(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6508003
(24)【登録日】2019年4月12日
(45)【発行日】2019年5月8日
(54)【発明の名称】テンプレートアセンブリの製造方法及びこのテンプレートアセンブリを用いた研磨方法並びにテンプレートアセンブリ
(51)【国際特許分類】
B24B 9/00 20060101AFI20190422BHJP
B24B 37/30 20120101ALI20190422BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20190422BHJP
【FI】
B24B9/00 602J
B24B37/30 A
H01L21/304 622H
H01L21/304 621D
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-218757(P2015-218757)
(22)【出願日】2015年11月6日
(65)【公開番号】特開2017-87332(P2017-87332A)
(43)【公開日】2017年5月25日
【審査請求日】2017年11月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000190149
【氏名又は名称】信越半導体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【弁理士】
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(72)【発明者】
【氏名】上野 淳一
(72)【発明者】
【氏名】石井 薫
【審査官】
山本 忠博
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−201534(JP,A)
【文献】
特開2014−184511(JP,A)
【文献】
特開2010−036288(JP,A)
【文献】
特開2006−303136(JP,A)
【文献】
特開2003−236743(JP,A)
【文献】
特開2010−238302(JP,A)
【文献】
米国特許第06068548(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 1/00−1/04,9/00−19/28,
B24B 3/00−3/60,21/00−39/06,
H01L 21/304,21/463
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウェーハを研磨する際に前記ウェーハを保持するためのテンプレートアセンブリの製造方法であって、
樹脂板からドーナツ形状に刳り貫かれたガイド材を準備する工程と、前記ガイド材のドーナツ形状に刳り貫かれた内周と外周の両方の刳り貫き端面のバリを除去するバリ除去工程と、前記ガイド材をバッキングパッドに接着して固定する工程とを有し、
前記バリ除去工程は、番手の異なるバリ除去手段によって多段加工で行われ、
前記バリ除去工程は、前記バリ除去手段として、砥石を用いた研削、又は砥粒を用いたバフ研磨によって行われ、粗研削工程と、該粗研削工程より高番手を用いる中粗研削工程と、該中粗研削工程より高番手を用いる仕上げ研削工程とを有することを特徴とするテンプレートアセンブリの製造方法。
【請求項2】
前記粗研削工程は番手が#240以下の砥石又は砥粒を用い、前記中粗研削工程は番手が#600以下の砥石又は砥粒を用い、前記仕上げ研削工程は番手が#1000以上の砥石又は砥粒を用いて行うことを特徴とする請求項1に記載のテンプレートアセンブリの製造方法。
【請求項3】
前記仕上げ研削工程において、前記ガイド材の内周と外周の両方の刳り貫き端面の表面粗さがRMS値で3μm以下となるように研削又は研磨することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のテンプレートアセンブリの製造方法。
【請求項4】
前記バリ除去工程は、
前記ガイド材の内周と外周の両方の刳り貫き端面が前記ガイド材の表面と直角になるように行うことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のテンプレートアセンブリの製造方法。
【請求項5】
定盤に貼り付けた研磨布上に研磨スラリーを供給しつつ、研磨ヘッドに貼り付けられたテンプレートアセンブリで保持したウェーハの表面を前記研磨布に摺接させて研磨するウェーハの研磨方法であって、
前記テンプレートアセンブリとして、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のテンプレートアセンブリの製造方法によって製造されたテンプレートアセンブリを用いることを特徴とする研磨方法。
【請求項6】
ウェーハを研磨する際に前記ウェーハを保持するためのテンプレートアセンブリであって、
バッキングパッドと、該バッキングパッドに接着して固定されたドーナツ形状のガイド材とを有し、該ガイド材のドーナツ形状の内周と外周の両方の端面は前記ガイド材の表面と直角であり、前記ガイド材の内周と外周の両方の端面の表面粗さがRMS値で3μm以下のものであることを特徴とするテンプレートアセンブリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テンプレートアセンブリの製造方法及びこのテンプレートアセンブリを用いた研磨方法並びにテンプレートアセンブリに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウェーハ(以下、単にウェーハともいう)の研磨は、研磨布(研磨クロス)が貼り付けられた定盤と、研磨布上に研磨スラリーを供給する研磨スラリー供給機構と、ウェーハを保持する研磨ヘッド等から構成された研磨装置を用いて行われる。
【0003】
研磨ヘッドは、バッキングパッドと、ガラスエポキシ材やポリカーボネート等の樹脂からなるガイド材が一体と成ったテンプレートアセンブリが貼り付けられた構成となっている。そして、ウェーハの研磨をする際には、テンプレートアセンブリにウェーハを水貼りで保持させた状態で研磨ヘッドに荷重を加え、研磨剤供給機構から研磨布上に研磨スラリーを供給するとともに、定盤と研磨ヘッドをそれぞれ回転させながらウェーハの表面を研磨布に摺接させることによりウェーハを研磨する(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
テンプレートアセンブリのガイド材は、バッキングパッドだけではウェーハを保持しきれないことから、回転方向のズレを防止するガイドとして機能している。
【0005】
このようなガイド材は、例えば、ガラスエポキシ等の樹脂板をルーター等によるフライス加工で、外径は研磨ヘッドの直径で、内径はウェーハ直径+0.5〜5mmの任意サイズのドーナツ形状に刳り貫いて作製される。
【0006】
このようなガイド材の加工時に生じたバリを除去する目的で、砥石による研削や、砥粒を用いたバフ研磨が行われている。そして、バリ除去後のガイド材をバッキングパッドに感熱接着等によりバッキングパッドに接着して固定することにより、テンプレートアセンブリが製造される。
【0007】
このようにして製造されたテンプレートアセンブリを研磨ヘッドに貼り付けて、研磨ヘッドにおけるウェーハの保持を行っている。
【0008】
バリの除去を行った直後の刳り貫き端面の表面粗さは粗いため、研削時の研削屑などの細かい汚れが表面に残ることがある。そのため、ウェーハの研磨加工時の研磨スラリーが表面に残り固着した状態になることがある。この場合、ウェーハ研磨を重ねて実施すると、ウェーハ端面とガイド端面が接触した際に、発塵したり、固着物が研磨中に脱落することが起こり、ウェーハ表面のキズやLPD(Light Point Defects)が悪化することが問題となる。
【0009】
このようなLPDの悪化はテンプレートアセンブリの使用初期に顕著に見られる。ガイド材のドーナツ形状に刳り貫かれた端面の内周側の粗さは加工バッチが進行するとウェーハ端面との接触により、表面粗さが改善する傾向に有り、その状態になるとキズやLPD悪化は軽減し安定したレベルに成る。また、ガイド材のドーナツ形状に刳り貫かれた端面の外周側は、加工バッチが進行すると、研磨スラリーがコーティングするように作用して発塵が抑制される。
【0010】
そのため、研磨ヘッドにテンプレートアセンブリを組み込んだ後、加工表面品質維持の目的からテンプレートアセンブリの立ち上げを行っている。このテンプレートアセンブリの立ち上げは、不織布研磨クロスが貼り付けられた定盤に、テンプレートアセンブリを装備した研磨ヘッドを押し当て、研磨ヘッドと定盤を回転させ、研磨スラリーを流しながらウェーハの研磨を行うものである。そして、このような立ち上げの終了後に、製品となるウェーハの研磨を開始する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2008−93811号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従来、上記のようなガイド材の端面部のバリの除去は、例えば、砥石による研削や、砥粒を用いたバフ研磨による一段の加工で行われていた。このような一段の加工によってバリの除去を行った場合、刳り貫き端面の表面粗さが悪いため、テンプレートアセンブリの立ち上げに長時間を要する。そのため、ロスタイムが出て生産性低下の原因となっていた。
【0013】
本発明は前述のような問題に鑑みてなされたもので、テンプレートアセンブリの立ち上げ時間を従来よりも短くすることができるテンプレートアセンブリの製造方法及びこのテンプレートアセンブリを用いた研磨方法並びにテンプレートアセンブリを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために、本発明によれば、ウェーハを研磨する際に前記ウェーハを保持するためのテンプレートアセンブリの製造方法であって、
樹脂板からドーナツ形状に刳り貫かれたガイド材を準備する工程と、前記ガイド材のドーナツ形状に刳り貫かれた内周と外周の両方の刳り貫き端面のバリを除去するバリ除去工程と、前記ガイド材をバッキングパッドに接着して固定する工程とを有し、
前記バリ除去工程は、番手の異なるバリ除去手段によって多段加工で行われることを特徴とするテンプレートアセンブリの製造方法を提供する。
【0015】
このようにすれば、多段加工でバリの除去を行うことによって、ガイド材のドーナツ形状に刳り貫かれた内周と外周の両方の刳り貫き端面の表面粗さが改善されるため、テンプレートアセンブリの立ち上げに要する時間を短くすることができるテンプレートアセンブリを製造することができる。
【0016】
このとき、前記バリ除去工程は、前記バリ除去手段として、砥石を用いた研削、又は砥粒を用いたバフ研磨によって行われ、粗研削工程と、該粗研削工程より高番手を用いる中粗研削工程と、該中粗研削工程より高番手を用いる仕上げ研削工程とを有することが好ましい。
【0017】
このようにすれば、刳り貫き端面の表面粗さの改善を効率的かつ確実に行うことができる。
【0018】
またこのとき、前記粗研削工程は番手が#240以下の砥石又は砥粒を用い、前記中粗研削工程は番手が#600以下の砥石又は砥粒を用い、前記仕上げ研削工程は番手が#1000以上の砥石又は砥粒を用いて行うことが好ましい。
【0019】
このようにすれば、刳り貫き端面の表面粗さを十分に小さくすることがより確実にできる。
【0020】
またこのとき、前記仕上げ研削工程において、前記ガイド材の内周と外周の両方の刳り貫き端面の表面粗さがRMS値で3μm以下となるように研削又は研磨することが好ましい。
【0021】
このように、刳り貫き端面の表面粗さがRMS値で3μm以下であれば、刳り貫き端面の表面粗さが十分に小さいものとなる。
【0022】
またこのとき、前記バリ除去工程は、
前記ガイド材の内周と外周の両方の刳り貫き端面が前記ガイド材の表面と直角になるように行うことが好ましい。
【0023】
このように、ガイド材の内周と外周の両方の刳り貫き端面がガイド材の表面と直角になるようにバリ除去工程を行うことが好適である。
【0024】
また、本発明によれば、定盤に貼り付けた研磨布上に研磨スラリーを供給しつつ、研磨ヘッドに貼り付けられたテンプレートアセンブリで保持したウェーハの表面を前記研磨布に摺接させて研磨するウェーハの研磨方法であって、
前記テンプレートアセンブリとして、上記した本発明のテンプレートアセンブリの製造方法によって製造されたテンプレートアセンブリを用いることを特徴とする研磨方法を提供する。
【0025】
このように、本発明のテンプレートアセンブリの製造方法によって製造されたテンプレートアセンブリを用いてウェーハの研磨を行うので、テンプレートアセンブリの立ち上げに要する時間を短くすることができ、生産性を向上することができる。
【0026】
また、本発明によれば、ウェーハを研磨する際に前記ウェーハを保持するためのテンプレートアセンブリであって、
バッキングパッドと、該バッキングパッドに接着して固定されたドーナツ形状に刳り貫かれたガイド材とを有し、該ガイド材のドーナツ形状に刳り貫かれた内周と外周の両方の刳り貫き端面は前記ガイド材の表面と直角であり、前記ガイド材の内周と外周の両方の刳り貫き端面の表面粗さがRMS値で3μm以下のものであることを特徴とするテンプレートアセンブリを提供する。
【0027】
このようなものであれば、刳り貫き端面の表面粗さの値が十分に小さいため、ウェーハの研磨の際のテンプレートアセンブリの立ち上げに要する時間を短くすることができるものとなる。
【発明の効果】
【0028】
本発明のテンプレートアセンブリの製造方法であれば、多段加工でバリの除去を行うことによって、ガイド材のドーナツ形状に刳り貫かれた内周と外周の両方の刳り貫き端面の表面粗さが改善されるため、テンプレートアセンブリの立ち上げに要する時間を短くすることができるテンプレートアセンブリを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】本発明のテンプレートアセンブリの製造方法の一例を示した工程図である。
【
図2】ドーナツ状に刳り貫かれたガイド材を説明するための概略図である。
【
図3】本発明のテンプレートアセンブリを示した概略図である。
【
図4】実施例及び比較例におけるテンプレートアセンブリの立ち上げ準備加工時間とLPD個数との関係を示したグラフである。
【
図5】実施例及び比較例のテンプレートアセンブリの立ち上げ準備加工時間が30分と120分の場合におけるLPD個数との関係を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明について実施の形態を説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
従来、ガイド材は樹脂であることから、ガイド材からの発塵や、固形物が研磨中に脱落することが起こり、ウェーハ表面のキズやLPDが悪化する問題があった。また、一段の加工によってバリの除去を行った場合、刳り貫き端面の表面粗さが悪いため、テンプレートアセンブリの立ち上げに長時間を要するという問題があった。
【0031】
そこで、本発明者らはこのような問題を解決すべく鋭意検討を重ねた。その結果、バリ除去工程を、番手の異なるバリ除去手段によって多段加工で行うことに想到した。このように、多段加工でバリの除去を行うことによって、ガイド材のドーナツ形状に刳り貫かれた内周と外周の両方の刳り貫き端面の表面粗さが改善されるため、テンプレートアセンブリの立ち上げに要する時間を短くすることができるテンプレートアセンブリを製造することができることを見出した。そして、これらを実施するための最良の形態について精査し、本発明を完成させた。
【0032】
まず、本発明のテンプレートアセンブリの製造方法について説明する。まず、
図2に示すように、樹脂板1からドーナツ形状に刳り貫かれたガイド材2を準備する工程を行う(
図1のSP1)。
【0033】
樹脂板1は、ガラスエポキシ材やポリカーボネート等の従来から用いられている樹脂からなる板材とすることができる。そして、このような樹脂板1から、例えば、ルーター等によるフライス加工でドーナツ形状に刳り貫いて、ガイド材2を形成することができる。この際に例えば、ガイド材2の外径を研磨ヘッドの直径とし、内径は保持するウェーハの直径の+0.5〜5mm程度の任意サイズとすることができる。
【0034】
次に、ガイド材2のドーナツ形状に刳り貫かれた内周と外周の両方の刳り貫き端面3のバリを除去するバリ除去工程を行う(
図1のSP2)。バリの除去は、番手の異なるバリ除去手段によって多段加工で行われる。
【0035】
このとき、バリ除去手段として、砥石を用いた研削、又は砥粒を用いたバフ研磨によって行うことができる。なお、バリ除去手段はこれに限定されず、刳り貫き端面3のバリを除去し、表面粗さを改善することができればどのようなものを用いてもよい。
【0036】
バリ除去工程は、ガイド材の内周と外周の両方の刳り貫き端面3がガイド材2の表面と直角になるように行うことが好適である。具体的には、例えば、バリ除去手段を刳り貫き端面3に直角に当てて行うことができる。
【0037】
このとき、
図1に示すようにバリ除去工程は、粗研削工程(
図1のSP3)と、該粗研削工程より高番手を用いる中粗研削工程(
図1のSP4)と、該中粗研削工程より高番手を用いる仕上げ研削工程(
図1のSP5)とを有することが好ましい。このようにすれば、刳り貫き端面3の表面粗さの改善を効率的かつ確実に行うことができる。
【0038】
このとき、粗研削工程(SP3)は番手が#240以下の砥石又は砥粒を用い、中粗研削工程(SP4)は番手が#600以下の砥石又は砥粒を用い、仕上げ研削工程(SP5)は番手が#1000以上の砥石又は砥粒を用いて行うことが好ましい。
【0039】
このように、バリの除去を3段階で行い、かつ1段ごとに使用する番手を高くすることで、刳り貫き端面3の表面粗さを十分に小さくすることがより効率的かつ確実にできる。これにより、テンプレートアセンブリの使用初期において顕著に生じていた、キズやLPD悪化を改善することができる。そのため、テンプレートアセンブリの立ち上げに要する時間を短くすることができる。
【0040】
またこのとき、仕上げ研削工程(SP5)において、ガイド材2の内周と外周の両方の刳り貫き端面3の表面粗さがRMS値で3μm以下となるように研削又は研磨することが好ましい。このように、刳り貫き端面3の表面粗さがRMS値で3μm以下であれば、刳り貫き端面3の表面粗さが十分に小さいものとなる。
【0041】
その後、
図3に示すように、ガイド材2をバッキングパッド4に接着して固定する工程を行って(
図1のSP6)、テンプレートアセンブリが製造される。
【0042】
具体的には例えば、感熱テープ5をガイド材2の片面に貼り付け、その後、バッキングパッド4に熱圧着により接着して固定することができる。
【0043】
このようにすれば、多段加工でバリの除去を行うことによって、ガイド材2のドーナツ形状に刳り貫かれた内周と外周の両方の刳り貫き端面3の表面粗さが改善されるため、当初より発塵が少ないので、テンプレートアセンブリ6の立ち上げに要する時間を短くすることができるテンプレートアセンブリ6を製造することができる。
【0044】
そして、このような本発明のテンプレートアセンブリの製造方法によって製造されたテンプレートアセンブリを用いてウェーハの研磨を行うことができる。
【0045】
すなわち、定盤に貼り付けた研磨布上に研磨スラリーを供給しつつ、研磨ヘッドに貼り付けられた、本発明の製造方法で製造されたテンプレートアセンブリで保持したウェーハの表面を研磨布に摺接させてウェーハの研磨を行う。
【0046】
本発明のテンプレートアセンブリの製造方法によって製造されたテンプレートアセンブリは、上述のように、刳り貫き端面の表面粗さが改善されたものである。そのため、このようなテンプレートアセンブリを用いて研磨を行うことにより、テンプレートアセンブリの立ち上げに要する時間を短くすることができ、生産性を向上することができる。
【0047】
またここで、本発明のテンプレートアセンブリについて説明する。
図3に示すように、本発明のテンプレートアセンブリ6は、バッキングパッド4と、該バッキングパッド4に接着して固定されたドーナツ形状に刳り貫かれたガイド材2とを有し、該ガイド材2のドーナツ形状に刳り貫かれた内周と外周の両方の刳り貫き端面3はガイド材2の表面と直角であり、ガイド材2の内周と外周の両方の刳り貫き端面3の表面粗さがRMS値で3μm以下のものである。このようなものであれば、刳り貫き端面3の表面粗さの値が十分に小さいため、当初より発塵が少ないので、ウェーハの研磨の際のテンプレートアセンブリ6の立ち上げに要する時間を短くすることができるものとなる。
【実施例】
【0048】
以下、本発明の実施例及び比較例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0049】
(実施例)
本発明のテンプレートアセンブリの製造方法に従って、テンプレートアセンブリの製造を行った。まず、ルーターを用いて、ガラスエポキシ板からドーナツ形状に刳り貫かれたガイド材を準備した。バリ除去工程は、番手が#240の砥石を用いた粗研削工程と、番手が#600の砥石を用いた中粗研削工程と、番手が#1000の砥石を用いた仕上げ研削工程による3段で、刳り貫き端面がガイド材の表面と直角になるように行った。
【0050】
仕上げ研削工程後のガイド材の刳り貫き端面の表面粗さを測定したところ、RMS値で2.9μmであった。
【0051】
その後、感熱テープをガイド材の片面に貼り付け、その後、バッキングパッドに熱圧着により接着して固定して、テンプレートアセンブリを製造した。
【0052】
このようにして製造したテンプレートアセンブリを研磨ヘッドに装備した。テンプレートアセンブリを装備した研磨ヘッドにブラシと水による簡易洗浄をバッキングパッドとガイド材に実施した後、テンプレートアセンブリの立ち上げ準備加工を実施した。
【0053】
テンプレートアセンブリの立ち上げ準備加工は、研磨スラリーにはKOHベースコロイダルシリカ入りの溶液を用い、研磨ヘッド回転20rpm、定盤回転19rpm、荷重を150g/cm
2で研磨スラリー流量2.5L/minのリサイクル方式で、直径450mmのシリコンウェーハを研磨することにより行った。
【0054】
テンプレートアセンブリの立ち上げ準備加工を30分行った後に、通常研磨加工で25枚のシリコンウェーハの研磨を行った。このときの研磨後のウェーハにおけるLPDの個数の評価(LPDは24nmUPの検出個数)を行った。LPDの個数の評価はパーティクルカウンター(KLA社製SP3)にて行った。
【0055】
研磨装置は不二越機械社製のSRED研磨機を用いて行った。上記の通常研磨は、二次研磨+仕上げ研磨で行った。なお、研磨条件は下記の表1の条件で行った。
【0056】
【表1】
【0057】
また、テンプレートアセンブリの立ち上げ準備加工の時間を変化させた場合について調査するために、テンプレートアセンブリの立ち上げ準備加工の時間を変化させて実施し、その後、上記と同様のLPDの測定を行い、後述する比較例の結果と共に
図4に示した。また、
図5には、テンプレートアセンブリの立ち上げ準備加工の時間が30分の場合と、120分の場合を抽出して記載した。
【0058】
(比較例)
実施例でテンプレートアセンブリを製造する際の中粗研削工程及び仕上げ研削工程を行わなかったこと以外は、実施例と同様にして、テンプレートアセンブリの製造を行った。
【0059】
比較例におけるバリ除去を行った後のガイド材の刳り貫き端面の表面粗さを測定したところ、RMS値で24.2μmであった。
【0060】
その後、製造したテンプレートアセンブリを研磨ヘッドへ装着し、実施例と同様にしてテンプレートアセンブリの立ち上げ準備加工及びシリコンウェーハの研磨を行った。そして、研磨を行ったウェーハのLPD個数の測定結果を、
図4、5に示した。
【0061】
その結果、
図4、5に示すように、比較例では、テンプレートアセンブリの立ち上げ準備加工時間が短い場合では、LPD個数が非常に多かった。特に、LPDを100pcs/wf以下にするためには比較例では、120分程度のテンプレートアセンブリの立ち上げ準備加工時間が必要であった。一方、実施例ではLPDを100pcs/wf以下にするための時間を30分に短縮することができた。
【0062】
すなわち、実施例における30分間のテンプレートアセンブリの立ち上げ準備加工を行ったテンプレートアセンブリを実装した研磨ヘッドは、比較例における120分間の立ち上げ準備加工を行ったものと同等なレベルであることが確認できた。
【0063】
このように、実施例では、テンプレートアセンブリの立ち上げに要する時間を、比較例から90分短縮することができた。これにより、90分が研磨装置を製品加工に向けることが可能となるため、生産性向上に繋がった。
【0064】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0065】
1…樹脂板、 2…ガイド材、 3…刳り貫き端面、 4…バッキングパッド、
5…感熱テープ、 6…テンプレートアセンブリ。