【実施例】
【0056】
以下、実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明する。なお、以下に説明する実施例は、本発明の代表的な実施例の一例を示したものであり、これにより本発明の範囲が狭く解釈されることはない。
【0057】
<実験例1>
実験例1では、澱粉分解物の具体的な糖組成が、その特性にどのように影響するかを検討した。
【0058】
(1)試験方法
[枝作り酵素]
本実験例では、枝作り酵素の一例として、Eur. J. Biochem. 59, p615-625 (1975)の方法に則って、精製した馬鈴薯由来の酵素(以下「馬鈴薯由来枝作り酵素」とする)と、WO00/58445の方法に則って、精製したRhodothermus obamensis由来の酵素(以下「細菌由来枝作り酵素」とする)を用いた。
【0059】
なお、枝作り酵素の活性測定は、以下の方法で行った。
基質溶液として、0.1M酢酸 緩衝液(pH5.2)にアミロース(Sigma社製,A0512)を0.1質量%溶解したアミロース溶液を用いた。
50μLの基質液に50μLの酵素液を添加し、30℃で30分間反応させた後、ヨウ素-ヨウ化カリウム溶液(0.39mMヨウ素−6mMヨウ化カリウム−3.8mM塩酸混合用液)を2mL加え反応を停止させた。ブランク溶液として、酵素液の代わりに水を添加したものを調製した。反応停止から15分後に660nmの吸光度を測定した。枝作り酵素の酵素活性量1単位は、上記の条件で試験する時、660nmの吸光度を1分間に1%低下させる酵素活性量とした。
【0060】
[DE]
「澱粉糖関連工業分析法」(澱粉糖技術部会編)のレインエイノン法に従って算出した。
【0061】
[分子量]
下記の表1に示す条件で、ゲルろ過クロマトグラフィーにて分析を行った。
分子量スタンダードとして、ShodexスタンダードGFC(水系GPC)カラム用Standard P-82(昭和電工株式会社製)を使用し、分子量スタンダードの溶出時間と分子量の相関から算出される検量線に基づいて、試作品の分子量を測定した。
【0062】
【表1】
【0063】
[DP1〜2の含有量]
下記の表2に示す条件で液体クロマトグラフィーにて分析を行い、保持時間に基づいて、DP1およびDP2の含量を測定した。
【0064】
【表2】
【0065】
[濁度]
〔初期濁度〕
固形分濃度55%となるように調製した糖液を、沸騰浴中で10分間加熱したものを、固形分30%となるように希釈して、100mm幅のガラスセルに入れ、分光光度計UV−1600(株式会社島津製作所製)を用いて、720nmにおける吸光度を測定した値を、初期濁度とした。
【0066】
〔7日保存後の濁度の増加量〕
固形分濃度55%となるように調製した糖液を、沸騰浴中で10分間加熱したものを、密封容器に入れ、4℃で7日間保管した。その後、固形分30%となるように希釈して、初期濁度と同様に、吸光度を測定した値から、初期濁度の値を差し引いたものを、7日保存後の濁度の増加量とした。
【0067】
[評価方法]
(a)澱粉臭
後述する実施例又は比較例の澱粉分解物を、固形分10質量%になるように水に溶解した。この溶液について、澱粉臭が最も低いと感じるものを5点、最も高いと感じるものを1点とし、5点満点で評価を行った。評価は、10人の専門パネルの平均点とした。
【0068】
(b)風味
市販の果汁100%のグレープフルーツジュース100gに、後述する実施例又は比較例の澱粉分解物を、固形分5質量%になるように溶解した。この澱粉分解物添加グレープフルーツジュースについて、グレープフルーツの風味を最も感じるものを5点、最も感じないものを1点として、5点満点で評価を行った。評価は、10人の専門パネルの平均点とした。
【0069】
(c)濁り
前述した濁度測定における7日保存後の濁度の増加量に基づいて、下記の表3に示す評価基準で濁り易さを評価した。評価は、1サンプルあたり5回実施し、その平均点を濁りの評価とした。
【0070】
【表3】
【0071】
(d)吸湿性
コンウェイ水分活性測定器用セミ・ミクロユニット(柴田科学株式会社製)のサンプル用皿に、後述する実施例又は比較例の澱粉分解物を1g秤量して、飽和塩化ナトリウム溶液で調湿して、25℃、相対湿度75%の環境下で72時間保存した。試験は1サンプルあたり5回実施し、保存後の状態を、下記表4に示す基準で5段階に分類したときの平均点を、実施例又は比較例の吸湿性の点数とした。
【0072】
【表4】
【0073】
(e)総合評価
澱粉臭、風味、濁り、吸湿性の評価の各点数から平均値を求め、総合評価とした。
【0074】
(2)実施例・比較例の製法
[実施例1]
10質量%消石灰にてpH5.8に調整した30質量%のタピオカスターチスラリーに、αアミラーゼ(ターマミルSC、ノボザイムズ ジャパン株式会社製)を、固形分(g)当たり0.2%添加し、ジェットクッカー(温度110℃)で液化して、この液化液を95℃で保温して、継時的にDEを測定して、DE3になった時点で、塩酸でpH4に調整し、煮沸により反応を停止した。反応を停止した糖液のpHを6.0に調整した後、細菌由来枝作り酵素を固形分(g)当たり1000ユニット添加し、65℃で20時間反応させた。この糖液を90℃に昇温して、αアミラーゼ(ターマミルSC、ノボザイムズ ジャパン株式会社製)を、固形分(g)当たり0.02%添加し、DE5になった時点で、塩酸でpH4に調整し、煮沸により反応を停止した。この澱粉分解物の溶液を、活性炭脱色、イオン精製し、固形分濃度40質量%に濃縮した。更に濃縮液をスプレードライヤーで粉末化し、実施例1の澱粉分解物を得た。
【0075】
[実施例2]
10%塩酸にてpH2.5に調整した30質量%のコーンスターチスラリーを、140℃の温度条件でDE6まで分解した。常圧に戻した後、消石灰を用いて中和することにより反応を停止した糖液のpHを5.8に調整した後、αアミラーゼ(リコザイムスープラ、ノボザイムズ ジャパン株式会社製)を、固形分(g)当たり0.02%添加し、95℃で反応を行い、経時的にDEを測定して、DEが13になった時点で、塩酸でpH4に調整し、煮沸により反応を停止した。反応を停止した糖液のpHを6.0に調整した後、馬鈴薯由来枝作り酵素を固形分(g)当たり4000ユニット添加し、35℃で20時間反応させた。この澱粉分解物の溶液を、活性炭脱色、イオン精製し、固形分濃度60質量%に濃縮した。更に濃縮液をスプレードライヤーで粉末化し、実施例2の澱粉分解物を得た。
【0076】
[実施例3]
10質量%消石灰にてpH5.8に調整した30質量%のワキシーコーンスターチスラリーに、αアミラーゼ(リコザイムスープラ、ノボザイムズ ジャパン株式会社製)を、固形分(g)当たり0.2%添加し、ジェットクッカー(温度110℃)で液化して、この液化液を95℃で保温して、継時的にDEを測定して、DE4になった時点で、塩酸でpH4に調整し、煮沸により反応を停止した。反応を停止した糖液のpHを6.0に調整した後、細菌由来枝作り酵素を固形分(g)当たり800ユニット添加し、65℃で24時間反応させた。この糖液を90℃に昇温して、αアミラーゼ(リコザイムスープラ、ノボザイムズ ジャパン株式会社製)を、固形分(g)当たり0.02%添加し、DE7になった時点で、塩酸でpH4に調整し、煮沸により反応を停止した。この澱粉分解物の溶液を、活性炭脱色、イオン精製し、固形分濃度50質量%に濃縮した。更に濃縮液をスプレードライヤーで粉末化し、実施例3の澱粉分解物を得た。
【0077】
[実施例4]
10%塩酸にてpH2.5に調整した30質量%のコーンスターチスラリーを、140℃の温度条件でDE4まで分解した。常圧に戻した後、消石灰を用いて中和することにより反応を停止した糖液のpHを5.8に調整した後、αアミラーゼ(ターマミルSC、ノボザイムズ ジャパン株式会社製)を、固形分(g)当たり0.02%添加し、95℃で反応を行い、経時的にDEを測定して、DEが6になった時点で、塩酸でpH4に調整し、煮沸により反応を停止した。反応を停止した糖液のpHを6.0に調整した後、細菌由来枝作り酵素を固形分(g)当たり500ユニット添加し、65℃で48時間反応させた。この澱粉分解物の溶液を、活性炭脱色、イオン精製し、固形分濃度40質量%に濃縮した。更に濃縮液をスプレードライヤーで粉末化し、実施例4の澱粉分解物を得た。
【0078】
[実施例5]
10%塩酸にてpH2.5に調整した30質量%のコーンスターチスラリーを、140℃の温度条件でDE3まで分解した。常圧に戻した後、消石灰を用いて中和することにより反応を停止した糖液のpHを5.8に調整した後、αアミラーゼ(リコザイムスープラ、ノボザイムズ ジャパン株式会社製)を、固形分(g)当たり0.02%添加し、95℃で反応を行い、経時的にDEを測定して、DEが11になった時点で、塩酸でpH4に調整し、煮沸により反応を停止した。反応を停止した糖液のpHを6.0に調整した後、馬鈴薯由来枝作り酵素を固形分(g)当たり2000ユニット添加し、35℃で32時間反応させた。この澱粉分解物の溶液を、活性炭脱色、イオン精製し、固形分濃度50質量%に濃縮した。更に濃縮液をスプレードライヤーで粉末化し、実施例5の澱粉分解物を得た。
【0079】
[実施例6]
10%塩酸にてpH2.5に調整した30質量%のコーンスターチスラリーを、140℃の温度条件でDE6まで分解した。常圧に戻した後、消石灰を用いて中和することにより反応を停止した糖液のpHを5.8に調整した後、αアミラーゼ(クライスターゼT10S、天野エンザイム株式会社製)を、固形分(g)当たり0.02%添加し、95℃で反応を行い、経時的にDEを測定して、DEが8になった時点で、塩酸でpH4に調整し、煮沸により反応を停止した。反応を停止した糖液のpHを6.0に調整した後、細菌由来枝作り酵素を固形分(g)当たり750ユニット添加し、65℃で16時間反応させた。この澱粉分解物の溶液を、活性炭脱色、イオン精製し、固形分濃度50質量%に濃縮した。更に濃縮液をスプレードライヤーで粉末化し、実施例6の澱粉分解物を得た。
【0080】
[実施例7]
10%塩酸にてpH2.5に調整した30質量%のコーンスターチスラリーを、140℃の温度条件でDE5まで分解した。常圧に戻した後、消石灰を用いて中和することにより反応を停止した糖液のpHを5.8に調整した後、αアミラーゼ(リコザイムスープラ、ノボザイムズ ジャパン株式会社製)を、固形分(g)当たり0.02%添加し、95℃で反応を行い、経時的にDEを測定して、DEが9になった時点で、塩酸でpH4に調整し、煮沸により反応を停止した。反応を停止した糖液のpHを6.0に調整した後、細菌由来枝作り酵素を固形分(g)当たり500ユニット添加し、65℃で24時間反応させた。この澱粉分解物の溶液を、活性炭脱色、イオン精製し、固形分濃度50質量%に濃縮した。更に濃縮液をスプレードライヤーで粉末化し、実施例7の澱粉分解物を得た。
【0081】
[実施例8]
10質量%消石灰にてpH5.8に調整した30質量%のコーンスターチスラリーに、αアミラーゼ(リコザイムスープラ、ノボザイムズ ジャパン株式会社製)を、固形分(g)当たり0.2%添加し、ジェットクッカー(温度110℃)で液化して、この液化液を95℃で保温して、経時的にDEを測定して、DE12になった時点で、塩酸でpH4に調整し、煮沸により反応を停止した。反応を停止した糖液のpHを6.0に調整した後、細菌由来枝作り酵素を固形分(g)当たり600ユニット添加し、65℃で18時間反応させた。この澱粉分解物の溶液を、活性炭脱色、イオン精製し、固形分濃度50質量%に濃縮した。更に濃縮液をスプレードライヤーで粉末化し、実施例8の澱粉分解物を得た。
【0082】
[比較例1]
10%塩酸にてpH2.5に調整した30質量%のタピオカスターチスラリーを、140℃の温度条件でDE3まで分解した。常圧に戻した後、消石灰を用いて中和することにより反応を停止した糖液のpHを5.8に調整した後、αアミラーゼ(リコザイムスープラ、ノボザイムズ ジャパン株式会社製)を、固形分(g)当たり0.02%添加し、95℃で反応を行い、経時的にDEを測定して、DE9になった時点で、塩酸でpH4に調整し、煮沸により反応を停止した。この澱粉分解物の溶液を、活性炭脱色、イオン精製し、固形分濃度40質量%に濃縮した。更に濃縮液をスプレードライヤーで粉末化し、比較例1の澱粉分解物を得た。
【0083】
[比較例2]
10%塩酸にてpH2.5に調整した30質量%のタピオカスターチスラリーを、140℃の温度条件でDE4まで分解した。常圧に戻した後、消石灰を用いて中和することにより反応を停止した糖液のpHを5.8に調整した後、αアミラーゼ(ターマミルSC、ノボザイムズ ジャパン株式会社製)を、固形分(g)当たり0.02%添加し、95℃で反応を行い、経時的にDEを測定して、DE13になった時点で、塩酸でpH4に調整し、煮沸により反応を停止した。この澱粉分解物の溶液を、活性炭脱色、イオン精製し、固形分濃度50質量%に濃縮した。更に濃縮液をスプレードライヤーで粉末化し、比較例2の澱粉分解物を得た。
【0084】
[比較例3]
10%塩酸にてpH2.5に調整した30質量%のコーンスターチスラリーを、140℃の温度条件でDE16まで分解した。常圧に戻した後、消石灰を用いて中和することにより反応を停止した糖液のpHを5.8に調整した後、αアミラーゼ(リコザイムスープラ、ノボザイムズ ジャパン株式会社製)を、固形分(g)当たり0.02%添加し、95℃で反応を行い、経時的にDEを測定して、DE20になった時点で、塩酸でpH4に調整し、煮沸により反応を停止した。この澱粉分解物の溶液を、活性炭脱色、イオン精製し、固形分濃度60質量%に濃縮した。更に濃縮液をスプレードライヤーで粉末化し、比較例3の澱粉分解物を得た。
【0085】
[比較例4]
10質量%消石灰にてpH5.8に調整した30質量%のコーンスターチスラリーに、αアミラーゼ(クライスターゼT10S、天野エンザイム株式会社製)を、固形分(g)当たり0.2%添加し、ジェットクッカー(温度110℃)で液化して、この液化液を95℃で保温して、経時的にDEを測定して、DE15になった時点で、塩酸でpH4に調整し、煮沸により反応を停止した。この澱粉分解物の溶液を、活性炭脱色、イオン精製し、固形分濃度40質量%に濃縮した。更に濃縮液をスプレードライヤーで粉末化し、比較例4の澱粉分解物を得た。
【0086】
[比較例5]
10質量%消石灰にてpH5.8に調整した30質量%のコーンスターチスラリーに、αアミラーゼ(ターマミルSC、ノボザイムズ ジャパン株式会社製)を、固形分(g)当たり0.2%添加し、ジェットクッカー(温度110℃)で液化して、この液化液を95℃で保温して、経時的にDEを測定して、DE14になった時点で、塩酸でpH4に調整し、煮沸により反応を停止した。反応を停止した糖液のpHを6.0に調整した後、細菌由来枝作り酵素を固形分(g)当たり500ユニット添加し、65℃で24時間反応させた。この澱粉分解物の溶液を、活性炭脱色、イオン精製し、固形分濃度50質量%に濃縮した。更に濃縮液をスプレードライヤーで粉末化し、比較例5の澱粉分解物を得た。
【0087】
(3)測定
前記で得られた実施例1〜8及び比較例1〜5について、それぞれ、DE、分子量、DP1〜2の含有量、濁度を、前述した方法で測定した。また、澱粉臭、風味、濁り及び吸湿性について、前述した方法で評価した。結果を下記の表5に示す。
【0088】
【表5】
【0089】
表5に示す通り、実施例1〜8は、澱粉臭が少なく、風味も良好で、濁りも少なく、吸湿性も低い結果であった。
【0090】
一方、分子量1500〜14000の含有量(y)が25.0質量%を超える比較例1及び2は、7日保存後の濁度の増加量が高く、澱粉臭も強く、風味が悪い結果であった。
比較例4及び5は、分子量1500〜14000の含有量(y)としては、25.0質量%以下であるが、DP1〜2の含有量が3質量%を超えているために、吸湿性が高く、甘みが強いため風味も悪い結果であった。
分子量1500〜14000の含有量(y)が25.0質量%を超え、かつ、DP1〜2の含有量が3質量%を超えている比較例3は、7日保存後の濁度の増加量が高く、吸湿性も高い結果であった。
【0091】
これらの結果から、風味が良好で、吸湿性が低く、濁り難いことによる製造時の作業性も良好な乾燥食品を得るためには、DP1〜2の含有量(質量%)x、及び、分子量1500〜14000の含有量(質量%)yが、前記(1)及び(2)の両方を満たす必要があることが分かった。
【0092】
実施例内の結果で検討すると、DP1〜2の含有量と分子量80000〜900000の含有量との関係が式(3)を満たしていない実施例8に比べ、式(3)を満たしている実施例1〜7の方が、総合評価が高いことが分かった。また、DP1〜2の含有量と分子量80000〜900000の含有量との関係が式(3’)を満たしていない実施例1〜3に比べ、式(3’)を満たしている実施例4〜7の方が、更に総合評価が高いことが分かった。特に澱粉臭及び風味の評価が良好であり、濁りの発生も抑えられていた。
また、分子量1500〜14000の含有量(y)が23質量%を超える実施例3及び8に比べ、23質量%以下の実施例1、2、4〜7の方が、更に濁りの発生が抑えられていることが分かった。
更に、DP1〜2の含有量が2.5質量%を超える実施例2及び8に比べ、2.5質量%以下の実施例1、3〜7の方が、吸湿性が低いことが分かった。
【0093】
<実験例2>
実験例2では、前記実験例1で製造した澱粉分解物を、実際の食品に適用した場合の風味、澱粉臭及び吸湿性について、検証した。
【0094】
[評価方法]
(a)風味
前記実験例1で製造した実施例又は比較例の澱粉分解物を、実際に乾燥食品に適用した場合の食品の好ましい風味について、10名の専門パネルが、強く感じるほど高得点として、5〜1点の5段階で評価し、その平均点を評価点とした。
【0095】
(b)澱粉臭
前記実験例1で製造した実施例又は比較例の澱粉分解物を、実際に乾燥食品に適用した場合の好ましくない澱粉臭について、10名の専門パネルが、少ないほど高得点として、5〜1点の5段階で評価し、その平均点を評価点とした。
【0096】
(c)吸湿性
コンウェイ水分活性測定器用セミ・ミクロユニット(柴田科学株式会社製)のサンプル用皿に、前記実験例1で製造した実施例又は比較例の澱粉分解物を用いた乾燥食品を1g秤量して、飽和塩化ナトリウム溶液で調湿して、25℃、相対湿度75%の環境下で12時間(試験例2、6)又は24時間(試験例1、3、4、5)保存した。試験は1サンプルあたり5回実施し、保存後の状態を、前記表4に示す基準で5段階に分類したときの平均点を、吸湿性の点数とした。
【0097】
(d)総合評価
試験例1〜5は、風味、澱粉臭、吸湿性の評価の各点数から平均値を求め、総合評価とした。試験例6は、湯戻し時の復元性、風味、澱粉臭、吸湿性の評価の各点数から平均値を求め、総合評価とした。
【0098】
(1)試験例1:粉末果汁
市販の100%りんご果汁1000gに、実施例3、7又は比較例1、3の澱粉分解物200g、水500gを添加混合した。これをスプレードライヤーにて噴霧乾燥して、粉末果汁を調製した。調製した粉末果汁50gを水150gで溶解したものの風味、及び粉末果汁の吸湿性を評価した。結果を表6に示す。
【0099】
【表6】
【0100】
表6に示す通り、比較例1を用いた粉末果汁に比べ、実施例3及び7を用いた粉末果汁は、吸湿性は同等であったが、風味及び澱粉臭の評価が良好であり、総合評価も高かった。また、比較例3を用いた粉末果汁に比べ、実施例3及び7を用いた粉末果汁の方が、全ての評価について良好であった。
【0101】
(2)試験例2:粉末醤油
市販のこいくち醤油1000gに、実施例2、4、6又は比較例4、5の澱粉分解物300gを添加混合した。これをスプレードライヤーにて噴霧乾燥して、粉末醤油を調製した。調製した粉末醤油50gを水100gで溶解したものの風味、及び粉末醤油の吸湿性を評価した。結果を表7に示す。
【0102】
【表7】
【0103】
表7に示す通り、比較例4又は5を用いた粉末醤油に比べ、実施例2、4及び6を用いた粉末醤油の方が、全ての評価について良好であった。
【0104】
(3)試験例3:粉末鰹出汁
水1000gを鍋に入れ、ガスコンロで加熱して沸騰させた後、火を止め、これに市販の鰹節30gを入れ、2分間静置した。これを、ガーゼを用いてろ過した後、さらにNo.5Cのろ紙でろ過した。この液700gに対し、実施例5、7、8又は比較例1、5の澱粉分解物300gを加えて60℃で加温しながら溶解した。これをスプレードライヤーにて噴霧乾燥して、粉末鰹出汁を調製した。調製した粉末鰹出汁50gを熱湯150gで溶解したものの風味、及び粉末鰹出汁の吸湿性を評価した。結果を表8に示す。
【0105】
【表8】
【0106】
表8に示す通り、比較例1を用いた粉末鰹出汁に比べ、実施例5、7及び8を用いた粉末鰹出汁のは、吸湿性は大きな差は認められなかったが、風味及び澱粉臭の評価が良好であり、総合評価も高かった。また、比較例5を用いた粉末鰹出汁に比べ、実施例5、7及び8を用いた粉末鰹出汁の方が、全ての評価について良好であった。
【0107】
(4)試験例4:粉末ブイヨンスープ
鶏がら500gと水1000gを鍋に入れ、強火で加熱させ、沸騰後、灰汁取りを行い、荒く切った玉ねぎ、ニンジン、セロリを各1個鍋に加え、煮込んだ後、再度灰汁取りを行った。ローリエ1枚と胡椒1gを加えた後、弱火で2時間煮込んだ。これを、ガーゼを用いてろ過した後、さらにNo.5Cのろ紙でろ過した。この液700gに対し、実施例4、7又は比較例4の澱粉分解物300gを加えて60℃で加温しながら溶解した。これをスプレードライヤーにて噴霧乾燥して、粉末ブイヨンスープを調製した。調製した粉末ブイヨンスープ60gを熱湯140gで溶解したものの風味、及び粉末ブイヨンスープの吸湿性を評価した。結果を表9に示す。
【0108】
【表9】
【0109】
表9に示す通り、比較例4を用いた粉末ブイヨンスープに比べ、実施例4及び7を用いた粉末ブイヨンスープの方が、全ての評価について良好であった。
【0110】
(5)試験例5:粉末香料
水600gに、実施例1、6、8又は比較例2、5の澱粉分解物200g、アラビアガム100gを、60℃で加温しながら添加混合した。冷却後、市販のペパーミントオイル100gを添加して、高圧ホモジナイザーで乳化させた。これをスプレードライヤーにて噴霧乾燥して、粉末香料を調製した。調製した粉末香料1gを、粉糖100gに添加して十分に撹拌・混合したものの風味、及び粉末香料の吸湿性を評価した。結果を表10に示す。
【0111】
【表10】
【0112】
表10に示す通り、比較例2又は5を用いた粉末香料に比べ、実施例1、6及び8を用いた粉末香料の方が、全ての評価について良好であった。
【0113】
(6)試験例6:フリーズドライ味噌汁
市販のだし入り味噌200gに、実施例3、4又は比較例2、3の澱粉分解物25g、水275gを添加混合した。この液50gを、湯掻いた刻みネギ10g、刻み油揚げ10gと共に型に移し、−20℃で十分に凍結させた。これを常法により凍結乾燥してフリーズドライ味噌汁を調製した。調製したフリーズドライ味噌汁を熱湯200gに溶解させ、湯戻し時の復元性、溶解したものの風味、及びフリーズドライ味噌汁の吸湿性を評価した。
【0114】
なお、湯戻し時の復元性の評価は、90℃の熱湯200gにフリーズドライ味噌汁を静かに浮かべ、10秒後の状態が完全に溶解したものを5点、半分以上溶け残りがあるものを1点として5〜1点の5段階で評価した。結果を表11に示す。
【0115】
【表11】
【0116】
表11に示す通り、比較例2又は3を用いたフリーズドライ味噌汁に比べ、実施例3及び4を用いたフリーズドライ味噌汁の方が、全ての評価について良好であった。