(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記凹部の端部領域は、凹部の中心と回転テーブルの回転中心とを結ぶ直線が回転テーブルの外周と交わる点をPとすると、凹部の中心から点Pに対して左右に30度ずつの開き角を各々形成する直線の間の領域であることを特徴とする請求項2記載の成膜装置。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施形態に係る成膜装置について、縦断側面図、横断平面図である
図1、
図2を夫々参照して説明する。この成膜装置は、平面形状が概ね円形である真空容器1と、この真空容器1内に設けられ、当該真空容器1の中心に回転中心を有すると共に例えば石英により構成された水平な円形の回転テーブル2と、を備えており、回転テーブル2に載置されるウエハWに対して処理ガスを供給して成膜処理を行う。なお、
図2中のNは、ウエハWの周縁部に形成された切り欠きであるノッチを示している。
【0011】
図1中11、12は、夫々真空容器1を構成する天板、容器本体である。天板11の上面側における中央部には、真空容器1内の中心部領域Cにおいて互いに異なる処理ガス同士が混ざり合うことを抑制するために、窒素(N
2)ガスを分離ガスとして供給するための分離ガス供給管13が接続されている。
【0012】
容器本体12の底面部14には、真空容器1の周に沿って円環状の凹部15が形成されている(
図1参照)。この凹部15内には加熱機構であるヒータユニット16が設けられ、回転テーブル2を介して当該回転テーブル2上のウエハWを所定の成膜温度例えば620℃に加熱するようになっている。図中17は凹部15を塞ぐカバーであり、図中18は、凹部15内をパージするためのパージガスを供給する供給管である。
【0013】
上記の回転テーブル2の中心部の下方側には鉛直な回転軸22を介して回転テーブル2を時計周りに回転させる回転機構21が設けられている。図中23は回転軸22及び回転機構21を収納するケース体であり、図中24は、ケース体23内にN
2ガスをパージガスとして供給するためのパージガス供給管である。
【0014】
図3は回転テーブル2の一面側(表面側)を示している。この一面側には、凹部や溝部が形成されることで段差が形成されており、
図3では各部の識別を容易にするために、そのように凹部や溝部が形成されて周囲よりも高さが低い領域をグレースケールで示している。回転テーブル2の一面側には、円形のウエハWを落とし込んで保持するために、円形の凹部25が、当該回転テーブル2の回転方向(周方向)に沿って6箇所に設けられている。各々の凹部25は、ウエハWの外縁との間に隙間領域(クリアランス)を設けるために、平面で見た時にウエハWよりも径が大きくなるように形成されている。具体的には、ウエハWの直径寸法及び凹部25の直径寸法は、夫々例えば300mm及び302mmである。また回転テーブル2の直径寸法は例えば1000mm程度となっている。
【0015】
図4は上記の凹部25の斜視図であり、
図5は凹部25の回転テーブル2の径方向に沿った縦断側面図であり、
図6は
図3におけるA―A’矢視断面図である。これらの各図も参照して、回転テーブル2についてさらに説明する。凹部25の底部の周縁部は、下方へとさらに窪むことで円環状の溝部27を形成しており、この環状溝部27に囲まれる凹部25の底部は、上端面が水平な円形の載置部26として構成されている。平面視、載置部26の中心と凹部25の中心とは互いに一致し、載置部26の径はウエハWの径よりも小さい。
【0016】
このような構成によって、ウエハWが載置部26に載置されたとき、
図5、
図6に示すようにウエハWの周縁部よりも中央部寄りの領域が当該載置部26に支持され、ウエハWの周縁部は当該凹部25の底面から浮き上がる。このようにウエハWが載置されるように載置部26及び環状溝部27を形成するのは、背景技術の項目で説明したように、加熱されて反ったウエハWと凹部25の底面との擦れを防ぐためである。なお、
図3中25aは載置部26に設けられる貫通孔であり、ウエハWを下方側から突き上げて昇降させるための3本の昇降ピン(図示せず)が突没する。
【0017】
図5に示す載置部26の高さ寸法hは、例えば0.1mm〜1.0mmであり、載置部26に載置されたウエハWの表面より、回転テーブル2の表面の方が若干高くなるように形成されている。載置部26の直径寸法dは例えば297mmであり、既述の環状溝部27の幅寸法(凹部25の内壁面と載置部26の外壁面との間の寸法)L1は例えば3mmである。尚、
図5などでは、幅寸法L1や高さ寸法hについて誇張して大きく描画している。
【0018】
凹部25内における載置部26の周囲の空間と回転テーブル2の外側の空間とを連通する連通路である幅狭な直線状溝部28が、凹部25ごとに例えば5本ずつ設けられている。この5本の直線状溝部28(281〜285として表記する場合がある)は、凹部25の内壁面から回転テーブル2の外周に至る長さの切欠きであり、凹部25の中央から見て回転テーブル2の回転中心(
図3にO1として表記している)とは反対側の凹部25の端部領域に、回転テーブル2の周方向に間隔を開けて並ぶように形成されている。この端部領域とは、回転テーブル2の回転中心O1と、凹部25の中心O2とを通過する直線Aが回転テーブル2の外周と交わる点をPとすると(
図3参照)、凹部25の中心O2から点Pに対して左に30度の開き角を形成する直線S1と、前記中心O2から点Pに対して右に30度の開き角を形成する直線S2との間の領域である。
【0019】
さらに、回転テーブル2の表面には6つの連結溝部29が形成されている。これらの連結溝部29は、回転テーブル2の回転方向に互いに隣接する凹部25について、回転方向下流側の凹部25と、回転方向上流側の凹部25とを接続するように、回転テーブル2の周方向に互いに離れて設けられている。この連結溝部29の一端部は、回転方向下流側の凹部25の中心O2から見て、当該凹部25の環状溝部27のうち回転テーブル2の回転中心O1側の部位が、回転テーブル2の回転方向上流側に引出されるように形成されている。そして、連結溝部29の他端部は、回転方向上流側の凹部25の中心O2から見て、当該凹部25の環状溝部27のうち回転テーブル2の回転中心O1とは反対側の部位が、回転テーブル2の回転方向下流側に引出されるように形成されている。このように連結溝部29が形成されることで、上記の回転方向に互いに隣接する凹部25が、互いに接続されている。
【0020】
この連結溝部29を形成する理由について、
図7、
図8を参照して説明する。
図7、
図8は、連結溝部29が形成されていない回転テーブル20を用いて成膜処理が行われる様子を夫々示している。成膜処理時において、凹部25の中心O2から回転テーブル2の回転中心O1に向かって見たときに、
図7に示すように、環状溝部27の前方側(回転中心O1側)の左右に互いに離れた領域に処理ガスの溜りQ1が形成され、当該領域の処理ガスの濃度が高くなるという知見を発明者は得ている。つまり成膜処理中に、環状溝部27の周方向の各部において、処理ガスの濃度に比較的大きな差が生じる。そして、上記のガス溜りQ1を形成する処理ガスが
図8に示すようにウエハWの表面の周縁部に回り込むことで、ウエハW表面においてこの回りこみが起きた周縁部の処理ガスの濃度が、他の領域の処理ガスの濃度に比べて上昇する結果、ウエハWの表面の周縁部の周方向における膜の厚さの分布の均一性が低下すると考えられる。
【0021】
上記の回転テーブル2の連結溝部29は、回転方向下流側の凹部25の環状溝部27のガス溜りQ1を形成する処理ガスを、回転方向上流側の凹部25の環状溝部27においてガス溜りQ1が形成されていない箇所(即ち処理ガスの濃度が低い箇所)へとガイドする。それによって、ガス溜りQ1の処理ガスがウエハW表面への回りこむことを防ぐことができる。
【0022】
図1、
図2に戻って成膜装置の他の各部を説明する。
図2中19は真空容器1の側壁に設けられたウエハWの搬送口であり、ゲートバルブGにより開閉される。図示しないウエハWの搬送機構は、当該搬送口19を介して真空容器1内を進退する。この搬送口19を臨む位置における回転テーブル2の下方側には、既述した凹部25の貫通口25aを介してウエハWを裏面側から持ち上げるための図示しない昇降ピンが設けられており、ウエハWの搬送機構と凹部25との間でウエハWの受け渡しを行う。
【0023】
図2に示すように、凹部25の通過領域と各々対向する位置には、各々例えば石英からなる5本のノズル31、32、33、41、42が真空容器1の周方向に互いに間隔をおいて放射状に配置されている。この例では、後述の搬送口15から見て時計周り(回転テーブル2の回転方向)にプラズマ発生用ガスノズル33、分離ガスノズル41、第1の処理ガスノズル31、分離ガスノズル42及び第2の処理ガスノズル32が、この順番で配列されている。プラズマ発生用ガスノズル33の上方側には、後述のプラズマ発生部5が設けられている。
【0024】
各ノズル31、32、33、41、42は、流量調整バルブを介して夫々ノズルにガスを供給するガス供給源(図示せず)に接続されている。第1の処理ガスノズル31は、シリコン(Si)を含む第1の処理ガスである原料ガス、例えば3DMAS(Tris(dimethylamino)silane:SiH[N(CH
3 )
2 ]
3 )の供給源に接続されている。第2の処理ガスノズル32は、原料ガスと反応する第2の処理ガスである反応ガス、例えばオゾン(O
3)ガスと酸素(O
2)ガスとの混合ガスの供給源に接続されている。プラズマ発生用ガスノズル33は、例えばアルゴン(Ar)ガスとO
2ガスとの混合ガスからなるプラズマ発生用ガスの供給源に接続されている。分離ガスノズル41、42は、分離ガスである窒素(N
2)ガスのガス供給源に各々接続されている。これらガスノズル31、32、33、41、42の例えば下面側には、回転テーブル2の半径方向に沿って複数箇所にガス吐出孔(図示せず)が形成されている。
【0025】
処理ガスノズル31、32の下方領域は、夫々第1の処理ガスをウエハWに吸着させるための第1の処理領域P1及びウエハWに吸着した第1の処理ガスの成分と第2の処理ガスとを反応させるための第2の処理領域P2となる。分離ガスノズル41、42は、各々第1の処理領域P1と第2の処理領域P2とを分離する分離領域Dを形成するためのものである。この分離領域Dにおける真空容器1の天板11には、
図2に示すように、概略扇形の凸状部43が設けられており、分離ガスノズル41、42は、この凸状部43にめり込むように設けられている。
【0026】
従って分離ガスノズル41、42における回転テーブル2の周方向両側には、各処理ガス同士の混合を阻止する役割を有する低い第1の天井面(凸状部43の下面)が配置され、この第1の天井面の前記周方向両側には、当該第1の天井面よりも高い第2の天井面が配置されている。凸状部43の周縁部(真空容器1の外縁側の部位)は、各処理ガス同士の混合を阻止するために、回転テーブル2の外端面に対向すると共に容器本体12に対して僅かに離間するように、L字型に屈曲している。また、天板11の下面における中央部には、当該中央部における処理ガス同士の混合を防ぐためにリング状に下方に突出する突出部44が設けられ、突出部44の下面は凸状部43の下面に連続するように形成されている。
【0027】
上記のプラズマ発生部5は、金属線からなると共にコイル状に巻回されたアンテナ51を含む。
図2中52は高周波電源であり、アンテナ51に高周波電力を供給する。高周波電源52とアンテナ51との間には整合器53が介在する。図中54はカップ状の筐体であり、真空容器1の天板11においてプラズマ発生用ガスノズル33の上方側に平面視扇形に開口した開口部を塞ぎ、上記のアンテナ51を収納している。
図1中55は、筐体54の下方領域へのN
2ガスや第2の処理ガスの侵入を阻止するためのガス規制用の突起部であり、筐体54の周縁部に沿って形成されており、上記のプラズマ発生用ガスノズル33は当該突起部55の外側から突起部55を貫いて突起部55に囲まれる領域に進入するように設けられている。
【0028】
筐体54とアンテナ51との間には上面側が開口する箱形のファラデーシールド56が設けられている。ファラデーシールド56は導電性材料により構成され、接地されている。ファラデーシールド56の底面には、アンテナ51において発生する電界及び磁界(電磁界)のうち、磁界をウエハWに到達させると共に、電界成分が下方に向かうことを阻止するために、スリット57が形成されている。図中58は絶縁板であり、ファラデーシールド56とアンテナ51との間を絶縁する。
【0029】
図中61は、容器本体12の底面部14の周縁に沿って設けられるリング板であり、回転テーブル2の外周よりも外側位置に位置している。このリング板61の上面には、互いに周方向に離間して第1の排気口62及び第2の排気口63が形成されている。第1の排気口62は、第1の処理ガスノズル31と、当該第1の処理ガスノズル31よりも回転テーブル2の回転方向下流側における分離領域Dとの間において、当該分離領域D側に寄った位置に形成されており、第1の処理ガス及び分離ガスを排気する。第2の排気口63は、プラズマ発生用ガスノズル33と、当該プラズマ発生用ガスノズル33よりも回転テーブル2の回転方向下流側における分離領域Dとの間において、当該分離領域D側に寄った位置に形成されており、第2の処理ガス、分離ガス及びプラズマ発生用ガスを排気する。
【0030】
図中64はリング板61の表面に形成される溝状のガス流路であり、回転テーブル2の外側に流れた第2の処理ガス、分離ガス及びプラズマ発生用ガスを第2の排気口63にガイドする。第1の排気口62及び第2の排気口63は、
図1に示すように、各々バタフライバルブなどの圧力調整部65が介設された排気管66により、真空排気機構である例えば真空ポンプ67に接続されている。
【0031】
さらに、この成膜装置には、装置全体の動作のコントロールを行うためのコンピュータからなる制御部100が設けられており、この制御部100には後述の成膜処理を行うためのプログラムが格納されている。このプログラムは、後述の装置の動作を実行するようにステップ群が組まれており、ハードディスク、コンパクトディスク、光磁気ディスク、メモリカード、フレキシブルディスクなどの記憶媒体である記憶部101から制御部100内にインストールされる。
【0032】
次に上記の成膜装置による成膜処理について説明する。先ず、ヒータユニット16によって回転テーブル2が加熱される。そしてゲートバルブGが開放され、回転テーブル2の間欠的な回転と、回転テーブル2の回転停止中における昇降ピンの昇降動作と、によって搬送機構により真空容器1内に搬入されたウエハWが凹部25の載置部26に順次載置される。載置されたウエハWは所定の温度、例えば620℃に加熱される。
【0033】
6つの凹部25にウエハWが載置されると、ゲートバルブGが閉鎖され、回転テーブル2が20rpm〜240rpm例えば180rpmで時計周りに回転する。そして、分離ガスノズル41、42、分離ガス供給管13及びパージガス供給管18、24から、夫々N2ガスが所定の流量で吐出される。続いて、処理ガスノズル31、32から夫々第1の処理ガス及び第2の処理ガスが吐出されると共に、プラズマ発生用ガスノズル33からプラズマ発生用ガスが吐出される。このように各ガスが吐出されたときに、真空容器1内の圧力は予め設定した処理圧力である133Pa〜1333Pa例えば1260Pa(9.5Torr)の圧力になるように各排気口62、63から排気される。また、このような各ガスの吐出、排気及び回転テーブル2の回転に並行して、プラズマ発生部5のアンテナ51に高周波電力が供給される。
【0034】
回転テーブル2の回転によって、ウエハWの表面では第1の処理領域P1において第1の処理ガス(原料ガス)が吸着し、次いで第2の処理領域P2においてウエハW上に吸着した第1の処理ガス(原料ガス)と第2の処理ガス(反応ガス)との反応が起こり、薄膜成分であるシリコン酸化膜(SiO
2)の分子層が1層あるいは複数層形成されて反応生成物が形成される。一方、アンテナ51に供給された高周波電力により発生した電界及び磁界のうち、磁界のみがファラデーシールド56を通過して真空容器1内に到達し、プラズマ発生用ガスが活性化されて、例えばイオンやラジカルなどのプラズマ(活性種)が生成する。このプラズマによって反応生成物が改質される。具体的にはプラズマがウエハWの表面に衝突することにより、例えば反応生成物からの不純物の放出や、反応生成物内の元素の再配列による緻密化(高密度化)が起きる。
【0035】
この成膜処理中に
図7、
図8で説明したように、各凹部25の環状溝部27において、凹部25の中心O2よりも回転テーブル2の回転中心O1寄りの領域に処理ガスの溜りQ1が形成され、当該回転中心O1寄りの領域の処理ガスの濃度が高くなる。しかし、そのように凹部25においてこのガス溜りQ1を形成する処理ガスは連結溝部29にガイドされて、当該凹部25に対して回転方向上流側に隣接する凹部25の環状溝部27における処理ガスの濃度が比較的低い、中心O2よりも回転テーブル2の周端寄りの領域へと流れる。
図9は、この連結溝部29における処理ガスの流れを模式的に示している。
【0036】
この連結溝部29における処理ガスの流れには、連結溝部29の一端側と他端側との間における処理ガスの濃度勾配による拡散作用や、回転テーブル2の回転によって凹部25が分離領域Dに進入する際に、当該分離領域Dから供給されるN
2ガスによるガス溜りQ1の押し流しが関与すると考えられる。このように処理ガスが流れることで、各環状溝部27の周方向における濃度の差が抑えられる結果、環状溝部27からウエハWの表面に回り込む処理ガスによって、ウエハWの周縁部のうちの一部の領域における当該処理ガスの濃度が、他の領域に比べて高くなることが抑えられる。従って、当該一部の領域の膜厚が他の領域の膜厚よりも大きくなることが抑制される。
【0037】
そして、そのように連結溝部29を介して回転方向上流側の凹部25の環状溝部27に流れた処理ガスは、回転テーブル2の遠心力によって当該凹部25に載置されるウエハWの裏面側を直線状溝部28へと流れ、当該直線状溝部28から回転テーブル2の外側へ排出される。また、回転テーブル2の遠心力によってウエハWの表面を当該回転テーブル2の外周へ向けて流れる処理ガスも、当該環状溝部27から回転テーブル2の外側へ排出される。
【0038】
上記のように回転テーブル2の回転を続けることにより、ウエハW表面への第1の処理ガスの吸着、ウエハW表面に吸着した第1の処理ガスの成分と第2の処理ガスとの反応による反応生成物の生成、及び当該反応生成物のプラズマ改質がこの順番で多数回に亘って行われ、ウエハW表面に形成されるSiO
2膜の膜厚が上昇する。そして、所定の膜厚のSiO
2膜が形成されると、各処理ガス及びプラズマ発生用ガスの供給が停止し、真空容器1への搬入時とは逆の動作でウエハWが真空容器1から搬出される。
【0039】
上述の成膜装置によれば、回転テーブル2上の6つの凹部25内の載置部26に夫々ウエハWを載置して、凹部25を処理ガスが供給される処理領域P1、P2に順次通過させて成膜処理が行われる。そして、一の凹部25内における載置部26の周囲の環状溝部27であって、載置部26の中心O2から見て回転テーブル2の回転中心O1側の部位から、一の凹部25の回転方向上流側に隣接する他の凹部25内に設けられた環状溝部27へ連通する連結溝部29が設けられている。それによって、一の凹部25の環状溝部27に溜まった処理ガスが連結溝部29に流出し、他の凹部25の環状溝部27における処理ガスの濃度が比較的低い領域へと移動することができる。従って、各凹部25の環状溝部27において回転テーブル2の回転中心O1側の部位の処理ガス濃度が局所的に高くなることが抑えられる。従って、ウエハWの表面の周縁部へ、高い濃度の処理ガスが回り込むことが抑えられるため、ウエハWの周縁部における膜厚の均一性の低下を抑えることができる。
【0040】
さらに上述の成膜装置によれば、遠心力によって凹部25内を回転テーブル2の周端側へ向かう処理ガスを当該凹部25から排出できるように、既述した凹部25の端部領域に直線状溝部28が形成されている。従って、ウエハW表面において処理ガスの濃度が局所的に高くなる領域が発生することを、より確実に抑えることができる。
【0041】
処理ガスの溜まりQ1を環状溝部27から排出するための、他の溝部の形成例について
図10に示す。この
図10の回転テーブル2においては、各凹部25の中心O2から回転テーブル2の回転中心O1に向かって見て、環状溝部27の側壁の前方側の左右に互いに離れた領域が、各々回転テーブル2の周端へ向けて引出されることによって、各凹部25の左右に夫々溝部71が形成されている。回転テーブル2の回転方向に隣接する凹部25について、回転方向下流側の凹部25の右側(回転方向上流側)の溝部71、回転方向上流側の凹部25の左側(回転方向下流側)の溝部71が、回転テーブル2の周端へと向かう途中で互いに合流し、合流した溝部71の端部は、回転テーブル2の外側へ開放されている。
【0042】
このように形成された溝部71によって、
図7で説明したように形成される処理ガスの溜りQ1は、溝部71によって回転テーブル2の外側へガイドされて環状溝部27から排出される。従って、既述の連結溝部29を回転テーブル2に形成した場合と同様の効果が得られる。なお、連結溝部29の代わりに溝部71が設けられることを除いて、
図10の回転テーブル2は、
図3などで説明した回転テーブル2と同様に構成されている。
【0043】
このように、処理ガスを排出するために一の環状溝部27に連通する外部の領域は、他の環状溝部27であることに限られず、回転テーブル2の外周縁の外側であってもよい。また、
図11に示すように、溝部71は回転テーブル2上で合流せず、互いに独立していてもよい。つまり、
図10に示すように2つの載置部26に共有の溝部71を形成してもよいし、
図11に示すように載置部26ごとに個別の溝部71を形成してもよい。
【0044】
このように処理ガスを環状溝部27の凹部25の外部の領域に排出するために回転テーブル2に形成される連通路としては、上方側が開放された溝部として形成されることに限られず、一の環状溝部27と他の環状溝部27とを接続する連通孔または一の環状溝部27と回転テーブル2の外周縁の外側とを接続する連通孔であってもよい。ところで、回転テーブル2の半径上に凹部25を、当該回転テーブル2の径方向に隣接するように形成してもよい。その場合、当該径方向に隣接する凹部25間を接続するように、連結溝部29を形成してもよい。また、上記の成膜装置は、種類が異なる処理ガスが供給される領域が分離領域Dによって互いに分離されず、CVD(Chemical Vapor Deposition)によって成膜が行われるように構成されていてもよい。
【0045】
(評価試験)
続いて、本発明に関連して行われた評価試験1について説明する。この評価試験1では上記の発明の実施形態で説明した成膜装置を用いてウエハWに成膜処理を行った。この成膜処理中におけるウエハWの温度は620℃、回転テーブル2の回転速度は180rpm、中心部領域CへのN2ガスの供給量は6000sccm、真空容器1内の圧力は9.5Torr(1.27×10
3Pa)、3DMASの供給量は500sccmに夫々設定した。そして、ウエハWの面内各部の膜厚を測定した。また、比較試験1として、回転テーブル2の代わりに回転テーブル2に連結溝部29が形成されていないことを除いて評価試験1で用いた成膜装置と同様の構成の成膜装置を用いて、評価試験1と同じ条件で成膜処理を行い、評価試験1と同様にウエハWの膜厚を測定した。
【0046】
図12のグラフは、評価試験1及び比較試験1の結果を示している。グラフの横軸は、膜厚を測定した位置を1〜49の数値で示しており、グラフの縦軸は、膜厚比及び膜厚(単位:nm)を示している。縦軸における膜厚比とは、ウエハWの中心の膜厚を1とし、ウエハWの各部の膜厚をこの中心の膜厚に対する相対値として示したものである。また、横軸について補足すると、横軸の数値1はウエハWの中心を示している。そして数値2〜9はウエハWの中心を中心とする半径約が50mmの円周上の位置、数値10〜25はウエハWの中心を中心とする半径約が100mmの円周上の位置、数値26〜49はウエハWの中心を中心とする半径約が150mmの円周上の位置を夫々示している。同じ円周上における膜厚の各測定位置は、円周方向に隣接する測定位置間の距離が互いに等しくなるように設定されている。
【0047】
実線の折れ線グラフは、評価試験1から取得された膜厚に対応するプロットを線で結んだものであり、点線の折れ線グラフは比較試験1から取得された膜厚に対応するプロットを線で結んだものである。ただし、各プロットについては図示を省略している。グラフを見ると、数値1〜25の各位置の膜厚については、評価試験1と比較試験1との間で大きな差は無い。しかし数値26〜49の各位置を見ると、殆どの位置において評価試験1の膜厚の方が比較試験1の膜厚よりも小さい。従って、評価試験1では、既述したように環状溝部27からウエハW表面への周縁部への処理ガスの回りこみが抑えられていると考えられる。特に数値29及びその付近の位置と、数値48及びその付近の位置とにおいて、比較試験1では膜厚比が1以上あるいは1に近い値になっているのに対して、評価試験1の膜厚比は1よりも大きく低下した値となっており、これらの各位置ではウエハW表面への処理ガスの回り込みを特に抑えることができたことが分かる。
【0048】
そして、比較試験1に対して評価試験1では、上記の数値29及びその付近の位置の膜厚と、数値48及びその付近の位置の膜厚とが低下していることにより、数値26〜49の各位置の膜厚は、数値1〜25の各位置の膜厚よりも小さくなっている。つまり、背景技術の項目で述べたようにウエハの中心部の膜厚に比べてウエハの周縁部の膜厚が小さい膜厚分布を持つように成膜することが求められているが、評価試験1ではそのような膜厚分布を持つように成膜されている。このような評価試験1の結果から、本発明の効果が確認された。