特許第6516459号(P6516459)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6516459下地剤及び相分離構造を含む構造体の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6516459
(24)【登録日】2019年4月26日
(45)【発行日】2019年5月22日
(54)【発明の名称】下地剤及び相分離構造を含む構造体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C09D 125/04 20060101AFI20190513BHJP
   C09D 133/04 20060101ALI20190513BHJP
   C08F 112/04 20060101ALI20190513BHJP
   C08F 120/12 20060101ALI20190513BHJP
   H01L 21/027 20060101ALI20190513BHJP
【FI】
   C09D125/04
   C09D133/04
   C08F112/04
   C08F120/12
   H01L21/30 502D
【請求項の数】3
【全頁数】45
(21)【出願番号】特願2014-247109(P2014-247109)
(22)【出願日】2014年12月5日
(65)【公開番号】特開2016-108445(P2016-108445A)
(43)【公開日】2016年6月20日
【審査請求日】2017年9月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000220239
【氏名又は名称】東京応化工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100179833
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 将尚
(74)【代理人】
【識別番号】100189337
【弁理士】
【氏名又は名称】宮本 龍
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(72)【発明者】
【氏名】矢萩 真人
(72)【発明者】
【氏名】川上 晃也
(72)【発明者】
【氏名】前橋 貴哉
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 一生
(72)【発明者】
【氏名】松宮 祐
(72)【発明者】
【氏名】黒澤 剛志
(72)【発明者】
【氏名】山野 仁詩
【審査官】 安田 周史
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2012/0116007(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0346142(US,A1)
【文献】 特開2015−216368(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 125/04
C08F 112/04
C08F 120/12
C09D 133/04
H01L 21/027
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に形成した、疎水性ポリマーブロック(b11)と親水性ポリマーブロック(b21)とが結合したブロックコポリマーを含む層を相分離させるために用いられる下地剤であって、
樹脂成分を含有し、該樹脂成分は、下記一般式(A1−1)で表される高分子化合物及び下記一般式(A2−1)で表される高分子化合物からなる群より選択される少なくとも一種を含む、下地剤。
【化1】
[式中、Rは、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基又は炭素数1〜5のハロゲン化アルキル基である。R10及びR20は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜5の炭化水素基、又はカルボキシ基を有する炭素数1〜5の炭化水素基である。但し、R10及びR20の少なくとも一方は、カルボキシ基を有する炭素数1〜5の炭化水素基である。Rは、ハロゲン原子、或いは酸素原子、ハロゲン原子若しくはケイ素原子を含んでいてもよい炭素数1〜20の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状又はこれらの組み合わせによる炭化水素基である。pは、0〜5の整数である。xは、構成単位の繰り返し数を示す。]
【化2】
[式中、Rは、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基又は炭素数1〜5のハロゲン化アルキル基である。R30及びR40は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜5の炭化水素基、又はカルボキシ基を有する炭素数1〜5の炭化水素基である。但し、R30及びR40の少なくとも一方は、カルボキシ基を有する炭素数1〜5の炭化水素基である。Rは、炭素数1〜20の直鎖状若しくは分岐鎖状のヒドロキシアルキル基である。xは、構成単位の繰り返し数を示す。]
【請求項2】
基板上に、請求項1に記載の下地剤を塗布し、下地剤層を形成する工程と、
該下地剤層の上に、疎水性ポリマーブロック(b11)と親水性ポリマーブロック(b21)とが結合したブロックコポリマーを含む層を形成する工程と、
該ブロックコポリマーを含む層を相分離させる工程と、
を有することを特徴とする、相分離構造を含む構造体の製造方法。
【請求項3】
前記下地剤層を形成する工程において、下地剤を塗布した基板を210℃以上の温度で60秒以上ベークする工程を有する、請求項に記載の相分離構造を含む構造体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下地剤及び相分離構造を含む構造体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、大規模集積回路(LSI)のさらなる微細化に伴い、より繊細な構造体を加工する技術が求められている。このような要望に対し、互いに非相溶性のブロック同士が結合したブロックコポリマーの自己組織化により形成される相分離構造を利用して、より微細な構造体を形成する技術開発が行われている。
【0003】
ブロックコポリマーの相分離を利用するためには、ミクロ相分離により形成された自己組織化ナノ構造を、特定の領域のみに形成し、かつ、所望の方向へ配列させることが必須となる。
かかる自己組織化ナノ構造の位置制御及び配向制御を実現するため、ガイドパターンによって相分離パターンを制御するグラフォエピタキシーや、基板の化学状態の違いによって相分離パターンを制御するケミカルエピタキシー等の方法が提案されている(例えば、非特許文献1参照)。
【0004】
ブロックコポリマーを相分離させて微細なパターンを形成する方法としては、例えば、基板の上に、2つのブロック鎖の表面自由エネルギーの中間の値の表面自由エネルギーとされた中性層を形成する方法が開示されている(例えば、特許文献1参照)。このような中性層を基板の上に形成することで、基板の上のブロック共重合体が接触する面が、2つのブロック鎖の表面自由エネルギーの中間の値の表面自由エネルギーをもつ状態となる。これにより、既存のリソグラフィー技術よりも小さい寸法を有した様々な形状のパターンが形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−36491号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】プロシーディングスオブエスピーアイイー(Proceedings of SPIE),第7637巻,第76370G−1(2010年).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の方法では、用いるブロックコポリマー種に応じて表面自由エネルギーが所望の値となる中性層材料を都度選択し、中性層の表面自由エネルギーを制御する必要があった。このため、簡便に用いることができる下地剤が求められていた。
また、従来の中性層材料(下地剤)では、これを用いて形成される下地剤層の表面状態の制御が不充分であり、ブロックコポリマーの相分離不良を生じやすい、という問題がある。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、ブロックコポリマーの相分離性能が高められ、簡便に用いることができる下地剤、及びこれを用いた相分離構造を含む構造体の製造方法を提供すること、を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは検討により、ブロックコポリマーの誘導自己組織化(Directed Self Assembly:DSA)技術によって微細な構造体を形成する際、基板と、該基板上に形成されるブロックコポリマーを含む層と、の密着性を高めることで、ブロックコポリマーの相分離が促進する、という知見を得た。そして、更なる検討により、下地剤材料として特定の樹脂成分を採用することで、前記密着性を高められて上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
本発明の第一の態様は、基板上に形成した、疎水性ポリマーブロック(b11)と親水性ポリマーブロック(b21)とが結合したブロックコポリマーを含む層を相分離させるために用いられる下地剤であって、樹脂成分を含有し、該樹脂成分は、後述の一般式(A1−1)で表される高分子化合物及び後述の一般式(A2−1)で表される高分子化合物からなる群より選択される少なくとも一種を含む、下地剤である。
本発明の第二の態様は、基板上に、前記第一の態様の下地剤を塗布し、下地剤層を形成する工程と、該下地剤層の上に、疎水性ポリマーブロック(b11)と親水性ポリマーブロック(b21)とが結合したブロックコポリマーを含む層を形成する工程と、該ブロックコポリマーを含む層を相分離させる工程と、を有することを特徴とする、相分離構造を含む構造体の製造方法である。
【0010】
本明細書及び本特許請求の範囲において、「脂肪族」とは、芳香族に対する相対的な概念であって、芳香族性を持たない基、化合物等を意味するものと定義する。
「アルキル基」は、特に断りがない限り、直鎖状、分岐鎖状及び環状の1価の飽和炭化水素基を包含するものとする。
「アルキレン基」は、特に断りがない限り、直鎖状、分岐鎖状及び環状の2価の飽和炭化水素基を包含するものとする。アルコキシ基中のアルキル基も同様である。
「ハロゲン化アルキル基」は、アルキル基の水素原子の一部又は全部がハロゲン原子で置換された基であり、該ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
「フッ素化アルキル基」又は「フッ素化アルキレン基」は、アルキル基又はアルキレン基の水素原子の一部又は全部がフッ素原子で置換された基をいう。
「構成単位」とは、高分子化合物(樹脂、重合体、共重合体)を構成するモノマー単位(単量体単位)を意味する。
「アクリル酸エステルから誘導される構成単位」とは、アクリル酸エステルのエチレン性二重結合が開裂して構成される構成単位を意味する。
「アクリル酸エステル」は、アクリル酸(CH=CH−COOH)のカルボキシ基末端の水素原子が有機基で置換された化合物である。
アクリル酸エステルは、α位の炭素原子に結合した水素原子が置換基で置換されていてもよい。該α位の炭素原子に結合した水素原子を置換する置換基(Rα)は、水素原子以外の原子又は基であり、たとえば炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のハロゲン化アルキル基、ヒドロキシアルキル基等が挙げられる。なお、アクリル酸エステルのα位の炭素原子とは、特に断りがない限り、カルボニル基が結合している炭素原子のことである。
以下、α位の炭素原子に結合した水素原子が置換基で置換されたアクリル酸エステルをα置換アクリル酸エステルということがある。また、アクリル酸エステルとα置換アクリル酸エステルとを包括して「(α置換)アクリル酸エステル」ということがある。
「ヒドロキシスチレン若しくはヒドロキシスチレン誘導体から誘導される構成単位」とは、ヒドロキシスチレン若しくはヒドロキシスチレン誘導体のエチレン性二重結合が開裂して構成される構成単位を意味する。
「ヒドロキシスチレン誘導体」とは、ヒドロキシスチレンのα位の水素原子がアルキル基、ハロゲン化アルキル基等の他の置換基に置換されたもの、並びにそれらの誘導体を含む概念とする。それらの誘導体としては、α位の水素原子が置換基に置換されていてもよいヒドロキシスチレンの水酸基の水素原子を有機基で置換したもの、α位の水素原子が置換基に置換されていてもよいヒドロキシスチレンのベンゼン環に、水酸基以外の置換基が結合したもの、等が挙げられる。なお、α位(α位の炭素原子)とは、特に断りがない限り、ベンゼン環が結合している炭素原子のことをいう。
ヒドロキシスチレンのα位の水素原子を置換する置換基としては、前記α置換アクリル酸エステルにおいて、α位の置換基として挙げたものと同様のものが挙げられる。
「ビニル安息香酸若しくはビニル安息香酸誘導体から誘導される構成単位」とは、ビニル安息香酸若しくはビニル安息香酸誘導体のエチレン性二重結合が開裂して構成される構成単位を意味する。
「ビニル安息香酸誘導体」とは、ビニル安息香酸のα位の水素原子がアルキル基、ハロゲン化アルキル基等の他の置換基に置換されたもの、並びにそれらの誘導体を含む概念とする。それらの誘導体としては、α位の水素原子が置換基に置換されていてもよいビニル安息香酸のカルボキシ基の水素原子を有機基で置換したもの、α位の水素原子が置換基に置換されていてもよいビニル安息香酸のベンゼン環に、水酸基およびカルボキシ基以外の置換基が結合したもの、等が挙げられる。なお、α位(α位の炭素原子)とは、特に断りがない限り、ベンゼン環が結合している炭素原子のことをいう。
「スチレン誘導体」とは、スチレンのα位の水素原子がアルキル基、ハロゲン化アルキル基等の他の置換基に置換されたものを意味する。
「スチレンから誘導される構成単位」、「スチレン誘導体から誘導される構成単位」とは、スチレン又はスチレン誘導体のエチレン性二重結合が開裂して構成される構成単位を意味する。
上記α位の置換基としてのアルキル基は、直鎖状または分岐鎖状のアルキル基が好ましく、具体的には、炭素数1〜5のアルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基)等が挙げられる。
また、α位の置換基としてのハロゲン化アルキル基は、具体的には、上記「α位の置換基としてのアルキル基」の水素原子の一部または全部を、ハロゲン原子で置換した基が挙げられる。該ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、特にフッ素原子が好ましい。
また、α位の置換基としてのヒドロキシアルキル基は、具体的には、上記「α位の置換基としてのアルキル基」の水素原子の一部または全部を、水酸基で置換した基が挙げられる。該ヒドロキシアルキル基における水酸基の数は、1〜5が好ましく、1が最も好ましい。
「置換基を有していてもよい」と記載する場合、水素原子(−H)を1価の基で置換する場合と、メチレン基(−CH−)を2価の基で置換する場合の両方を含む。
「露光」は、放射線の照射全般を含む概念とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の下地剤によれば、ブロックコポリマーの相分離性能が高められ、簡便に用いることができる。
本発明の相分離構造を含む構造体の製造方法によれば、ブロックコポリマーの相分離性能が高められ、既存のリソグラフィー技術に比べて、より微細な構造体を良好な形状で形成できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明に係る、相分離構造を含む構造体の製造方法の一実施形態例を説明する概略工程図である。
図2】任意工程の一実施形態例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<下地剤>
本発明の下地剤は、基板上に形成した、疎水性ポリマーブロック(b11)と親水性ポリマーブロック(b21)とが結合したブロックコポリマーを含む層を相分離させるために用いられるものである。
かかる下地剤は、ブロックコポリマーの誘導自己組織化(DSA)技術によって微細な構造体を形成する際、基板の表面改質材料として有用である。かかる下地剤を基板上に塗布して下地剤層を設けることで、基板表面が、ブロックコポリマーを構成する疎水性ポリマーブロック(b11)又は親水性ポリマーブロック(b21)のいずれかのブロックと親和性の高いものとなり、ブロックコポリマーの相分離が促進する。
【0014】
(ブロックコポリマー)
ブロックコポリマーとは、同種の構成単位が繰り返し結合した部分構成成分(ブロック)の複数が結合した高分子化合物である。本発明におけるブロックコポリマーは、疎水性ポリマーブロック(b11)と親水性ポリマーブロック(b21)とが結合した高分子化合物である。
疎水性ポリマーブロック(b11)(以下単に「ブロック(b11)」ともいう。)とは、水との親和性が相対的に異なる複数のモノマーが用いられ、これら複数のモノマーのうち水との親和性が相対的に低い方のモノマーが重合したポリマー(疎水性ポリマー)からなるブロックをいう。親水性ポリマーブロック(b21)(以下単に「ブロック(b21)」ともいう。)とは、前記複数のモノマーのうち水との親和性が相対的に高い方のモノマーが重合したポリマー(親水性ポリマー)からなるブロックをいう。
【0015】
ブロック(b11)とブロック(b21)とは、相分離が起こる組み合わせであれば特に限定されるものではないが、互いに非相溶であるブロック同士の組み合わせであることが好ましい。
また、ブロック(b11)とブロック(b21)とは、ブロックコポリマーを構成する複数種類のブロック中の少なくとも1種類のブロックからなる相が、他の種類のブロックからなる相よりも容易に除去可能な組み合わせであることが好ましい。
ブロックコポリマーを構成するブロックの種類は、2種類であってもよく、3種類以上であってもよい。
尚、本発明におけるブロックコポリマーは、ブロック(b11)及びブロック(b21)以外の部分構成成分(ブロック)が結合していてもよい。
【0016】
ブロック(b11)、ブロック(b21)としては、例えば、スチレン又はスチレン誘導体から誘導される構成単位が繰り返し結合したブロック、α位の炭素原子に結合した水素原子が置換基で置換されていてもよいアクリル酸エステルから誘導される構成単位((α置換)アクリル酸エステルから誘導される構成単位)が繰り返し結合したブロック、α位の炭素原子に結合した水素原子が置換基で置換されていてもよいアクリル酸から誘導される構成単位((α置換)アクリル酸から誘導される構成単位)が繰り返し結合したブロック、シロキサン又はその誘導体から誘導される構成単位が繰り返し結合したブロック、アルキレンオキシドから誘導される構成単位が繰り返し結合したブロック、シルセスキオキサン構造含有構成単位が繰り返し結合したブロック等が挙げられる。
【0017】
スチレン誘導体としては、例えば、スチレンのα位の水素原子がアルキル基もしくはハロゲン化アルキル基等の置換基に置換されたもの、又はこれらの誘導体が挙げられる。前記これらの誘導体としては、α位の水素原子が置換基で置換されていてもよいスチレンのベンゼン環に置換基が結合したものが挙げられる。前記の置換基としては、例えば、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のハロゲン化アルキル基、ヒドロキシアルキル基等が挙げられる。
スチレン誘導体として具体的には、α−メチルスチレン、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、4−t−ブチルスチレン、4−n−オクチルスチレン、2,4,6−トリメチルスチレン、4−メトキシスチレン、4−t−ブトキシスチレン、4−ヒドロキシスチレン、4−ニトロスチレン、3−ニトロスチレン、4−クロロスチレン、4−フルオロスチレン、4−アセトキシビニルスチレン、4−ビニルベンジルクロリド等が挙げられる。
【0018】
(α置換)アクリル酸エステルとしては、例えば、アクリル酸エステル、α位の炭素原子に結合した水素原子が置換基で置換されたアクリル酸エステルが挙げられる。前記の置換基としては、例えば、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のハロゲン化アルキル基、ヒドロキシアルキル基等が挙げられる。
(α置換)アクリル酸エステルとして具体的には、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸ノニル、アクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸アントラセン、アクリル酸グリシジル、アクリル酸3,4−エポキシシクロヘキシルメタン、アクリル酸プロピルトリメトキシシラン等のアクリル酸エステル;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸ノニル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸アントラセン、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸3,4−エポキシシクロヘキシルメタン、メタクリル酸プロピルトリメトキシシラン等のメタクリル酸エステル等が挙げられる。
【0019】
(α置換)アクリル酸としては、例えば、アクリル酸、α位の炭素原子に結合した水素原子が置換基で置換されたアクリル酸が挙げられる。前記の置換基としては、例えば、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のハロゲン化アルキル基、ヒドロキシアルキル基等が挙げられる。
(α置換)アクリル酸として具体的には、アクリル酸、メタクリル酸等が挙げられる。
【0020】
シロキサン又はその誘導体としては、例えば、ジメチルシロキサン、ジエチルシロキサン、ジフェニルシロキサン、メチルフェニルシロキサン等が挙げられる。
アルキレンオキシドとしては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、イソプロピレンオキシド、ブチレンオキシド等が挙げられる。
シルセスキオキサン構造含有構成単位としては、かご型シルセスキオキサン構造含有構成単位が好ましい。かご型シルセスキオキサン構造含有構成単位を提供するモノマーとしては、かご型シルセスキオキサン構造と重合性基とを有する化合物が挙げられる。
【0021】
本発明におけるブロックコポリマーとしては、例えば、スチレン又はスチレン誘導体から誘導される構成単位が繰り返し結合したブロックと、(α置換)アクリル酸エステルから誘導される構成単位が繰り返し結合したブロックと、が結合した高分子化合物;スチレン又はスチレン誘導体から誘導される構成単位が繰り返し結合したブロックと、(α置換)アクリル酸から誘導される構成単位が繰り返し結合したブロックと、が結合した高分子化合物;スチレン又はスチレン誘導体から誘導される構成単位が繰り返し結合したブロックと、シロキサン又はその誘導体から誘導される構成単位が繰り返し結合したブロックと、が結合した高分子化合物;アルキレンオキシドから誘導される構成単位が繰り返し結合したブロックと、(α置換)アクリル酸エステルから誘導される構成単位が繰り返し結合したブロックと、が結合した高分子化合物;アルキレンオキシドから誘導される構成単位が繰り返し結合したブロックと、(α置換)アクリル酸から誘導される構成単位が繰り返し結合したブロックと、が結合した高分子化合物;かご型シルセスキオキサン構造含有構成単位が繰り返し結合したブロックと、(α置換)アクリル酸エステルから誘導される構成単位が繰り返し結合したブロックと、が結合した高分子化合物;かご型シルセスキオキサン構造含有構成単位が繰り返し結合したブロックと、(α置換)アクリル酸から誘導される構成単位が繰り返し結合したブロックと、が結合した高分子化合物;かご型シルセスキオキサン構造含有構成単位が繰り返し結合したブロックと、シロキサン又はその誘導体から誘導される構成単位が繰り返し結合したブロックと、が結合した高分子化合物等が挙げられる。
【0022】
上記の中でも、ブロックコポリマーとしては、スチレン又はスチレン誘導体から誘導される構成単位が繰り返し結合したブロックと、(α置換)アクリル酸エステルから誘導される構成単位が繰り返し結合したブロックと、が結合した高分子化合物;スチレン又はスチレン誘導体から誘導される構成単位が繰り返し結合したブロックと、(α置換)アクリル酸から誘導される構成単位が繰り返し結合したブロックと、が結合した高分子化合物が好ましく、スチレン又はスチレン誘導体から誘導される構成単位が繰り返し結合したブロックと、(α置換)アクリル酸エステルから誘導される構成単位が繰り返し結合したブロックと、が結合した高分子化合物がより好ましく、スチレン又はスチレン誘導体から誘導される構成単位が繰り返し結合したブロックと、(メタ)アクリル酸エステルから誘導される構成単位が繰り返し結合したブロックと、が結合した高分子化合物がさらに好ましい。
具体的には、ポリスチレン−ポリメチルメタクリレート(PS−PMMA)ブロックコポリマー、ポリスチレン−ポリエチルメタクリレートブロックコポリマー、ポリスチレン−(ポリ−t−ブチルメタクリレート)ブロックコポリマー、ポリスチレン−ポリメタクリル酸ブロックコポリマー、ポリスチレン−ポリメチルアクリレートブロックコポリマー、ポリスチレン−ポリエチルアクリレートブロックコポリマー、ポリスチレン−(ポリ−t−ブチルアクリレート)ブロックコポリマー、ポリスチレン−ポリアクリル酸ブロックコポリマー等が挙げられる。これらの中でも、PS−PMMAブロックコポリマーが特に好ましい。
【0023】
ブロックコポリマーを構成する各ポリマーの質量平均分子量(Mw)(ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるポリスチレン換算基準)は、相分離を起こすことが可能な大きさであれば特に限定されるものではないが、5000〜500000が好ましく、5000〜400000がより好ましく、5000〜300000がさらに好ましい。
【0024】
ブロックコポリマーのMwは、相分離を起こすことが可能な大きさであれば特に限定されるものではないが、5000〜100000が好ましく、20000〜60000がより好ましく、30000〜50000がさらに好ましい。
ブロックコポリマーの分子量分散度(Mw/Mn)は、1.0〜3.0が好ましく、1.0〜1.5がより好ましく、1.0〜1.2がさらに好ましい。尚、Mnは数平均分子量を示す。
ブロックコポリマーの周期(ブロックコポリマーの分子1つ分の長さ)は、5〜50nmが好ましく、10〜40nmがより好ましく、20〜30nmがさらに好ましい。
【0025】
≪樹脂成分(A)≫
本発明の第一の態様である下地剤は、樹脂成分(以下「樹脂成分(A)」又は「(A)成分」ということがある。)を含有する。
樹脂成分(A)は、疎水性ポリマーブロック(b12)の構成単位、又は親水性ポリマーブロック(b22)の構成単位を有し、かつ、主鎖の少なくとも一つの末端部にカルボキシ基を有する。
【0026】
疎水性ポリマーブロック(b12)(以下単に「ブロック(b12)」ともいう。)は、上記のブロックコポリマーを構成する親水性ポリマーブロック(b21)の構成単位を提供するモノマーに比べて、水との親和性が相対的に低いモノマーが重合したポリマー(疎水性ポリマー)からなるブロックである。ブロック(b12)の構成単位と上記ブロック(b11)の構成単位とは、その構造が同一であってもよく異なっていてもよい。中でも、下地剤層を介して基板とブロックコポリマーを含む層との密着性がより強まることから、ブロック(b12)の構成単位とブロック(b11)の構成単位とは、その構造が同一であることが好ましい。
親水性ポリマーブロック(b22)(以下単に「ブロック(b22)」ともいう。)は、上記のブロックコポリマーを構成する疎水性ポリマーブロック(b11)の構成単位を提供するモノマーに比べて、水との親和性が相対的に高いモノマーが重合したポリマー(親水性ポリマー)からなるブロックである。ブロック(b22)の構成単位と上記ブロック(b21)の構成単位とは、その構造が同一であってもよく異なっていてもよい。中でも、下地剤層を介して基板とブロックコポリマーを含む層との密着性がより強まることから、ブロック(b22)の構成単位とブロック(b21)の構成単位とは、その構造が同一であることが好ましい。
【0027】
ブロック(b12)、ブロック(b22)としては、例えば、スチレン又はスチレン誘導体から誘導される構成単位が繰り返し結合したブロック、(α置換)アクリル酸エステルから誘導される構成単位が繰り返し結合したブロック、(α置換)アクリル酸から誘導される構成単位が繰り返し結合したブロック、シロキサン又はその誘導体から誘導される構成単位が繰り返し結合したブロック、アルキレンオキシドから誘導される構成単位が繰り返し結合したブロック、シルセスキオキサン構造含有構成単位が繰り返し結合したブロック等が挙げられる。
ブロック(b12)及びブロック(b22)におけるスチレン又はスチレン誘導体、(α置換)アクリル酸エステル、(α置換)アクリル酸、シロキサン又はその誘導体、アルキレンオキシド、シルセスキオキサン構造含有構成単位を提供するモノマーとしては、上述したブロック(b11)、ブロック(b21)についての説明の中で例示した化合物と同様のものがそれぞれ挙げられる。
【0028】
(A)成分が有するカルボキシ基は、(A)成分に含まれる1種以上の高分子化合物の主鎖の少なくとも一つの末端部に結合している。
好ましい(A)成分としては、例えば、疎水性ポリマーブロック(b12)の構成単位を有し、かつ、主鎖の少なくとも一つの末端部にカルボキシ基を有する高分子化合物(以下「(A1)成分」という。);親水性ポリマーブロック(b22)の構成単位を有し、かつ、主鎖の少なくとも一つの末端部にカルボキシ基を有する高分子化合物(以下「(A2)成分」という。)が挙げられる。
本発明においては、(A1)成分又は(A2)成分のいずれであっても本発明の効果を奏することができるが、入手が容易である観点から、(A1)成分を好適に採用できる。
【0029】
[(A1)成分]
(A1)成分は、疎水性ポリマーブロック(b12)の構成単位を有し、かつ、主鎖の少なくとも一つの末端部(主鎖末端部)にカルボキシ基を有する高分子化合物である。
ブロック(b12)の構成単位としては、下地剤層の表面がより安定化しやすいことから、スチレン又はスチレン誘導体から誘導される構成単位が好ましい。即ち、置換基を有してもよいスチレン骨格を含む構成単位(u1)がより好ましい。
【0030】
・構成単位(u1)について
構成単位(u1)は、置換基を有してもよいスチレン骨格を含む構成単位である。
置換基を有するスチレン骨格とは、スチレンのα位もしくはベンゼン環の水素原子の一部又は全部が置換基で置換されているものをいう。
構成単位(u1)における置換基としては、ハロゲン原子、又は酸素原子、ハロゲン原子若しくはケイ素原子を含んでいてもよい炭素数1〜20の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状又はこれらの組み合わせによる炭化水素基が挙げられる。
【0031】
構成単位(u1)における置換基について、ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられ、フッ素原子、塩素原子、臭素原子が好ましく、フッ素原子がより好ましい。
【0032】
構成単位(u1)における置換基について、炭化水素基は、炭素数が1〜20である。加えて、かかる炭化水素基は、直鎖状、分岐鎖状若しくは環状又はこれらの組み合わせによる炭化水素基であり、酸素原子、ハロゲン原子若しくはケイ素原子を含んでいてもよい。
かかる炭化水素基としては、例えば直鎖状、分岐鎖状若しくは環状のアルキル基、又はアリール基が挙げられる。
【0033】
かかる炭化水素基としてのアルキル基は、好ましくは炭素数が1〜10であり、より好ましくは炭素数が1〜8であり、さらに好ましくは炭素数が1〜6である。
ここでのアルキル基は、部分的又は完全にハロゲン化されたアルキル基(ハロゲン化アルキル基)、アルキル基を構成する炭素原子がケイ素原子もしくは酸素原子に置換されているアルキルシリル基、アルキルシリルオキシ基又はアルコキシ基であってもよい。
部分的にハロゲン化されたアルキル基とは、アルキル基に結合する水素原子の一部がハロゲン原子で置換されたアルキル基を意味し、完全にハロゲン化されたアルキル基とは、アルキル基に結合する水素原子の全部がハロゲン原子で置換されたアルキル基を意味する。ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられ、フッ素原子、塩素原子、臭素原子が好ましく、フッ素原子がより好ましい(すなわち、フッ素化アルキル基が好ましい)。
前記のアルキルシリル基としては、トリアルキルシリル基又はトリアルキルシリルアルキル基が好ましく、例えばトリメチルシリル基、トリメチルシリルメチル基、トリメチルシリルエチル基、トリメチルシリル−n−プロピル基等が好適に挙げられる。
前記のアルキルシリルオキシ基としては、トリアルキルシリルオキシ基又はトリアルキルシリルオキシアルキル基が好ましく、例えばトリメチルシリルオキシ基、トリメチルシリルオキシメチル基、トリメチルシリルオキシエチル基、トリメチルシリルオキシ−n−プロピル基等が好適に挙げられる。
前記のアルコキシ基としては、好ましくは炭素数が1〜10であり、より好ましくは炭素数が1〜8であり、さらに好ましくは炭素数が1〜6である。
【0034】
かかる炭化水素基としてのアリール基は、炭素数が4〜20であり、好ましくは炭素数が4〜10であり、より好ましくは炭素数が6〜10である。
【0035】
構成単位(u1)の好ましいものとしては、例えば、下記一般式(u1−1)で表される構成単位が挙げられる。
【0036】
【化1】
[式中、Rは、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基又は炭素数1〜5のハロゲン化アルキル基である。Rは、ハロゲン原子、又は酸素原子、ハロゲン原子若しくはケイ素原子を含んでいてもよい炭素数1〜20の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状又はこれらの組み合わせによる炭化水素基である。pは、0〜5の整数である。]
【0037】
前記式(u1−1)中、Rは、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基又は炭素数1〜5のハロゲン化アルキル基である。
Rにおける炭素数1〜5のアルキル基は、炭素数1〜5の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基が好ましく、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基等が挙げられる。
Rにおける炭素数1〜5のハロゲン化アルキル基は、前記炭素数1〜5のアルキル基の水素原子の一部又は全部がハロゲン原子で置換された基である。該ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、特にフッ素原子が好ましい。
Rとしては、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のフッ素化アルキル基が好ましく、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基がより好ましく、水素原子、メチル基がさらに好ましく、水素原子が特に好ましい。
【0038】
前記式(u1−1)中、Rは、ハロゲン原子、又は酸素原子、ハロゲン原子若しくはケイ素原子を含んでいてもよい炭素数1〜20の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状又はこれらの組み合わせによる炭化水素基である。
構成単位(u1)において、ベンゼン環に、置換基として前記Rが結合していることにより、下地剤層表面の自由エネルギーが調節され、該下地剤層上に形成されるブロックコポリマーを含む層が垂直シリンダーパターン等に良好に相分離し得る。
前記式(u1−1)中のRは、上述した構成単位(u1)における置換基(ハロゲン原子、又は酸素原子、ハロゲン原子若しくはケイ素原子を含んでいてもよい炭素数1〜20の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状又はこれらの組み合わせによる炭化水素基)についての説明と同様である。
これらの中でも、Rとしては、下地剤層上に形成されるブロックコポリマーを含む層が良好に相分離し得ることから、酸素原子、ハロゲン原子若しくはケイ素原子を含んでいてもよい炭素数1〜20の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状又はこれらの組み合わせによる炭化水素基が好ましい。
その中でも、酸素原子若しくはハロゲン原子を含んでいてもよい炭素数1〜20のアルキル基がより好ましく、
炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のハロゲン化アルキル基又は炭素数1〜6のアルコキシ基がさらに好ましく、
炭素数1〜6のアルキル基が特に好ましい。
【0039】
におけるアルキル基の炭素数は、1〜6が好ましく、3〜6がより好ましく、3又は4がさらに好ましく、4が特に好ましい。Rにおけるアルキル基としては、直鎖状のアルキル基、分岐鎖状のアルキル基が好ましく、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基が好適に挙げられ、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基がより好ましく、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基がさらに好ましく、tert−ブチル基が特に好ましい。
におけるハロゲン化アルキル基は、前記のRにおけるアルキル基の水素原子の一部又は全部を、ハロゲン原子で置換した基が挙げられる。このハロゲン原子としては、特にフッ素原子が好ましい。Rにおけるハロゲン化アルキル基の炭素数は、1〜6が好ましく、3〜6がより好ましく、3又は4がさらに好ましい。
におけるアルコキシ基の炭素数は、1〜6が好ましく、1〜4がより好ましく、2が特に好ましい。Rにおけるアルコキシ基としては、直鎖状のアルコキシ基、分岐鎖状のアルコキシ基が好ましく、例えばメトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、t−ブトキシ基が好適に挙げられ、エトキシ基が特に好ましい。
【0040】
前記式(u1−1)中、pは、0〜5の整数であり、0〜3の整数が好ましく、0〜2の整数がより好ましく、0又は1がさらに好ましく、1が特に好ましい。
【0041】
前記式(u1−1)中、ベンゼン環におけるRの結合位置は、ブロックコポリマーを含む層の相分離性能がより高まることから、パラ位が好ましい。
【0042】
以下に、ブロック(b12)の構成単位の具体例を挙げる。式中、Rαは、水素原子又はメチル基である。
【0043】
【化2】
【0044】
【化3】
【0045】
【化4】
【0046】
【化5】
【0047】
(A1)成分が有するブロック(b12)の構成単位は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
ブロック(b12)の構成単位は、構成単位(u1)を含有することが好ましい。
かかる構成単位(u1)としては、化学式(u1−1−1)〜(u1−1−22)でそれぞれ表される構成単位からなる群より選択される少なくとも一種が好ましく、化学式(u1−1−1)〜(u1−1−14)でそれぞれ表される構成単位からなる群より選択される少なくとも一種がより好ましく、化学式(u1−1−1)〜(u1−1−11)でそれぞれ表される構成単位からなる群より選択される少なくとも一種がさらに好ましく、化学式(u1−1−1)〜(u1−1−6)、(u1−1−11)でそれぞれ表される構成単位からなる群より選択される少なくとも一種が特に好ましく、化学式(u1−1−1)〜(u1−1−3)、(u1−1−11)でそれぞれ表される構成単位からなる群より選択される少なくとも一種が最も好ましい。
【0048】
(A1)成分中、ブロック(b12)の構成単位の割合は、該(A1)成分を構成する全構成単位の合計に対して25モル%以上が好ましく、50モル%以上がより好ましく、75〜100モル%であることがさらに好ましい。
ブロック(b12)の構成単位の割合が好ましい下限値以上であれば、下地剤層の表面がより安定化し、下地剤層上に形成されるブロックコポリマーを含む層が良好に相分離し得る。
【0049】
(A1)成分は、少なくとも一つの主鎖末端部にカルボキシ基を有する。
主鎖末端部が有するカルボキシ基の数は、下地剤層上に形成されるブロックコポリマーを含む層の相分離性能がより高められることから、1〜3が好ましく、1又は2がより好ましく、1が特に好ましい。
以下に、カルボキシ基を有する主鎖末端部の具体例を挙げる。尚、化学式中の「*」は結合手であることを示す。
【0050】
【化6】
【0051】
・任意の構成単位(構成単位(u3))について
(A1)成分は、本発明の効果を損なわない範囲で、ブロック(b12)の構成単位以外に、任意の構成単位(構成単位(u3))を有してもよい。構成単位(u3)としては、例えば、構成単位(u1)を提供するモノマーと共重合可能なモノマーから誘導される構成単位が挙げられる。
(A1)成分が構成単位(u3)を有する場合、(A1)成分中、構成単位(u3)の割合は、該(A1)成分を構成する全構成単位の合計に対して、0モル超25モル%以下が好ましい。
【0052】
上記の中でも、(A1)成分としては、下地剤層上に形成されるブロックコポリマーを含む層の相分離性能がより高められることから、前記構成単位(u1)を有し、かつ、主鎖のいずれか一つの末端部のみにカルボキシ基を有する高分子化合物が好ましく、この中でも、構成単位(u1)を有し、かつ、主鎖にカルボキシ基が結合した高分子化合物が特に好ましい。
【0053】
(A1)成分の好ましいものとしては、下記一般式(A1−1)で表される高分子化合物が挙げられる。尚、化学式中の「x」は、構成単位の繰り返し数を示す(以下同じ)。
【0054】
【化7】
[式中、Rは、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基又は炭素数1〜5のハロゲン化アルキル基である。R10及びR20は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜5の炭化水素基、又はカルボキシ基を有する炭素数1〜5の炭化水素基である。但し、R10及びR20の少なくとも一方は、カルボキシ基を有する炭素数1〜5の炭化水素基である。R及びpは、前記式(u1−1)におけるR及びpとそれぞれ同様である。]
【0055】
前記式(A1−1)中、Rは、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基又は炭素数1〜5のハロゲン化アルキル基である。前記式(A1−1)中のRは、上述の前記式(u1−1)中のRと同様である。
Rとしては、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のフッ素化アルキル基が好ましく、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基がより好ましく、水素原子、メチル基がさらに好ましく、水素原子が特に好ましい。
【0056】
前記式(A1−1)中、R10及びR20における炭化水素基は、それぞれ、脂肪族炭化水素基であってもよく、芳香族炭化水素基であってもよい。
10及びR20における脂肪族炭化水素基は、飽和であってもよく、不飽和であってもよく、飽和であることが好ましい。該脂肪族炭化水素基としては、直鎖状もしくは分岐鎖状の脂肪族炭化水素基、又は、構造中に環を含む脂肪族炭化水素基等が挙げられ、中でも、直鎖状もしくは分岐鎖状の脂肪族炭化水素基が好ましい。これらの中でも、直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基が好ましく、炭素数1〜5の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基がより好ましい。
10及びR20における芳香族炭化水素基は、芳香環を有する炭化水素基である。該芳香環は、(4n+2)個のπ電子をもつ環状共役系であれば特に限定されず、単環式でも多環式でもよい。芳香環の炭素数は5〜30であることが好ましく、5〜20がより好ましく、6〜15がさらに好ましく、6〜12が特に好ましい。芳香環として具体的には、ベンゼン、ナフタレン等が挙げられる。R10及びR20における芳香族炭化水素基としては、前記の芳香環から水素原子を1つ以上除いた基、2以上の芳香環を含む芳香族化合物(たとえばビフェニル、フルオレン等)から水素原子を1つ以上除いた基、前記の芳香環もしくは芳香族化合物の水素原子の1つがアルキレン基で置換された基(たとえば、ベンジル基、フェネチル基、1−ナフチルメチル基、2−ナフチルメチル基、1−ナフチルエチル基、2−ナフチルエチル基等のアリールアルキル基など)、又は、前記の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基の水素原子の1つ以上が芳香環で置換された基等が挙げられる。前記の芳香環もしくは芳香族化合物に結合するアルキレン基の炭素数は、1〜4であることが好ましく、1〜2であることがより好ましく、1であることが特に好ましい。
【0057】
前記式(A1−1)中、R10及びR20の少なくとも一方において、炭化水素基が有するカルボキシ基の数は、下地剤層上に形成されるブロックコポリマーを含む層の相分離性能がより高められることから、1〜3が好ましく、1又は2がより好ましく、1が特に好ましい。
【0058】
以下に(A1)成分の具体例を挙げる。式中、Rαは、水素原子又はメチル基である。化学式(A1−1−5)中のR21は、水素原子又は炭素数1〜5の炭化水素基である。化学式(A1−1−6)中のR22は、水素原子又は炭素数1〜5の炭化水素基である。
【0059】
【化8】
【0060】
【化9】
【0061】
上記の中でも、(A1)成分は、
化学式(A1−1−1)〜(A1−1−6)でそれぞれ表される高分子化合物からなる群より選択される少なくとも一種が好ましく、
化学式(A1−1−1)〜(A1−1−4)でそれぞれ表される高分子化合物からなる群より選択される少なくとも一種がより好ましい。
【0062】
(A)成分としては、下地剤層上に形成されるブロックコポリマーを含む層がより良好に相分離し得ることから、上述の化学式(A1−1−1)で表される高分子化合物(以下「(A1−1−1)成分」という。)と化学式(A1−1−3)で表される高分子化合物(以下「(A1−1−3)成分」という。)とを併有することも好ましい。
(A1−1−1)成分と(A1−1−3)成分とを併有する場合、両者の比率(質量比)は、(A1)成分/(A2)成分=10/90〜90/10が好ましく、15/85〜85/15がより好ましい。かかる比率(質量比)が前記の好ましい範囲内であれば、下地剤層の表面がより安定化し、下地剤層上に形成されるブロックコポリマーを含む層が良好に相分離し得る。
【0063】
(A)成分中の(A1)成分の含有量は、好ましくは15質量%以上であり、より好ましくは50質量%以上であり、100質量%であってもよい。
かかる(A1)成分の含有量が、前記の好ましい下限値以上であれば、下地剤層の表面がより安定化し、下地剤層上に形成されるブロックコポリマーを含む層が良好に相分離しやすくなる。
【0064】
[(A2)成分]
(A2)成分は、親水性ポリマーブロック(b22)の構成単位を有し、かつ、主鎖の少なくとも一つの末端部にカルボキシ基(−COOH)を有する高分子化合物である。
ブロック(b22)の構成単位としては、下地剤層の表面がより安定化しやすいことから、(α置換)アクリル酸エステルから誘導される構成単位、又は(α置換)アクリル酸から誘導される構成単位(すなわち、α位の炭素原子に結合した水素原子が置換基で置換されていてもよいアクリル酸又はそのエステルから誘導される構成単位(u2))が好ましい。
【0065】
・構成単位(u2)について
構成単位(u2)は、α位の炭素原子に結合した水素原子が置換基で置換されていてもよいアクリル酸又はそのエステルから誘導される構成単位である。
構成単位(u2)の好ましいものとしては、例えば、下記一般式(u2−1)で表される構成単位が挙げられる。
【0066】
【化10】
[式中、Rは、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基又は炭素数1〜5のハロゲン化アルキル基である。Rは、炭素数1〜20の直鎖状若しくは分岐鎖状のヒドロキシアルキル基である。]
【0067】
前記式(u2−1)中、Rは、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基又は炭素数1〜5のハロゲン化アルキル基である。前記式(u2−1)中のRは、上述の前記式(u1−1)中のRと同様である。
Rとしては、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のフッ素化アルキル基が好ましく、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基がより好ましく、水素原子、メチル基がさらに好ましく、水素原子が特に好ましい。
【0068】
前記式(u2−1)中、Rは、炭素数1〜20の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基、又は炭素数1〜20の直鎖状若しくは分岐鎖状のヒドロキシアルキル基である。
におけるヒドロキシアルキル基は、炭素数が1〜20であり、好ましくは炭素数が1〜10であり、より好ましくは炭素数が1〜8であり、さらに好ましくは炭素数が1〜6であり、特に好ましくは炭素数が1〜4であるアルキル基の水素原子の一部又は全部を、ヒドロキシ基で置換した基が挙げられる。ヒドロキシ基の数は、好ましくは1〜3あり、より好ましくは1又は2である。
におけるヒドロキシアルキル基は、直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよい。
【0069】
以下に、ブロック(b22)の構成単位の具体例を挙げる。式中、Rαは、水素原子又はメチル基である。
【0070】
【化11】
【0071】
(A2)成分が有するブロック(b22)の構成単位は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
ブロック(b22)の構成単位は、構成単位(u2)を含有することが好ましい。
かかる構成単位(u2)としては、化学式(u2−1−1)〜(u2−1−3)でそれぞれ表される構成単位からなる群より選択される少なくとも一種が好ましく、化学式(u2−1−1)で表される構成単位が特に好ましい。
【0072】
(A2)成分中、ブロック(b22)の構成単位の割合は、該(A2)成分を構成する全構成単位の合計に対して25モル%以上が好ましく、50モル%以上がより好ましく、75〜100モル%であることがさらに好ましい。
ブロック(b22)の構成単位の割合が好ましい下限値以上であれば、下地剤層の表面がより安定化し、下地剤層上に形成されるブロックコポリマーを含む層が良好に相分離し得る。
【0073】
(A2)成分は、少なくとも一つの主鎖末端部にカルボキシ基(−COOH)を有する。
主鎖末端部が有するカルボキシ基の数は、下地剤層上に形成されるブロックコポリマーを含む層の相分離性能がより高められることから、1〜3が好ましく、1又は2がより好ましく、1が特に好ましい。
カルボキシ基を有する主鎖末端部としては、例えば上記の化学式(mc−1)、(mc−2)、(mc−3)でそれぞれ表される基が挙げられる。
【0074】
・任意の構成単位(構成単位(u4))について
(A2)成分は、本発明の効果を損なわない範囲で、ブロック(b22)の構成単位以外に、任意の構成単位(構成単位(u4))を有してもよい。構成単位(u4)としては、例えば、構成単位(u2)を提供するモノマーと共重合可能なモノマーから誘導される構成単位が挙げられる。
(A2)成分が構成単位(u4)を有する場合、(A2)成分中、構成単位(u4)の割合は、該(A2)成分を構成する全構成単位の合計に対して、0モル超25モル%以下が好ましい。
【0075】
上記の中でも、(A2)成分としては、下地剤層上に形成されるブロックコポリマーを含む層の相分離性能がより高められることから、前記構成単位(u2)を有し、かつ、主鎖のいずれか一つの末端部のみにカルボキシ基を有する高分子化合物が好ましく、この中でも、構成単位(u2)を有し、かつ、主鎖にカルボキシ基が結合した高分子化合物が特に好ましい。
【0076】
(A2)成分の好ましいものとしては、下記一般式(A2−1)で表される高分子化合物が挙げられる。
【0077】
【化12】
[式中、Rは、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基又は炭素数1〜5のハロゲン化アルキル基である。R30及びR40は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜5の炭化水素基、又はカルボキシ基を有する炭素数1〜5の炭化水素基である。但し、R30及びR40の少なくとも一方は、カルボキシ基を有する炭素数1〜5の炭化水素基である。Rは、前記式(u2−1)におけるRと同様である。]
【0078】
前記式(A2−1)中、Rは、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基又は炭素数1〜5のハロゲン化アルキル基である。前記式(A2−1)中のRは、上述の前記式(u2−1)中のRと同様である。
Rとしては、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のフッ素化アルキル基が好ましく、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基がより好ましく、水素原子、メチル基がさらに好ましく、水素原子が特に好ましい。
前記式(A2−1)中、R30及びR40は、前記式(A1−1)におけるR10及びR20とそれぞれ同様のものが挙げられる。
【0079】
以下に(A2)成分の具体例を挙げる。式中、Rαは、水素原子又はメチル基である。化学式(A2−0−1)中のR41は、水素原子又は炭素数1〜5の炭化水素基である。
【0080】
【化13】
【0081】
上記の中でも、(A2)成分は、
化学式(A2−1−1)、(A2−1−2)でそれぞれ表される高分子化合物からなる群より選択される少なくとも一種が好ましく、化学式(A2−1−1)で表される高分子化合物がより好ましい。
(A)成分中の(A2)成分の含有量は、好ましくは15質量%以上であり、より好ましくは50質量%以上であり、100質量%であってもよい。かかる(A2)成分の含有量が、前記の好ましい下限値以上であれば、下地剤層の表面がより安定化し、下地剤層上に形成されるブロックコポリマーを含む層が良好に相分離しやすくなる。
【0082】
本発明に係る下地剤において、(A)成分は、1種の高分子化合物を単独で用いてもよく、2種以上の高分子化合物を併用してもよい。
かかる(A)成分としては、上述の(A1)成分及び(A2)成分からなる群より選択される少なくとも一種の高分子化合物を含有することが好ましい。
【0083】
(A)成分は、疎水性ポリマーブロック(b12)の構成単位、又は親水性ポリマーブロック(b22)の構成単位と、主鎖の少なくとも一つの末端部にカルボキシ基と、を有するものであれば、上述の(A1)成分又は(A2)成分以外の高分子化合物を含有してもよい。
【0084】
(A)成分の質量平均分子量(Mw)(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算基準)は、特に限定されるものではなく、1000〜200000が好ましく、1500〜200000がより好ましく、2000〜150000がさらに好ましい。
この好ましい範囲の上限値以下であると、後述の有機溶剤に充分に溶解するため、基板への塗布性に優れる。一方、この好ましい範囲の下限値以上であると、高分子化合物の製造安定性に優れ、かつ、基板への塗布性に優れた下地剤組成物となる。
(A)成分の分子量分散度(Mw/Mn)は、特に限定されず、1.0〜5.0が好ましく、1.0〜3.0がより好ましく、1.0〜2.5がさらに好ましい。尚、Mnは数平均分子量を示す。
【0085】
(A)成分は、各構成単位を誘導するモノマーを、例えばアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)のようなラジカル重合開始剤を用いた公知のラジカル重合等によって重合させることによって得ることができる。また、(A)成分には、上記重合の際に、例えばCH−CH−CH(CH)−Liのような開始剤を用いてもよい。
さらに、(A)成分には、上記重合の際に、例えばイソブチレンスルフィドのような末端修飾剤を用いてもよい。
各構成単位を誘導するモノマーは、市販のものを用いてもよく、公知の方法を利用して合成したものを用いてもよい。
【0086】
本発明に係る下地剤中、(A)成分の含有量は、下地剤層の所望の膜厚等に応じて適宜調整すればよい。
本発明に係る下地剤中、(A)成分の含有量は、固形分全体に対して70質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、95質量%以上であることがさらに好ましい。
【0087】
≪任意成分≫
本発明に係る下地剤は、上述した(A)成分に加えて、該(A)成分以外の成分(任意成分)をさらに含有してもよい。
【0088】
・酸発生剤成分(B)について
本発明に係る下地剤は、さらに、酸発生剤成分(B)(以下「(B)成分」ともいう。)を含有してもよい。(B)成分は、加熱や露光により酸を発生するものである。(B)成分は、そのもの自体が酸性を有している必要はなく、熱又は光などにより分解し、酸として機能するものであればよい。
【0089】
(B)成分は、特に限定されず、これまでフォトリソグラフィーで用いられている化学増幅型レジスト用の酸発生剤成分を用いることができる。
このような酸発生剤成分としては、加熱により酸を発生する熱酸発生剤、露光により酸を発生する光酸発生剤などが挙げられる。例えば、ヨードニウム塩やスルホニウム塩などのオニウム塩系酸発生剤、オキシムスルホネート系酸発生剤、ビスアルキルまたはビスアリールスルホニルジアゾメタン類、ポリ(ビススルホニル)ジアゾメタン類などのジアゾメタン系酸発生剤、ニトロベンジルスルホネート系酸発生剤、イミノスルホネート系酸発生剤、ジスルホン系酸発生剤など多種のものが知られている。
尚、「加熱により酸を発生する熱酸発生剤」とは、具体的には200℃以下の加熱により酸を発生する成分を意味する。加熱温度が200℃以下であれば、酸の発生の制御が容易となる。好ましくは50〜150℃の加熱により酸を発生する成分が用いられる。好ましい加熱温度が50℃以上であれば、下地剤中での安定性が良好となる。
【0090】
(B)成分のオニウム塩系酸発生剤としては、アニオン部に、スルホン酸アニオン、カルボン酸アニオン、スルホニルイミドアニオン、ビス(アルキルスルホニル)イミドアニオン、トリス(アルキルスルホニル)メチドアニオン、及びフッ素化アンチモン酸イオンからなる群より選択される少なくとも一種のアニオン基を有するものが好ましい。
【0091】
また、(B)成分のオニウム塩系酸発生剤のカチオン部には、下記一般式(b−c1)又は一般式(b−c2)で表されるカチオンが挙げられる。
【0092】
【化14】
[式中、R”〜R”,R”〜R”はそれぞれ独立に置換基を有していてもよいアリール基、アルキル基又はアルケニル基を表す。式(b−c1)におけるR”〜R”のうち、いずれか二つが相互に結合して式中のイオウ原子と共に環を形成してもよい。]
【0093】
式(b−c1)中、R”〜R”は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよいアリール基、アルキル基又はアルケニル基を表す。R”〜R”のうち、いずれか二つが相互に結合して式中のイオウ原子と共に環を形成してもよい。
【0094】
”〜R”のアリール基としては、炭素数6〜20の無置換のアリール基;該無置換のアリール基の水素原子の一部または全部がアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、水酸基、オキソ基(=O)、アリール基、アルコキシアルキルオキシ基、アルコキシカルボニルアルキルオキシ基、−C(=O)−O−R’、−O−C(=O)−R’、−O−R’等で置換された置換アリール基等が挙げられる。R’、R’、R’は、それぞれ、炭素数1〜25の直鎖状、分岐鎖状若しくは炭素数3〜20の環状の飽和炭化水素基、又は、炭素数2〜5の直鎖状若しくは分岐鎖状の脂肪族不飽和炭化水素基である。
【0095】
”〜R”において、無置換のアリール基としては、安価に合成可能なことから、炭素数6〜10のアリール基が好ましい。具体的には、たとえばフェニル基、ナフチル基が挙げられる。
【0096】
”〜R”の置換アリール基における置換基としてのアルキル基としては、炭素数1〜5のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基であることがより好ましい。
置換アリール基における置換基としてのアルコキシ基としては、炭素数1〜5のアルコキシ基が好ましく、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、iso−プロポキシ基、n−ブトキシ基、tert−ブトキシ基であることがより好ましい。
置換アリール基における置換基としてのハロゲン原子としては、フッ素原子が好ましい。
置換アリール基における置換基としてのアリール基としては、前記R”〜R”のアリール基と同様のものが挙げられる。
【0097】
置換アリール基におけるアルコキシアルキルオキシ基としては、たとえば、
一般式:−O−C(R47)(R48)−O−R49
[式中、R47、R48は、それぞれ独立して、水素原子、または直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基であり、R49はアルキル基である。]で表される基が挙げられる。
47、R48において、アルキル基の炭素数は、好ましくは1〜5であり、直鎖状、分岐鎖状のいずれでもよく、エチル基、メチル基が好ましく、メチル基が最も好ましい。
47、R48は、少なくとも一方が水素原子であることが好ましい。特に、一方が水素原子であり、他方が水素原子またはメチル基であることがより好ましい。
49のアルキル基としては、好ましくは炭素数が1〜15であり、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれであってもよい。
49における直鎖状、分岐鎖状のアルキル基としては、炭素数が1〜5であることが好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基などが挙げられる。
49における環状のアルキル基としては、炭素数4〜15であることが好ましく、炭素数4〜12であることがさらに好ましく、炭素数5〜10が最も好ましい。具体的には炭素数1〜5のアルキル基、フッ素原子またはフッ素化アルキル基で置換されていてもよいし、されていなくてもよいモノシクロアルカン、ビシクロアルカン、トリシクロアルカン、テトラシクロアルカンなどのポリシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基などが挙げられる。モノシクロアルカンとしては、シクロペンタン、シクロヘキサン等が挙げられる。ポリシクロアルカンとしては、アダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカン等が挙げられる。中でもアダマンタンから1個以上の水素原子を除いた基が好ましい。
【0098】
置換アリール基におけるアルコキシカルボニルアルキルオキシ基としては、たとえば、
一般式:−O−R50−C(=O)−O−R56
[式中、R50は直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキレン基であり、R56は第3級アルキル基である。]で表される基が挙げられる。
50における直鎖状、分岐鎖状のアルキレン基としては、炭素数が1〜5であることが好ましく、例えば、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、1,1−ジメチルエチレン基などが挙げられる。
56における第3級アルキル基としては、2−メチル−2−アダマンチル基、2−エチル−2−アダマンチル基、1−メチル−1−シクロペンチル基、1−エチル−1−シクロペンチル基、1−メチル−1−シクロヘキシル基、1−エチル−1−シクロヘキシル基、1−(1−アダマンチル)−1−メチルエチル基、1−(1−アダマンチル)−1−メチルプロピル基、1−(1−アダマンチル)−1−メチルブチル基、1−(1−アダマンチル)−1−メチルペンチル基;1−(1−シクロペンチル)−1−メチルエチル基、1−(1−シクロペンチル)−1−メチルプロピル基、1−(1−シクロペンチル)−1−メチルブチル基、1−(1−シクロペンチル)−1−メチルペンチル基;1−(1−シクロヘキシル)−1−メチルエチル基、1−(1−シクロヘキシル)−1−メチルプロピル基、1−(1−シクロヘキシル)−1−メチルブチル基、1−(1−シクロヘキシル)−1−メチルペンチル基、tert−ブチル基、tert−ペンチル基、tert−ヘキシル基などが挙げられる。
【0099】
さらに、前記一般式:−O−R50−C(=O)−O−R56におけるR56を、R56’で置き換えた基も挙げられる。R56’は、水素原子、アルキル基、フッ素化アルキル基、又はヘテロ原子を含んでいてもよい脂肪族環式基である。
56’におけるアルキル基は、前記R49のアルキル基と同様のものが挙げられる。
56’におけるフッ素化アルキル基は、前記R49のアルキル基中の水素原子の一部又は全部がフッ素原子で置換された基が挙げられる。
56’における、ヘテロ原子を含んでいてもよい脂肪族環式基としては、ヘテロ原子を含まない脂肪族環式基、環構造中にヘテロ原子を含む脂肪族環式基、脂肪族環式基中の水素原子がヘテロ原子に置換されたもの等が挙げられる。
56’について、ヘテロ原子を含まない脂肪族環式基としては、モノシクロアルカン、ビシクロアルカン、トリシクロアルカン、テトラシクロアルカンなどのポリシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基などが挙げられる。モノシクロアルカンとしては、シクロペンタン、シクロヘキサン等が挙げられる。ポリシクロアルカンとしては、アダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカン等が挙げられる。中でもアダマンタンから1個以上の水素原子を除いた基が好ましい。
56’について、環構造中にヘテロ原子を含む脂肪族環式基として具体的には、たとえば下記式(L1)〜(L6)、(S1)〜(S4)でそれぞれ表される脂肪族環式基等が挙げられる。
【0100】
【化15】
[式中、Q”は炭素数1〜5のアルキレン基、−O−、−S−、−O−R94−または−S−R95−であり、R94およびR95はそれぞれ独立に炭素数1〜5のアルキレン基であり、mは0または1の整数である。]
【0101】
前記式中、Q”、R94およびR95におけるアルキレン基としては、炭素数が1〜5であることが好ましく、例えば、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、1,1−ジメチルエチレン基などが挙げられる。
これらの脂肪族環式基は、その環構造を構成する炭素原子に結合した水素原子の一部が置換基で置換されていてもよい。該置換基としては、たとえばアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、水酸基、酸素原子(=O)等が挙げられる。
前記アルキル基としては、炭素数1〜5のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基であることが特に好ましい。
前記置換基としてのアルコキシ基としては、炭素数1〜5のアルコキシ基が好ましく、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、iso−プロポキシ基、n−ブトキシ基、tert−ブトキシ基が好ましく、メトキシ基、エトキシ基が最も好ましい。
前記置換基としてのハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、フッ素原子が好ましい。
【0102】
56’について、脂肪族環式基中の水素原子がヘテロ原子に置換されたものとして具体的には、脂肪族環式基中の水素原子が酸素原子(=O)に置換されたもの等が挙げられる。
【0103】
−C(=O)−O−R’、−O−C(=O)−R’、−O−R’におけるR’、R’、R’は、それぞれ、炭素数1〜25の直鎖状、分岐鎖状若しくは炭素数3〜20の環状の飽和炭化水素基、又は、炭素数2〜5の直鎖状若しくは分岐鎖状の脂肪族不飽和炭化水素基である。
【0104】
直鎖状若しくは分岐鎖状の飽和炭化水素基は、炭素数1〜25であり、炭素数1〜15であることが好ましく、4〜10であることがより好ましい。
直鎖状の飽和炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基などが挙げられる。
分岐鎖状の飽和炭化水素基としては、第3級アルキル基を除き、例えば、1−メチルエチル基、1−メチルプロピル基、2−メチルプロピル基、1−メチルブチル基、2−メチルブチル基、3−メチルブチル基、1−エチルブチル基、2−エチルブチル基、1−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、4−メチルペンチル基などが挙げられる。
前記直鎖状または分岐鎖状の飽和炭化水素基は、置換基を有していてもよい。該置換基としては、たとえばアルコキシ基、ハロゲン原子、ハロゲン化アルキル基、水酸基、酸素原子(=O)、シアノ基、カルボキシ基等が挙げられる。
前記直鎖状または分岐鎖状の飽和炭化水素基の置換基としてのアルコキシ基としては、炭素数1〜5のアルコキシ基が好ましく、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、iso−プロポキシ基、n−ブトキシ基、tert−ブトキシ基が好ましく、メトキシ基、エトキシ基が最も好ましい。
前記直鎖状または分岐鎖状の飽和炭化水素基の置換基としてのハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、フッ素原子が好ましい。
前記直鎖状または分岐鎖状の飽和炭化水素基の置換基としてのハロゲン化アルキル基としては、前記直鎖状または分岐鎖状の飽和炭化水素基の水素原子の一部または全部が前記ハロゲン原子で置換された基が挙げられる。
【0105】
’、R’、R’における炭素数3〜20の環状の飽和炭化水素基としては、多環式基、単環式基のいずれでもよく、例えば、モノシクロアルカンから1個の水素原子を除いた基;ビシクロアルカン、トリシクロアルカン、テトラシクロアルカン等のポリシクロアルカンから1個の水素原子を除いた基などが挙げられる。より具体的には、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン等のモノシクロアルカンや、アダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカン等のポリシクロアルカンから1個の水素原子を除いた基などが挙げられる。
該環状の飽和炭化水素基は、置換基を有していてもよい。たとえば当該環状のアルキル基が有する環を構成する炭素原子の一部がヘテロ原子で置換されていてもよく、当該環状のアルキル基が有する環に結合した水素原子が置換基で置換されていてもよい。
前者の例としては、前記モノシクロアルカンまたはポリシクロアルカンの環を構成する炭素原子の一部が酸素原子、硫黄原子、窒素原子等のヘテロ原子で置換された複素シクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基が挙げられる。また、前記環の構造中にエステル結合(−C(=O)−O−)を有していてもよい。具体的には、γ−ブチロラクトンから水素原子1つを除いた基等のラクトン含有単環式基や、ラクトン環を有するビシクロアルカン、トリシクロアルカン、テトラシクロアルカンから水素原子一つを除いた基等のラクトン含有多環式基等が挙げられる。
後者の例における置換基としては、上述した直鎖状または分岐鎖状のアルキル基が有してもよい置換基として挙げたものと同様のもの、炭素数1〜5のアルキル基等が挙げられる。
【0106】
また、R’、R’、R’は、直鎖状または分岐鎖状のアルキル基と、環状アルキル基との組み合わせであってもよい。
直鎖状または分岐鎖状のアルキル基と環状アルキル基との組合せとしては、直鎖状または分岐鎖状のアルキル基に置換基として環状のアルキル基が結合した基、環状のアルキル基に置換基として直鎖状または分岐鎖状のアルキル基が結合した基等が挙げられる。
【0107】
’、R’、R’における直鎖状の脂肪族不飽和炭化水素基としては、例えば、ビニル基、プロペニル基(アリル基)、ブチニル基などが挙げられる。
’、R’、R’における分岐鎖状の脂肪族不飽和炭化水素基としては、例えば、1−メチルプロペニル基、2−メチルプロペニル基などが挙げられる。
該直鎖状若しくは分岐鎖状の脂肪族不飽和炭化水素基は、置換基を有していてもよい。該置換基としては、前記直鎖状または分岐鎖状のアルキル基が有していてもよい置換基として挙げたものと同様のものが挙げられる。
【0108】
’、R’、R’としては、上記のなかでも、炭素数1〜15の直鎖状若しくは分岐鎖状の飽和炭化水素基、又は炭素数3〜20の環状の飽和炭化水素基が好ましい。
【0109】
”〜R”のアルキル基としては、たとえば、炭素数1〜10の直鎖状、分岐鎖状または環状のアルキル基等が挙げられる。なかでも、解像性に優れる点から、炭素数1〜5であることが好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、n−ペンチル基、シクロペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ノニル基、デシル基等が挙げられ、解像性に優れ、また安価に合成可能なことから好ましいものとして、メチル基を挙げることができる。
”〜R”のアルキル基は、その水素原子の一部または全部が、アルコキシ基、ハロゲン原子、水酸基、オキソ基(=O)、アリール基、アルコキシアルキルオキシ基、アルコキシカルボニルアルキルオキシ基、−C(=O)−O−R’、−O−C(=O)−R’、−O−R’等により置換されていてもよい。アルコキシ基、ハロゲン原子、アリール基、アルコキシアルキルオキシ基、アルコキシカルボニルアルキルオキシ基、−C(=O)−O−R’、−O−C(=O)−R’、−O−R’としては、R”〜R”のアリール基の置換基と同様である。
【0110】
”〜R”のアルケニル基としては、たとえば、炭素数2〜10であることが好ましく、2〜5がより好ましく、2〜4がさらに好ましい。具体的には、ビニル基、プロペニル基(アリル基)、ブチニル基、1−メチルプロペニル基、2−メチルプロペニル基などが挙げられる。
【0111】
”〜R”のうち、いずれか二つが相互に結合して式中のイオウ原子と共に環を形成する場合、イオウ原子を含めて3〜10員環を形成していることが好ましく、5〜7員環を形成していることが特に好ましい。
【0112】
前記式(b−c1)で表される化合物におけるカチオン部のなかで好適なものとして、具体的には以下に示すものが挙げられる。
【0113】
【化16】
【0114】
【化17】
【0115】
【化18】
[式中、g1、g2、g3は繰返し数を示し、g1は1〜5の整数であり、g2は0〜20の整数であり、g3は0〜20の整数である。]
【0116】
【化19】
【0117】
式(ca−1−47)中、Rは置換基である。該置換基としては、上記置換アリール基についての説明のなかで例示した置換基(アルキル基、アルコキシ基、アルコキシアルキルオキシ基、アルコキシカルボニルアルキルオキシ基、ハロゲン原子、水酸基、オキソ基(=O)、アリール基、−C(=O)−O−R”、−O−C(=O)−R”、−O−R”)が挙げられる。
【0118】
前記式(b−c2)中、R”〜R”は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよいアリール基、アルキル基又はアルケニル基を表す。
”〜R”のアリール基としては、R”〜R”のアリール基と同様のものが挙げられる。R”〜R”のアルキル基としては、R”〜R”のアルキル基と同様のものが挙げられる。R”〜R”のアルケニル基としては、R”〜R”のアルケニル基と同様のものが挙げられる。
前記式(b−c2)で表される化合物におけるカチオン部の具体例としては、ジフェニルヨードニウム、ビス(4−tert−ブチルフェニル)ヨードニウム等が挙げられる。
【0119】
本明細書において、オキシムスルホネート系酸発生剤とは、下記一般式(B−1)で表される基を少なくとも1つ有する化合物であって、放射線の照射(露光)によって酸を発生する特性を有するものである。この様なオキシムスルホネート系酸発生剤は、通常、化学増幅型レジスト組成物用として多用されているもののなかから任意に選択して用いることができる。
【0120】
【化20】
[式(B−1)中、R31、R32は、それぞれ独立に有機基を表す。]
【0121】
31、R32の有機基は、炭素原子を含む基であり、炭素原子以外の原子(たとえば水素原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子等)等)を有していてもよい。
31の有機基としては、直鎖状、分岐鎖状若しくは環状のアルキル基またはアリール基が好ましい。これらのアルキル基、アリール基は置換基を有していてもよい。該置換基としては、特に制限はなく、たとえばフッ素原子、炭素数1〜6の直鎖状、分岐鎖状または環状のアルキル基等が挙げられる。ここで、「置換基を有する」とは、アルキル基またはアリール基の水素原子の一部若しくは全部が置換基で置換されていることを意味する。
アルキル基としては、炭素数1〜20が好ましく、炭素数1〜10がより好ましく、炭素数1〜8がさらに好ましく、炭素数1〜6が特に好ましく、炭素数1〜4が最も好ましい。アルキル基としては、特に、部分的または完全にハロゲン化されたアルキル基(以下、ハロゲン化アルキル基ということがある)が好ましい。なお、部分的にハロゲン化されたアルキル基とは、水素原子の一部がハロゲン原子で置換されたアルキル基を意味し、完全にハロゲン化されたアルキル基とは、水素原子の全部がハロゲン原子で置換されたアルキル基を意味する。ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、特にフッ素原子が好ましい。すなわち、ハロゲン化アルキル基は、フッ素化アルキル基であることが好ましい。
アリール基は、炭素数4〜20が好ましく、炭素数4〜10がより好ましく、炭素数6〜10が最も好ましい。アリール基としては、特に、部分的または完全にハロゲン化されたアリール基が好ましい。なお、部分的にハロゲン化されたアリール基とは、水素原子の一部がハロゲン原子で置換されたアリール基を意味し、完全にハロゲン化されたアリール基とは、水素原子の全部がハロゲン原子で置換されたアリール基を意味する。
31としては、特に、置換基を有さない炭素数1〜4のアルキル基、または炭素数1〜4のフッ素化アルキル基が好ましい。
32の有機基としては、直鎖状、分岐鎖状若しくは環状のアルキル基、アリール基またはシアノ基が好ましい。R32のアルキル基、アリール基としては、前記R31で挙げたアルキル基、アリール基と同様のものが挙げられる。
32としては、特に、シアノ基、置換基を有さない炭素数1〜8のアルキル基、または炭素数1〜8のフッ素化アルキル基が好ましい。
【0122】
オキシムスルホネート系酸発生剤として、さらに好ましいものとしては、下記一般式(B−2)または(B−3)で表される化合物が挙げられる。
【0123】
【化21】
[式(B−2)中、R33は、シアノ基、置換基を有さないアルキル基またはハロゲン化アルキル基である。R34は、アリール基を含む基である。R34のアルキル基又はハロゲン化アルキル基と、R35とが結合して環を形成していていもよい。R35は、置換基を有さないアルキル基又はハロゲン化アルキル基である。]
【0124】
【化22】
[式(B−3)中、R36は、シアノ基、置換基を有さないアルキル基またはハロゲン化アルキル基である。R37は、2または3価の芳香族炭化水素基である。R38は、置換基を有さないアルキル基またはハロゲン化アルキル基である。p”は、2又は3である。]
【0125】
前記一般式(B−2)において、R33の置換基を有さないアルキル基またはハロゲン化アルキル基は、炭素数が1〜10であることが好ましく、炭素数1〜8がより好ましく、炭素数1〜6が最も好ましい。
33としては、ハロゲン化アルキル基が好ましく、フッ素化アルキル基がより好ましい。
33におけるフッ素化アルキル基は、アルキル基の水素原子が50%以上フッ素化されていることが好ましく、70%以上フッ素化されていることがより好ましく、90%以上フッ素化されていることが特に好ましい。
34のアリール基を含む基としては、フェニル基、ビフェニル(biphenyl)基、フルオレニル(fluorenyl)基、ナフチル基、アントリル(anthryl)基、フェナントリル基等の、芳香族炭化水素の環から水素原子を1つ除いた基、およびこれらの基の環を構成する炭素原子の一部が酸素原子、硫黄原子、窒素原子等のヘテロ原子で置換されたヘテロアリール基等を含むものが挙げられる。これらのなかでも、フルオレニル基が好ましい。
34のアリール基を含む基は、炭素数1〜10のアルキル基、ハロゲン化アルキル基、アルコキシ基等の置換基を有していてもよい。該置換基におけるアルキル基またはハロゲン化アルキル基は、炭素数が1〜8であることが好ましく、炭素数1〜4がさらに好ましい。また、該ハロゲン化アルキル基は、フッ素化アルキル基であることが好ましい。
35の置換基を有さないアルキル基またはハロゲン化アルキル基は、炭素数が1〜10であることが好ましく、炭素数1〜8がより好ましく、炭素数1〜6が最も好ましい。
35としては、ハロゲン化アルキル基が好ましく、フッ素化アルキル基がより好ましい。
35におけるフッ素化アルキル基は、アルキル基の水素原子が50%以上フッ素化されていることが好ましく、70%以上フッ素化されていることがより好ましく、90%以上フッ素化されていることが、発生する酸の強度が高まるため特に好ましい。最も好ましくは、水素原子が100%フッ素置換された完全フッ素化アルキル基である。
【0126】
前記一般式(B−3)において、R36の置換基を有さないアルキル基またはハロゲン化アルキル基としては、上記R33の置換基を有さないアルキル基またはハロゲン化アルキル基と同様のものが挙げられる。
37の2または3価の芳香族炭化水素基としては、上記R34のアリール基からさらに1または2個の水素原子を除いた基が挙げられる。
38の置換基を有さないアルキル基またはハロゲン化アルキル基としては、上記R35の置換基を有さないアルキル基またはハロゲン化アルキル基と同様のものが挙げられる。
p”は、好ましくは2である。
【0127】
オキシムスルホネート系酸発生剤の具体例としては、α−(p−トルエンスルホニルオキシイミノ)−ベンジルシアニド、α−(p−クロロベンゼンスルホニルオキシイミノ)−ベンジルシアニド、α−(4−ニトロベンゼンスルホニルオキシイミノ)−ベンジルシアニド、α−(4−ニトロ−2−トリフルオロメチルベンゼンスルホニルオキシイミノ)−ベンジルシアニド、α−(ベンゼンスルホニルオキシイミノ)−4−クロロベンジルシアニド、α−(ベンゼンスルホニルオキシイミノ)−2,4−ジクロロベンジルシアニド、α−(ベンゼンスルホニルオキシイミノ)−2,6−ジクロロベンジルシアニド、α−(ベンゼンスルホニルオキシイミノ)−4−メトキシベンジルシアニド、α−(2−クロロベンゼンスルホニルオキシイミノ)−4−メトキシベンジルシアニド、α−(ベンゼンスルホニルオキシイミノ)−チエン−2−イルアセトニトリル、α−(4−ドデシルベンゼンスルホニルオキシイミノ)−ベンジルシアニド、α−[(p−トルエンスルホニルオキシイミノ)−4−メトキシフェニル]アセトニトリル、α−[(ドデシルベンゼンスルホニルオキシイミノ)−4−メトキシフェニル]アセトニトリル、α−(トシルオキシイミノ)−4−チエニルシアニド、α−(メチルスルホニルオキシイミノ)−1−シクロペンテニルアセトニトリル、α−(メチルスルホニルオキシイミノ)−1−シクロヘキセニルアセトニトリル、α−(メチルスルホニルオキシイミノ)−1−シクロヘプテニルアセトニトリル、α−(メチルスルホニルオキシイミノ)−1−シクロオクテニルアセトニトリル、α−(トリフルオロメチルスルホニルオキシイミノ)−1−シクロペンテニルアセトニトリル、α−(トリフルオロメチルスルホニルオキシイミノ)−シクロヘキシルアセトニトリル、α−(エチルスルホニルオキシイミノ)−エチルアセトニトリル、α−(プロピルスルホニルオキシイミノ)−プロピルアセトニトリル、α−(シクロヘキシルスルホニルオキシイミノ)−シクロペンチルアセトニトリル、α−(シクロヘキシルスルホニルオキシイミノ)−シクロヘキシルアセトニトリル、α−(シクロヘキシルスルホニルオキシイミノ)−1−シクロペンテニルアセトニトリル、α−(エチルスルホニルオキシイミノ)−1−シクロペンテニルアセトニトリル、α−(イソプロピルスルホニルオキシイミノ)−1−シクロペンテニルアセトニトリル、α−(n−ブチルスルホニルオキシイミノ)−1−シクロペンテニルアセトニトリル、α−(エチルスルホニルオキシイミノ)−1−シクロヘキセニルアセトニトリル、α−(イソプロピルスルホニルオキシイミノ)−1−シクロヘキセニルアセトニトリル、α−(n−ブチルスルホニルオキシイミノ)−1−シクロヘキセニルアセトニトリル、α−(メチルスルホニルオキシイミノ)−フェニルアセトニトリル、α−(メチルスルホニルオキシイミノ)−p−メトキシフェニルアセトニトリル、α−(トリフルオロメチルスルホニルオキシイミノ)−フェニルアセトニトリル、α−(トリフルオロメチルスルホニルオキシイミノ)−p−メトキシフェニルアセトニトリル、α−(エチルスルホニルオキシイミノ)−p−メトキシフェニルアセトニトリル、α−(プロピルスルホニルオキシイミノ)−p−メチルフェニルアセトニトリル、α−(メチルスルホニルオキシイミノ)−p−ブロモフェニルアセトニトリルなどが挙げられる。
また、特開平9−208554号公報(段落[0012]〜[0014]の[化18]〜[化19])に開示されているオキシムスルホネート系酸発生剤、国際公開第04/074242号(65〜85頁目のExample1〜40)に開示されているオキシムスルホネート系酸発生剤も好適に用いることができる。
また、好適なものとして以下のものを例示することができる。
【0128】
【化23】
【0129】
ジアゾメタン系酸発生剤のうち、ビスアルキルまたはビスアリールスルホニルジアゾメタン類の具体例としては、ビス(イソプロピルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(p−トルエンスルホニル)ジアゾメタン、ビス(1,1−ジメチルエチルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(シクロヘキシルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(2,4−ジメチルフェニルスルホニル)ジアゾメタン等が挙げられる。
また、特開平11−035551号公報、特開平11−035552号公報、特開平11−035573号公報に開示されているジアゾメタン系酸発生剤も好適に用いることができる。
また、ポリ(ビススルホニル)ジアゾメタン類としては、例えば、特開平11−322707号公報に開示されている、1,3−ビス(フェニルスルホニルジアゾメチルスルホニル)プロパン、1,4−ビス(フェニルスルホニルジアゾメチルスルホニル)ブタン、1,6−ビス(フェニルスルホニルジアゾメチルスルホニル)ヘキサン、1,10−ビス(フェニルスルホニルジアゾメチルスルホニル)デカン、1,2−ビス(シクロヘキシルスルホニルジアゾメチルスルホニル)エタン、1,3−ビス(シクロヘキシルスルホニルジアゾメチルスルホニル)プロパン、1,6−ビス(シクロヘキシルスルホニルジアゾメチルスルホニル)ヘキサン、1,10−ビス(シクロヘキシルスルホニルジアゾメチルスルホニル)デカンなどを挙げることができる。
【0130】
本発明に係る下地剤において、(B)成分は、1種の酸発生剤を単独で用いてもよく、2種以上の酸発生剤を併用してもよい。
下地剤が(B)成分を含有する場合、下地剤中の(B)成分の含有量は、(A)成分100質量部に対して、0.5〜30質量部が好ましく、1〜20質量部がより好ましい。(B)成分の含有量が上記範囲内であれば、本発明の効果が充分に得られる。
【0131】
本発明に係る下地剤は、本発明の効果を損なわない範囲で、さらに、所望により、混和性のある添加剤、例えば下地剤層の性能を改良するための付加的樹脂、塗布性を向上させるための界面活性剤、溶解抑制剤、可塑剤、安定剤、着色剤、ハレーション防止剤、染料、増感剤、塩基増殖剤、塩基性化合物(イミダゾール等の含窒素化合物など)等を適宜含有させることができる。
【0132】
・有機溶剤(S)について
本発明に係る下地剤は、(A)成分及び必要に応じて(B)成分等の各成分を、有機溶剤(以下「(S)成分」ともいう。)に溶解させて製造することができる。
(S)成分としては、使用する各成分を溶解し、均一な溶液とすることができるものであればよく、従来、樹脂を主成分とする膜組成物の溶剤として公知のものの中から任意のものを1種又は2種以上適宜選択して用いることができる。
(S)成分としては、例えば、γ−ブチロラクトン等のラクトン類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メチル−n−ペンチルケトン、メチルイソペンチルケトン、2−ヘプタノン等のケトン類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール等の多価アルコール類;エチレングリコールモノアセテート、ジエチレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールモノアセテート、ジプロピレングリコールモノアセテート等のエステル結合を有する化合物;前記多価アルコール類もしくは前記エステル結合を有する化合物のモノメチルエーテル、モノエチルエーテル、モノプロピルエーテル、モノブチルエーテル等のモノアルキルエーテル又はモノフェニルエーテル等のエーテル結合を有する化合物等の多価アルコール類の誘導体[これらの中では、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)が好ましい];ジオキサンのような環式エーテル類;乳酸メチル、乳酸エチル(EL)、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、メトキシプロピオン酸メチル、エトキシプロピオン酸エチル等のエステル類;アニソール、エチルベンジルエーテル、クレジルメチルエーテル、ジフェニルエーテル、ジベンジルエーテル、フェネトール、ブチルフェニルエーテル、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、ペンチルベンゼン、イソプロピルベンゼン、トルエン、キシレン、シメン、メシチレン等の芳香族系有機溶剤などが挙げられる。
(S)成分は、単独で用いてもよく、2種以上の混合溶剤として用いてもよい。
中でも、(S)成分としては、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、シクロヘキサノン、ELが好ましい。
また、PGMEAと極性溶剤とを混合した混合溶媒も好ましい。その配合比(質量比)は、PGMEAと極性溶剤との相溶性等を考慮して適宜決定すればよいが、好ましくは1:9〜9:1、より好ましくは2:8〜8:2の範囲内とされる。たとえば極性溶剤としてELを配合する場合、PGMEA:ELの質量比は、好ましくは1:9〜9:1、より好ましくは2:8〜8:2である。また、極性溶剤としてPGMEを配合する場合、PGMEA:PGMEの質量比は、好ましくは1:9〜9:1、より好ましくは2:8〜8:2、さらに好ましくは3:7〜7:3である。また、極性溶剤としてPGME及びシクロヘキサノンを配合する場合、PGMEA:(PGME+シクロヘキサノン)の質量比は、好ましくは1:9〜9:1、より好ましくは2:8〜8:2、さらに好ましくは3:7〜7:3である。
また、(S)成分としては、PGMEA、EL、又は前記PGMEAと極性溶剤との混合溶媒と、γ−ブチロラクトンと、の混合溶剤も好ましい。この場合、混合割合としては、前者と後者との質量比が好ましくは70:30〜95:5とされる。
(S)成分の使用量は、特に限定されず、基板等に塗布可能な濃度で、塗布膜厚に応じて適宜設定されるものであるが、一般的には下地剤の固形分濃度が0.1〜20質量%、好ましくは0.2〜15質量%の範囲内となるように用いられる。
【0133】
(基板上に形成される下地剤層の表面における水の接触角)
本発明に係る下地剤は、疎水性ポリマーブロック(b12)の構成単位を有する樹脂成分を含有する場合、これを用いて基板上に形成される下地剤層の表面における水の接触角が、好ましくは80°以上、より好ましくは90°以上となるものである。
また、本発明に係る下地剤は、親水性ポリマーブロック(b22)の構成単位を有する樹脂成分を含有する場合、これを用いて基板上に形成される下地剤層の表面における水の接触角が、好ましくは30〜80°となるものである。
接触角の値が前記の好ましい範囲であれば、下地剤層を介して基板とブロックコポリマーを含む層との密着性が強まる。これに伴い、下地剤層上に形成されるブロックコポリマーを含む層の相分離性能が高まる。
【0134】
かかる水の接触角は、下記の手順により測定される。
手順(1):基板上に、(A)成分のPGMEA溶液を塗布して、膜厚10nm未満の下地剤層を形成する。
手順(2):下地剤層の表面に水2μLを滴下し、接触角計により、接触角(静的接触角)の測定を行う。
【0135】
以上説明した本発明に係る下地剤は、疎水性ポリマーブロック(b12)の構成単位、又は親水性ポリマーブロック(b22)の構成単位を有し、かつ、主鎖の少なくとも一つの末端部にカルボキシ基を有する樹脂成分を含有する。
かかる下地剤を、基板上に形成したブロックコポリマーを含む層を相分離させるために用いられる、基板の表面改質材料として用いた場合、該下地剤により形成される下地剤層を介して、基板と、該基板上に形成されるブロックコポリマーを含む層と、の密着性が高まる。これに伴って、ブロックコポリマーの相分離性能が向上する、と考えられる。
また、かかる下地剤は、下地剤層の表面状態が安定しているため、用いるブロックコポリマー種に応じて下地剤層表面の自由エネルギーが所望の値となる中性層材料を都度選択する必要がない。このように、かかる下地剤は、簡便に用いることができる。
【0136】
<相分離構造を含む構造体の製造方法>
本発明の第二の態様である、相分離構造を含む構造体の製造方法は、基板上に、上述した本発明の第一の態様の下地剤を塗布し、下地剤層を形成する工程(以下「工程(i)」という。)と、該下地剤層の上に、疎水性ポリマーブロック(b11)と親水性ポリマーブロック(b21)とが結合したブロックコポリマーを含む層を形成する工程(以下「工程(ii)」という。)と、該ブロックコポリマーを含む層を相分離させる工程(以下「工程(iii)」という。)と、を有する。
以下、かかる相分離構造を含む構造体の製造方法について、図1を参照しながら具体的に説明する。但し、本発明はこれに限定されるものではない。
【0137】
図1は、本発明に係る、相分離構造を含む構造体の製造方法の一実施形態例を示す。
まず、基板1上に、上述の本発明に係る下地剤を塗布して、下地剤層2を形成する(図1(I);工程(i))。
次に、下地剤層2上に、疎水性ポリマーブロック(b11)と親水性ポリマーブロック(b21)とが結合したブロックコポリマーを含有する組成物(以下「BCP組成物」ともいう。)を塗布して、該ブロックコポリマーを含む層3を形成する(図1(II);工程(ii))。
次に、加熱してアニール処理を行い、該ブロックコポリマーを含む層3を、相3aと相3bとに相分離させる(図1(III);工程(iii))。
上述した本実施形態の製造方法、すなわち、工程(i)〜(iii)を有する製造方法によれば、下地剤層2が形成された基板1上に、相分離構造を含む構造体3’が製造される。
【0138】
[工程(i)]
工程(i)では、基板1上に、前記下地剤を塗布して、下地剤層2を形成する。
基板1上に下地剤層2を設けることによって、基板1表面と、ブロックコポリマーを含む層3と、の親水疎水バランスが図れる。
すなわち、下地剤層2が、疎水性ポリマーブロック(b12)の構成単位を有する樹脂成分を含有する場合、ブロックコポリマーを含む層3のうち疎水性ポリマーブロック(b11)からなる相と基板1との密着性が高まる。下地剤層2が、親水性ポリマーブロック(b22)の構成単位を有する樹脂成分を含有する場合、ブロックコポリマーを含む層3のうち親水性ポリマーブロック(b21)からなる相と基板1との密着性が高まる。
これに伴い、ブロックコポリマーを含む層3の相分離によって、基板1表面に対して垂直方向に配向されたシリンダー構造が形成しやすくなる。
【0139】
基板1は、その表面上にBCP組成物を塗布し得るものであれば、その種類は特に限定されない。例えば、金属(シリコン、銅、クロム、鉄、アルミニウム等)、ガラス、酸化チタン、シリカ、マイカなどの無機物からなる基板;SiN等窒化物からなる基板;SiON等の酸化窒化物からなる基板;アクリル、ポリスチレン、セルロース、セルロースアセテート、フェノール樹脂などの有機物からなる基板が挙げられる。
基板1の大きさや形状は、特に限定されるものではない。基板1は、必ずしも平滑な表面を有する必要はなく、様々な形状の基板を適宜選択できる。例えば、曲面を有する基板、表面が凹凸形状の平板、薄片状などの形状の基板が挙げられる。
【0140】
基板1の表面には、無機系および/または有機系の膜が設けられていてもよい。
無機系の膜としては、無機反射防止膜(無機BARC)が挙げられる。有機系の膜としては、有機反射防止膜(有機BARC)が挙げられる。
無機系の膜は、例えば、シリコン系材料などの無機系の反射防止膜組成物を、基板上に塗工し、焼成等することにより形成できる。
有機系の膜は、例えば、該膜を構成する樹脂成分等を有機溶剤に溶解した有機膜形成用材料を、基板上にスピンナー等で塗布し、好ましくは200〜300℃、好ましくは30〜300秒間、より好ましくは60〜180秒間の加熱条件でベーク処理することにより形成できる。この有機膜形成用材料は、レジスト膜のような、光や電子線に対する感受性を必ずしも必要とするものではなく、感受性を有するものであってもよく、有しないものであってもよい。具体的には、半導体素子や液晶表示素子の製造において一般的に用いられているレジストや樹脂を用いることができる。
また、層3を加工して形成される、ブロックコポリマーからなるパターン、を用いて有機系の膜をエッチングすることにより、該パターンを有機系の膜へ転写し、有機系の膜パターンを形成できるように、有機膜形成用材料は、エッチング、特にドライエッチング可能な有機系の膜を形成できる材料であることが好ましい。中でも、酸素プラズマエッチング等のエッチングが可能な有機系の膜を形成できる材料であることが好ましい。このような有機膜形成用材料としては、従来、有機BARCなどの有機膜を形成するために用いられている材料であってよい。例えば、日産化学工業株式会社製のARCシリーズ、ロームアンドハース社製のARシリーズ、東京応化工業株式会社製のSWKシリーズなどが挙げられる。
【0141】
本発明に係る下地剤を基板1上に塗布して下地剤層2を形成する方法としては、特に限定されず、従来公知の方法により形成できる。
たとえば、下地剤を、スピンコート又はスピンナーを用いる等の従来公知の方法により基板1上に塗布して塗膜を形成し、乾燥させることにより、下地剤層2を形成できる。
塗膜の乾燥方法としては、下地剤に含まれる溶媒を揮発させることができればよく、たとえばベークする方法等が挙げられる。この際、ベーク温度は、80〜300℃が好ましく、180〜300℃がより好ましく、210〜280℃がさらに好ましい。ベーク時間は、30〜500秒間が好ましく、60〜400秒間がより好ましい。
上記のベーク時間と、ベーク温度とは任意に組み合わせることができる。
塗膜の乾燥後における下地剤層2の厚さは、10〜100nm程度が好ましく、40〜90nm程度がより好ましい。
【0142】
基板1に下地剤層2を形成する前に、基板1の表面は、予め洗浄されていてもよい。基板1表面を洗浄することにより、下地剤の塗布性が向上する。
洗浄処理方法としては、従来公知の方法を利用でき、例えば酸素プラズマ処理、オゾン酸化処理、酸アルカリ処理、化学修飾処理等が挙げられる。
【0143】
下地剤層2を形成した後、必要に応じて、溶剤等のリンス液を用いて下地剤層2をリンスしてもよい。該リンスにより、下地剤層2中の未架橋部分等が除去されるため、ブロックコポリマーを構成する少なくとも1つのポリマー(ブロック)との親和性が向上し、基板1表面に対して垂直方向に配向されたシリンダー構造からなる相分離構造が形成されやすくなる。
尚、リンス液は、未架橋部分を溶解し得るものであればよく、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、乳酸エチル(EL)等の溶剤、又は市販のシンナー液等を用いることができる。
また、該洗浄後は、リンス液を揮発させるため、ポストベークを行ってもよい。このポストベークの温度条件は、80〜300℃が好ましく、100〜270℃がより好ましく、120〜250℃がさらに好ましい。ベーク時間は、30〜500秒間が好ましく、60〜240秒間がより好ましい。かかるポストベーク後における下地剤層2の厚さは、1〜10nm程度が好ましく、2〜7nm程度がより好ましい。
【0144】
[工程(ii)]
工程(ii)では、下地剤層2の上に、複数種類のブロックが結合したブロックコポリマーを含む層3を形成する。
下地剤層2の上に層3を形成する方法としては、特に限定されるものではなく、例えばスピンコート又はスピンナーを用いる等の従来公知の方法により、下地剤層2上にBCP組成物を塗布して塗膜を形成し、乾燥させる方法が挙げられる。かかるBCP組成物の詳細については後述する。
【0145】
層3の厚さは、相分離が起こるために充分な厚さであればよく、基板1の種類、又は、形成される相分離構造の構造周期サイズもしくはナノ構造体の均一性等を考慮すると、20〜100nmが好ましく、30〜80nmがより好ましい。
例えば、基板1がCu基板の場合、層3の厚さは、10〜100nmが好ましく、30〜80nmがより好ましい。
【0146】
[工程(iii)]
工程(iii)では、ブロックコポリマーを含む層3を相分離させる。
工程(ii)後の基板1を加熱してアニール処理を行うことにより、ブロックコポリマーの選択除去によって、基板1表面の少なくとも一部が露出するような相分離構造が形成する。すなわち、基板1上に、相3aと相3bとに相分離した相分離構造を含む構造体3’が製造される。
アニール処理の温度条件は、用いるブロックコポリマーのガラス転移温度以上であり、かつ、熱分解温度未満で行うことが好ましい。例えばブロックコポリマーがポリスチレン−ポリメチルメタクリレート(PS−PMMA)ブロックコポリマー(質量平均分子量5000〜100000)の場合には、180〜270℃が好ましい。加熱時間は、30〜3600秒間が好ましい。
また、アニール処理は、窒素等の反応性の低いガス中で行われることが好ましい。
【0147】
以上説明した本発明に係る、相分離構造を含む構造体の製造方法によれば、ブロックコポリマーの相分離性能が高められ、既存のリソグラフィー技術に比べて、より微細な構造体を良好な形状で形成できる。加えて、基板表面に、位置及び配向性がより自在にデザインされたナノ構造体を備える基板を製造し得る。例えば、形成される構造体は、基板との密着性が高く、基板表面に対して垂直方向に配向されたシリンダー構造からなる相分離構造をとりやすい。
【0148】
[任意工程]
本発明に係る、相分離構造を含む構造体の製造方法は、上述した実施形態に限定されず、工程(i)〜(iii)以外の工程(任意工程)を有してもよい。
かかる任意工程としては、ブロックコポリマーを含む層のうち、前記ブロックコポリマーを構成する複数種類のブロックのうちの少なくとも一種類のブロックからなる相を選択的に除去する工程(以下「工程(iv)」という。)、ガイドパターン形成工程等が挙げられる。
【0149】
・工程(iv)について
工程(iv)では、下地剤層の上に形成された、ブロックコポリマーを含む層のうち、前記ブロックコポリマーを構成する複数種類のブロックのうちの少なくとも一種類のブロックからなる相を選択的に除去する。これにより、微細なパターン(高分子ナノ構造体が形成される。
【0150】
ブロックからなる相を選択的に除去する方法としては、ブロックコポリマーを含む層に対して酸素プラズマ処理を行う方法、水素プラズマ処理を行う方法等が挙げられる。
尚、以下において、ブロックコポリマーを構成するブロックのうち、選択的に除去されないブロックをPブロック、選択的に除去されるブロックをPブロックという。例えば、PS−PMMAブロックコポリマーを含む層を相分離した後、該層に対して酸素プラズマ処理や水素プラズマ処理等を行うことにより、PMMAからなる相が選択的に除去される。この場合、PS部分がPブロックであり、PMMA部分がPブロックである。
【0151】
図2は、工程(iv)の一実施形態例を示す。
図2に示す実施形態においては、工程(iii)で基板1上に製造された構造体3’に、酸素プラズマ処理を行うことによって、相3aが選択的に除去され、離間した相3bからなるパターン(高分子ナノ構造体)が形成されている。この場合、相3bがPブロックからなる相であり、相3aがPブロックからなる相である。
【0152】
上記のようにして、ブロックコポリマーからなる層3の相分離によってパターンが形成された基板1は、そのまま使用することもできるが、さらに加熱することにより、基板1上のパターン(高分子ナノ構造体)の形状を変更することもできる。
加熱の温度条件は、用いるブロックコポリマーのガラス転移温度以上であり、かつ、熱分解温度未満が好ましい。また、加熱は、窒素等の反応性の低いガス中で行われることが好ましい。
【0153】
・ガイドパターン形成工程について
本発明に係る、相分離構造を含む構造体の製造方法においては、工程(i)と工程(ii)との間に、下地剤層上にガイドパターンを設ける工程(ガイドパターン形成工程)を有してもよい。これにより、相分離構造の配列構造制御が可能となる。
例えば、ガイドパターンを設けない場合に、ランダムな指紋状の相分離構造が形成されるブロックコポリマーであっても、下地剤層表面にレジスト膜の溝構造を設けることにより、その溝に沿って配向した相分離構造が得られる。このような原理で、下地剤層2上にガイドパターンを設けてもよい。また、ガイドパターンの表面が、ブロックコポリマーを構成するいずれかのポリマーと親和性を有することにより、基板表面に対して垂直方向に配向されたシリンダー構造からなる相分離構造が形成しやすくなる。
【0154】
ガイドパターンは、例えばレジスト組成物を用いて形成できる。
ガイドパターンを形成するレジスト組成物は、一般的にレジストパターンの形成に用いられるレジスト組成物やその改変物の中から、ブロックコポリマーを構成するいずれかのポリマーと親和性を有するものを適宜選択して用いることができる。該レジスト組成物としては、レジスト膜露光部が溶解除去されるポジ型パターンを形成するポジ型レジスト組成物、レジスト膜未露光部が溶解除去されるネガ型パターンを形成するネガ型レジスト組成物のいずれであってもよいが、ネガ型レジスト組成物であることが好ましい。ネガ型レジスト組成物としては、例えば、酸発生剤と、酸の作用により有機溶剤を含有する現像液への溶解性が酸の作用により減少する基材成分とを含有し、該基材成分が、酸の作用により分解して極性が増大する構成単位を有する樹脂成分、を含有するレジスト組成物が好ましい。
ガイドパターンが形成された下地剤層上にBCP組成物が流し込まれた後、相分離を起こすためにアニール処理が行われる。このため、ガイドパターンを形成するレジスト組成物としては、耐溶剤性と耐熱性とに優れたレジスト膜を形成し得るものであることが好ましい。
【0155】
・ブロックコポリマーを含有する組成物(BCP組成物)について
BCP組成物は、上述したブロックコポリマーを有機溶剤に溶解することにより調製できる。この有機溶剤としては、下地剤に用いることができる有機溶剤として上述した(S)成分と同様のものが挙げられる。
BCP組成物に含まれる有機溶剤は、特に限定されるものではなく、塗布可能な濃度で、塗布膜厚に応じて適宜設定され、一般的にはブロックコポリマーの固形分濃度が0.2〜70質量%、好ましくは0.2〜50質量%の範囲内となるように用いられる。
【0156】
BCP組成物には、上記のブロックコポリマー及び有機溶剤以外に、さらに、所望により、混和性のある添加剤、例えば下地剤層の性能を改良するための付加的樹脂、塗布性を向上させるための界面活性剤、溶解抑制剤、可塑剤、安定剤、着色剤、ハレーション防止剤、染料、増感剤、塩基増殖剤、塩基性化合物等を適宜含有させることができる。
【実施例】
【0157】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
【0158】
<高分子化合物の合成例>
≪高分子化合物3の合成≫
乾燥させた容量50mLのシュレンク管に塩化リチウム180mgを入れ、アルゴン雰囲気下、低酸素・低水分グレードのテトラヒドロフラン39gを入れ、−78℃まで冷却した。
前記の冷却の後、そこに、sec−ブチルリチウムの1Mシクロヘキサン溶液0.34gと、脱水・脱気処理を行ったスチレン0.83gと、をシリンジにて注入し、30分間反応させた。
続いて、高分子化合物の末端修飾剤として、脱気処理を行ったクロロ酢酸tert−ブチル0.25gをシリンジにて注入し、15分間反応させて反応液を得た。
次いで、反応液を室温まで昇温した後、濃縮し、tert−ブチルメチルエーテル26gで希釈した。続いて、1質量%塩酸水溶液17gで3回、超純水17gで4回、有機層を洗浄した。
洗浄後の有機層を濃縮乾固することで、高分子化合物3の前駆体0.66gを収率80%で得た。
得られた高分子化合物3の前駆体0.66gをプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)6gに溶かし、p−トルエンスルホン酸一水和物0.52gを入れ、40℃で10時間反応させて反応液を得た。
次いで、反応液を室温まで昇温した後、濃縮し、ジクロロメタン13gで希釈し、続いて、1質量%塩酸水溶液13gで3回、超純水13gで4回、有機層を洗浄した。
洗浄後の有機層を濃縮乾固することで、目的物である高分子化合物(高分子化合物3)0.53gを収率80%で得た。
得られた高分子化合物3について、GPC分析の結果、Mnは1900、Mwは2000、Mw/Mnは1.05であった。13C−NMR分析の結果、COOH基が結合した第1級炭素原子のピークが170〜172ppm付近に確認された。開始剤端(18〜20ppmのCH)との積分値の比率から、主鎖末端部へのOH導入率は77.0%であった(0.035/0.046×100=77.0%)。
【0159】
【化24】
【0160】
≪高分子化合物4の合成≫
乾燥させた容量50mLのシュレンク管に塩化リチウム180mgを入れ、アルゴン雰囲気下、低酸素・低水分グレードのテトラヒドロフラン39gを入れ、−78℃まで冷却した。
前記の冷却の後、そこに、sec−ブチルリチウムの1Mシクロヘキサン溶液0.34gと、脱水・脱気処理を行ったスチレン0.83gと、をシリンジにて注入し、30分間反応させた。
続いて、高分子化合物の末端修飾剤として、脱気処理を行った1,2−ブチレンオキシド0.91gをシリンジにて注入し、15分間反応させて反応液を得た。
次いで、反応液を室温まで昇温した後、濃縮し、tert−ブチルメチルエーテル26gで希釈した。続いて、1質量%塩酸水溶液17gで3回、超純水17gで4回、有機層を洗浄した。
洗浄後の有機層を濃縮乾固することで、目的物である高分子化合物(高分子化合物3)0.62gを収率75%で得た。
得られた高分子化合物4について、GPC分析の結果、Mnは1900、Mwは2000、Mw/Mnは1.15であった。13C−NMR分析の結果、OH基が結合した第4級炭素原子のピークが69〜70ppmに確認された。開始剤端(18〜20ppmのCH)との積分値の比率から、主鎖末端部へのOH導入率は93.8%であった(0.061/0.065×100=93.8%)。
【0161】
【化25】
【0162】
<下地剤の調製>
(実施例1〜7、比較例1〜3)
上記のようにして高分子化合物3〜4を合成した。また、下記の高分子化合物1〜2を、それぞれ公知のラジカル重合によって合成した。
次いで、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)に高分子化合物1〜4をそれぞれ溶解して、各例の下地剤(固形分濃度1.20質量%)を調製した。
【0163】
【表1】
【0164】
【表2】
【0165】
表1〜2中、各略号はそれぞれ以下の意味を有する。[ ]内の数値は配合量(質量部)である。
(A)−1:下記の高分子化合物1。13C−NMRにより求められた該高分子化合物の共重合組成比(高分子化合物中の各構成単位の割合(モル比))x/y=93/7、GPC測定により求めた標準ポリスチレン換算の質量平均分子量(Mw)5000、分子量分散度(Mw/Mn)1.05。
(A)−2:下記の高分子化合物2。13C−NMRにより求められた該高分子化合物の共重合組成比(高分子化合物中の各構成単位の割合(モル比))x/y/z=80/14/6、GPC測定により求めた標準ポリスチレン換算の質量平均分子量(Mw)5000、分子量分散度(Mw/Mn)1.05。
(A)−3:下記の高分子化合物3。13C−NMRにより求められた該高分子化合物の共重合組成比(高分子化合物中の各構成単位の割合(モル比))n=100、GPC測定により求めた標準ポリスチレン換算の質量平均分子量(Mw)2000、分子量分散度(Mw/Mn)1.05。
(A)−4:下記の高分子化合物4。13C−NMRにより求められた該高分子化合物の共重合組成比(高分子化合物中の各構成単位の割合(モル比))x=100、GPC測定により求めた標準ポリスチレン換算の質量平均分子量(Mw)2000、分子量分散度(Mw/Mn)1.05。
(S)−1:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)。
【0166】
【化26】
【0167】
【化27】
【0168】
<相分離構造を含む構造体の製造>
[工程(i)]
次いで、8インチのシリコンウェーハ上に、表1〜2に示す各例の下地剤を、スピンナーを用いて塗布し、表3〜4に示すベーク温度、ベーク時間で焼成して乾燥させることにより表3〜4に示す膜厚の下地剤層を形成した。
この下地剤層を、OK73シンナー(商品名、東京応化工業株式会社製)でリンスして、未架橋部分等のランダムコポリマーを除去した。この後、250℃、60秒間でベークした。ベーク後、該有機反射防止膜上に形成された下地剤層の膜厚は2nmであった。
【0169】
[下地剤層の表面における水の接触角の測定]
該下地剤層の表面に水を滴下し、DROP MASTER−700(製品名、協和界面科学株式会社製)を用いて、接触角(静的接触角)の測定を行った(接触角の測定:水2μL)。この測定値を「接触角(°)」として表3〜4に示す。
【0170】
[工程(ii)]
次いで、該有機反射防止膜上に形成された下地剤層を被覆するように、PS−PMMAブロックコポリマー(PS/PMMA組成比(モル比)55/45、Mw42400、Mw/Mn1.07、周期26nm)のPGMEA溶液(ブロックコポリマー濃度2質量%)をスピンコート(回転数1500rpm、60秒間)した。
次いで、PS−PMMAブロックコポリマーのPGMEA溶液が塗布された基板を、90℃、60秒間でベークして乾燥させることにより、膜厚30nmのPS−PMMAブロックコポリマー層を形成した。
【0171】
[工程(iii)]
次いで、窒素気流下、210℃で300秒間加熱してアニールすることにより、PS−PMMAブロックコポリマー層を、PSからなる相とPMMAからなる相とに相分離させて、相分離構造を形成した。
【0172】
以上の結果、いずれの例においても、下地剤層上に、相分離構造を含む構造体が製造された。実施例1〜9の下地剤を用いた場合、いずれも垂直シリンダー形状と、水平シリンダー形状が混在したパターンが形成された。比較例1〜4の下地剤を用いた場合、いずれも垂直シリンダーパターンが形成された。
【0173】
[工程(iv)]
相分離構造が形成されたシリコン(Si)ウェーハに対し、TCA−3822(東京応化工業株式会社製)を用いて、酸素プラズマ処理(200mL/分、40Pa、40℃、200W、20秒間)を行い、PMMAからなる相を選択的に除去した。
【0174】
[相分離性能についての評価]
この後、得られた基板の表面(相分離状態)を、走査型電子顕微鏡SEM(SU8000、株式会社日立ハイテクノロジーズ製)で観察した。
かかる観察の結果、垂直シリンダー形状と、水平シリンダー形状が混在したパターンが観察されたものを◎、垂直シリンダーパターンのみが観察されたものを×とし、その結果を「相分離性能」として表3〜4に示した。
本明細書において、水平シリンダーパターンが形成されたことは、疎水性ポリマーブロックとより親和性が高い下地剤であることを示す。
【0175】
【表3】
【0176】
【表4】
【0177】
表3〜4に示す結果から、本発明を適用した実施例1〜9の下地剤を用いた場合、本発明の範囲外の比較例1〜3の下地剤を用いた場合に比べて、ブロックコポリマーの相分離性能がより高められること、が確認できる。
加えて、実施例1〜9の下地剤は、相分離構造を含む構造体の製造において、水に対する接触角が大きく、水平シリンダーパターンの形成も確認されたことから、疎水性ポリマーブロックとより親和性が高い下地剤であることが確認された。
なお、本実施例は基板上に本発明の下地剤を塗布し、該下地剤上にブロックコポリマーを塗布した場合の相分離性能を試験している。該試験は、ブロックコポリマーとの親和性を試験することを主旨としたものであり、下地剤の他の用途に何ら制限を課すものではない。例えば、基板上に本発明の下地剤を塗布して下地剤層を形成し、該下地剤層上にレジスト組成物等を用いてガイドパターンを形成し、該ガイドパターンが形成された下地剤層上においても、ブロックコポリマーの相分離性能を、本発明の範囲外の比較例1〜4の下地剤を用いた場合に比べて向上させることができると考えられる。
【符号の説明】
【0178】
1…基板、2…下地剤層、3…層、3a…相、3b…相。
図1
図2