(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
陰極、陽極、および複数の発光材料を含む少なくとも1層の有機層を前記陰極と前記陽極の間に有しており、前記複数の発光材料から発光する多波長発光型であり、下記A、B、CおよびDを満たす有機エレクトロルミネッセンス素子。
A.前記複数の発光材料がいずれも蛍光材料である。
B.前記発光材料からの発光のうちで最も短波長な発光が遅延蛍光を含む。
C.最も短波長で発光する発光材料が他の発光材料のホスト材料を兼ねている。
D.最も短波長で発光する発光材料の発光強度が全発光の20%超である。
陰極、陽極、および複数の発光材料を含む少なくとも1層の有機層を前記陰極と前記陽極の間に有しており、前記複数の発光材料から発光する多波長発光型であり、下記A、BおよびCを満たす有機エレクトロルミネッセンス素子。
A.前記複数の発光材料がいずれも蛍光材料である。
B.前記発光材料からの発光のうちで最も短波長な発光が遅延蛍光を含む。
C.最も短波長で発光する発光材料が単独で有機層を形成していてなおかつ発光材料を含む層のうち陽極に最も近い層が最も短波長で発光する発光材料を含む層である。
最も短波長で発光する発光材料とそれ以外の波長で発光する少なくとも2種の発光材料が1つの有機層に含まれており、前記最も短波長で発光する発光材料がホスト材料としても機能することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
発光材料を含む層が2層以上形成されており、そのうち陰極に最も近い層と陽極に最も近い層がともに最も短波長で発光する発光材料を含む層であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下において、本発明の内容について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様や具体例に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様や具体例に限定されるものではない。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
【0012】
[有機エレクトロルミネッセンス素子の基本構成]
本発明の多波長発光型の有機エレクトロルミネッセンス素子は、少なくとも陰極、陽極、これらに挟まれた有機層を含む。有機層は少なくとも1層形成されていればよく、有機層の中には複数の発光材料が含まれている。このとき、複数の発光材料は、それぞれ別の有機層に含まれていてもよいし、同じ有機層に含まれていてもよい。例えば青色発光材料、緑色発光材料、赤色発光材料の3種の発光材料を用いる場合、これら3種の発光材料は1つの発光層の中に含まれていてもよいし、3つの有機層にそれぞれが含まれていてもよい。また、特定の発光材料が複数の有機層に含まれていてもよい。本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子では、これらの複数の発光材料がそれぞれ発光して多波長発光型として機能する。
なお、本発明の説明において、400nm以上490nm以下に極大発光波長を有する発光材料を青色発光材料とし、490nm超580nm以下に極大発光波長を有する発光材料を緑色発光材料とし、580nm超700nm以下に極大発光波長を有する発光材料を赤色発光材料とする。
【0013】
[遅延蛍光]
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、素子に含まれる発光材料からの発光のうちで最も短波長な発光が遅延蛍光を含む。このような遅延蛍光は、発光材料として遅延蛍光を放射する遅延蛍光材料(遅延蛍光体)を選択して有機エレクトロルミネッセンス素子に用いることにより発光させることができる。このような遅延蛍光材料を用いれば、その遅延蛍光材料の蛍光波長の発光効率を高めることができる。その原理は、以下のように説明される。
【0014】
有機エレクトロルミネッセンス素子においては、正負の両電極より発光材料にキャリアを注入し、励起状態の発光材料を生成し、発光させる。通常、キャリア注入型の有機エレクトロルミネッセンス素子の場合、生成した励起子のうち、励起一重項状態に励起されるのは25%であり、残り75%は励起三重項状態に励起される。従って、励起三重項状態からの発光であるリン光を利用するほうが、エネルギーの利用効率が高い。しかしながら、励起三重項状態は寿命が長いため、励起状態の飽和や励起三重項状態の励起子との相互作用によるエネルギーの失活が起こり、一般にリン光の量子収率が高くないことが多い。一方、遅延蛍光材料は、項間交差等により励起三重項状態へとエネルギーが遷移した後、三重項−三重項消滅あるいは熱エネルギーの吸収により、励起一重項状態に逆項間交差され蛍光を放射する。有機エレクトロルミネッセンス素子においては、なかでも熱エネルギーの吸収による熱活性化型の遅延蛍光材料が特に有用であると考えられる。有機エレクトロルミネッセンス素子に遅延蛍光材料を利用した場合、励起一重項状態の励起子は通常通り蛍光を放射する。一方、励起三重項状態の励起子は、デバイスが発する熱を吸収して励起一重項へ項間交差され蛍光を放射する。このとき、励起一重項からの発光であるため蛍光と同波長での発光でありながら、励起三重項状態から励起一重項状態への逆項間交差により、生じる光の寿命(発光寿命)は通常の蛍光やりん光よりも長くなるため、これらよりも遅延した蛍光として観察される。これを遅延蛍光として定義できる。このような熱活性化型の励起子移動機構を用いれば、キャリア注入後に熱エネルギーの吸収を経ることにより、通常は25%しか生成しなかった励起一重項状態の化合物の比率を25%以上に引き上げることが可能となる。100℃未満の低い温度でも強い蛍光および遅延蛍光を発する化合物を用いれば、デバイスの熱で充分に励起三重項状態から励起一重項状態への項間交差が生じて遅延蛍光を放射するため、発光効率を飛躍的に向上させることができる。遅延蛍光材料の77°Kの最低励起三重項エネルギー準位と最低励起一重項エネルギー準位のエネルギー差(ΔE
ST)は0.2eV以下であることが好ましく、0.1eV以下であることがより好ましい。
【0015】
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子では、発光波長が最も短波長の発光材料としてこのような遅延蛍光を放射する発光材料として選択する。こうすることによって、その発光波長の発光効率を飛躍的に向上させるだけでなく、
図1に示すように励起三重項状態の励起子を他の長波長の発光材料の励起三重項状態へ移動させて他の発光材料の発光効率も向上させることができるという利点がある。他の発光材料からはリン光が放射してもよいし、蛍光が放射してもよいし、また他の発光材料も遅延蛍光材料である場合は遅延蛍光が放射してもよい。他の発光材料として遅延蛍光材料を選択すれば、上記と同じ機構により他の発光材料の発光効率も飛躍的に向上させることができる。また、ここでいう他の発光材料は、1種類のみでなく2種以上用いてもよい。
【0016】
図1は、青色発光材料、緑色発光材料、赤色発光材料の3つの発光材料を用いた態様を一例として説明した図である。ここでは、3つの発光材料のすべてが遅延蛍光材料である場合を説明しているが、本発明では最も短波長の発光材料である青色発光材料が遅延蛍光材料でありさえすれば良い。すなわち、緑色発光材料や赤色発光材料は通常のリン光発光材料であってもよく、一方が遅延蛍光材料であって他方がリン光発光材料であってもよい。
図1の態様では、青色発光材料として遅延蛍光材料を採用しているために、通常の青色蛍光(Fluo)とともに青色遅延蛍光(TADF)が放射され、青色発光効率が飛躍的に向上している。また、青色発光材料の励起三重項状態の励起子が、緑色発光材料の励起三重項状態や赤色発光材料の励起三重項状態へ移動し、それらがそれぞれリン光や遅延蛍光を放射する。このような態様を採用することにより、量子効率を向上させながら青味を改善することができるようになる。青色発光、緑色発光、赤色発光は混色して白色発光として認められる。
【0017】
本発明で用いることができる遅延蛍光材料の種類は特に制限されない。遅延蛍光を放射しうるものの中から発光波長を考慮して選択することができる。遅延蛍光材料は、一般にアクセプター部位(A)とドナー部位(D)が結合した構造を有する。アクセプター部位とドナー部位の数はそれぞれ1以上であればよく、1分子中におけるアクセプター部位の数とドナー部位の数は一致していてもいなくてもよい。例えば、A−D型、A−(D)n型、(A)n−D型、−(A−D)n−型など、種々の構造パターンを有する遅延蛍光材料が存在する(nは2以上の整数を表し、例えば2〜6のいずれかの整数を表す)。
【0018】
遅延蛍光材料の分子量は、発光層を蒸着法により製膜して利用することを意図する場合には、1500以下であることが好ましく、1200以下であることがより好ましく、1000以下であることがさらに好ましく、800以下であることがさらにより好ましい。ただし、遅延蛍光材料は分子量にかかわらず塗布法で成膜することも可能である。塗布法を用いれば、分子量が比較的大きな化合物であっても成膜することが可能である。
【0019】
以下において、本発明に用いることができる好ましい遅延蛍光材料の具体例を挙げるが、本発明で用いることができる遅延蛍光材料はこれらの例示によって限定的に解釈されることはない。
【0020】
【化1-1】
【化1-2】
【化1-3】
【0021】
遅延蛍光を放射しうる好ましい発光材料として下記一般式で表される化合物を挙げることもできる。また、WO2013/154064号公報の段落0008〜0048および0095〜0133の記載を始めとする該公報の明細書全文を、本願明細書の一部としてここに引用する。
【化2】
[一般式(101)において、R
1〜R
5の少なくとも1つはシアノ基を表し、R
1〜R
5の少なくとも1つは下記一般式(111)で表される基を表し、残りのR
1〜R
5は水素原子または置換基を表す。]
【化3】
[一般式(111)において、R
21〜R
28は、各々独立に水素原子または置換基を表す。ただし、下記<A>か<B>の少なくとも一方を満たす。
<A> R
25およびR
26は一緒になって単結合を形成する。
<B> R
27およびR
28は一緒になって置換もしくは無置換のベンゼン環を形成するのに必要な原子団を表す。]
【0022】
ここで、R
1〜R
5の少なくとも1つは下記一般式(112)〜(115)のいずれかで表される基であることが好ましい。
【化4】
[一般式(112)において、R
31〜R
38は、各々独立に水素原子または置換基を表す。]
【化5】
[一般式(113)において、R
41〜R
46は、各々独立に水素原子または置換基を表す。]
【化6】
[一般式(114)において、R
51〜R
62は、各々独立に水素原子または置換基を表す。]
【化7】
[一般式(115)において、R
71〜R
80は、各々独立に水素原子または置換基を表す。]
【0023】
例えば以下の表に示す化合物を挙げることができる。なお、以下の例示化合物において、一般式(112)〜(115)のいずれかで表される基が分子内に2つ以上存在している場合、それらの基はすべて同一の構造を有する。また、表中の式(121)〜(124)は以下の式を表し、nは繰り返し単位数を表す。
【化8】
【0024】
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【表1-4】
【表1-5】
【0025】
【表2-1】
【表2-2】
【表2-3】
【表2-4】
【0026】
【表3-1】
【表3-2】
【表3-3】
【0030】
遅延蛍光を放射しうる好ましい発光材料として、下記の化合物を挙げることもできる。
[1] 下記一般式(131)で表される化合物。
【化9】
[一般式(131)において、R
1〜R
5の0〜1つはシアノ基であり、R
1〜R
5の1〜5つは下記一般式(132)で表される基であり、残りのR
1〜R
5は水素原子または上記以外の置換基である。]
【化10】
[一般式(132)において、R
11〜R
20は各々独立に水素原子または置換基を表す。R
11とR
12、R
12とR
13、R
13とR
14、R
14とR
15、R
15とR
16、R
16とR
17、R
17とR
18、R
18とR
19、R
19とR
20は互いに結合して環状構造を形成していてもよい。L
12は置換もしくは無置換のアリーレン基、または、置換もしくは無置換のヘテロアリーレン基を表す。]
[2] 前記一般式(132)で表される基が、下記一般式(133)〜(138)のいずれかで表される基であることを特徴とする[1]に記載の化合物。
【化11-1】
【化11-2】
[一般式(133)〜(138)において、R
21〜R
24、R
27〜R
38、R
41〜R
48、R
51〜R
58、R
61〜R
65、R
71〜R
79、R
81〜R
90は、各々独立に水素原子または置換基を表す。R
21とR
22、R
22とR
23、R
23とR
24、R
27とR
28、R
28とR
29、R
29とR
30、R
31とR
32、R
32とR
33、R
33とR
34、R
35とR
36、R
36とR
37、R
37とR
38、R
41とR
42、R
42とR
43、R
43とR
44、R
45とR
46、R
46とR
47、R
47とR
48、R
51とR
52、R
52とR
53、R
53とR
54、R
55とR
56、R
56とR
57、R
57とR
58、R
61とR
62、R
62とR
63、R
63とR
64、R
64とR
65、R
54とR
61、R
55とR
65、R
71とR
72、R
72とR
73、R
73とR
74、R
74とR
75、R
76とR
77、R
77とR
78、R
78とR
79、R
81とR
82、R
82とR
83、R
83とR
84、R
85とR
86、R
86とR
87、R
87とR
88、R
89とR
90は互いに結合して環状構造を形成していてもよい。L
13〜L
18は、各々独立に置換もしくは無置換のアリーレン基、または、置換もしくは無置換のヘテロアリーレン基を表す。]
[3] 一般式(131)のR
3が、シアノ基であることを特徴とする[1]または[2]に記載の化合物。
[4] 一般式(131)のR
1とR
4が前記一般式(132)で表される基であることを特徴とする[1]〜[3]のいずれか1項に記載の化合物。
[5] 前記一般式(132)のL
12が、フェニレン基であることを特徴とする[1]〜[4]のいずれか1項に記載の化合物。
[6] 前記一般式(132)で表される基が、前記一般式(133)で表される基であることを特徴とする[1]〜[5]のいずれか1項に記載の化合物。
[7] 前記一般式(133)のL
13が、1,3−フェニレン基であることを特徴とする[6]に記載の化合物。
[8] 前記一般式(132)で表される基が、前記一般式(134)で表される基であることを特徴とする[1]〜[5]のいずれか1項に記載の化合物。
[9] 前記一般式(134)のL
14が、1,4−フェニレン基であることを特徴とする[8]に記載の化合物。
[10] 前記一般式(132)で表される基が、前記一般式(138)で表される基であることを特徴とする[1]〜[5]のいずれか1項に記載の化合物。
[11] 前記一般式(132)のL
18が、1,4−フェニレン基である[10]に記載の化合物。
【0031】
例えば以下の化合物を挙げることができる。
【化12-1】
【化12-2】
【化12-3】
【化12-4】
【化12-5】
【化12-6】
【0032】
遅延蛍光を放射しうる好ましい発光材料として下記一般式で表される化合物を挙げることもできる。また、WO2013/011954号公報の段落0007〜0047および0073〜0085の記載を始めとする該公報の明細書全文を、本願明細書の一部としてここに引用する。
【化13】
[一般式(141)において、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8およびR
17は、各々独立に水素原子または電子供与基であって、少なくとも1つは電子供与基を表す。R
9、R
10、R
11、R
12、R
13、R
14、R
15およびR
16は、各々独立に水素原子またはα位に非共有電子対を持たない電子吸引基である。Zは、単結合または>C=Yを表し、Yは、O、S、C(CN)
2またはC(COOH)
2を表す。ただし、Zが単結合であるとき、R
9、R
10、R
11、R
12、R
13、R
14、R
15およびR
16の少なくとも1つはα位に非共有電子対を持たない電子吸引基である。]
【0033】
具体例として、以下の表に記載される化合物を挙げることもできる。表中において、D1〜D3は下記の電子供与基で置換されたアリール基を表し、A1〜A5は下記の電子吸引基を表し、Hは水素原子を表し、Phはフェニル基を表す。
【化14】
【0044】
遅延蛍光を放射しうる好ましい発光材料として下記一般式で表される化合物を挙げることもできる。また、WO2013/011955号公報の段落0007〜0033および0059〜0066の記載を始めとする該公報の明細書全文を、本願明細書の一部としてここに引用する。
【化15】
[一般式(151)において、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7およびR
8は、各々独立に水素原子または電子供与基であって、少なくとも1つは電子供与基を表す。R
9、R
10、R
11、R
12、R
13、R
14、R
15およびR
16は、各々独立に水素原子または電子吸引基であって、少なくとも1つは電子吸引基を表す。]
【0045】
具体例として、以下の表に記載される化合物を挙げることができる。表中において、D1〜D10は下記の骨格を有する無置換の電子供与基を表す。
【化16】
【0050】
遅延蛍光を放射しうる好ましい発光材料として下記一般式で表される化合物を挙げることもできる。また、WO2013/081088号公報の段落0008〜0071および0118〜0133の記載を始めとする該公報の明細書全文を、本願明細書の一部としてここに引用する。
【化17】
[一般式(161)において、Y
1、Y
2およびY
3は、いずれか2つが窒素原子で残りの1つがメチン基を表すか、または、Y
1、Y
2およびY
3のすべてが窒素原子を表す。Z
1およびZ
2は、各々独立に水素原子または置換基を表す。R
1〜R
8は、各々独立に水素原子または置換基を表し、R
1〜R
8の少なくとも1つは、置換もしくは無置換のジアリールアミノ基、または置換もしくは無置換のカルバゾリル基を表す。また、一般式(161)で表される化合物は分子中にカルバゾール構造を少なくとも2つ含む。]
【0051】
具体例として、下記の化合物を挙げることができる。
【化18】
【0067】
遅延蛍光を放射しうる好ましい発光材料として下記一般式で表される化合物を挙げることもできる。また、特開2013−256490号公報の段落0009〜0046および0093〜0134の記載を始めとする該公報の明細書全文を、本願明細書の一部としてここに引用する。
【化34】
[一般式(171)において、Ar
1〜Ar
3は各々独立に置換もしくは無置換のアリール基を表し、少なくとも1つは下記一般式(172)で表される基で置換されたアリール基を表す。]
【化35】
[一般式(172)において、R
1〜R
8は各々独立に水素原子または置換基を表す。ZはO、S、O=CまたはAr
4−Nを表し、Ar
4は置換もしくは無置換のアリール基を表す。R
1とR
2、R
2とR
3、R
3とR
4、R
5とR
6、R
6とR
7、R
7とR
8は、それぞれ互いに結合して環状構造を形成していてもよい。]
【0068】
例えば以下の化合物を挙げることができる。
【化36-1】
【化36-2】
【化36-3】
【0069】
遅延蛍光を放射しうる好ましい発光材料として下記一般式で表される化合物を挙げることもできる。また、特開2013−116975号公報の段落0008〜0020および0038〜0040の記載を始めとする該公報の明細書全文を、本願明細書の一部としてここに引用する。
【化37】
[一般式(181)において、R
1、R
2、R
4〜R
8、R
11、R
12およびR
14〜R
18は、各々独立に水素原子または置換基を表す。]
【0070】
例えば以下の化合物を挙げることができる。
【化38】
【0071】
遅延蛍光を放射しうる好ましい発光材料として、下記の化合物を挙げることもできる。
[1] 下記一般式(191)で表される化合物。
【化39】
[一般式(191)において、Ar
1は置換もしくは無置換のアリーレン基を表し、Ar
2およびAr
3は各々独立に置換もしくは無置換のアリール基を表す。R
1〜R
8は各々独立に水素原子または置換基を表すが、R
1〜R
8の少なくとも1つは置換もしくは無置換のジアリールアミノ基である。R
1とR
2、R
2とR
3、R
3とR
4、R
5とR
6、R
6とR
7、R
7とR
8は、それぞれ互いに結合して環状構造を形成していてもよい。]
[2] 一般式(191)のR
1〜R
4の少なくとも1つが置換もしくは無置換のジアリールアミノ基であって、R
5〜R
8の少なくとも1つが置換もしくは無置換のジアリールアミノ基であることを特徴とする[1]に記載の化合物。
[3] 一般式(191)のR
3およびR
6が置換もしくは無置換のジアリールアミノ基であることを特徴とする[2]に記載の化合物。
[4] 一般式(191)のR
1〜R
8の少なくとも1つが置換もしくは無置換のジフェニルアミノ基であることを特徴とする[1]〜[3]のいずれか1項に記載の化合物。
[5] 一般式(191)のAr
2およびAr
3が各々独立に置換もしくは無置換のフェニル基であることを特徴とする[1]〜[4]のいずれか1項に記載の化合物。
[6] 一般式(191)のAr
1が各々独立に置換もしくは無置換のフェニレン基、置換もしくは無置換のナフチレン基、または置換もしくは無置換のアントラセニレン基であることを特徴とする[1]〜[5]のいずれか1項に記載の化合物。
[7] 下記一般式(192)で表される構造を有することを特徴とする[1]に記載の化合物。
【化40】
[一般式(192)において、R
1〜R
8およびR
11〜R
24は各々独立に水素原子または置換基を表すが、R
1〜R
8の少なくとも1つは置換もしくは無置換のジアリールアミノ基である。R
1とR
2、R
2とR
3、R
3とR
4、R
5とR
6、R
6とR
7、R
7とR
8、R
11とR
12、R
12とR
13、R
13とR
14、R
14とR
15、R
16とR
17、R
17とR
18、R
18とR
19、R
19とR
20、R
21とR
22、R
23とR
24は、それぞれ互いに結合して環状構造を形成していてもよい。]
[8] 一般式(192)のR
1〜R
4の少なくとも1つが置換もしくは無置換のジアリールアミノ基であって、R
5〜R
8の少なくとも1つが置換もしくは無置換のジアリールアミノ基であることを特徴とする[7]に記載の化合物。
[9] 一般式(192)のR
3およびR
6が置換もしくは無置換のジアリールアミノ基であることを特徴とする[8]に記載の化合物。
【0072】
具体例として、下記の化合物を挙げることができる。Phはフェニル基を表す。
【0077】
遅延蛍光を放射しうる好ましい発光材料として、下記の化合物を挙げることもできる。
[1]下記一般式(201)で表される化合物。
【化45】
(上式において、R
1〜R
8は各々独立に水素原子または置換基を表すが、R
1〜R
8の少なくとも1つは置換もしくは無置換のカルバゾリル基である。Ar
1〜Ar
3は各々独立に置換もしくは無置換の芳香環または複素芳香環を表す。)
[2]前記一般式(201)のR
3およびR
6の少なくとも一つが置換もしくは無置換のカルバゾリル基である[1]の化合物。
[3]前記カルバゾリル基が、1−カルバゾリル基、2−カルバゾリル基、3−カルバゾリル基または4−カルバゾリル基である[1]または[2]に記載の化合物。
[4]前記カルバゾリル基が、カルバゾール環構造中の窒素原子に置換基を有する[1]〜[3]のいずれか一つの化合物。。
[5]前記一般式(201)のAr
1、Ar
2およびAr
3の少なくとも一つが、ベンゼン環またはナフタレン環である[1]〜[4]のいずれか一つの化合物。
【0078】
[6]前記一般式(201)のAr
1、Ar
2およびAr
3が同一の芳香環または複素芳香環である[1]〜[5]のいずれか一つの化合物。
[7]前記一般式(201)のAr
1、Ar
2およびAr
3がベンゼン環である[1]〜[6]のいずれか一つの化合物。
【0079】
例えば以下の化合物を挙げることができる。
【化46】
【0103】
遅延蛍光を放射しうる好ましい発光材料として下記一般式で表される化合物を挙げることもできる。また、WO2013/133359号公報の段落0007〜0032および0079〜0084の記載を始めとする該公報の明細書全文を、本願明細書の一部としてここに引用する。
【化70】
[一般式(211)において、Z
1、Z
2およびZ
3は、各々独立に置換基を表す。]
【化71】
[一般式(212)において、Ar
1、Ar
2、Ar
3、Ar
4、Ar
5およびAr
6は、各々独立に置換もしくは無置換のアリール基を表す。]
【0104】
一般式(212)で表される化合物の具体例として、以下の構造式で表される化合物を挙げることができる。
【化72】
【0105】
一般式(212)で表される化合物の具体例として、以下の表に記載される化合物を挙げることができる。ここでは、Ar
1、Ar
2、Ar
3、Ar
4、Ar
5およびAr
6はすべて同一であり、これらをまとめてArと表記している。
【0107】
遅延蛍光を放射しうる好ましい発光材料として下記一般式で表される化合物を挙げることもできる。また、WO2013/161437号公報の段落0008〜0054および0101〜0121の記載を始めとする該公報の明細書全文を、本願明細書の一部としてここに引用する。
【化73】
[一般式(221)において、R
1〜R
10は、各々独立に水素原子または置換基を表すが、R
1〜R
10のうちの少なくとも1つは置換もしくは無置換のアリール基、置換もしくは無置換のジアリールアミノ基、または置換もしくは無置換の9−カルバゾリル基である。R
1とR
2、R
2とR
3、R
3とR
4、R
4とR
5、R
5とR
6、R
6とR
7、R
7とR
8、R
8とR
9、R
9とR
10は、それぞれ互いに結合して環状構造を形成してもよい。]
【0108】
具体例として、以下の化合物を挙げることができる。
【化74-1】
【化74-2】
【化74-3】
【0109】
遅延蛍光を放射しうる好ましい発光材料として下記一般式で表される化合物を挙げることもできる。また、特開2014−9352号公報の段落0007〜0041および0060〜0069の記載を始めとする該公報の明細書全文を、本願明細書の一部としてここに引用する。
【化75】
[一般式(231)において、R
1〜R
4は各々独立に水素原子または置換もしくは無置換の(N,N−ジアリールアミノ)アリール基を表し、R
1〜R
4の少なくとも1つは置換もしくは無置換の(N,N−ジアリールアミノ)アリール基を表す。前記(N,N−ジアリールアミノ)アリール基のジアリールアミノ部分を構成する2つのアリール基は互いに連結していてもよい。W
1、W
2、X
1、X
2、Y
1,Y
2、Z
1およびZ
2は、各々独立に炭素原子または窒素原子を表す。m
1〜m
4は各々独立に0、1または2を表す。]
【0110】
例えば以下の化合物を挙げることができる。
【化76】
【0114】
遅延蛍光を放射しうる好ましい発光材料として下記一般式で表される化合物を挙げることもできる。また、特開2014−9224号公報の段落0008〜0048および0067〜0076の記載を始めとする該公報の明細書全文を、本願明細書の一部としてここに引用する。
【化80】
[一般式(241)において、R
1〜R
6は各々独立に水素原子または置換基を表し、R
1〜R
6の少なくとも1つは置換もしくは無置換の(N,N−ジアリールアミノ)アリール基を表す。前記(N,N−ジアリールアミノ)アリール基のジアリールアミノ部分を構成する2つのアリール基は互いに連結していてもよい。X
1〜X
6およびY
1〜Y
6は、各々独立に炭素原子または窒素原子を表す。n
1、n
2、p
1、p
2、q
1およびq
2は各々独立に0、1または2を表す。]
【0115】
例えば以下の化合物を挙げることができる。
【化81】
【0119】
[発光層の構成]
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子における発光層の構成について説明する。
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子には、複数の発光材料が用いられる。それらの発光材料は、1つの発光層にまとめて含まれていてもよいし、異なる発光層に個別に含まれていてもよい。また、本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子には、2以上の発光材料が含まれている発光層と単一の発光材料が含まれている発光層が混在していてもよい。
【0120】
例えば2種類の発光材料を使用する場合について、発光層の構成例を
図2に示す。2種類の発光材料としては、青色発光材料と赤色発光材料の組み合わせや、青色発光材料と緑色発光材料の組み合わせなどを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。ここでは、波長が短い光を放射する青色発光材料が少なくとも遅延蛍光材料であることが必要とされる。
図2において、「1」は最も発光波長が短い光を放射する発光材料を示し、「2」はそれよりも波長が長い光を放射する発光材料を示す。○印の中に数字が記載されているものは、その数字に対応する発光材料がドープされていることを示す。図では、左型が陽極側、右側が陰極側を示している。
【0121】
例えば「1」の発光材料として青色発光材料を選択し、「2」の発光材料として赤色発光材料を選択したとき、
図2の(1−1)型は、陽極側から青色発光材料のみからなる発光層、赤色発光材料のみからなる発光層の順に層が形成されていることを示す。また(1−2)型は、単一の発光層内において赤色発光材料が青色発光材料にドープされた態様を示す。ここでは青色発光材料は遅延蛍光を含む蛍光を放射する発光材料として機能するとともに、赤色発光材料のホストとしても機能する。(1−3)型と(1−4)型は、青色発光材料のみからなる発光層と、青色発光材料に赤色発光材料をドープした発光層を積層した態様を示す。(1−5)型は、青色発光材料のみからなる2層の発光層の間に、青色発光材料に赤色発光材料をドープした発光層が挟まれるように積層した態様を示す。本発明では、これらの態様のいずれのパターンを採用することも可能であるが、簡易な構造で高効率を実現できることから(1−2)〜(1−4)型を採用することが好ましく、また(1−2)型を採用することがさらに好ましい。
【0122】
3種類の発光材料を使用する場合について、発光層の構成例を
図3〜6に示す。3種類の発光材料としては、青色発光材料と緑色発光材料と赤色発光材料の組み合わせを挙げることができるが、これに限定されるものではない。ここでは、波長が最も短い光を放射する青色発光材料が少なくとも遅延蛍光材料であることが必要とされる。
図3において、「1」は最も発光波長が短い光を放射する発光材料を示し、「2」は次に波長が短い光を放射する発光材料を示し、「3」は最も波長が長い光を放射する発光材料を示す。○印の中に数字が記載されているものは、その数字に対応する発光材料がドープされていることを示す。図では、左型が陽極側、右側が陰極側を示している。
【0123】
(2−1)型から(2−6)型は3種の発光材料がそれぞれ別の発光層に単独で含まれている態様である。(3−1)型から(3−4)型は、3種の発光材料をすべて含む発光層を有する態様である。すなわち(3−1)型であれば、例えば青色発光材料が遅延蛍光を含む蛍光を放射する発光材料として機能するとともに、緑色発光材料と赤色発光材料のホストとしても機能する。(4−1)型から(4−14)型は、「1」の発光材料に「2」の発光材料がドープされた発光層と、「1」の発光材料に「3」の発光材料がドープされた発光層を有する態様である。(5−1)型〜(5−9)型は、「2」の発光材料に「3」の発光材料がドープされた発光層と、「1」を単独で含む発光層を有する態様である。
【0124】
本発明では、(3−4)型や(4−5)型に示すように、陰極に最も近い発光層と陽極に最も近い発光層がともに最も短波長で発光する発光材料からなる層とすることが可能である。そして、前記陰極に最も近い発光層と前記陽極に最も近い発光層の間に、最も短波長で発光する発光材料をホスト材料として含む発光層を配置することができる。このような構成を採用することによって、発光効率を一段と向上させやすいという利点がある。
また、簡易な構造で高効率を実現できることから(3−1)〜(3−3)型を採用することも好ましく、(3−1)型を採用することがさらに好ましい。
【0125】
発光層に発光材料をドープする際の濃度は、0.01重量%以上であることが好ましく、0.1重量%以上であることがより好ましく、また、50重量%以下であることが好ましく、20重量%以下であることがより好ましく、10重量%以下であることがさらに好ましく、例えば1重量%以下にすることができる。
発光層に発光材料をドープする場合、ホスト材料は上記のような発光材料でなくてもよい。すなわち、通常の発光材料に用いられているホスト材料を適宜選択して使用することもできる。本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子および有機フォトルミネッセンス素子が高い発光効率を発現するためには、発光材料に生成した一重項励起子および三重項励起子を、発光材料中に閉じ込めることが重要である。ホスト材料としては、励起一重項エネルギー、励起三重項エネルギーの少なくとも何れか一方がドープする発光材料よりも高い値を有する有機化合物を用いることができる。その結果、発光材料に生成した一重項励起子および三重項励起子を、発光材料の分子中に閉じ込めることが可能となり、その発光効率を十分に引き出すことが可能となる。もっとも、一重項励起子および三重項励起子を十分に閉じ込めることができなくても、高い発光効率を得ることが可能な場合もあるため、高い発光効率を実現しうるホスト材料であれば特に制約なく本発明に用いることができる。一般にホスト材料は、正孔輸送能、電子輸送能を有し、かつ発光の長波長化を防ぎ、なおかつ高いガラス転移温度を有する有機化合物であることが好ましい。
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子では、最も短波長で発光する発光材料からの発光強度が全発光の20%以上であることが好ましく、25%以上であることがより好ましく、30%以上であることがさらに好ましい。特に、青色発光強度が全発光の20%以上であることが好ましく、25%以上であることがより好ましく、30%以上であることがさらに好ましい。
【0126】
[有機エレクトロルミネッセンス素子の構造]
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、少なくとも陽極、陰極、および陽極と陰極の間に有機層を形成した構造を有する。有機層は、少なくとも発光層を含むものであり、発光層のみからなるものであってもよいし、発光層の他に1層以上の有機層を有するものであってもよい。そのような他の有機層として、正孔輸送層、正孔注入層、電子阻止層、正孔阻止層、電子注入層、電子輸送層、励起子阻止層などを挙げることができる。正孔輸送層は正孔注入機能を有した正孔注入輸送層でもよく、電子輸送層は電子注入機能を有した電子注入輸送層でもよい。具体的な有機エレクトロルミネッセンス素子の構造例を
図7に示す。
図7において、1は基板、2は陽極、3は正孔注入層、4は正孔輸送層、5は発光層、6は電子輸送層、7は電子注入層、8は陰極を表わす。
以下において、有機エレクトロルミネッセンス素子の各部材および各層について説明する。なお、発光層については上記説明を参照することができる。
【0127】
(基板)
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、基板に支持されていることが好ましい。この基板については、特に制限はなく、従来から有機エレクトロルミネッセンス素子に慣用されているものであればよく、例えば、ガラス、透明プラスチック、石英、シリコンなどからなるものを用いることができる。
【0128】
(陽極)
有機エレクトロルミネッセンス素子における陽極としては、仕事関数の大きい(4eV以上)金属、合金、電気伝導性化合物およびこれらの混合物を電極材料とするものが好ましく用いられる。このような電極材料の具体例としてはAu等の金属、CuI、インジウムチンオキシド(ITO)、SnO
2、ZnO等の導電性透明材料が挙げられる。また、IDIXO(In
2O
3−ZnO)等非晶質で透明導電膜を作製可能な材料を用いてもよい。陽極はこれらの電極材料を蒸着やスパッタリング等の方法により、薄膜を形成させ、フォトリソグラフィー法で所望の形状のパターンを形成してもよく、あるいはパターン精度をあまり必要としない場合は(100μm以上程度)、上記電極材料の蒸着やスパッタリング時に所望の形状のマスクを介してパターンを形成してもよい。あるいは、有機導電性化合物のように塗布可能な材料を用いる場合には、印刷方式、コーティング方式等湿式成膜法を用いることもできる。この陽極より発光を取り出す場合には、透過率を10%より大きくすることが望ましく、また陽極としてのシート抵抗は数百Ω/□以下が好ましい。さらに膜厚は材料にもよるが、通常10〜1000nm、好ましくは10〜200nmの範囲で選ばれる。
【0129】
(陰極)
一方、陰極としては、仕事関数の小さい(4eV以下)金属(電子注入性金属と称する)、合金、電気伝導性化合物およびこれらの混合物を電極材料とするものが用いられる。このような電極材料の具体例としては、ナトリウム、ナトリウム−カリウム合金、マグネシウム、リチウム、マグネシウム/銅混合物、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al
2O
3)混合物、インジウム、リチウム/アルミニウム混合物、希土類金属等が挙げられる。これらの中で、電子注入性および酸化等に対する耐久性の点から、電子注入性金属とこれより仕事関数の値が大きく安定な金属である第二金属との混合物、例えば、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al
2O
3)混合物、リチウム/アルミニウム混合物、アルミニウム等が好適である。陰極はこれらの電極材料を蒸着やスパッタリング等の方法により薄膜を形成させることにより、作製することができる。また、陰極としてのシート抵抗は数百Ω/□以下が好ましく、膜厚は通常10nm〜5μm、好ましくは50〜200nmの範囲で選ばれる。なお、発光した光を透過させるため、有機エレクトロルミネッセンス素子の陽極または陰極のいずれか一方が、透明または半透明であれば発光輝度が向上し好都合である。
また、陽極の説明で挙げた導電性透明材料を陰極に用いることで、透明または半透明の陰極を作製することができ、これを応用することで陽極と陰極の両方が透過性を有する素子を作製することができる。
【0130】
(注入層)
注入層とは、駆動電圧低下や発光輝度向上のために電極と有機層間に設けられる層のことで、正孔注入層と電子注入層があり、陽極と発光層または正孔輸送層の間、および陰極と発光層または電子輸送層との間に存在させてもよい。注入層は必要に応じて設けることができる。
【0131】
(阻止層)
阻止層は、発光層中に存在する電荷(電子もしくは正孔)および/または励起子の発光層外への拡散を阻止することができる層である。電子阻止層は、発光層および正孔輸送層の間に配置されることができ、電子が正孔輸送層の方に向かって発光層を通過することを阻止する。同様に、正孔阻止層は発光層および電子輸送層の間に配置されることができ、正孔が電子輸送層の方に向かって発光層を通過することを阻止する。阻止層はまた、励起子が発光層の外側に拡散することを阻止するために用いることができる。すなわち電子阻止層、正孔阻止層はそれぞれ励起子阻止層としての機能も兼ね備えることができる。本明細書でいう電子阻止層または励起子阻止層は、一つの層で電子阻止層および励起子阻止層の機能を有する層を含む意味で使用される。
【0132】
(正孔阻止層)
正孔阻止層とは広い意味では電子輸送層の機能を有する。正孔阻止層は電子を輸送しつつ、正孔が電子輸送層へ到達することを阻止する役割があり、これにより発光層中での電子と正孔の再結合確率を向上させることができる。正孔阻止層の材料としては、後述する電子輸送層の材料を必要に応じて用いることができる。
【0133】
(電子阻止層)
電子阻止層とは、広い意味では正孔を輸送する機能を有する。電子阻止層は正孔を輸送しつつ、電子が正孔輸送層へ到達することを阻止する役割があり、これにより発光層中での電子と正孔が再結合する確率を向上させることができる。
【0134】
(励起子阻止層)
励起子阻止層とは、発光層内で正孔と電子が再結合することにより生じた励起子が電荷輸送層に拡散することを阻止するための層であり、本層の挿入により励起子を効率的に発光層内に閉じ込めることが可能となり、素子の発光効率を向上させることができる。励起子阻止層は発光層に隣接して陽極側、陰極側のいずれにも挿入することができ、両方同時に挿入することも可能である。すなわち、励起子阻止層を陽極側に有する場合、正孔輸送層と発光層の間に、発光層に隣接して該層を挿入することができ、陰極側に挿入する場合、発光層と陰極との間に、発光層に隣接して該層を挿入することができる。また、陽極と、発光層の陽極側に隣接する励起子阻止層との間には、正孔注入層や電子阻止層などを有することができ、陰極と、発光層の陰極側に隣接する励起子阻止層との間には、電子注入層、電子輸送層、正孔阻止層などを有することができる。阻止層を配置する場合、阻止層として用いる材料の励起一重項エネルギーおよび励起三重項エネルギーの少なくともいずれか一方は、発光材料の励起一重項エネルギーおよび励起三重項エネルギーよりも高いことが好ましい。
【0135】
(正孔輸送層)
正孔輸送層とは正孔を輸送する機能を有する正孔輸送材料からなり、正孔輸送層は単層または複数層設けることができる。
正孔輸送材料としては、正孔の注入または輸送、電子の障壁性のいずれかを有するものであり、有機物、無機物のいずれであってもよい。使用できる公知の正孔輸送材料としては例えば、トリアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、カルバゾール誘導体、インドロカルバゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体およびピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、オキサゾール誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、アニリン系共重合体、また導電性高分子オリゴマー、特にチオフェンオリゴマー等が挙げられるが、ポルフィリン化合物、芳香族第3級アミン化合物およびスチリルアミン化合物を用いることが好ましく、芳香族第3級アミン化合物を用いることがより好ましい。
【0136】
(電子輸送層)
電子輸送層とは電子を輸送する機能を有する材料からなり、電子輸送層は単層または複数層設けることができる。
電子輸送材料(正孔阻止材料を兼ねる場合もある)としては、陰極より注入された電子を発光層に伝達する機能を有していればよい。使用できる電子輸送層としては例えば、ニトロ置換フルオレン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、カルボジイミド、フレオレニリデンメタン誘導体、アントラキノジメタンおよびアントロン誘導体、オキサジアゾール誘導体等が挙げられる。さらに、上記オキサジアゾール誘導体において、オキサジアゾール環の酸素原子を硫黄原子に置換したチアジアゾール誘導体、電子吸引基として知られているキノキサリン環を有するキノキサリン誘導体も、電子輸送材料として用いることができる。さらにこれらの材料を高分子鎖に導入した、またはこれらの材料を高分子の主鎖とした高分子材料を用いることもできる。
【0137】
有機エレクトロルミネッセンス素子を作製する際には、一般式(1)で表される化合物を発光層に用いるだけでなく、発光層以外の層にも用いてもよい。その際、発光層に用いる一般式(1)で表される化合物と、発光層以外の層に用いる一般式(1)で表される化合物は、同一であっても異なっていてもよい。例えば、上記の注入層、阻止層、正孔阻止層、電子阻止層、励起子阻止層、正孔輸送層、電子輸送層などにも一般式(1)で表される化合物を用いてもよい。これらの層の製膜方法は特に限定されず、ドライプロセス、ウェットプロセスのどちらで作製してもよい。
【0138】
以下に、有機エレクトロルミネッセンス素子に用いることができる好ましい材料を具体的に例示する。ただし、本発明において用いることができる材料は、以下の例示化合物によって限定的に解釈されることはない。また、特定の機能を有する材料として例示した化合物であっても、その他の機能を有する材料として転用することも可能である。なお、以下の例示化合物の構造式におけるR、R’、R
1〜R
10は、各々独立に水素原子または置換基を表す。Xは環骨格を形成する炭素原子または複素原子を表し、nは3〜5の整数を表し、Yは置換基を表し、mは0以上の整数を表す。
【0139】
まず、発光層のホスト材料としても用いることができる好ましい化合物を挙げる。
【0145】
次に、正孔注入材料として用いることができる好ましい化合物例を挙げる。
【0147】
次に、正孔輸送材料として用いることができる好ましい化合物例を挙げる。
【0154】
次に、電子阻止材料として用いることができる好ましい化合物例を挙げる。
【0156】
次に、正孔阻止材料として用いることができる好ましい化合物例を挙げる。
【0158】
次に、電子輸送材料として用いることができる好ましい化合物例を挙げる。
【0162】
次に、電子注入材料として用いることができる好ましい化合物例を挙げる。
【0164】
さらに添加可能な材料として好ましい化合物例を挙げる。例えば、安定化材料として添加すること等が考えられる。
【0166】
上述の方法により作製された有機エレクトロルミネッセンス素子は、得られた素子の陽極と陰極の間に電界を印加することにより発光する。このとき、励起一重項エネルギーによる発光であれば、そのエネルギーレベルに応じた波長の光が、蛍光発光および遅延蛍光発光として確認される。また、励起三重項エネルギーによる発光であれば、そのエネルギーレベルに応じた波長が、りん光として確認される。通常の蛍光は、遅延蛍光発光よりも蛍光寿命が短いため、発光寿命は蛍光と遅延蛍光で区別できる。
【0167】
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、単一の素子、アレイ状に配置された構造からなる素子、陽極と陰極がX−Yマトリックス状に配置された構造のいずれにおいても適用することができる。本発明によれば、発光効率が大きく改善された有機発光素子が得られる。本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子などの有機発光素子は、さらに様々な用途へ応用することが可能である。例えば、本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子を用いて、有機エレクトロルミネッセンス表示装置を製造することが可能であり、詳細については、時任静士、安達千波矢、村田英幸共著「有機ELディスプレイ」(オーム社)を参照することができる。また、特に本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、需要が大きい有機エレクトロルミネッセンス照明やバックライトに応用することもできる。
【実施例】
【0168】
以下に実施例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下に示す材料、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。なお、下記の有機エレクトロルミネッセンス素子の測定には、半導体パラメータ・アナライザ(アジレント・テクノロジー社製:E5273A)、光パワーメータ測定装置(ニューポート社製:1930C)、および光学分光器(オーシャンオプティクス社製:USB2000)を用いた。
【0169】
(試験例1)
下記の実施例で用いた各発光材料の一重項エネルギー(E
S1)と三重項エネルギー(E
T1)の差(ΔE
ST)は、一重項エネルギー(E
S1)と三重項エネルギーを以下の方法で算出し、ΔE
ST=E
S1−E
T1により求めた。測定した結果を表1に示す。
【0170】
(1)一重項エネルギーE
S1
測定対象化合物とDPEPOとを、測定対象化合物が濃度6重量%となるように共蒸着することでSi基板上に厚さ100nmの試料を作製した。常温(300K)でこの試料の蛍光スペクトルを測定した。励起光入射直後から入射後100ナノ秒までの発光を積算することで、縦軸を燐光強度、横軸を波長の蛍光スペクトルを得た。蛍光スペクトルは、縦軸を発光、横軸を波長とした。この発光スペクトルの短波側の立ち下がりに対して接線を引き、その接線と横軸との交点の波長値 λedge[nm]を求めた。この波長値を次に示す換算式でエネルギー値に換算した値をE
S1とした。
換算式:E
S1[eV]=1239.85/λedge
発光スペクトルの測定には、励起光源に窒素レーザー(Lasertechnik Berlin社製、MNL200)を検出器には、ストリークカメラ(浜松ホトニクス社製、C4334)を用いた。
【0171】
(2) 三重項エネルギーE
T1
一重項エネルギーE
S1と同じ試料を5[K]に冷却し、励起光(337nm)を燐光測定用試料に照射し、ストリークカメラを用いて、燐光強度を測定した。励起光入射後1ミリ秒から入射後10ミリ秒の発光を積算することで、縦軸を燐光強度、横軸を波長の燐光スペクトルを得た。この燐光スペクトルの短波長側の立ち上がりに対して接線を引き、その接線と横軸との交点の波長値λedge[nm]を求めた。この波長値を次に示す換算式でエネルギー値に換算した値をE
T1とした。
換算式:E
T1[eV]=1239.85/λedge
燐光スペクトルの短波長側の立ち上がりに対する接線は以下のように引いた。燐光スペクトルの短波長側から、スペクトルの極大値のうち、最も短波長側の極大値までスペクトル曲線上を移動する際に、長波長側に向けて曲線上の各点における接線を考える。この接線は、曲線が立ち上がるにつれ(つまり縦軸が増加するにつれ)、傾きが増加する。この傾きの値が極大値をとる点において引いた接線を、当該燐光スペクトルの短波長側の立ち上がりに対する接線とした。
なお、スペクトルの最大ピーク強度の10%以下のピーク強度をもつ極大点は、上述の最も短波長側の極大値には含めず、最も短波長側の極大値に最も近い、傾きの値が極大値をとる点において引いた接線を当該燐光スペクトルの短波長側の立ち上がりに対する接線とした。
【0172】
【表22】
【0173】
(実施例1)
本実施例において、1つの発光層に青色発光材料、緑色発光材料、赤色発光材料の3色の発光材料を混在させた多波長発光型の有機エレクトロルミネッセンス素子を作製して評価した。
膜厚100nmのインジウム・スズ酸化物(ITO)からなる陽極が形成されたガラス基板上に、各薄膜を真空蒸着法にて、真空度5.0×10
-4Paで積層した。まず、ITO上にα−NPDを35nmの厚さに形成し、mCBPを10nmの厚さに形成した。青色発光材料であるZHS02と緑色発光材料である4CzIPNと赤色発光材料である4CzTPN−Phを異なる蒸着源から共蒸着し、15nmの厚さの層を形成して発光層とした。この時、4CzIPNと4CzTPN−Phの濃度はそれぞれ0.1重量%とし、残りはZHS02とした。次に、PPTを10nmの厚さに形成し、TPBiを40nmの厚さに形成し、さらにフッ化リチウム(LiF)を0.8nm真空蒸着し、次いでアルミニウム(Al)を100nmの厚さに蒸着することにより陰極を形成し、有機エレクトロルミネッセンス素子とした。
作製した有機エレクトロルミネッセンス素子の発光スペクトルを
図8に示し、電流密度−外部量子効率特性を
図9に示し、エネルギーバンド図を
図10に示す。外部量子効率と色度は表2に示すとおりであった。発光強度比は、青色発光が32%、緑色発光が49%、赤色発光が19%であった。青色遅延蛍光によって青色発光の強度比が高まり、良好な青味と高い発光効率を両立させることができた。
【0174】
(実施例2〜4)
本実施例において、1つの発光層に青色発光材料と赤色発光材料の2色の発光材料を3種の濃度で混在させた多波長発光型の有機エレクトロルミネッセンス素子を作製して評価した。
膜厚100nmのインジウム・スズ酸化物(ITO)からなる陽極が形成されたガラス基板上に、各薄膜を真空蒸着法にて、真空度5.0×10
-4Paで積層した。まず、ITO上にα−NPDを35nmの厚さに形成し、mCBPを10nmの厚さに形成した。青色発光材料である2CzPNと赤色発光材料である4CzTPN−Phを異なる蒸着源から共蒸着し、15nmの厚さの層を形成して発光層とした。この時、4CzTPN−Phの濃度が0.1重量%のもの(実施例2)と、0.2重量%のもの(実施例3)と、0.5重量%のもの(実施例4)を作製した。次に、TmPyPbを50nmの厚さに形成し、さらにフッ化リチウム(LiF)を0.8nm真空蒸着し、次いでアルミニウム(Al)を100nmの厚さに蒸着することにより陰極を形成し、有機エレクトロルミネッセンス素子とした。
作製した有機エレクトロルミネッセンス素子の発光スペクトルを
図11に示し、電流密度−外部量子効率特性を
図12に示し、エネルギーバンド図を
図13に示す。外部量子効率と色度は表2に示すとおりであり、良好な青味と高い発光効率を両立させることができた。
【0175】
(実施例5)
本実施例において、青色発光材料のみからなる発光層で、青色発光材料に赤色発光材料をドープした発光層を挟み込んだ構造を有する多波長発光型の有機エレクトロルミネッセンス素子を作製して評価した。
膜厚100nmのインジウム・スズ酸化物(ITO)からなる陽極が形成されたガラス基板上に、各薄膜を真空蒸着法にて、真空度5.0×10
-4Paで積層した。まず、ITO上にα−NPDを35nmの厚さに形成し、mCBPを10nmの厚さに形成し、青色発光材料であるZHS02を7nm形成した。次いで、ZHS02と赤色発光材料である4CzTPN−Phを異なる蒸着源から共蒸着し、1nmの厚さの層を形成して発光層とした。この時、4CzTPN−Phの濃度は0.2重量%とした。次に、ZHS02を7nmの厚さに形成し、TmPyPbを50nmの厚さに形成し、さらにフッ化リチウム(LiF)を0.8nm真空蒸着し、次いでアルミニウム(Al)を100nmの厚さに蒸着することにより陰極を形成し、有機エレクトロルミネッセンス素子とした。
作製した有機エレクトロルミネッセンス素子の発光スペクトルを
図14に示し、電流密度−外部量子効率特性を
図15に示し、エネルギーバンド図を
図16に示す。外部量子効率と色度は表2に示すとおりであり、良好な青味と高い発光効率を両立させることができた。
【0176】
【表23】
【0177】
(実施例6〜8)
本実施例において、青色発光材料、緑色発光材料、赤色発光材料のすべてが遅延蛍光材料である多波長発光型の有機エレクトロルミネッセンス素子を作製して評価した。
膜厚100nmのインジウム・スズ酸化物(ITO)からなる陽極が形成されたガラス基板上に、各薄膜を真空蒸着法にて、真空度5.0×10
−4Paで積層した。まず、ITO上にHATCNを10nmの厚さに形成し、TrisPCzを35nmの厚さに形成した。次いで、緑色発光材料であるPXZ−TRZとmCBPを異なる蒸着源から共蒸着し、6nmの厚さの層を形成して第1発光層とした(PXZ−TRZの濃度は10重量%)。次に、PXZ−TRZと赤色発光材料である4CzTPN−PhとmCBPを異なる蒸着源から共蒸着し、3nmの厚さの層を形成して第2発光層とした(PXZ−TRZの濃度は6重量%、4CzTPN−Phの濃度は2重量%)。さらに、青色発光材料であるSHT02とDPEPOを異なる蒸着源から共蒸着し、6nmの厚さの層を形成して第3発光層とした(SHT02の濃度は6重量%)。次いで、DPEPOを10nmの厚さに形成し、TmPyPbを40nmの厚さに形成した。さらにフッ化リチウム(LiF)を0.8nm真空蒸着し、次いでアルミニウム(Al)を100nmの厚さに蒸着することにより陰極を形成し、有機エレクトロルミネッセンス素子Aとした(実施例6)。
10nm厚のDPEPO層のかわりに10nm厚のPPT層を形成した点を変更して、有機エレクトロルミネッセンス素子Aと同様の製法により有機エレクトロルミネッセンス素子Bを作製した(実施例7)。
また、10nm厚のDPEPO層を形成しなかった点を変更して、有機エレクトロルミネッセンス素子Aと同様の製法により有機エレクトロルミネッセンス素子Cを作製した(実施例8)。
作製した有機エレクトロルミネッセンス素子Aの発光スペクトルを
図17に示す。色度は0.31,0.36であった。また、作製した有機エレクトロルミネッセンス素子A〜Cの電圧−電流密度特性を
図18に示し、電流密度−外部量子効率特性を
図19に示し、エネルギーバンド図を
図20に示す。有機エレクトロルミネッセンス素子A〜Cは白色発光素子として良好な発光特性を示し、有機エレクトロルミネッセンス素子Aは外部量子効率11.8%を達成した。
【0178】
(実施例9〜11)
本実施例において、別の緑色発光材料を用いて、青色発光材料、緑色発光材料、赤色発光材料のすべてが遅延蛍光材料である多波長発光型の有機エレクトロルミネッセンス素子を作製して評価した。
緑色発光材料としてPXZ−TRZのかわりに4CzPNを用いて、第1発光層、第2発光層、第3発光層の厚さを下記のように変更して、実施例6の有機エレクトロルミネッセンス素子Aと同様の製法により有機エレクトロルミネッセンス素子D〜Fを作製した。
素子D:第1発光層(6nm)、第2発光層(3nm)、第3発光層(6nm)
素子E:第1発光層(4nm)、第2発光層(3nm)、第3発光層(8nm)
素子F:第1発光層(3nm)、第2発光層(2nm)、第3発光層(15nm)
作製した有機エレクトロルミネッセンス素子D〜Fの発光スペクトルを
図21に示す。有機エレクトロルミネッセンス素子Fの色度は0.30,0.39であった。また、作製した有機エレクトロルミネッセンス素子D〜Fの電圧−電流密度特性を
図22に示し、電流密度−外部量子効率特性を
図23に示す。有機エレクトロルミネッセンス素子Fは白色発光素子として良好な発光特性を示し、外部量子効率12.1%を達成した。
【0179】
【化104-1】
【化104-2】