の内壁面に高融点の熱可塑性合成樹脂フィルムをラミネートしてあると共に容器胴部材の原紙の外壁面に低融点の熱可塑性合成樹脂フィルムをラミネートしてあり、この低融点の熱可塑性合成樹脂フィルムを加熱処理して発泡してある断熱紙容器が提案されている(例えば、特許文献4参照。)。しかし、内壁面に高融点の熱可塑性合成樹脂を有する断熱紙容器では、ガスバリア性に劣っていた。
【0005】
また、ガスバリア性に優れる発泡積層体を得る手法として、内壁面に水蒸気の透過を抑制するアルミニム箔や延伸ポリエステルフィルムからなるバリア層を設け、その上にシーラント層を設ける手法が提案されている(例えば、特許文献5〜6参照)。
【0006】
しかし、バリア層とシーラント層を設ける手法は、高価なバリア層を使用する上、層構成が複雑となりコストパフォーマンスに劣っていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特公昭48−32283号公報
【特許文献2】特開昭57−110439号公報
【特許文献3】特開2001−270571号公報
【特許文献4】特開2007−217024号公報
【特許文献5】特開2003−261128号公報
【特許文献6】特開2004−231197号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、前記課題を解決すべくなされたものであり、本発明の目的は発泡層の厚みが大きく、良好な断熱性を示すとともにガスバリア性に優れる発泡積層体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、特定の発泡積層体が、優れた断熱性とガスバリア性を示すことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、少なくとも紙基材層に隣接して(A)層が配置され、もう一方の紙基材の面に、紙基材と隣接する発泡層である(B)層と(B)層と隣接する(C)層と、(C)層より外面に(D)層が配置された発泡積層体であって、(A)層が、JIS K6922−1(2011年)により測定された密度が925kg/m以上970kg/m以下であるポリエチレン系樹脂(a)、(B)層がJIS K6922−1(2011年)により測定された密度が910kg/m以上930kg/m以下である高圧法低密度ポリエチレン(b)、(C)層がJIS K6922−2(2010年)により測定された溶融温度が高圧法低密度ポリエチレン(b)よりも高いポリエチレン系樹脂(c)、(D)層がガスバリア性コート剤(d)から構成されることを特徴とする発泡積層体に関するものである。
【0011】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0012】
本発明を構成するポリエチレン系樹脂(a)のJIS K6922−1(2011年)により測定された密度(以下、単に密度と略す)は、断熱性、発泡の安定性に優れることから、925〜970kg/mの範囲であり、好ましくは935〜970kg/mの範囲であり、より好ましくは945〜970kg/m、最も好ましくは950〜965kg/mの範囲である。ポリエチレン系樹脂(a)の密度が925kg/m未満では、断熱性に劣るため好ましくなく、970kg/mを超える範囲では、発泡外観に劣るため好ましくない。
【0013】
本発明を構成するポリエチレン系樹脂(a)としては、エチレン単独重合体又はエチレン・α−オレフィン共重合体及びこれらの組成物であり、その分子鎖の形態は直鎖状でもよく、炭素数6以上の長鎖分岐を有していてもよい。このようなポリエチレン系樹脂(a)は、特に限定されるものではなく、前記密度範囲を外れなければよい。
【0014】
エチレン単独重合体としては、低圧法エチレン単独重合体、高圧法低密度ポリエチレンが例示することができる。低圧法エチレン単独重合体は、従来公知の低圧イオン重合法により得ることができる。また、高圧法低密度ポリエチレンは、従来公知の高圧ラジカル重合法により得ることができる。
【0015】
エチレン・α−オレフィン共重合体に用いるα−オレフィンとしては、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセンなどを挙げることができ、これらの1種または2種以上が用いられる。
【0016】
エチレン・α−オレフィン共重合体を得るための方法は特に限定するものではなく、チーグラー・ナッタ触媒やフィリップス触媒、メタロセン触媒を用いた高・中・低圧イオン重合法などを例示することができる。このような共重合体は、市販品の中から便宜選択することができる。
【0017】
これらの中で、ラミネート成形性に優れることから、密度が935〜980kg/mである低圧法エチレン単独重合体(e)及び/又は密度が935〜980kg/mであるエチレン・α−オレフィン共重合体(f)10〜90重量%、並びに高圧法低密度ポリエチレン(g)90〜10重量%((e)と(f)と(g)の合計は100重量%)を含むエチレン系樹脂組成物(h)であることが好ましい。
【0018】
このような低圧法エチレン単独重合体(e)において、エチレン系樹脂組成物(h)のラミネート加工性に優れることから、JIS K6922−1(2011年)により測定したメルトマスフローレート(以下、単にMFRと略す)は6〜100g/10分の範囲が好ましく、より好ましくは8〜60g/10分の範囲である。
【0019】
さらに、低圧法エチレン単独重合体(e)において、エチレン系樹脂組成物(h)のラミネート加工性、生産性に優れるため、密度は945〜975kg/mの範囲が好ましい。
【0020】
このようなエチレン・α−オレフィン共重合体(f)において、エチレン系樹脂組成物(h)のラミネート加工性に優れることから、MFRは6〜100g/10分の範囲が好ましく、より好ましくは8〜60g/10分の範囲である。
【0021】
さらに、エチレン・α−オレフィン共重合体(f)において、エチレン系樹脂組成物(h)のラミネート加工性、生産性に優れるため、密度は945〜975kg/mの範囲が好ましい。
【0022】
高圧法低密度ポリエチレン(g)において、エチレン系樹脂組成物(h)の押出ラミネート加工性に優れるため、MFRは0.1〜20g/10分の範囲が好ましく、より好ましくは0.3〜10g/10分、最も好ましくは1〜4g/10分の範囲である。
【0023】
また、高圧法低密度ポリエチレン(g)において、エチレン系樹脂組成物(h)の製膜安定性に優れることから、密度は910〜935kg/mの範囲が好ましい。
【0024】
エチレン系樹脂組成物(h)のMFRは、ラミネート成形性に優れるため、1〜50g/10分の範囲が好ましく、さらに好ましくは3〜20g/10分の範囲である。
【0025】
また、本発明を構成するポリエチレン系樹脂(a)には、ポリプロピレンなどの他のポリオレフィンを配合してもよく、これらのポリオレフィンの配合比は1〜30重量%がラミネート成形性と積層体外観の点から好ましい。
【0026】
本発明を構成するポリエチレン系樹脂(a)にポリオレフィンを混合する時は、ポリエチレン系樹脂(a)のペレットとポリオレフィンのペレットを固体状態で混合したペレット混合物であってもよいが、単軸押出機、二軸押出機、ニーダー、バンバリー等で溶融混練した混合物の方が、品質の安定した製品が得られるので好ましい。溶融混練装置を用いる場合、溶融温度はポリエチレン系樹脂の融点〜300℃程度が好ましい。
【0027】
さらに、本発明を構成するポリエチレン系樹脂(a)には、必要に応じて、酸化防止剤、光安定剤、帯電防止剤、滑剤、ブロッキング防止剤等、ポリオレフィン樹脂に一般に用いられている添加剤を本発明の目的を損なわない範囲で添加してもかまわない。
本発明を構成する高圧法低密度ポリエチレン(b)は、従来公知の高圧法ラジカル重合法により得ることができる。
【0028】
高圧法低密度ポリエチレン(b)は、断熱性及び発泡外観に優れるため、密度が910〜930kg/mの範囲であり、より好ましくは914〜926kg/m、さらに好ましくは916〜924kg/mの範囲である。高圧法低密度ポリエチレン(b)の密度が910kg/m未満では、発泡外観に劣るため好ましくなく、930kg/mを超える範囲では、断熱性に劣るため好ましくない。
【0029】
また、高圧法低密度ポリエチレン(b)のMFRは、10〜30g/10分の範囲であると、断熱性及び発泡外観に優れるため好ましく、より好ましくは12〜30g/10分、更に好ましくは13〜24g/10分、最も好ましくは13〜18g/10分の範囲である。
【0030】
本発明を構成する高圧法低密度ポリエチレン(b)には、エチレン・α−オレフィン共重合体などの他のポリオレフィンを配合してもよい。
【0031】
本発明の積層体を構成する高圧法低密度ポリエチレン(b)にポリオレフィンを混合する時は、高圧法低密度ポリエチレン(b)のペレットとポリオレフィンのペレットを固体状態で混合したペレット混合物であってもよいが、単軸押出機、二軸押出機、ニーダー、バンバリー等で溶融混練した混合物の方が、品質の安定した製品が得られるので好ましい。溶融混練装置を用いる場合、溶融温度はポリオレフィン系樹脂の融点〜300℃程度が好ましい。
【0032】
また、本発明の積層体を構成する高圧法低密度ポリエチレン(b)には、必要に応じて、酸化防止剤、光安定剤、帯電防止剤、滑剤、ブロッキング防止剤等、ポリオレフィン樹脂に一般に用いられている添加剤を本発明の目的を損なわない範囲で添加してもかまわない。
【0033】
ポリエチレン系樹脂(c)は、ガスバリア性、発泡外観に優れるため、JIS K6922−2(2010年)により測定された溶融温度が高圧法低密度ポリエチレン(b)よりも高い。
【0034】
このようなポリエチレン系樹脂(c)は、低圧法エチレン単独重合体、高圧法低密度ポリエチレン、エチレン・α−オレフィン共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・アクリル酸エチル共重合体、エチレン・アクリル酸共重合体、エチレン・メタクリル酸共重合体及びこれらの組成物などが挙げられるが、エチレン・α−オレフィン共重合体、低圧法エチレン単独重合体が、(B)層の発泡倍率を向上させることができ、積層体外観にも優れるため、特に好ましい。
【0035】
このようなエチレン・α−オレフィン共重合体を得るための方法は特に限定するものではなく、チーグラー・ナッタ触媒やフィリップス触媒、メタロセン触媒を用いた高・中・低圧イオン重合法などを例示することができる。このような共重合体は、市販品の中から便宜選択することができるが、積層体外観に優れるため、チーグラー・ナッタ触媒を用いた重合法により得られたエチレン・α−オレフィン共重合体が特に好ましい。
【0036】
本発明を構成する(C)層の厚みは、ガスバリア性に優れることから、1〜20μmが好ましく、より好ましくは5〜15μm、最も好ましくは7〜12μmである。
【0037】
本発明を構成するバリア性コート剤(d)とは、バリア性樹脂や無機フィラーなどを含む液体であり、本発明の目的が達成される限りにおいて特に制限はない。
【0038】
このようなバリア性樹脂としては、エチレン・ビニルアルコール共重合体、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリエステル、ポリアミド、及びこれらの組成物などが例示できる。これらのうち、バリア性、ハンドリング性に優れることから、エチレン・ビニルアルコール共重合体、ポリビニルアルコールが好ましい。
【0039】
このような無機フィラーとしては、シリカ、珪藻土、アルミナ、酸化鉄などの酸化物、水酸化カルシウムや水酸化マグネシウムなどの水酸化物、炭酸カルシウムやハイドロタルサイトなどの炭酸塩、硫酸カルシウムなどの硫酸塩、珪酸カルシウム、クレー、マイカ、モンモリロナイトなどの珪酸塩、窒化アルミニウムなどの窒化物、グラファイトなどの炭素類などが例示することができる。
【0040】
また、無機フィラーの形状は特に限定はなく、繊維状、球状、板状、針状、粒状、層状などが例示されるが、ガスバリア性に優れることから層状の無機フィラーを用いることが好ましい。
【0041】
例えば、市販のバリア性コート剤(d)としては、サカタインクス(株)製「エコステージGB7」、東京インキ(株)製「LG−OXバリア剤」、三井化学(株)製「TAKELAC WPB−341」、三菱ガス化学(株)製「マクシーブ M−100」などが例示することができる。
【0042】
このようなバリア性コート剤(d)からなる(D)層の厚みは、本発明の目的が達成される限りにおいて特に制限はないが、ハンドリング性、ガスバリア性及び経済性に優れることから、0.2〜2.0μmであることが好ましく、より好ましくは0.2〜1.0μm、最も好ましくは0.4〜0.8μmである。
【0043】
本発明の積層体を構成する(B)層の発泡前の厚みは、本発明の目的が達成される限りにおいて特に制限はないが、発泡性に優れ、破損などの問題が小さいことから、20〜100μmの厚みであることが好ましく、経済性の観点から、20〜50μmの範囲が最も好適である。
【0044】
(A)層の厚みは、本発明の目的が達成される限りにおいて特に制限はないが、発泡外観に優れることから、60〜150μmの範囲が好ましく、より好ましくは、80〜120μm、更に好ましくは、80〜100μmである。
【0045】
本発明の積層体を構成する紙基材については特に限定はないが、高圧法低密度ポリエチレン(b)の発泡倍率を向上させることができるため、紙基材の坪量は150〜400g/mが好ましく、更に好ましくは、250〜350g/mである。
【0046】
このような紙基材に含まれる水分については特に制限はないが、高圧法低密度ポリエチレン(b)の発泡倍率が向上することから、20〜40g/mであることが好ましく、より好ましくは20〜35g/mである。
【0047】
本発明の積層体を得る手法として、紙基材にポリエチレン系樹脂(a)、高圧法低密度ポリエチレン(b)、ポリエチレン系樹脂(c)を押出ラミネート加工し、バリア性コート剤(d)を塗工した後、加熱発泡することにより得る手法、(B)層となる発泡体を紙へ接着させ、ポリエチレン系樹脂(a)、ポリエチレン系樹脂(c)を押出ラミネート加工した後、バリア性コート剤(d)を塗工することにより得る手法などが例示できる。加工が容易なことから、ポリエチレン系樹脂(a)をラミネート加工し、更に高圧法低密度ポリエチレン(b)とポリエチレン系樹脂(c)を共押出ラミネート加工し、バリア性コート剤(d)を塗工した後、加熱発泡することにより得る手法が好ましい。
【0048】
押出ラミネート成形法により積層体を得る手法として、シングルラミネート加工法、タンデムラミネート加工法、サンドウィッチラミネート加工法、共押出ラミネート加工法などの各種押出ラミネート加工法を例示することができる。押出ラミネート法における樹脂の温度は260〜350℃の範囲が好ましく、冷却ロールの表面温度は10〜50℃の範囲が好ましい。
【0049】
また、押出ラミネート加工において、ポリエチレン系樹脂を溶融状態で押出し層とした直後に、該層の基材接着面を含酸素気体又は含オゾン気体に曝し、基材と貼り合わせる手法を用いると、基材層との接着性に優れることから好ましい。含オゾン気体により熱可塑製樹脂と基材との接着性を向上させる場合は、オゾンガスの処理量としては、ダイより押出された熱可塑製樹脂よりなるフィルム1m当たり0.5mg以上のオゾンを吹き付けることが好ましい。
【0050】
加熱発泡により本発明の積層体を得る手法における押出ラミネート加工法は、熱可塑製樹脂層と基材層との接着性をさらに向上させるため、ポリエチレン系樹脂が発泡しない程度の温度、例えば30℃〜60℃の温度で10時間以上熱処理することができる。また必要に応じて、紙基材の接着面に対してコロナ処理、フレーム処理、プラズマ処理などの公知の表面処理を施してもよい。また、必要であれば紙基材にアンカーコート剤を塗布しても良い。
【0051】
このようなバリア性コート剤(d)を塗工する手法は、本発明の目的が達成される限りにおいて特に制限はなく、グラビアコート装置、バーコート装置、ドクターコート装置、ロールコート装置、ブレードコート装置、ナイフコート装置などを用いた手法が例示することができる。
【0052】
本発明の発泡積層体を得る手法として、発泡積層体の断熱性及び経済性に優れるため、ポリエチレン系樹脂と紙基材層を積層する前に、紙基材の片面、若しくは両面に水を塗布してもよい。
【0053】
水分を塗布する手法は、本発明の目的が達成される限りにおいて特に限定はなく、ロールコート装置、リップコート装置、スプレー装置、ダイコート装置、グラビア装置、ダンプニング装置などを用いた手法が例示することができる。水の塗布量が均一になるため、ダンプニング装置を用いた手法が好ましい。
【0054】
このようなダンプニング装置は、例えば、鈴木産業(株)より商品名「ハイローターS」が、ニッカ(株)より商品名「WEKOローターダンプニング」が、東機エレクトロニクス(株)より商品名「TSD−3000」が販売されている。特に、水の塗布ムラがなく品質が安定することから、「ハイローターS」を用いることが好ましい。
【0055】
本発明における水の塗布量は、本発明の目的が達成される限りにおいて特に限定はないが、高圧法低密度ポリエチレン(b)の発泡倍率が高くでき、かつ、紙基材とポリエチレン系樹脂(a)及び/または高圧法低密度ポリエチレン(b)との接着強度が低下しないことから、2〜30g/m以下が好ましく、2〜10g/m以下がより好ましい。
【0056】
加熱発泡により本発明の積層体を得る手法における加熱する熱源としては、本目的が達成される限りにおいて特に限定はなく、積層体及び成形した容器では熱風、電熱、電子線などが例示でき、積層体を成形した容器では高温の物体を内填して充填物の熱を利用するなどが例示できる。また、加熱方法は、オーブン内で回分式に行う手法、コンベアなどにより連続的に行う手法などにより行うことができる。
【0057】
更に、加熱温度、加熱時間などの条件は、本発明の目的が達成される限りにおいて特に限定はなく、一般的に、熱風を熱源とする場合は、加熱温度は高圧法低密度ポリエチレン(b)の融点以上150℃以下、風量は0.5〜2.0m/時、加熱時間は10秒〜6分間である。
【0058】
このような加熱条件としては、断熱性に優れるため、水の減少速度定数k(分−1)が0.60〜1.30の条件を満たすことが好ましく、より好ましくは0.65〜1.30、最も好ましくは0.80〜1.10である。
【0059】
この水の減少速度定数k(分−1)とは、高圧法低密度ポリエチレン(b)を発泡させる工程において、ある加熱時間t(分)における単位時間あたりの水分変化量dW/dtと、ある加熱時間t(分)における紙基材中の水分濃度Wとの関係式である、下式(1)で表される一次速度式における比例定数である。
【0060】
dW/dt=−kW (1)
この水の減少速度定数k(分−1)は、具体的には、紙基材/ポリエチレン系樹脂の順に積層され、ポリエチレン系樹脂の密度が940kg/m、ポリエチレン系樹脂の厚みが40μmである積層体の加熱時の重量変化を用いて求めることができる。紙基材/ポリエチレン系樹脂からなる積層体を加熱処理した時に得られるある時間t(分)における加熱後の単位面積当たりの重量減少量ΔW(g/m)と式(1)から導出される下式(2)を計算して得られるある時間t(分)における単位面積当たりの重量減少量ΔWt,cal(g/m)を各々0.5分毎に0.5分から6分まで算出した時に、下式(3)で表されるある時間t(分)における誤差εの0.5分から6分までの合計値が最少となるように水の減少速度定数k(分−1)を求める。
【0061】
ΔWt,cal=W[1−exp(−kt)] (2)
ε=[(ΔW−ΔWt,cal)/ΔW (3)
ここで、Wは紙基材/ポリエチレン系樹脂における加熱前の単位面積あたりの水分量(g/m)である。
【0062】
本発明の積層体について、断熱性に優れるため、発泡層の厚みの総計は700μm以上が好ましく、より好ましくは800μm以上、最も好ましくは900μm以上である。
【0063】
本発明の積層体は、少なくとも紙基材層に隣接して(A)層が配置され、もう一方の紙基材の面に、紙基材と隣接する発泡層である(B)層とこの(B)層と隣接する(C)層と(C)層より外面に(D)層が配置されることを特徴とするものであり、(C)層と(D)層は隣接していてもよく、隣接していなくてもよい。また、(A)層、紙基材、(B)層、(C)層及び(D)層の5成分のみからなるものだけでなく他の成分、例えば(E)層を含んでいてもよい。具体的には、(A)層/紙基材/(B)層/(C)層/(D)層、(A)層/紙基材/(B)層/(C)層/(A)層/(D)層、(A)層/紙基材/(B)層/(C)層/(D)層/(A)層、(A)層/(A)層/紙基材/(B)層/(C)層/(D)層、(B)層/(A)層/紙基材/(B)層/(C)層/(D)層、(A)層/紙基材/(B)層/(C)層/(D)層/(B)層、(C)層/(A)層/紙基材/(B)層/(C)層/(D)層、(A)層/紙基材/(B)層/(C)層/(E)層/(D)層、(A)層/紙基材/(B)層/(C)層/(D)層/(E)層、(E)層/(A)層/紙基材/(B)層/(C)層/(D)層、(A)層/紙基材/(B)層/(C)層/(E)層/(B)層/(D)層、(A)層/紙基材/(B)層/(C)層/(D)層/(E)層/(D)層、(B)層/(A)層/紙基材/(B)層/(C)層/(E)層/(A)層/(D)層などが例示される。
【0064】
(E)層としては、合成高分子重合体から形成される層や織布、不織布、金属箔、紙類、セロファン等が挙げられる。例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂、ナイロン6、ナイロン66などのポリアミド系樹脂、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、エチレン−エチルアクリレート共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、アイオノマー等のポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリブテン、アクリル系樹脂、ポリビニルアルコール、ポリメチルペンテン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリウレタン、セルロース系樹脂など合成高分子重合体から形成される層等が挙げられる。更に、これらの高分子重合体フィルム及びシートはさらにアルミ蒸着、アルミナ蒸着、二酸化珪素蒸着、アクリル処理されたものでもよい。また、これらの高分子重合体フィルム及びシートはさらにウレタン系インキ等を用い印刷されたものでもよい。金属箔としては、アルミ箔、銅箔などが例示でき、また、紙類としてはクラフト紙、上質紙、伸張紙、グラシン紙、カップ原紙や印画紙原紙等の板紙などが挙げられる。
【発明の効果】
【0065】
本発明の発泡積層体は、発泡層の厚みが大きく、良好な断熱性を示すとともにガスバリア性に優れる発泡積層体である。
【実施例】
【0066】
以下、実施例および比較例により本発明を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(1)密度
密度は、JIS K6922−1(2011年)に準拠して測定した。
(2)メルトマスフローレート(MFR)
MFRは、JIS K6922−1(2011年)に準拠して測定した。
(3)溶融温度
溶融温度は、JIS K6922−2(2010年)に準拠して測定した。
(4)加熱発泡
実施例により得られた積層体を10cm×20cmに切り出し円筒状に成形したサンプルを、所定の温度に加熱したギア式老化試験機(安田精機製作所製 No.102−SHF−77)中で熱風をあてながら所定の時間静置した後、取り出して空気中で室温まで冷却した。また、加熱時の風量について「AGING」ボタンの「HIGH」とした。
(5)紙基材の水分量
ポリエチレン系樹脂の積層前の紙基材について、カールフィッシャー法水分測定装置(三菱化学(株)製、商品名CA−05)を使用し測定した。測定温度は165℃である。
(6)発泡層厚み
実施例により得られた発泡体、及びブランクとして発泡させる前のラミネート積層体をサンプル取りし、光学顕微鏡により断面写真を撮影した。断面写真から発泡層の厚みを測定し、5箇所で測定した。
(7)酸素透過度
実施例により得られた発泡前の積層体を使用し、差圧式ガス透過試験機((株)東洋精機製作所製)を用いて、JIS K7126 A法に準拠して測定した。
【0067】
実施例1
(A)層の樹脂として、MFRが7g/10分、密度が940kg/mである高密度ポリエチレン(東ソー(株)製 商品名ペトロセン LW04−1)(A1)を、(B)層の樹脂として、MFRが13g/10分、密度が918kg/m、溶融温度が107℃である高圧法低密度ポリエチレン(東ソー(株)製 商品名ペトロセン 212)(B1)を、(C)層の樹脂として、MFRが3g/10分、密度が924kg/m、溶融温度が113℃である高圧法低密度ポリエチレン(東ソー(株)製 商品名ペトロセン 205)(C1)、(D)層のコート剤として、エコステージGB7(サカタインクス(株)製)(D1)を使用した。
【0068】
まず、(A1)を直径90mmφのスクリューを有する単軸押出ラミネーター(ムサシノキカイ(株)製)へ供給し、320℃の温度でTダイより押し出し、水分量が24.0g/mであり、坪量320g/mである紙基材上に引き取り速度が60m/分、エアギャップ長さが130mmで40μmの厚さになるよう押出ラミネート成形を行った。さらに、(B1)を直径90mmφのスクリューを有する単軸押出機(ムサシノキカイ(株)製)へ、(C1)を直径65mmφのスクリューを有する単軸押出機(ムサシノキカイ(株)製)へ供給し、320℃の温度、60m/分の引き取り速度、130mmのエアギャップ長さで、(B1)の厚みが60μm、(C1)の厚みが10μmとなるように押出した後、(C)層表面に83W・分/mの条件でコロナ処理を施した。得られた積層体を30cm×40cmに切り出し、コロナ処理を施した(C)層の表面に、バーコーターNo.6((株)安田精機製作所製)を用いて(D1)を乾燥後の膜厚が0.5μmとなるように積層し、ポリエチレン系樹脂(A1)、紙基材、高圧法低密度ポリエチレン(B1)、ポリエチレン系樹脂(C1)、バリア性コート剤(D1)の順に積層されてなる積層体を得た。得られた積層体を120℃、風量がHIGH、5分間加熱して発泡させ、発泡積層体を得た。得られた発泡前後の積層体について、発泡層の厚み及び酸素透過度を評価した。評価の結果を表1に示す。
【0069】
実施例2
(C)層のポリエチレン系樹脂として、MFRが20g/10分、密度が936kg/m、溶融温度が126℃であるエチレン・1−ブテン共重合体(東ソー(株)製 商品名ニポロン−L M70)(C2)を使用した以外は、実施例1と同様の手法により発泡前後の積層体を得た。得られた発泡前後の積層体について、発泡層の厚み及び酸素透過度を評価した。評価の結果を表1に示す。
【0070】
実施例3
(C)層のポリエチレン系樹脂として、MFRが8g/10分、密度が925kg/m、溶融温度が123℃であるエチレン・1−ブテン共重合体(東ソー(株)製 商品名ニポロン−L M60)(C3)を使用した以外は、実施例1と同様の手法により発泡前後の積層体を得た。得られた発泡前後の積層体について、発泡層の厚み及び酸素透過度を評価した。評価の結果を表1に示す。
【0071】
実施例4
(B)層の厚みが66μm、(C)層の厚みが4μmとなるように積層した以外は、実施例3と同様の手法により発泡前後の積層体を得た。得られた発泡前後の積層体について、発泡層の厚み及び酸素透過度を評価した。評価の結果を表1に示す。
【0072】
実施例5
(A)層の樹脂として、MFRが21g/10分、密度が952kg/mである高密度ポリエチレン(東ソー(株)製 商品名ニポロンハード 2000)を90重量%、MFRが1.6g/10分、密度が919kg/mである高圧法低密度ポリエチレン(東ソー(株)製 商品名ペトロセン 360)を10重量%になるよう配合し、単軸押出機(プラコー(株)製 口径50mm)にて溶融混練したエチレン系樹脂組成物(A2、MFR 16g/10分、密度 949kg/m)を使用した以外は、実施例3と同様の手法により発泡前後の積層体を得た。得られた発泡前後の積層体について、発泡層の厚み及び酸素透過度を評価した。評価の結果を表1に示す。
【0073】
実施例6
(A)層の樹脂として、MFRが20g/10分、密度が966kg/mである高密度ポリエチレン(東ソー(株)製 商品名ニポロンハード 1000)を90重量%、MFRが1.6g/10分、密度が919kg/mである高圧法低密度ポリエチレン(東ソー(株)製 商品名ペトロセン 360)を10重量%になるよう配合し、単軸押出機(プラコー(株)製 口径50mm)にて溶融混練したエチレン系樹脂組成物(A3、MFR 16g/10分、密度 961kg/m)を使用した以外は、実施例3と同様の手法により発泡前後の積層体を得た。得られた発泡前後の積層体について、発泡層の厚み及び酸素透過度を評価した。評価の結果を表1に示す。
【0074】
【表1】
比較例1
(C)層を積層しなかったこと以外は、実施例1と同様の手法により発泡前後の積層体を得た。得られた発泡前後の積層体について、発泡層の厚み及び酸素透過度を評価した。評価の結果を表2に示す。酸素透過度に劣っていた。
【0075】
比較例2
(C)層を積層しなかったこと以外は、実施例5と同様の手法により発泡前後の積層体を得た。得られた発泡前後の積層体について、発泡層の厚み及び酸素透過度を評価した。評価の結果を表2に示す。酸素透過度に劣っていた。
【0076】
比較例3
(C)層を積層しなかったこと以外は、実施例6と同様の手法により発泡前後の積層体を得た。得られた発泡前後の積層体について、発泡層の厚み及び酸素透過度を評価した。評価の結果を表2に示す。酸素透過度に劣っていた。
【0077】
比較例4
(D)層を積層しなかったこと以外は、実施例3と同様の手法により発泡前後の積層体を得た。得られた発泡前後の積層体について、発泡層の厚み及び酸素透過度を評価した。評価の結果を表2に示す。酸素透過度に劣っていた。
【0078】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明の発泡積層体は、コーヒー、スープなどの高温飲料用の紙容器、インスタントラーメンなどの即席食品用の容器等、断熱性を求められる容器に好適に使用される。