特許第6510348号(P6510348)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6510348基板処理装置、基板処理システム、および基板処理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6510348
(24)【登録日】2019年4月12日
(45)【発行日】2019年5月8日
(54)【発明の名称】基板処理装置、基板処理システム、および基板処理方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/306 20060101AFI20190422BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20190422BHJP
【FI】
   H01L21/306 R
   H01L21/306 D
   H01L21/304 621D
【請求項の数】5
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2015-145960(P2015-145960)
(22)【出願日】2015年7月23日
(65)【公開番号】特開2017-28127(P2017-28127A)
(43)【公開日】2017年2月2日
【審査請求日】2018年3月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100146710
【弁理士】
【氏名又は名称】鐘ヶ江 幸男
(74)【代理人】
【識別番号】100186613
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 誠
(72)【発明者】
【氏名】小畠 厳貴
(72)【発明者】
【氏名】八木 圭太
(72)【発明者】
【氏名】塩川 陽一
【審査官】 佐藤 靖史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−049479(JP,A)
【文献】 特開2010−034479(JP,A)
【文献】 特開2012−169649(JP,A)
【文献】 特開2014−183221(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/306
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理液の存在下で基板と触媒とを接触させて、触媒基準エッチングにより前記基板を処理する方法であって、
前記触媒が下端に保持された触媒保持部を前記基板に向かって移動させるステップと、
前記基板を高速で処理するための所定の処理条件で前記基板を処理するステップと、
同一の基板の処理中に、前記基板を低速で処理するように、前記処理条件を変更するステップと、
を有する、
方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、
前記処理条件を変更するステップは、(1)前記触媒の前記基板に対する接触荷重、(2)前記触媒と前記基板との間の相対速度、(3)前記処理液の種類、(4)処理液のpH、(5)前記処理液の流量、(6)前記触媒に印加するバイアス電圧、(7)処理温度、および(8)触媒の種類、のうちの少なくとも1つを変更するステップを有する、
方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の方法であって、前記方法はさらに、
処理中の基板の処理状態を監視するステップと、
前記基板の処理状態に応じて、前記処理条件を変更するステップと、を有する、
方法。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の方法であって、前記方法はさらに、
前記所定の処理条件での基板の処理を開始してから所定の時間が経過した後に、前記処理条件を変更するステップを有する、
方法。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の方法であって、前記方法はさらに、
化学機械的研磨により前記基板を研磨するステップを有する、
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板処理装置、基板処理システム、および基板処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造において、基板の表面を研磨する化学機械的研磨(CMP,Chemical Mechanical Polishing)装置が知られている。CMP装置では、研磨テーブルの上面に研磨パッドが貼り付けられて、研磨面が形成される。このCMP装置は、トップリングによって保持される基板の被研磨面を研磨面に押しつけ、研磨面に研磨液としてのスラリーを供給しながら、研磨テーブルとトップリングとを回転させる。これによって、研磨面と被研磨面とが摺動的に相対移動され、被研磨面が研磨される。
【0003】
ここでCMPを含む平坦化技術については、近年、被研磨材料が多岐に渡り、またその研磨性能(例えば平坦性や研磨ダメージ、更には生産性)に対する要求が厳しくなっている。このような背景の中で、新たな平坦化方法も提案されており、触媒基準エッチング(catalyst referred etching:以下CARE)法もその一つである。CARE法は、処理液の存在下において、触媒材料近傍のみにおいて処理液中から被処理面との反応種が生成され、触媒材料と被処理面を近接乃至接触させることで、触媒材料との近接乃至接触面において、選択的に被処理面のエッチング反応を生じさせることが可能である。例えば、凹凸を有する被処理面においては、凸部と触媒材料とを近接乃至接触させることで、凸部の選択的エッチングが可能になり、よって被処理面の平坦化が可能になる。本CARE方法は、当初はSiCやGaNといった、化学的に安定なためにCMPでの高効率な平坦化が容易でない次世代基板材料の平坦化において提案されてきた(例えば、下記の特許文献1〜4)。しかしながら、近年ではシリコン酸化物等でもプロセスが可能であることが確認されており、シリコン基板上のシリコン酸化膜等の半導体デバイス材料への適用の可能性もある(例えば、下記の特許文献5)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−121099号公報
【特許文献2】特開2008−136983号公報
【特許文献3】特開2008−166709号公報
【特許文献4】特開2009−117782号公報
【特許文献5】WO/2013/084934
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、本CARE法のシリコン基板上の半導体材料の平坦化への適用にあたっては、これまで本工程の代表的な方法であるCMP(化学機械的研磨)と同等の処理性能が求められる。特にエッチング速度及びエッチング量についてはウェハレベル及びチップレベルにて均一性が求められる。また、平坦化性能についても同等であり、これら要求はプロセス世代が進むにつれて更に厳しくなっている。また、通常のシリコン基板上の半導体材料の平坦化工程においては、複数の材料を同時に除去、平坦化するケースが多く、CARE法を用いた基板処理装置においても同様の処理が求められる。
【0006】
異種膜界面の平坦化を伴う基板処理プロセスにおいて、プロセス初期とプロセス終期の処理対象膜が異なる場合、あるいはプロセス要求が異なる場合、基板の処理プロセス初期と終期において同一の処理条件では、基板の平坦性、ディフェクトなどのプロセス性能、
あるいはスループットなどの生産性が必ずしも十分でないことがある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の形態によれば、処理液の存在下で基板と触媒とを接触させて、前記基板を処理する方法が提供される。かかる方法は、前記基板を高速で処理するための所定の処理条件で前記基板を処理するステップと、同一の基板の処理中に、前記基板を低速で処理するように、前記処理条件を変更するステップと、を有する。かかる形態によれば、たとえば、基板処理プロセスの初期と終期において処理対象膜が異なる場合、あるいはプロセス要求が異なる場合などに、それぞれ最適な条件で基板を処理することができる。
【0008】
本発明の第2の形態によれば、第1の形態の方法において、前記処理条件を変更するステップは、(1)前記触媒の前記基板に対する接触荷重、(2)前記触媒と前記基板との間の相対速度、(3)前記処理液の種類、(4)処理液のpH、(5)前記処理液の流量、(6)前記触媒に印加するバイアス電圧、(7)処理温度、および(8)前記触媒の種類、のうちの少なくとも1つを変更するステップを有する。かかる形態によれば、各種の処理条件のパラメータを変更することで、適切な基板の処理条件を実現することができる。
【0009】
本発明の第3の形態によれば、第1の形態または第2の形態の方法において、さらに、処理中の基板の処理状態を監視するステップと、前記基板の処理状態に応じて、前記処理条件を変更するステップと、を有する。かかる形態によれば、基板の処理状態に応じて、最適なタイミングで、基板の処理条件を変更することができる。
【0010】
本発明の第4の形態によれば、第1の形態から第3の形態のいずれか1つの形態の方法において、さらに、前記所定の処理条件での基板の処理を開始してから所定の時間が経過した後に、前記処理条件を変更するステップを有する。かかる形態によれば、たとえば、事前に実験等により高速処理条件から低速処理条件へ変更するタイミングを決定しておくことで、処理中の基板の処理状態を監視しなくても、最適な条件で基板を処理することができる。また、処理中の基板の処理状態を監視しておき、所定の時間が経過した後、および/または、所定の処理状態に達したときに処理条件を変更するようにしてもよい。
【0011】
本発明の第5の形態によれば、処理液の存在下でSiOを含む基板と触媒とを接触させて、前記基板を処理する方法が提供される。かかる方法は、前記基板の表面にフッ化水素酸溶液を供給して、前記基板のSiOをフッ化水素酸溶液によりエッチングするステップを有する。かかる形態によれば、フッ化水素酸溶液による等方的なエッチングと、触媒および処理液を用いたエッチングを併用することができるので、基板の処理を迅速に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】一実施例としての基板処理システムの基板処理装置の概略平面図である。
図2図1に示す基板処理装置の側面図である。
図3】一実施例としての触媒保持部の構成要素を示す概略側面図である。
図4】一実施例としての触媒保持部の構成要素を示す概略側面図である。
図5図4に示す構成要素を示す概略下面図である。
図6】一実施例としての触媒保持部の構成要素を示す概略側面図である。
図7】一実施例としての触媒保持部の概略側面図である。
図8】一実施例としての触媒保持部を示す概略側面図である。
図9】一実施例としての基板処理装置の概略側面図である。
図10】一実施例としての基板処理装置の概略側面図である。
図11】白金触媒を用い、各種の処理液をpH=3において、触媒に印加する電圧を変えた場合のSiO基板のエッチング速度を示すグラフである。
図12】白金触媒およびクロム触媒を用い、処理液をpH=7において、触媒に印加する電圧を変えた場合のSiOのエッチング速度を示すグラフである。
図13】ニッケル触媒を用いて、処理液の各pHにおいて、触媒に印加する電圧を変えた場合のSiOのエッチング速度を示すグラフである。
図14】白金触媒を用いて、処理液の各pHにおいて、触媒に印加する電圧を変えた場合のSiOのエッチング速度を示すグラフである。
図15】一実施例としてのSTI工程の平坦化プロセスの初期の状態を示す概略側面図である。
図16】一実施例としてのSTI工程の平坦化プロセスの終期の状態を示す概略側面図である。
図17図15および図16に示すSTI工程の処理の流れを示す図である。
図18】一実施例としての、ウェハの処理中にエッチング処理条件を変更してウェハWfにエッチング処理を行う他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面とともに、本発明による基板処理装置、基板処理装置を含む基板処理システム、および基板処理方法の実施例を説明する。図面および以下の説明は、説明される実施例の特徴的な部分のみを説明しており、その他の構成要素の説明は省略している。省略された構成要素に他の実施例の特徴や公知の構成を採用することができる。
【0014】
図1は、本発明の一実施例としての基板処理システムの基板処理装置10の概略平面図である。図2は、図1に示す基板処理装置10の側面図である。基板処理装置10は、CARE法を利用して、基板上の半導体デバイス材料(被処理領域)のエッチング処理を行う装置である。基板処理システムは、基板処理装置10と、基板を洗浄するように構成された基板洗浄部と、基板を搬送する基板搬送部とを備えている。また、必要に応じて基板乾燥部も備えてよい(図示省略)。基板搬送部は、ウェット状態の基板およびドライ状態の基板を別々に搬送できるように構成される。更に半導体材料の種類によっては、本基板処理装置による処理の前もしくは後において、従来のCMPによる処理を行って良く、よって更にCMP装置を備えてよい。さらに、基板処理システムは、化学気相成長(CVD)装置、スパッタ装置、メッキ装置、およびコーター装置などの成膜装置を含んでもよい。本実施例では、基板処理装置10は、CMP装置とは別体のユニットとして構成されている。基板洗浄部、基板搬送部およびCMP装置は、周知技術であるので、以下では、これらの図示および説明は省略する。
【0015】
図1に示される基板処理装置10は、基板保持部20と、触媒保持部30と、処理液供給部40と、揺動アーム50と、コンディショニング部60と、制御部90と、を備えている。基板保持部20は、基板の一種としてのウェハWfを保持するように構成されている。本実施例では、基板保持部20は、ウェハWfの被処理面が上方を向くようにウェハWfを保持する。また、本実施例では、基板保持部20は、ウェハWfを保持するための機構として、ウェハWfの裏面(被処理面と反対側の面)を真空吸着する真空吸着プレートを有する真空吸着機構を備えている。真空吸着の方式としては、吸着面に真空ラインに接続された複数の吸着穴を有する吸着プレートを用いた点吸着の方式、吸着面に溝(例えば同心円状)を有し、溝内に設けた真空ラインへの接続穴を通して吸着する面吸着の方式のいずれを用いても良い。また、吸着状態の安定化のために、吸着プレート表面にバッキング材を貼り付け、本バッキング材を介してウェハWfを吸着しても良い。ただし、ウェハWfを保持するための機構は、公知の任意の機構とすることができ、例えば、ウェハWfの周縁部の少なくとも1ヶ所においてウェハWfの表面および裏面をクランプするクランプ機構であっても良く、またウェハWfの周縁部の少なくとも1ヶ所においてウェハWfの側面を保持するローラチャック機構であっても良い。かかる基板保持部20は、駆動
部モータ、アクチュエータ(図示省略)によって、軸線AL1を中心として回転可能に構成されている。また、本図では、基板保持部20は、ウェハWfを保持するための領域よりも外側において、周方向の全体にわたって、鉛直方向上方に向けて延在する壁部21を備えている。これにより処理液PLのウェハ面内での保持が可能となり、その結果処理液PLの使用量の削減が可能である。なお、本図では、壁部21は基板保持部20の外周に固定されているが、基板保持部とは別体で構成されていても良い。その場合、壁部21は上下動を行っても良い。上下動が可能になることで、処理液PLの保持量を変えることが可能になるとともに、例えばエッチング処理後の基板表面を洗浄する場合、壁部21を下げることによって洗浄液のウェハWf外への排出を効率よく行うことができる。
【0016】
図1および図2に示される実施例の触媒保持部30は、その下端に触媒31を保持するように構成されている。本実施例では、触媒31は、ウェハWfよりも小さい。すなわち、触媒31からウェハWfに向けて投影した場合の触媒31の投影面積は、ウェハWfの面積よりも小さい。また、触媒保持部30は、駆動部すなわちアクチュエータ(図示省略)によって軸線AL2を中心として回転可能に構成されている。また、触媒保持部30の触媒31をウェハWfに接触摺動させるためのモータやエアシリンダを後述の揺動アーム50に備えている(図示省略)。次に、処理液供給部40は、ウェハWfの表面に処理液PLを供給するように構成されている。ここで、本図では処理液供給部40は1つだが、複数配置されていても良く、その場合、各処理液供給部から異なる処理液PLを供給しても良い。また、エッチング処理後に本基板処理装置10において、ウェハWf表面の洗浄を行う場合、処理液供給部40からは洗浄用薬液や水を供給しても良い。さらに、処理液供給部40は、後述するように触媒保持部30の内部を通って、触媒31の表面から処理液PLを供給するように構成してもよい。次に、揺動アーム50は、駆動部すなわちアクチュエータ(図示省略)によって、回転中心51を中心として揺動可能に構成されており、また、上下移動可能に構成されている。揺動アーム50の先端(回転中心51と反対側の端部)には、触媒保持部30が回転可能に取り付けられている。
【0017】
図3図4図6図7は、本開示による一実施例としての触媒保持部30の構成を示す概略断面側面図である。本実施例における触媒保持部30は、図3に示されるディスクホルダ部30−70、およびディスクホルダ部30−70に取り付けおよび交換可能な、図4に示されるキャタライザディスク部30−72を含む。図5は、図4に示されるキャタライザディスク部30−72を触媒31の方から見た概略平面図である。なお、図7は、これらが取り付けられた状態を示す図である。図3に示されるように、ディスクホルダ部30−70は、ヘッド30−74を有する。ヘッド30−74の中央には処理液供給通路30−40、触媒電極用の配線、およびカウンター電極用の配線が延びる。また、ジンバル機構30−32(たとえば球面滑り軸受)を介してヘッド30−74が回転可能となるように、ヘッド30−74が揺動アーム50に取り付けられる。ジンバル機構30−32については、たとえば特開2002−210650号公報に開示されているものと類似の機構を採用することができる。図4図5に示されるように、キャタライザディスク部30−72は、触媒保持部材32(たとえば弾性部材32)および触媒保持部材32に保持される触媒31を有する。図示のように、触媒31は、触媒電極30−49に電気的に接続される。また、触媒保持部材32の外側にカウンター電極30−50が配置される。ディスクホルダ部30−70の触媒用の配線およびカウンター電極用の配線は、キャタライザディスク部30−72を接続したときに、それぞれ触媒電極30−49およびカウンター電極30−50に電気的に接続される。触媒電極30−49とカウンター電極30−50の間には外部電源により電圧を印加することができる。また、キャタライザディスク部30−72は、触媒保持部材32および触媒31の外側に、間隔を隔ててこれらを囲む壁部30−52が形成される。触媒31とウェハWfとが接触した状態において、壁部30−52により、処理液PLを保持する処理液保持部が画定される。ディスクホルダ部30−70とキャタライザディスク部30−72とを接続するときに、電気的な接続のため
図6に示されるようなコンタクトプローブ30−76が用いられる。ディスクホルダ部30−70とキャタライザディスク部30−72とが接続されたとき、処理液供給通路30−40は、キャタライザディスク部30−72の触媒保持部材32を貫通して延び、触媒31の表面の供給口30−42まで延びる。
【0018】
本開示に示される任意の触媒保持部30において、触媒31の温度を制御するための触媒温度制御機構を備えることができる。触媒温度制御機構として、たとえば、ペルチェ素子を使用することができる。図8は、一実施例としての触媒保持部30を示す概略側面図である。図8の実施例においては、触媒31は弾性部材32の表面に保持される。触媒31が保持される側と反対側の弾性部材32の面には、支持体32−4が配置される。支持体32−4には、ペルチェ素子32−6が取り付けられる。支持体32−4は、熱伝導性が高い材料であることが望ましく、たとえば金属またはセラミックスなどから形成することができる。本実施例においては、ペルチェ素子32−6を用いて触媒31を昇温することで、エッチングレートを上昇させることができる。逆に、ペルチェ素子32−6を用いて触媒31を冷却することで、エッチングレートを低下させることもできる。また、触媒31を冷却することで、弾性部材32の硬度を高くし、エッチングによる段差解消性を向上させることもできる。また、エッチング開始時に触媒31を昇温し、エッチングがある程度進んだ段階で触媒31を冷却することで、エッチングレートと段差解消性能をともに向上させることができる。なお、図8に示される触媒温度制御機構は、図3図7に示される触媒保持部30に適用してもよい。
【0019】
図1、2に示される実施形態において、コンディショニング部60は、所定のタイミングで触媒31の表面をコンディショニングするように構成されている。このコンディショニング部60は、基板保持部20に保持されたウェハWfの外部に配置されている。触媒保持部30に保持された触媒31は、揺動アーム50によって、コンディショニング部60上に配置されることができる。
【0020】
制御部90は、基板処理装置10の動作全般を制御する。また、制御部90では、ウェハWfのエッチング処理条件に関するパラメータも制御される。こうしたパラメータとしては、例えば、(1)触媒31のウェハWfに対する接触荷重、(2)触媒31とウェハWfとの間の相対速度、たとえば、基板保持部20の回転数、角度回転速度、触媒保持部30の回転数、揺動アーム50の揺動速度などの各種運動条件など、(3)処理液PLの種類、(4)処理液PLのpH、(5)処理液PLの流量、(6)触媒31に印加するバイアス電圧、(7)処理温度、(8)触媒の種類、が挙げられる。これらの、エッチング処理条件を調整することで、エッチング処理速度を調整することができる。また、制御部90では、コンディショニング部60での触媒表面のコンディショニング条件に関するパラメータも制御される。
【0021】
エッチング処理条件として、(1)触媒31のウェハWfに対する接触荷重を調整することで、触媒31とウェハWfの接触面積をある程度調整することができる。触媒31の表面には、微小の凹凸があるので、ある程度の範囲までは接触荷重を大きくすることで、触媒31とウェハWfとの接触面積を大きくすることができ、エッチング処理速度をある程度まで大きくすることができる。(2)触媒31とウェハWfとの間の相対速度を調整することで、触媒31とウェハWfとの間への処理液PLの出入りが良くなるので、ある程度の範囲までは相対速度を大きくすることでエッチング処理速度を大きくすることができる。たとえば、触媒保持部30の回転数、基板保持部20の回転、および揺動アーム50の揺動速度を変更することで、触媒31とウェハWfとの間の相対速度を調整することができる。触媒保持部30および基板保持部20の回転数は、たとえば0rpm〜500rpmの間の任意の回転数とすることができる。一般に、回転速度が大きすぎると、処理液PLがウェハWfの外へ排出されやすくなり、また、回転速度が小さすぎると、処理液
PLのウェハWf面内への広がりが不足する。触媒保持部30および基板保持部20の回転数は、10rmp〜200rpmの範囲とすることが好ましい。揺動アーム50の揺動速度は、たとえば0mm/sec〜250mm/secの間の任意の速度とすることができる。CARE法においては、被加工対象物(ウェハWf)の処理量(エッチング量)は、触媒材料と被加工対象物との近接ないし接触時間に比例する。そのため、ウェハWfのサイズよりも触媒31のサイズが小さい装置においては、触媒保持部30の揺動速度の変化は処理速度および処理速度の分布に影響する。たとえば、触媒保持部30の揺動速度が小さい場合、ウェハWf面内の触媒保持部30が通過する点において、接触時間が増加することからウェハWfの処理量は増加する。また、揺動アーム50を一定速度で揺動させる場合、被加工対象物面内での触媒保持部30の接触時間のばらつきが大きくなるため、被加工対象物面内での処理速度の分布は悪化する。そのため、ウェハWf面内の各領域で適宜揺動速度を調整することで、処理速度および処理速度の面内分布の均一性を同時に向上させることができる。(3)処理液PLの種類によりエッチング速度が変わるので、処理液PLの種類を変えることで、エッチング速度を調整することができる。図11は、白金触媒を用い、各種の処理液PLをpH=3において、触媒に印加する電圧を変えた場合のSiO基板のエッチング速度を示すグラフである。図11のグラフから分かるように、処理液PLの種類によりエッチング速度が異なる。(4)処理液PLのpHを調整することでも、エッチング速度を調整することが可能である。図13は、ニッケル触媒を用いて、処理液PL(水酸化カリウム溶液)の各pHにおいて、触媒に印加する電圧を変えた場合のSiOのエッチング速度を示すグラフである。図14は、白金触媒を用いて、処理液PL(pH=3、5はクエン酸溶液、pH=11は水酸化カリウム溶液)の各pHにおいて、触媒に印加する電圧を変えた場合のSiOのエッチング速度を示すグラフである。図13図14から分かるように、処理液PLのpHを変えることでエッチング速度を調整することが可能である。(5)処理液PLの流量を調整することで、触媒31とウェハWfの間への処理液PLの出入りをある程度調整することができるので、ある程度エッチング速度を調整するこができる。(6)触媒に印加するバイアス電圧を調整することで、エッチング速度を調整することができる。図12は、白金触媒およびクロム触媒を用い、処理液PL(純水)をpH=7において、触媒に印加する電圧を変えた場合のSiOのエッチング速度を示すグラフである。図11図14のグラフに示されるように、触媒に印加する電圧を変化させることで、エッチング速度を調整することができる。なお、具体的には、図7に示される触媒保持部30の触媒電極30−49とカウンター電極30−50との間の電圧を調整することにより、触媒31に印加する電圧を変化させることができる。(7)エッチング処理時の処理温度を調整することで、エッチング速度を調整することができる。たとえば、処理液PLの温度および/または基板保持部の温度を調整することで、エッチング速度を調整することができる。具体的には、図8で上述したペルチェ素子32−6を使用した触媒温度制御機構により、触媒の温度を調整することができ、また、後述の基板温度制御部121によりウェハWfの温度を制御することができる。あるいは、処理液PLの温度を調整してもよい。(8)触媒の種類を変更することで、エッチング速度を調整することができる。触媒の種類としては、たとえば、貴金属、遷移金属、セラミックス系固体触媒、塩基性固体触媒、酸性固体触媒などを利用することができる。
【0022】
図9は、一実施例としての基板処理装置110の概略構成を示している。図9では、図2に示す構成要素と同一の構成要素には、図2と同一の符号を付して、その説明を省略する。この点は、他の図面にも適用される。本実施例の基板処理装置110では、基板保持部120の内部には、基板温度制御部121が配置されている。基板温度制御部121は、例えばヒータであり、ウェハWfの温度を制御するように構成されている。基板温度制御部121によって、ウェハWfの温度は、所望の温度に調節される。CARE法は、化学エッチングであるため、そのエッチング速度は、基板温度に依存する。かかる構成によれば、基板温度に応じてエッチング速度を変化させることが可能であり、その結果、エッ
チング速度及びその面内分布の調整が可能である。なお、本実施例では、ヒータは同心円状に複数配置されており、各ヒータの温度を調整しても良いが、単一のヒータをらせん状に基板保持部120内に配置しても良い。
【0023】
代替態様として、基板温度制御部121に代えて、または、加えて、基板処理装置110は、処理液PLの温度を、所定温度に調整する処理液温度調整部を備えていてもよい。あるいは、これらに代えて、または加えて、触媒保持部30に、触媒31の温度を調整する触媒温度制御機構を備えていてもよい。たとえば、図8とともに説明したペルチェ素子32−6を用いることができる。これらの構成によっても、処理液温度を調節することで、エッチング速度の調整が可能となる。ここで、処理液PLの温度は、例えば、10℃以上かつ60℃以下の範囲内の所定温度に調節されてもよい。
【0024】
また、上記温度依存性を応用し、例えば基板処理装置110を恒温槽内に配置し、基板処理装置110全体の温度をコントロールすることにより、エッチング性能の安定化が可能である。
【0025】
また、さらに、処理状態においては、基板上で、異種材料が混載して露出している場合もある。触媒材料の種類によっても該材料のエッチング速度が異なることから、処理状態に応じて触媒材料を変えることでエッチング速度を変えてもよい。たとえば、後述するように、基板処理装置10が複数の触媒保持部30を備えるようにしても良い。
また、一実施例として、基板処理装置10は、触媒保持部30に加えて、化学機械的研磨(CMP)を行うための機構を備えるようにしてもよい。たとえば、CMP機構として、本開示による触媒保持部30と同程度の寸法のCMP研磨パッドを、揺動アーム50と類似の機構によりウェハWfに押しつけて、研磨液を供給しながらウェハWfを研磨する機構とすることができる。CMP機構は従来のものを使用することができるので、本稿では詳細には説明しない。本実施例において、CMP機構による研磨とCARE法によるエッチング処理は、同時に行ってもよく、または連続的に行うようにしてもよい。CMPによる研磨とCARE法によるエッチング処理を併用することで、ウェハWfの処理速度を向上させることができる。
【0026】
図10は、一実施例としての基板処理装置410の概略構成を示している。基板処理装置410は、モニタリング部480を備え、制御部490がパラメータ変更部491を備えている。モニタリング部480は、ウェハWfの被処理領域のエッチング処理状態をモニタリングする。モニタリング部480は、アクチュエータによって、ウェハWfにおける特定位置に水平方向に移動可能に構成されている。なお、本モニタリング部480は特定位置に固定されていても良いが、エッチング処理時においてウェハWfの面内を移動しても良い。モニタリング部480がウェハWfの面内を移動する場合には、モニタリング部480を触媒保持部30と連動して移動するようにしても良い。これにより、ウェハWf面内のエッチング処理状態の分布を把握することが可能である。ここで、モニタリング部480の構成は被処理領域の材料によって異なる。また、被処理領域が複数の材料により構成される場合には、複数のモニタリング部を組み合わせて使用しても良い。例えば、処理対象がウェハWf上に形成された金属膜である場合には、モニタリング部480は、渦電流モニタリング部として構成されてもよい。具体的には、モニタリング部480は、ウェハWfの表面に近接して配置されたセンサコイルに高周波電流を流してウェハWfに渦電流を発生させ、ウェハWf上に形成された導電性の金属膜に誘導磁場を生じさせる。ここで生じる渦電流及びこれにより算出される合成インピーダンスは、金属膜の厚みに応じて変化することから、モニタリング部480は、かかる変化を利用して、エッチング処理状態のモニタリングを行うことが可能である。
【0027】
モニタリング部480は、上述の構成に限らず、種々の構成を備えることができる。例
えば、酸化膜のように処理対象が光透過性を有する材料である場合には、モニタリング部480は、ウェハWfの被処理領域に向けて光を照射し、反射光を検出してもよい。具体的には、ウェハWfの被処理領域の表面での反射光と、ウェハWfの被処理層を透過した後に反射する反射光とが重ね合わされ干渉した反射光を受光する。ここで、本反射光強度は被処理層の膜厚により変化することから、本変化に基づいてエッチング処理状態のモニタリングを行うことが可能である。
【0028】
あるいは、被処理層が化合物半導体(例えば、GaN,SiC)である場合には、モニタリング部480は、光電流式、フォトルミネッセンス光式、ラマン光式の少なくとも1つを利用してもよい。光電流式は、ウェハWfの表面に励起光を照射した時にウェハWfと、基板保持部20に設けた金属配線と、を繋ぐ導線に流れる電流値を測定してウェハWfの表面のエッチング量を測定する。フォトルミネッセンス光式は、ウェハWfの表面に励起光を照射した時に当該表面から放出されるフォトルミネッセンス光を測定してウェハWfの表面のエッチング量を測定する。ラマン光式は、ウェハWfの表面に可視の単色光を照射して当該表面からの反射光に含まれるラマン光を測定してウェハWfの表面のエッチング量を測定する。
【0029】
あるいは、モニタリング部480は、基板保持部220と触媒保持部30とが相対的に移動する際の駆動部のトルク電流に基づいてエッチング処理状態をモニタリングしてもよい。かかる形態によれば、基板の半導体材料と触媒との接触により発生する摩擦状態を、トルク電流を介してモニタリングすることが可能であり、例えば被処理面の半導体材料の凹凸状態の変化や他材料の露出に伴うトルク電流の変化によりエッチング状態をモニタリングするが可能となる。
【0030】
また、一実施例として、モニタリング部480は、触媒保持部30に備えられる振動センサとすることができる。振動センサで、基板保持部220と触媒保持部30とが相対的に移動する際の振動を検出する。ウェハWfの処理中に、ウェハWfの凸凹状態が変化する場合や、他の材料が露出する場合に、ウェハWfと触媒31との摩擦状態が変化することで振動状態が変化する。この振動の変化を振動センサで検出することにより、ウェハWfの処理の状態を検出することができる。
【0031】
こうしてモニタリングされたエッチング処理状態は、パラメータ変更部491によって、基板処理装置10において処理中のウェハまたは次のウェハWfの処理に反映される。具体的には、パラメータ変更部491は、モニタリング部480によってモニタリングされたエッチング処理状態に基づいて、処理中のウェハまたは次のウェハのエッチング処理条件に関わる制御パラメータを変更する。例えば、パラメータ変更部491は、モニタリング部480のモニタリング結果に基づいて得られた被処理層の厚み分布と、予め定められた目標厚み分布と、の差分に基づいて、当該差分が小さくなるように制御パラメータを変更する。かかる構成によれば、モニタリング部480のモニタリング結果をフィードバックして、処理中のウェハまたは次のウェハの処理におけるエッチング特性の改善が可能である。
【0032】
制御部490は、モニタリング部480のモニタリング結果を、処理中のウェハWfの処理にフィードバックしてもよい。例えば、モニタリング部480は、モニタリング部480のモニタリング結果に基づいて得られた被処理領域の厚み分布と、予め定められた目標厚み分布と、の差分が所定範囲(理想的にはゼロ)になるように、基板処理装置10の処理条件内のパラメータを処理中において変更しても良い。なお、モニタリング部480で得られるモニタリング結果は、上述の処理条件へのフィードバックのみならず、処理の終点を検知するための終点検知部としても機能させることが可能である。
【0033】
一実施例としての基板処理装置10において、触媒31は、2種類以上の個々の触媒を備えていている。代替態様として、触媒31は、2種類の触媒が含まれる混合物(例えば、合金)または化合物(例えば、金属間化合物)であってもよい。かかる構成によれば、ウェハWfの領域に応じて2種類以上の異なる材質の被処理面が形成されている場合に、ウェハWfを均一に、または、所望の選択比でエッチングができる。例えば、ウェハWfの第1の領域にCuの層が形成され、第2の領域にSiOの層が形成されている場合には、触媒31は、Cu用の酸性固体触媒からなる領域と、SiO用の白金からなる領域と、を備えていてもよい。この場合、処理液PLには、Cu用のオゾン水と、SiO用の酸と、が使用されてもよい。あるいは、ウェハWfの第1の領域にIII−V族金属(例えば、GaAs)の層が形成され、第2の領域にSiOの層が形成されている場合には、触媒31は、III−V族金属用の鉄からなる領域と、SiO用の白金やニッケルからなる領域と、を備えていてもよい。この場合、処理液PLには、III−V族金属用のオゾン水と、SiO用の酸と、が使用されてもよい。
【0034】
この場合、基板処理装置10は、複数の触媒保持部30を備えていてもよい。複数の触媒保持部30の各々は、相互に異なる種類の触媒を保持していてもよい。例えば、第1の触媒保持部30は、酸性固体触媒からなる触媒31を保持し、第2の触媒保持部30は、白金からなる触媒31を保持していてもよい。この場合、2つの触媒保持部30は、ウェハWf上の対応する材質の層上のみをスキャンする構成とすることができる。かかる構成によれば、第1の触媒保持部30と第2の触媒保持部30とを順次または同時に使用し、使用する触媒保持部30に応じた処理液PLを供給することにより、より効率的な処理を行うことができる。その結果、単位時間あたりの処理能力を向上できる。
【0035】
代替態様として、異なる種類の処理液PLが順次供給されてもよい。かかる構成によれば、ウェハWfの領域に応じて2種類以上の異なる材質の被処理面が形成されている場合に、ウェハWfを均一に、または、所望の選択比でエッチング処理できる。例えば、触媒保持部30は、白金からなる触媒を保持していてもよい。そして、基板処理装置10は、まず、処理液PLとして、中性溶液またはGaイオンを含む溶液を供給して、ウェハWfのIII−V族金属の層をエッチングし、次に、処理液PLとして酸を供給して、ウェハWfのSiOの層をエッチングしてもよい。
【0036】
さらなる代替態様として、基板処理装置10は、同一種類の触媒を保持する複数の触媒保持部30を備えていてもよい。かかる場合、複数の触媒保持部30は、同時に使用されてもよい。かかる構成によれば、単位時間あたりの処理能力を向上できる。
【0037】
本基板処理装置10での基板のエッチング処理の基本的な流れについて説明する。まず基板搬送部よりウェハWfが基板保持部20に真空吸着により保持される。次に処理液供給部40により処理液PLが供給される。次に、揺動アーム50によって、触媒保持部30の触媒31がウェハWf上の所定の位置に配置された後、触媒保持部30の上下動により、ウェハWfの被処理領域と触媒31とが接触し、また所定の接触圧力に調整される。また、本接触動作と同時もしくは接触後において、基板保持部20と触媒保持部30との相対移動が開始される。かかる相対移動は、本実施例では、基板保持部20の回転と、触媒保持部30の回転と、揺動アーム50による揺動運動とによって実現される。なお、基板保持部20と触媒保持部30との相対移動は、基板保持部20および触媒保持部30のうちの少なくとも一方の、回転運動、並進運動、円弧運動、往復運動、スクロール運動、角度回転運動(360度未満の所定の角度だけ回転する運動)のうちの少なくとも1つによって実現することができる。
【0038】
かかる動作によって、触媒31の触媒作用によって、ウェハWfと触媒31との接触箇所において、触媒31の作用により生成されたエッチャントがウェハWf表面に作用する
ことにより、ウェハWfの表面がエッチング除去される。ウェハWfの被処理領域は、任意の単一または複数の材質から構成されることができ、例えば、SiOやLow−k材料に代表される絶縁膜、CuやWに代表される配線金属、Ta、Ti、TaN、TiN、Co等に代表されるバリアメタル、GaAs等に代表されるIII−V族材料である。また、触媒31の材質としては、例えば、貴金属、遷移金属、セラミックス系固体触媒、塩基性固体触媒、酸性固体触媒などとすることができる。また、処理液PLは、例えば、酸素溶解水、オゾン水、酸、アルカリ溶液、H水、フッ化水素酸溶液などとすることができる。なお、触媒31および処理液PLは、ウェハWfの被処理領域の材質によって、適宜設定することができる。例えば、被処理領域の材質がCuである場合、触媒31としては酸性固体触媒が用いられ、処理液PLとしてはオゾン水が用いられても良い。また、被処理領域の材質がSiOである場合には、触媒31には白金やニッケルが用いられ、処理液PLには酸が用いられても良い。また、被処理領域の材質がIII−V族金属(例えば、GaAs)である場合には、触媒31には鉄が用いられ、処理液PLにはH水が用いられても良い。
【0039】
また、ウェハWfの被処理領域において、エッチング対象の材料が複数混在する場合には個々の材料に対して複数の触媒及び処理液PLを用いても良い。具体的な運用としては、触媒側については、(1)複数の触媒を配置した1個の触媒保持部での運用、(2)異なる触媒をそれぞれ配置した複数の触媒保持部による運用がある。ここで、(1)については、複数の触媒材料を含む混合物や化合物であっても良い。また、処理液側について、触媒側が(1)の形態の場合は、個々の触媒材料によるエッチング対象材料のエッチングに適した成分を混合したものを処理液PLとして使用しても良い。また、触媒側が(2)の形態の場合は、それぞれの触媒保持部近傍にエッチング対象材料のエッチングに適した処理液PLを供給しても良い。
【0040】
また、本実施例において、触媒31はウェハWfよりも小さいため、ウェハWf全面をエッチング処理する場合、触媒保持部30はウェハWf全面上を揺動する。ここで、本CARE法では触媒との接触部においてのみエッチングが生じるため、ウェハWfと触媒31との接触時間のウェハ面内分布がエッチング量のウェハ面内分布に大きく影響する。これについては、揺動アーム50のウェハ面内での揺動速度を可変にすることで、接触時間の分布を均一化することが可能である。具体的には、ウェハWf面内での揺動アーム50の揺動範囲を複数の区間に分割し、各区間において揺動速度を制御する。
【0041】
以上説明したCARE法を用いた基板処理装置10によれば、ウェハWfと触媒31との接触箇所のみにおいてエッチングが生じ、それ以外のウェハWfと触媒31との非接触箇所ではエッチングは生じない。このため、凹凸を有するウェハWfの凸部のみが選択的に化学的に除去されるので、平坦化処理を行うことができる。また、ウェハWfを化学的に処理するので、ウェハWfの加工面にダメージが生じにくい。なお、理論上は、ウェハWfと触媒31とは、必ずしも接触しなくてもよく、近接していてもよい。この場合、近接とは、触媒反応によって生成されるエッチャントが、ウェハWfの被処理領域に到達できる程度に近いことと定義することができる。ウェハWfと触媒31との離隔距離は、例えば、50nm以下とすることができる。
【0042】
以下において、上述した基板処理装置および基板処理システムを用いた基板処理方法の実施例を説明する。
【0043】
図15および図16は、一実施例としての基板処理の様子を示す概略断面図である。図15および図16は、STI工程の平坦化プロセスの一部を示している。図15は、平坦化プロセスの初期の状態を示す概略側面図である。図15に示されるように、平坦化処理されるウェハWfは、表面上に段差のあるSiO膜が形成されている。図示の例におい
て、段差のあるSiOの段差を解消し、その下にあるSiNの層を露出させるところまでウェハWfをエッチング処理する。図17は、図15および図16に示すSTI工程の処理の流れを示す図である。
【0044】
図15に示される平坦化の初期プロセスにおいて、ウェハWfは基板保持部20に保持されている(S100)。基板保持部20に保持されたウェハWに対して、SiOの段差をできるだけ高速にエッチング処理する(S102)。具体的な処理パラメータとしては、(1)触媒31のウェハWfに対する接触荷重、(2)触媒31とウェハWfとの間の相対速度、(3)処理液PLの種類、(4)処理液PLのpH、(5)処理液PLの流量、(6)触媒31に印加するバイアス電圧、(7)処理温度、および(8)触媒の種類、などをエッチング速度が大きくなるように調整する。一例として、処理パラメータを、接触荷重:210hPa、相対速度:0.4m/s、処理液の種類:クエン酸溶液、処理液のpH:3、処理液の流量:500mL/min、バイアス電圧:+1.0V、処理温度:50℃、触媒の種類:白金とする。
【0045】
なお、処理液PLは、図1、2に示されるように、触媒保持部30の外側から供給してもよく、また、図7に示されるように、触媒保持部の内側から供給してもよい。また、触媒31にバイアス電圧を印加してもよい。具体的には、図7に示される触媒保持部において、触媒電極30−49とカウンター電極30−50との間に所定の電圧を印加することができる。
【0046】
ウェハWfのSiOの段差が解消されると、図16に示される状態になる。図16は、平坦化プロセスの終期の状態を示す概略側面図である。なお、SiOの段差が解消されたことは、上述のモニタリング部480により検知することができる。あるいは、予め決定された処理時間が経過したことにより、SiOの段差が解消されたと判断してもよい。図16に示される平坦化プロセスの終期においては、SiOの膜は薄くなっており、露出させるSiNの膜に近くなっているので、SiNの膜が完全に露出するまでは、プロセス初期よりも低速でエッチング処理を行うことが望ましい。そのため、処理パラメータをプロセス初期よりも低速でエッチングするように変更して、低速でエッチング処理を行う(S104)。一例として、処理パラメータを、接触荷重:70hPa、相対速度:0.1m/s、処理液の種類:水酸化カリウム溶液、処理液のpH:11、処理液の流量:100mL/min、バイアス電圧:0V、処理温度:20℃、触媒の種類:白金とする。
【0047】
図18は、ウェハWfの処理中にエッチング処理条件を変更してウェハWfにエッチング処理を行う他の例を示す図である。図18に示される例は、Si上に段差のあるSiO膜が形成されており、SiOの段差を解消してSiの表面が露出することころまで、SiOをエッチング除去する場合の例である。
【0048】
図18(c)の例においては、最初にフッ化水素酸溶液(HF)を用いてSiOを等方的にエッチングすると同時に、CARE法によりSiOの段差を同時に解消させる。このとき、フッ化水素酸溶液でのエッチングは、SiOの溝の底部がSiの表面と同じ高さになるまで行う。その後、フッ化水素酸溶液でのエッチングを終了し、残りの段差をCARE法のみで解消させる。フッ化水素酸溶液によるSiOのエッチング速度はCARE法によるエッチング速度よりも高速であるため、フッ化水素酸溶液による等方的なエッチングとCARE法による段差解消を同時に行うことにより、CARE法単独で処理するよりも短時間で処理を完了させることができる。
図18(c)の例においては、フッ化水素酸溶液によるエッチングとCARE法による段差解消を同時に行っているが、図18(a)および図18(b)に示すようにそれぞれを連続で行うようにしてもよい。それにより、フッ化水素酸溶液とCARE法で用いる溶
液が混合して反応生成物が生じてスクラッチが発生する等の処理性能の悪化を抑制することができる。
図18(a)の例においては、最初にCARE法によりSiOの段差を解消して、SiOの膜を平坦化する。その後、フッ化水素酸溶液(HF)を用いてSiOを等方的にエッチングして、Siを露出させる。最後にフッ化水素酸溶液でエッチングすることで、触媒が被処理面と接触することにより生じ得る被処理面のダメージをより低減することができる。
【0049】
図18(b)の例においては、最初にフッ化水素酸溶液(HF)を用いてSiOを等方的にエッチングする。このとき、SiOの溝の底部がSiの表面と同じ高さになるまでフッ化水素酸溶液でエッチングする。その後、CARE法によりSiOの段差を解消してSiを露出させる。最後にCARE法による段差解消を行うことで、基板保持部220と触媒保持部30とが相対的に移動する際の駆動部のトルク電流に基づいてエッチング処理状態をモニタリングする方法を適用することが可能となる。
【0050】
なお、図18で示される例において、CARE法を行う場合、上述したように途中でエッチング処理条件を変更してもよい。
【0051】
以上のように本願発明の実施形態を説明してきたが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではない。また、上述の実施形態のそれぞれの特徴は互いに矛盾しない限り組み合わせまたは交換することができる。
【符号の説明】
【0052】
10…基板処理装置
20…基板保持部
21…壁部
30…触媒保持部
30−40…処理液供給通路
30−42…供給口
30−49…触媒電極
30−50…カウンター電極
30−52…壁部
30−70…ディスクホルダ部
30−72…キャタライザディスク部
30−74…ヘッド
30−76…コンタクトプローブ
31…触媒
40…処理液供給部
50…揺動アーム
60…コンディショニング部
90…制御部
480…モニタリング部
491…パラメータ変更部
Wf…ウェハ
PL…処理液
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18