(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記蛍光体粒子が、波長400〜500nmに励起帯を有し、波長500〜700nmに発光ピークを有し、酸化物、窒化物、および、酸窒化物からなる群から選ばれる1以上の化合物である請求項1に記載の光変換部材。
ガラス粉末、蛍光体粒子、樹脂および有機溶媒を混練してスラリーとする混練工程と、得られたスラリーを所望の形状に成形する成形工程と、成形されたスラリーを焼成して光変換部材とする焼成工程と、を有する光変換部材の製造方法であって、
前記ガラス粉末が、酸化物基準のモル%表示で、Bi2O3 5〜35%、B2O3 22〜80%、ZnO 10〜48%、TeO2 4〜20%、および、Al2O3 0〜4%、を含有し、実質的にSiO2を含有せず、Bi2O3とZnOの合量が15%以上70%未満であるガラス組成物で形成されたものであり、かつ、前記焼成工程における焼成温度の最高温度が500℃以下であることを特徴とする光変換部材の製造方法。
前記ガラス粉末が、前記ガラス組成物となるように溶解温度が1000℃以下、かつ金坩堝を用いて溶解し、次いで、冷却して固化させた後、粉砕して得られるガラス粉末である請求項10または11に記載の光変換部材の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る、ガラス組成物(以下、「本ガラス組成物」ともいう)、ガラスの製造方法、光変換部材(以下、「本光変換部材」ともいう)、光変換部材の製造方法、照明光源および液晶表示装置について説明する。
【0022】
[ガラス組成物]
本発明のガラス組成物は、酸化物基準のモル%表示で、Bi
2O
3 5〜35%、B
2O
3 22〜80%、ZnO 10〜48%、Al
2O
3 0〜4%、を含有するガラス組成物であって、実質的にSiO
2を含有せず、Bi
2O
3とZnOの合量が15%以上70%未満であることを特徴とする。
【0023】
このガラス組成物は本質的に上記成分からなるが、本発明の目的を損なわない範囲でその他の成分を含有していてもよい。その他の成分を含有する場合は酸化物基準のモル%表示で10%以下が好ましく、5%以下がより好ましく、1%以下がさらに好ましく、1%未満が特に好ましい。以下、このガラス組成物の各成分について説明する。
【0024】
Bi
2O
3は、ガラスの化学的耐久性を下げることなく、Tgを低くする、かつ屈折率を高くする成分であり、必須の成分である。Bi
2O
3の含有量は、5〜35%である。Bi
2O
3が5%未満では、ガラス粉末のTgが高くなり好ましくない。
一方、35%超では、ガラスが不安定になり、結晶化しやすく焼結性を損ねるおそれがある。さらに、ガラスの吸収端が長波長側にシフトし、LED素子の青色光を吸収してしまう、また、屈折率が高くなり過ぎて蛍光体との屈折率差が大きくなり、LEDの発光効率が低くなるおそれがある。
【0025】
B
2O
3は、ガラスのネットワークフォーマーであり、ガラスを安定化できる成分であり、必須の成分である。B
2O
3の含有量は、22〜80%である。B
2O
3の含有量が22%未満では、ガラスが不安定になり、結晶化しやすく、また、焼結性を損ねるおそれがある。一方で、B
2O
3の含有量が80%超では、ガラスの化学的耐久性が低下するおそれがある。
【0026】
ZnOは、Tgを下げ、かつ屈折率を高くする成分であり、必須成分である。ZnOの含有量は、10〜48%である。ZnOの含有量が10%未満では、ガラス粉末のTgが高くなり好ましくない。一方で、ZnOの含有量が48%超では、ガラスが不安定になり、結晶化しやすく焼結性を損ねるおそれがある。
【0027】
Al
2O
3は化学的耐久性を向上させ、焼成時に蛍光体との反応を抑制する成分であるが、本発明においては必須成分ではない。Al
2O
3の含有量は、0〜4%が好ましい。Al
2O
3の含有量が4%超では、Tgが高くなり過ぎ、液相温度が上がるため、焼結性を損ねるおそれがある。Al
2O
3の含有量は、3%以下がより好ましい。
【0028】
なお、Bi
2O
3とZnOは、共にTgを下げ、屈折率を高くする成分であり、これらの合量は15%以上70%未満とする。Bi
2O
3とZnOの合量が、15%未満であるとガラス粉末のTgが高くなり好ましくない。Bi
2O
3とZnOの合量が、70%以上であるとガラスが不安定になり、結晶化しやすく焼結性を損ねるおそれがある。
【0029】
SiO
2は、ガラスの安定性を高くする成分であるがTgが高くなり過ぎ、液相温度が上がり、500℃以下の低温焼成において、焼結性を著しく損ねるおそれがあるため、本ガラス組成物においては、実質的に含有しないものである。ここで「実質的に含有しない」とは、その含有量が0.05%以下のことを意味する。
【0030】
以下、具体的なガラス組成に基づいて、本発明をより詳細に説明する。
〔第1の実施形態〕
[ガラス組成物]
本発明の第1の実施形態に係るガラス組成物は、酸化物基準のモル%表示で、Bi
2O
3 5〜35%、B
2O
3 22〜80%、ZnO 10〜48%、TeO
2 0〜20%、Al
2O
3 0〜4%、MgO 0〜20%、CaO 0〜20%、SrO 0〜20%、BaO 0〜20%、Li
2O 0〜10%、Na
2O 0〜10%、K
2O 0〜10%、CeO
2 0〜0.5%を含有するガラス組成物であって、実質的にSiO
2を含有せず、Bi
2O
3とZnOの合量が15%以上70%未満である。
【0031】
このガラス組成物は本質的に上記成分からなるが、本発明の目的を損なわない範囲でその他の成分を含有していてもよい。以下、このガラス組成物の各成分について説明する。
【0032】
Bi
2O
3は、ガラスの化学的耐久性を下げることなく、Tgを低くする、かつ屈折率を高くする成分であり、必須の成分である。Bi
2O
3の含有量は、5〜35%である。Bi
2O
3が5%未満では、ガラス粉末のTgが高くなり好ましくない。より好ましくは8%以上である。一方、35%超では、ガラスが不安定になり、結晶化しやすく焼結性を損ねるおそれがある。さらに、ガラスの吸収端が長波長側にシフトし、LED素子の青色光を吸収してしまう、また、屈折率が高くなり過ぎて蛍光体との屈折率差が大きくなり、LEDの発光効率が低くなるおそれがある。Bi
2O
3の含有量は、8〜32%がより好ましく、10〜30%がさらに好ましく、15〜27%が特に好ましい。
【0033】
B
2O
3は、ガラスのネットワークフォーマーであり、ガラスを安定化できる成分であり、必須の成分である。B
2O
3の含有量は、22〜80%である。B
2O
3の含有量が22%未満では、ガラスが不安定になり、結晶化しやすく、また、焼結性を損ねるおそれがある。一方で、B
2O
3の含有量が80%超では、ガラスの化学的耐久性が低下するおそれがある。B
2O
3の含有量は、25〜60%がより好ましく、25〜55%がさらに好ましく、25〜45%が特に好ましい。
【0034】
ZnOは、Tgを下げ、かつ屈折率を高くする成分であり、必須成分である。ZnOの含有量は、10〜48%である。ZnOの含有量が10%未満では、ガラス粉末のTgが高くなり好ましくない。一方で、ZnOの含有量が48%超では、ガラスが不安定になり、結晶化しやすく焼結性を損ねるおそれがある。ZnOの含有量は、15〜45%がより好ましく、20〜43%がさらに好ましく、25〜40%が特に好ましい。
【0035】
なお、Bi
2O
3とZnOは、共にTgを下げ、屈折率を高くする成分であり、これらの合量は15%以上70%未満とする。Bi
2O
3とZnOの合量が、15%未満であるとガラス粉末のTgが高くなり好ましくない。Bi
2O
3とZnOの合量が、70%以上であるとガラスが不安定になり、結晶化しやすく焼結性を損ねるおそれがある。これら合量は、20%以上65%以下がより好ましく、30〜60%がさらに好ましく、40〜55%が特に好ましい。
【0036】
TeO
2は、Tgを下げ、屈折率を高くし、耐候性を上げ、かつ液相温度を下げる成分であるが、本発明においては必須成分ではない。TeO
2の含有量は、0〜20%が好ましい。TeO
2の含有量が20%超では、焼結性を損ねる、もしくは焼成時に蛍光体と反応して蛍光体を失活させるおそれがある。TeO
2の含有量は、16%以下がより好ましく、14%以下がさらに好ましく、12%以下が特に好ましい。
【0037】
Al
2O
3は化学的耐久性を向上させ、焼成時に蛍光体との反応を抑制する成分であるが、本発明においては必須成分ではない。Al
2O
3の含有量は、0〜4%が好ましい。Al
2O
3の含有量が4%超では、Tgが高くなり過ぎる、液相温度を上げる、焼結性を損ねるおそれがある。Al
2O
3の含有量は、3%以下がより好ましく、2%以下がさらに好ましいい。
【0038】
CaO、SrO、MgOおよびBaOのアルカリ土類金属酸化物は、ガラスの安定性を高めるとともに、焼結性を向上させる成分であり、必須成分ではない。これらアルカリ土類金属酸化物成分の含有量はそれぞれ0〜20%、すなわち、MgOの含有量は0〜20%、CaOの含有量は0〜20%、SrOの含有量は0〜20%、BaOの含有量は0〜20%、であり、これらアルカリ土類金属酸化物の合計量は、0〜20%が好ましい。この合計量が、20%超では、ガラスの安定性が低下する、ガラスの吸収端が長波長側にシフトし、LED素子の青色光を吸収してしまうおそれがある。より好ましくは、合計量は16%以下である。また、アルカリ土類金属酸化物としては、BaOが好ましく、BaOの含有量は1〜15%がより好ましく、1〜10%がさらに好ましい。
【0039】
Li
2O、Na
2OおよびK
2Oのアルカリ金属酸化物は、Tgを下げる成分であり、この系では必須成分ではない。アルカリ金属酸化物のそれぞれの含有量は0〜10%、すなわち、Li
2Oの含有量が0〜10%、Na
2Oの含有量が0〜10%、K
2Oの含有量が0〜10%、であり、これらアルカリ金属酸化物の合計量は0〜10%が好ましい。上記合計量が10%超では、屈折率が低下し、ガラスの化学的耐久性が低下する、焼成時に蛍光体との反応を促進する、ガラスの吸収端が長波長側にシフトし、LED素子の青色光を吸収してしまうおそれがある。この合計量は、より好ましくは0〜8%、さらに好ましくは0〜5%である。特にTgを下げたいなどの理由がない場合、含有しない方が好ましい。
【0040】
CeO
2は、必須成分ではないが、ガラス中で酸化剤として機能するため、含有してもよい。CeO
2は、ガラス中のBi
2O
3の還元を防止できるため、この系のガラスを安定化できる。Bi
2O
3が還元されると、ガラスが着色するため、好ましくない。また、本ガラスを製造するにあたり、白金坩堝を使用する場合、Bi
2O
3が還元されると白金と反応して坩堝にダメージを与えるおそれがある。CeO
2の含有量は0〜0.5%が好ましい。含有量が0.5%超では、ガラスの吸収端が長波長側にシフトし、LED素子の青色光を吸収してしまうおそれがある。CeO
2の含有量は、0.2%以下がより好ましく、0.1%以下がさらに好ましい。
【0041】
SiO
2は、ガラスの安定性を高くする成分であるがTgが高くなり過ぎる、液相温度を上げる、500℃以下の低温焼成において、焼結性を著しく損ねるおそれがあるため、本ガラス組成物においては、実質的に含有しないものである。ここで「実質的に含有しない」とは、その含有量が0.05%以下のことを意味する。
【0042】
ガラス組成物は、内包泡を脱泡できるものをさらに含んでもよい。このようなものとしては、塩化銅のような酸化触媒性を持つ金属化合物や酸化アンチモンのような、価数変化により複数の酸化数を持てるような元素が挙げられる。これらの成分の含有量は、0〜15%が好ましい。
【0043】
また、ガラスの吸収端を長波長側にシフトするのを抑制するため、FやP
2O
5を含有させてもよい。Fを含有させる際には、上記ガラス組成物の成分を100モル%としたとき、その含有量は、外添で0.2〜10%が好ましく、0.5〜5%がより好ましい。また、P
2O
5を含有させる際には、上記ガラス組成物の成分を100モル%としたとき、その含有量は、外添で0.2〜10%が好ましく、0.5〜5%がより好ましい。これら両成分は、併用することもできる。
【0044】
[ガラスの製造方法]
次に、本ガラス組成物を使用してガラスが形成できるが、常法に従って、ガラス組成物
となるガラス原料を混合し、これを溶解した後、冷却、固化すればよい。後述する光変換部材を製造するためのガラス原料粉末としては、本製造方法により、一旦溶融後、固化して得られたガラスを、これも常法により粉砕して、所定の粒度として得られるガラス粉末を用いればよい。
【0045】
上記のガラスの製造方法により得られるガラスは、ガラスの液相温度LTが従来公知のガラスよりも低い傾向にあるので、ガラスを製造する際の溶解温度を低くすることが可能で、さらに、1000℃未満の加熱温度で溶解できれば、金坩堝を使用してガラス組成物中にBi成分に対してCeO
2等の酸化剤を含有させずにガラスを製造できる。一方、1000℃以上で加熱する場合には、金坩堝は使用できなくなるため、白金坩堝が使用される。
【0046】
ただし、本発明のガラス組成物のようにBi
2O
3系ガラスの製造においては、白金坩堝を使用する場合、CeO
2のように酸化剤を添加するか、溶融中に酸素バブリングをするなどして溶融中にBi
2O
3の還元を抑制しないと、白金と反応して坩堝にダメージを与えるおそれがある。一方で、Bi
2O
3系ガラスにCeO
2を添加すると、ガラスの透過スペクトルにおいて、吸収端が長波長側にシフトし、励起光波長まで吸収端がシフトすると、発光効率が低下するおそれがある。そのため、吸収端を考えるとBi
2O
3の含有量を低くする必要があるが、Bi
2O
3の含有量を低くすると、蛍光体の失活を十分抑制できるほど低いガラス転移点のガラスが得られなくなるため、そのバランスを考慮し上記ガラス組成物とした。
【0047】
なお、上記したように、ガラス中にCeO
2等の酸化剤を含有するとガラスの吸収端が長波長側にシフトし、LED素子の青色光を吸収してしまうおそれがあり、酸化剤の含有量はできるだけ少ない方が好ましい。ガラスの液相温度LTは1000℃未満が好ましく、950℃以下であることがより好ましく、900℃以下であることがさらに好ましい。
【0048】
本ガラス組成物から形成されるガラスは、そのガラス転移点Tg(以下、単に「Tg」ともいう)が比較的低いものとなり、特に、Tgが300〜450℃であることが好ましい。ガラス転移点が450℃超では、本光変換部材の製造工程中、焼成する際の温度が高くなり、使用する蛍光体の種類によっては蛍光体が失活したり、ガラスと蛍光体が反応したりして、光変換部材の量子変換収率が低下するおそれがある。量子変換収率の低下を抑制するためには、ガラスのTgは、好ましくは440℃以下、より好ましくは430℃以下、さらに好ましくは420℃以下である。
【0049】
一方で、ガラス転移点Tgが300℃未満では焼成温度が低く、ガラスが流動する温度よりも脱灰温度の方が高くなるため、光変換部材中のカーボン含有量が多くなり、光変換部材の量子変換収率が低下するおそれがある。また、光変換部材の透過率が低下し、光源の発光効率が低くなるおそれがある。ガラス転移点Tgは、より好ましくは340℃以上、さらに好ましくは380℃以上である。なお、本明細書においてガラスのTgは、DTA曲線から算出されるものである。
【0050】
また、ガラスの密度は3.5〜7.0g/cm
3であることが好ましい。この範囲を外れると後述する蛍光体との比重差が大きくなり、蛍光体粒子がガラス粉末中に均一に分散されなくなり、光変換部材にした場合に変換効率が低下するおそれがある。密度はより好ましくは3.7〜6.5g/cm
3、さらに好ましくは4.1〜6.0g/cm
3である。
【0051】
さらに、ガラスの屈折率は、波長633nmにおいて、1.7〜2.3であることが好ましい。この範囲を外れると蛍光体粒子との屈折率差が大きくなり、光変換部材にした場合に変換効率が低下するおそれがある。屈折率はより好ましくは1.75〜2.2、さらに好ましくは1.8〜2.15である。
【0052】
[光変換部材]
本光変換部材は、上記の通り、蛍光体粒子を分散して含有するガラスからなるものであり、ここで、本光変換部材を形成するガラスは、上記本ガラス組成物から形成されるものである。このような光変換部材は、光源から発せられた光の一部を透過し、残部の光の波長を変換し、透過する光と波長を変換した光とを合成することにより、所望の色度を有する光を外部へ照射可能とする。本光変換部材は、青色光源を白色に変換するための光変換部材として特に有用である。また、ここで使用する光源としてはLED発光素子が好ましい。
【0053】
本光変換部材に使用する蛍光体粒子は、光源の波長を変換できるものであれば、その種類は限定されず、例えば、光変換部材に使用される公知の蛍光体粒子が挙げられる。このような蛍光体粒子としては、例えば、酸化物、窒化物、酸窒化物、硫化物、酸硫化物、ハロゲン化物、アルミン酸塩化物またはハロリン酸塩化物等が挙げられる。上記した蛍光体の中でも、青色の光を赤、緑または黄色に変換するものが好ましく、波長400〜500nmに励起帯を有し、波長500〜700nmに発光ピーク(λ
p)を有するものがより好ましい。
【0054】
蛍光体は、光変換部材を通過する光が所望の色に変換されるのであれば、上記した化合物からなる群から選ばれる1以上の化合物を含有していればよく、具体的には、複数種の化合物を混合して含有していてもよいし、いずれか1つを単独で含有していてもよい。色設計の容易さの観点から、いずれか1つを単独で含有することが好ましい。
【0055】
また、量子変換収率を高くする観点から、蛍光体は酸化物またはアルミン酸塩化物が好ましい。酸化物またはアルミン酸塩化物の蛍光体としては、ガーネット系結晶がより好ましい。ガーネット系結晶は耐水性や耐熱性に優れ、後述する本発明の光変換部材の製造工程を経る場合、スラリー中における失活や焼成中の失活が生じにくい。上記したガーネット系結晶としては、イットリウムとアルミニウムの複合酸化物(Y
3Al
5O
12;以下、本明細書ではYAGと略す)や、ルテチウムとアルミニウムの複合酸化物(Lu
3Al
5O
12;以下、本明細書ではLAGと略す)が挙げられる。
【0056】
また、合成光に赤色成分を含有させる場合には、青色光を赤色に変換可能な蛍光体として(Ca(Sr)AlSiN
3)等のCASN系結晶やSiAlON系結晶からなる蛍光体を含有させることが好ましい。
【0057】
蛍光体粒子の50%粒子直径(以下、本明細書では50%粒径と略す)D
50は、1〜30μmが好ましい。蛍光体粒子の50%粒径D
50が1μm未満であると、蛍光体粒子の比表面積が大きくなり、失活しやすくなるおそれがある。この50%粒径D
50は、より好ましくは3μm以上、さらに好ましくは5μm以上、特に好ましくは7μm以上である。一方、蛍光体粒子の50%粒径D
50が30μm超では、光変換部材中で分散性が悪くなり、光の変換効率が悪くなると共に、色度ムラが生じるおそれがある。そのため、50%粒径D
50は、より好ましくは20μm以下、さらに好ましくは15μm以下である。なお、本明細書において、50%粒径D
50は、レーザ回折式粒度分布測定により得られた粒度分布から、体積基準での積算%における50%値として算出した値である。
【0058】
本光変換部材の量子変換収率は80%以上が好ましい。量子変換収率が80%未満では、所望の色を得るために、光変換部材の厚みを大きくしなければならない。厚みが大きくなると、光変換部材の透過率が低下するおそれがある。光変換部材の量子変換収率は、より好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上である。なお、上記量子変換収率は、励起光を照射した時の、発光としてサンプルから放出されたフォトン数と、サンプルにより吸収されたフォトン数との比率で表される。上記フォトン数は、積分球法で測定する。
【0059】
本光変換部材は、量子変換収率が高く保持できるので、光変換部材を薄くしても、上記した光変換部材の機能を発揮できる。光変換部材の厚みは50〜500μmが好ましい。光変換部材の厚みを50μm以上とすれば、光変換部材のハンドリングが容易になり、特に所望の大きさにカットする際に光変換部材の割れを抑制できる。光変換部材の厚みは、より好ましくは80μm以上、さらに好ましくは100μm以上、特に好ましくは120μm以上である。光変換部材の厚みを500μm以下とすれば、光変換部材を透過する全光束量を高く維持できる。光変換部材の厚みは、好ましくは400μm以下、さらに好ましくは300μm以下、特に好ましくは250μm以下である。
【0060】
なお、用いる蛍光体が著しく高価な場合、光変換部材に含有させる蛍光体量を極力抑えたいため、全光束量を犠牲にしても光変換部材の厚みを大きくして光変換効率を担保させる可能性があり、その場合、全光束量と光変換効率のバランスをとって、光変換部材の厚みを250〜500μmの間で選択することがある。
【0061】
本光変換部材の平面形状は特に限定されない。例えば、光変換部材が光源と接して使用される場合、光源からの光の漏れを防ぐために、光変換部材の形状は光源の形状に合わせて製造される。光源は矩形状または円状が一般的であるため、光変換部材も矩形状または円状が好ましい。また、本光変換部材は板状、すなわち断面形状は矩形状が好ましい。光変換部材内で板厚にばらつきが小さいほど、面内の色のばらつきを小さくできるため好ましい。
【0062】
本光変換部材は基本的に蛍光体粒子を分散して含有するガラスからなる。ガラスと蛍光体粒子の混合割合は、特に限定されないが、光変換部材中に、体積分率で、蛍光体粒子を1〜40%、ガラスを60〜99%が好ましい。
【0063】
蛍光体粒子を1%以上かつガラスを99%以下で含有すれば、量子変換収率を高くでき、入射光を変換でき、所望の色の光が得られる。蛍光体粒子の体積分率は、より好ましくは5%以上、さらに好ましくは7%以上、特に好ましくは10%以上である。ガラスの体積分率は、より好ましくは95%以下、さらに好ましくは93%以下、特に好ましくは90%以下である。
【0064】
蛍光体粒子の体積分率が40%超で、ガラスの体積分率が60%未満では、蛍光体粒子とガラスの混合体の焼結性を損ね、さらに光変換部材の透過率が低くなるおそれがある。また、変換される蛍光色の光が多くなり、所望の白色光が得られないおそれがある。蛍光体粒子の体積分率は、より好ましくは35%以下、さらに好ましくは30%以下、特に好ましくは25%以下である。ガラスの体積分率は、より好ましくは65%以上、さらに好ましくは70%以上、特に好ましくは75%以上である。
【0065】
本光変換部材は、さらに、該ガラス中に、所定の耐熱フィラーが分散して含有してもよい。このように耐熱フィラーを含有させることで、焼成時における収縮を抑制し、蛍光体の分散状態を均一化できる。このようにして蛍光体を均一に分散できると、光変換部材から外部に照射される合成光の色バラつきを低減でき、安定した所望の色味を有する光を得ることができる。
【0066】
本光変換部材に耐熱フィラーを使用する場合は、光変換部材の製造時における焼成温度に対して耐熱性を有するものであればよく、例えば、アルミナ、ジルコニア、マグネシア等が挙げられ、これらのうち少なくとも1種以上を含有していればよい。
【0067】
このように、ガラス中に蛍光体粒子と耐熱フィラーとを分散して構成する場合には、光変換部材の焼成時における収縮を十分に抑制するために、ガラス、蛍光体粒子および耐熱フィラーを所定の割合で含有するようにする。例えば、これらの合計量を100%としたとき、体積分率で、耐熱フィラーを3〜30%含有することが好ましい。この含有率が3%未満であると十分に収縮を抑制できなくなるおそれがあり、30%を超えると光変換部材の光の透過率が低下して光源の利用効率が低下するおそれがある。
【0068】
このとき、体積分率で、ガラスを50〜96%、蛍光体粒子を1〜40%、含有することが好ましい。このような含有量とすることで、光変換部材として、光源からの光の透過率、蛍光体粒子の光変換量、をバランスよく製造でき、かつ、製造時の収縮を抑制して、光変換色度のムラが生じることを抑制できる。
【0069】
上記のように耐熱フィラーを含有させると、焼成時の収縮を抑制して、面内の光変換色度のばらつきを抑えることができ、色度ムラの少ない光を得ることができる。さらに、光変換部材の透過率を高く維持できるため、光束量を維持しつつ、発光変換効率を良好なものとできる。
【0070】
[光変換部材の製造方法]
本光変換部材は、ガラス粉末および蛍光体粒子、さらに必要に応じて耐熱フィラーの混合粉末の焼結体からなることが好ましい。また、本光変換部材は、該混合粉末と樹脂および有機溶媒を混練して得られるスラリーを焼成した焼結体からなることがより好ましく、上記スラリーを透明樹脂に塗工し、乾燥させて得られるグリーンシートを焼結して得られるガラスシートからなることがさらに好ましい。なお、本明細書において上記樹脂および有機溶媒の混合物をビヒクルということもある。
【0071】
このように、焼結体として本光変換部材を製造するには、ガラス粉末、蛍光体粒子、樹脂および有機溶媒、さらに必要に応じて耐熱フィラーを混練してスラリーとする混練工程と、得られたスラリーを所望の形状に成形する成形工程と、成形されたスラリーを焼成して光変換部材とする焼成工程と、を順次行えばよい。
【0072】
(混練工程)
本発明における混練工程は、ガラス粉末、蛍光体粒子、樹脂および有機溶媒、さらに必要に応じて耐熱フィラーを混練してスラリーとするもので、これら原料を均一に混練できればよい。この混練にあたっては、公知の混練方法、例えば、ディゾルバー、ホモミキサー、ニーダー、ロールミル、サンドミル、アトライター、ボールミル、バイブレーターミル、高速インペラーミル、超音波ホモジナイザー、振とう機等を使用した混練を行えばよい。なお、光変換部材に耐熱フィラーを含有させる場合には、上記混練工程において、原料成分として耐熱フィラーも同時に混合してスラリーを得ればよい。
【0073】
ここで使用するガラス粉末は、上記したガラスの組成を満足するように公知のガラス粉末の複数種を混合して調製してもよいし、所定の熱特性を有するように成分を調合して混合し、電気炉などで溶融し、急冷して所定の組成を有するガラスとして製造しておき、これを粉砕し、分級して調製してもよい。
【0074】
このときガラス粉末の50%粒径D
50は2.0μm未満が好ましい。50%粒径D
50が2.0μm以上では、蛍光体粒子や耐熱フィラーがガラス粉末中に均一に分散されなくなり、光変換部材にした場合に光変換効率が低下したり、焼成時の収縮量が大きくなったりするおそれがある。50%粒径D
50は、より好ましくは1.5μm以下、さらに好ましくは1.4μm以下である。
【0075】
また、ガラス粉末の最大粒径D
maxは、30μm以下が好ましい。最大粒径D
maxが30μm超では、蛍光体粒子や耐熱フィラーがガラス粉末中に均一に分散されにくくなり、光変換部材を製造した場合に、蛍光体の光変換効率が低下したり、焼成時の収縮量が大きくなったりするおそれがある。D
maxは、より好ましくは20μm以下、さらに好ましくは15μm以下である。なお、本明細書において、D
maxはレーザ回折式粒度分布測定により算出した最大粒径の値である。
【0076】
また、蛍光体粒子および耐熱フィラーは、上記光変換部材において説明した粒子である。
【0077】
そして、上記樹脂としては、エチルセルロース、ニトロセルロース、アクリル樹脂、酢酸ビニル、ブチラール樹脂、メラミン樹脂、アルキッド樹脂、ロジン樹脂などを使用できる。また、上記有機溶媒としては、芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、アルコール、エーテル、ケトン、エステル類などを使用できる。なお、グリーンシートの強度向上のためには、ビヒクルに、ブチラール樹脂、メラミン樹脂、アルキッド樹脂、ロジン樹脂などを含有することが好ましい。
【0078】
上記成分を混練する際、光変換部材中における蛍光体とガラスとの混合割合が上記説明の範囲となるように、蛍光体粒子およびガラス粉末を混合すればよい。具体的には、蛍光体粒子およびガラス粉末の合計量を100%としたとき、混合粉末中の各成分の含有量は、体積分率で、蛍光体粒子が1〜40%、ガラス粉末が60〜99%とするのが好ましい。
【0079】
なお、耐熱フィラーを混合する場合には、蛍光体粒子、耐熱フィラーおよびガラス粉末の合計量を100%としたとき、混合粉末中の各成分の含有量は、体積分率で、蛍光体粒子が1〜40%、耐熱フィラーが3〜30%、ガラス粉末が50〜96%とするのが好ましい。
【0080】
蛍光体粒子を1%以上、ガラス粉末を96%以下で含有すれば、量子変換収率を高くでき、入射光を効率的に変換でき、所望の色の光が得られる。
【0081】
蛍光体粒子の体積分率が40%超で、ガラス粉末の体積分率が50%未満では、蛍光体粒子とガラス粉末の混合体の焼結性を損ね、さらに光変換部材の透過率が低くなるおそれがある。また、変換される蛍光色の光が多くなり、所望の色の光が得られないおそれがある。
【0082】
また、耐熱フィラーの体積分率が3%以上であると、光変換部材の焼成時の収縮を効率的に抑制でき、蛍光体粒子が均一に分散している状態を保持でき好ましい。また、耐熱フィラーの体積分率が30%超となると、混合粉末の焼結性を損ね、さらに光変換部材の透過率が低くなるおそれがある。
【0083】
樹脂および有機溶剤からなるビヒクルは、上記混合粉末に対して、次の成形工程で所定形状に成形可能な程度の粘度となる量を混合してスラリーとすればよい。
【0084】
(成形工程)
本発明における成形工程は、上記混練工程で得られたスラリーを、所望の形状に成形するものである。成形方法としては、所望の形状が付与できれば、特に制限されるものではなく、例えば、プレス成形法、ロール成形法、ドクターブレード成形法などの公知の方法が挙げられる。ドクターブレード成形法で得られるグリーンシートは、均一な膜厚の光変換部材を大面積で効率よく製造できるため好ましい。
【0085】
グリーンシートは、例えば、以下の工程で製造できる。ガラス粉末、蛍光体粒子および耐熱フィラーをビヒクルに混練し、脱泡してスラリーを得る。得られたスラリーをドクターブレード法により、透明樹脂上に塗工し、乾燥する。乾燥後、所望の大きさに切り出し、透明樹脂を剥がして、グリーンシート(混練物)を得る。さらに、これらをプレスし、積層体にすることで、所望の厚みの成形体を確保できる。
【0086】
ここで、スラリーを塗工する透明樹脂としては、剥離性を有するものであれば、特に限定されない。ここで使用する透明樹脂は、均一な膜厚のグリーンシートが得られるように、均一な厚さの透明フィルムを使用することが好ましく、このような透明フィルムとしては、例えば、PETフィルムなどが挙げられる。
【0087】
(焼成工程)
本発明の焼成工程は、成形工程で得られた成形したスラリーを焼成することで焼結させ、光変換部材とする工程である。この焼成工程における焼成は、混合粉末を焼結させて、蛍光体粒子と耐熱フィラーとを分散して含有するガラスを得るものであり、公知の焼成方法によりガラス体を製造すればよい。
【0088】
焼成工程は焼成してガラス体とできれば、その条件は特に限定されないが、焼成雰囲気は10
3Pa以下の減圧雰囲気もしくは酸素濃度が1〜15%の雰囲気が好ましい。また、本工程における焼成温度の最高温度を500℃以下とするもので、この最高温度は400〜490℃の範囲が好ましい。また、焼成時間は1〜10時間の範囲が好ましい。本発明の光変換部材の製造方法において、上記範囲外で実施すると、光変換部材の量子変換収率が低下するおそれがある。
【0089】
[照明光源]
本発明の照明光源は、上記本光変換部材と、該光変換部材を通して外部へ光を照射可能な光源と、から構成される。
【0090】
上記のようにして得られた光変換部材と光源とを組合せることで、所望の色を発する照明光源として利用できる。光変換部材は、光源と接して配置されると、光の漏れを防げるため好ましい。また、光源としては、LED発光素子が好ましく、青色LED発光素子がより好ましい。LED発光素子を光源として使用すれば、LED照明光源として利用できる。
【0091】
[液晶表示装置]
さらに、上記した光変換部材を光源と組み合わせて、液晶表示装置を構成する場合を説明する。すなわち、本実施形態における液晶表示装置は、液晶表示パネルと、該液晶表示パネルを照明するバックライトと、を備えた液晶表示装置であって、バックライトとして、上記光変換部材および該光変換部材を通して外部に光を照射可能な光源からなる照明光源を有することを特徴とする。
【0092】
〈バックライト〉
本実施形態で使用するバックライトは、上記説明した光変換部材と、該光変換部材を通して外部へ光を照射可能な光源と、から構成される。
上記のようにして得られた光変換部材と光源とを組合せることで、高輝度かつ広範囲な色再現性が得られる液晶表示装置用のバックライトとして好適に利用できる。光変換部材は、光源と接して配置されると、光の漏れを防げるため好ましい。また、光源としては、LED発光素子が好ましく、青色LED発光素子がより好ましく、バックライトは白色光を照射可能とするものが好ましい。
【0093】
〈液晶表示パネル〉
本実施形態で使用する液晶表示パネルは、公知の液晶表示パネルであれば特に限定されずに使用できる。液晶表示パネルは、偏光フィルタを備える2枚のガラス板の間に配向膜を設け、電圧をかけることによって液晶分子の向きを変えて、光の透過率を増減させることで像を表示する。
【0094】
このように構成される液晶表示装置では、バックライトに本発明の照明光源を用いるため、例えば、光の3原色による色域が広い明るい白色光で、液晶表示パネルを照明することができる。よって、液晶表示パネルの表示画面において輝度の高い純白色を得ることができ、色再現性が良好で表示画面の品質の向上を図ることができる。
【0095】
〔第2の実施形態〕
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。この実施形態は、ガラス転移点の低いガラスが得られるとともに、さらに耐候性も良好なものとなるガラス組成物である。
【0096】
すなわち、光変換部材は、その使用用途、使用場所等により外部環境の影響を受けにくくしたり、また、光源の高輝度化に伴い、光変換部材が受ける環境温度が100℃を超えることも増えてきており、これに水の影響が伴うと発光効率の著しい低下を招いてしまう。一般的には、耐熱性が比較的低い蛍光体には低軟化点ガラスが用いられるが、低軟化点ガラスは耐候性が悪くなる傾向にあるため、低温焼成可能で、かつ、耐候性の良好なガラスが求められていた。
【0097】
本実施形態に係るガラス組成物は、このような要求を満たすもので、酸化物基準のモル%表示で、Bi
2O
3 5〜35%、B
2O
3 22〜43%、ZnO 10〜48%、TeO
2 1〜20%、Al
2O
3 0〜4%、MgO 0〜10%、CaO 0〜10%、SrO 0〜10%、BaO 0〜5%、Li
2O 0〜5%、Na
2O 0〜5%、K
2O 0〜5%、TiO
2 0〜5%、ZrO
2 0〜5%、Nb
2O
5 0〜5%、を含有するガラス組成物であって、実質的にSiO
2を含有せず、Bi
2O
3とZnOの合量が15%以上70%未満である。
【0098】
このガラス組成物は本質的に上記成分からなるが、本発明の目的を損なわない範囲でその他の成分を含有していてもよい。以下、このガラス組成物の各成分について第1の実施形態とは異なる部分を中心に説明する。
【0099】
B
2O
3は、第1の実施形態と同様に必須の成分であるが、本実施形態においては、その含有量は22〜43%であり、その上限値が第1の実施形態よりも低くなっている。これは、B
2O
3の含有量が43%超では、ガラスの化学的耐久性のみならず耐候性まで低下するおそれがあるためである。本実施形態において、B
2O
3の含有量は、25〜40%がより好ましく、25〜38%がさらに好ましい。
【0100】
TeO
2は、第1の実施形態とは異なり必須の成分である。本実施形態においては、TeO
2の含有量は1〜20%であり、その下限値が第1の実施形態よりも高くなっている。これは、TeO
2の含有量が1%未満では、ガラスの耐候性が低下するおそれがあるためである。本実施形態において、TeO
2の含有量は、2〜16%がより好ましく、3〜12%がさらに好ましい。
【0101】
MgO、CaO、SrOのアルカリ土類金属酸化物は、第1の実施形態と同様に必須の成分ではない。本実施形態においては、MgO、CaO、SrOの含有量は、それぞれ0〜10%であり、その上限値が第1の実施形態よりも低くなっている。これは、これら成分の含有量が10%超では、ガラスの耐候性が低下するおそれがあるためである。一方で、BaOは、本実施形態のようにBi
2O
3およびB
2O
3を含有するガラスにおいて、高温多湿環境下で水分との反応を促進させる触媒となり、耐候性を著しく低下させるおそれがある成分であるため、BaOの含有量は0〜5%である。
【0102】
これらのアルカリ土類金属酸化物の合計量は、0〜10%が好ましい。この合計量が10%超では、ガラスの耐候性が低下してしまうおそれがある。この合計量は、8%以下が好ましい。また、アルカリ金属酸化物を使用する場合には、MgOを用いることが好ましく、その含有量は1〜6%が好ましい。
【0103】
Li
2O、Na
2O、K
2Oは、第1の実施形態と同様に必須成分ではない。本実施形態においては、Li
2O、Na
2O、K
2Oの含有量は、それぞれ0〜5%であり、またそれらの合計量が0〜5%が好ましく、その上限値が第1の実施形態よりも低くなっている。これは、これら成分の含有量および合計量が、5%超では、ガラスの耐候性が低下するおそれがあるためである。これら成分の含有量および合計量は、それぞれ0〜3%が好ましく、0〜1%がより好ましい。
【0104】
TiO
2、ZrO
2およびNb
2O
5は、屈折率を上げ、ガラスの耐候性を上昇させるとともに、化学的耐久性を上げる成分であり、この系では必須成分ではない。これらの成分は、TiO
2 0〜5%、ZrO
2 0〜5%、Nb
2O
5 0〜5%、であり、その合量が0〜5%が好ましい。これら成分の合量が5%超では、ガラスの安定性が低下し、Tgが高くなりすぎ、ガラスの吸収端が長波長側にシフトし、LED素子の青色光を吸収してしまうおそれがある。この合量は、好ましくは4%以下、より好ましくは3%以下である。
【0105】
なお、本明細書におけるガラスの耐候性は、以下に示す方法により算出したヘイズ値を指標として評価した。すなわち、厚さ1mm、大きさ約30mm×30mmのガラス板の両面を酸化セリウムで鏡面研磨し、炭酸カルシウムおよび中性洗剤で洗浄してガラス基板を得た。得られたガラス基板を高度加速寿命試験装置に入れて、120℃、0.2MPaの水蒸気雰囲気に24時間放置した後、ヘイズ測定装置を使用して、C光源にて測定したヘイズ値を耐候性の指標とした。
【0106】
本実施形態のガラスの耐候性はヘイズ値が10%以下であることが好ましい。ヘイズ値が10%超では、ガラスの全光線透過率が低下し、光変換部材にしたときに発光効率が低下してしまうか、光変換部材中に分散された蛍光体に水分が到達して反応を起こし、量子変換収率が低下してしまうおそれがある。このヘイズ値は、より好ましくは5%以下、さらに好ましくは3%以下、特に好ましくは1%以下である。なお、高度加速寿命試験装置に入れる前のガラス板におけるヘイズ値は、0.1〜0.3%が典型的である。
【実施例】
【0107】
以下、実施例および比較例に基づき本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定して解釈されるものではない。本発明の光変換部材用ガラスの実施例(例1−1〜
1〜5、1−9〜1−3
0)、参考例(例1−6〜1−8、1−44〜1−46)および比較例(例1−31〜1−43)を表1〜5に、本発明の光変換部材の実施例(例2−1〜
2−10、2−13〜2−2
4)、比較例(例2−25、2−28〜2−34、2−36〜2−40)および参考例(例2−26、2−27、2−35
、2−11〜2−12、2−41〜2−45)を表6〜11にそれぞれ示す。なお、表1〜5の「−」は未評価であることを示す。
【0108】
[例1:ガラスの製造]
酸化物基準のモル%表記で、それぞれ表1〜5で表示した組成になるように各成分の原料を調合し、ガラス原料を混合しガラス組成物とした。なお、例1−45、46はガラス100モル%に対し、外掛けで2モル%それぞれFを含有させた。これを、例1−1〜1−3、1−31および1−34〜1−39は白金坩堝中で1200℃に、例1−4〜1−30、1−32,1−33および1−40〜1−46は金坩堝で950℃に、それぞれ電気炉で加熱、溶融して、融液の一部を回転ロールで急冷して、ガラスリボンを形成した。また、融液の一部は成形後冷却し、ガラス板を得た。
【0109】
得られたガラスリボンを、ボールミルで粉砕し、目開き150μmの網目を有する篩にかけ、さらに気流分級し、例1−1〜1−46の粉末(ガラス粉末)を得た。
【0110】
得られたガラス粉末のガラス転移点Tgは、示差熱分析計(リガク社製、商品名:TG8110)を使用して測定した。また、ガラス粉末の50%粒径D
50は、レーザ回折式粒度分布測定(島津製作所社製、装置名:SALD2100)により算出した。
【0111】
また、液相温度LTは以下のようにして評価した。すなわち、得られたガラス粉末約1gを白金皿にのせ、所定温度の電気炉に約2時間保持し、その後炉から取り出して急冷したサンプルをそれぞれ顕微鏡観察し、結晶が見られる温度域を液相温度LTとした。このとき、電気炉の温度は、850〜1000℃まで50℃刻みで試験を行った。
【0112】
さらに、得られたガラス板は、アルキメデス法により比重dを測定後、厚み1mm、大きさ20mm×20mmの板状に加工後その両面を酸化セリウムで鏡面研磨してサンプル板とし、波長633nmの光に対する屈折率nを、メトリコン社製モデル2010プリズムカプラを用いて測定した。
【0113】
ガラスの厚み1mmにおける透過率30%の波長λ
T30%は、前記サンプル板を分光光度計(PerkinElmer社製、装置名:Lambda950)により測定し、得られた透過率が30%となる波長である。
【0114】
また、耐候性の指標であるヘイズ値は、次のようにして得た。前記と同様な方法で加工して得られた厚み1mm、大きさ30mm×30mmのサンプル板を、炭酸カルシウムおよび中性洗剤で洗浄した後、高度加速寿命試験装置(エスペック社製、商品名:不飽和型プレッシャークッカーEHS−411M)に入れて、120℃、0.2MPaの水蒸気雰囲気に24時間静置した。その後、ヘイズ測定装置(スガ試験機社製、商品名:ヘイズメーターHZ−2)を使用して、C光源にてサンプル板のヘイズ値を測定した。
【0115】
【表1】
【0116】
【表2】
【0117】
【表3】
【0118】
【表4】
【0119】
【表5】
【0120】
[例2:光変換部材の製造]
次に、例1で得られたガラス粉末を使用して、光変換部材を次のように製造した。なお、ガラス中に分散させる蛍光体粒子として、50%粒径D
50が10μm、460nm励起で蛍光体ピーク波長が約555nmであるCe付活YAG蛍光体、50%粒径D
50が11μm、460nm励起で蛍光体ピーク波長が約628nmであるEu付活CASN蛍光体、50%粒径D
50が10μm、460nm励起で蛍光体ピーク波長が約536nmであるEu付活SrGa
2S
4蛍光体、および460nm励起で蛍光体ピーク波長が約627nmであるEu付活Sr
2Si
5N
8蛍光体を使用した。また、ここで使用されるフリット(ガラス粉末)は、例1−1で得られたガラスをガラス1、例1−2で得られたガラスをガラス2、というように例1の各番号に対応するようにガラス46までガラス番号を付与して記載した。
【0121】
表6〜11に示すようなガラスと蛍光体の組み合わせで、ガラス粉末、蛍光体粒子および耐熱フィラーを体積分率で合量が100%となるように、それぞれ混合した。なお、耐熱フィラーは、50%粒径D
50が18μm、波長633nmにおける屈折率が1.76である単結晶アルミナを用いた。また、例2−19の「CASN+YAG」、「2+18」は、CASN蛍光体とYAG蛍光体をそれぞれ2体積%、18体積%の割合で混合していることを示している。さらにビヒクルと混練し、脱泡してスラリーを得た。ビヒクルはトルエン、キシレン、イソプロパノール、2−ブタノールの混合溶媒75質量部にアクリル樹脂を25質量部溶解したものを用いた。さらに希釈溶媒として、トルエン、キシレン、イソプロパノール、2−ブタノールの混合溶媒を用い、約5000cPのスラリー粘度に調整した。このスラリーをPETフィルム(帝人社製)にドクターブレード法で塗工した。これを、乾燥炉で約30分間乾燥し、約7cm四方の大きさに切り出し、PETフィルムを剥がして、厚み0.5〜0.7mmのグリーンシートを得た。
【0122】
これを、離型剤を塗布したムライト基板に載せて、表6〜11に示すような焼成条件で光変換部材を製造した。得られた光変換部材の厚みは0.14〜0.16mmであった。なお、焼成雰囲気の「Air」は大気焼成、「N2」はN
2を0.3L/minでフローした窒素焼成、「LP」は到達真空度約60Paの減圧焼成をそれぞれ示している。
【0123】
得られた例2−1〜2−45の光変換部材について、量子変換収率、色度座標x、yを測定した。
【0124】
光変換部材の量子変換収率は、得られた光変換部材の中央部を1cm四方の大きさに切り出し、絶対PL量子収率測定装置(浜松ホトニクス社製、商品名:Quantauru−QY)を使用して、励起光波長460nmにて測定した。また、この時同時に色度座標x、yも得られる。
【0125】
【表6】
【0126】
【表7】
【0127】
【表8】
【0128】
【表9】
【0129】
【表10】
【0130】
【表11】
【0131】
表6〜11より明らかなように、実施例2−1〜2−24および2−41〜45は本発明のガラスを用いており、焼成温度が500℃以下で十分にガラスの流動がおき、かつλ
T30%は、460nmよりも短波長にあるため、十分に励起光を蛍光体に当てることが可能、かつ蛍光体とガラスの反応も抑制できるため、蛍光体がYAG、CASN、SrGa
2S
4、Ca
2Si
5N
8蛍光体でも80%以上の高い量子変換収率が得られている。
【0132】
一方で、比較例である例1−31のガラス31は、SiO
2の含有量が多く、Tgが500℃超であるため、十分にガラスの流動をおこさせるには焼成温度を高くしなくてはならない。そのため、蛍光体にYAGを使用した例2−26、2−27は高い量子変換収率が得られるが、蛍光体にCASNを使用した例2−25では、明らかな量子変換収率の低下がみられる。SiO
2の含有量はガラス31とほぼ同じ量で、Tgが450℃未満である例1−36のガラス36においても、焼成温度は500℃以下にすることが可能であるが、蛍光体にYAGを使用した例2−35は高い量子変換収率が得られるが、蛍光体にCASNを使用した例2−33、2−34では、量子変換収率の低下がみられる。特に焼成温度を500℃以下にした例2−33に対し、焼成温度を510℃で作製した例2−34では、量子変換収率の大きな低下が見られることから、焼成温度は500℃未満にする必要があることがわかる。
【0133】
例1−32のガラス32は、Bi
2O
3が35%超であり、Tgは450℃未満であっても焼成時に結晶化してしまい、例2−28に示す通り量子変換収率が低い。また、例1−33のガラス33を用いた例2−29は、TeO
2が20%超であり、蛍光体とガラスが反応して著しく量子変換収率の低下をまねいている。例1−34のガラス34、例1−35のガラス35を用いた例2−30〜2−32は、アルカリの含有量が10%超であり、蛍光体とガラスが反応して量子変換収率が低い。
【0134】
例1−37のガラス37は、B
2O
3が22%未満であり、λ
T30%が460nm超のため、ガラスが励起光を吸収して蛍光体に励起光が十分あたらないことが予想される。例1−38、42、43はTgが450℃超であり、焼成温度が500℃を超えるため、CASN蛍光体を用いた場合、量子変換収率の低下が予想される。例1−39のガラス39は、Al
2O
3が4%超であり、LTが1000℃以上であるため、金坩堝での溶解が困難なおそれがある。また、Tgは450℃未満であるが、焼成時に十分な流動がおこらず、例2−36に示すように量子変換収率が低い。
【0135】
例1−40のガラス40、例1−41のガラス41は、Bi
2O
3+ZnOが70%であり、Tgは450℃未満であっても焼成時に結晶化してしまい、十分なガラスの流動がおこらず、例2−37〜2−40に示す通り量子変換収率が低い。
【0136】
以上より、本発明のガラス組成物は、Tgが低いため低温焼結が可能で、蛍光体の活性を損なうことなく光変換部材を製造できる。このようにして得られた光変換部材は発光変換効率が高く、光の利用効率が高く好ましい。
【0137】
また、表2〜3に示したように、第2の実施形態のガラス組成の範囲にある例1−13〜28はヘイズ値が10%以下であり耐候性が良好であるため、このガラスを適用した光変換部材は実用上十分な耐候性を併せ持つものとできる。