(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
耐熱性樹脂は、無機材料と比較して、有機材料の短所であった耐熱性を有するとともに、長所である加工性を併せ持つことから、封止材料、基板材料、絶縁材料等の分野に広く実用化されている。
しかし、高温プロセス対応フレキシブル基板材料、高速高周波対応高耐熱基板材料、高耐熱CFRP用材料、車載向けSiCパワーデバイス封止材料等、従来にない極めて高い耐熱性を要求する新しい材料が現れてきている。例えば、SiCパワーデバイスでは、250℃以上での高温領域での動作が想定されるが、従来の耐熱性樹脂を用いた封止材では、耐熱性が十分でないため、200℃での動作が限界であった。そのため、250℃での動作に耐え得る封止材料が切望されている。つまり、従来の耐熱性樹脂では、車載向けSiCパワーデバイス用封止材料等の新しい材料への適用が困難になってきた。
【0003】
従来の耐熱性樹脂は、成形性に優れるエポキシ樹脂を高耐熱化したものが主に使用されてきた。例えば、フェノール樹脂を含むエポキシ樹脂組成物、ベンゾオキサジン、アミン系樹脂またはシアネート樹脂を含むエポキシ樹脂組成物、マレイミド樹脂を含むエポキシ樹脂組成物が挙げられる。その他、ポリイミド樹脂等が挙げられる。しかし、これらの従来の樹脂では、上記の極めて高い耐熱性及び成形性の両立が難しい。また、ガラス転移温度(Tg)が高い反面、熱分解開始温度が不十分であった。
【0004】
例えば、エポキシ樹脂では、高耐熱化の手法として、多環芳香族基の導入(特許文献1)、ヘテロ基の導入(特許文献2)、架橋密度の向上(特許文献3)等が検討されてきた。これらは、ガラス転移温度の向上や寸法安定性の向上には効果がみられるが、熱分解開始温度の向上には限界があった。
エポキシ樹脂組成物にマレイミド樹脂を配合したもの(特許文献4)は、熱分解開始温度は改善されたが250℃の長期耐熱には不十分であり、成型性が課題となる。
エポキシ樹脂にアミン系樹脂(特許文献5)またはベンゾオキサジン樹脂を配合したもの(特許文献6)は、ガラス転移温度(Tg)は向上するが、熱分解開始温度はエポキシ樹脂よりも低く、また、硬化物は脆いという欠点があった。
シアネート樹脂を含むエポキシ組成物(特許文献7)は、硬化時の温度制御が難しく成型性に課題があり、高価になるという問題もあった。
ポリイミド樹脂は、熱分解開始温度には優れるが、厚膜成型が困難であり、封止材などの成型材料には適用が困難であった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、従来の耐熱性樹脂では困難であった極めて高い耐熱性とエポキシ樹脂並みの成型性が両立した材料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、鋭意検討により、特定のイミド化合物が、上記の課題を解決することが期待されること、そしてこれが極めて高い耐熱性及び熱成形性を両立することを見出した。
【0008】
すなわち本発明は、下記一般式(1)で表されるビスマレイミド化合物に関する。
【化1】
式中、R
1及びR
2は、それぞれ独立して、置換または無置換のアルキル基を表す。M
1、M
2、M
3及びM
4は、それぞれ独立して、水素原子または置換もしくは無置換のアルキル基を表す。
【0009】
また、本発明は上記のビスマレイミド化合物と、下記一般式(2)で表されるマレイミド化合物を含有することを特徴とするイミド組成物に関する。
【化2】
式中、Qはm価の有機基を表し、M
5及びM
6は、それぞれ独立して、水素原子または置換もしくは無置換のアルキル基を表し、mは1〜10の整数を表す。
【0010】
更に本発明は、上記のビスマレイミド化合物と、架橋剤を含有することを特徴とする硬化性イミド組成物、又は上記のイミド組成物に、更に架橋剤を配合してなる硬化性イミド組成物に関する。また、本発明はこれら硬化性イミド組成物を架橋硬化してなるイミド硬化物に関する。このイミド硬化物は電子材料用として適する。
【発明の効果】
【0011】
本発明のビスマレイミド化合物は、エポキシ樹脂を超える耐熱性を有するとともに、エポキシ樹脂と同等の成形性を有する。更に、低線膨張係数、高Tgという性質も有する。そのため、高耐熱基板材料、高温プロセス対応フレキシブル基板材料、高耐熱CFRP用材料、車載向けSiCパワーデバイス用封止材料等の、極めて高い耐熱性を有する材料に好適に使用できる。また、従来の耐熱性樹脂で適用可能な、封止材料、基板材料、絶縁材料等に対しても、従来の耐熱性樹脂以上の高い耐久性を付与できる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
まず、本発明のビスマレイミド化合物について説明する。
本発明のビスマレイミド化合物は、上記一般式(1)で表される。
【0014】
ここで、R
1及びR
2は、それぞれ独立して、置換または無置換のアルキル基を表す。置換のアルキル基の場合、置換基には特に制限はないが、例えば、アリール基、アラルキル基、アミノ基、アルコキシ基、水酸基、カルボキシル基、ビニル基、ハロゲン基等が挙げられる。より好ましくは、無置換またはフェニル基若しくはハロゲン基置換のアルキル基である。さらに好ましくは、無置換またはフッ素置換のアルキル基である。
【0015】
前記置換または無置換のアルキル基は、直鎖構造、分岐構造、環状構造のいずれでも良い。好ましくはC1〜C6のアルキル基であり、より好ましくはC1〜C3であり、さらに好ましくはC1である。
【0016】
M
1、M
2、M
3及びM
4は、それぞれ独立して、水素原子または置換もしくは無置換のアルキル基を表す。置換のアルキル基の場合、置換基には特に制限はないが、例えば、アリール基、アラルキル基、アミノ基、アルコキシ基、水酸基、カルボキシル基、ビニル基、ハロゲン基等が挙げられる。より好ましくは、水素原子または無置換のアルキル基である。さらに好ましくは、M
1、M
2、M
3及びM
4の少なくとも1つが無置換のアルキル基である。
【0017】
M
1〜M
4における前記置換または無置換のアルキル基は、直鎖構造、分岐構造、環状構造のいずれでも良い。より好ましくは、C1〜C6のアルキル基であり、より好ましくはC1〜C3であり、さらに好ましくはC1のアルキル基である。
【0018】
上記一般式(1)で表されるビスマレイミド化合物は、上記R
1、R
2、M
1、M
2、M
3及びM
4が異なるビスマレイミド化合物の混合物であっても良い。
【0019】
上記一般式(1)で表されるビスマレイミド化合物の好ましい具体例を表1に示す。
【0021】
また、上記一般式(1)で表されるビスマレイミド化合物は、上記一般式(2)で表されるマレイミド化合物(以下、「他のマレイミド化合物」という。)を含むイミド組成物とすることができる。
【0022】
一般式(2)において、Qはm価の有機基を表す。mは1〜10の整数であるが、好ましくは2〜8の整数である。
Qの構造に制限はないが、2価の有機基である場合、以下の式(3)〜(7)の構造が好ましく挙げられる。ここで、下記式(3)〜(7)において、*は、上記一般式(2)における2つの窒素原子へのそれぞれの結合部位である。Z
1及びZ
2は、それぞれ独立して、水素原子、C1〜C6のアルキル基、又はC1〜C6のハロゲン置換アルキル基を表す。なお、下記式(3)〜(7)において、Z
1、Z
2及び上記結合部位*の置換位置は一例であり、これに限定されない。
【0024】
また、M
5およびM
6は、それぞれ独立して、置換もしくは無置換のアルキル基、または水素原子を表す。置換のアルキル基の場合、置換基には特に制限はないが、例えば、アリール基、アラルキル基、アミノ基、アルコキシ基、水酸基、カルボキシル基、ビニル基、ハロゲン基等が挙げられる。より好ましくは、無置換のアルキル基または水素原子である。
【0025】
M
5およびM
6における前記アルキル基は、直鎖構造、分岐構造、環状構造のいずれでも良い。より好ましくは、C1〜C6のアルキル基であり、より好ましくはC1〜C3であり、さらに好ましくはC1である。
【0026】
本発明のビスマレイミド化合物には、架橋剤を配合することにより硬化性イミド組成物とすることができる。同様に他のマレイミド化合物を含む上記イミド組成物にも、架橋剤を配合することにより硬化性イミド組成物とすることができる。
【0027】
ここで、架橋剤は、公知の架橋剤を用いることができるが、例えば、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、シアネート樹脂、アミノ樹脂、ベンゾオキサジン樹脂が挙げられる。これらの架橋剤が有する活性基(フェノール性水酸基、エポキシ基、シアネート基、アミノ基、又はベンゾオキサジンの脂環部位が開環してなるフェノール性水酸基)が、マレイミド基を構成する炭素−炭素二重結合と付加反応して架橋する他、本発明のビスマレイミド化合物が有する2つの炭素−炭素二重結合が重合して架橋する。
【0028】
フェノール樹脂としては、公知のものが使用できる。例えば、フェノール類としては、フェノールの他、クレゾール類、キシレノール類等のアルキルフェノール類、ヒドロキノン等の多価フェノール類、ナフトール類、ナフタレンジオール類等の多環フェノール類、ビスフェノールA、ビスフェノールF等のビスフェノール類、あるいはフェノールノボラック、フェノールアラルキル樹脂等の多官能性フェノール化合物等が挙げられる。好ましくは、耐熱性及び成型性の点から、アラルキル型フェノール樹脂が望ましい。
【0029】
エポキシ樹脂としては、公知のものが使用でき、1分子中にエポキシ基を2個以上有するもの中から選択される。例えばビスフェノールA、ビスフェノールF、3,3',5,5’−テトラメチル−ビスフェノールF、ビスフェノールS、フルオレンビスフェノール、2,2' −ビフェノール、3,3',5,5’−テトラメチル−4,4’−ジヒドロキシビフェノール、レゾルシン、ナフタレンジオール類等の2価のフェノール類のエポキシ化物、トリス−(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1,2,2−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、フェノールノボラック、o−クレゾールノボラック等の3価以上のフェノール類のエポキシ化物、ジシクロペンタジエンとフェノール類の共縮合樹脂のエポキシ化物、フェノール類とパラキシリレンジクロライド等から合成されるフェノールアラルキル樹脂類のエポキシ化物、フェノール類とビスクロロメチルビフェニル等から合成されるビフェニルアラルキル型フェノール樹脂のエポキシ化物、ナフトール類とパラキシリレンジクロライド等から合成されるナフトールアラルキル樹脂類のエポキシ化物等が挙げられる。これらのエポキシ樹脂は、単独でもよいし、2種以上を併用してもよい。好ましくは、耐熱性と成形性という点から、フェノールアラルキル樹脂類、ビフェニルアラルキル樹脂類から得られるエポキシ樹脂等の常温で固体状エポキシ樹脂である。
【0030】
シアネート樹脂としては、ビスフェノール型シアネート樹脂、ナフトール型シアネート樹脂等が挙げられる。
【0031】
アミノ樹脂としては、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルプロパン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、m-フェニレンジアミン、p-キシリレンジアミン等の芳香族アミン類、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン等の脂肪族アミン類等が挙げられる。
【0032】
ベンゾオキサジン樹脂としては、二官能性ジアミン類と単官能フェノール類から得られるP−d型ベンゾオキサジン、単官能性ジアミン類と二官能性フェノール類から得られるF−a型ベンゾオキサジン等が挙げられる。
【0033】
上記硬化性イミド組成物には、必要に応じて上記付加反応を促進させる促進剤を用いることができる。例を挙げれば、アミン類、イミダゾール類、有機ホスフィン類、ルイス酸等があり、具体的には、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7、トリエチレンジアミン、ベンジルジメチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノールなどの三級アミン、2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、2−へプタデシルイミダゾールなどのイミダゾール類、トリブチルホスフィン、メチルジフェニルホスフイン、トリフェニルホスフィン、ジフェニルホスフィン、フェニルホスフィンなどの有機ホスフィン類、テトラフェニルホスホニウム・テトラフェニルボレート、テトラフェニルホスホニウム・エチルトリフェニルボレート、テトラブチルホスホニウム・テトラブチルボレートなどのテトラ置換ホスホニウム・テトラ置換ボレート、2−エチル−4−メチルイミダゾール・テトラフェニルボレート、N−メチルモルホリン・テトラフェニルボレートなどのテトラフェニルボロン塩などがある。添加量としては、通常、組成物中のビスマレイミド化合物100重量部に対して、0.1から5重量部の範囲である。
【0034】
また、本発明の硬化性イミド組成物には、無機充填剤、顔料、難然剤、揺変性付与剤、カップリング剤、流動性向上剤等の添加剤を配合できる。無機充填剤としては、例えば、球状あるいは、破砕状の溶融シリカ、結晶シリカ等のシリカ粉末、アルミナ粉末、ガラス粉末、又はマイカ、タルク、炭酸カルシウム、アルミナ、水和アルミナ等が挙げられ、半導体封止材に用いる場合の好ましい配合量は70重量%以上であり、更に好ましくは80重量%以上である。
【0035】
顔料としては、有機系又は、無機系の体質顔料、鱗片状顔料、等がある。揺変性付与剤としては、シリコン系、ヒマシ油系、脂肪族アマイドワックス、酸化ポリエチレンワックス、有機ベントナイト系等を挙げることができる。
【0036】
また、本発明のビスマレイミド化合物は、単独で、または上記硬化性イミド組成物とすることで、公知の方法で架橋、硬化させて、本発明のイミド硬化物とすることができる。架橋方法としては、熱硬化、光硬化が挙げられる。
【0037】
本発明のイミド硬化物は、エポキシ樹脂を超える耐熱性を有するとともに、エポキシ樹脂と同等の成形性を有する。例えば、5wt%重量減が400℃以上であり、かつ、200℃以下でトランスファー成型可能である。さらに、寸法安定性、難燃性という性質も有する。そのため、低誘電材料、透明耐熱基板材料、高耐熱封止材料、高耐熱基板材料等の電子材料に好適に使用できる。特に、高温プロセス対応フレキシブル基板材料、高速高周波対応高耐熱基板材料、高耐熱CFRP用材料、車載向けSiCパワーデバイス用封止材料等の、極めて高い耐熱性を有する電子材料に好適に使用できる。また、従来の耐熱性樹脂で適用可能な、封止材料、基板材料、絶縁材料に対しても、従来の耐熱性樹脂以上の高い耐久性を付与できる。
【0038】
本発明のイミド化合物の製造方法の一例について、以下に説明する。
【0039】
本発明のイミド化合物(c-1)は、例えば、下記反応式(8)に示すように、ビフェニル型ジアミン化合物(a-1)と無水マレイン酸誘導体(b-1)、(b-2)を反応させることで製造できる。
【0041】
さらに、無水マレイン酸誘導体が1種類である場合は、下記反応式(9)に示すように、イミド化合物(c-2)が得られる。
【化5】
【0042】
また、この反応の際、一部、式(10)に示すような反応が生じ、オリゴマー成分(d-1)が得られる。このオリゴマー成分は樹脂の靭性を向上させる効果があるため、樹脂中に含んでもよいが、再沈殿により取り除くこともできる。熱分解安定性を向上させるという点では、このオリゴマー成分は少ない方が望ましい。
【化6】
【実施例】
【0043】
以下、実施例及び比較例を用いて本発明の実施の形態をより詳細に説明するが、本発明の技術的範囲は下記の形態のみには制限されない。なお、「%」は重量基準を示す。
【0044】
実施例1
セパラブルフラスコに、2,2'‐ジメチルビフェニル−4,4'−ジアミン(m−TB、和歌山精化工業株式会社製)を 50g(0.234mol)、酢酸を71g(1.18mol)、トルエンを120gを仕込み、窒素を導入しながら 50℃に加熱攪拌しながら溶解させた。無水シトラコン酸を52.8g(0.472mol)滴下し、系外に生成水を除去しながら徐々に加熱させ、還流下で1時間反応させた。反応生成物を再沈殿により精製後、白色結晶のビスマレイミド化合物(e-1)を90g得た。収率96%。アミン当量は10万以上であり、アミノ基がほぼ全量反応していることを確認した。生成物の融点は142℃であった。
【0045】
実施例2
無水シトラコン酸の代わりに無水マレイン酸を45.9g加えた他は、実施例1と同様の方法で淡黄色結晶のビスマレイミド化合物(e-2)を60g得た。収率69%。アミン当量は10万以上。
【0046】
実施例3
無水シトラコン酸の代わりに無水2,3−ジメチルマレイン酸を29.5gと無水マレイン酸を23.9g加えた他は、実施例1と同様の方法で淡黄色結晶のビスマレイミド化合物(e-3)を84g得た。収率89%。アミン当量は10万以上。
【0047】
実施例4
m−TBの代わりに、2,2'‐ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル−4,4'−ジアミンを74.9g用いた他は、実施例1と同様の方法で白色結晶のビスマレイミド化合物(e-5)を97g得た。収率82%。アミン当量は10万以上。
【0048】
実施例5
m−TBの代わりに、2,2'‐ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル−4,4'−ジアミンを74.9g用い、無水シトラコン酸の代わりに無水マレイン酸を45.9g加えた他は、実施例1と同様の方法で淡黄色結晶のビスマレイミド化合物(e-6)を94g得た。収率84%。アミン当量は10万以上。
【0049】
比較例1
m−TBの代わりに、4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタンを50g加えた他は、実施例1と同様の方法で白色結晶のビスマレイミド化合物(f-1)90gを得た。収率95%。アミン当量は10万以上、融点189℃であった。
【0050】
比較例2
無水シトラコン酸の代わりに無水マレイン酸を46.5g加えた他は、比較例1と同様の方法で白色結晶のビスマレイミド化合物(f-2)を81g得た。収率93%。アミン当量は10万以上、融点189℃であった。
【0051】
実施例6〜12及び比較例3〜7
ビスマレイミド化合物として上記実施例、比較例で得たe−1、e−2、e−5、e−6、f−1又はf−2を用いた。また、他のマレイミド化合物として、N,N’‐ジフェニルメタンビスマレイミド(BMI;大和化成工業製)、フェニルメタンマレイミドオリゴマー(BMIオリゴマー;BMI−3200、m=8、大和化成工業製)を使用した。また、架橋剤として、o-クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(OCNE;エポキシ当量200、軟化点65℃)、フェノールアラルキル樹脂(PA;三井化学株式会社製、MILEX XLC−4L、OH当量168、軟化点61℃)、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(DPE;和歌山精化工業株式会社製)、ベンゾオキサジン(BF−BXZ;小西化学工業株式会社製)を使用し、促進剤としてトリフェニルホスフィンを樹脂成分に対して1重量部配合して混練し、樹脂組成物を得た。この樹脂組成物を用いて175℃にて成形し、ポストキュアを200℃にて4時間、ポストキュアを行い、硬化物試験片を得た後、各種物性測定に供した。
【0052】
以上の実施例及び比較例で得られた硬化物試験片について、熱安定性試験およびトランスファー成型性評価を実施した。
耐熱性評価は、示差熱熱重量同時測定装置(装置名:エスアイアイ・ナノテクノロジー製TG/DTA7300)を用いて、200mL/minの窒素気流下、10℃/minの昇温速度の条件で、5%重量減少温度(T
d5)及び600℃における重量減少(残炭率)を測定した。
ガラス転移点(Tg)及び線膨張係数(CTE)の測定は、熱機械測定装置(装置名:エスアイアイ・ナノテクノロジー製TMA/SS7100)を用いて、200mL/minの窒素気流下、5℃/minの昇温速度で求めた。Tgは、線膨張係数の変化する変曲点より求めた。CTEは、40〜60℃における試験片の寸法変化より算出した。
成形性の判定は、トランスファー成型機にて曲げ試験片を作成した際に、膨れやクラックのない均一な試験片が得られたものを○とし、そうではないものを×とした。
これら測定により得られた結果を表2に示した。配合の比率はモル比とする。
【0053】
【表2】