特許第6507782号(P6507782)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6507782
(24)【登録日】2019年4月12日
(45)【発行日】2019年5月8日
(54)【発明の名称】磁性微粒子及びその分散液の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01F 1/36 20060101AFI20190422BHJP
【FI】
   H01F1/36
【請求項の数】4
【全頁数】5
(21)【出願番号】特願2015-64958(P2015-64958)
(22)【出願日】2015年3月26日
(65)【公開番号】特開2016-184702(P2016-184702A)
(43)【公開日】2016年10月20日
【審査請求日】2018年2月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】山田 雅士
【審査官】 竹下 翔平
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−304470(JP,A)
【文献】 特開2010−132513(JP,A)
【文献】 特開2015−192995(JP,A)
【文献】 特開2010−208875(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 2/00−2/30
10/00−12/02
14/00−19/32
C08F 2/00−2/60
251/00−283/00
283/02−289/00
291/00−297/08
C08J 3/00−3/28
99/00
C08K 3/00−13/08
C08L 1/00−101/14
G01N 33/543
H01F 1/12−1/38
1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒子径が1から10μmの金属酸化物被覆微粒子に、表面にイオン性官能基がある磁性体を導入させることを特徴とする、磁性微粒子分散液の製造方法。
【請求項2】
粒子径が1から10μmの金属酸化物被覆微粒子に、表面にイオン性官能基がある磁性体を導入させることを特徴とする、磁性微粒子の製造方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の方法において、磁性体表面にカチオン性官能基がある方法。
【請求項4】
請求項1乃至いずれかに記載の方法において、金属酸化物が酸化鉄である方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁性微粒子及びその分散液の製造方法に関し、微粒子表面上の金属酸化物被覆に磁性体を導入させる、磁性微粒子及びその分散液の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、微粒子を磁性化する際には、例えば高分子微粒子を多孔質にしてその孔に磁性体をイオン的もしくは物理的に吸着させる、もしくは高分子微粒子と磁性体を乾式回転方法によって物理的に高分子微粒子表面に磁性体をコーティングする方法が用いられていた(特許文献1)。多孔質高分子微粒子を使用する場合には、孔の奥深くまで磁性体が浸透することによる磁気応答性の低下や、磁気応答性確保のために過剰な磁性体添加を原因とする比重増大による分散安定性の低下が起こる。また、高分子微粒子と磁性体を乾式回転方式にて実施する際には、高価な装置を必要として汎用性に欠けるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許4273315号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、微粒子に対して磁性化を行う際に、多孔質微粒子を用いなくても、また高価な装置を使わなくても磁性微粒子を製造することができる方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、鋭意検討の結果、以下の方法をとることで、上記問題点を解決しうることを見出し、本発明を完成した。
【0006】
即ち、本発明は以下のとおりである。
(1)金属酸化物被覆微粒子に、磁性体を導入させることを特徴とする、磁性微粒子分散液の製造方法。
(2)金属酸化物被覆微粒子に、磁性体を導入させることを特徴とする、磁性微粒子の製造方法。
(3)(1)または(2)に記載の方法において、磁性体表面にイオン性官能基がある方法。
(4)(1)乃至(3)いずれかに記載の方法において、磁性体表面にカチオン性官能基がある方法。
(5)(1)乃至(4)いずれかに記載の方法において、金属酸化物が酸化鉄である方法。
【0007】
以下に本発明を更に詳細に説明する。
【0008】
本発明で用いられる微粒子とは、ガラス、金属、セラミツクス等の無機物であってもよく、また高分子ポリマー等の有機物であってもよい。またそれらの微粒子は磁性体を含むものであってもよい。微粒子の粒子径は0.1から50μmが好ましく、さらには1から10μmが好ましい。また微粒子は細孔を有しても有さなくてもよいが、細孔を有さない表面が平滑なものであっても本発明の方法は適用できる点に特徴がある。なお微粒子の表面とは、微粒子の外表面ばかりでなく、細孔を有する微粒子の場合は細孔内表面を含めてもよい。
【0009】
本発明で用いられる微粒子表面は金属酸化物で被覆されている。この金属酸化物とは、FeO、Fe、Fe、CuO、CuO、AgO、AgO、Au、TiO、TiO、RuO、RuO等があげられ、微粒子表面の一部又は全部が金属酸化物で被覆されている。
【0010】
微粒子表面上への金属酸化物被覆は、例えば微粒子を分散させた懸濁液へ金属塩化物などの溶液を添加した後に、アルカリ処理することによって形成される。アルカリを添加する前には過剰な金属塩化物などを洗浄によりを除去することが好ましい。
【0011】
一方、本発明に用いられる磁性体は、その組成に特に限定はなく、例えば、フェライト、マグネタイト、マグヘマイト等があげられる。その粒子径は1から100nmが好ましい。磁性体は細孔を有しても有さなくてもよい。磁性体の表面とは、微粒子の外表面ばかりでなく、細孔を有する磁性体の場合は細孔内表面を含めてもよい。磁性体表面には、イオン性官能基(アニオン性官能基、又はカチオン性官能基)や脂肪酸などがあってもよく、それによって磁性体の液体中での分散性が向上し、微粒子との反応性が向上する。ここでイオン性官能基とは、アミノ基、イミノ基等のカチオン性官能基、又はスルホニル基、カルボキシル基、フェノール性水酸基、アルコール性水酸基等のアニオン性官能基があげられる。
【0012】
本発明では、このような金属酸化物被覆微粒子に磁性体を導入させて、磁性微粒子を製造する。このときの条件には特に限定はなく、例えば金属酸化物被覆微粒子に、磁性体を添加すればよい。この際に、磁性体が均一に分散(コロイド状分散状態を含む)する溶媒を用いることが好ましく、水溶液、有機溶媒から適宜選択したものを用いればよい。このようにして、磁性微粒子の分散液を得ることができ、そして磁性微粒子を得ることができる。
【0013】
なお磁性体表面にイオン性官能基がある場合には、そのイオン性官能基と微粒子を被覆している金属酸化物の電子の局在化又は電荷の偏りにより結合が生じると推測される。一方、磁性体表面にイオン性官能基がない場合や脂肪酸などがある場合は、物理的吸着により金属酸化物被覆微粒子と磁性体とが結合すると推測される。
【0014】
本発明ではこのようにして得られた磁性微粒子を金属酸化物で被覆し、再度本発明の原料微粒子として用いて、本発明の磁性微粒子の製造方法を繰り返して行うことができる。これは必要な回数繰り返して行うことができ、これによって微粒子の上に必要な量の磁性体をコートすることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明により、磁性微粒子及びその分散液を製造することができ、従来法のように微粒子と磁性体を乾式回転方式にてコーティングする際に必要な高価な装置を必要としない。また、用いられる微粒子が多孔質でなく平滑な表面を有する場合は、過剰な磁性体を必要としない。
【実施例】
【0016】
以下、実施例により本発明を詳細に説明する。しかし本発明はこれら実施例にのみ限定されるものではない。
【0017】
(実施例1)
ポリジビニルベンゼン微粒子5.0g(粒子径2.5μm、白色)、ポリビニルピロリドン1.2g、1N−塩酸水溶液6mLを純水160mLに回転数180rpmで分散させた。窒素雰囲気下、80℃に昇温した後に、尿素6g、塩化鉄(II)四水和物2g、塩化鉄(III)六水和物3gを添加し5時間反応させた。この微粒子分散液をろ過にて微粒子と反応液を分離した後に、再度微粒子を純水200mLに回転数180rpmで分散させた。窒素雰囲気下、80℃に昇温した後に、0.2N−水酸化ナトリウム水溶液を滴下し15時間反応させた。純水にて洗浄し、黄土色の酸化鉄被覆された微粒子5.75gを得た。
【0018】
このようにして得られた黄土色の酸化鉄被覆された微粒子1gを純水50mLに室温にて回転数100rpmで分散させた。この微粒子分散液に、表面にカチオン系分散剤を有する磁性体(材質:マグネタイト、粒子径:10nm、商品名:EMG607、フェローテック社製)0.3gを添加し、室温にて回転数100rpmで2時間反応させた。純水にて洗浄し、褐色の磁性化された微粒子懸濁液を12.6g得た(スラリー濃度10.1%、乾燥重量換算1.27g)。
【0019】
(比較例1)
塩化鉄およびアルカリ処理による酸化鉄被覆化工程を行わなかった。即ち、ポリジビニルベンゼン微粒子1.0g(粒子径2.5μm、白色)を純水50mLに室温にて回転数100rpmで分散させた。この微粒子分散液に、表面にカチオン系分散剤を有する磁性体(材質:マグネタイト、粒子径:10nm、商品名:EMG607、フェローテック社製)0.5gを添加し、室温にて回転数100rpmで2時間反応させた。純水にて洗浄したところ、磁性化はされておらず、原料のポリジビニルベンゼン微粒子(白色)1.0gを回収した。