特許第6516727号(P6516727)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6516727検体検査自動化システムおよびチェックモジュールならびに試料のチェック方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6516727
(24)【登録日】2019年4月26日
(45)【発行日】2019年5月22日
(54)【発明の名称】検体検査自動化システムおよびチェックモジュールならびに試料のチェック方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 35/10 20060101AFI20190513BHJP
   G01N 35/02 20060101ALI20190513BHJP
【FI】
   G01N35/10 C
   G01N35/02 C
【請求項の数】8
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2016-513672(P2016-513672)
(86)(22)【出願日】2015年3月13日
(86)【国際出願番号】JP2015057573
(87)【国際公開番号】WO2015159620
(87)【国際公開日】20151022
【審査請求日】2017年10月16日
(31)【優先権主張番号】特願2014-85696(P2014-85696)
(32)【優先日】2014年4月17日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】特許業務法人開知国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 孝浩
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 巌
(72)【発明者】
【氏名】末成 元
(72)【発明者】
【氏名】中川 樹生
(72)【発明者】
【氏名】江崎 佳奈子
【審査官】 小野 郁磨
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−046033(JP,A)
【文献】 特開2010−240510(JP,A)
【文献】 特開2000−266768(JP,A)
【文献】 特開2014−006094(JP,A)
【文献】 特開平04−218726(JP,A)
【文献】 特開2010−133925(JP,A)
【文献】 特開2001−108506(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 35/02−35/10
G01F 23/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器に収容された試料のチェックを行う検体検査自動化システムであって、
この検体検査自動化システム内に投入された前記容器の種類、前記容器の栓種類を特定する特定部と、
この特定部によって特定された前記容器の種類および前記容器の栓種類に応じて、前記容器内の試料の上面を非接触の静電容量方式によって検出する異形状容器対応計測部と、
この異形状容器対応計測部を前記容器に対して上下動させる上下方向移動部と、
前記特定部によって特定された前記栓種類に関する情報に応じて、前記上下方向移動部によって前記異形状容器対応計測部を前記容器に対して上下動させながら前記容器内の試料の上面を検出するよう制御する制御部とを備え
前記異形状容器対応計測部は、
前記容器内の試料の上面を非接触の静電容量方式によって検出する静電容量センサと、
この静電容量センサを前記容器に対して水平方向に移動させることで前記静電容量センサと前記容器との水平方向距離を調整する水平方向移動部と、を有する
ことを特徴とする検体検査自動化システム。
【請求項2】
請求項1に記載の検体検査自動化システムにおいて、
前記特定部によって特定された容器種類に関する情報から前記容器の容器径および分離剤の有無を特定して、この特定結果と前記異形状容器対応計測部で検出した前記容器内の試料の上面に関する情報とから前記容器内の試料の容量を演算する演算部を更に備えた
ことを特徴とする検体検査自動化システム。
【請求項3】
請求項に記載の検体検査自動化システムにおいて、
前記容器の側面に対して光を照射する照射部と、
前記容器を通過した透過光の量を測定する受光部とを更に備え、
前記上下方向移動部は、前記照射部および前記受光部を、前記異形状容器対応計測部とともに前記容器に対して上下動させ、
前記演算部は、前記受光部で測定した前記透過光の量に基づき、前記容器内の試料の固液分離面を求め、この求めた固液分離面と、前記容器径および分離剤の有無の特定結果と、前記異形状容器対応計測部で検出した前記容器内の試料の上面に関する情報とから前記容器内の試料の容量を演算する
ことを特徴とする検体検査自動化システム。
【請求項4】
請求項に記載の検体検査自動化システムにおいて、
前記異形状容器対応計測部、前記照射部および前記受光部とが、前記容器内に収容された試料の長手方向の幅に応じた間隔で配置された
ことを特徴とする検体検査自動化システム。
【請求項5】
請求項1に記載の検体検査自動化システムにおいて、
前記容器の直径が13mmのときは、前記異形状容器対応計測部と前記容器との距離を1cmとし、
前記容器の直径が16mmのときは、前記異形状容器対応計測部と前記容器との距離を1.5cmとする
ことを特徴とする検体検査自動化システム。
【請求項6】
容器に収容された試料または試薬のチェックを行うチェックモジュールであって、
このチェックモジュール内に搬送された前記容器の種類、前記容器の栓種類を特定する特定部と、
この特定部によって特定された前記容器の種類および前記容器の栓種類に応じて、前記容器内の試料または試薬の上面を非接触の静電容量方式によって検出する異形状容器対応計測部と、
この異形状容器対応計測部を前記容器に対して上下動させる上下方向移動部と、
前記特定部によって特定された前記栓種類に関する情報に応じて、前記上下方向移動部によって前記異形状容器対応計測部を前記容器に対して上下動させながら前記容器内の試料または試薬の上面を検出するよう制御する制御部とを備え
前記異形状容器対応計測部は、
前記容器内の試料の上面を非接触の静電容量方式によって検出する静電容量センサと、
この静電容量センサを前記容器に対して水平方向に移動させることで前記静電容量センサと前記容器との水平方向距離を調整する水平方向移動部と、を有する
ことを特徴とするチェックモジュール。
【請求項7】
容器に収容された試料のチェック方法であって、
前記容器の種類を特定し、この特定された容器種類に関する情報から、前記容器の栓種類を特定する特定工程と、
前記特定工程によって特定された前記栓種類に関する情報に応じて、前記容器内の試料の上面を非接触の静電容量方式によって検出する静電容量センサと、この静電容量センサを前記容器に対して水平方向に移動させることで前記静電容量センサと前記容器との水平方向距離を調整する水平方向移動部と、を有する、非接触の静電容量方式の異形状容器対応計測部を前記容器に対して上下動させることで前記容器内の試料の上面を検出する検出工程とを具備する
ことを特徴とする試料のチェック方法。
【請求項8】
容器に収容された試料のチェックを行う検体検査自動化システムであって、
この検体検査自動化システム内に投入された前記容器の種類、前記容器の栓種類を特定する特定部と、
この特定部によって特定された前記容器の種類および前記容器の栓種類に応じて、前記容器内の試料の上面を非接触の静電容量方式によって検出する異形状容器対応計測部と、
この異形状容器対応計測部を前記容器に対して上下動させる上下方向移動部と、
前記特定部によって特定された前記栓種類に関する情報に応じて、前記上下方向移動部によって前記異形状容器対応計測部を前記容器に対して上下動させながら前記容器内の試料の上面を検出するよう制御する制御部とを備え、
前記異形状容器対応計測部は、
前記容器内の試料の上面を非接触の静電容量方式によって検出する第1静電容量センサと、
この第1静電容量センサに比べて検出可能距離が短い第2静電容量センサとを有し、
前記制御部は、前記特定部によって特定された前記容器の種類に基づいて、前記第1静電容量センサと前記第2静電容量センサとのいずれのセンサを用いるかを選択し、選択されたセンサによって前記容器内の試料の上面を検出するよう制御する
ことを特徴とする検体検査自動化システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器の中に採取した血液などの生体試料やその分析に用いる試薬等の状態を自動でチェックするための検体検査自動化システムおよびチェックモジュールならびに試料のチェック方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、液体の吸引または吐出を行うプローブの先端部が液体の液面に到達したか否かを検知するために、静電容量の変化量に基づいて血清の液面を検知するとともに分注時のプローブ内の圧力の変化による液面検知を参照して真の液面を検知する液面検知装置を備えた自動分析装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許4898270号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
生体試料の成分の濃度を自動で分析する自動分析装置の技術が進歩し、分析項目が増加した。また、個別の分析項目に対する測定時間の短縮が実現したことにより、各検査室における一日あたりの処理すべき生体試料数、すなわち処理能力が従来と比べ圧倒的に増加している。
【0005】
生体試料を自動分析装置に投入する前に必要な処理(遠心処理、開栓処理、分注処理等を意味し、以下前処理と言う)を自動で行う技術や、自動分析装置への自動搬送を行う技術が、前処理システムとして提供されている。
【0006】
このうち、分注処理は、自動分析装置に搬送する子検体を作成する小分け処理である。従来は、依頼項目に応じて、子検体の本数と分注量を決めていた。そのため、採取した生体試料の量が少なく依頼項目の測定に必要な量に満たない場合、指示された本数分の子検体容器を準備したにも関わらず、分注処理が完了せずに途中で終了するということがあった。このことが、子検体容器およびそれに貼付するバーコードの無駄な消費に繋がっていた。
【0007】
近年、これを避けるために、分注処理の前に生体試料の容量または残量を計測し、分注が可能な本数のみ子検体容器を用意する制御方法が必要とされるようになった。また、容量不足で作成されなかった子検体を搬送する予定だった自動分析装置に関わる項目が一律に測定されないことを避けるため、測定項目の優先度に応じて、自動分析装置による測定に必要な量と実際の生体試料の容量を照らし合わせ、最適な本数と量を分注する制御方法が求められるようになった。さらに、自動分析装置の測定項目数の増加と処理する検体数の増加に伴い、容量の計測を自動化することが市場要求となってきた。
【0008】
これを受け、前処理段階で生体試料の容量を自動で測定する機能に関する技術の開発がなされてきた。
【0009】
しかし、一般に、容器の表面に患者ID・個人情報・装置運用に必要なパラメータなどの重要情報が記載されたバーコードラベルが貼付され、場合によっては、採血管種とラベルの大きさにより採血管の管壁の全体が被覆されている、あるいは幾重にも重ねてラベルを貼付されている。このため、内容物が外側から不可視になることがある。このことが当分野における容量測定の障害となっていた。
【0010】
このような条件下であっても、当目的に有用な結果を提供できる技術として、例えば上述した特許文献1に記載のような技術がある。
【0011】
しかし、特許文献1に記載のような静電容量とプローブ内圧力を用いる検出方法は、分注プローブにて液面と接触することが必要であり、分注前に生体試料の容量を計測したいという要望には沿わない。
【0012】
また、液面を事前に検知できることによって、分注の際に分注用プローブが分離剤へ衝突することを防止できる点で利点はある。しかし、迅速かつ正確に状態を把握するためのワークフローを制御するための情報を提供するという目的は達成できない。
【0013】
さらに、液面を検知するためには採血管の蓋を開封する必要があり、検体の汚染の問題、プローブの洗浄、更には開栓および閉栓の手間が余計にかかるなど、多くの問題を有している。
【0014】
ところで、生体試料の容量測定を行う際に生じる別の課題に、多種多様に存在する容器の形状に対応しなければならないことが挙げられる。通常、容器には血清検査用や尿検査用等、検査対象ごとに形状が用意される場合や、血液学検査用や生化学検査用等、検査項目により形状が用意される場合がある。また、それぞれの容器は、製造各者の独自の設計思想による形状に基づき開発、製造され、市場投入されているのが現状である。
【0015】
また、前処理システムが導入されるのは相対的に規模の大きな施設であり、そのような施設におけるシステムの運用では多種多様の容器が用いられ、投入順序も不規則である。そのため、検査装置のシステムとしての実用性に耐えうる技術を構築する必要があった。
【0016】
本発明は、例えば生体試料の成分濃度の定性・定量分析を行う自動分析装置に投入する検体等の前処理を実施するための検体検査自動化システムにおいて、処理能力の向上を達成することができる検体検査自動化システムおよびチェックモジュールならびに試料のチェック方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記課題を解決するために、例えば特許請求の範囲に記載の構成を採用する。
本発明は、上記課題を解決する手段を複数含んでいるが、その一例を挙げるならば、容器に収容された試料のチェックを行う検体検査自動化システムであって、この検体検査自動化システム内に投入された前記容器の種類、前記容器の栓種類を特定する特定部と、この特定部によって特定された前記容器の種類および前記容器の栓種類に応じて、前記容器内の試料の上面を非接触の静電容量方式によって検出する異形状容器対応計測部と、この異形状容器対応計測部を前記容器に対して上下動させる上下方向移動部と、前記特定部によって特定された前記栓種類に関する情報に応じて、前記上下方向移動部によって前記異形状容器対応計測部を前記容器に対して上下動させながら前記容器内の試料の上面を検出するよう制御する制御部とを備え、前記異形状容器対応計測部は、前記容器内の試料の上面を非接触の静電容量方式によって検出する静電容量センサと、この静電容量センサと前記容器との水平方向距離を調整する水平方向移動部とを有することを特徴とする。


【発明の効果】
【0018】
本発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば以下の通りである。
すなわち、本発明によれば、従来の目視確認の作業を低減することができ、よって、マニュアル作業の低減と、複数の分析項目数からなる複雑な処理フローの最適化に貢献する容器内の試料についての情報を得るための検出精度の向上を図ることが可能となり、処理能力を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の第1の実施形態に係る検体検査自動化システムの全体構成および自動分析装置との位置関係を示す構成図である。
図2】本発明の第1の実施形態における検体検査自動化システムでチェックする検体容器の概略の一例を示す図である。
図3】本発明の第1の実施形態における検体検査自動化システムでチェックする検体容器の概略の一例を示す図である。
図4】本発明の第1の実施形態における検体検査自動化システムでチェックする検体容器の概略の一例を示す図である。
図5】本発明の第1の実施形態に係る検体検査自動化システムにおける生体試料の容量の測定を行う機能を備えたモジュールの概略を示す図である。
図6】本発明の第1の実施形態に係る検体検査自動化システムにおける生体試料の容量の測定を行う構成の側面の概略を示す図である。
図7】本発明の第1の実施形態に係る検体検査自動化システムにおける生体試料の容量の測定結果の一例を示す図である。
図8】本発明の第1の実施形態に係る検体検査自動化システムにおける検体容器中の生体試料の容量の測定のセンサの制御と出力の関係を説明する図である。
図9】本発明の第1の実施形態に係る検体検査自動化システム検体容器中の生体試料の容量の測定のフローチャート図である。
図10】本発明の第2の実施形態に係る検体検査自動化システムにおける生体試料の容量の測定を行う構成の概略を示す図である。
図11】本発明の第3の実施形態に係る検体検査自動化システムにおける生体試料の容量の測定を行う構成の概略を示す図である。
図12】本発明の第4の実施形態に係る検体検査自動化システムにおける生体試料の容量の測定を行う機能を備えたモジュールの概略を示す図である。
図13】本発明の第5の実施形態に係る検体検査自動化システムにおける生体試料の容量の測定を行う機能を備えたモジュールの概略を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に本発明の検体検査自動化システムおよびチェックモジュールならびに試料のチェック方法の実施形態を、図面を用いて説明する。なお、以下の実施形態を説明するための全図において、同一の部材には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0021】
<第1の実施形態>
本発明の検体検査自動化システムおよび試料のチェック方法の第1の実施形態を、図1乃至図9を用いて説明する。
図1は本発明の一実施形態に係る検体検査自動化システムの全体構成と自動分析装置との位置関係を示す構成図であり、患者から採取した生体試料(血液)を前処理して、自動分析装置で分析する構成を示している。
【0022】
図1において、容器101に収容された生体試料のチェックを行う検体検査自動化システムは、搬送ライン2、投入モジュール201、遠心分離モジュール202、生体試料チェックモジュール203a、開栓モジュール204、ラベラ205、分注モジュール206、閉栓モジュール207、分類モジュール208、収納モジュール209を基本要素とする複数のモジュールを備える検体前処理システム200と、この検体前処理システム200全体を制御する制御用パソコン210とから構成されている。
検体前処理システム200の先には、生体試料の成分濃度の定性・定量分析を行う自動分析装置211が接続されている。
【0023】
投入モジュール201は、検体を収容した容器101を検体前処理システム200内に投入するモジュールであり、カメラ(容器情報取得部)221を備えている。遠心分離モジュール202は、投入された検体に対して遠心分離を行うモジュールである。開栓モジュール204は、遠心分離された検体を収容した容器101の栓102を開栓するモジュールである。分注モジュール206は、遠心分離された容器101内の検体を後述する容量演算部19d2において演算された検体の容量に関する情報に基づいて、または未遠心検体を自動分析装置211などで分析するために小分けするモジュールである。ラベラ205は、分注モジュール206で小分けされる予定の試料を収容する容器にバーコードを貼り付けるモジュールである。閉栓モジュール207は、小分けされた容器や分注元の容器101に栓を閉栓するモジュールである。分類モジュール208は、分注された容器の分類を行うモジュールである。収納モジュール209は、閉栓された容器を収納するモジュールである。
制御用パソコン210は、検体前処理システム200内の各モジュールや各モジュール内の各機構の動作を制御する。
搬送ライン2は、投入された容器101を各モジュールに対して搬送するためのラインである。
【0024】
次に、測定対象について説明する。
容器101の内容物である生体試料について、ここでは血液を例に挙げる。
【0025】
容器101には分離剤112を有するものを用いる。採血後の遠心分離処理により、上から、血清111、分離剤112、血餅113の3層に分離されている。種類は問わないが、容器101には栓102およびバーコード103が付いている。なお、バーコードの貼付状態には、図2に示すようなバーコード103のサイズが容器101の径より小さくかつ片面にのみに貼られた状態、すなわち隙間から内容物が見える状態104と、図3に示すようなバーコード103が容器101を覆い隠すように側面全体に貼られる、あるいはバーコードのシールが2重3重に貼られることにより、内容物が見えない状況になっている状態105とがある。
また、測定対象には、採血後に遠心分離処理が行われなかった容器101も存在する。この場合、図4に示すように、全血117と下に沈んだ分離剤112の2層構造の状態106となる。
本発明はいずれの状態にも一様に対応することが可能である。以下図2および図3の三層構造の例を参照して説明する。
【0026】
まず、図5を参照して、生体試料の容量の測定を行う機構の構成について説明する。図5は、本発明の一実施形態に係る検体検査自動化システムで生体試料の容量の測定を行う機能を備えたモジュールの概略図である。
【0027】
生体試料容量測定機器1は、図1に示すような検体前処理システム200の生体試料チェックモジュール203aに設置されている。
【0028】
生体試料チェックモジュール203aに関する搬送ライン2は、生体試料チェックモジュール203aに立ち寄る容器101を搬送する主要ライン2d、生体試料チェックモジュール203aに立ち寄らず、通過する容器101を搬送する追い越しライン2c、測定待ちの容器101を一時的に待機させるとともに、測定のために停止させることが可能なバッファライン2b、および測定を実行し、測定後の容器101を主要ライン2dに戻す搬出ライン2aの4つのラインにより構成されている。
矢印3a,3b,3cはライン2の移動方向を示している。
機器1は、図5に示す搬出ライン2a上に設置されており、この機器1の位置が測定ポジション7となる。この測定ポジション7の下方には、容器101を保持したホルダ4の到着を検知するセンサ(例えばRFID)と、ホルダ4を測定ポジション7に停止させるストッパが設けられている。
【0029】
次に、本発明の一実施形態に係る生体試料の容量の測定を行う機構の構成について図6を用いて説明する。図6は、本発明の一実施形態に係る生体試料の容量の測定を行う機構の構成図(側面図)であり、代表例として、容量を測定する開始直前の様子を示している。
【0030】
図6に示すように、生体試料容量測定機器1は、主要構成要素の1つとして、検知機構12、この検知機構12を上下稼働させるための回転棒17、この回転棒17を回転させるモータ11を有している。回転棒17にはネジがついており、回転棒17に接続した検知機構12が矢印13aの方向に稼働する仕組みとなっている。
【0031】
検知機構12は、図6に示すように、静電容量センサ31をその左右の中心位置に、照射部21および受光部22とをその中心線からみて左右対称の位置にそれぞれ有している。
【0032】
ここで、本実施形態における測定系統である検知機構12の詳細について図6を用いて以下説明する。
【0033】
機器1に設けられた静電容量センサ31は、非接触の静電容量方式によって容器101内の試料の上面を容器101の外側から検出するセンサであり、液体の検出に優れている。
【0034】
非接触の静電容量方式について以下簡単に説明する。
ある導体(以下電極と称する)に大地に対してプラスの電圧を加えると、電極にはプラスの電荷が生じ、電極と大地間に電界ができる。この電界中に物体が存在すれば静電誘導を受けて、電極に近い側に電極と異種のマイナスの電荷が現われ、反対側にはプラス電荷が現われる。この現象を分極という。物体が電極から遠く離れていれば電界は弱いので分極も小さいが、電極に接近するにしたがって電界は強くなって分極も大きくなる。そうすると、物体に生じたマイナス電荷の誘導を受けて電極側のプラス電荷は増加する。したがってC=Q/Vの関係から電荷Qが増加することは、電極の静電容量Cが増加することになる。
【0035】
ここで、非接触の静電容量方式において、ある物体の接近を検出するためのスイッチを考えると、検出回路に発振回路を利用しており、発振回路のある端子(電極)の静電容量Cが発振条件の一要素となるように発振回路を構成し、この電極のCの変化にしたがって発振を開始、あるいは停止するようにして電極に接近する物体の検出を行う。
【0036】
ところで、電極の静電容量の変化は、物体の大きさ、厚さ、誘電体の場合には比誘電率εsなどに関係があり、大きいほど、厚いほど、εsが大きいほど静電容量変化は大きくなり、動作距離も大きくなる。この比誘電率εsは、静電誘導を受けて物体中の電荷が分極する度合を示し、真空の場合を基準にして1とすると、水の約80をはじめ液体は比較的大きく、固体では10以下のものが多い。このことから、検出電極に物体が接近した時の電極の静電容量変化を検出して、静電容量の差異を検出することで、液相と他の層(気相,固層)との境界を検出する。
【0037】
ここでは、静電容量センサ31は、血清111の上面114(血清111と空気層との境界)の検出に利用する。
【0038】
照射部21は容器101の側面に対して光を照射する。受光部22は、この照射部21から照射されて容器101を通過した透過光の量を測定する。すなわち、照射部21と受光部22とからなる光検出系は、透過光量の差異から層の境界を検出するものであり、光学的に厚い層とそうでない層との境界の検出に優れている。
【0039】
受光部22は、具体的にはノイズに強いファイバセンサなどが適している。もちろんフォトダイオード、CCD、CMOSなどでもよい。また、照射部21には、光量の強いものを採用することが望ましい。本実施形態ではLED光源を用いる。照射部21は、もちろんレーザ光源やハロゲンランプでもよい。また、本実施形態のLED光源では、赤外光(約940nm)を用いるが、透過率の高いものであれば波長帯は特に限定されない。
【0040】
照射光であるLED赤外光は、血清111、分離剤112のような比較的に光学的に薄い層を容易に透過する。この特徴は、先述のように、バーコード103が貼られていた状態でも不変的な原理である。一方で、血餅113のように光学的に厚い層は透過しにくい。ここでは、この特徴を利用して、光学的に厚い血餅113と光学的に相対的に薄い分離剤112との境界面116の検出に利用する。
【0041】
そのために、血清111や分離剤112に対するLED光の透過光量と、血餅113に対するLED光の透過光量を区別するためのしきい値を予め信号量取得部19bにインストールしておく。血餅113に対するLED光の透過光量は、血清111または分離剤112に対するLED光の透過光量と比して極めて小さいため、しきい値に大きく依存せずにバラツキなく検出することができる。
【0042】
バーコード103で上面114や境界面116が見えない状態にあっても、静電容量センサ31および光検出系は安定して上面114や境界面116を検出可能である。
【0043】
本実施形態では、上面114および境界面116の検出は、静電容量センサ31や光検出系を備えた検知機構12を容器101の上側から下側に移動させて行う。
通常、センサのついた検知機構12を固定し、容器101を上下させる方法が一般的である。しかし、容器101を上下移動させる場合、血清111に揺れが生じそれが測定誤差を生む要因となる。そこで、本実施形態では、容器101を動かさずに、検知機構12を上下動させて測定する。
【0044】
更に、本実施形態においては、静電容量のセンサ31の中心と、照射部21の中心との距離を、容器101内に収容された生体試料の幅に応じた間隔h0に設定している。この間隔h0は、以下のように決定する。
本実施形態では、詳しくは後述するが、静電容量センサ31にて血清111の上面114を検出したのちに、照射部21による分離剤112と血餅113の境界面116検出に移行するように検知機構12を制御する。
従って、静電容量センサ31による検出が終了したらすぐに境界面116が検出される、つまり照射部21による走査時間が短ければ短いほど処理能力は向上する。このため、静電容量のセンサ31が血清111の上面114に到達したときに、照射部21が境界面116の付近にあることが望まれる。
この点、容器101(採血管)には、採血管の製造者による推奨採血量があることから、検査室で一般的に採血される血液の平均的な量はある程度の精度で定義できる。この一般的な量から、血清111の高さの平均的な値はある程度決定することが可能である。この血清111の高さの平均的な値と、分離剤112の高さを足した値が血清上面114と境界面116の間の距離となる。この距離を上述した間隔h0とする。
【0045】
図6に戻って、生体試料容量測定機器1は、主要構成要素として、更に、異なる形状の容器101に対応するための構成を備えている。具体的には、測定対象の容器101の形状、特に直径に応じて静電容量センサ31を水平方向(図6における矢印13bの方向)に移動させるための水平方向移動部として、回転棒25と、この回転棒25を回転させるモータ24を有している。回転棒25にはネジがついており、回転棒25に接続した検知機構12が矢印13b方向に稼働する仕組みとなっている。
【0046】
更に、生体試料容量測定機器1は、主要構成要素として、制御部19a、信号量取得部19b、データ記憶部19c、解析演算部19d、制御信号とセンサ信号を授受するための通信線18を備えている。
【0047】
制御部19aは、上述した機器1内の各要素の動作を制御する。また、制御部19aは、投入モジュール201に検体を収容した容器101が投入されたことを認識すると、投入された容器101の撮像を行うようカメラ221を制御する。更に、静電容量センサ31を容器101に対して水平方向に移動させるようモータ24を制御するとともに、静電容量センサ31を容器101に対して上下方向に移動させながら容器情報特定部19d1によって特定された栓102の種類に関する情報に応じて容器101内の試料の上面114や分離剤112と血餅113との境界面116を検出するように、モータ11,静電容量センサ31,照射部21および受光部22を制御する。
【0048】
本実施形態における制御部19aによる検知機構12の水平方向の動作の制御の詳細について以下説明する。
【0049】
制御部19aは、容器情報特定部19d1において特定した容器101の形状、特に容器101の径に関する情報を基にして、容器101と静電容量センサ31との距離が静電容量センサ31による上面114の検出に最適な距離となるよう、静電容量センサ31の水平方向移動距離を演算し、演算結果をモータ24に対して信号として出力する。モータ24は、この移動距離信号によって回転し、この回転運動により回転棒25が回転することで検知機構12が矢印13bの方向に稼働する。この検知機構12の移動(12aまたは12bの位置への移動)に伴い、静電容量センサ31の位置も移動する(31aまたは31bの位置に移動する)。
【0050】
ここで、「最適な距離」とは、容器101の種類ごとに予め決まっており、あらかじめデータ記憶部19cに記憶されており、必要時に参照できるようになっている。
【0051】
例えば、使用頻度の高い、13mm径の容器と16mm径の容器を例に挙げて具体例を説明する。
静電容量センサ31は容器101の壁面に近づけるほど感度はよくなるが、近づけすぎると液面以外の物にも反応しやすくなり誤検知が多くなる。一方、静電容量センサ31を容器101の壁面から遠ざけると感度が悪くなり、液面の検知の誤差が大きくなる。両作用のバランスから、容器毎に目的に最適な間隔が存在する。
そこで、13mm径の容器の場合は、静電容量センサ31を容器101に近づけるように検知機構12を移動させ(例えば12b(点線)の位置)、16mm径の容器の場合は静電容量センサ31を容器101から遠ざけるように検知機構12を移動させる(例えば12aの位置)。この場合、容器101の壁面と静電容量センサ31との間隔は、13mm径の容器の場合は約1cm程度が最適であり、16mm径の容器の場合は約1.5cm程度が最適である。
【0052】
容器101と静電容量センサ31との距離を調整することにより実際に感度が向上する様子について、図7を用いて説明する。図7は、静電容量センサの感度を示す実験データの一例である。横軸は容器の高さ位置で、単位はmmとし、原点に近いほうを容器の上部に相当するものとする。縦軸は静電容量の値を換算した電圧の値で、単位はVとする。
【0053】
詳しくは後述するが、試料上面の検出中の静電容量センサ31の出力はONとOFFのみであるが、この図ではセンサの感度を説明するためにアナログのデータを出力として縦軸に示している。横軸の約25mm(容器の上から25mmの位置に相当)のあたりに液面313がある。実線311は径13mm容器に対する静電容量のデータ(センサと容器の距離は16mm容器に対する距離と同等)、太線312は径13mm容器に対する静電容量のデータ(センサと容器の距離を16mm容器に対する距離より2.5mm近付けたときのデータ)、破線314は参考値として示した径16mm容器に対する静電容量のデータである。
【0054】
図7に示すように、径16mm容器(破線314)では、液面313の前後で静電容量の差が大きく鋭い。静電容量の差が大きいことは液面313の検出が容易であることを示し、また、鋭く差が出ることは正確な位置を検出できることを示している。この点で、16mm容器(破線314)に対する検出感度は高いことが分かる。
【0055】
一方で、計16mm容器測定時と同じ距離のままで径13mm容器の液面313の検出を行うと、図7の実線311に示すように、波形がやや滑らかであり、かつ液面の前後での静電容量の差が小さい結果となり、16mm容器の結果と比較して感度が小さいことが判る。しかし、静電容量センサ31と容器101の距離を縮めると、図7の太線312に示すように、液面313前後の波形が鋭く、かつ差が大きくなる。このように、センサの距離を調整することで、静電容量センサの感度を向上させることができる。
【0056】
次に、本実施形態における制御部19aによる検知機構12の上下方向の動作の制御の詳細について図8を用いて以下説明する。図8は、本発明の一実施形態に係る生体試料の容量の測定のセンサの制御と出力を示す説明図である。
【0057】
図8の矢印61は位置を表す軸で、栓の底の位置68を基点として、検体容器101の底方向に向かって引いている。
【0058】
測定開始前の状態として、静電容量センサ31が栓102の上部の位置で静止している。この状態で電源64はOFFである。
【0059】
制御部19aは、検知機構12を下に移動させ、静電容量センサ31が栓102の底に差し掛かったタイミングで、センサの電源64をOFFからONにする(62a)。このような制御をする理由は、もし静電容量センサ31の電源64を常時ONにするような運用をすると、栓102の存在により出力65がONになることがあり、これにより栓の位置を血清の上面と誤認識してしまう。このため、この誤認識を防ぐ目的で、電源64は初めOFFとし、静電容量センサ31が栓102を通過した後に初めて電源64をONにするという制御方式を採用する。なお、栓102の底の位置は、容器101に依存して決まるものであり、その情報については、後述する容器情報特定部19d1において特定する。
【0060】
次いで、検知機構12をさらに下に移動させる。静電容量センサ31は、通常はOFF、血清111の検出に対してONとなるように設定されている。そのため、静電容量センサ31が血清上面114に到達すると、センサの出力65がOFFからONに切り替わる(62b)。この出力の切り替わりによって、血清上面114を検出する。
【0061】
血清上面114が認識された後、制御部19aは、静電容量センサ31の電源64をOFFにし(63a)、同時に照射部21の電源66をOFFからONにする(62c)。静電容量センサ31の電源64をOFFにしたことにより、出力65はOFFに戻る(63b)とともに、照射部21は血清111の位置にあるため、受光部22の出力はONとなる(62d)。
【0062】
ここで、受光部22の出力67とは、容器101を透過した光の量のことである。血清111、分離剤112に対するLED光の透過光量と、血餅113に対するLED光の透過光量とを区別するためのしきい値を予めデータ記憶部19cにインストールしておく。
【0063】
制御部19aは、検知機構12を更に下に移動させ、受光部22が分離剤112と血餅113との境界面116に到達すると、LED光23が血餅113に遮られ透過光量がしいき値より小さくなり、出力67がOFFになる(63d)。この出力の切り替わりによって、分離剤112と血餅113との境界面116を検出する。
【0064】
血餅と分離剤の境界面116が認識された後は、制御部19aは、照射部21の電源をOFFにする(63c)。
【0065】
制御部19aは、静電容量センサ31、照射部21がともにOFFの状態となると、次の検体の測定に備えて、元の位置である栓102の上部の位置に検知機構12を戻す。
【0066】
図6に戻って、信号量取得部19bは、静電容量センサ31と受光部22の信号量(両者まとめてセンサ信号と称す)を取得する。
【0067】
データ記憶部19cは、信号量取得部19bによって取得した静電容量センサ31や受光部22の信号量、後述する解析演算部19dの各部で処理した情報を記憶する。
【0068】
解析演算部19dは、容器情報特定部19d1、容量演算部19d2を有している。
【0069】
容器情報特定部19d1は、投入モジュール201内に投入された容器101の種類、容器101の栓102の種類を特定する。
具体的には、容器情報特定部19d1は、カメラ221によって撮像された、投入モジュール201に投入された容器101の撮影画像を画像処理することにより容器101の種別を認識する。認識の方法には、例えば、予め使用する容器を撮影したデータベースを備え、撮像した画像とマッチングを行う方法などがある。また、容器情報特定部19d1は、容器101の種類から、容器101に取り付けられた栓102の底の位置や容器101の径の情報を取得する。この得られた情報を制御用パソコン210に送信する。この情報はまた、生体試料チェックモジュール203a、ステージ15b、通信線18を経由して、生体試料容量測定機器1の解析演算部19dにも送信される。これらの情報のうち容器101の栓102の底の位置は、制御部19aにおける静電容量センサ31の電源64をONにする位置を決めるための情報として用いられる。また、容器101の径の情報は、生体試料容量測定機器1の測定で得られる血清111や全血117の高さ情報と併せて、容量演算部19d2における血清111や全血117の容量を算出する際に使用される。
【0070】
容量演算部19d2は、容器情報特定部19d1によって特定された容器101の種類から容器101径および分離剤112の有無を特定するとともに、血餅113と分離剤112との境界面116を求める。その上で、この特定結果と、境界面116に関する情報と、静電容量センサ31で検出した容器101内の試料の上面114に関する情報とから容器101内の試料の容量を演算する。
具体的には、容量演算部19d2は、まず、信号量取得部19bにおいて取得した静電容量センサ31の信号量(静電容量センサ31のOFFかONかの状態)から、検知機構12の高さ情報h1を求める。この高さ(h1)は、初期位置からモータ11の回転数に相当する移動距離を引くことによって算出する。また、受光部22の信号量(受光部22で検知する透過光の値が急減する値)から検知機構12の高さ情報h2を求め、受光部22で測定した透過光の量に基づき、容器101内における血餅113と分離剤112との境界面116を求める。この高さ(h2)は、初期位置からモータ11の回転数に相当する移動距離を引くことによって算出する。その後、h1−h2−分離剤112の高さhsの演算処理を実行することで、血清111の高さを算出する。なお、分離剤112の量は、容器101の種類によってほぼ一定の値であることが知られているため、固定値として予め解析演算部19dに記憶されている。そのため、容器情報特定部19d1において特定された容器情報から、容器101の径の情報と分離剤112の量の情報とから演算することで分離剤112の高さhsは求められる。その後、容器101の径に関する情報を用いることで、具体的な体積値として、血清111の容量を算出する。
【0071】
また、機器1は、検体前処理システム200の他のモジュールや制御用パソコン210と物理的に通信するためのステージ15bを備えている。
【0072】
次に、検体の処理手順に沿って、測定順序を説明する。
【0073】
ユーザは、最初に、血液の入った容器101を、投入モジュール201に投入する。そこでは、カメラ221により、容器101の種類を認識する。
【0074】
この後、血液の入った容器101は専用のホルダ4に架設されて搬送ライン2上を移動し、必要に応じて遠心分離モジュール202に搬送される。例えば血球カウンタのような項目に対応するのであれば遠心分離モジュール202を飛ばして遠心処理されずに通過させる。遠心分離処理を終えた容器を生体試料チェックモジュール203aに搬送して容量を計測する。計測された容量は制御用パソコン210で送信される。
【0075】
この時点で、制御用パソコン210は小分けの計画(小分け数、小分け量等)を決めるプロセスを開始する。小分けのスケジュールは基本的には依頼されている測定項目によって決まるが、本実施形態においては更に容量を加味する。例えば、依頼のある項目のうち測定された容量で全ての分析が可能か、あるいは不可能だとした場合に分析可能な項目数はいくらか、などをパラメータとして適正な小分けをする。
【0076】
生体試料チェックモジュール203aにおいて容量計測が終了した容器101を開栓モジュール204に運び、開栓処理を行う。先述のスケジュールに基づいた小分け用容器の準備をラベラ205で行い、続けて実際の小分けを分注モジュール206で実施する。その後は、用途に応じて、自動分析装置211への搬送や、閉栓モジュール207による閉栓処理を経て、分類モジュール208での分類あるいは収納モジュール209への収納を行う。
【0077】
次に、生体試料チェックモジュール203aにおける生体試料容量測定機器1と関連する機構の動作について説明する。
【0078】
生体試料チェックモジュール203aに搬送された容器101は、バッファライン2bを通して測定ポジション7に搬送される。ホルダ4が到着すると、センサがホルダ4を検知し、制御用パソコン210にその情報を送信し、制御用パソコン210は処理開始指示信号を機器1の制御部19aに送信する。それと同時に、ストッパを稼働させ、測定中の間は容器101を測定ポジション7に停止させる。
【0079】
次いで、測定の詳細について、図9を参照して以下説明する。
【0080】
まず、容器101が、ホルダ4に載った状態で検知機構12の中心位置(測定ポジション7)に停止する。
【0081】
次いで、制御部19aは、容器情報特定部19d1により特定した容器101の情報、特に容器101の径に関する情報を基にしてモータ24の回転量を演算し、モータ24に対して出力する。この信号の入力を受けてモータ24は回転し、この回転運動によって回転棒25が回転して検知機構12(静電容量センサ31)が容器101に対して近づく(12b,31bの位置)、または遠ざかる(12a、31aの位置)ように移動し、検出実行位置に到達したらモータ24が停止し、回転棒25および検知機構12も停止する。
【0082】
これらの動作の完了により、容器101に対する測定を開始する(ステップS41)。なお、検知機構12のステージからの高さは、予め製造段階でティーチングされる固定の位置(以後、初期位置と呼ぶ)とする。
【0083】
制御部19aによりモータ11が稼働すると、回転棒17が矢印16の方向に回転して、検知機構12が矢印13aの方向に下降する(ステップS42)。
【0084】
静電容量センサ31が栓102の底の位置まで到達すると、静電容量センサ31の電源をONに切り替える。この位置は、容器101の栓102の種類に依存するもので、予め容器情報特定部19d1により予め既知となっている。その後、常時通信線18を通して信号量取得部19bに送信しながら下降させ続け、静電容量センサ31の出力情報がONかOFFかを判定し続ける(ステップS43)。ONになるまでの間は下降を継続する。
【0085】
静電容量センサ31が血清上面114まで到達すると、静電容量センサ31が上面検知信号を出力する。この瞬間、血清111の上面を検知したとして、制御部19aは、通信線18を通して停止信号をモータ11に与え、検知機構12を瞬間的に停止させる(ステップS46)。この信号を受信したモータ11は停止し、これに連動して回転棒17および検知機構12が停止する。このとき、データ記憶部19cは、検知機構12の高さ情報(h1)を記録する(ステップS47)。
【0086】
高さh1が記録された後、制御部19aは、次に、分離剤112と血餅113との境界面116の検知のため、通信線18を通して発光信号を照射部21に送るとともに、静電容量センサ31の電源をOFFにする信号を出力する。この信号を受信した静電容量センサ31は電源がOFFになるとともに、照射部21は電源がONとなりLED発光を開始する(ステップS48)。これと同時に、制御部19aは、通信線18を通して動作信号を再びモータ11に与え、この信号を受信したモータ11は回転を始め、これに連動して検知機構12が下降を再開する(ステップS49)。
【0087】
検知機構12を下降させながら、受光側である受光部22で透過光の値を測定してこの情報を、通信線18を介して信号量取得部19bに常時送信し、所定のしきい値以下であるか否かを監視する(ステップS50)。所定のしきい値より大きいときは、検知機構12の下降を続ける(ステップS50において、いいえの場合)。
【0088】
照射部21が境界面116に達すると、受光部22で検知する透過光の値が急減し、信号量取得部19bに予めインストールされたしきい値以下となる。この場合、制御部19aは、通信線18を通して停止信号をモータ11に与え、この信号を受信したモータ11は停止し、これに連動して回転棒17および検知機構12が停止する(ステップS53)。このとき、データ記憶部19cは、検知機構12の高さ情報(h2)を記録する(ステップS54)。
【0089】
高さh2が記録された後、制御部19aは、通信線18を通して停止信号を照射部21に送り、照射部21によるLED発光を停止させる。LED光源の寿命を縮めないための措置である。
【0090】
次いで、制御部19aは、次の容器101の測定に備えて検知機構12を初期位置に戻すよう制御する(ステップS55)。具体的には、通信線18を通して動作信号を再びモータ11に与える。この信号を受信したモータ11は回転を始め、連動して検知機構12が上昇を開始する。なお、検知機構12を上昇させる場合は下降の場合と逆方向にモータ11を稼働させるとよい。
【0091】
この動作の間に、解析演算部19dの容量演算部19d2は、ステップS47において記録した静電容量センサ31の状態(OFFかONか)の情報に基づく検知機構12の高さ情報(h1)と、ステップS54において記録した検知機構12の高さ情報(h2)との情報を用いて血清111の高さを算出する。次いで、容量演算部19d2は、容器情報特定部19d1において特定した容器101の径に関する情報と先に求めた血清111の高さの情報とを用いることで、具体的な体積値として、血清の容量を算出する。
【0092】
以上で、一つの容器101に対するデータの取得は終了する(ステップS56)。
【0093】
このように、本実施形態では、カメラ221で容器101を撮像して、容器情報特定部19d1によって容器101の種類や容器101の栓102の種類を特定する。そして、検知機構12を水平方向に移動させて静電容量センサ31による検出精度を高めた状態とする。その後に静電容量センサ31を下方に移動させ、特定した栓102の種類の情報から静電容量センサ31が栓102の底に差し掛かったタイミングを特定し、このタイミングでセンサの電源64をOFFからONにし、静電容量センサ31によって血清111の上面114を検出する。また、静電容量センサ31によって血清111の上面114を検出することに加えて、照射部21と受光部22とからなる光検出系を用いて、受光部22が取得する透過光量によって血餅113と分離剤112との境界面116を検知する。その上で、上面114と境界面116とから血清111の高さおよび容量を演算する。
【0094】
よって、自動分析装置に投入する検体の前処理を実施する装置において、容器101の形状や直径がバラバラであったり、容器101内がバーコードラベルで内部が見えない状態であったりと、容器101の形状や状態が一定でない場合でも、ユーザが予め意識をすることなく容器101を投入しても容器101内の検体における血清111の上面114や分離剤112と血餅113との境界面116を精度よく検知することができ、1度の走査のみで、測定対象物の高さ、ひいては容量を算出できるようになり、従来に比べて素早く容量に関する情報を取得することができる。従って、従来の目視確認の作業を低減することができ、ユーザのマニュアル作業の低減を図ることができるとともに、生体試料の容量に関する情報が得られることで、測定項目の優先順位づけが可能となり、処理順序の最適化が図ることができる。よって、患者の負担の軽減と処理結果の報告の遅延防止を達成できる検体検査自動化システムおよび試料のチェック方法が提供される。さらに、再採血の指示を必要に応じて迅速に出せるため、患者の負担の軽減と処理結果の報告の遅延防止に貢献する。これに付随して作業者の接触に伴う感染の可能性を低減することができる。
【0095】
更に、静電容量センサ31、照射部21および受光部22が、容器101内に収容された生体試料の幅に応じた間隔で配置されたことで、静電容量のセンサ31による検出が終了した後、すぐに境界面116が検出されるような状況となり、照射部21による走査時間を短縮でき、如いては処理能力の向上に繋がる。
【0096】
なお、再検査依頼の場合や、ユーザによる判断を優先させる場合など、生体試料チェックモジュール203aにおける測定が不要な場合は、制御用パソコン210の指示等に従い、ホルダ4を追い越しライン2cに搬送することで測定をせずに処理することができる。
【0097】
また、静電容量センサ31や光検出系による検出時に、制御部19aはモータ24を稼働させずに検知機構12の水辺方向の移動を行わないようにしたが、容器101の形状(例えば逆円錐形状など)によっては、静電容量センサ31と容器101との距離を適切に保つようにモータ24を稼働させながら静電容量センサ31による上面114の検出を実行するよう制御することができる。
【0098】
更に、照射部21におけるLED光の照射方向は、上述した方向と逆でもよい。
【0099】
<第2の実施形態>
本発明の検体検査自動化システムおよび試料のチェック方法の第2の実施形態を図10を用いて説明する。
図10は本発明の第2の実施形態に係る検体検査自動化システムにおける生体試料の容量の測定を行う構成の概略を示す図である。
【0100】
図10に示すように、本実施形態に係る生体試料容量測定機器1では、異なる形状の容器101に対応するための構成として、静電容量センサ31の水平方向移動部の代わりに、長距離用の静電容量センサ33および短距離用の静電容量センサ34の2種類の静電容量センサを備えている。図示したように、一般に、長距離用の静電容量センサ33は、短距離用の静電容量センサ34と比して相対的に寸法も大きい。
【0101】
また、本実施形態では、制御部19aは、容器情報特定部19d1において特定された容器101の径に応じて、長距離用の静電容量センサ33と短距離用の静電容量センサ34のいずれのセンサを使用するかを選択する。例えば、13mm径の容器であれば長距離用の静電容量センサ33を、16mm径の容器であれば短距離用の静電容量センサ34をそれぞれ使用するよう選択し、適切なセンサによって容器101の液面の検出を実行するよう制御する。なお、この際、容器101が、選択された方の静電容量センサの真下にくるように、容器101の停止位置(測定ポジション7)についても調整し、固定するよう制御する。
【0102】
本発明の検体検査自動化システムおよび試料のチェック方法の第2の実施形態のように容器101に応じてセンサを使い分けることにより、前述した検体検査自動化システムおよび試料のチェック方法の第1の実施形態とほぼ同様に、容器101の形状や状態が一定でない場合でも、測定精度を担保することが可能との効果が得られる。
【0103】
なお、備えられる静電容量センサの種類は2種類に限られず、異なる形状の容器101に細かに対応できるように3種類以上とすることも可能である。
【0104】
<第3の実施形態>
本発明の検体検査自動化システムおよび試料のチェック方法の第3の実施形態を図11を用いて説明する。
図11は本発明の第3の実施形態に係る検体検査自動化システムにおける生体試料の容量の測定を行う構成の概略を示す図である。
【0105】
図11に示すように、本実施形態に係る生体試料容量測定機器1では、異なる形状の容器101に対応するための構成として、検知機構12の代わりに検知機構35を備えている。
【0106】
この検知機構35は、機器1を上面から見たときに箱状の形状となっており、この内側に2つの静電容量センサ38,39が互いに向かいあうように配置されている。図11において、検知機構35の内側に描かれた2つの円101a,101bは、それぞれ16mm径容器101aと13mm径容器101bの測定位置を表している。本実施形態では、図11の下側に配置された静電容量センサ38にて13mm径容器101bを、上側に配置された静電容量センサ39にて16mm径容器101aを、それぞれ測定するよう構成されている。
【0107】
また、本実施形態では、制御部19aは、容器情報特定部19d1において特定された容器101の径に応じて静電容量センサ38,39の配置を適切に調整することで、容器101の径によらずに同じ測定ポジション7で測定できるようにする。以下、図11を用いて具体的に説明する。
【0108】
まず、2つの静電容量センサ38,39間の距離をLとする。各静電容量センサに関して、有効な測定結果を得るための距離(以下、検出可能距離)をそれぞれD1,D2とする。また、説明の便宜上、一旦、13mm径容器101bの外縁の半径をr1、16mm径容器101aの外縁の半径をr2とする。また、静電容量センサ38の検知面を原点とする座標yを設定し、13mm径容器101bの中心点と16mm径容器101aの中心点をそれぞれy1,y2とする。
【0109】
13mm径容器101bについて、外縁が静電容量センサ38と物理的に干渉しないためには、y1は、
r1<y1 …(条件1)
を満たす必要がある。
【0110】
また、静電容量センサ38で有効な測定をするには、
y1<r1+D1 …(条件2)
を満たす必要がある。
【0111】
16mm径容器101aについても同様に、静電容量センサ39と物理的に干渉せず、かつ有効な測定結果を得るためには、y2は、
L−(r2+D2)<y2<L−r2・・・(条件3)
を満たす必要ある。
【0112】
以上の条件をr1=6.5mm、r2=8.0mmとして解く。解は沢山存在するが、典型的な解として、
(D1,D2,L)=(2.0,2.0,17.0)の場合、y1=y2=8.25mm …(1)
(D1,D2,L)=(1.6,0.8,16.8)の場合、y1=y2=8.05mm …(2)
などがある。
【0113】
ここで、(1)については、D1,D2ともに2.0であるから、静電容量センサ38,39の両方に、2.0mm離れていても測定可能な長距離用センサを用いることを意味する。また、容器の中心点y1,y2に共通解が存在するが、このことは、13mm容器101bと16mm容器101aいずれも同一測定位置で測定できることを意味する。また、L=17.0より、両静電容量センサ38,39の中間点(中心線36参照)は座標8.5の地点であるのに対し、容器101の中心を通る中心線37は座標8.25の地点である。両者は一致せず、容器101に対して両静電容量センサ38,39が非対象に配置されているという点に特徴がある。なお、この解では、13mm径容器101bの外縁と下センサ38との距離d1は1.75、16mm径容器101aの外縁と上センサ39との距離d2は0.75で、両者それぞれ確かに検出可能距離内である。また、いずれの容器も静電容量センサ38,39と物理的に干渉しないことが分かる。
【0114】
また、(2)については、D1=1.6より静電容量センサ38には相対的に長距離用の静電容量センサを、D2=0.8より静電容量センサ39には相対的に短距離用の静電容量センサを、それぞれ採用する。この場合も、y1,y2両者には共通解が存在するため、(1)と同様に、容器の径ごとに測定位置を変えることなく、13mm容器101bと16mm容器101aいずれも同一測定位置で測定することができる。また、L=16.8より両静電容量センサ38,39の中間点(中心線36参照)は座標8.4の地点であるのに対し、容器101の中心を通る中心線37は座標8.05の地点である。(1)と同様に、非対象に配置されているという点に特徴がある。なお、この解では、13mm径容器101bの外縁と静電容量センサ38との距離d1は1.55、16mm径容器101aの外縁と上センサ34との距離d2は0.75となり、両者それぞれ確かに検出可能距離内であることが分かる。また、いずれの容器もセンサ38,39と物理的に干渉しないことも分かる。
【0115】
以上具体的に示すように、本発明の検体検査自動化システムおよび試料のチェック方法の第3の実施形態においても、前述した検体検査自動化システムおよび試料のチェック方法の第1,第2の実施形態とほぼ同様に、容器101の形状や状態が一定でない場合でも、静電容量センサを適切に配置するにより、容器101の径ごとに測定位置を変えることなく共通の測定位置にて測定精度を担保した状態で測定を実施することができる、との効果が得られる。
【0116】
<第4の実施形態>
本発明の検体検査自動化システムおよびチェックモジュールならびに試料のチェック方法の第4の実施形態を図12を用いて説明する。
第4の実施形態における検体検査自動化システムは、投入モジュールおよび生体試料チェックモジュール以外の構成は第1の実施形態と略同じであり、詳細は省略する。
図12は本発明の第4の実施形態に係る検体検査自動化システムにおける生体試料の容量の測定を行う機能を備えたモジュールの概略を示す図である。
【0117】
図12に示すように、本発明の検体検査自動化システムの第4の実施形態は、投入モジュール201ではなく、生体試料チェックモジュール(チェックモジュール)203bがカメラ221bを備えている。
【0118】
本実施形態の生体試料チェックモジュール203bを備えた検体検査自動化システムでは、容器101が生体試料チェックモジュール203b内に立ち寄ると、まずカメラ221bにて、容器101の形状を把握する。
具体的には、まず、カメラ221の撮影により容器101の外径を撮像し、解析演算部19dの容器情報特定部19d1において容器101の種別を認識する。この認識の方法には、第1の実施形態と同様に、例えば、予め使用する容器を撮影したデータベースを備え、撮像した画像とマッチングを行う方法などがある。その後、容器情報特定部19d1において容器101の種類を認識することにより、容器の101の径、栓102の種類、栓102の底の位置を特定する。これらの情報は、静電容量センサ31の電源64をONにする位置や、血清111の容量を算出する際の情報として用いられる。これ以降の動作は、第1の実施形態と略同じである。
【0119】
本発明の検体検査自動化システムおよびチェックモジュールならびに試料のチェック方法の第4の実施形態においても、前述した検体検査自動化システムおよび試料のチェック方法の第1の実施形態とほぼ同様な効果が得られる。
【0120】
また、チェックモジュール単体で採血管内の試料の状態を把握することが可能であり、既存の検体前処理システムに追加するのに好適なモジュールとすることができる。
【0121】
更に、本実施形態のようなチェックモジュールは、自動分析装置211の試薬保冷庫に保管されている試薬容器内の試薬の残量測定にも適用できる。
試薬保冷庫に保管される試薬は、通常、遮光目的のため有色の容器に入れて運用されているため、残量の目視確認はできない。
しかし、本実施形態のようなチェックモジュールを自動分析装置211の試薬保冷庫やその付近に備えていることで、試薬の容量の目視確認ができない状況でも、試薬容器内の試薬の残量のチェックが可能となる。
【0122】
<第5の実施形態>
本発明の検体検査自動化システムおよび試料のチェック方法の第5の実施形態を説明する。本発明の検体検査自動化システムおよび試料のチェック方法は、ホルダ4の代わりに、図13に示すようなラック72を使用する検体検査自動化システムや自動分析装置に対しても採用可能である。以下、5本の検体容器101を搬送するラック72を使用するシステムの例を用いて説明する。
図13は本発明の第5の実施形態に係る検体検査自動化システムにおける生体試料の容量の測定を行う機能を備えたモジュールの概略を示す図である。
【0123】
ホルダ4と異なり、ラック72では、容器101の全体がラック72の孔に入っている。このため、生体試料容量測定機器1による容量計測のために、持上げ機構71を備えている。この持上げ機構71の各動作の制御は、制御部19aで行う。具体的には、持上げ機構71によって容器101を掴んだのち、容器101の底辺がラック72より高くなるまで矢印73方向に持上げ機構71を上昇させ、停止させる。その後、停止した状態において、第1の実施形態と同様に、生体試料容量測定機器1による容量計測を行う。
【0124】
本発明の検体検査自動化システムおよび試料のチェック方法の第5の実施形態においても、前述した検体検査自動化システムおよび試料のチェック方法の第1の実施形態とほぼ同様な効果が得られる。
【0125】
<その他>
なお、本発明は上記の実施形態に限られず、種々の変形、応用が可能なものである。上述の実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。
【0126】
例えば、上述の実施形態では、チェックの対象を遠心済みで3層に分離した検体を前提として説明したが、未遠心の血液にも本実施形態の検体検査自動化システムおよびチェックモジュールならびに試料のチェック方法は適用が可能である。
この場合、上述した図4に示すように、全血117と下に沈んだ分離剤112の2層構造となり、血餅113が存在しない構造となる。このため、透過光量が低くならずh2が検出されない状況、あるいは血餅113を探して走査し続けてLED光23がホルダ4の背の高さにまで下降し、この背が透過を遮ることにより、ホルダ4の背を血餅113と誤検知し、より低い値のh2を検出する状況となる。
これらに対応するために、h2に対するしきい値(例えば、h2min)を予め設けておき、h2<h2minとなった場合、あるいは、h2が見つからなかった場合、一律、未遠心検体とみなすよう制御部19a、信号量取得部19bおよび解析演算部19dを設定しておく。
また、解析演算部19dの容量演算部19d2におけるデータ解析においては、h1−分離剤の高さ、を全血117の高さとする。そして容器情報特定部19d1において特定した容器101の径に関する情報を用いることで、具体的な体積値として、全血117の容量を算出する。
【0127】
更に、分離剤の無い容器が混在した場合にも、本実施形態の検体検査自動化システムおよびチェックモジュールならびに試料のチェック方法は適用することができる。以下説明する。
【0128】
容器101の種類には、分離剤の無いものが存在し、検体前処理システム200には、分離剤のある容器と無い容器とが混在した状態で搬送される。
【0129】
分離剤の無い容器では、検体は、遠心分離済みの場合は血漿と血餅の2層構造、あるいは未遠心の場合は全血の1層となっている。
【0130】
そのため、遠心分離済みの場合は、静電容量センサ31で血漿の上面を検出してh1と求め、光検出系で血漿と血餅との境界を検出してh2を求める。
未遠心の場合は、静電容量センサ31で全血の上面を検出してh1とするが、境界面が存在しないために光検出系による境界面検出は不可能である。
【0131】
しかし、投入モジュール201等のカメラ221や容器情報特定部19d1において、投入された容器101の種類は特定できる。また、分離剤の有無は容器の種類で決まっているため、種類が特定できれば分離剤の有無がわかる。
【0132】
そこで、分離剤が無い容器と判明した場合は、分離剤の高さを0に置き換えた上で、遠心分離済みに対しては、h1−h2−分離剤の高さ(=0)、を算出する。また、未遠心に対しては、h1−分離剤の高さ(=0)、を算出する。こうすることにより、分離剤の有無に関わらず第1の実施形態と同様のアルゴリズムで対象物の高さを測定することが可能となる。
【0133】
このように、容器情報の特定から、分離剤の有無を判別することで、分離剤の無い条件下でも、同様の測定方法で対応することが可能であり、分離剤のある容器と無い容器とが混在しても対応でき、非常に汎用性が高いシステムとなる。
【0134】
また、制御部19aや信号量取得部19b、データ記憶部19c、解析演算部19d(容器情報特定部19d1、容量演算部19d2)が制御用パソコン210と別体の例を説明したが、これらは制御用パソコン210の内部に設けることができる。
【0135】
また、静電容量センサ31によって上面114を検出することに加えて、光検出系を用いて境界面116を検知し、上面114と境界面116とから血清111の高さおよび容量を演算する対応について説明したが、光検出系による境界面116の検知を行わずに、上面114の情報から血清111の容量を求めてもよい。
【0136】
この場合、容器情報特定部19d1において、容器101内の分離剤112の有り無し、容器101の径に関する情報は特定できる。また、容器101に採取される血液量は容器101毎に大きな違いはなくほぼ同量であること、その血液量における固層(例えば血餅113の量、高さ)についてもある程度は把握することができる。従って、静電容量センサ31によって上面114を検出することによって、これらの情報を基にすることで容器101内の液量(例えば血清111の容量)をある程度の精度で把握することができる。
【0137】
さらに、異なる形状の容器101に対応するための構成である異形状容器対応計測部は、第1の実施形態のような水平方向移動機構、第2および第3の実施形態のような複数の静電容量センサに限られず、静電容量センサ31の電流値(ゲイン)を信号量取得部19bや解析演算部19dにおいて制御することによって対応する手法も有効である。
【符号の説明】
【0138】
1…生体試料容量測定ユニット、
2…搬送ライン、
2a…搬出ライン、
2b…バッファライン、
2c…追い越しライン、
2d…主要ライン、
3…搬送方向、
4…ホルダ、
5…カメラ、
6…遮光版、
7…測定位置、
11…モータ、
12…検知機構、
12a,12b…検知機構の位置、
13a,13b…矢印(検知機構の稼働方向を示す矢印)、
14…背板、
15a…ステージ、
15b…ステージ、
17…回転棒、
18…通信線、
19a…制御部、
19b…信号量取得部、
19c…データ記憶部、
19d…解析演算部、
21…照射部、
22…受光部、
23…LED光、
24…モータ、
25…回転棒、
31…静電容量センサ、
33…長距離用静電容量センサ、
34…短距離用静電容量センサ、
35…検知機構、
36…中心線(検知機構の中心線)、
37…中心線(円の中心線)、
38…13mm径容器用静電容量センサ、
39…16mm径容器用静電容量センサ、
61…位置を表す軸、
62a,62b,62c,62d…OFFからONへの切替え、
63a,63b,63c,63d…ONからOFFへの切替え、
64…静電容量センサの電源の状態、
65…静電容量センサの出力、
66…LEDの電源の状態、
67…LEDの出力、
68…栓の底の位置、
71…持上げ機構、
72…ラック、
73…矢印、
101…容器(採血管)、
102…栓、
103…バーコード、
104…バーコードが側面に被覆された容器、
105…バーコードが全側面被覆された容器、
106…未遠心検体を収容した容器、
111…血清、
112…分離剤、
113…血餅、
114…血清上面、
115…血清と分離剤の境界面、
116…血餅と分離剤の境界面、
117…全血検体、
200…検体前処理システム、
201…投入モジュール、
202…遠心分離モジュール、
203a,203b…生体試料チェックモジュール、
204…開栓モジュール、
205…ラベラ、
206…分注モジュール、
207…閉栓モジュール、
208…分類モジュール、
209…収納モジュール、
210…制御用パソコン、
211…自動分析装置、
221…カメラ、
311…実線、
312…太線、
313…液面、
314…破線。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13