特許第6511212号(P6511212)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6511212真空装置、吸着装置、導電性薄膜製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6511212
(24)【登録日】2019年4月12日
(45)【発行日】2019年5月15日
(54)【発明の名称】真空装置、吸着装置、導電性薄膜製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/683 20060101AFI20190425BHJP
【FI】
   H01L21/68 R
【請求項の数】29
【全頁数】30
(21)【出願番号】特願2019-508282(P2019-508282)
(86)(22)【出願日】2018年11月7日
(86)【国際出願番号】JP2018041306
【審査請求日】2019年2月14日
(31)【優先権主張番号】特願2017-217198(P2017-217198)
(32)【優先日】2017年11月10日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000231464
【氏名又は名称】株式会社アルバック
(74)【代理人】
【識別番号】100102875
【弁理士】
【氏名又は名称】石島 茂男
(74)【代理人】
【識別番号】100106666
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 英樹
(72)【発明者】
【氏名】前平 謙
(72)【発明者】
【氏名】不破 耕
(72)【発明者】
【氏名】橘高 朋子
(72)【発明者】
【氏名】大野 哲宏
(72)【発明者】
【氏名】阪上 弘敏
【審査官】 山口 大志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−037159(JP,A)
【文献】 特開2004−031502(JP,A)
【文献】 特開2012−044200(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/683
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空槽と、
前記真空槽の内部に配置された吸着装置と、
を有し、
前記吸着装置は、
吸着板と、
前記吸着板の片面である吸着面と、
前記吸着面上に設けられた第一の領域に互いに離間して配置された第一の正電極と第一の負電極と、
前記吸着面上で前記第一の領域と離間した場所に設けられた第二の領域に互いに離間して配置された第二の正電極と第二の負電極と、
を有する真空装置であって、
前記吸着装置を回転させ、前記吸着装置を立設された立設姿勢と横設された横設姿勢とにする回転装置と、
前記吸着装置と一緒に立設姿勢にされた前記吸着対象物に導電性薄膜を形成する薄膜形成装置と、
前記第一の正電極と前記第一の負電極との間に第一の吸着電圧を印加して、前記吸着装置に配置された吸着対象物の誘電体をグラディエント力によって吸着し、前記第二の正電極と前記第二の負電極との間に前記第一の吸着電圧よりも低電圧の第二の吸着電圧を印加して前記吸着対象物に形成された前記導電性薄膜を静電吸着力によって吸着する吸着電源と、
が設けられ、
前記第一の領域は、前記吸着装置が立設姿勢にされると前記第二の領域の上方に位置するようにされ、
前記吸着電源と前記回転装置は、前記第一の正電極と前記第一の負電極との間に前記第一の吸着電圧を印加しながら前記吸着装置を横設姿勢から立設姿勢にすることができるように構成された真空装置。
【請求項2】
前記吸着装置は前記吸着板の一辺と平行に設けられた回転軸を有し、
前記回転装置は前記吸着装置を前記回転軸を中心に回転させる請求項1記載の真空装置。
【請求項3】
前記第一の正電極の側面と前記第一の負電極の側面とは第一の距離で離間され、
前記第二の正電極の側面と前記第二の負電極の側面とは、前記第一の距離よりも長い第二の距離で離間された請求項2記載の真空装置。
【請求項4】
前記第一の正電極の幅と前記第一の負電極の幅とは、前記第二の正電極の幅と前記第二の負電極の幅とよりも小さく形成された請求項3記載の真空装置。
【請求項5】
前記薄膜形成装置は、前記吸着装置と一緒に立設姿勢にされた前記吸着対象物が対面する導電性のスパッタリングターゲットが配置され、
前記スパッタリングターゲットがスパッタされると、前記導電性薄膜が成長される請求項4記載の真空装置。
【請求項6】
前記第一の正電極と前記第一の負電極と前記第二の正電極と前記第二の負電極とを取り囲む環状形状の環状電極が設けられ、
前記環状電極には、前記第二の正電極と前記第二の負電極のうち、いずれか一方の電極に印加される電圧と同じ値の電圧が印加される請求項1乃至請求項5のいずれか1項記載の真空装置。
【請求項7】
熱媒体ガスを前記吸着装置に供給する熱媒体ガス供給装置を有する請求項6記載の真空装置であって、
前記吸着装置の前記吸着面上には、前記吸着装置の表面に露出する保護膜が設けられ、
前記保護膜には、溝から成るガス用溝と、前記環状電極の真上位置に形成され、上端が前記ガス用溝の底面よりも高くされた環状突条と、前記ガス用溝と前記ガス用溝との間に位置し上端が前記ガス用溝の底面よりも高くされた支持突起と、前記ガス用溝に接続され前記ガス用溝に前記熱媒体ガスを導入するガス導入孔と、が形成され、
前記真空槽には、前記熱媒体ガスを検出する検出装置が設けられた真空装置。
【請求項8】
前記第二の正電極と前記第二の負電極のうち、いずれか一方の電極に印加される電圧と同じ電圧が印加される補助電極が、前記第一の領域に配置された請求項7記載の真空装置。
【請求項9】
前記補助電極は前記環状電極によって取り囲まれた請求項8記載の真空装置。
【請求項10】
側面が前記第一の距離で互いに離間された第三の正電極と第三の負電極とが前記第二の領域に設けられ、
前記吸着電源は、前記第三の正電極と前記第三の負電極との間に前記第一の吸着電圧と同じ値の第三の吸着電圧を印加する請求項9記載の真空装置。
【請求項11】
前記第三の正電極と前記第三の負電極とは前記環状電極によって取り囲まれた請求項10記載の真空装置。
【請求項12】
吸着板と、
前記吸着板の片面である吸着面と、
前記吸着面には、前記吸着板が立設姿勢にされたときに上方に位置する第一の領域と、前記第一の領域の下方に位置する第二の領域とが設けられ、
前記第一の領域には、互いに離間して配置された第一の正電極と第一の負電極とが設けられ、
前記第二の領域には、互いに離間して配置された第二の正電極と第二の負電極とが設けられ、
前記第一の正電極と前記第一の負電極との間には、前記第一の領域上と前記第二の領域上に亘って配置された吸着対象物の誘電体をグラディエント力によって吸着する第一の吸着電圧が印加され、
前記第二の正電極と前記第二の負電極との間には、前記第一の吸着電圧よりも低電圧であって、前記吸着対象物に形成された導電性薄膜を静電吸着力によって吸着する第二の吸着電圧が印加される吸着装置。
【請求項13】
前記吸着板の一辺と平行に設けられた回転軸を有し、
前記回転軸を中心に回転され、立設された立設姿勢と横設された横設姿勢とで静止される請求項12記載の吸着装置。
【請求項14】
前記第一の正電極の側面と前記第一の負電極の側面とは第一の距離で離間され、
前記第二の正電極の側面と前記第二の負電極の側面とは、前記第一の距離よりも長い第二の距離で離間された請求項13記載の吸着装置。
【請求項15】
前記第一の正電極と前記第一の負電極と前記第二の正電極と前記第二の負電極とを取り囲む環状形状の環状電極が設けられ、
前記環状電極には、前記第二の正電極と前記第二の負電極のうち、いずれか一方の電極に印加される電圧と同じ値の電圧が印加される請求項12乃至請求項14のいずれか1項記載の吸着装置。
【請求項16】
前記吸着装置の前記吸着面上には、前記吸着装置の表面に露出する保護膜が設けられた請求項15記載の吸着装置。
【請求項17】
前記保護膜には、溝から成るガス用溝と、前記環状電極の真上位置に形成され、上端が前記ガス用溝の底面よりも高くされた環状突条と、前記ガス用溝と前記ガス用溝との間に位置し上端が前記ガス用溝の底面よりも高くされた支持突起と、前記ガス用溝に接続され前記ガス用溝に熱媒体ガスを導入するガス導入孔と、が形成された請求項16記載の吸着装置。
【請求項18】
前記第二の正電極と前記第二の負電極のうち、いずれか一方の電極に印加される電圧と同じ電圧が印加される補助電極が、前記第一の領域に配置された請求項17記載の吸着装置。
【請求項19】
前記補助電極は前記環状電極によって取り囲まれた請求項18記載の吸着装置。
【請求項20】
側面が前記第一の距離で互いに離間された第三の正電極と第三の負電極とが前記第二の領域に設けられた請求項19記載の吸着装置。
【請求項21】
前記第三の正電極と前記第三の負電極とは前記環状電極によって取り囲まれた請求項20記載の吸着装置。
【請求項22】
真空雰囲気中で横設姿勢の吸着装置に誘電体の吸着対象物を配置し、前記吸着対象物を立設姿勢にして前記吸着対象物の表面に導電性薄膜を成長させる導電性薄膜製造方法であって、
前記吸着装置の吸着板の第一の領域に設けられた第一の正電極と第一の負電極の間にグラディエント力を発生させる第一の吸着電圧の大きさの電圧を印加し、誘電体の前記吸着対象物を吸着しながら前記吸着装置を回転させ、前記吸着対象物と前記吸着装置とを一緒に立設姿勢にし、前記第一の領域の下方に位置する第二の領域に設けられた第二の正電極と第二の負電極との間に静電気力を発生させる第二の吸着電圧を印加し、前記吸着装置に成長中の前記導電性薄膜を吸着させる導電性薄膜製造方法。
【請求項23】
立設姿勢にされた前記吸着装置の前記第一の正電極と前記第一の負電極との間に、立設姿勢にされた前記吸着対象物の前記導電性薄膜と前記第二の正電極の間と、前記導電性薄膜と前記第二の負電極との間とに静電吸着力を発生させる第二の吸着電圧を印加して前記導電性薄膜を前記第二の正負電極によって吸着した後、前記第一の正負電極の間に印加される電圧を減少させる請求項22記載の導電性薄膜製造方法。
【請求項24】
前記第一の正電極と前記第一の負電極との間に印加される電圧を減少させた後、それぞれ立設姿勢にされた前記吸着対象物と前記吸着装置との間に前記吸着装置のガス導入孔から熱媒体ガスを導入し、前記真空雰囲気中の熱媒体ガスを検出する請求項23記載の導電性薄膜製造方法。
【請求項25】
立設姿勢にした前記吸着対象物と対面するスパッタリングターゲットをスパッタリングし、前記導電性薄膜を成長させる請求項24記載の導電性薄膜製造方法。
【請求項26】
前記熱媒体ガスの導入を開始した後に前記スパッタリングターゲットに供給する電力を、前記ガス導入孔から前記熱媒体ガスの導入を開始する前に前記スパッタリングターゲットに供給する電力よりも大きくする請求項25記載の導電性薄膜製造方法。
【請求項27】
前記第一の正電極と前記第一の負電極と前記第二の正電極と前記第二の負電極とを取り囲む環状電極に、前記第二の正電極又は前記第二の負電極のうち、いずれか一方の電極と同じ値の電圧を印加し、静電気力によって前記環状電極で前記導電性薄膜を吸着し、前記環状電極上に配置された環状突条に前記吸着対象物を押しつけながら、前記環状突条によって取り囲まれた領域内に配置された前記ガス導入孔から前記熱媒体ガスを導入する請求項24乃至請求項26のいずれか1項記載の導電性薄膜製造方法。
【請求項28】
前記第一の正電極と前記第一の負電極との間に前記第一の吸着電圧を印加する際に、前記第二の領域に設けられた第三の正電極と第三の負電極との間に前記第一の吸着電圧を印加する請求項27記載の導電性薄膜製造方法。
【請求項29】
前記第二の正電極と前記第二の負電極とに前記第二の吸着電圧を印加する際に、前記第一の領域に設けられた補助電極と、前記第二の正電極又は前記第二の負電極のうちのいずれか一方の電極との間に、前記第二の吸着電圧を印加する請求項27記載の導電性薄膜製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は真空装置に関係し、特に真空装置に用いる吸着装置に関する。
【背景技術】
【0002】
大型基板を吸着装置に水平に配置して吸着させ、熱伝導率が高い状態で、大型基板の表面に薄膜を形成するために、吸着装置の電極を大型基板の裏面に接触させ、電極に高電圧を印加して大型基板を吸着する吸着装置を用いる技術があり、表面に導電体薄膜が形成された大型基板を吸着するためには静電気力(静電吸着力とも言う)を発生させる吸着装置が用いられ、誘電体から成る大型基板を吸着するためにはグラディエント力を発生させる静電吸着装置が用いられている。
【0003】
液晶表示装置等の表示装置は大型化しており、それに伴い表示装置の基板は年々大型化しており、水平にされた基板に薄膜を成長させる真空装置は設置面積が大きくなりすぎてしまうことから、近年では、水平に配置された基板を真空雰囲気内で吸着装置に吸着させ、吸着装置を直立させることで基板を直立させ、基板に薄膜を成長させる真空装置が用いられている。
【0004】
しかしながら誘電体基板をグラディエント力で吸着して金属薄膜を成長させると、グラディエント力が弱くなる現象が観察されており、そのため、グラディエント力で直立させた誘電体基板が吸着装置から剥離する、あるいはその自重で座屈することで一部が剥離する恐れが指摘されている。
【0005】
そのため、例えば大型基板の裏面を接着剤によって保持用板に貼付させ、大型基板を立設させてその表面に薄膜を形成する技術があるが、接着剤を用いるために、大型基板の温度の上限が低温であり、薄膜の成長速度を早くすることができないという問題がある。
【0006】
近年では自立できない大型の誘電体基板が増加しており、吸着装置から脱落するとひびや欠けが発生するため、略鉛直にされた大型基板の裏面の保持を維持する技術が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−153543号公報
【特許文献2】WO2010/024146号公報
【特許文献3】WO2016/167233号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記従来技術の不都合を解決するために創作された発明であり、その解決すべき課題は、基板を立設させて導電性薄膜を形成できる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の吸着原理について説明する。
【0010】
図6(a)には、吸着板114a上に狭小幅狭小間隔で形成された正負電極131、141間に高密度で大きく湾曲した電気力線100aが形成された場合が示されており、図6(b)には、吸着板114b上に長大幅長大間隔の正負電極132、142間に低密度で湾曲の度合いが小さい電気力線100bが形成された場合が示されている。
【0011】
正負電極131、141間の電気力線の密度が高く、湾曲も大きいため、狭小幅狭小間隔の正負電極131、141に発生するグラディエント力によって、誘電体の吸着対象物108は吸着される。
【0012】
それに対し、図6(c)には、図6(a)の正負電極131、141上に導電性薄膜109が形成された誘電体の吸着対象物108が配置された場合が示されており、図6(d)には、図6(b)の正負電極132、142上に導電性薄膜109が形成された誘電体の吸着対象物108が配置された場合が示されている。
【0013】
図6(c)の狭小幅狭小間隔の正負電極131、141間に形成される電気力線100aの方が図6(d)の長大幅長大間隔の正負電極132、142間に形成される電気力線100bよりも総数が多く、電極面積は図6(d)の正負電極132、142の方が大きいため、図6(d)の長大幅長大間隔の正負電極132、142と導電性薄膜109との間に形成される電気力線101bの方が、図6(c)の狭小幅狭小間隔の正負電極131、141と導電性薄膜109との間に形成される電気力線101aよりも多くなり、導電性薄膜109が形成された誘電体の吸着対象物108は、図6(d)の正負電極132、142の静電気力が支配的な力として吸着されることが分かる。
【0014】
上記課題を解決するためになされた本発明は、真空槽と、前記真空槽の内部に配置された吸着装置と、を有し、前記吸着装置は、吸着板と、前記吸着板の片面である吸着面と、前記吸着面上に設けられた第一の領域に互いに離間して配置された第一の正電極と第一の負電極と、前記吸着面上で前記第一の領域と離間した場所に設けられた第二の領域に互いに離間して配置された第二の正電極と第二の負電極と、を有する真空装置であって、前記吸着装置を回転させ、前記吸着装置を立設された立設姿勢と横設された横設姿勢とにする回転装置と、前記吸着装置と一緒に立設姿勢にされた前記吸着対象物に導電性薄膜を形成する薄膜形成装置と、前記第一の正電極と前記第一の負電極との間に第一の吸着電圧を印加して、前記吸着装置に配置された吸着対象物の誘電体をグラディエント力によって吸着し、前記第二の正電極と前記第二の負電極との間に前記第一の吸着電圧よりも低電圧の第二の吸着電圧を印加して前記吸着対象物に形成された前記導電性薄膜を静電吸着力によって吸着する吸着電源と、が設けられ、前記第一の領域は、前記吸着装置が立設姿勢にされると前記第二の領域の上方に位置するようにされ、前記吸着電源と前記回転装置は、前記第一の正電極と前記第一の負電極との間に前記第一の吸着電圧を印加しながら前記吸着装置を横設姿勢から立設姿勢にすることができるように構成された真空装置である。
本発明は、前記吸着装置は前記吸着板の一辺と平行に設けられた回転軸を有し、前記回転装置は前記吸着装置を前記回転軸を中心に回転させる真空装置である。
本発明は、前記第一の正電極の側面と前記第一の負電極の側面とは第一の距離で離間され、前記第二の正電極の側面と前記第二の負電極の側面とは、前記第一の距離よりも長い第二の距離で離間された真空装置である。
本発明は真空装置であって、前記第一の正電極の幅と前記第一の負電極の幅とは、前記第二の正電極の幅と前記第二の負電極の幅とよりも小さく形成された真空装置である。
本発明は、前記薄膜形成装置は、前記吸着装置と一緒に立設姿勢にされた前記吸着対象物が対面する導電性のスパッタリングターゲットが配置され、前記スパッタリングターゲットがスパッタされると、前記導電性薄膜が成長される真空装置である。
本発明は、前記第一の正電極と前記第一の負電極と前記第二の正電極と前記第二の負電極とを取り囲む環状形状の環状電極が設けられ、前記環状電極には、前記第二の正電極と前記第二の負電極のうち、いずれか一方の電極に印加される電圧と同じ値の電圧が印加される真空装置である。
本発明は、熱媒体ガスを前記吸着装置に供給する熱媒体ガス供給装置を有する真空装置であって、前記吸着装置の前記吸着面上には、前記吸着装置の表面に露出する保護膜が設けられ、前記保護膜には、溝から成るガス用溝と、前記環状電極の真上位置に形成され、上端が前記ガス用溝の底面よりも高くされた環状突条と、前記ガス用溝と前記ガス用溝との間に位置し上端が前記ガス用溝の底面よりも高くされた支持突起と、前記ガス用溝に接続され前記ガス用溝に前記熱媒体ガスを導入するガス導入孔と、が形成され、前記真空槽には、前記熱媒体ガスを検出する検出装置が設けられた真空装置である。
本発明は、前記第二の正電極と前記第二の負電極のうち、いずれか一方の電極に印加される電圧と同じ電圧が印加される補助電極が、前記第一の領域に配置された真空装置である。
本発明は、前記補助電極は前記環状電極によって取り囲まれた真空装置である。
本発明は、側面が前記第一の距離で互いに離間された第三の正電極と第三の負電極とが前記第二の領域に設けられ、前記吸着電源は、前記第三の正電極と前記第三の負電極との間に前記第一の吸着電圧と同じ値の第三の吸着電圧を印加する真空装置である。
本発明は、前記第三の正電極と前記第三の負電極とは前記環状電極によって取り囲まれた真空装置である。
本発明は、吸着板と、前記吸着板の片面である吸着面と、前記吸着面には、前記吸着板が立設姿勢にされたときに上方に位置する第一の領域と、前記第一の領域の下方に位置する第二の領域とが設けられ、前記第一の領域には、互いに離間して配置された第一の正電極と第一の負電極とが設けられ、前記第二の領域には、互いに離間して配置された第二の正電極と第二の負電極とが設けられ、前記第一の正電極と前記第一の負電極との間には、前記第一の領域上と前記第二の領域上に亘って配置された吸着対象物の誘電体をグラディエント力によって吸着する第一の吸着電圧が印加され、前記第二の正電極と前記第二の負電極との間には、前記第一の吸着電圧よりも低電圧であって、前記吸着対象物に形成された導電性薄膜を静電吸着力によって吸着する第二の吸着電圧が印加される吸着装置である。
本発明は、前記吸着板の一辺と平行に設けられた回転軸を有し、前記回転軸を中心に回転され、立設された立設姿勢と横設された横設姿勢とで静止される吸着装置である。
本発明は、前記第一の正電極の側面と前記第一の負電極の側面とは第一の距離で離間され、前記第二の正電極の側面と前記第二の負電極の側面とは、前記第一の距離よりも長い第二の距離で離間された吸着装置である。
本発明は、前記第一の正電極と前記第一の負電極と前記第二の正電極と前記第二の負電極とを取り囲む環状形状の環状電極が設けられ、前記環状電極には、前記第二の正電極と前記第二の負電極のうち、いずれか一方の電極に印加される電圧と同じ値の電圧が印加される吸着装置である。
本発明は、前記吸着装置の前記吸着面上には、前記吸着装置の表面に露出する保護膜が設けられた吸着装置である。
本発明は、前記保護膜には、溝から成るガス用溝と、前記環状電極の真上位置に形成され、上端が前記ガス用溝の底面よりも高くされた環状突条と、前記ガス用溝と前記ガス用溝との間に位置し上端が前記ガス用溝の底面よりも高くされた支持突起と、前記ガス用溝に接続され前記ガス用溝に熱媒体ガスを導入するガス導入孔と、が形成された吸着装置である。
本発明は、前記第二の正電極と前記第二の負電極のうち、いずれか一方の電極に印加される電圧と同じ電圧が印加される補助電極が、前記第一の領域に配置された吸着装置である。
本発明は、前記補助電極は前記環状電極によって取り囲まれた吸着装置である。
本発明は、側面が前記第一の距離で互いに離間された第三の正電極と第三の負電極とが前記第二の領域に設けられた吸着装置である。
本発明は、前記第三の正電極と前記第三の負電極とは前記環状電極によって取り囲まれた吸着装置である。
本発明は、真空雰囲気中で横設姿勢の吸着装置に誘電体の吸着対象物を配置し、前記吸着対象物を立設姿勢にして前記吸着対象物の表面に導電性薄膜を成長させる導電性薄膜製造方法であって、前記吸着装置の吸着板の第一の領域に設けられた第一の正電極と第一の負電極の間にグラディエント力を発生させる第一の吸着電圧の大きさの電圧を印加し、誘電体の前記吸着対象物を吸着しながら前記吸着装置を回転させ、前記吸着対象物と前記吸着装置とを一緒に立設姿勢にし、前記第一の領域の下方に位置する第二の領域に設けられた第二の正電極と第二の負電極との間に静電気力を発生させる第二の吸着電圧を印加し、前記吸着装置に成長中の前記導電性薄膜を吸着させる導電性薄膜製造方法である。
本発明は、立設姿勢にされた前記吸着装置の前記第一の正電極と前記第一の負電極との間に、立設姿勢にされた前記吸着対象物の前記導電性薄膜と前記第二の正電極の間と、前記導電性薄膜と前記第二の負電極との間とに静電吸着力を発生させる第二の吸着電圧を印加して前記導電性薄膜を前記第二の正負電極によって吸着した後、前記第一の正負電極の間に印加される電圧を減少させる導電性薄膜製造方法である。
本発明は、前記第一の正電極と前記第一の負電極との間に印加される電圧を減少させた後、それぞれ立設姿勢にされた前記吸着対象物と前記吸着装置との間に前記吸着装置のガス導入孔から熱媒体ガスを導入し、前記真空雰囲気中の熱媒体ガスを検出する導電性薄膜製造方法である。
本発明は、立設姿勢にした前記吸着対象物と対面するスパッタリングターゲットをスパッタリングし、前記導電性薄膜を成長させる導電性薄膜製造方法である。
本発明は、前記熱媒体ガスの導入を開始した後に前記スパッタリングターゲットに供給する電力を、前記ガス導入孔から前記熱媒体ガスの導入を開始する前に前記スパッタリングターゲットに供給する電力よりも大きくする導電性薄膜製造方法である。
本発明は、前記第一の正電極と前記第一の負電極と前記第二の正電極と前記第二の負電極とを取り囲む環状電極に、前記第二の正電極又は前記第二の負電極のうち、いずれか一方の電極と同じ値の電圧を印加し、静電気力によって前記環状電極で前記導電性薄膜を吸着し、前記環状電極上に配置された環状突条に前記吸着対象物を押しつけながら、前記環状突条によって取り囲まれた領域内に配置された前記ガス導入孔から前記熱媒体ガスを導入する導電性薄膜製造方法である。
本発明は、前記第一の正電極と前記第一の負電極との間に前記第一の吸着電圧を印加する際に、前記第二の領域に設けられた第三の正電極と第三の負電極との間に前記第一の吸着電圧を印加する導電性薄膜製造方法である。
本発明は、前記第二の正電極と前記第二の負電極とに前記第二の吸着電圧を印加する際に、前記第一の領域に設けられた補助電極と、前記第二の正電極又は前記第二の負電極のうちのいずれか一方の電極との間に、前記第二の吸着電圧を印加する導電性薄膜製造方法である。
【発明の効果】
【0015】
吸着対象物に導電性薄膜を成長させても、吸着対象物を吸着し続けることができるので、吸着対象物にチッピングやクラックは発生しない。
【0016】
吸着対象物の表面に接触される装置は無いので、表面の汚染が無い。
【0017】
吸着対象物と吸着装置の間に熱媒体ガスを導入するので、熱伝導率が大きくなる。
【0018】
導入の際に第一、第二の正負電極を取り囲む環状電極と第二の正電極又は第二の負電極との間に第二の吸着電圧を印加し、環状電極上の環状突条に吸着対象物を押しつけるから、吸着対象物と吸着装置の間に導入された熱媒体ガスが、流出する量が少なくなる。
【0019】
熱媒体ガスの導入によって熱導電率が増大すれば、スパッタリングターゲットをスパッタリングする電力を、熱媒体ガスの導入前よりも大きくすることができる。
【0020】
第一の正負電極の間や第三の正負電極の間に高電圧を印加しないようにしてから熱媒体ガスを導入するので、放電が発生しないようになっている。
【0021】
第二の正負電極と導電性薄膜との間に静電気力を発生させてから、第一の正負電極に印加する電圧を減少させるから、グラディエント力が消滅する前に静電気力によって導電性薄膜が吸着され、吸着対象物が落下することはない。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】横設姿勢の吸着板を説明するための図
図2】立設姿勢の吸着板を説明するための図
図3】横設姿勢の吸着板に吸着された吸着対象物を説明するための図
図4】立設姿勢の吸着板に吸着された吸着対象物を説明するための図
図5】(a):吸着板表面の電極パターンを説明するための図 (b):そのA−A線截断断面図
図6】(a)〜(d):グラディエント力によって吸着する電極と静電気力によって吸着する電極とを比較するための図
図7】二重螺旋状のパターンを有する第一の正負電極を示す図
図8】同心状に交互に配置されたパターンを有する第一の正負電極を示す図
図9】第一の正負電極の間が第一の正又は負電極では取り囲まれない吸着装置の例 (a):平面図 (b):B−B線截断断面図
図10】第二例の吸着装置が横設姿勢にある第二例の真空装置の内部を説明するための図
図11】第二例の吸着装置が立設姿勢にある第二例の真空装置の内部を説明するための図
図12】吸着対象物が配置された横設姿勢の第二例の吸着装置がある第二例の真空装置の内部を説明するための図
図13】吸着対象物が吸着された立設姿勢の第二例の吸着装置がある第二例の真空装置の内部を説明するための図
図14】導電性薄膜が成長中の吸着対象物を吸着する立設姿勢の第二例の吸着装置がある第二例の真空装置の内部を説明するための図
図15】第二例の吸着装置の電極を示す (a):平面図 (b):C−C線截断断面図 (c):E−E線截断断面図
図16】第二例の吸着装置のガス用溝と環状突条と電極との相対位置の関係を示す (a):平面図 (b):図15(a)のC−C線截断断面図 (c):図15(a)のE−E線截断断面図
図17】第二例の吸着装置のガス用溝と環状突条とを示す (a):平面図 (b):図15(a)のC−C線截断断面図 (c):図15(a)のE−E線截断断面図
図18】補助電極と環状電極とを有し、第三の正負電極を有さない吸着装置の電極を示す (a):平面図 (b):F−F線截断断面図 (c):G−G線截断断面図
図19】環状電極と第二の正負電極とが分離された吸着装置の電極を示す (a):平面図 (b):H−H線截断断面図 (c):I−I線截断断面図
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明は、上記従来技術の不都合を解決するために創作されたものであり、誘電体基板に導電膜を安定的に成長させることができる技術を提供することにある。
【0024】
図1の符号2は、本発明の真空装置を示しており、真空槽11と、吸着装置12と、ターゲット装置13とを有している。
【0025】
真空槽11の外部には、モータ等の回転装置26と、スパッタ電源23とが配置されている。
【0026】
ターゲット装置13はスパッタリングされるスパッタリングターゲット17と、スパッタリングターゲット17が取り付けられたカソード電極16を有しており、カソード電極16は、スパッタ電源23に接続されている。
【0027】
吸着装置12は長方形又は正方形形状の吸着板14と、吸着板14の一辺に設けられた棒状の回転軸15とを有しており、回転軸15は回転装置26に接続され、回転装置26が動作すると回転軸15は回転する。この回転により、回転軸15の断面中心を通り、回転軸15の長手方向と平行な回転軸線10を中心として吸着装置12は回転軸線10の周りに回転する。
【0028】
ターゲット装置13は、スパッタリングターゲット17のスパッタリングされる表面が略鉛直になるように真空槽11の側壁に設けられている。符号19はスパッタリングされる表面であるスパッタ面を示している。スパッタリングターゲット17は導電性物質であり、ここでは板状に成形された金属によって構成されており、スパッタ面19にはスパッタリングターゲット17を構成する金属が露出されている。
【0029】
吸着装置12が回転したときには、吸着板14は、吸着板14の片側の表面である吸着面18が上方を向けて略水平にされた横設姿勢と、吸着面18が略鉛直にされ、スパッタリングターゲット17と対面された立設姿勢とのうちの、少なくともいずれかの姿勢で静止できるようにされている。
【0030】
図1には吸着板14が横設姿勢にされた様子が示されており、図2には吸着板14が立設姿勢にされた様子が示されている。吸着面18が鉛直な状態から±10deg未満の角度θ傾いている姿勢も立設姿勢に含まれる。また、吸着面18が水平な姿勢から所定角度傾いた姿勢も横設姿勢に含まれる。
【0031】
図5(a)は、吸着面18の平面図であり、吸着面18には、第一の領域21と、第一の領域21とは離間した第二の領域22とが設けられている。
【0032】
図5(a)は吸着面18の平面図、図5(b)はそのA−A線截断断面図である。この図5(a)、(b)に示されているように、第一の領域21には、第一の正電極31と第一の負電極41とが配置されており、第二の領域22には第二の正電極32と第二の負電極42とが配置されている。
【0033】
第一の正電極31と第一の負電極41と第二の正電極32と第二の負電極42とは、吸着面18上に配置された複数の細長の導電材料が櫛の歯状に形成されて構成されており、第一の正電極31と第一の負電極41とが交互に配置され、第二の正電極32と第二の負電極42とが交互に配置されている。
【0034】
そして、第一の正電極31の側面と第一の負電極41の側面とは、第一の距離D1だけ離間して平行に配置されており、同様に、第二の正電極32の側面と第二の負電極42の側面とは、第一の距離D1よりも長い第二の距離D2だけ離間して配置されている。
【0035】
第一の正電極31の幅P1と第一の負電極41の幅M1とは、第二の正電極32の幅P2よりも短く、且つ、第二の負電極42の幅M2よりも短くなるように形成されている。
【0036】
真空槽11の外部には、吸着電源24が配置されている。真空槽11は接地電位に接続されており、吸着電源24によって複数の第一の正電極31には同じ大きさの正電圧が印加される。また、第二の正電極32が複数ある場合には、同じ大きさであって第一の正電極31よりも小さい値の正電圧が印加される。以下では絶対値と極性が等しいことを「同じ値」と表現する。
【0037】
同様に、複数の第一の負電極41には同じ大きさの負電圧が印加され、第二の負電極42には同じ大きさであって第一の負電極41に印加された負電圧の絶対値よりも小さな絶対値の負電圧が印加されるようになっている。
【0038】
第一の負電極41を基準にした第一の正電極31と第一の負電極41との間の電圧である第一の吸着電圧は、第二の負電極42を基準とした第二の正電極32と第二の負電極42との間の電圧である第二の吸着電圧よりも大きな値にされている。
【0039】
この吸着電圧の大きさの大小と、第一、第二の距離D1、D2の大小とから、第一の正電極31と第一の負電極41との間に形成される電気力線の湾曲率は、第二の正電極32と第二の負電極42との間に形成される電気力線の湾曲率よりも大きくなっており、第一の正電極31と第一の負電極41との間に不平等電界が形成される。従って、第一の正電極31と第一の負電極41との間に形成される電気力線の中に誘電体が配置されたときと、第二の正電極32と第二の負電極42との間に形成される電気力線の中に誘電体が配置されたときとを比較すると、第一の正電極31と第一の負電極41との間に形成される電気力線の中に誘電体が配置されたときの方が発生するグラディエント力が大きく、従って、強く吸着されるようになっている。
【0040】
次に、第一の正負電極31、41と第二の正負電極32、42との上には、吸着対象物が配置されるようになっており、第一の正負電極31、41の表面と第二の正負電極32、42の表面のうち、互いに隣接する細長の第一の正負電極31、41が吸着対象物と対面する部分の表面と、互いに隣接する細長の第二の正負電極32、42が吸着対象物と対面する部分の表面とを電極表面とすると、第二の領域22の中の単位面積当たりの電極表面の面積(単位面積中の第二の正電極の電極表面の面積と第二の負電極の電極表面の面積の合計値)は、第一の領域21の中の単位面積当たりの電極表面の面積(単位面積中の第一の正電極の電極表面の面積と第一の負電極の電極表面の面積の合計値)よりも大きくされており、従って、第一の正負電極31、41と第二の正負電極32、42との上に配置された吸着対象物に導電性薄膜が設けられているときには、第二の正負電極32、42と導電性薄膜との間に形成される電気力線の数は、第一の正負電極31、41と導電性薄膜との間に形成される電気力線の数よりも大きくなっており、従って、第二の正負電極32、42と吸着対象物との間に発生する静電気力(クーロン力とも言う)による吸着力は第一の正負電極31、41と吸着対象物との間に発生する静電気力による吸着力よりも大きくなっている。
【0041】
真空槽11には、真空排気装置27が接続されており、真空排気装置27によって真空槽11の内部は真空排気され、真空雰囲気が形成されている。
【0042】
図3では、真空槽11の中の真空雰囲気が維持されながら、横設姿勢の吸着板14の第一の正負電極31、41と第二の正負電極32、42に亘って誘電体の板から成る吸着対象物8が配置されている。吸着対象物8は例えばガラス基板である。
【0043】
この吸着対象物8の表面に導電性薄膜を形成する際には、先ず、第一の正負電極31、41の間に第一の吸着電圧を印加し、第二の正負電極32、42の間に第二の吸着電圧を印加すると、第一の正負電極31、41の間に大きなグラディエント力が発生し、吸着対象物8は、第一の正負電極31、41に吸着される。
【0044】
その状態で回転装置26によって吸着装置12が約90度回転され、吸着板14が横設姿勢から立設姿勢にされる。このとき、第一の領域21が第二の領域22よりも上方に位置するので、吸着対象物8は、吸着板14上に乗りながら、第一の領域21内の第一の正負電極31、41によって懸吊されており、吸着対象物8は吸着板14から脱落することなく、吸着板14の姿勢は横設姿勢から立設姿勢に変更される。
【0045】
立設姿勢にされた吸着対象物8が吸着装置12に接触しながら下方に移動することがあっても、吸着板14の下端には、吸着面18から突き出されたストッパ20が設けられているので、吸着対象物8はストッパ20上に乗り、吸着板14から脱落することはない。
【0046】
図4に示されたように、吸着板14が立設姿勢のときは、吸着対象物8はスパッタリングターゲット17に対面しており、ガス導入装置25から希ガス等のスパッタガスを導入し、スパッタ電源23によってカソード電極16に電圧を印加し、スパッタリングターゲット17をスパッタリングすると、吸着対象物8のスパッタリングターゲット17に対面する表面に導電性薄膜の成長が開始される。
【0047】
成長する導電性薄膜の膜厚が増加すると、第一の正負電極31、41間のグラディエント力が減少すると共に、第二の正負電極32、42の間の静電気力が増大し、吸着対象物8は静電気力によって吸着板14に吸着されている状態になる。
【0048】
このとき、吸着対象物8の四辺のうち、回転軸線10に対して垂直な方向の辺のうち、第一の領域21と対面する部分の長さは、第二の領域22と対面する部分の長さの四分の一未満の割合にされており、吸着対象物8は鉛直であるか、又は所定の角度θ傾けられて斜め上方に向けられた立設姿勢にされており、その姿勢で吸着対象物8の第二の領域22と対面する部分が第二の正負電極32、42による静電気力によって吸着板14に吸着されるので、吸着対象物8の上部の第一の領域21と対面する部分が吸着板14に吸着されなくなっても、第一の領域21と対面する部分が下方に垂れ下がることはない。
【0049】
正電圧と負電圧がそれぞれ印加された第二の正負電極32、42と吸着対象物8表面の導電性薄膜との間の静電吸着によって吸着対象物8は吸着板14に吸着されて保持されるようになった後、第一の正負電極31、41への電圧印加は停止される。
【0050】
第二の正負電極32、42による静電吸着によって吸着板14に吸着された状態で導電性薄膜が成長され、所定の膜厚の導電性薄膜が形成された後、立設姿勢から横設姿勢にされ、導電性薄膜が形成された吸着対象物8は真空槽11の外部に搬出される。
【0051】
上記例では、導電性薄膜が形成されていない誘電体の吸着対象物8を水平姿勢の吸着板14上に配置し、第一の正負電極31、41と、第二の正負電極32、42の両方に電圧を印加しながら吸着板14を横設姿勢から立設姿勢にしたが、第一の正負電極31、41にだけ第一の電圧を印加しながら横設姿勢から立設姿勢にしてもよい。
【0052】
また、第二の正負電極32、42には、立設姿勢にした後直ちに第二の電圧を印加してもよいし、導電性薄膜の形成が開始され、第一の正負電極31、41のグラディエント力の減少が開始されてから第二の電圧を印加するようにしてもよい。
【0053】
なお、第一の正負電極31、41のパターンが上述のように櫛状である場合は、櫛の柄の部分では、磁力線の密度が櫛の歯の部分よりも低く、磁力線の密度が不均一であることから、第一の正負電極31、41間に高電圧を印加した場合には放電が生じ、吸着装置12が故障する恐れがある。
【0054】
櫛の柄の部分を無くし、高電圧を印加できるようにするためには、例えば、図7に示すように、第一の正負電極31a、41aを二重螺旋状に配置し、均一な密度で磁力線が形成されるようにするとよい。
【0055】
また、図8に示すように、第一の正負電極31b、41bを同心状に交互に配置するパターンでも均一な密度で磁力線が形成されるので、放電を発生させずに高電圧を印加することができるようになる。同心状のパターンの場合は、吸着板14の厚み方向に貫通する貫通配線を設け、裏面側の端子と表面側の第一の正負電極31b、41bとを貫通配線によって電気的に接続する。
【0056】
上記第一の正電極31、31a、31bと、第一の負電極41、41a、41bとの間の位置には溝を形成し、温度制御用の熱媒体ガスを溝に流すようにすることができる。例えば、幅400μm、深さ400μmの溝を形成するとよい。
【0057】
その場合、図8の第一の正負電極31b、41bのパターンでは、吸着装置12に吸着対象物8が密着すると、第一の正電極31bと第一の負電極41bとの間の空間の上部が蓋をされることになり、第一の正負電極31b、41b間の空間は吸着対象物8と吸着装置12とで形成される空間の外部から遮断される。つまり、第一の正負電極31b、41bの間の空間に熱媒体ガスが供給されると、供給された熱媒体ガスは、第一の正負電極31b、41bの間から真空槽11の内部雰囲気に漏出しにくくなり、第一の正負電極31b、41bの間の空間の圧力が上昇するので熱伝導率が大きくなる。
【0058】
図8の第一の正負電極31b、41bの間の空間は、第一の正電極31b又は第一の負電極41bのうちの最外周に位置する電極によって取り囲まれていたが、第一の正電極31cと第一の負電極41cとの間の空間が、第一の正電極31c又は第一の負電極41cのいずれの電極によって取り囲まれないようにしても、図9(a)、(b)に示す吸着装置12cのように、第一の正負電極31c、41cの間の空間を、第二の正電極32c又は第二の負電極42cのうちのいずれか一方と同じ電圧が印加される環状形状の環状電極52cによって取り囲むようにすれば、熱媒体ガスを流出させないで済む。
【0059】
図9(a)、(b)の環状電極52cは、第二の負電極42cに接触し、第二の負電極42cと同じ電圧が印加される。
【0060】
第一の正電極31cと第一の負電極41cとの間にはガス用溝26cが形成されており、環状電極52cは第一の正負電極31c、41cを取り囲んでいる。従って、第一の正負電極31c、41c間のガス用溝26cも環状電極52cによって取り囲まれている。
【0061】
第二の正負電極32c、42cに、第二の正負電極32c、42cと導電性薄膜との間に静電気力を発生させる第二の吸着電圧が印加されるときには環状電極52cと第二の正電極32cとの間にも第二の吸着電圧が印加され、静電気力が発生する。この例では環状電極52cと第二の負電極42cは接触し、一体に見える。
【0062】
配置された吸着対象物8が第二の正負電極32c、42cと環状電極52cとに静電気力によって吸着されると、吸着対象物8と吸着装置12cは密着し、第一の正負電極31c、41c間の空間は吸着対象物8と環状電極52cによって閉塞される。
【0063】
その状態で吸着板14に形成された貫通孔から第一の正負電極31c、41cの間に熱媒体ガスが導入されると、吸着対象物8と吸着装置12cとの間から真空槽11の内部雰囲気に流出する熱媒体ガスは少なくなり、吸着対象物8と吸着板14との間には熱媒体ガスが充満するから、吸着対象物8と吸着板14との間の熱伝導率が向上する。
【0064】
この場合、吸着板14の内部に熱媒体液が流れる流路46を設け、温度制御した熱媒体液を流路46に流すようにすると、吸着対象物8の温度制御を行うことができる。例えば冷却した熱媒体液を流路46に流すと、吸着対象物8を冷却することができる。
【0065】
なお、図9(a)、(b)では、符号32cが第二の正電極、符号42cが第二の負電極を示していたが、符号32cが示す電極を第二の負電極、符号42cが示す電極を第二の正電極として、第二の正電極42cによって第一の正負電極31c、41cを取り囲むようにしてもよい。
【0066】
この吸着装置12cは、第一の領域21cが第二の領域22cよりも上部に位置するように、横設姿勢から立設姿勢にされ、立設姿勢では第一の正負電極31c、41cが第二の正負電極32c、42cの上方に位置するようにされている。
【0067】
横設姿勢の吸着装置12cに、表面に導電性の薄膜が形成されていない吸着対象物8が配置されると、第一の正負電極31c、41c間に高電圧である第一の吸着電圧が印加され、第一の正負電極31c、41c間に形成された不平等電界によって吸着対象物8の誘電体の部分は、グラディエント力によって第一の正負電極31c、41cに吸着される。その状態で、吸着装置12cが回転すると、吸着された吸着対象物8は吸着装置12cと一緒に横設姿勢から立設姿勢にされる。
【0068】
上記吸着装置12cと同様に、グラディエント力によって吸着対象物8の上部が第一の正負電極31c、41cに吸着されているから、立設姿勢にされた吸着対象物8の上部が垂れ下がるようなことはない。
【0069】
立設姿勢の吸着対象物8の表面に導電性薄膜が形成されると、第二の正負電極32c、42cと導電性薄膜との間に静電気力を発生させる第二の吸着電圧が第二の正負電極32c、42cの間に印加され、導電性薄膜は第二の正負電極32c、42cに吸着される。
【0070】
このとき、吸着対象物8のうち、第一の正負電極31c、41cよりも上部に位置する上端付近には、環状電極52cが位置しており、環状電極52cと第二の正電極32cとの間にも第二の吸着電圧が印加され、吸着対象物8の上端は静電吸着される。
【0071】
従って、第一の正負電極31c、41cに印加される電圧が小さくされ、グラディエント力が消滅して吸着対象物8の誘電体が第一の正負電極31c、41cによって吸着されない状態になったとしても、吸着対象物8の上端が垂れ下がらないようにされている。
【0072】
図5の吸着装置12では、第二の正負電極32、42によって吸着対象物8を静電吸着して保持するようになった後、第一の正負電極31、41への電圧印加を停止したが、第一の正負電極31、41への電圧印加を停止させず、印加電圧を小さくしてもよい。異常放電が発生しない範囲の大きさの電圧を第一の正負電極31、41へ印加して、第一の正負電極31、41と導電性薄膜との間に静電気力を発生させるようにしてもよい。
【0073】
その場合、第一の領域21でも吸着力が発生し、立設姿勢の吸着対象物8の上方位置でも吸着板14に吸着されるので、吸着対象物8と吸着板14との間の熱導電性が向上する。
【0074】
上記例では、回転軸線10は、回転軸15の中心を通り、立設姿勢では、回転軸線10と回転軸15とが、第一、第二の領域21、22の下方に位置していたが、本発明の吸着装置12、12cは、第一の領域21、21cが第二の領域22、22cよりも上方に位置するように立設姿勢にされれば、回転軸線10と回転軸15とが、吸着装置12、12cの上方に位置するようにしてもよい。
【0075】
次に、本発明の他の例を説明する。
【0076】
図1図9を用いて説明した真空装置2と吸着装置12、12cとを第一例とすると、図10の符号3は、本発明の第二例の真空装置を示しており、符号212は第二例の吸着装置を示している。図10及び後述する図11図19の説明では、図1、2の真空装置2と同じ部材には同じ符号を付して説明を省略する。なお、第一例と第二例の真空装置2、3は導電性薄膜を形成する薄膜形成装置を有しており、その例としてマグネトロンスパッタリング装置を薄膜形成装置として説明されている。カソード電極16の裏面には、マグネトロン磁石が配置されているが、マグネトロン磁石は省略されている。
【0077】
第二例の吸着装置212は長方形形状又は正方形形状を含む四辺形状の吸着板214と、吸着板214の一辺に設けられた棒状の回転軸215とを有しており、回転軸215は回転装置26に接続され、回転装置26が動作すると回転軸215は回転する。
【0078】
その回転は、回転軸215の断面中心を通り、回転軸215の長手方向と平行な回転軸線210を中心とする回転であり、回転軸215の回転により、吸着装置212は回転軸線210を中心として回転する。
【0079】
ここで、吸着装置212は、360度未満の所定角度だけ回転するようにされており、回転により、吸着装置212は、吸着板214が水平な横設姿勢と、吸着板214が鉛直に近い角度にされた立設姿勢との間で姿勢を変えて静止できるようにされている。
【0080】
吸着板214の表面を吸着面218とすると、横設姿勢では、吸着板214は吸着面218が上方を向けて略水平にされており、立設姿勢では、吸着板214は吸着面218が斜め上方を向くように静止されている。
【0081】
図10には横設姿勢にされた吸着装置212が示されており、図11には立設姿勢にされた吸着装置212が示されている。吸着面218が鉛直な状態から±10deg未満の角度θ傾いている姿勢も立設姿勢に含まれる。また、吸着面218が水平な姿勢から所定角度傾いた姿勢も横設姿勢に含まれる。第二例の吸着装置212は、これらの点でも第一例の吸着装置12、12cと同じである。
【0082】
第一例の吸着装置12、12cでは、第一の正負電極31、31a、31b、31c、41、41a、41b、41cの表面と第二の正負電極32、32c、42、42cの表面が露出されており、処理対象物8は、各電極31、31a、31b、31c、41、41a、41b、41c、32、32c、42、42cの上端と接触するようにされていたが、第二例の吸着装置212の吸着面218上には誘電体の保護膜224が設けられており、保護膜224の表面228が露出するようにされている。
【0083】
図16(a)は第二例の吸着装置212の平面図であり、図16(a)では、保護膜224の下層に位置し、吸着板214上に形成された電極が点線で示されている。
【0084】
図15(b)、図16(b)、図17(b)は、図15(a)の吸着装置212のC−C線截断断面図であり、図15(c)、図16(c)、図17(c)は、図15(a)の吸着装置212のE−E線截断断面図である。符号224は保護膜を示している。
【0085】
図17(a)は電極を示す点線を省略した平面図であり、保護膜224と、保護膜224よりも下層に位置する部材は省略されている。
【0086】
これら図面を参照しながら第二例の吸着装置212と第二例の真空装置3を説明する。吸着面218上には、吸着装置212が立設姿勢にされたときに吸着装置212の上部に位置する第一の領域221と、立設姿勢のときに第一の領域221よりも下方に位置する第二の領域222とが設けられている。
【0087】
第一の領域221の吸着面218上には、第一の正電極231a、231bと第一の負電極241a、241bと補助電極262とが設けられており、第二の領域222の吸着面218上には第二の正電極232と第二の負電極242とが設けられている。
【0088】
ここでは第一の正電極231a、231bは、互いに分離した左方の第一の正電極231aと右方の第一の正電極231bを有しており、また、第一の負電極241a、241bも、互いに分離した左方の第一の負電極241aと右方の第一の負電極241bとを有している。
【0089】
第一の正電極231a、231bと第一の負電極241a、241bとは、吸着面218上に配置された複数の細長の導電材料が櫛の歯状に形成されて構成されており、左方の第一の正電極231aを成す櫛の歯状の部分と、左方の第一の負電極241aを成す櫛の歯状の部分とは、一定間隔で交互に配置されており、同様に、右方の第一の正電極231bの櫛の歯状の部分と右方の第一の負電極241bの櫛の歯状の部分とも、左方と同じ一定間隔で交互に配置されている。
【0090】
補助電極262は、第一の領域221の中であって、左方の第一の正負電極231a、241aと、右方の第一の正負電極231b、241bとの間の場所に配置されている。吸着対象物8が配置された吸着装置212では、横設姿勢のときと横設姿勢から立設姿勢にされたときとで、吸着対象物8の上部の部分が第一の正負電極231a、241a、231b、241bと補助電極262とに対面するようになっている。
【0091】
第二の正電極232と第二の負電極242とは、電極面積が大きくなるように、櫛の歯の形状ではなく幅広に形成されており、吸着対象物8に導電性薄膜が形成されたときに、低電圧で大きな静電気力が発生するようにされている。
【0092】
第二の領域222のうち、第一の領域221と隣接する場所には、第二の正電極232又は負電極が配置され、吸着対象物8に導電性薄膜が形成されたときに、立設姿勢の吸着対象物8のできるだけ上方位置で第二の正電極232又は負電極と吸着対象物8との間に静電気力が発生するようにされており、この例では、第二の領域222の中の第一の領域221と離間して立設姿勢の吸着対象物8の下部と対面する位置には、第一の領域221に隣接した第二の正電極232又は第二の負電極242に対して極性が逆の第二の正電極232又は第二の負電極242が配置されている。
【0093】
ここでは、第二の正電極232のうち、第一の正負電極231a、241a、231b、241bに隣接した隣接部分と、吸着装置212を立設姿勢にしたときに、隣接部分よりも下方に位置する第二の負電極242との間には、第三の正電極233a、233bと、第三の負電極243a、243bとが配置されている。
【0094】
第三の正電極233a、233bと第三の負電極243a、243bとは、第一の正負電極231a、231b、241a、241bと同じく、吸着面218上に配置された複数の細長の導電材料が櫛の歯状に形成されて構成されており、左方の第三の正電極233aの櫛の歯状の部分と左方の第三の負電極243aの櫛の歯状の部分とは第一の正負電極231a、231b、241a、241bと同じ一定間隔で交互に配置されており、また、右方の第三の正電極233bの櫛の歯状の部分と右方の第三の負電極243bの櫛の歯状の部分とも、第一の正負電極231a、231b、241a、241bと同じ一定間隔で交互に配置されている。
【0095】
第一の正負電極231a、231b、241a、241bの櫛の歯状の部分と第三の正負電極233a、233b、243a、243bの櫛の歯状の部分との幅は等しくされている。
【0096】
吸着板214の縁付近の表面には、環状の電極である環状電極252が設けられている。環状電極252は吸着板214の縁付近で縁と平行に伸ばされており、第一の領域221と第二の領域222とは、環状電極252の内側に配置され、環状電極252によって取り囲まれている。
【0097】
従って、第一の正負電極231a、231b、241a、241bと、第二の正負電極232、242と、第三の正負電極233a、233b、243a、243bと、補助電極262とは、環状電極252によって取り囲まれている。
【0098】
第一例の吸着装置12、12cと同様に、第一の正電極231a、231bの側面と第一の負電極241a、241bの側面とは、第一の距離D1だけ離間して平行に配置されており、第二の正電極232の側面と第二の負電極242の側面とは、第一の距離D1よりも長い第二の距離(最も短い部分の距離)だけ離間して配置されている。
【0099】
第一の正電極231a、231bの幅P1と第一の負電極241a、241bの幅M1とは、第二の正電極232の幅(第二の正電極の最も狭い部分の幅)よりも短く、且つ、第二の負電極242の幅(第二の負電極の最も狭い部分の幅)よりも短くなるように形成されている点でも、第一例の吸着装置12、12cと同じである。
【0100】
また、第三の正電極233a、233bの側面と第三の負電極243a、243bの側面とは、第一の距離D1と大きさが等しい第三の距離D3だけ離間して平行に配置されており、上述したように、第三の正電極233a、233bの幅P3と第三の負電極243a、243bの幅M3とは、第一の正負電極231a、231b、241a、241bの幅P1、M1とそれぞれ等しくされている。
【0101】
第一の距離D1と第三の距離D3とは、第二の距離よりも短くされている。
【0102】
真空槽11は接地電位に接続されており、真空槽11の外部に配置された吸着電源24によって、第一の正電極231a、231bと第三の正電極233a、233bには大きさが等しい電圧が印加され、第一の負電極241a、241bと第三の負電極243a、243bとにも大きさが等しい電圧が印加される。
【0103】
ここでは、第一の正電極231a、231bと第三の正電極233a、233bには同じ値の正電圧が印加され、第一の負電極241a、241bと第三の負電極243a、243bには、同じ値の負電圧が印加される。特に、第一の正電極231a、231bと第三の正電極233a、233bに印加される電圧と第一の負電極241a、241bと第三の負電極243a、243bに印加される電圧とは、絶対値が同じで極性が異なる電圧が印加される。
【0104】
また、第二の正電極232と第二の負電極242とには絶対値が同じで極性が異なる電圧が印加される。第二の正電極232には正電圧、第二の負電極242には負電圧が印加される。
【0105】
ここでは補助電極262は第二の正電極232と接触しており、補助電極262には第二の正電極232と同じ極性で同じ大きさの電圧が印加されるようになっている。
【0106】
第一の正電極231a、231bと第一の負電極241a、241bとの間に印加される正電圧を第一の吸着電圧とし、第二の正電極232と第二の負電極242の間に印加される正電圧を第二の吸着電圧とし、第三の正電極233a、233bと第三の負電極243a、243bとの間に印加される正電圧を第三の吸着電圧とすると、第一の吸着電圧と第三の吸着電圧とは等しい大きさであり、第一、第三の吸着電圧は第二の吸着電圧よりも大きくされている。
【0107】
第一の正負電極231a、231b、241a、241b間と、第三の正負電極233a、233b、243a、243b間に形成される電界の強度と電気力線の湾曲率は、第二の正負電極232、242間に形成される電界の強度と電気力線の湾曲率よりも大きくなり、不平等電界が形成される。
【0108】
第一の正負電極231a、231b、241a、241b間に形成される電気力線の中や、第三の正負電極233a、233b、243a、243b間に形成される電気力線の中に誘電体が配置されたときの方が、第二の正負電極232、242間に形成される電気力線の中に誘電体が配置されたときよりもグラディエント力が大きくなり、強い吸着力によって誘電体が吸着される。
【0109】
吸着板214上には、各電極231a、231b、232、233a、233b、241a、241b、242、243a、243b、252、262の表面と、各電極231a、231b、232、233a、233b、241a、241b、242、243a、243b、252、262間に露出する吸着面218上とに、保護膜224が形成され、吸着装置212の表面には保護膜224が露出するようにされている。
【0110】
従って、吸着対象物8が吸着装置212に配置されるときには、吸着対象物8の裏面が保護膜224に接触されるようになっており、各電極231a、231b、232、233a、233b、241a、241b、242、243a、243b、252、262の表面は、保護膜224が間に位置して、吸着対象物8の裏面と対面する。
【0111】
図15(c)〜図19(c)に示すように、吸着装置212、212a、212bには、保護膜224に形成された溝から成るガス用溝226が形成され、ガス用溝226には、後述する熱媒体ガスが導入されるようにされている。
【0112】
ガス用溝226とガス用溝226との間には上端がガス用溝226の底面よりも高い支持突起225が形成されており、環状電極252真上位置には、環状電極252が伸びる方向に沿って環状形状の環状突条227が形成されている。
【0113】
環状突条227は、環状電極252と共に吸着板214の縁付近に位置しており、環状電極252の真上であって環状突条227が位置する部分は環状にされ、ガス用溝226と支持突起225とは、環状突条227で取り囲まれている。
【0114】
吸着面218の表面は平坦にされており、吸着板214の表面から保護膜224の上端までの高さの関係は、支持突起225の上端までの高さが環状突条227の上端までの高さ以下の値になる。
【0115】
従って、吸着対象物8が吸着装置212に配置されたときには、環状突条227の上端は吸着対象物8に対して環状に接触する。
【0116】
後述するように、環状電極252に電圧が印加されて環状電極252が吸着対象物8に形成された導電性薄膜を静電気力で吸着して吸着対象物8が吸着装置212に密着すると、吸着対象物8と環状突条227とが密着する部分は環状になり、環状突条227の内側の空間は、吸着対象物8で蓋をされた状態になるから、環状突条227と吸着装置212との間に形成された空間は、真空槽11の内部雰囲気から分離される。
【0117】
第二例の吸着装置212では、ガス用溝226の底面の保護膜224と吸着板214とに複数個のガス導入孔238が形成されており、各ガス導入孔238は保護膜224と吸着板214とを貫通し、真空槽11の外部に配置されたガス供給装置28に接続されて、ガス導入孔238を通ってガス供給装置28からガス用溝226に熱媒体ガスが供給されるようにされている。
【0118】
支持突起225間に位置するガス用溝226は、支持突起225と環状突条227との間に位置するガス用溝226によって、内部が互いに連通するように接続されている。
【0119】
環状電極252が吸着装置212に配置された吸着対象物8の導電性薄膜を静電気力で吸着すると、吸着対象物8の裏面と環状突条227の上端とが密着する。
【0120】
このとき、互いに連通するガス用溝226は吸着対象物8によって蓋がされた状態になり、ガス用溝226は環状突条227によって囲まれて、真空槽11の内部雰囲気とは分離されているから、ガス導入孔238から各ガス用溝226に導入された熱媒体ガスは、吸着対象物8と吸着装置212との間で充満する。その結果、対流による熱移動が発生し、吸着装置212と吸着対象物8との間の熱伝導率が増大する。
【0121】
次に、第二例の真空装置3によって、第一例の真空装置2と同様に、吸着対象物8を吸着して導電性薄膜を形成する手順を説明する。
【0122】
真空槽11には真空排気装置27が接続されており、真空排気装置27によって真空槽11の内部は真空排気され、真空雰囲気が形成されている。このとき、ガス用溝226の内部も真空排気される。
【0123】
先ず、真空槽11の中の真空雰囲気を維持しながら真空槽11の内部に吸着対象物8を搬入し、図12に示すように、横設姿勢の吸着板214上に配置する。このとき、第一の正負電極231a、231b、241a、241bの表面と第二の正負電極232、242の表面と第三の正負電極233a、233b、243a、243bの表面と補助電極262の表面と環状電極252の表面とは、保護膜224が間に位置した状態で、吸着対象物8の裏面と対面する。
【0124】
その状態で、第一の正負電極231a、231b、241a、241bの間に第一の吸着電圧を印加し、第三の正負電極233a、233b、243a、243bの間に、第三の吸着電圧を印加する。このとき、第二の正負電極232、242の間には第二の吸着電圧を印加してもよいし、印加しなくてもよい。
【0125】
吸着対象物8には導電性薄膜は形成されておらず、第一の正負電極231a、231b、241a、241bの間と、第三の正負電極233a、233b、243a、243bの間とにそれぞれ不平等電界が形成され、吸着対象物8の誘電体は発生したグラディエント力によって第一、第三の正負電極231a、231b、233a、233b、241a、241b、243a、243bに吸着される。
【0126】
吸着対象物8が吸着された状態で回転装置26によって回転軸215が回転される。ここでは吸着装置212は回転軸線210の回りに約90度回転され、吸着装置212は、横設姿勢から、第一の領域221が第二の領域222よりも上方に位置する立設姿勢にされる。吸着対象物8は、第一、第三の正負電極231a、231b、233a、233b、241a、241b、243a、243bによって吸着板214に吸着されながら、脱落することなく吸着板214と一緒に回転し、横設姿勢から立設姿勢にされる。
【0127】
立設姿勢の吸着板214の下方には、吸着面218から突き出されたストッパ220が設けられており、仮に、立設姿勢にされた吸着対象物8が吸着装置12、12c、212の表面228に接触しながら下方に移動することがあっても、吸着対象物8はストッパ220に当接されて下方への移動が停止するので、吸着対象物8が吸着板214から脱落することはない。
【0128】
吸着対象物8がストッパ220に当接したときには、吸着対象物8の重量によって吸着対象物8が座屈現象を引き起こすおそれがある。座屈現象を発生させないために、吸着対象物8と吸着装置12、12c、212の表面228との間の摩擦係数に応じたグラディエント力(垂直抗力)を発生させる事で、吸着面218からの一部脱落(浮き)が防止されている。
【0129】
図13は、吸着板214と吸着対象物8とが立設姿勢にされた状態を示している。
【0130】
真空槽11の内部には薄膜形成装置の一部としてスパッタリングターゲット17が設けられており、立設姿勢にされた吸着対象物8の表面はスパッタリングターゲット17に対面する。真空槽11の内部の真空雰囲気中に、ガス導入装置25から希ガス等のスパッタガスを導入し、スパッタ電源23によってカソード電極16にスパッタ電圧を印加し、スパッタリングターゲット17をスパッタリングする。
【0131】
このとき、スパッタ電源23からスパッタリングターゲット17に出力する電力は制御されており、所定の大きさの電力がスパッタリングターゲット17に供給された状態でスパッタリングターゲット17がスパッタリングされ、吸着対象物8のスパッタリングターゲット17に対面する表面に導電性薄膜の成長が開始される。
【0132】
図14の符号203は導電性薄膜を示している。
【0133】
第一、第三の正負電極231a、231b、233a、233b、241a、241b、243a、243bにそれぞれ第一の吸着電圧と第三の吸着電圧とが印加され、グラディエント力が発生している状態で、成長中の導電性薄膜203の膜厚が増加すると、グラディエント力が減少する。
【0134】
成長中の導電性薄膜203の膜厚は、膜厚センサによって測定されており、導電性薄膜203が所定の膜厚に成長したことを検出すると、第二の正負電極232、242の間に、第二の吸着電圧が印加され、補助電極262には第二の正負電極232、242のうちのいずれか一方の電極と同じ値の電圧が印加され、また、環状電極252には第二の正負電極232、242のうちのいずれか一方の電極と同じ値の電圧が印加される。
【0135】
ここでは、第二の正電極232と補助電極262とは同じ正電圧が印加され、第二の負電極242と環状電極252とには同じ負電圧が印加されており、第二の負電極242と環状電極252とに対する第二の正電極232と補助電極262の電圧が第二の吸着電圧である。
【0136】
なお、スパッタリングターゲット17に供給する電力の大きさと導電性薄膜203の成長速度の関係を予め求めておき、スパッタリング時間から、導電性薄膜203の膜厚を求めるようにしてもよい。
【0137】
成長開始直後であって導電性薄膜203の膜厚が小さい場合は、静電気力は弱いが、導電性薄膜203の膜厚の増加によって、第二の正負電極232、242と、補助電極262と、環状電極252と導電性薄膜203とによって発生された吸着力が第一、第三の正負電極231a、231b、233a、233b、241a、241b、243a、243bによるグラディエント力以上になると、第一、第三の正負電極231a、231b、233a、233b、241a、241b、243a、243bへの電圧印加を停止し、又は、第一、第三の正負電極231a、231b、233a、233b、241a、241b、243a、243bへ印加する電圧を減少させ、グラディエント力を消滅させても静電気力によって吸着対象物8の吸着を維持することができる。
【0138】
第一、第三の吸着電圧は高電圧であるため、第一、第三の正負電極231a、231b、233a、233b、241a、241b、243a、243b間に第一、第三の吸着電圧が印加されている状態で、ガス用溝226に熱媒体ガスが導入されると、第一、第三の正負電極231a、231b、233a、233b、241a、241b、243a、243b間の耐電圧が低下し、異常放電が発生する。
【0139】
従って、熱媒体ガスは、第一、第三の正負電極231a、231b、233a、233b、241a、241b、243a、243b間に印加する電圧の大きさが異常放電を発生させない程度の値に減少させた後に導入を開始するようにされている。電圧を減少させることは、電圧の絶対値を小さくすることを意味する。
【0140】
なお、導電性薄膜203が所定膜厚に成長する前や、成長を開始する前に第二の正負電極232、242と、補助電極262と、環状電極252との間に、第二の吸着電圧の印加を開始してもよい。
【0141】
また、第一、第三の正負電極231a、231b、233a、233b、241a、241b、243a、243bに印加する電圧を減少させる際に、第一の正負電極231a、231b、241a、241bと、第三の正負電極233a、233b、243a、243b間とに、第一、第三の吸着電圧を印加して、成長中の導電性薄膜203と第一、第三の正負電極231a、231b、233a、233b、241a、241b、243a、243bとの間に静電気力を発生させるようにしてもよい。
【0142】
吸着対象物8が、グラディエント力による吸着力よりも強い吸着力の静電気力で吸着され、吸着対象物8と吸着装置212の間に熱媒体ガスが導入される。真空槽11には熱媒体ガスの圧力を検出する検出装置38が設けられており、熱媒体ガスが導入されると、まず、検出装置38により、真空槽11の内部の熱媒体ガスの圧力が検出される。
【0143】
検出された圧力の値が所定の基準値よりも大きい場合は、静電気力による吸着が不良であるとして、グラディエント力によって吸着されたまま、一旦吸着装置212と共に横設姿勢にされた後、吸着装置212上から吸着対象物8が除去され、異物などの吸着不良の原因を取り除いて吸着対象物8を配置し直す。その後、吸着対象物8は再度グラディエント力で吸着された後、立設姿勢にされる。
【0144】
検出結果が正常であった場合には、吸着対象物8と吸着装置212の間の熱伝導率が高くなるので、次工程に進む。
【0145】
なお、熱媒体ガスの種類は分かっているので、真空槽11の内部の圧力を検出する際に熱媒体ガスの種類のガスの分圧を測定するようにすれば感度(S/N比)が向上するので望ましい。さらに、真空槽11の内部では、真空槽11内で行われる真空処理に対して、漏洩する熱媒体ガスの量が与える影響は少ない事から、容積が小さい部位である吸着対象物8と吸着装置212の間の空間(吸着対象物8と環状電極252によって閉塞された空間に連通する何れかの箇所)の圧力を測定することで真空槽11の内部の圧力に替えることは、感度(S/N比)が向上するため更に望ましい。
【0146】
また、熱媒体ガスを一定の圧力で供給してその流量を測定し、測定値が所定値よりも大きいと判断したときに真空槽11中に漏洩する熱媒体ガスの量が多く、吸着不良であると決定することもできる。要するに、間接的、直接的に真空槽11の内部に漏洩する熱媒体ガスの量を測定し、漏洩する量が多いと判断したときには、吸着不良であると決定すればよい。
【0147】
吸着装置212の吸着板214の内部には循環路246が設けられており、循環路246は真空槽11の外部に設けられた温度調節装置29に接続されている。
【0148】
循環路246には、温度調節装置29から温度調節された熱媒体液が供給され、吸着板214内部の循環路246を流れて吸着板214と熱交換を行うようにされている。
【0149】
ここでは温度調節装置29は冷却装置であり、冷却された熱媒体液を循環路246に供給し、熱媒体液は吸着板214の内部の循環路246を流れ、吸着板214と熱交換を行い、吸着板214を冷却する。熱媒体液は昇温され、温度調節装置29に戻り冷却されて吸着装置212に供給される。
【0150】
このように、熱媒体液は吸着装置212を冷却することで吸着対象物8を冷却し、熱媒体液は、繰り返し吸着板214の循環路246を流れて吸着装置212に吸着された成膜対象物8を冷却する。
【0151】
温度調節装置29は熱媒体液を加熱する加熱装置でもあり、吸着対象物8を昇温させる場合も本発明に含まれる。
【0152】
なお、吸着板214の吸着面218とは反対側の面にパイプを設け、パイプの内部を循環路246として熱媒体液を流すようにしてもよい。
【0153】
このように、静電気力によって吸着装置212に吸着された吸着対象物8は熱媒体ガスと熱媒体液によって温度制御され、導電性薄膜203の成長中に吸着対象物8は所望の温度に維持されるようになっており、例えば吸着対象物8が冷却される場合は、吸着対象物8に設けられた薄膜や電気素子等を劣化させずに導電性薄膜203を成長させることができる。
【0154】
環状突条227の上端は、支持突起225の上端以上の高さに位置するようにされており、吸着対象物8の裏面は環状突条227と接触し、吸着対象物8は環状電極252の静電気力によって環状突条227の上端に押しつけられ、吸着対象物8と環状突条227との間は密着し、気密に近い状態になるから、ガス導入孔238から環状突条227で囲まれた空間に導入された熱媒体ガスは、環状突条227の外部に流出しにくくなっている。支持突起225の高さと環状突条227の高さの差は小さく、吸着対象物8の裏面は支持突起225に接触するようになっている。
【0155】
上記吸着装置212では、第一の領域221に補助電極262が設けられており、第一の正負電極231a、241a、231b、241bが発生させるグラディエント力が消滅しても、吸着対象物8の上部は補助電極262と導電性薄膜203との間に発生する静電気力と、環状電極252と導電性薄膜203との間に発生する静電気力とによって吸着されるから、グラディエント力が消滅しても上部が垂れ下がることはなく、座屈現象による浮きもない。
【0156】
また、吸着対象物8に印加される吸着力が静電気力からグラディエント力に切り替わるときに、静電気力とグラディエント力の両方の吸着力が吸着対象物8に印加される期間がある。
【0157】
各電極は、吸着対象物8の中心線に対して対称に配置されており、両方の吸着力が印加される期間中でも、静電気力とグラディエント力の不均等に起因した回転力や、吸着力と吸着対象物8の重量との合力に起因した回転力は発生せず、回転力に起因した位置ずれは発生しない。
【0158】
また、上記吸着装置212では、第二の領域222に第三の正負電極233a、233b、243a、243bを設け、吸着対象物8の第二の領域222と対面する部分をグラディエント力によって吸着しており、静電気力による吸着力が発生する前も、吸着対象物8の第二の領域222の部分をグラディエント力によって吸着装置212に吸着するようにしたので立設姿勢にするときに、吸着対象物8が吸着装置212からずれることがない。
【0159】
但し、櫛状形状の本数が多くされている等、第一の正負電極231a、231b、241a、241bのグラディエント力が強くなるようにされている場合は、図18の吸着装置212aのように、第二の領域222に、第三の正負電極を設けずに済む。
【0160】
なお、図7図8の平面形状の電極も、第二例の吸着装置の第一、第三の正負電極に用いることができる。
【0161】
また、上記第二例の吸着装置212では、補助電極262と第二の正電極232とが接触されており、補助電極262と第二の正電極232とに同じ値の正電圧が印加されていたが、図15(a)の符号232が付された電極と補助電極262とに負電圧を印加し、符号242が付された電極と環状電極252とに正電圧を印加して静電気力を発生させるようにしてもよい。
【0162】
また、補助電極262と符号232の電極とを分離させ、補助電極262と符号232の電極とに、異なる極性の電圧を印加することもできる。
【0163】
また、上記第二例の吸着装置212では、環状電極252と第二の負電極242とが接触され、環状電極252と第二の負電極242とに同じ値の電圧が印加されるように構成されていたが図19(a)〜(c)の吸着装置212bのように、環状電極252と符号242が付された電極(第二の負電極)とを分離させ、環状電極252と符号242が付された電極とに、異なる値や異なる極性の電圧を印加することもできる。
【0164】
なお、第一の正負電極231a、231b、241a、241bと、第三の正負電極233a、233b、243a、243bとのうち、正電圧が印加される電極の面積と負電圧が印加される電極の面積との差は小さい方が望ましい。
【0165】
また、環状電極252には第二の正電極232又は第二の負電極242と同じ値の電圧が印加され、補助電極262には第二の正電極232又は第二の負電極242と同じ値の電圧が印加されるが、環状電極252と補助電極262との電圧の極性は同じであっても異なっていてもよい。但し、第二の正負電極232、242と補助電極262と環状電極252との間でも正電圧が印加される電極の面積と負電圧が印加される電極の面積との差は小さい方が望ましい。
【符号の説明】
【0166】
2〜3……真空装置
10、210……回転軸線
11……真空槽
12、12c、212……吸着装置
14、214……吸着板
15、215……回転軸
17……スパッタリングターゲット
18、218……吸着面
21、221……第一の領域
22、222……第二の領域
24……吸着電源
26……回転装置
26c……ガス用溝
31、31a、31b、31c、231a、231b……第一の正電極
32、32c、232……第二の正電極
41、41a、41b、41c、241a、241b……第一の負電極
42、42c、242……第二の負電極
203……導電性薄膜
224……保護膜
226……ガス用溝
227……環状突条
233a、233b……第三の正電極
238……ガス導入孔
243a、243b……第三の負電極
252……環状電極
262……補助電極
1……第一の距離
2……第二の距離
1……第一の正電極の幅
2……第二の正電極の幅
1……第一の負電極の幅
2……第二の負電極の幅
【要約】
誘電体の吸着対象物を立設させながら導電性薄膜を成長させる。吸着板14の上部に設けられた第一の領域21に第一の正負電極31、41を配置し、回転軸線10と第一の領域21の間に設けられた第二の領域に第一の正負電極31、41よりも幅広で、間隔も広い第二の正負電極32、42を配置する。第一の正負電極31、41に第一の電圧を印加してグラディエント力によって誘電体の吸着対象物を吸着しながら吸着板14を横設姿勢から立設姿勢にし、第二の正負電極32、42に第二の電圧を印加しながら、吸着対象物8の表面に導電性薄膜を成長させる。吸着対象物8が吸着され続けるので、吸着板14から脱落することが無い。静電気力によって吸着を開始した後、吸着対象物と吸着板14との間に熱媒体ガスを導入すると吸着対象物の温度制御ができる。
図1
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