【実施例】
【0040】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、以下の記述中の「部」は重量部を表す。
【0041】
(実施例1)
乾燥させた有機溶剤可溶性染料としてソルベントブラック29(BASF(株)製 製品名「Orazol Black X55」)12部、精製水150部を、分散撹拌機(ディスパミル)を用いて、60分間、ソルベントブラック29を精製水中に十分巻き込むように混合撹拌し、ソルベントブラック29のウエットケーキ(A1)を得た。その後ヌッチェによる減圧ろ過で、その含水率が20重量%になるまで前記ウエットケーキ(A1)を水とろ別、留去水(A1)を採取した。この際、ろ別した留去水(A1)の電気伝導度は、120μS/cmであった。
続いて、得られた含水率20重量%の前記ウエットケーキ(A1)15部、精製水150部を再び、分散撹拌機(ディスパミル)を用いて、60分間、ウエットケーキ(A1)を精製水中に十分巻き込むように混合撹拌しウエットケーキ(B1)を得た。その後ヌッチェによる減圧ろ過で、その含水率が20重量%になるまで前記ウエットケーキ(B1)を水とろ別、留去水(B1)を採取した。この際得られた留去水(B1)の電気伝導度は、20μS/cmであった。最後に、得られた前記ウエットケーキ(B1)を50℃の加熱乾燥機を用いて、完全乾燥させて精製ブラック染料(1)を完成させた。
このときの留去水(A1)、留去水(B1)の電気伝導度の関係は表1に示した。
【0042】
続いて、エタノール83.0部に、スチレンアクリル樹脂(BASF(株)製 製品名「ジョンクリル67」)を6.3部、導電性付与剤である硝酸リチウムを0.4部、シリコーン系化合物であるポリエーテル変性シリコーンオイル(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ製 製品名「TSF−4460」)を0.2部、エステル系溶媒であるプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを4.5部加えて、分散撹拌機(ディスパミル)を用いて、60分間、混合撹拌し、樹脂等を完全溶解させた。その後、完全乾燥させた精製ブラック染料(1)を5.6部加えて、更に60分間、混合撹拌し、染料を完全溶解させ、0.45μmのメンブランフィルターを用いて、ろ過することにより、コンティニアス用インクジェット記録用ブラックインク(1)を作製した。
【0043】
得られたブラックインク(1)の高温/低温保存安定性を粘度変化率で評価したところ、初期粘度(20℃)3.04mPa・sに対して、高温環境下の60℃では、720時間後の粘度(20℃)が、3.08mPa・sとなり、その粘度変化率は、+1.3%であった。尚、粘度変化率は以下の計算式で算出した。
【0044】
【数7】
【0045】
同様に、低温環境下の−5℃では、720時間後の粘度(20℃)が、3.05mPa・sとなり、その粘度変化率は、+0.3%であった。何れの環境下においても、良好な保存安定性を有すると確認出来た。
【0046】
更に保存安定性試験後のブラックインク(1)をポアサイズ0.6ミクロン径のメンブレンフィルタでろ過したが、何れの劣化インクもフィルタ上に残存する析出物もなく、良好であった。
【0047】
又、得られたブラックインク(1)を用いて、吐出安定性を評価したが、1500時間の連続吐出試験で、ビーム曲がりやノズル閉塞を起こすことはなかった。
【0048】
このときのインクの初期粘度、高温/低温保存安定性試験後の粘度変化率、劣化インクの析出物および連続吐出試験での不具合の有無の関係は表2に示した。
【0049】
(実施例2)
乾燥させた有機溶剤可溶性染料としてソルベントブラック43(保土ヶ谷化学工業(株)製 製品名「Aizen Spilon Black GMH Special」)10部、精製水150部を、分散撹拌機(ディスパミル)を用いて、45分間、ソルベントブラック43を精製水中に十分巻き込むように混合撹拌しソルベントブラック43のウエットケーキ(A2)を得た。その後ヌッチェによる減圧ろ過で、その含水率が22重量%になるまで前記ウエットケーキ(A2)を水とろ別、留去水(A2)を採取した。この際、ろ別した留去水(A2)の電気伝導度は、95μS/cmであった。
続いて、得られた含水率22重量%の前記ウエットケーキ(A2)12.2部、精製水150部を再び、分散撹拌機(ディスパミル)を用いて、45分間、ウエットケーキ(A2)を精製水中に十分巻き込むように混合撹拌しウエットケーキ(B2)を得た。その後ヌッチェによる減圧ろ過で、その含水率が23重量%になるまで前記ウエットケーキ(B2)を水とろ別、留去水(B2)を採取した。この際得られた留去水(B2)の電気伝導度は、16μS/cmであった。最後に、得られた前記ウエットケーキ(B2)を50℃の加熱乾燥機を用いて、完全乾燥させて精製ブラック染料(2)を完成させた。
このときの留去水(A2)、留去水(B2)の電気伝導度の関係は表1に示した。
【0050】
続いて、エタノール87.4部に、ロジンマレイン樹脂(DIC(株)製 製品名「ベッカサイトP720」)を6.2部、導電性付与剤である硝酸リチウムを0.7部、シリコーン系化合物であるポリエーテル変性シリコーンオイル(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ製 製品名「TSF−4460」)を0.2部、分散撹拌機(ディスパミル)を用いて、60分間、混合撹拌し、樹脂等を完全溶解させた。その後、完全乾燥させた精製ブラック染料(2)を5.5部加えて、更に60分間、混合撹拌し、染料を完全溶解させ、0.45μmのメンブランフィルターを用いて、ろ過することにより、コンティニアス用インクジェット記録用ブラックインク(2)を作製した。
【0051】
得られたブラックインク(2)の高温/低温保存安定性を粘度変化率で評価したところ、初期粘度(20℃)2.99mPa・sに対して、高温環境下の60℃では、720時間後の粘度(20℃)が、3.03mPa・sとなり、その粘度変化率は、+1.3%であった。同様に、低温環境下の−5℃では、720時間後の粘度(20℃)が、2.98mPa・sとなり、その粘度変化率は、−0.3%であった。何れの環境下においても、良好な保存安定性を有すると確認出来た。
【0052】
更に保存安定性試験後のブラックインクをポアサイズ0.6ミクロン径のメンブレンフィルタでろ過したが、何れの劣化インクもフィルタ上に残存する析出物もなく、良好であった。
【0053】
又、得られたブラックインク(2)を用いて、吐出安定性を評価したが、1500時間の連続吐出試験で、ビーム曲がりやノズル閉塞を起こすことはなかった。
【0054】
このときのインクの初期粘度、高温/低温保存安定性試験後の粘度変化率、劣化インクの析出物および連続吐出試験での不具合の有無の関係は表2に示した。
【0055】
(比較例1)
乾燥させた有機溶剤可溶性染料としてソルベントブラック29(BASF(株)製 製品名「Orazol Black X55」)15部、精製水100部を、分散撹拌機(ディスパミル)を用いて、20分間、ソルベントブラック29を精製水中に十分巻き込むように混合撹拌しソルベントブラック29のウエットケーキ(AH1)を得た。その後ヌッチェによる減圧ろ過で、その含水率が30重量%になるまで前記ウエットケーキ(AH1)を水とろ別、留去水(AH1)を採取した。この際、ろ別した留去水(AH1)の電気伝導度は、75μS/cmであった。続いて、得られた含水率30重量%の前記ウエットケーキ(AH1)15部、精製水90部を再び、分散撹拌機(ディスパミル)を用いて、25分間、前記ウエットケーキ(AH1)を精製水中に十分巻き込むように混合撹拌しウエットケーキ(BH1)を得た。その後ヌッチェによる減圧ろ過で、その含水率が25重量%になるまで前記ウエットケーキ(BH1)を水とろ別、留去水(BH1)を採取した。この際得られた留去水(BH1)の電気伝導度は、48μS/cmであった。最後に、得られた前記ウエットケーキ(BH1)を50℃の加熱乾燥機を用いて、完全乾燥させて精製ブラック染料(H1)を完成させた。
このときの留去水(AH1)、留去水(BH1)の電気伝導度の関係は表1に示した。
【0056】
続いて、完全乾燥させた精製ブラック染料(H1)を用いる以外は実施例1と同様のブラックインク組成、手法でコンティニアス用インクジェット記録用ブラックインク(H1)を作製した。
【0057】
得られたブラックインク(H1)の高温/低温保存安定性を粘度変化率で評価したところ、初期粘度(20℃)3.00mPa・sに対して、高温環境下の60℃では、720時間後の粘度(20℃)が、3.21mPa・sとなり、その粘度変化率は、+7.0%であった。同様に、低温環境下の−5℃では、720時間後の粘度(20℃)が、3.02mPa・sとなり、その粘度変化率は、+0.6%であった。特に高温環境下での保存安定性が不良であると確認出来た。
【0058】
更に保存安定性試験後のブラックインク(H1)をポアサイズ0.6ミクロン径のメンブレンフィルタでろ過したところ、低温環境下で保存した劣化インクで、フィルタ上に多数の析出物が発現するなど、実使用に耐えるものではなかった。
【0059】
又、得られたブラックインク(H1)を用いて、吐出安定性を評価したが、約600時間の連続吐出試験で、激しいビーム曲がりとノズル閉塞を起こし、実使用に耐えるものではなかった。
【0060】
このときのインクの初期粘度、高温/低温保存安定性試験後の粘度変化率、劣化インクの析出物および連続吐出試験での不具合の有無の関係は表2に示した。
【0061】
(比較例2)
乾燥させた有機溶剤可溶性染料としてソルベントブラック43(保土ヶ谷化学工業(株)製 製品名「Aizen Spilon Black GMH Special」)10部、精製水80部を、分散撹拌機(ディスパミル)を用いて、15分間、ソルベントブラック43を精製水中に十分巻き込むように混合撹拌しソルベントブラック43のウエットケーキ(AH2)を得た。その後ヌッチェによる減圧ろ過で、その含水率が28重量%になるまで前記ウエットケーキ(AH2)を水とろ別、留去水を採取した。この際、ろ別した留去水(AH2)の電気伝導度は、55μS/cmであった。
続いて、得られた含水率28重量%の前記ウエットケーキ(AH2)15部、精製水75部を再び、分散撹拌機(ディスパミル)を用いて、25分間、前記ウエットケーキ(AH2)を精製水中に十分巻き込むように混合撹拌した。その後ヌッチェによる減圧ろ過で、その含水率が30重量%になるまで前記ウエットケーキ(BH2)を水とろ別、留去水(BH2)を採取した。この際得られた留去水(BH2)の電気伝導度は、35μS/cmであった。最後に、得られた前記ウエットケーキ(BH2)を50℃の加熱乾燥機を用いて、完全乾燥させて精製ブラック染料(H2)を完成させた。このときの留去水(AH2)、留去水(BH2)の電気伝導度の関係は表1に示した。
【0062】
続いて、完全乾燥させた精製ブラック染料(H2)を用いる以外は実施例2と同様のブラックインク組成、手法でコンティニアス用インクジェット記録用ブラックインク(H2)を作製した。
【0063】
得られたブラックインク(H2)の高温/低温保存安定性を粘度変化率で評価したところ、初期粘度(20℃)3.01mPa・sに対して、高温環境下の60℃では、720時間後の粘度(20℃)が、3.34mPa・sとなり、その粘度変化率は、+11.0%であった。同様に、低温環境下の−5℃では、720時間後の粘度(20℃)が、3.02mPa・sとなり、その粘度変化率は、+0.3%であった。特に高温環境下での保存安定性が不良であると確認出来た。
【0064】
更に保存安定性試験後のブラックインクをポアサイズ0.6ミクロン径のメンブレンフィルタでろ過したところ、低温環境下で保存した劣化インクで、フィルタ上に多数の析出物が発現するなど、実使用に耐えるものではなかった。
【0065】
又、得られたブラックインク(H2)を用いて、吐出安定性を評価したが、約450時間の連続吐出試験で、激しいビーム曲がりとノズル閉塞を起こし、実使用に耐えるものではなかった。
【0066】
このときのインクの初期粘度、高温/低温保存安定性試験後の粘度変化率、劣化インクの析出物および連続吐出試験での不具合の有無の関係は表2に示した。
【0067】
一連の結果を以下、表1、表2に記す。
【0068】
【表1】
【0069】
【表2】
【0070】
表1、2の結果の通り、本発明で得た実施例のコンティニアス用インクジェット記録用ブラックは、良好な保存安定性(粘度変化率が±2%以内と小さく、試験環境下で劣化させたインクのろ過試験で析出物は発生しない)と、連続吐出信頼性を保持していることが確認出来た。
【0071】
これに対して、比較例に示したコンティニアス用インクジェット記録用ブラックは、保存安定性(粘度変化率が±5%を超え、試験環境下で劣化させたインクのろ過試験で析出物が多量に発生)、更に、激しいビーム曲がりとノズル閉塞を起こす等連続吐出信頼性、両者において不良となり、実使用に耐えうるものではなかった。