(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
放射線のエネルギーを弁別することが可能な放射線分析装置として、エネルギー分散型X線検出器(Energy Dispersive Spectroscopy、以後EDSと呼ぶ)やWDS(Wavelength Dispersive Spectroscopy、以後WDSと呼ぶ)がある。
EDSは、検出器に取り込まれたX線のエネルギーを検出器内で電気信号に変換し、その電気信号の大きさによってエネルギーを算出するタイプのX線検出器である。また、WDSはX線を分光器で単色化(エネルギー弁別)し、単色化されたX線を比例計数管などで検出するタイプのX線検出器である。
【0003】
EDSとしては、SiLi(シリコンリチウム)型検出器、シリコンドリフト型検出器、またはゲルマニウム検出器などの半導体検出器が知られている。例えばシリコンリチウム型またはシリコンドリフト型の検出器は、電子顕微鏡の元素分析装置に多用され、0.2keV〜20keV程度の広範囲のエネルギーを検出できる。しかし、検出器にシリコンを用いているため、原理上、その性質はシリコンのバンドギャップ(1.1eV程度)に依存し、エネルギー分解能を130eV程度以上に改善することが難しく、WDSと比較して10倍以上エネルギー分解能は劣る。
【0004】
このようにX線検出器の性能を示す指標の一つであるエネルギー分解能が、例えば130eVであるとは、X線検出器にX線が照射されると、130eV程度の不確かさでエネルギーを検出可能であることを意味する。従って、この不確かさが小さいほど、エネルギー分解能が高いということになる。すなわち、隣接する2本のスペクトルからなる特性X線を検出する場合、エネルギー分解能が高くなると不確かさが小さくなる。2本の隣接するピークのエネルギー差が20eV程度であると、原理的に20eV〜30eV程度のエネルギー分解能で2本のピークを分離することができるということである。
【0005】
近年、エネルギー分散型でかつWDSと同等のエネルギー分解能を有する超伝導X線検出器が注目されている。この超伝導X線検出器のうちで超伝導転移端センサ(Transition Edge Sensor、以後TESと呼ぶ)を有する検出器は、金属薄膜の超伝導−常伝導遷移時の急激な抵抗変化(例えば、温度変化が数mKにて抵抗変化が0.1Ωなど)を用いた高感度の熱量計である。なお、このTESは、マイクロカロリーメータとも呼ばれる。
【0006】
このTESは、一次X線や一次電子線などの放射線照射によりサンプルから発生した蛍光X線や特性X線が入射した際に起こるTES内の温度変化を検出することでサンプルの分析をする。TESは、他の検出器よりも高いエネルギー分解能を有し、例えば5.9keVの特性X線において10eV以下のエネルギー分解能を得ることができる。
走査電子顕微鏡や透過電子顕微鏡にTESを取り付けた場合、電子線が照射されたサンプルから発生する特性X線をTESで取得することで、半導体型X線検出器では分離不可能な特性X線(例えば、Si−Kα、W−Mα、W−Mβなど)のエネルギースペクトルのピークを容易に分離することができる。
【0007】
ところで、この超伝導X線検出器を採用したX線分析装置では、TESの極微小な電流変化を読み出すために超伝導量子干渉素子型(Superconducting Quantum Interference Device、以後SQUIDと呼ぶ)アンプが用いられている。TESの高エネルギー分解能を実現させるためには、このSQUIDアンプに流れる電流を一定にすることが重要である。後述するように高エネルギー分解能を得るためにはSQUIDアンプに流れる電流変化を小さくしなければならないからである。
【0008】
SQUIDアンプに流れる電流、つまりTESに流れるベースライン電流を一定にする装置として、例えば、TESに流れるベースライン電流が既定値からずれて変動している場合にその変動幅に応じて、TESに流れる電流または、それに基づく波高値を補正するX線分析装置が知られている(特許文献1参照)。
また、TESが設置される台座に組み込まれたヒーターの出力とTESに流れるベースライン電流とが相関を有することに基づき、TESの信号パルスの波高値を補正する放射線分析装置が知られている(特許文献2参照)。この放射線分析装置は、予めヒーターの出力とTESの感度との相関特性を取得しておき、実際の測定時にTESの信号パルスを取得する際のヒーターの出力に対応するTESの感度を用いてTESの信号パルスの波高値を補正する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記のX線分析装置および放射線分析装置では、単にベースライン電流およびヒーターの出力の各々を用いて信号パルスをオンラインまたはオフラインで補正するだけである。信号パルスの補正を含む信号処理を多様な処理形態に対応させる汎用性、拡張性、および互換性などを確保することが望まれている。
【0011】
本発明は、前述の課題に鑑みてなされたもので、信号パルスの補正を含む信号処理を多様な処理形態に容易に対応させることが可能な放射線分析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決して係る目的を達成するために、本発明は以下の態様を採用した。
(1)本発明の一態様に係る放射線分析装置は、放射線を検出する超伝導転移端センサと、前記超伝導転移端センサの感度と相関を有する物理量のデータを取得するデータ取得部と、前記データ取得部によって取得される前記物理量のデータと、前記超伝導転移端センサの感度との相関の情報を用いて、前記超伝導転移端センサから出力される検出信号に対して前記超伝導転移端センサの感度に応じた補正を行う感度補正部と、前記超伝導転移端センサから出力される検出信号と、前記感度補正部が前記検出信号に感度補正を行なって得られる信号との各々に対して前記放射線のエネルギースペクトルを生成するスペクトル生成部と、を備える。
【0013】
上記(1)に記載の態様に係る放射線分析装置によれば、感度補正部による感度補正の有無に対応したエネルギースペクトルを生成するスペクトル生成部を備えるので、放射線検出中のオンライン時および検出終了後のオフライン時の各々において、感度補正の有無の各々に対応する多様な処理、および感度補正の有無の比較等の各種の処理を行なうことができる。
【0014】
(2)上記(1)に記載の放射線分析装置では、前記スペクトル生成部は、前記超伝導転移端センサから出力される検出信号に前記物理量のデータを付加して得られる信号データを出力し、前記感度補正部は、前記スペクトル生成部から出力される前記信号データを用いて、前記物理量のデータと前記超伝導転移端センサの感度との相関の情報を生成しながら前記相関の情報を用いて前記検出信号を補正する。
【0015】
さらに、上記(2)の場合、オンライン時およびオフライン時において検出信号を含む信号データを逐次受信する毎に相関の情報を生成しながら検出信号を補正する感度補正部を備えるので、検出信号の蓄積に伴って相関の情報の精度を向上させつつ、検出信号の補正精度を向上させることができる。
【0016】
(3)上記(2)に記載の放射線分析装置では、前記感度補正部は、所定条件を満たすまでの期間に亘って得られる前記信号データを用いて、前記期間毎に繰り返して前記相関の情報を更新する。
【0017】
さらに、上記(3)の場合、検出信号の統計量または検出時間などに対する所定条件を満たすまでの期間に亘って得られる信号データを用いて相関の情報を生成するので、相関の情報の精度を向上させることができる。さらに、繰り返して相関の情報を更新するので、信号データの蓄積に伴って相関の情報の精度を向上させつつ、検出信号の補正精度を向上させることができる。
【0018】
(4)上記(1)から(3)の何れか1つに記載の放射線分析装置では、前記データ取得部は、前記超伝導転移端センサを加熱するヒーターの出力を、前記物理量として取得する。
【0019】
さらに、上記(4)の場合、超伝導転移端センサの検出感度と相関を有するヒーターの出力に対して、超伝導転移端センサの検出感度を適切に補正することができる。
【0020】
(5)上記(1)から(3)の何れか1つに記載の放射線分析装置では、前記データ取得部は、前記超伝導転移端センサに流れる電流を、前記物理量として取得する。
【0021】
さらに、上記(5)の場合、超伝導転移端センサの検出感度と相関を有する超伝導転移端センサに流れる電流に対して、超伝導転移端センサの検出感度を適切に補正することができる。
【0022】
(6)上記(1)から(5)の何れか1つに記載の放射線分析装置では、前記感度補正部による感度補正の有無の各々に対応する前記放射線のエネルギースペクトルを表示する表示部を備える。
【0023】
さらに、上記(6)の場合、放射線検出中のオンライン時および検出終了後のオフライン時の各々において、感度補正の有無に応じたエネルギースペクトルを操作者が視認により容易に比較することができるように提示することができる。
【0024】
(7)上記(6)に記載の放射線分析装置では、前記表示部は、前記相関の情報を表示する。
【0025】
さらに、上記(7)の場合、放射線検出中のオンライン時および検出終了後のオフライン時の各々において、操作者が感度補正の精度を視認により容易に把握することができるように提示することができる。
【0026】
(8)上記(6)または(7)に記載の放射線分析装置では、前記表示部は、前記感度補正部が前記相関の情報を生成するための条件を、操作者の入力操作に応じて設定する設定画面を表示する。
【0027】
さらに、上記(8)の場合、放射線検出中のオンライン時および検出終了後のオフライン時の各々において、感度補正部による感度補正の状態を操作者が容易に制御することができるように提示することができる。
また、本発明の一態様に係る放射線分析装置は、放射線を検出する超伝導転移端センサと、前記超伝導転移端センサの感度と相関を有する物理量のデータを取得するデータ取得部と、前記データ取得部によって取得される前記物理量のデータと、前記超伝導転移端センサの感度との相関の情報を用いて、前記超伝導転移端センサから出力される検出信号に対して前記超伝導転移端センサの感度に応じた補正を行う感度補正部と、前記超伝導転移端センサから出力される検出信号の波高値を含む第1データと、前記感度補正部が前記検出信号に感度補正を行って得られる信号の波高値を含む第1データとの組み合わせの複合データを生成し、生成した前記複合データに基づいて、前記超伝導転移端センサから出力される前記検出信号と、前記感度補正部が前記検出信号に感度補正を行なって得られる信号との各々に対して前記放射線のエネルギースペクトルを生成する生成部と、前記複合データの表示と、前記生成部により生成された前記エネルギースペクトルの表示とのそれぞれを行うスペクトル表示部と、を備える。
【発明の効果】
【0028】
本発明の放射線分析装置によれば、感度補正部による感度補正の有無に対応したエネルギースペクトルを生成するスペクトル生成部を備えるので、放射線検出中のオンライン時および検出終了後のオフライン時の各々において、感度補正の有無の各々に対応する多様な処理および感度補正の有無の比較等を含む信号処理を各種の処理形態に容易に対応させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施形態に係る放射線析装置について添付図面を参照しながら説明する。
【0031】
本実施形態の放射線分析装置100は、例えば電子顕微鏡、イオン顕微鏡、X線顕微鏡、蛍光X線分析装置等の組成分析装置として利用可能な装置である。
放射線分析装置100は、
図1に示すように、TES1と、センサ回路部2と、バイアス電流源3と、電流検出機構4と、波高分析器5と、第1温度計6と、感度補正演算部7と、スペクトル表示部8と、を備えている。
TES1は、放射線を受けると放射線のエネルギーを温度変化として検出し、この温度変化を電流信号として出力する。センサ回路部2は、TES1に接続されている。バイアス電流源3は、センサ回路部2を疑似的に定電圧駆動させるための電流をセンサ回路部2に流す。電流検出機構4は、TES1に流れる電流を検出する。波高分析器5は、電流検出機構4により検出された信号パルスの波高値を測定する。第1温度計6は、センサ回路部2を設置するための台座に組み込まれ、TES1が設置される熱槽の温度を測定する。感度補正演算部7は、第1温度計6から出力される温度データおよびTES1に流れる電流の変動を元に波高分析器5により測定される信号パルスの波高値を補正する。スペクトル表示部8は、感度補正演算部7により感度補正された信号パルスを用いて、エネルギースペクトルを表示する。
【0032】
以下に、本発明の実施形態に係るTES1の動作原理について説明する。TES1は超伝導体が有する超伝導転移を利用するものであり、放射線の検出動作では、常伝導と超伝導の中間状態に動作点を保持する。これにより、放射線1個がTES1に吸収された場合、超伝導転移中に動作点を保持された状態において、例えば100μKの温度変動に対して数mΩの抵抗変化が得られ、μAオーダーの放射線パルスを得ることができる。
【0033】
また、予めパルス波高値と放射線のエネルギーとの関係を求めたデータを記憶しておくことにより、未知エネルギーを有する放射線がTES1に照射されても信号パルス波高値から入射した放射線のエネルギーを検出することができる。
【0034】
TES1を超伝導転移中の動作点に保持させるために、TES1の動作点はTES1に流れる電流(以降、TES電流Itと呼ぶ)とTES1内に設けられた熱槽への熱リンクとの熱バランスにより決定される。TES1のエネルギー分解能は温度の関数であるため、可能な限り温度を低くした方がよい。熱槽温度は、例えば50mK〜400mK程度にしておく。TES電流Itは、以下の数式1で決定される。
【0036】
上記数式1において、TES電流Itは、TES1の動作抵抗Rt、TES1に設けられた第2温度計17と熱槽とを熱的に接続させるための熱リンクの熱伝導度G、第2温度計17の温度T、および熱槽の温度Tbにより記述されている。
さらに、TES電流Itとパルス波高値ΔIとの関係は、以下の数式2で与えられる。理想的にはTES電流Itが一定であれば、常に一定のパルス波高値ΔIが得られる。
【0038】
上記数式2において、TES電流Itおよびパルス波高値ΔIは、TES1の感度α、熱容量C、照射される放射線のエネルギーE、および第2温度計17の温度Tにより記述されている。この数式2からわかるようにTES1に流れるベースライン電流が変化すると、同じエネルギーの放射線がTES1に照射されても信号パルスの波高値が異なる。また数式1からわかるように熱槽の温度が変化するとTES1に流れるベースライン電流が変化する。すなわち熱槽が変動するとパルス波高値ΔIが変動するため、エネルギー分解能劣化の原因となる。
【0039】
TES1に放射線が照射され、TES1内で発生する温度変化に伴う信号パルスの波高値は、上記数式2に従って、SQUIDアンプ11に流れる電流(TES電流Itと同じ)の増加に伴い、増加傾向に変化する。パルス波高値ΔIの一例としては、パルス信号をバンドフィルターで処理したのちにコンボリューションさせた計算値がスペクトル表示部8に出力される。
【0040】
この際、スペクトル表示部8におけるスペクトル表示画面は、横軸をパルス波高値ΔI、縦軸をカウントとして表示される。例えば、パルス波高値ΔIが100のとき、100の箇所に1個カウントされる。これを繰り返して、放射線スペクトルが形成される。
【0041】
これは、同じエネルギーにも関わらずフィルター後の出力値が変化すると、パルス波高値ΔIがばらつくことを意味する。このばらつき度合いが上述したエネルギー分解能に相当する。すなわち、高エネルギー分解能を実現させるためには、同じエネルギーに対してパルス波高値ΔIのばらつきが小さくなるようにしなければならない。
【0042】
パルス波高値ΔIのばらつきは、SQUIDアンプ11に流れる電流変化が一要因である。従って、高エネルギー分解能を実現させるためには、上述したように、SQUIDアンプ11に流れる電流を一定にすること、若しくはSQUIDアンプ11に流れる電流が変化してもパルス波高値ΔIが一定となる手段が重要である。
【0043】
以下に、本発明の実施形態に係る放射線分析装置100の詳細について説明する。
【0044】
センサ回路部2は、TES1よりも小さい抵抗値でありTES1と並列に接続されたシャント抵抗9と、TES1に直列に接続されたインプットコイル10と、を備えている。
【0045】
このセンサ回路部2では、バイアス電流源3からバイアス電流が流されると、シャント抵抗9の抵抗値とTES1の抵抗値との抵抗比で電流が分岐される。すなわち、シャント抵抗9に流れる電流とシャント抵抗9の抵抗値で決まる電圧とにより、TES1の電圧値が決定される。
【0046】
電流検出機構4は、SQUIDアンプ11と、SQUIDアンプ11から出力された電気信号を増幅・整形処理するための室温アンプ15と、を備えている。なお、電流検出機構4として、インプットコイル10を利用したSQUIDアンプ11と室温アンプ15とを用いているが、TES1に流れる電流の変化を検出可能であれば他の構成を採用しても構わない。
【0047】
TES1、シャント抵抗9及びSQUIDアンプ11は、
図2に示すように、冷凍機により50mK〜400mKまで冷却されるコールドヘッド12の先端に設けられている。なお、TES1及びSQUIDアンプ11は、超伝導配線13で接続されている。別の例としては、
図3に示すように、TES1を、コールドヘッド12の先端に設け、SQUIDアンプ11を9K以下まで冷却されるコールドブロック14の先端に設けたものでも構わない。なお、シャント抵抗9は、
図2及び
図3において図示を省略している。
【0048】
波高分析器5は、室温アンプ15から送られた放射線パルス信号から信号パルスの波高値(電圧値)を得てエネルギースペクトルを生成するマルチチャンネルパルスハイトアナライザーである。この波高分析器5は、放射線パルスの波高値を読み取り、縦軸をカウント、横軸を波高値としたヒストグラムのグラフにおいて、その波高値の箇所にカウントを1個追加する。そして、波高分析器5は、複数の放射線の信号パルスに対して同じ作業を繰り返し、ヒストグラムを作成してスペクトル表示部8に表示する機能を有している。なお、具体的なデータの生成については後述する。
また、予め信号パルスの電圧値をエネルギーに換算する補正データが波高分析器5もしくはスペクトル表示部8に組み込まれていれば、縦軸をカウント、横軸をエネルギーとしたスペクトルを表示することが出来る。
【0049】
コールドヘッド12の内部に、コールドヘッド12の温度をモニターする第1温度計6が設けられている。第1温度計6は半導体、超伝導体、又は金属酸化物を用いることが出来る。例えば、第1温度計6は酸化ルテニウムやゲルマニウムを用いることができる。第1温度計6はコールドヘッド温度と共に抵抗値が変化し、予め温度と第1温度計6から出力される電気信号(一般には電圧信号)を相関付けることで温度を測定することが出来る。予め温度と抵抗の関係を相関付けられていれば温度を、相関付けられていない場合には直接電気信号を用いて、コールドヘッド12の温度状態を把握することが可能である。
【0050】
感度補正演算部7は、室温アンプ15から出力される信号パルスの波高値、つまりTES1の検出感度を補正するための機構である。感度補正演算部7は、第1温度計6の温度を一定にするために使用されるヒーター20のヒーターパワーのデータおよび電気信号、並びに後述するベースラインモニター機構31から出力されるバイアス電流の変化量の信号を受け取り、信号パルスのパルス波高値ΔIを補正する。この感度補正演算部7は、上記補正処理を行うための演算回路及びメモリ等を備えており、例えばパーソナルコンピュータ等のプログラム処理により実現するものや専用のハードウェアで実現されるものである。また、この感度補正演算部7を、波高分析器5、及びスペクトル表示部8に組み込んで一体化しても構わない。なお、具体的な感度補正方法については後述する。
【0051】
スペクトル表示部8は、演算回路およびメモリと、液晶表示器などの表示器とを備えている。スペクトル表示部8の演算回路およびメモリは、例えばパーソナルコンピュータ等のプログラム処理により実現するものや専用のハードウェアで実現されるものである。スペクトル表示部8は、感度補正演算部7の感度補正の動作条件等を操作者の入力操作に応じて設定するための設定画面を表示し、この設定画面における入力操作に応じた指令信号を感度補正演算部7に出力する。
スペクトル表示部8は、波高分析器5から受け取るスペクトルのデータを用いて、操作者の要求などに応じて、TES1により検出された放射線のエネルギースペクトル、並びに感度補正演算部7が随時に設定する第1感度補正値k1および第2感度補正値k2のデータなどを表示器に表示する。スペクトル表示部8は、感度補正演算部7による感度補正の有無の各々に対応する信号パルスの波高値ΔIにより生成されたエネルギースペクトルを表示する。スペクトル表示部8は、感度補正演算部7が第1感度補正値k1および第2感度補正値k2を設定するために用いるエネルギースペクトルを表示する。スペクトル表示部8は、感度補正演算部7が設定する第1感度補正値k1および第2感度補正値k2のデータを表示器に表示する。なお、具体的なデータの表示については後述する。
【0052】
以下に、本発明の実施形態に係る感度補正演算部7による感度補正の原理について説明する。
TES1は、
図4に示すように、吸収体16と、第2温度計17と、メンブレン18と、を備える。吸収体16は、X線等の放射線を吸収するための金属帯、半金属、超伝導体等である。吸収体16は、例えば、金、銅、ビスマス等により形成されている。第2温度計17は、超伝導体からなり、吸収体16で発生した熱を温度変化として検知する。第2温度計17は、例えば、チタンと金との2層からなる材料により形成されている。メンブレン18は、第2温度計17とコールドヘッド12との間を熱的に緩く接続し、熱槽(=コールドヘッド12:図示略)に逃げる熱流量を制御する。メンブレン18および熱槽は、例えば、窒化シリコンにより形成されている。
【0053】
TES1の抵抗値を常伝導と超伝導との中間状態に保持するために、第2温度計17で発生するジュール熱は、メンブレン18を通して第2温度計17(または吸収体16)からコールドヘッド12に流れる熱流との熱的にバランスされる。
【0054】
ジュール熱とメンブレン18を伝わる熱流との熱的なバランスは、上記数式1で与えられる。上記数式1においてTES電流ItがTES1外部からの熱変動Pexに影響されることを考慮すると、上記数式1は数式3で書き換えられる。
【0056】
TES1外部からの熱変動Pexが増加すると、上記数式3を満足するように、左辺第2項のδItが減少する。なお、外部からの熱変動Pexの例としては、TES1を冷却するコールドヘッド12の温度変動、コールドヘッド12を取り囲む熱シールド19の温度変動による熱輻射の変動、または冷凍機内に存在する残留ガスを通して熱シールド19からTES1への熱伝導による熱シールド19の温度変動等がある。
【0057】
パルス波高値ΔIとTES1に流れる電流との関係は、上記数式2の通り、TES1に流れる電流が増加すると、単調にパルス波高値ΔIは増加する。すなわち、同じエネルギーの放射線に対するパルス波高値ΔIを一定にするためにはTES1に流れる電流を一定にすることが重要である。
【0058】
また、TES1は100mK近傍まで冷却される必要がある。冷却手段としては、希釈冷凍機や断熱消磁冷凍機(Adiabatic Demagnetization Refrigerator、以降ADRと呼ぶ)がある。前者はミキシングチャンバー内においてconc.相(濃厚相)からdilute相(希薄相)へ3Heが溶け込む時のエンタルピー差を利用し冷却する技術である。後者は磁性体に磁場を印加することでスピンの向きを揃えておき、磁場を除去する際にエントロピーが増大することで、磁性体に接続された物体を冷却する技術である。両者とも最も冷却される箇所にコールドヘッド12が設置される。希釈冷凍機及びADRには、温度を測定するための第1温度計6がコールドヘッド12に設置され、第1温度計6から出力される電気信号(一般的には電圧信号)をモニターすることでコールドヘッド12の温度情報を得ることが出来る。予め電気信号と温度の関係を温度コントロール部21に登録することでリアルタイムに温度を把握することが出来る。温度コントロール部21は、第1温度計6と感度補正演算部7との間に設置され、第1温度計6で得られた温度データ、若しくは電気信号を感度補正演算部7に送信する機能を有する。
【0059】
希釈冷凍機においてコールドヘッド12の温度を一定に保つ場合、ヒーター20が設置される。ヒーター20は温度コントロール部21に接続される。温度コントロール部21で目的とする温度が設定されると、第1温度計6の温度データ、若しくは電気信号を元にヒーター20の出力を温度コントロール部21がコントロールする。ADRの場合、第1温度計6の温度データ、若しくは電気信号を元に磁性体に印加された磁場強度をコントロールすることでコールドヘッド12の温度を一定に保つ。以下は希釈冷凍機を元に感度補正するための手法を説明するが、ADRに対しても同様の手法は適応可能である。
【0060】
数式1、数式2からわかるように、熱槽温度が下がるとパルス波高値ΔIは増加し、逆に熱槽温度が上がるとパルス波高値ΔIは減少する。熱槽温度は第1温度計6でモニターされる。温度コントロール部21は、第1温度計6の温度が一定となるようにヒーター20の出力を調整し、第1温度計6が一定となるように温度を調節する。
【0061】
ヒーター20の出力とパルス波高値ΔIとの関係は、ヒーター20の出力の増加に伴い、パルス波高値ΔIが増加傾向に変化する。ヒーター20は、第1温度計6が常に一定値を保持するように出力がコントロールされる。先に述べたが、外部からの熱侵入等によりヒーター値は変化する。感度補正演算部7は、あるヒーター値のパルス波高値ΔIを基準値として定義し、この基準値でパルス波高値ΔIを割り算した結果(第1感度補正値k1)とヒーター20の出力との関係を記憶する。ヒーター20の出力の増加に伴い、第1感度補正値k1は減少傾向に変化する。第1感度補正値k1とヒーター20の出力との特性を一度得ておけば、実際のヒーター出力に対応する第1感度補正値k1を用いて、実際に得られるパルス波高値ΔIを補正することによって、正確なパルス波高値ΔIを得ることが出来る。
【0062】
同様にして、TES1に流れる電流の変動と、パルス波高値ΔIの変動との関係を予め求めておけば、検出したパルス波高値ΔIに対して補正を加えることができる。TES1に流れる電流の変化をベースラインモニター機構31で監視し、その値に応じて検出したパルス波高値ΔIに対して補正を加えることで、外乱の影響により、同じエネルギーの放射線が入射したときにパルス波高値ΔIが異なる問題を回避することができる。
【0063】
ベースラインモニター機構31は、TES1に流れる電流の変化を監視しており、感度補正演算部7に対しバイアス電流の変化量を信号として送信する。感度補正演算部7は、バイアス電流の変化量に応じて室温アンプ15からの出力信号を補正する。
ベースラインモニター機構31には室温アンプ15からの信号に対して上限値と下限値が設定できるようになっており、その範囲内に入っている信号をベースラインとして認識する。
【0064】
例えば、上限値と下限値とを+100mV、−100mVとした場合、この範囲に入っている室温アンプ15からの信号は常にベースライン信号として認識される。ベースライン電流の変動は、TES1の応答周波数(100Hz以上)より遅いため、SQUIDアンプ11での電流、すなわちTES1の電流のサンプリング周波数は、電源商用周波数50Hz以下であることが望ましい。また、サンプリングされたTES1の電流は統計的なゆらぎをもっているため、例えばN個のサンプリングデータを平均化し、その平均化されたデータをモニターすることが好ましい。
【0065】
感度補正演算部7は、あるベースラインのパルス波高値ΔIを基準値として定義し、この基準値でパルス波高値ΔIを割り算した結果(第2感度補正値k2)とベースラインとの関係を記憶する。感度補正演算部7は、より精度を上げる目的でTES1に流れる電流の変動とパルス波高値ΔIの変動と放射線のエネルギーとの関係を記憶してもよい。ベースラインの増加に伴い、第2感度補正値k2は増加傾向に変化する。第2感度補正値k2とベースラインとの特性を一度得ておけば、実際のベースラインに対応する第2感度補正値k2を用いて、実際に得られるパルス波高値ΔIを補正することによって、正確なパルス波高値ΔIを得ることが出来る。
【0066】
以下に、感度補正演算部7が第1感度補正値k1および第2感度補正値k2を取得する際における放射線分析装置100の動作例について説明する。
【0067】
感度補正演算部7は、適宜の測定対象試料に対する放射線測定の実行中のオンライン時、もしくは適宜の測定対象試料に対する放射線測定の実行前または実行停止中などのオフライン時において、第1感度補正値k1および第2感度補正値k2を取得する。感度補正演算部7は、予めスペクトル表示部8の設定画面によって設定される動作条件等に応じて第1感度補正値k1および第2感度補正値k2を取得する。設定画面は、
図5に示すように、例えば、補正対象のエネルギー、補正対象のエネルギー周辺の対象領域(ROI)、サンプルデータの数(カウント数)、および補正曲線の次数などを設定するための画面を表示する。また、設定画面は、適宜のタイミングで補正曲線の作成実行または再作成実行などを指示するための操作ボタンなどを表示してもよい。
【0068】
波高分析器5は、逐次、室温アンプ15から送られる放射線パルス信号、温度コントロール部21から取得するヒーター値HP(つまりヒーター出力の検出値)、およびベースラインモニター機構31から取得するTES1に流れる電流のベースラインBLを用いて、感度補正前のデータPI0を生成する。感度補正前のデータPI0は、
図6に示すように、パルス波高値PHA(=ΔI),時刻t、ヒーター値HP、ベースラインBL、ビームポジションbp、および検出器番号dnの各データを備えている。波高分析器5は、感度補正前のデータPI0を感度補正演算部7に出力することによって、感度補正演算部7から感度補正が行われた感度補正後のデータPI1を受け取る。波高分析器5は、感度補正前のデータPI0および感度補正後のデータPI1の組み合わせの複合データ(PI0、PI1)を生成して、複合データ(PI0、PI1)をスペクトル表示部8に出力する。
【0069】
感度補正演算部7は、逐次に波高分析器5から出力される感度補正前のデータPI0を用いて、予めスペクトル表示部8の設定画面によって設定される動作条件に応じて、第1感度補正値k1および第2感度補正値k2を取得する。感度補正演算部7は、設定画面によって設定された補正対象のエネルギー(例えば、Al−Kα線である1487eVなど)周辺の対象領域(ROI)において、複数個のデータPI0を取得する。感度補正演算部7は、設定画面によって設定されたサンプルデータの数(例えば、1000カウント数など)毎のデータPI0からヒーター値HPおよびベースラインBLの各々の平均値を算出する。感度補正演算部7は、
図7に示すように、設定画面によって設定されたカウント数毎のデータPI0によって形成されるスペクトルの中心E0を、算出したヒーター値HPおよびベースラインBLの各平均値の組み合わせに対応する信号パルス出力(つまりパルス波高値PHA)とする。スペクトル中心の読み出し方法は、例えば、ガウシアンフィッティングによる中心の読み出しなどである。
このように感度補正演算部7は、設定画面によって設定されたカウント数毎に、ヒーター値HPおよびベースラインBLの各平均値の組み合わせと信号パルス出力との対応のデータを取得する。感度補正演算部7は、補正の精度を高めるために、随時に得られる対応のデータを蓄積しながら、複数の対応のデータの数を増大させる。
なお、感度補正演算部7は、設定画面によって設定されたカウント数毎のデータPI0によって形成されるスペクトル、およびガウシアンフィッティングなどにより読み出されたスペクトルの中心E0などのデータを表示用としてスペクトル表示部8に出力してもよい。
【0070】
感度補正演算部7は、随時に得られる対応のデータの各々に対して、予め設定した基準となる信号パルス出力に対する第1感度補正値k1および第2感度補正値k2を算出する。感度補正演算部7は、基準となる信号パルス出力を、基準となるヒーター値HPとは異なるヒーター値HPの平均値に対応する信号パルス出力で割った値を第1感度補正値k1とする。感度補正演算部7は、基準となる信号パルス出力を、基準となるベースラインBLとは異なるベースラインBLの平均値に対応する信号パルス出力で割った値を第2感度補正値k2とする。例えば、基準となるヒーター値HPが1.57μWである時の信号パルス出力を100.000mV(補正対象である1487eVのエネルギーに相当)としている場合において、ヒーター値HPの平均値が1.7258μWである時の信号パルス出力が101.015mVであれば、この信号パルス出力によって基準となる信号パルス出力を割った値(=100/101.015=0.989953)を第1感度補正値k1とする。
感度補正演算部7は、
図8および
図9に示すように、随時に得られる第1感度補正値k1とヒーター値HPの平均値との組み合わせのデータおよび第2感度補正値k2とベースラインBLの平均値との組み合わせのデータの各々を蓄積しながらグラフにプロットする。感度補正演算部7は、随時に蓄積されながら更新される複数のデータに対して、設定画面によって設定された次数n(nは整数)のn次関数またはスプライン曲線による補正曲線を作成する。
なお、感度補正演算部7は、第1感度補正値k1とヒーター値HPの平均値との組み合わせのデータ、第2感度補正値k2とベースラインBLの平均値との組み合わせのデータ、および作成した補正曲線などの各データを、更新毎に表示用としてスペクトル表示部8に出力してもよい。
【0071】
以下に、オンライン時またはオフライン時において感度補正演算部7が第1感度補正値k1および第2感度補正値k2を用いて感度補正を行なう際における放射線分析装置100の動作例について説明する。
【0072】
感度補正演算部7は、オンライン時においては、適宜の測定対象試料に対する放射線測定によって逐次に波高分析器5から出力される感度補正前のデータPI0を用いて、各時点で記憶している第1感度補正値k1および第2感度補正値k2のデータから、感度補正前のデータPI0に含まれるヒーター値HPおよびベースラインBLに対する第1感度補正値k1および第2感度補正値k2を取得する。感度補正演算部7は、感度補正前のデータPI0に含まれるパルス波高値PHAに第1感度補正値k1および第2感度補正値k2を演算することによってパルス波高値PHAを補正する。感度補正演算部7は、補正後のパルス波高値PHAを含む感度補正後のデータPI1を生成して、感度補正後のデータPI1を波高分析器5に出力する。なお、感度補正前のデータPI0と感度補正後のデータPI1とで異なるのは感度補正の有無に応じたパルス波高値PHAである。
また、感度補正演算部7は、オフライン時においては、波高分析器5またはスペクトル表示部8などに記憶されている複数の感度補正前のデータPI0の各々を順次に取得する毎に、各時点で記憶している第1感度補正値k1および第2感度補正値k2のデータを用いて、各感度補正前のデータPI0に含まれるパルス波高値PHAを補正する。
【0073】
スペクトル表示部8は、波高分析器5が逐次作成する複合データ(PI0、PI1)を受け取ることによって、操作者の要求などに応じて、感度補正前のスペクトルおよび感度補正後のスペクトルの少なくとも何れかまたは両方を表示器に表示する。また、スペクトル表示部8は、
図7に示すように、感度補正演算部7が逐次出力するカウント数毎のデータPI0によって形成されるスペクトル、およびスペクトルの中心E0などのデータを、操作者の要求などに応じて表示器に表示する。また、スペクトル表示部8は、
図8および
図9に示すように、感度補正演算部7が逐次出力する第1感度補正値k1とヒーター値HPの平均値との組み合わせのデータ、第2感度補正値k2とベースラインBLの平均値との組み合わせのデータ、および作成した補正曲線などの各データを、操作者の要求などに応じて表示器に表示する。
【0074】
上述したように、本実施形態による放射線分析装置100によれば、オンライン時およびオフライン時の各々において感度補正前のデータPI0および感度補正後のデータPI1の組み合わせの複合データ(PI0、PI1)を生成する波高分析器5を備えるので、感度補正の有無の各々に対応する多様な処理、および感度補正の有無の比較等の各種の処理を行なうことができる。
さらに、逐次に波高分析器5から出力される感度補正前のデータPI0を用いて、第1感度補正値k1および第2感度補正値k2を取得するとともに、データPI0に含まれるパルス波高値PHAを補正する感度補正演算部7を備えるので、データの蓄積に伴って、第1感度補正値k1および第2感度補正値k2の精度を向上させつつ、データの補正精度を向上させることができる。
さらに、感度補正演算部7は、予め設定されるカウント数毎のデータPI0によって第1感度補正値k1および第2感度補正値k2を取得するので、第1感度補正値k1および第2感度補正値k2の精度を向上させることができる。さらに、繰り返して第1感度補正値k1および第2感度補正値k2を更新するので、データの蓄積に伴って第1感度補正値k1および第2感度補正値k2の精度を向上させつつ、データの補正精度を向上させることができる。
【0075】
さらに、複合データ(PI0、PI1)を用いて、操作者の要求などに応じて、感度補正前のスペクトルおよび感度補正後のスペクトルの少なくとも何れかまたは両方を表示するスペクトル表示部8を備えるので、操作者の利便性を向上させることができる。
さらに、スペクトル表示部8は、第1感度補正値k1とヒーター値HPの平均値との組み合わせのデータ、第2感度補正値k2とベースラインBLの平均値との組み合わせのデータ、および作成した補正曲線などの各データを、操作者の要求などに応じて表示するので、感度補正演算部7による感度補正の精度を視認により容易に把握させることができる。
さらに、スペクトル表示部8は、感度補正演算部7の感度補正の動作条件等を操作者の入力操作に応じて設定するための設定画面を表示するので、オンライン時およびオフライン時の各々において、感度補正演算部7による感度補正の状態を操作者が容易に制御することができる。
【0076】
以下、変形例について説明する。
上述した実施形態では、スペクトル表示部8の設定画面によってサンプルデータの数(カウント数)が設定されるとしたが、これに限定されず、サンプルデータの数(カウント数)の代わりに時間が設定されてもよい。
【0077】
上述した実施形態では、ヒーター値HPおよびベースラインBLを用いて信号パルス出力の感度補正を行なうとしたが、これに限定されない。
感度補正演算部7は、ヒーター値HPおよびベースラインBLの少なくとも何れかを用いてパルス波高値PHAの感度補正を行なってもよい。
【0078】
なお、本発明の技術的範囲は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述した実施形態に種々の変更を加えたものを含む。すなわち、上述した実施形態の構成はほんの一例に過ぎず、適宜変更が可能である。