(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
透過水流量、濃縮水流量、濃縮水の循環水量を監視して濃縮倍率が圧力開放通水前よりも高くならないように背圧弁を圧力開放通水前の状態まで閉じる請求項1に記載の逆浸透膜のスケール抑制方法。
前記圧力開放通水を行った際に前記逆浸透膜の濃縮側から得られる水の一部もしくは全てを前記逆浸透膜の供給水として再度使用することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の逆浸透膜のスケール抑制方法。
前記濃縮側から得られる水の一部もしくは全てを、精密濾過膜又は限外濾過膜に通水した後、前記逆浸透膜の供給水とすることを特徴とする請求項6に記載の逆浸透膜のスケール抑制方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記従来技術の問題点を解決するRO膜のスケール抑制方法を提供することを目的とする。即ち、本発明では、供給水中に存在するスケール成分がRO膜で濃縮することによってスケール化し、透過流束や脱塩率などの膜性能が低下する恐れがある際に、生成したスケールを膜面から剥離させる運転を行うことにより、更にはスケール成分を分散させてスケールの生成を抑制する薬剤を併用して、膜性能の安定化を図る。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、スケールの生成とRO膜への付着を抑制する方法について鋭意検討し、3日に1回以上の頻度でRO膜の背圧弁を開放する圧力開放通水を行うと共に、背圧弁を元の状態に閉じる(開度を小さくする)際に濃縮倍率が背圧弁を開放する前よりも高くならないように背圧弁の開度をゆっくり小さくすることにより、スケールによる膜性能(透過性能)の低下を抑制できることを見出した。
【0008】
更には、スケール抑制剤として、ホスホン酸などのリン酸基を有するものや、アクリル酸(AA)、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(AMPS)、N−tert−ブチルアクリルアミド(tBuAAm)の3元共重合体などのスルホン酸基を有するものを供給水に添加することで、透過流束等の膜性能の低下をより一層確実に抑制することができることを見出した。
【0009】
背圧弁を開放すると、その間透過水が得られず、水回収率が低下する。本発明では、その間にRO膜の濃縮水側から排出される水を供給水として再利用することで、水回収率の低下を抑えることができる。この場合、濃縮水中には、膜面から剥離したスケール成分が存在している可能性があるため、精密濾過(MF)膜や限外濾過(UF)膜に通して、スケール成分を除去してから再利用することが好ましい。
【0010】
本発明はこのような知見に基づいて達成されたものであり、以下を要旨とする。
【0011】
[1] スケール成分を含有する供給水を逆浸透膜に通水する水処理におけるスケールを抑制する方法において、
3日に1回以上の頻度で、該逆浸透膜の背圧弁の開度を大きくして、定常透過流束の1/3以下で該供給水を通水する圧力開放通水を行うと共に、
透過水流量が圧力開放通水前よりも高くならないように背圧弁を圧力開放通水前の状態まで閉じることを特徴とする逆浸透膜のスケール抑制方法。
【0012】
[2] 透過水流量、濃縮水流量、濃縮水の循環水量を監視して濃縮倍率が圧力開放通水前よりも高くならないように背圧弁を圧力開放通水前の状態まで閉じる[1]に記載の逆浸透膜のスケール抑制方法。
【0013】
[3] 圧力開放通水後、圧力開放前の状態まで背圧弁を閉じるのに要する時間を60分以上とする[1]又は[2]に記載の逆浸透膜のスケール抑制方法。
【0014】
[4] 1日当たりの前記圧力開放通水の時間が60分以上である[1]〜[3]のいずれかに記載の逆浸透膜のスケール抑制方法。
【0015】
[5] 前記供給水中にスケールを分散させる薬剤を添加することを特徴とする[1]〜[4]のいずれかに記載の逆浸透膜のスケール抑制方法。
【0016】
[6] 前記圧力開放通水を行った際に前記逆浸透膜の濃縮側から得られる水の一部もしくは全てを前記逆浸透膜の供給水として再度使用することを特徴とする請求項[1]〜[5]のいずれかに記載の逆浸透膜のスケール抑制方法。
【0017】
[7] 前記濃縮側から得られる水の一部もしくは全てを、精密濾過膜又は限外濾過膜に通水した後、前記逆浸透膜の供給水とすることを特徴とする[6]に記載の逆浸透膜のスケール抑制方法。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、RO膜処理によってスケール成分が溶解度以上の濃度に濃縮される場合であっても、RO膜へのスケールの付着を抑制することができ、透過流束等のRO膜性能を長期に亘り安定に維持することができる。また、背圧弁開放時の濃縮水を供給水に戻すことで水回収率を維持することもできる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0021】
本発明のRO膜のスケール抑制方法は、間欠時に背圧弁を開放すると共に、背圧弁を元の状態に閉じる(開度を小さくする)際に濃縮倍率が背圧弁を開放する前よりも高くならないように背圧弁の開度をゆっくり小さくする。
【0022】
[作用機構]
本発明による作用機構は以下の通りである。
(1) 間欠的に圧力開放通水を行うことで、膜面のスケールを剥離させる。即ち、RO膜装置は、後述の
図1(a),(b)に示されるように、密閉容器内がRO膜で原水室と透過水室とに仕切られ、原水室に原水導入配管と濃縮水排出配管が接続され、透過水室に透過水排出配管が接続されている。原水導入配管には、高圧ポンプが設けられ、一方、濃縮水排出配管には背圧弁が設けられており、高圧ポンプによる加圧力(供給水量)と、背圧弁の開度を調節することで、膜の透過流束が調整され、所定のRO供給水量に対して、所定の透過水量で透過水を得ることができる。
【0023】
本発明では、RO膜に供給水を給水する高圧ポンプの運転を継続した状態で間欠的に背圧弁の開度を大きくする圧力開放通水を行う。背圧弁の開度を大きくすると、RO供給水は高圧ポンプの加圧力で勢いよく背圧弁側(濃縮水側)へ流れ、この供給水の掃流で膜面に付着したスケールを剥離させ、濃縮水排出口側へ排出することができる。
(2) 背圧弁開放後、背圧弁を元の開度に戻すに際し、背圧弁の開度を急激に小さくすると、背圧弁開放運転によって透過流束が回復しているところから、一時的に濃縮倍率が設定値よりも高くなってしまう。その結果、供給水が過濃縮されて透過流束の大きな低下をもたらす。本発明では、背圧弁を圧力開放状態からゆっくりと元の開度に戻すところから、かかる過濃縮が防止され、透過流束の低下が防止される。
(3) スケールの生成抑制に有効なリン酸基又はスルホン酸基を有する分散剤を添加して、スケール化を抑制する。
(4) 圧力開放通水時の濃縮水の一部又は全てを供給水として再利用することにより、背圧弁開放運転を行った上で、水回収率を維持する。
【0024】
[RO膜]
本発明において、スケール抑制対象となるRO膜の材質、膜型式等には特に制限はなく、水処理分野で一般的に使用されているものであれば、本発明を適用してスケール抑制効果を得ることができる。
【0025】
[供給水]
本発明で対象とするRO膜の供給水は、スケール成分を含み、RO膜で濃縮されて濃度が溶解度以上となるような水であり、例えば河川水、地下水、排水回収水、冷却水ブロー水などが挙げられる。スケール種としては、シリカ、炭酸カルシウム、水酸化マグネシウム等を挙げることができる。
【0026】
本発明は、シリカをCSmg/L含むRO供給水を供給水量:VFm
3/d、濃縮水量:VCm
3/dでRO膜処理する際に下記式を満たすような、シリカスケール析出傾向の高いRO供給水のRO膜処理に好適である。
【0028】
なお、本発明では、設定透過流束と間欠的な圧力開放通水により、スケールを抑制するため、RO供給水のpHを酸性にする必要はなく、RO供給水のpHは5〜9、特に6〜8とすればよい。ただし、pHを酸性にした方が効率的である。
【0029】
[設定透過流束]
本発明においては、定常運転時におけるRO膜の設定透過流束を好ましくは0.6m/d以下とする。この設定透過流束が0.6m/dを超えると、以下の圧力開放通水を行っても、スケールの抑制効果を十分に得ることができないおそれがある。RO膜の設定透過流束は0.6m/d以下であればよく、特に、0.3〜0.6m/dの範囲とすることが好ましい。
【0030】
[圧力開放通水]
本発明では、上記の透過流束を設定した上で、3日に1回以上の頻度で、RO膜の背圧弁の開度を大きくして、設定透過流束の1/3以下で供給水をRO膜に通水する圧力開放通水を行う。
【0031】
圧力開放通水の頻度は3日に1回以上であればよく、RO供給水のスケール化傾向、圧力開放通水の時間、圧力開放通水時の透過流束等との関係において適宜設定される。
【0032】
圧力開放通水時の透過流束は、背圧弁の開度によって調節することができる。
【0033】
圧力開放通水時の背圧弁の開度を大きくして圧力開放通水時の透過流束を小さくするほど、圧力開放通水の頻度を小さく、かつ圧力開放通水時間を短くすることができる。逆に圧力開放通水時の背圧弁の開度が小さく、圧力開放通水時の透過流束が大きいほど、一般的には、圧力開放通水の頻度を大きく、かつ圧力開放通水時間を長くする必要が生じる。
【0034】
通常の場合、圧力開放通水時には、背圧弁を全開又は半開以上とし(透過流束=0〜0.3m/d)、圧力開放通水の頻度を3日に1〜72回、1日当たりの圧力開放通水の時間は60分以上、例えば60〜120分(この圧力開放通水時以外の時間は設定透過流束での通常の通水となる。)とすることが好ましい。
【0035】
なお、圧力開放通水は上記の条件を満たせば、定期的に行ってもよく、不定期的に行ってもよいが、RO供給水の水質やRO膜の運転条件に大きな変動がない場合定期的に行うのが好ましい。
[背圧弁を元の開度にゆっくりと戻す条件]
背圧弁の開度をゆっくり小さくする場合、具体的には、半開〜全開状態の背圧弁を圧力開放通水前の運転時の開度(例えば開度10〜90%)にまで戻す時間を0.5〜12時間特に1〜6時間とすることが好ましい。開度の定義は、開度%=〔1−(運転時の圧力)/(背圧弁の最大圧力)〕×100 である。
【0036】
[スケール成分分散剤]
本発明においては、RO供給水に供給水中のスケール成分を分散させる薬剤(分散剤)を添加することで、より一層優れたスケール抑制効果を得ることができる。
【0037】
分散剤としては、水中のスケール成分を分散させる作用のあるものであればよく、特に制限はないが、リン酸基を有する化合物等のリン含有化合物、スルホン酸基を有する化合物等のイオウ含有化合物がスケール成分の分散効果に優れることから好ましい。
【0038】
具体的には、リン酸基を有する化合物としては、ホスホン酸基を有する化合物が好ましく、例えば、ニトリロトリメチレンホスホン酸(NTMP)、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸(HEDP)、エチレンジアミンテトラメチレンホスホン酸(EDTP)、2−ホスホノブタン−1,2,4−トリカルボン酸(PBTC)、アミノメチレンホスホネート(AMP)、ポリアミノポリエーテルメチレンホスホネート(PAPEMP)、ホスホノポリカルボン酸(POCA)、1,2−ジヒドロキシ−1,2−ビス(ジヒドロキシホスホニル)エタン(DDPE)、2−ジヒドロキシジヒドロキシホスホニル−2−ヒドロキシプロピオン酸(DHHPA)、1,3−ビス[(1−フェニル−1−ジヒドロキシホスホニル)メチル]−2−イミダゾリジノン(BPDMI)、2,3−ビス(ジヒドロキシホスホニル)−1,4−ブタン二酸(BDBA)、ジエチレントリアミンペンタメチレンホスホン酸(DTPMPA)、ヘキサメチレンジアミンテトラメチレンホスホン酸(HDTMP)、ビス(ポリ−2−カルボキシエチル)ホスホン酸、及びこれらの水溶性塩、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、アンモニウム塩等を挙げることができる。
【0039】
また、スルホン酸基を有する化合物としては、スルホン酸基を有するポリマーが好ましく、スルホン酸基とカルボキシル基を有する重合物が挙げられる。スルホン酸基とカルボキシル基を有する重合物としては、スルホン酸基を有する単量体と、カルボキシル基を有する単量体との共重合物、或いは、更に、これらの単量体と共重合可能な他の単量体との三元共重合体が挙げられ、このうち、スルホン酸基を有する単量体としては、2−メチル−1,3−ブタジエン−1−スルホン酸などの共役ジエンスルホン酸、3−(メタ)アリルオキシ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸等のスルホン酸基を有する不飽和(メタ)アリルエーテル系単量体や2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−ヒドロキシ−3−アクリルアミドプロパンスルホン酸、スチレンスルホン酸、メタリルスルホン酸、ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、イソアミレンスルホン酸、又はこれらの塩など、好ましくは3−アリルオキシ−2−ヒドロキシ−1−プロパンスルホン酸(HAPS)、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(AMPS)が挙げられ、これらの1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0040】
一方、カルボキシル基を有する単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸、ビニル酢酸、アトロパ酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、ヒドロキシエチルアクリル酸、コハク酸、エポキシコハク酸又はこれらの塩など、好ましくはアクリル酸、メタクリル酸が挙げられ、これらの1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0041】
また、これらの単量体と共重合可能な単量体としては、N−tert−ブチルアクリルアミド(tBuAAm)、N−ビニルホルムアミドなどのアミド類が挙げられる。
【0042】
特に、アクリル酸(AA)と2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(AMPS)をAA:AMPS=70〜90:10〜30(モル比)の割合で共重合させた共重合物、AAとAMPSとN−tert−ブチルアクリルアミド(tBuAAm)等のアミド類を、AA:AMPS:アミド類=40〜90:5〜30:5〜30(モル比)の割合で共重合させた共重合物、AAと3−アリロキシ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸(HAPS)を、AA:HAPS=70〜90:10〜30(モル比)の割合で共重合させた共重合物などが挙げられるが、何らこれらに限定されるものではない。
【0043】
スルホン酸基を有するポリマーの重量平均分子量は、1,000〜30,000であることが好ましい。重量平均分子量が1,000未満であると分散効果が不十分であり、30,000を超えると、このポリマー自体がRO膜に吸着し、膜閉塞の要因となるおそれがある。
【0044】
これらの分散剤は、1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0045】
RO供給水に分散剤を添加する場合、分散剤の添加量は、RO供給水の水質や水回収率、設定透過流束、圧力開放通水の頻度等の運転条件等によっても異なるが、通常の場合、固形分(有効成分)濃度として0.05〜10mg/L程度となるように添加することが好ましい。分散剤の添加量が少な過ぎると十分な分散効果を得ることができず、多過ぎると分散剤がRO膜の負荷となったり膜汚染の原因となったりする場合がある。
【0046】
[濃縮水の再利用]
圧力開放通水時には、背圧弁の開度を大きくすることでRO膜を透過するRO膜供給水量は少なくなり、その殆どが濃縮水側に排出されることとなる。この濃縮水は、圧力開放通水でRO膜から剥離させたスケールを含む場合もあるが、スケール以外は未処理のRO膜供給水とほぼ同等の水質であり、濃縮度も低いことから、この水の一部又は全量をRO供給水側に循環して供給水として再使用(再処理)することが、圧力開放通水を行うことによる透過水量の低減を防止して回収水量を確保する上で好ましい。
【0047】
この場合、圧力開放通水時にRO膜の濃縮水側から得られる水には、RO膜から剥離したスケールが含まれる場合があるため、これをMF膜又はUF膜で濾過し、スケール成分を除去した後、RO供給水とすることが好ましい。この場合に用いるMF膜又はUF膜には特に制限はなく、通常の水処理における除濁膜として用いられるものであればよく、いずれも使用可能である。
【0048】
なお、背圧弁開放後に背圧弁の開度をゆっくりと戻すときの濃縮水も同様に再利用することが望ましい。
【0049】
図2は、かかる通水制御が行われるROシステムの一例を示すフロー図である。
【0050】
原水タンク19内の原水が配管20、ポンプ21、UF装置22、RO給水タンク23、ポンプ24を介してRO装置25に供給される。RO装置25の濃縮水は、背圧弁26を通り、その一部は流量計27を経て取り出される。背圧弁26からの濃縮水の残部は、流量調整バルブ28、流量計29を介して原水タンク19に戻される。原水タンク19からの送水配管20(又は原水タンク19)に分散剤が薬液タンク31から薬注ポンプ32を介して添加される。
【0051】
RO装置25の透過水は配管33を介して取り出される。透過水流量は流量計34で計測される。透過水及びRO給水の水質(例えば電気伝導度)はセンサ35,36で計測され、その検出データが各流量計27,29,34の検出データと共に制御器37に入力され、背圧弁26及びバルブ28と、ポンプ24のバイパス弁(符号略)とが制御される。
【実施例】
【0052】
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。
【0053】
以下の実施例及び比較例におけるRO供給水、分散剤、RO膜、実験装置、運転条件は、以下の通りであり、経時後の透過流束を初期透過流束で除した透過流束比で膜性能を評価した。
【0054】
(1) RO供給水
塩化ナトリウム100mg/L、炭酸水素ナトリウム84mg/Lの水溶液に、塩化カルシウムをカルシウム濃度が10mg/Lとなるように、ポリ塩化アルミニウムをアルミニウム濃度が0.1mg/Lとなるように添加すると共に、メタケイ酸ナトリウムをシリカ濃度が35mg/Lとなるように添加し、最終的に塩酸と水酸化ナトリウムでpH7.0に調整したものをRO供給水とした。
【0055】
(2) 分散剤
以下の分散剤I〜IVを用いた。RO供給水にこれらの分散剤を添加する場合、分散剤は固形分として1.156mg/L添加した。
【0056】
分散剤I:ジエチレントリアミンペンタメチレンホスホン酸、分子量727、イタルマッチ社製
分散剤II:AAとAMPSとtBuAAmの三元共重合体、重量平均分子量5,000、ダウ社製
分散剤III:AAとAMPSの二元共重合体、重量平均分子量11,000、ダウ社製
分散剤IV:AAとHAPSの二元共重合体、重量平均分子量11,000、日本触媒社製
【0057】
(3) RO膜
日東電工製超低圧RO膜「ES20(膜面積:8cm
2)」を使用した。
【0058】
(4) 実験装置
図1(a),(b)に示す平膜試験装置を用いた。
【0059】
この平膜試験装置において、RO供給水は、配管11より高圧ポンプ4で、密閉容器1のRO膜をセットした平膜セル2の下側の原水室1Aに供給される。
図1(b)に示すように、密閉容器1は、原水室1A側の下ケース1aと、透過水室1B側の上ケース1bとで構成され、下ケース1aと上ケース1bとの間に、平膜セル2がOリング8を介して固定されている。平膜セル2はRO膜2Aの透過水側が多孔質支持板2Bで支持された構成とされている。平膜セル2の下側の原水室1A内はスターラー3で攪拌子5を回転させることにより攪拌される。RO膜透過水は平膜セル2の上側の透過水室1Bを経て配管12より取り出される。濃縮水は配管13より取り出される。原水室1A内の圧力は、給水配管11に設けた圧力計6と、濃縮水取出配管13に設けた背圧弁(圧力調整バルブ)7により調整される。
【0060】
(5) 運転条件
設定透過流束は各例毎に0.6m/dとし、回収率75%(4倍濃縮)となるように、ポンプ送水量、背圧弁を調節した。背圧弁の開度は、平均して75%である。
【0061】
アルミニウムの存在下で、35mg/Lのシリカが4倍濃縮されることによって、シリカスケールが生成する。なお、透過流束比は初期運転圧力を運転圧力で除したものである。
【0062】
各実施例及び比較例の運転条件は以下の通りである。
【0063】
比較例1:透過流束を0.6m/dに設定して、通常通水した(圧力開放なし)。
【0064】
比較例2:透過流束を0.6m/dに設定して、1日に1回1時間、背圧弁を開度100%に開放(圧力開放)した。この圧力開放時の透過流束は0m/dであった。この圧力開放後、直ちに(30秒で)背圧弁の開度を元の開度に戻した。
【0065】
実施例1:透過流束を0.6m/dに設定して、1日に1回1時間、背圧弁を開放(圧力開放)した。この圧力開放時の透過流束は0m/dであった。背圧弁を1時間開放した後、初期通水時の状態(開度75%)に背圧弁を戻し、透過水量、濃縮水量の確認を行った後、4時間かけて、4倍濃縮となるように背圧弁を調節した。
【0066】
実施例2:RO供給水にシリカ分散剤Iを添加した以外は、実施例1と同様に行った。
【0067】
実施例3:RO供給水にシリカ分散剤IIを添加した以外は、実施例1と同様に行った。
【0068】
実施例4:RO供給水にシリカ分散剤IIIを添加した以外は、実施例1と同様に行った。
【0069】
実施例5:RO供給水にシリカ分散剤IVを添加した以外は、実施例1と同様に行った。
【0070】
実施例6:RO供給水に圧力開放時の濃縮水を全量戻した以外は、実施例1と同様に行った。
【0071】
実施例7:RO供給水に圧力開放時の濃縮水を孔径0.45μmの親水性PVDF膜(MF膜)で濾過して全量戻した以外は、実施例1と同様に行った。
【0072】
図3,4に各例の透過流束比の経時変化を示す。
図3に示される通り、圧力開放を行っても、バルブを閉じる際に濃縮倍率を調整しないと、比較例2のように、圧力開放を行わない比較例1と同等の透過流束の低下が起こる。濃縮倍率を調整した実施例1では透過流束の低下が抑制されるようになる。また、スケール分散剤を使用することによって、実施例2〜5のように透過流束が安定化する。
図4の通り、濃縮水を戻した実施例6では、実施例1よりも若干の透過流束の低下が見られるが、PVDF膜で濾過した実施例7では同等の透過流束となっている。
【解決手段】3日に1回以上の頻度で、該逆浸透膜の背圧弁の開度を大きくして、定常透過流束の1/3以下で該供給水を通水する圧力開放通水を行うと共に、透過水流量、濃縮水流量、濃縮水の循環水量を監視して濃縮倍率が圧力開放通水前よりも高くならないように、背圧弁を圧力開放通水前の状態まで閉じる。