(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記(B)成分及び(C)成分の重合性基がアクリロイルオキシ基、メタアクリロイルオキシ基、ビニル基またはアリル基である、請求項1乃至請求項6のうちいずれか一項に記載のインプリント材料。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記の事情に基づいてなされたものであり、その解決しようとする課題は、硬化後、離型時においてモールドからパターンが転写された膜を容易に剥がすことができる、すなわち低離型力性を有し、外部からの力に対する塑性変形の割合(塑性変形率)が低く、200℃を超える温度においても分解物の昇華が無い高耐熱性を有し、更に厚膜の状態で、当該温度から急冷させてもクラックを生じない耐クラック性を有する硬化膜が形成されるインプリント材料を提供することである。更に、当該材料から作製され、パターンが転写された膜を提供することである。具体的には、モールドに対する離型力が0g/cmより大きく0.7g/cm以下、塑性変形率が8%以下、なおかつ例えば265℃の温度に曝しても分解物の昇華が起こらず、20μm程度の厚膜であっても265℃から急冷させてクラックを生じない硬化膜が形成される材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記の課題を解決するべく鋭意検討を行った結果、炭素原子数4乃至10の直鎖状、分岐鎖状または環状の炭化水素基、及び重合性基をそれぞれ1つ有する化合物、重合性基を2つ以上有するシルセスキオキサン化合物、及び末端に重合性基を2つ有するシリコーン化合物、を含有し、更に光重合開始剤を含有する組成物をインプリント材料として使用することを見出した。その結果、本発明者らは、モールドの凹凸形状を有する面上において当該材料の光硬化によりモールドの凹凸形状パターンが転写された硬化膜をモールドの凹凸形状を有する面から剥離する際に計測される離型力が格段に小さく、また当該材料より作製したパターン転写された膜は塑性変形率が小さく、265℃の温度の下においても分解物の昇華が見られず、更に265℃から急冷させてもクラックが発生しないという知見を得、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、第1観点として、下記(A)成分、(B)成分、(C)成分及び(D)成分を含有し、前記(A)成分、(B)成分及び(C)成分の合計100質量部に基づいて、前記(A)成分の含有量は35質量部乃至90質量部、前記(B)成分の含有量は5質量部乃至60質量部、前記(C)成分の含有量は5質量部乃至30質量部であり、前記(D)成分の含有量は0.1phr乃至30phrであるインプリント材料に関する。
(A):下記式(1)、式(2)または式(3)で表される化合物
【化1】
(式中、Xは炭素原子数1乃至5の直鎖アルキレン基を表し、R
1は水素原子またはメチル基を表し、R
2、R
3及びR
4はそれぞれ独立に水素原子、メチル基またはエチル基を表し、R
2、R
3及びR
4の炭素原子数の和は0乃至2の整数である。)
(B):下記式(4)で表される繰り返し単位を有し、式中Yで表される重合性基を2つ以上有するシルセスキオキサン化合物
(C):下記式(5)で表される繰り返し単位を有し、末端に重合性基を2つ有するシリコーン化合物
【化2】
(式中、R
6及びR
7はそれぞれ独立に炭素原子数1乃至3のアルキル基を表し、R
5は炭素原子数1乃至3のアルキレン基を表し、kは0乃至3の整数を表す。)
(D):光重合開始剤
第2観点として、前記(B)成分が完全かご型構造及び/または不完全かご型構造、並びにランダム構造及びはしご型構造の混合体からなる、第1観点に記載のインプリント材料に関する。
第3観点として、前記(C)成分が分子量の異なる2種以上の化合物からなる、第1観点または第2観点に記載のインプリント材料に関する。
第4観点として、(E)成分として酸化防止剤を更に含有する、第1観点乃至第3観点のうちいずれか一つに記載のインプリント材料に関する。
第5観点として、(F)成分として界面活性剤を更に含有する、第1観点乃至第4観点のうちいずれか一つに記載のインプリント材料に関する。
第6観点として、(G)成分として溶剤を更に含有する、第1観点乃至第5観点のうちいずれか一つに記載のインプリント材料に関する。
第7観点として、前記(B)成分及び(C)成分の重合性基がアクリロイルオキシ基、メタアクリロイルオキシ基、ビニル基またはアリル基である、第1観点乃至第6観点のうちいずれか一つに記載のインプリント材料に関する。
第8観点として第1観点乃至第7観点のうちいずれか一つに記載のインプリント材料から作製され、パターンが転写された膜に関する。
第9観点として、第8観点に記載のパターンが転写された膜を基材上に備えた光学部材に関する。
第10観点として、第8観点に記載のパターンが転写された膜を基材上に備えた個体撮像素子に関する。
第11観点として、第8観点に記載のパターンが転写された膜を基材上に備えたLEDデバイスに関する。
第12観点として、第8観点に記載のパターンが転写された膜を備えた半導体素子に関する。
第13観点として、第8観点に記載のパターンが転写された膜を基材上に備えた太陽電池に関する。
第14観点として、第8観点に記載のパターンが転写された膜を基材上に備えたディスプレイに関する。
第15観点として、第8観点に記載のパターンが転写された膜を基材上に備えた電子デバイスに関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明のインプリント材料から作製された硬化膜は、低離型力性、低塑性変形性を有するとともに、例えば265℃の温度に曝されても分解物の昇華が見られず、265℃の高温から急冷させてもクラックを生じない。
また本発明のインプリント材料は、光硬化が可能であり、かつモールドの凹凸形状を有する面からの剥離時にパターンの一部に剥がれが生じないため、所望のパターンが正確に形成された膜が得られる。したがって、良好な光インプリントのパターン形成が可能である。
また、本発明のインプリント材料は、任意の基材上に製膜することができ、インプリント後に形成されるパターンが転写された膜は、太陽電池、LEDデバイス、ディスプレイなどの、高透明性が求められる部材を使用する製品へ好適に用いることができる。
さらに、本発明のインプリント材料は、前記(A)成分、(B)成分及び(C)成分の化合物の種類及び含有割合を変更することで、硬化速度、動的粘度、及び形成される硬化膜の膜厚をコントロールすることができ、例えば膜厚20μmの比較的厚い硬化膜を形成することができる。したがって、本発明のインプリント材料は、製造するデバイス種と露光プロセス及び焼成プロセスの種類に対応した材料の設計が可能であり、プロセスマージンを拡大できるため、光学部材の製造に好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<(A)成分>
(A)成分の、上記式(1)、式(2)または式(3)で表される化合物は、当該化合物の混合物であってもよい。
また当該重合性基としては、例えば、アクリロイルオキシ基、メタアクリロイルオキシ基、ビニル基、アリル基が挙げられる。ここで、アクリロイルオキシ基はアクリロキシ基と、メタアクリロイルオキシ基はメタアクリロキシ基と表現されることがある。
【0010】
上記(A)成分の化合物の具体例としては、n−ブチルアクリレート、n−ペンチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−へプチル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、n−ノニル(メタ)アクリレート、n−デシル(メタ)アクリレートが挙げられる。なお、本明細書では(メタ)アクリレート化合物とは、アクリレート化合物とメタクリレート化合物の両方を指す。例えば(メタ)アクリル酸は、アクリル酸とメタクリル酸を指す。
【0011】
上記(A)成分の化合物は、市販品として入手が可能であり、その具体例としては、アクリル酸ブチル、アクリル酸ヘキシル、メタクリル酸ヘキシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル(以上、東京化成工業株式会社製)、n−アミルアクリレート、n−アミルメタクリレート、n−へプチルアクリレート、n−へプチルメタクリレート、n−オクチルアクリレート、n−オクチルメタクリレート、イソオクチルアクリレート、イソオクチルメタクリレート、n−ノニルアクリレート、n−ノニルメタクリレート、n−デシルアクリレート、n−デシルメタクリレート(以上、ABCR GmbH&Co.KG製)、ライトアクリレートIB−XA、ライトエステル同NB、同CH、同IB−X(以上、共栄社化学株式会社製)、NOAA、V#155、IBXA(以上、大阪有機化学工業株式会社製)、が挙げられる。
【0012】
上記(A)成分の化合物は、単独でまたは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0013】
本発明における(A)成分は、インプリント材料に低塑性変形性およびクラック耐性を付与することができ、その含有量は、当該(A)成分及び後述する(B)成分、(C)成分の合計100質量部に基づいて、35質量部乃至90質量部であることが好ましい。この割合が過少である場合には塑性変形率の増大および急冷時のクラックが見られるようになり、過大である場合には十分な硬化性が得られず、パターニング特性が悪化する。また、塑性変形率をより低下させるためには、上記式(1)、式(2)または式(3)で表される化合物を(A)成分として用いることが望ましい。
【0014】
<(B)成分>
(B)成分の、重合性基を2つ以上有するシルセスキオキサン化合物は、主鎖骨格がSi−O−Si結合であり、前記式(4)で表される繰り返し単位の式中に1.5個の酸素原子を有し、当該式中のYで表される重合性基を2つ以上有する化合物を示す。当該重合性基としては、例えば、アクリロイルオキシ基、メタアクリロイルオキシ基、ビニル基、アリル基が挙げられる。さらに、前記式(4)においてR
5で表される炭素原子数1乃至3のアルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチリデン基[−CH(CH
3)−基]、プロパン−2,2−ジイル基[−C(CH
3)
2−基]が挙げられる。
【0015】
上記(B)成分の化合物は、市販品として入手が可能であり、その具体例としては、AC−SQ TA−100、MAC−SQ TM−100、AC−SQ SI−20、MAC−SQ SI−20、MAC−SQ HDM(以上、東亞合成株式会社製)を挙げることができる。
【0016】
前記(B)成分の化合物は、例えば、下記式(6)で表される化合物または下記式(7)で表される化合物を用いて合成することも可能である。
【化3】
(式中、3つのR
8はそれぞれ独立にメチル基またはエチル基を表し、R
9は水素原子またはメチル基を表し、3つのQはそれぞれ独立にハロゲノ基を表す。)
【0017】
上記式(6)で表される化合物としては、例えば、3−アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、メタクリル酸3−(トリメトキシシリル)プロピル及びメタクリル酸3−(トリエトキシシリル)プロピルが挙げられる。上記式(7)で表される化合物としては、例えば、3−アクリロイルオキシプロピルトリクロロシラン、メタクリル酸3−(トリクロロシリル)プロピルが挙げられる。
【0018】
上記(B)成分の化合物は、重量平均分子量が例えば700乃至7000のシルセスキオキサン化合物を使用することができ、そのような化合物を単独でまたは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0019】
本発明のインプリント材料における(B)成分は、パターン転写後の膜に対して耐熱性を付与し、200℃を超える温度、例えば265℃の温度下において分解物の昇華を抑制することができる。また、(B)成分の種類、重量平均分子量及び含有割合を変更することで、インプリント材料の動的粘度、インプリント時の硬化速度、及び形成される硬化膜の膜厚をコントロールすることができる。
【0020】
本発明における(B)成分の含有量は、(A)成分、(B)成分、及び後述する(C)成分の合計100質量部に基づいて、好ましくは5質量部乃至60質量部、さらに好ましくは15質量部乃至60質量部である。この割合が過少である場合には十分な硬化性が得られず、パターニング特性が悪化し、過大である場合にはクラック耐性が低下し、急冷時においてクラックが発生する。
【0021】
<(C)成分>
(C)成分である、末端に重合性基を2つ有するシリコーン化合物は、分子内にシリコーン骨格(シロキサン骨格)を有し、当該分子の末端に重合性基を2つ有する化合物を示す。そのシリコーン骨格については、前記式(5)においてR
6及びR
7がそれぞれ独立にメチル基、エチル基、プロピル基またはイソプロピル基を表す場合が挙げられるが、特に、R
6及びR
7がいずれもメチル基を表すジメチルシリコーン骨格が好ましい。さらに、前記重合性基としては、例えば、アクリロイルオキシ基、メタアクリロイルオキシ基、ビニル基、アリル基が挙げられる。
【0022】
上記(C)成分の化合物としては市販品として入手が可能であり、その具体例としては、X−22−164、X−22−164AS、X−22−164A、X−22−164B、X−22−164C、X−22−164E、X−22−2445、X−22−1602(以上、信越化学工業株式会社製)が挙げられる。
【0023】
上記(C)成分の化合物は、単独でまたは2種以上組み合わせて使用することができる。特に、重量平均分子量の異なる2種の化合物を使用して硬化性を制御することにより、耐熱性を保持しつつ、より低離型力性を付与することができる。
【0024】
本発明における(C)成分の含有量は、(A)成分、(B)成分及び(C)成分の合計100質量部に基づいて、例えば5質量部乃至30質量部、好ましくは5質量部乃至18質量部である。この割合が過少である場合には十分な低離型力性を得ることができず、過大である場合には200℃を超える温度、例えば265℃の温度に曝されたときに分解物の昇華が起こる。
【0025】
<(D)成分>
(D)成分である光重合開始剤としては、光硬化時に使用する光源に吸収をもつものであれば、特に限定されるものではないが、例えば、tert−ブチルペルオキシ−iso−ブチレート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(ベンゾイルジオキシ)ヘキサン、1,4−ビス[α−(tert−ブチルジオキシ)−iso−プロポキシ]ベンゼン、ジ−tert−ブチルペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(tert−ブチルジオキシ)ヘキセンヒドロペルオキシド、α−(iso−プロピルフェニル)−iso−プロピルヒドロペルオキシド、tert−ブチルヒドロペルオキシド、1,1−ビス(tert−ブチルジオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、ブチル−4,4−ビス(tert−ブチルジオキシ)バレレート、シクロヘキサノンペルオキシド、2,2’,5,5’−テトラ(tert−ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラ(tert−ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラ(tert−アミルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラ(tert−ヘキシルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’−ビス(tert−ブチルペルオキシカルボニル)−4,4’−ジカルボキシベンゾフェノン、tert−ブチルペルオキシベンゾエート、ジ−tert−ブチルジペルオキシイソフタレート等の有機過酸化物; 9,10−アントラキノン、1−クロロアントラキノン、2−クロロアントラキノン、オクタメチルアントラキノン、1,2−ベンズアントラキノン等のキノン類; ベンゾインメチル、ベンゾインエチルエーテル、α−メチルベンゾイン、α−フェニルベンゾイン等のベンゾイン誘導体; 2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−1−[4−{4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)ベンジル}−フェニル]−2−メチル−プロパン−1−オン、フェニルグリオキシリックアシッドメチルエステル、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−1−ブタノン、2−ジメチルアミノ−2−(4−メチル−ベンジル)−1−(4−モリホリン−4−イル−フェニル)−ブタン−1−オン等のアルキルフェノン系化合物; ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−ホスフィンオキサイド等のアシルホスフィンオキサイド系化合物; 2−(O−ベンゾイルオキシム)−1−[4−(フェニルチオ)フェニル]−1,2−オクタンジオン、1−(O−アセチルオキシム)−1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]エタノン等のオキシムエステル系化合物が挙げられる。
【0026】
上記化合物は、市販品として入手が可能であり、その具体例としては、IRGACURE(登録商標)651、同184、同500、同2959、同127、同754、同907、同369、同379、同379EG、同819、同819DW、同1800、同1870、同784、同OXE01、同OXE02、同250、同1173、同MBF、同4265、同TPO(以上、BASFジャパン株式会社製)、KAYACURE(登録商標)DETX、同MBP、同DMBI、同EPA、同OA(以上、日本化薬株式会社製)、VICURE−10、同55(以上、STAUFFER Co.LTD製)、ESACURE(登録商標)KIP150、同TZT、同1001、同KTO46、同KB1、同KL200、同KS300、同EB3、トリアジン−PMS、トリアジンA、トリアジンB(以上、日本シイベルヘグナー株式会社製)、アデカオプトマーN−1717、同N−1414、同N−1606(株式会社ADEKA製)が挙げられる。
【0027】
上記(D)成分の光重合開始剤は、単独でまたは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0028】
本発明のインプリント材料における(D)成分の含有量は、上記(A)成分、(B)成分及び(C)成分の総量に対して、0.1phr乃至30phrであることが好ましく、1phr乃至20phrであることがより好ましい。(D)成分の含有量の割合が0.1phr未満の場合には、十分な硬化性が得られず、パターニング特性の悪化が起こるからである。ここで、phrとは、(A)成分、(B)成分及び(C)成分の合計100質量部に対する、光重合開始剤の含有量を表す。
【0029】
<(E)成分>
本発明のインプリント材料においては、(E)成分として酸化防止剤が添加されていてもよい。酸化防止剤としては、例えば、IRGANOX(登録商標)1010、同1035、同1076、同1135、同1520L(以上、BASFジャパン株式会社)、SUMILIZER(登録商標)GA−80(住友化学株式会社製)が挙げられる。
【0030】
上記酸化防止剤は、単独でまたは2種以上組み合わせて使用することができる。当該酸化防止剤を用いることで、酸化によって膜が黄色に変色することを防止することができる。
【0031】
本発明のインプリント材料における(E)成分の含有量は、上記(A)成分、(B)成分及び(C)成分の総質量に対して、好ましくは0.1phr乃至2phrである。
【0032】
<(F)成分>
本発明のインプリント材料においては、(F)成分として界面活性剤が添加されていてもよい。(F)成分である界面活性剤は、得られる塗膜の製膜性を調整する役割を果たす。上記界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル類、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックコポリマー類、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタントリオレエート、ソルビタントリステアレート等のソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタントリオレエート、ポリオキシエチレンソルビタントリステアレート等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類等のノニオン系界面活性剤;商品名エフトップ(登録商標)EF301、同EF303、同EF352(三菱マテリアル電子化成株式会社)、商品名メガファック(登録商標)F−553、F−554、F−556、F−477、F171、同F173、同R−08、同R−30、同R−30N、同R−40、同R−40−LM(DIC株式会社製)、フロラードFC430、同FC431(住友スリーエム株式会社製)、商品名アサヒガード(登録商標)AG710、サーフロン(登録商標)S−382、同SC101、同SC102、同SC103、同SC104、同SC105、同SC106(旭硝子株式会社製)等のフッ素系界面活性剤;及びオルガノシロキサンポリマーKP341(信越化学工業株式会社製)を挙げることができる。
【0033】
上記界面活性剤は、単独でまたは2種以上組み合わせて使用することができる。界面活性剤が使用される場合、その割合は、上記(A)成分、(B)成分及び(C)成分の総質量に対して、好ましくは0.01phr乃至40phr、より好ましくは0.01phr乃至10phrである。
【0034】
<(G)成分>
本発明においては(G)成分として溶剤を含有してもよい。(G)成分は、前記(A)成分、(B)成分及び(C)成分の粘度調節の役割を果たす。
【0035】
上記溶剤としては、例えば、トルエン、p−キシレン、o−キシレン、スチレン、エチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコ−ルジメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコール、1−オクタノール、エチレングリコール、ヘキシレングリコール、ジアセトンアルコール、フルフリルアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコール、プロピレングリコール、ベンジルアルコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、γ−ブチロラクトン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソプロピルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルn−ブチルケトン、シクロヘキサノン、2−ヘプタノン、ピルビン酸エチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸n−プロピル、酢酸イソブチル、酢酸n−ブチル、乳酸エチル、メタノール、エタノール、イソプロパノール、tert−ブタノール、アリルアルコール、n−プロパノール、2−メチル−2−ブタノール、イソブタノール、n−ブタノール、2−メチル−1−ブタノール、1−ペンタノール、2−メチル−1−ペンタノール、2−エチルヘキサノール、トリメチレングリコール、1−メトキシ−2−ブタノール、イソプロピルエーテル、1,4−ジオキサン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、ジメチルスルホキシド、N−シクロヘキシル−2−ピロリジンが挙げられ、上記(A)成分、(B)成分及び(C)成分の粘度を調節することができるものであれば、特に限定されるものではない。
【0036】
上記(G)成分の溶剤は、単独でまたは2種以上組み合わせて使用することができる。溶剤が使用される場合、上記(A)成分乃至(D)成分、任意成分である上記(E)成分及び(F)成分、並びに後述するその他添加剤を含む全成分から(G)成分の溶剤を除いたものとして定義される固形分は、本発明のインプリント材料に対して10質量%乃至95質量%含有することが好ましい。
【0037】
<その他添加剤>
本発明のインプリント材料は、本発明の効果を損なわない限りにおいて、必要に応じて、エポキシ化合物、光酸発生剤、光増感剤、紫外線吸収剤、密着補助剤または離型性向上剤を含有することができる。
【0038】
上記エポキシ化合物としては、例えば、X−22−2046、X−22−343、X−22−2000、X−22−4741、X−22−163、X−22−163A、X−22−163B、X−22−163C、X−22−169AS、X−22−169B、X−22−173BX、X−22−173DX、X−22−9002、KF−102、KF−101、KF−1001、KF−1002、KF−1005、KF−105(以上、信越化学株式会社製)、エポリード(登録商標)GT−401、同PB3600、セロキサイド(登録商標)2021P、同2000、同3000、EHPE3150、EHPE3150CE、サイクロマー(登録商標)M100(以上、株式会社ダイセル製)、EPICLON(登録商標)840、同840−S、同N−660、同N−673−80M(以上、DIC株式会社製)が挙げられる。
【0039】
上記光酸発生剤としては、例えば、IRGACURE(登録商標)PAG103、同PAG108、同PAG121、同PAG203、同CGI725(以上、BASFジャパン株式会社製)、WPAG−145、WPAG−170、WPAG−199、WPAG−281、WPAG−336、WPAG−367(以上、和光純薬工業株式会社製)、TFEトリアジン、TME−トリアジン、MP−トリアジン、ジメトキシトリアジン、TS−91、TS−01(株式会社三和ケミカル製)が挙げられる。
【0040】
上記光増感剤としては、例えば、チオキサンテン系、キサンテン系、ケトン系、チオピリリウム塩系、ベーススチリル系、メロシアニン系、3−置換クマリン系、3,4−置換クマリン系、シアニン系、アクリジン系、チアジン系、フェノチアジン系、アントラセン系、コロネン系、ベンズアントラセン系、ペリレン系、ケトクマリン系、クマリン系、ボレート系が挙げられる。
【0041】
上記光増感剤は、単独でまたは2種以上組み合わせて使用することができる。当該光増感剤を用いることによって、UV領域の吸収波長を調整することもできる。
【0042】
上記紫外線吸収剤としては、例えば、TINUVIN(登録商標)PS、同99−2、同109、同328、同384−2、同400、同405、同460、同477、同479、同900、同928、同1130、同111FDL、同123、同144、同152、同292、同5100、同400−DW、同477−DW、同99−DW、同123−DW、同5050、同5060、同5151(以上、BASFジャパン株式会社)が挙げられる。
【0043】
上記紫外線吸収剤は、単独でまたは2種以上組み合わせて使用することができる。当該紫外線吸収剤を用いることによって、光硬化時に膜の最表面の硬化速度を制御することができ、離型性を向上できる場合がある。
【0044】
上記密着補助剤としては、例えば、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシランが挙げられる。当該密着補助剤を用いることによって、基材との密着性が向上する。当該密着補助剤の含有量は、上記(A)成分、(B)成分及び(C)成分の総質量に対して、好ましくは5phr乃至50phr、より好ましくは10phr乃至50phrである。
【0045】
上記離型性向上剤としては、例えば、フッ素含有化合物が挙げられる。フッ素含有化合物としては、例えば、R−5410、R−1420、M−5410、M−1420、E−5444、E−7432、A−1430、A−1630(以上、ダイキン工業株式会社製)が挙げられる。
【0046】
<インプリント材料の調製>
本発明のインプリント材料の調製方法は、特に限定されないが、(A)成分、(B)成分、(C)成分、(D)成分、並びに任意成分である(E)成分、(F)成分、(G)成分及び所望によりその他添加剤を混合し、インプリント材料が均一な状態となっていればよい。また、(A)成分乃至(G)成分、並びに所望によりその他添加剤を混合する際の順序は、均一なインプリント材料が得られるなら問題なく、特に限定されない。当該調製方法としては、例えば、(A)成分、(B)成分、(C)成分及び(D)成分を所定の割合で混合する方法が挙げられる。また、これに更に(E)成分、(F)成分及び(G)成分を混合し、均一なインプリント材料とする方法も挙げられる。さらに、この調製方法の適当な段階において、必要に応じて、その他の添加剤を更に添加して混合する方法が挙げられる。
【0047】
<光インプリント及びパターンが転写された膜>
本発明のインプリント材料は、基材上に塗布し光硬化させることで所望の硬化膜を得ることができる。塗布方法としては、公知または周知の方法、例えば、スピンコート法、ディップ法、フローコート法、インクジェット法、スプレー法、バーコート法、グラビアコート法、スリットコート法、ロールコート法、転写印刷法、刷毛塗り、ブレードコート法、エアーナイフコート法を挙げることができる。
【0048】
本発明のインプリント材料が塗布される基材としては、例えば、シリコンウエハ、インジウム錫酸化物(ITO)が製膜されたガラス(以下、本明細書では「ITO基板」と略称する。)、シリコンナイトライド(SiN)が製膜されたガラス(SiN基板)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)が製膜されたガラス、ポリエチレンテレフタレート(PET)、トリアセチルセルロース(TAC)、アクリル、プラスチック、ガラス、石英、セラミックス等からなる基材を挙げることができる。また、可撓性を有するフレキシブル基材、例えばトリアセチルセルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリメタクリル酸メチル、シクロオレフィン(コ)ポリマー、ポリビニルアルコール、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリイミド、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルスルフォン、並びにこれらポリマーを組み合わせた共重合体からなる基材を用いることも可能である。
【0049】
本発明のインプリント材料を硬化させる光源としては、特に限定されないが、例えば、高圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、無電極ランプ、メタルハライドランプ、KrFエキシマーレーザー、ArFエキシマーレーザー、F
2エキシマーレーザー、電子線(EB)、極端紫外線(EUV)を挙げることができる。また、波長は、一般的には、436nmのG線、405nmのH線、365nmのI線、またはGHI混合線を用いることができる。さらに、露光量は、好ましくは、30mJ/cm
2乃至2000mJ/cm
2、より好ましくは30mJ/cm
2乃至1000mJ/cm
2である。
【0050】
なお、前述の(G)成分である溶剤を用いる場合には、光照射前の塗膜及び光照射後の硬化膜の少なくとも一方に対し、溶剤を蒸発させる目的で、ベーク工程を加えてもよい。ベークするための機器としては、特に限定されるものではなく、例えば、ホットプレート、オーブン、ファーネスを用いて、適切な雰囲気下、すなわち大気、窒素等の不活性ガス、または真空中で加熱することができるものであればよい。ベーク温度は、溶剤を蒸発させる目的では、特に限定されないが、例えば、40℃乃至200℃で行うことができる。
【0051】
光インプリントを行う装置は、目的のパターンが得られれば特に限定されないが、例えば、東芝機械株式会社製のST50、同社製のST50S−LED、Obducat社製のSindre(登録商標)60、明昌機工株式会社製のNM−0801HB等の市販されている装置が挙げられる。そして当該装置を使用して、基材上に塗布されたインプリント材料とモールドとを圧着し、光硬化後に離型する方法を用いることができる。
【0052】
また、本発明のパターンが転写された膜を作製する際に用いる光インプリント用モールド材としては、例えば、石英、シリコン、ニッケル、アルミナ、カルボニルシラン、グラッシーカーボン、ポリジメチルシリコーンを挙げることができるが、目的のパターンが得られるなら、特に限定されない。また、モールドは、離型性を高めるために、その表面にフッ素系化合物等の薄膜を形成する離型処理を行ってもよい。離型処理に用いる離型剤としては、例えば、ダイキン工業株式会社製のオプツール(登録商標)HD、同DSXが挙げられるが、目的のパターンが得られるなら、特に限定されない。
【0053】
なお、本発明において、離型力を評価する90°剥離試験とは、一般に接着物(本発明ではインプリント材料から形成された硬化膜に相当する)を被着物(本発明では基材として使用するフィルムに相当する)に貼付けし、所定時間後に所定の剥離速度で90°方向に引き剥がす際に生じる抵抗力(張力)を測定する試験である。通常、測定はJIS Z0237を参考にした評価法にて実施される。ここで測定された抵抗力を被着物の幅あたりに換算した値を離型力として評価することができる。
そして本発明のインプリント材料をフィルム上に塗布し、当該フィルム上の塗膜をモールドの凹凸形状を有する面に接着させ、続いて当該塗膜を、モールドの凹凸形状を有する面を接着させたまま光硬化させ、その後フィルム上の硬化膜をモールドの凹凸形状を有する面から90°剥離する試験において計測された離型力、すなわち、当該フィルム上の硬化膜をモールドの凹凸形状を有する面から完全に剥離したときの荷重を当該フィルムの横幅1cmあたりに換算した値は、0g/cmより大きく0.8g/cm以下であることが好ましい。この離型力は、前記範囲において小さい値ほどより好ましい。
【0054】
こうして本発明のインプリント材料から作製され、パターンが転写された膜、さらに当該膜を備えた半導体素子並びに当該膜を基材上に備えた光学部材、固体撮像素子、LEDデバイス、太陽電池、ディスプレイ及び電子デバイスも本発明の対象である。
【実施例】
【0055】
以下、実施例及び比較例を挙げて、本発明を更に詳しく説明するが、本発明は、これら実施例に限定されるものでない。
【0056】
後述する、合成例1及び合成例2で得られるシルセスキオキサン化合物の重量平均分子量並びにシリコーン化合物であるX−22−1602及びX−22−164の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下、本明細書ではGPCと略称する。)による測定結果である。測定には、東ソー・テクノシステム(株)製GPCシステムを用いた。当該GPCシステムの構成と、測定条件は下記のとおりである。
GPC本体:HLC−8320GPC
GPCカラム:Shodex(登録商標)LF−804
カラム温度:40℃
溶媒:テトラヒドロフラン
流量:1mL/分
標準試料:異なる重量平均分子量(197000、55100、12800、3950、1260、580)のポリスチレン6種
【0057】
(合成例1)
2000mLの四つ口フラスコに、3−アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン486.98g及びメタノール400.53gを仕込み、攪拌下10℃に冷却し、0.1N塩酸水溶液112.23gとメタノール200.26gの混合溶液を10℃〜25℃で30分かけて滴下した。その後、室温で一時間攪拌し、還流下3時間攪拌し、減圧濃縮をして287.21gのシルセスキオキサン化合物(PS−1)を得た。本合成例1で得られたシルセスキオキサン化合物の重量平均分子量を、GPCにより測定したところ、1500であった。このシルセスキオキサン化合物は、前記式(4)で表される繰り返し単位を有し、当該式中、Yはアクリロイルオキシ基を表し、R
5はメチレン基を表し、kは3を表す。
【0058】
(合成例2)
2000mLの四つ口フラスコに、3−アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン234.32g、メチルトリメトキシシラン136.22g及びメタノール400.53gを仕込み、攪拌下10℃に冷却し、0.1N塩酸水溶液112.23gとメタノール200.26gの混合溶液を10℃〜25℃で30分かけて滴下した。その後、室温で一時間攪拌し、還流下3時間攪拌し、減圧濃縮をして178.5gのシルセスキオキサン化合物(PS−2)を得た。本合成例2で得られたシルセスキオキサン化合物の重量平均分子量を、GPCにより測定したところ、2100であった。このシルセスキオキサン化合物は、前記式(4)で表される繰り返し単位を有し、当該式中、Yはアクリロイルオキシ基を表し、R
5はメチレン基を表し、kは3を表す。
【0059】
[インプリント材料の調製]
<実施例1>
アクリル酸ブチル(東京化成工業株式会社製)(以下、本明細書では「アクリル酸ブチル」と略称する。)3.5g、AC−SQ TA−100(東亞合成株式会社製)(以下、本明細書では「AC−SQ TA−100」と略称する。)を6.0g、X−22−1602(信越化学株式会社製)(以下、本明細書では「X−22−1602」と略称する。)を0.5g、及びIrgacure(登録商標)1173(BASFジャパン株式会社製)(以下、本明細書では「Irgacure 1173」と略称する。)を0.1g(アクリル酸ブチル、AC−SQ TA−100及びX−22−1602の総量に対して1phr)を混合し、インプリント材料PNI−a1を調製した。本実施例で使用したX−22−1602の重量平均分子量を、GPCにより測定したところ、4170であった。
【0060】
<実施例2>
アクリル酸ブチル6.5g、AC−SQ TA−100を2.8g、X−22−1602を0.7g、及びIrgacure 1173を0.1g(アクリル酸ブチル、AC−SQ TA−100及びX−22−1602の総量に対して1phr)を混合し、インプリント材料PNI−a2を調製した。
【0061】
<実施例3>
アクリル酸ブチル9.0g、AC−SQ TA−100を0.5g、X−22−1602を0.5g、及びIrgacure 1173を0.1g(アクリル酸ブチル、AC−SQ TA−100及びX−22−1602の総量に対して1phr)を混合し、インプリント材料PNI−a3を調製した。
【0062】
<実施例4>
ライトアクリレートIB−XA(共栄社化学株式会社製)(以下、本明細書では「IB−XA」と略称する。)6.5g、AC−SQ TA−100を1.75g、X−22−164(信越化学工業株式会社製)(以下、本明細書では「X−22−164」と略称する。)を1.4g、X−22−1602を0.35g、及びIrgacure 1173を0.1g(IB−XA、AC−SQ TA−100、X−22−164及びX−22−1602の総量に対して1phr)を混合し、インプリント材料PNI−a4を調製した。本実施例で使用したX−22−164の重量平均分子量を、GPCにより測定したところ、778であった。
【0063】
<実施例5>
アクリル酸2−エチルヘキシル(東京化成工業株式会社製)(以下、本明細書では「アクリル酸2−エチルヘキシル」と略称する。)6.5g、AC−SQ TA−100を1.75g、X−22−164を1.4g、X−22−1602を0.35g、及びIrgacure 1173を0.1g(アクリル酸2−エチルヘキシル、AC−SQ TA−100、X−22−164及びX−22−1602の総量に対して1phr)を混合し、インプリント材料PNI−a5を調製した。
【0064】
<実施例6>
アクリル酸ブチル6.5g、AC−SQ TA−100を1.75g、X−22−164を1.4g、X−22−1602を0.35g、及びIrgacure 1173を0.1g(アクリル酸ブチル、AC−SQ TA−100、X−22−164及びX−22−1602の総量に対して1phr)を混合し、インプリント材料PNI−a6を調製した。
【0065】
<実施例7>
アクリル酸ブチル6.5g、AC−SQ TA−100を2.5g、X−22−164を0.65g、X−22−1602を0.35g、及びIrgacure 1173を0.1g(アクリル酸ブチル、AC−SQ TA−100、X−22−164及びX−22−1602の総量に対して1phr)を混合し、インプリント材料PNI−a7を調製した。
【0066】
<実施例8>
アクリル酸ブチル6.5g、合成例1で得たPS−1を1.75g、X−22−164を1.4g、X−22−1602を0.35g、及びIrgacure 1173を0.1g(アクリル酸ブチル、PS−1、X−22−164及びX−22−1602の総量に対して1phr)を混合し、インプリント材料PNI−a8を調製した。
【0067】
<実施例9>
アクリル酸ブチル6.5g、合成例2で得たPS−2を1.75g、X−22−164を1.4g、X−22−1602を0.35g、及びIrgacure 1173を0.1g(アクリル酸ブチル、PS−2、X−22−164及びX−22−1602の総量に対して1phr)を混合し、インプリント材料PNI−a9を調製した。
【0068】
<実施例10>
アクリル酸ブチル6.5g、AC−SQ TA−100を1.75g、X−22−164を1.4g、X−22−1602を0.35g、Irgacur 1173を0.1g(アクリル酸ブチル、AC−SQ TA−100、X−22−164及びX−22−1602の総量に対して1phr)、及びSUMILIZER(登録商標)GA−80(住友化学株式会社製)(以下本明細書では「GA−80」と略称する。)を0.05g(アクリル酸ブチル、AC−SQ TA−100、X−22−164及びX−22−1602の総量に対して0.5phr)混合し、インプリント材料PNI−a10を調製した。
【0069】
<実施例11>
アクリル酸ブチル6.5g、AC−SQ TA−100を1.75g、X−22−164を1.4g、X−22−1602を0.35g、Irgacure 1173を0.1g(アクリル酸ブチル、AC−SQ TA−100及、X−22−164及びX−22−1602の総量に対して1phr)、GA−80を0.05g(アクリル酸ブチル、AC−SQ TA−100及、X−22−164及びX−22−1602の総量に対して0.5phr)、及びメガファック(登録商標)R−30N(DIC株式会社製)0.001g(アクリル酸ブチル、AC−SQ TA−100、X−22−164及びX−22−1602の総量に対して0.01phr)を混合し、インプリント材料PNI−a11を調製した。
【0070】
<実施例12>
アクリル酸ブチル6.5g、AC−SQ TA−100を1.75g、X−22−164を1.4g、X−22−1602を0.35g、Irgacure 1173を0.1g(アクリル酸ブチル、AC−SQ TA−100、X−22−164及びX−22−1602の総量に対して1phr)、GA−80を0.05g(アクリル酸ブチル、AC−SQ TA−100及、X−22−164及びX−22−1602の総量に対して0.5phr)、メガファック(登録商標)R−30N(DIC株式会社製)0.001g(アクリル酸ブチル、AC−SQ TA−100、X−22−164及びX−22−1602の総量に対して0.01phr)、及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート0.53gを混合し、インプリント材料PNI−a12を調製した。
【0071】
<比較例1>
アクリル酸ブチル6.5g、AC−SQ TA−100を3.5g、及びIrgacure 1173を0.1g(アクリル酸ブチル及びAC−SQ TA−100の総量に対して1phr)を混合し、インプリント材料PNI−b1を調製した。
【0072】
<比較例2>
AC−SQ TA−100を10g、及びIrgacure 1173を0.1g(AC−SQ TA−100に対して1phr)を混合し、インプリント材料PNI−b2を調製した。
【0073】
<比較例3>
AC−SQ TA−100を7g、X−22−1602を3g、及びIrgacure 1173を0.1g(AC−SQ TA−100及びX−22−1602の総量に対して1phr)を混合し、インプリント材料PNI−b3を調製した。
【0074】
<比較例4>
合成例1で得たPS−1を7g、X−22−1602を3g、及びIrgacure 1173を0.1g(PS−1及びX−22−1602の総量に対して1phr)を混合し、インプリント材料PNI−b4を調製した。
【0075】
<比較例5>
X−22−1602を10g、及びIrgacure 1173を0.1g(X−22−1602に対して1phr)を混合し、インプリント材料PNI−b5を調製した。
【0076】
[光インプリント及び塑性変形率測定]
無アルカリガラス基板の両端辺それぞれの上に、厚さ10μmのアルミニウム箔を2枚重ね合わせて貼り付け、厚さ(高さ)20μmのギャップを、当該無アルカリガラス基板の両端辺上に互いに平行に作製した。その後、実施例1乃至実施例11及び比較例1乃至比較例5で得られた各インプリント材料を、当該無アルカリガラス基板上のギャップ間にポッティングした。そのインプリント材料の液滴にシリコンウエハを被せ、当該シリコンウエハと上記無アルカリガラス基板とを上記ギャップを介して接着させて試料を作製した。作製した試料を、ナノインプリント装置(NM−0801HB、明昌機工株式会社製)に設置し、10秒間かけて100Nまで加圧して上記ギャップ間の気泡を除去し、10秒間かけて除圧した後、無電極均一照射装置(QRE−4016A、株式会社オーク製作所製)にて、400mJ/cm
2の露光を施した。そして上記試料からシリコンウエハ及びギャップを剥がした後、100℃に保持したホットプレート上で1時間ベークを行い、上記無アルカリガラス基板上に厚さ20μmの硬化膜を作製した。
【0077】
上記と同様の方法で厚さ(高さ)20μmのギャップを無アルカリガラス基板の両端辺上に作製した後、実施例12で得られた溶剤を含むインプリント材料を、当該無アルカリガラス基板上のギャップ間にポッティングした。その後、100℃に保持したホットプレート上で1分間ベークを行い、そのインプリント材料の液滴から溶剤を除去した。そして、上記と同様の方法で、シリコンウエハと上記無アルカリガラス基板とを上記ギャップを介して接着させた試料を作製し、気泡を除去し、露光を施し、当該試料から上記シリコンウエハ及びギャップを剥がした後、100℃のホットプレート上で1時間ベークを行い、上記無アルカリガラス基板上に厚さ20μmの硬化膜を作製した。
【0078】
得られた硬化膜の塑性変形率を、超微小押し込み硬さ試験機 ENT−2100(株式会社エリオニクス製)を使用し、圧子は稜間角115°のチタン製三角圧子(株式会社東京ダイヤモンド工具製作所製)を用いて算出した。得られた結果を表1に示す。
【0079】
[耐熱性評価]
実施例1乃至実施例12及び比較例1乃至比較例5で得られた各インプリント材料を用いて、上記[光インプリント及び塑性変形率測定]に記載した方法で、無アルカリガラス基板上に厚さ20μmの硬化膜を作製した。そして265℃に保持したホットプレート上で、上記無アルカリ基板上の硬化膜に3分間ベークを行った。そしてベーク時における、上記硬化膜からの発煙の有無を目視で観察した。得られた結果を表1に示す。
【0080】
[クラック耐性評価]
実施例1乃至実施例12及び比較例1乃至比較例5で得られた各インプリント材料を用いて、上記[光インプリント及び塑性変形率測定]に記載した方法で、無アルカリガラス基板上に厚さ20μmの硬化膜を作製した。そして265℃に保持したホットプレート上で、上記無アルカリ基板上の硬化膜に3分間ベークを行った後、ステンレス台上へ乗せ、急冷した。急冷時の上記硬化膜に発生するクラックの有無について、得られた結果を表1に示す。
【0081】
[光インプリント及び離型力試験]
実施例1乃至実施例11及び比較例1乃至比較例5で得られた各インプリント材料を、厚さ80μmのトリアセチルセルロースフィルム(富士フイルム株式会社製、フジタック(登録商標)を使用)(以下、本明細書では「TACフィルム」と略称する。)上にバーコーター(全自動フィルムアプリケーター KT−AB3120、コーテック株式会社製)を用いて塗布した。さらに、実施例12で得られたインプリント材料を、上記と同様の方法でTACフィルム上へ塗布し、溶剤を乾燥除去した。その後、それぞれのTACフィルム上の塗膜をモスアイパターンモールドへローラー圧着させた。続いて当該塗膜に対し、TACフィルム側から無電極均一照射装置(QRE−4016A、株式会社オーク製作所製)にて、350mJ/cm
2の露光を施し、光硬化を行った。そしてJIS Z0237を参考にして90°剥離試験を行い、モールドの凹凸形状を有する面と接着している、TACフィルム上に形成された硬化膜すなわちパターンが転写された膜が、モールドの凹凸形状を有する面から完全に剥がれたときの荷重を測定した。そしてフィルムの幅1cm当たりの荷重を算出し、離型力(g/cm)とした。得られた結果を表1に示す。
【0082】
【表1】
【0083】
表1の結果から、実施例1乃至実施例12で得られたインプリント材料を用いた場合は、いずれも塑性変形率が8%以下と低く、且つ離型力が0.7g/cm以下であり、得られた硬化膜は、265℃の温度でのベーク時に発煙が無く分解物の昇華は見られなかった。そして265℃からの急冷時におけるクラックも見られなかった。一方、比較例1乃至比較例4で得られたインプリント材料を用いた場合は、塑性変形率が8%よりも大きいか、あるいは離型力が0.8g/cmよりも大きい結果となった。また、比較例2乃至比較例5で得られたインプリント材料を用いて得られた硬化膜に対する265℃の温度でのベークにおいて、発煙が観察されたことにより当該硬化膜から分解物の昇華が確認されるか、あるいは265℃からの急冷時において当該硬化膜にクラックが確認された。以上、本発明のインプリント材料から得られる硬化膜は、8%以下の低塑性変形性、0.7g/cm以下の比較的低離型力を有し、且つ耐熱性、及び耐クラック性に優れるものとなる。