(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記珪素化合物とチタン化合物とよりなる原料を火炎中に供給する前に、上記原料の沸点以上の温度に維持された、ガス混合機能を有する予混合室において原料を混合する工程を含む、請求項5記載のシリカ−チタニア複合酸化物粒子の製造方法。
【背景技術】
【0002】
シリカ−チタニア複合酸化物は、熱膨張係数が低く、チタニアの含有率を変えることにより屈折率の微調整が可能であるなどの優れた性質を持っている。屈折率が微調整可能であれば、透明な樹脂に対して同じ屈折率を持つシリカ−チタニア複合酸化物粒子を得ることができ、これを該樹脂に充填することにより、透明な樹脂複合材料を得ることができる。そして、これを利用して半導体から発生する光を透過させるための透明性が求められる光半導体用封止材や、任意の屈折率に調整して入射した光を干渉させる反射防止膜用の屈折率調整材として利用することができる。
【0003】
一方、シリカ−チタニア複合酸化物は、チタニアの含有量が増加するにつれてシリカ成分とチタニア成分が分相し、チタン成分がルチル結晶もしくはアナタ−ゼ結晶として析出し易くなることが知られている。粒子内でシリカ成分とチタニア成分が分相することにより、同一粒子内の屈折率が均一にならない為、樹脂の透明性を高めることが困難である。
【0004】
従って、シリカ成分とチタニア成分が分相しておらず、粒子内に非晶質の状態でシリカ成分とチタニア成分が均質に存在することが望まれる。
【0005】
また、樹脂に充填材する場合や溶媒に添加しスラリーとする場合、流動性等特性向上の為に粒子は球状であることが望ましい。またフィラーを充填した樹脂や溶媒の特性を低下させない為に、粒子の持ち込み水分量を低減させるために気相法で合成することが望ましい。
【0006】
シリカ−チタニア複合酸化物粒子の製造方法は、上述のようにチタニアの含有量が増加するにつれてシリカ成分とチタニア成分が分相することや、共融点温度が高く、融液の粘度も高い為に、作製方法に工夫が必要となる。
【0007】
従来、気相反応によるシリカ−チタニア複合酸化物粒子の製造方法としては四塩化ケイ素ガスと四塩化チタンガスを火炎中で火炎加水分解する方法(特許文献1、2参照)、シリカ粉末と金属酸化物粉末とを可燃性液体に分散してなるスラリーを噴霧燃焼する方法(特許文献3参照)、有機珪素化合物と有機チタン化合物を混合させた原料溶液を火炎中で噴霧燃焼させる方法(特許文献4参照)が知られている。
【0008】
しかしながら、四塩化ケイ素ガスと四塩化チタンガスを火炎中で火炎加水分解する方法では、原料中に含まれる塩素分が粒子内外に残存する為、電子材料用途として利用できない。また、合成された複合酸化物のチタン成分がルチル結晶もしくはアナタ−ゼ結晶となり分相している為、屈折率の調整は困難である。シリカ粉末と金属酸化物粉末とを可燃性液体に分散してなるスラリーを噴霧燃焼する方法では、シリカ及び金属酸化物の融点が異なる為、原料粉体の粒度分布が広くなり、樹脂中で光散乱が大きくなり透過率が低下してしまう。更に、有機珪素化合物と有機チタン化合物を混合させた原料溶液を火炎中で噴霧燃焼させる方法では、火炎中で混合液を噴霧する為に、それぞれの原料の気化速度、粒子生成速度を調整することが困難であり、得られる複合酸化物粒子における各成分の均質性が低下し、原料として供給した組成に見合う屈折率の調整が困難となり、また、粒子の透明性も低下することが懸念される。また、噴霧燃焼では噴霧された液滴と反応に必要な酸素とが供給ノズルの縁部で接触する為、未燃焼に伴うカーボン化合物が生成し易く、これが粒子内外に残留し、透過率低下の原因となることも懸念される。
【0009】
従って、従来の方法では前記目的を十分達成するシリカ−チタニア複合酸化物粒子を得るに至っていないのが現状である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
<シリカ−チタニア複合酸化物粒子>
本発明のシリカ−チタニア複合酸化物粒子は、結晶型が非晶質である必要がある。即ち、上記粒子の結晶径がシリカ成分もしくはチタニア成分による結晶が析出した場合には、同一粒子内で屈折率が変化する為に、樹脂や分散液へ充填した際の透明性を高めることができない。
【0025】
上記シリカ−チタニア複合酸化物粒子の結晶相の割合は、XRD測定より求められる結晶相の割合により確認することができる。本発明において、結晶型が非晶質であるとは、該結晶相が存在しない状態を含めて、該結晶相の割合が、5質量%以下であるものを含む。即ち、結晶相の割合が5質量%以下である場合には樹脂や溶媒に添加した時の透過率に大きな影響を及ぼさないが、5質量%を超える場合、結晶界面における光の散乱により、透過率に大きな影響を及ぼし易くなる。
【0026】
本発明のシリカ−チタニア複合酸化物粒子内の結晶相の含有率はXRD測定における標準添加法を用いて測定することができる。本発明のシリカ−チタニア複合酸化物粒子複合酸化物内に生成する結晶相として、ルチル型チタニア、もしくはアナターゼ型チタニアが挙げられる。含有率は得られたシリカ−チタニア複合酸化物粒子の結晶相の同定を行い、含有する結晶相について標準添加法により検量線を作成し、求めることができる。検量線の作成は、ルチル型もしくはアナターゼ型の結晶相の割合がそれぞれ100%である結晶化酸化チタンを用意し、複合酸化物粒子内に含有する結晶相と同一の結晶相を含む結晶化酸化チタンを任意の割合で混合し、積分強度を求めることで得られる。同時に二つの結晶相を含む場合にはそれぞれの結晶相についての含有量を求め、最終的に足し合わせればよい。積分強度は、ルチルであれば2θ=27.3°付近の(110)面の回折ピーク、アナターゼであれば2θ=25.3°付近の(101)面の回折ピークにおけるピーク面積を求めることで得られる。
【0027】
また、本発明のシリカ−チタニア複合酸化物粒子のメジアン径は、画像解析法により求めた体積換算粒子径分布における1次粒子のメジアン径をいい、該メジアン径が10〜500nm、好ましくは10〜200nmの範囲にある。メジアン径が500nmを超える場合には、粒子内でのシリカ成分とチタニア成分の均質性を十分保つことが困難となり、分相し易くなる為、樹脂等へ充填した際の透過率を高めることができない。一方、メジアン径が10nmより小さい場合には本製法では粒子相互の付着性が増加し、粗大な凝集粒子が生成して粒子間に気泡が存在し易くなり、樹脂等に充填した際の透明性が低下する。なお本発明のシリカ−チタニア複合酸化物粒子の粒子径が上記記載の粒子径範囲にある場合、比表面積は、10〜300m
2/gの範囲にある。
【0028】
本発明のシリカ−チタニア複合酸化物粒子は、FT−IRで測定した、Si−O−Si結合に帰属するピーク強度(Siピーク強度)とSi−O−Ti結合に帰属するピーク強度(Tiピーク強度)との比(Siピーク強度/Tiピーク強度)の値Iが下記式(1)を満足していることを最大の特徴とする。
【0029】
I≦W
−0.2+1 (1)
(式中、Wは、W=TiO
2(質量%)/SiO
2(質量%)で表され、蛍光X線分析で測定した値である)
【0030】
本発明において、Siピーク強度/Tiピーク強度比を示すI値は、シリカ−チタニア複合酸化物粒子中におけるシリカ成分とチタニア成分との均一性を示す指標であり、粒子内のSi−O−Ti結合の割合が小さくなり、シリカ成分とチタニア成分が均質に存在していない場合には、I値が大きくなり、上記式(1)を満たさなくなる。このように、I値が大きくなると、複合酸化物粒子の屈折率が粒子の内部で一定にならない為、樹脂や分散液に充填した際の透明性が低下する原因となる。つまり、I値が小さいシリカ−チタニア複合酸化物粒子ほど、粒子全体の屈折率が均質であると言える。
【0031】
但し、好適なI値の上限は、組成によって多少変化するので、I値を特定する際、シリカ−チタニア複合酸化物粒子におけるシリカとチタニアの組成比に応じて、前記(1)式に示すように上限値の補正を行っている。
【0032】
また、I値の下限は特に制限されず、可能な限り小さい値を取ることが好ましいが、製造方法上、I値は、下記(2)式で表される範囲である。
【0033】
I≧W
−0.1(2)
(式中、Wは、W=TiO
2(質量%)/SiO
2(質量%)で表され、蛍光X線分析で測定した値である)
【0034】
尚、上記Si−O−Si結合に帰属するピーク強度/Si−O−Ti結合に帰属するピーク強度の値の詳細な測定法は後述の実施例で説明する。
【0035】
また、本発明のシリカ−チタニア複合酸化物粒子は、後述するように、火炎法によって得られることから、その粒子表面に存在するOH基数は、40個/nm
2以下、好ましくは30個/nm
2以下の範囲にあることに特徴を有する。上記粒子表面に存在するOH基数は、湿式法によっては達成できない特性である。また、上記粒子表面に存在するOH基数が40個を超える場合には、粒子に付着した水分量が多くなり、添加した樹脂や溶媒の透明性や絶縁性などに悪影響を及ぼす。
【0036】
本発明のシリカ−チタニア複合酸化物粒子は、後述する火炎法によって得られることより、適度に広い粒度分布を有している。因みに、画像解析法により得られた1次粒子の体積換算粒子径分布において、下記ロジン−ラムラー式で表される粒度分布の勾配nが2.5以上4.5以下の範囲、好ましくは、3.5〜4.5の範囲にある。
R(Dp)=100exp(−b・Dp
n)
(但し、式中R(Dp)は最大粒子径から粒子径Dpまでの累積体積%、Dpは粒子径、b及びnは定数である。)
【0037】
ここで、ロジン−ラムラー式で表される粒度分布の勾配nは、ロジン−ラムラー線図の最大粒子径から粒子径Dpまでの累積体積%が少なくとも15体積%と85体積%の範囲にある2点を結んだ直線で代表される勾配のことを言い、nの値が大きいと粒度分布がシャープであることを表している。また体積換算を用いたのは、代表的な用途が樹脂用フィラーであり、粒子の体積が樹脂の粘度に影響を及ぼすことを考慮したためである。
【0038】
本発明のシリカ−チタニア複合酸化物粒子において、nが2.5以上4.5以下であることが特徴であり、通常の湿式法により得られる物と比較してその粒度分布は明らかに広く、樹脂や溶媒への分散性が優れている。即ち、nが4.5よりも大きい場合には粒度分布がシャープとなり、シリカ−チタニア複合酸化物粒子を樹脂や溶媒中に多量分散させた際に、樹脂やスラリーの粘性が向上し易くなる。
【0039】
本発明のシリカ−チタニア複合酸化物粒子は、上述の条件を満足するものであればよいが、チタン成分の含有量がチタニア換算で0.01〜25mol%であることが好ましく、20mol%以下であることがより好ましい。チタン成分の含有量がチタニア換算で25mol%を超える場合は、シリカとチタニアが分相しやすく、非晶質状態を維持することが困難である。
【0040】
本発明のシリカ−チタニア複合酸化物粒子の平均円形度は0.80以上であり、0.85以上であることが好ましい。即ち、平均円形度が0.80以上の球状粒子とすることにより、樹脂等に充填する際の粘度上昇が抑制され、高充填が出来、また、充填、成形における作業性を向上させることが可能である。
【0041】
本発明のシリカ−チタニア複合酸化物粒子は、合成後の複合酸化物粒子の塩素存在量が50ppmw以下であることが好ましく、10ppmw以下であることがより好ましい。即ち、塩素存在量が50ppmw以下とすることにより、充填する樹脂、或いは、該樹脂が接触する部材の耐久性の低下を防止することができる。上記塩素の存在量の低減は、後述する原料として塩素を含有しないものを使用することにより達成することができる。
【0042】
本発明のシリカ−チタニア複合酸化物粒子は、合成後の複合酸化物粒子の残留カーボン量が0.1質量%以下であることが好ましく、0.05質量%以下であることがより好ましい。即ち、残留カーボン量が0.1質量%を超える場合、粒子の表面に原料由来のカーボン化合物もしくはカーボンが存在し、樹脂に充填する為の表面処理の妨げになること、更に、樹脂に充填した際の透明性を低下させる原因となる。
【0043】
<シリカ−チタニア複合酸化物粒子の製造>
本発明のシリカ−チタニア複合酸化物粒子の製造方法は特に制限されないが、以下の方法が好適に採用される。
【0044】
即ち、珪素化合物とチタン化合物とよりなる原料をガス状で混合した状態で火炎中に供給して燃焼せしめる方法が挙げられる。
【0045】
上記製造方法において、火炎法を採用することによって、結晶型を非晶質とすることが可能となり、上記火炎の断熱火炎温度を制御することにより、得られるシリカ−チタニア複合酸化物粒子のメジアン径を10〜500nmの範囲に調整可能である。また、ガス状で混合した状態で火炎中に供給して燃焼せしめることにより、Si−O−Ti結合が増加した極めて均一な組成を有するシリカ−チタニア複合酸化物粒子を得ることができる、かかるSi−O−Ti結合の多さを示すI値が前記範囲を満たすシリカ−チタニア複合酸化物粒子を得ることができる。
【0046】
また、均一燃焼が達成されるため、得られるシリカ−チタニア複合酸化物粒子の残留カーボン量が0.1質量%以下とすることが可能である。
【0047】
本発明の製造方法において、原料として使用される珪素化合物は、原料をガス状で使用するため、常温でガス状のもの、或いは、常温で液体であっても沸点が低い、具体的には、300℃以下のものが好適に使用される。また、得られるシリカ−チタニア複合酸化物粒子の塩素存在量を50ppmw以下に調整するためには、珪素化合物とチタン化合物とよりなる原料について塩素分を含まない有機化合物を用いることが望ましい。
【0048】
かかる好適な原料を例示すれば、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ヘキサメチルジシロキサン、オクタメチルトリシロキサンなどのシロキサン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、メチルトリエトキシシランなどのアルコキシシラン、テトラメチルシラン、ジエチルシラン、ヘキサメチルジシラザンなどの有機シラン化合物、モノクロロシラン、ジクロロシラン、トリクロロシラン、テトラクロロシラン等のハロゲン化珪素、モノシラン、ジシランなどの無機シラン化合物を原料珪素化合物として使用することができる。
【0049】
また、原料として使用されるチタン化合物も、原料をガス状で使用するため、常温でガス状のもの、或いは、常温で液体であっても沸点が低い、具体的には、300℃以下のものが好適に使用される。例えば、テトラメトキシチタン、テトラエトキシチタン、テトラ−i−プロポキシチタン、テトラ−n−プロポキシチタン、テトラ−n−ブトキシチタン、テトラ−s−ブトキシチタン、テトラ−t−ブトキシチタンなどの有機チタン化合物、四塩化チタンなどの無機チタン化合物を原料チタン化合物として使用することができる。
【0050】
特に、上記珪素化合物としてシロキサン類および/またはシラザン類またはアルコキシシランを、またチタン化合物としてチタニウムテトライソプロポキシド等のアルコキシチタン化合物を使用することにより塩素等の不純物が著しく低減されたより高純度のシリカ−チタニア複合酸化物粒子を得ることが可能であり、好ましい。
【0051】
本発明の製造方法において、原料の珪素化合物とチタン化合物はそれぞれガス状で、且つ、混合された状態で、酸素と可燃性ガスにより形成される火炎中に供給されて、燃焼せしめられ、シリカ−チタニア複合酸化物粒子が生成される。
【0052】
それ故、上記可燃性ガスは、気体状の珪素化合物とチタン化合物の酸化反応に要する当量以上の量を混合することが必要であり、この際、酸素等の支燃性ガスを混合しても良く、さらには窒素などの不活性ガスを混合しても良い。
【0053】
前記可燃性ガスは、水素、又はメタン、プロパン、ブタン等の炭化水素ガスのいずれでもよいが、生成したシリカ−チタニア複合酸化物粒子への残留カーボン量低減の為、また環境負荷の観点から水素を用いることが好ましい。
【0054】
前記シリカ−チタニア複合酸化物粒子の製造方法は、以下の条件を満足することがより好ましい。
【0055】
(1)バーナーノズルから射出されるガスの供給量から計算される断熱火炎温度が2000K以上である。
【0056】
(2)原料が沸点以上に加熱されてガス状態となった珪素化合物とチタン化合物である。
【0057】
(3)前記珪素化合物とチタン化合物とよりなる原料を火炎中に供給する前に、上記原料の沸点以上の温度に維持された予混合室において原料を混合する工程がある。
【0058】
上記ガス状の珪素化合物とチタン化合物の火炎中での酸化分解反応において、燃焼火炎の断熱火炎温度が高いほど珪素化合物及びチタン化合物の酸化分解温度が見かけ上等しくなり、これにより、粒子内でのシリカ成分とチタニア成分が分相し、酸化チタン由来の結晶が析出するのを防止でき、シリカ成分とチタニア成分が均質なシリカ−チタニア複合酸化物粒子が得られる。即ち、燃焼火炎の温度を2000K以上とすることにより、本発明のシリカ−チタニア複合酸化物粒子をより確実に得ることができるため好ましく、2500K以上であることがより好ましい。
【0059】
上記断熱火炎温度を採用することにより、平均円形度が0.80以上を達成でき、更に、シリカ−チタニア複合酸化物粒子同士の化学結合で形成された融着大粒子・粗大粒子や分散不可能であるほど物理的に強固に凝集した大粒子・粗大粒子の生成を防止することも出来る。
【0060】
尚、前記断熱火炎温度は、中心管と中心管の外側にある環状管から形成されるバーナーノズルから射出される全てのガスの供給量から計算される温度である。上記生成熱ΔH(J/mol)、物質の比熱に関しては、“JANAF Thermochemiical Table SECOND Edition”,堀越研究所(1975)もしくはNIST Chemistry WebBOOK等のデータベースから得ることが可能である。ただしシリカ−チタニア複合酸化物に関する物性データは掲載されていない為、本発明では原料供給量から計算されるシリカとチタニアの含有量分について、シリカとチタニアのそれぞれの物性データを用いて計算を行う。なお、断熱火炎温度の計算で必要となる物質の比熱に関しては、その表式として、2000Kを境界にして、2000K未満、2000K以上それぞれの範囲での値を最小2乗法でフィッティングした温度の6次多項式を用いる。
【0061】
前記本発明のシリカ−チタニア複合酸化物粒子の製造方法において、ガス状の珪素化合物とチタン化合物による火炎は、多重管バーナーを用いて形成することが好ましい。多重管バーナーは、中心管および中心管から同心円状に広がる複数の環状管より構成されることが好ましい。例えば、中心管および2本の環状管から構成される3重管バーナーが挙げられる。また、火炎については可燃性ガスと支燃性ガスをそれぞれ別のノズルから供給する拡散火炎と、可燃性ガスと支燃性ガスをあらかじめ混合した後にノズルへ供給する予混合火炎のいずれでも良いが、未燃焼による残留カーボン量を低減させること、かつ火炎の温度分布を可能な限り均質にする為に予混合火炎を用いることが好ましい。予混合ガスを使用して火炎を形成する場合には、火炎温度の調整は火炎の逆火、吹き飛びの虞がない範囲で実施する必要がある。このため、中心管のガス流速は、10〜200Nm/sの範囲が好ましく、20〜180Nm/sの範囲であることがより好ましい。なお、流速の単位であるNm/sは、温度273K、大気圧で換算した場合の流速である。
【0062】
本発明では珪素化合物とチタン化合物とよりなる原料をガス状で混合した状態で火炎中に供給するに際し、上記混合をより確実に且つ均一に行うため、それぞれの原料の沸点以上の温度に維持された予混合室において原料をガスの状態で混合する工程を含むことが好ましい。また、上記原料と同時に供給する他のガスも必要に応じて混合しておくことはより好ましい。さらには、上記原料のガス状での混合をより均一に行う為に、予混合室でガスの状態で混合する前に、珪素化合物とチタン化合物を溶液の状態において混合させておくことが最も好ましい。最も好適なのは、原料配管の途中に、例えば、スタティックミキサー、衝突型混合機などのような静的混合機を設ける態様である。上記混合機の外壁には、必要に応じてヒーターが設けられる。かかる態様においては、原料は、溶液の状態で混合された後、前記予備混合室において、ガスの状態で更に均一に混合される。
【0063】
上記予混合室としては、原料の沸点以上の温度に維持が可能な空間を有していれば、特に制限なく使用される。
【0064】
上記のようにガス状で混合された原料は、前記多重管バーナーの中心管に供給される。また、中心管の外側にある環状管には、燃焼補助火炎形成のため水素や炭化水素などの可燃性ガスを導入する。このとき、窒素などの不活性ガス、および/または酸素などの支燃性ガスを混合してもよい。
【0065】
多重管バーナーは、最も外側に最外環状管を設け、火炎冷却および火炎燃焼安定化のため酸素などの支燃性ガスを導入することが好ましい。このとき、窒素などの不活性ガスを混合しても良い。
【0066】
本発明のシリカ−チタニア複合酸化物粒子は火炎中および火炎近傍で生成・成長・凝集させることで得られるが、その回収は金属フィルター、セラミックフィルター、バッグフィルター等によるフィルター分離やサイクロン等による遠心分離で燃焼ガスと分離させて、回収することでなされる。
【0067】
回収後のシリカ−チタニア複合酸化物粒子は表面に付着した水分を熱処理により除去しても構わない。
【0068】
上記のようにして得られる本発明のシリカ−チタニア複合酸化物粒子は、樹脂充填剤、分散液として好適に使用される。例えば、このシリカ−チタニア複合酸化物粒子が充填材として配合された樹脂組成物は、半導体封止材、液晶シール材或いは積層基板用絶縁材としての用途に好適である。また、このシリカ−チタニア複合酸化物粒子を分散液として使用する場合、反射防止膜用の屈折率調整材としての用途に好適である。
【0069】
前記分散液の溶媒としては、シリカ−チタニア複合酸化物粒子が均一かつ安定に溶解または分散可能な溶媒を用いることが好ましい。溶媒としては水、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール類、酢酸メチルエステル、酢酸エチルエステル等のエステル類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、ジエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル類、などが挙げられる。これらは単独で使用してもよく、また2種以上混合して使用しても構わない。
【0070】
本発明のシリカ−チタニア含有分散液には、分散液の安定化、あるいは高分子膜への塗工性の向上の為に、界面活性剤等の分散剤、増粘剤、湿潤剤、消泡剤、酸やアルカリを含むpH調製剤、等の各種添加剤を加えてもよい。
【0071】
また、本発明のシリカ−チタニア複合酸化物粒子は、そのまま樹脂に配合し或いは溶媒に分散することもできるが、表面処理剤により表面処理して使用に供することもできる。
【0072】
本発明のシリカ−チタニア複合酸化物粒子は、その用途に応じて、シリル化剤、シリコーンオイル、シロキサン類、金属アルコキシド、脂肪酸及びその金属塩からなる群から選ばれる少なくとも1種の処理剤によって表面処理されていてもよい。
【0073】
具体的なシリル化剤として、テトラメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、o−メチルフェニルトリメトキシシラン、p−メチルフェニルトリメトキシシラン、n−ブチルトリメトキシシラン、i−ブチルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、i−ブチルトリエトキシシラン、デシルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン等のアルコキシシラン類、ヘキサメチルジシラザン、ヘキサエチルジシラザン、へキサプロピルジシラザン、ヘキサブチルジシラザン、ヘキサペンチルジシラザン、ヘキサヘキシルジシラザン、ヘキサシクロヘキシルジシラザン、ヘキサフェニルジシラザン、ジビニルテトラメチルジシラザン、ジメチルテトラビニルジシラザン等のシラザン類等が挙げられる。
【0074】
また、シリコーンオイルとしては、ジメチルシリコーンオイル、メチルハイドロジェンシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、アルキル変性シリコーンオイル、脂肪酸変性シリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイル、アルコキシ変性シリコーンオイル、カルビノール変性シリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイル、末端反応性シリコーンオイル等が挙げられる。
【0075】
また、シロキサン類としては、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ヘキサメチルジシロキサン、オクタメチルトリシロキサン等が挙げられる。
【0076】
また、金属アルコキシドとしては、トリメトキシアルミニウム、トリエトキシアルミニウム、トリ−i−プロポキシアルミニウム、トリ−n−ブトキシアルミニウム、トリ−s−ブトキシアルミニウム、トリ−t−ブトキシアルミニウム、モノ−s−ブトキシジ−i−プロピルアルミニウム、テトラメトキシチタン、テトラエトキシチタン、テトラ−i−プロポキシチタン、テトラ−n−プロポキシチタン、テトラ−n−ブトキシチタン、テトラ−s−ブトキシチタン、テトラ−t−ブトキシチタン、テトラエトキシジルコニウム、テトラ−i−プロポキシジルコニウム、テトラ−n−ブトキシジルコニウム、ジメトキシ錫、ジエトキシ錫、ジ−n−ブトキシ錫、テトラエトキシ錫、テトラ−i−プロポキシ錫、テトラ−n−ブトキシ錫、ジエトキシ亜鉛、マグネシウムメトキシド、マグネシウムエトキシド、マグネシウムイソプロポキシド等が挙げられる。
【0077】
また、更に脂肪酸及びその金属塩を具体的に例示すれば、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ドデシル酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ペンタデシル酸、ステアリン酸、ヘプタデシル酸、アラキン酸、モンタン酸、オレイン酸、リノール酸、アラキドン酸などの長鎖脂肪酸が挙げられ、その金属塩としては亜鉛、鉄、マグネシウム、アルミニウム、カルシウム、ナトリウム、リチウム等の金属との塩が挙げられる。
【0078】
上記表面処理剤を使用した表面処理の方法は公知の方法が何ら制限無く使用できる。例えば、シリカ−チタニア複合酸化物粒子を攪拌下に表面処理剤を噴霧するか、蒸気で接触させる方法が一般的である。
【0079】
本発明のシリカ−チタニア複合酸化物粒子は、屈折率を任意に調整できるため、前述した光半導体用封止材、反射防止膜用の屈折率調整材としての用途に好適に使用されるが、かかる用途に限定されるものでなく、単独で或いは他の粒子と組み合わせて、その他の用途に使用することも可能である。例えば、半導体用途、焼結体材料、CMP等の研磨材、光反応性接着剤等の接着剤、化粧品、精密樹脂成形品充填材、歯科材用充填材、LED用シール剤、インクジェット紙コ−ト層、電子写真用感光体保護層、電子写真用感光体クリ−ニング材、各種の樹脂フィルム、塗料艶消し剤等の塗料添加剤、アンチブロッキング剤、ハードコート剤、反射用成型体の原材料、金属・セラミックス等への被膜材等の用途にも好適に使用することができる。
【実施例】
【0080】
本発明を具体的に説明するために実施例及び比較例を示すが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0081】
なお、以下の実施例及び比較例における各種の物性測定等は以下の方法による。
【0082】
(1)XRD測定:
結晶構造はX線回折装置(株式会社リガク製smartLab)を用いて測定した。測定条件はスキャン範囲2θ=10〜90°、スキャンスピ−ド1°/min、ステップ幅0.02°とした。測定結果より複合酸化物粒子内に結晶相が含まれる場合には結晶相の同定を行い、含有する結晶相と同一の結晶相の割合が100%である結晶化酸化チタンを0wt%、1wt%、5wt%、10wt%の各割合で混合し、結晶相がルチルであれば2θ=27.3°付近の(110)面の回折ピークの、結晶相がアナターゼであれば2θ=25.3°付近の(101)面の回折ピークにおける積分強度を求める。得られた値について、添加量を横軸に、ピーク強度を縦軸にプロットして検量線を作成し、その縦軸が0となる点の値を求めることで、結晶相の含有率(wt%)を求めた。結晶化酸化チタンは、ルチル型酸化チタン(和光純薬工業(株)、試薬特級)、アナターゼ型酸化チタン(和光純薬工業(株)、和光一級)を用いた。
【0083】
(2)XRF測定
シリカ−チタニア複合酸化物中のシリカ含有量とチタニア含有量を蛍光X線分析装置(株式会社リガク製ZSX PrimusII)を用いて測定した。含有量は酸化物換算した値を用いた。
【0084】
(3)BET比表面積測定:
BET比表面積は日本ベル製のBELSORP−maxにより窒素吸着BET法により測定した。
【0085】
(4)粒子表面のOH基数測定方法
本発明における粒子表面のOH基数の定量はカールフィッシャー法を用いて行った。カールフィッシャー水分計は、京都電子製電量式カールフィッシャー水分計MKC−610に鉱石用水分気化装置ADP−512を接続したものを使用した。水分気化装置には加熱炉が設置されており、気化した水分を乾燥窒素で水分計に導入し、水分量の測定を行った。設定温度は100℃から200℃に昇温させたとき、200℃から500℃に昇温させたとき、500℃から900℃に昇温させたときの3段階で測定を行い、その合計の水分量を算出した。なお、カールフィッシャー法において検出された水分量は、OH基2個が縮合して1個の水分子になると考え、次式により求めた。
OH基数(個/nm
2)=0.0662×水分量(ppm)/シリカ−チタニア複合酸化物粒子の比表面積(m
2/g)
(5)画像解析法により求める90%粒子径、メジアン径測定:
電界放射型走査電子顕微鏡(日立ハイテクノロジーズ製S−5500)で粒子5000個を2次電子像で任意に撮影し、撮影した画像を画像解析装置(旭エンジニアリング社製IP−1000C)で粒子径解析を行い、体積平均により求めた。
【0086】
(6)ロジン−ラムラー線図による勾配n
上記(4)によって得られた1次粒子の体積換算粒子径分布を元に、ロジン−ラムラー線図上に横軸に粒子径、縦軸に累積体積分布をとりプロットした。累積体積分布が15体積%から85体積%の範囲で最小二乗法により直線を求め、その直線の勾配からn値を求めた。
【0087】
(7)平均円形度測定:
得られたシリカ−チタニア粒子5000個の円形度を画像解析装置(旭エンジニアリング社製IP−1000C)により算出し、平均値を算出した。
【0088】
(8)FT−IR測定:
Si−O−Si結合に帰属するピーク強度(Siピーク強度)とSi−O−Ti結合に帰属するピーク強度(Tiピーク強度)はフ−リエ変換赤外分光光度計(アジレント・テクノロジー製FTS−3000)を用いて拡散反射法にて測定した。測定試料はシリカ−チタニア複合酸化物濃度が5wt%となるようにシリカ−チタニア複合酸化物とKBrを秤量した後、メノウ乳鉢で混合・粉砕して粒度を揃えた。測定はJIS K 0117に準じて測定し、条件は測定範囲4000〜400cm
−1、分解能4cm
−1、積算回数32回とし、測定されたスペクトルはクベルカムンク変換を行った。強度比の算出にはSi−O−Si結合に帰属するピーク(1100cm
−1付近)とSi−O−Ti結合(950cm
−1付近)に帰属するピークを用いた。これらのピーク強度は同一視野で確認される値を用いた。
【0089】
(9)塩素存在量測定
超純水50gにシリカ−チタニア5gを添加し、テフロン(登録商標)分解容器を用いて120℃で24時間加熱した。その後、遠心分離器を用いてシリカ−チタニア固形分を分離し、イオンクロマト測定試料を得た。なお、超純水のみで前記操作を行い、ブランク試料を得た。得られた試料の塩素量をイオンクロマトグラフィー測定装置(サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社製Dionex ICS−2100)を用い、測定した。
【0090】
(10)残留カーボン量:
NC量測定装置(住化分析センター製スミグラフNC−22F)を用い、炭素量を測定した。なお、測定するシリカ−チタニア試料は50〜100mgとした。
【0091】
(11)屈折率測定、透過率測定
粒子の屈折率は、液浸法によって測定した。即ち、異なる屈折率の溶媒(例えば、トルエン、1−ブロモナフタレン、1−クロロナフタレン、ジヨ−ドメタン、イオウ入りジヨードメタンなど)を適当に配合することにより任意の屈折率の混合溶媒を作り、その中に粒子を分散させて25℃において最も透明な粒子分散溶液の屈折率を粒子の屈折率とした。溶媒の屈折率はアッベの屈折率計を用いて25℃で589nmの波長の光を用いて測定した。また、上記屈折率を測定する際に最も透明となった時の分散液の透過率を紫外可視分光光度計(日本分光製V−650)で測定した。セルは光路長1cmの石英セルを使用し、波長593nmの透過率を測定して可視光透過率とした。
【0092】
実施例1〜9、比較例1〜4
中心管供給ガスとして水素、窒素、酸素と、原料となるオクタメチルシクロテトラシロキサンとチタニウムテトライソプロポキシドとを共に300℃に加熱した予混合室において混合し、気体状で均一に混合した。前記中心管供給ガスを同心円3重管バーナーで燃焼させシリカ−チタニア複合酸化物粒子を製造した。中心管の外側にある第1環状管には、水素と窒素を導入し、最外環状管には空気を導入した。合成したシリカ−チタニア複合酸化物粒子はバッグフィルターで回収した。
【0093】
比較例1、2では火炎温度を2000K以下とし、比較例3、4ではチタン成分の割合を25mol%以上とした。上記記載の製造方法で得られたシリカ−チタニア複合酸化物粒子に対して物性測定を行った。
【0094】
表1、2に実施例1〜9の製造条件とシリカ−チタニア複合酸化物粒子特性を、表3に比較例1〜4の製造条件とシリカ−チタニア複合酸化物粒子特性をそれぞれ示す。
【0095】
比較例5、6
噴霧燃焼法にてシリカ−チタニア複合酸化物粒子を合成した。原料としてオクタメチルシクロテトラシロキサンとチタニウムテトライソプロポキシドを用い、安定剤としてエタノール5部加えた混合液を噴霧ノズルから射出した。噴霧媒体には窒素を用い、周囲から水素、窒素、酸素による補助火炎にて燃焼させた。得られたシリカ−チタニア複合酸化物粒子はバッグフィルターで回収した。表4に比較例5、6の製造条件とシリカ−チタニア複合酸化物粒子特性を示す。
【0096】
【表1】
【0097】
【表2】
【0098】
【表3】
【0099】
【表4】
【0100】
実施例1〜9ではシリカ成分とチタニア成分が均質に存在し、シリカ、チタニアの含有量を変化させることで屈折率を制御でき、また所定の屈折率における透明性の高いシリカ−チタニア複合酸化物粒子が得られた。比較例1、2では火炎温度が低い為にシリカ成分とチタニア成分が分相し、チタニアに由来する結晶(アナターゼールチル)が析出した。比較例3、4ではチタニア含有量が高い為に比較例1、2と同様にシリカ成分とチタニア成分が分相した。比較例5、6では噴霧燃焼で合成した結果、回収した粒子にカーボンが残存しており、さらに実施例と比較して均質性も低下した結果、透明性が低下した。比較例6ではチタニアに由来する結晶が析出し、非晶質の粒子を得ることができなかった為、屈折率を測定することができなかった。