(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記位相補償用受光格子は、前記原点検出用受光格子に対して、前記スケールの前記原点検出用受光格子及び前記位相補償用受光格子が形成される面に平行かつ前記測定方向に垂直な方向に離れて配置される、
請求項1乃至3のいずれか一項に記載のエンコーダ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、発明者は、上述の手法には以下に示す問題点が有ることを見出した。特許文献1の方法では、検出ヘッドが原点パターンを横切るときにメイン信号を劣化させてしまい、測定精度が悪化するおそれがある。
【0007】
特許文献2の方法では、メインパターンは原点パターンを内包しないので、上記のような課題は生じない。しかし、特許文献2の方法では、メイン信号の繰り返し周期が小さい場合、回転方向のアライメント調整を精密に行う必要がある。回転方向のアライメント調整の精度が不十分で検出ヘッドの取り付けに回転方向のずれが発生した場合、原点位置の精度が悪化する。しかし、このような十分な精度のアライメント調整を行うことは困難である。
【0008】
本発明は、検出ヘッドの取り付け誤差に関わらず、原点位置の精度を保つことができるエンコーダを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の態様であるエンコーダは、
測定方向の原点位置を検出するための原点検出用パターンと前記測定方向の変位を検出するための変位検出パターンとが形成されたスケールと、
前記原点検出用パターンの検出結果である原点検出信号及び位相補償信号と、前記変位検出パターンの検出結果である変位検出信号と、を出力する検出ヘッドと、
前記位相補償信号及び前記原点検出信号の一方又は両方を増幅して加算することで原点信号を生成し、前記原点信号と前記変位検出信号とに基づいて、前記スケールに対する前記検出ヘッドの位置を検出する信号処理部と、を備え、
前記検出ヘッドは、
前記スケールに光を照射する光源と、
前記原点検出用パターンからの光を透過させる原点検出用受光格子と、前記原点検出用パターンからの光を透過させる前記原点検出用受光格子に対して前記測定方向にシフトして配置された位相補償用受光格子と、を有する複合受光格子と、
前記原点検出用受光格子を透過した光を光電変換して前記原点検出信号を出力する原点検出用受光素子と、前記位相補償用受光格子を透過した光を光電変換して前記位相補償信号を出力する位相補償用受光素子と、を有する複合受光素子と、を備えるものである。
【0010】
本発明の第2の態様であるエンコーダは、上記のエンコーダであって、
前記位相補償用受光格子を構成する格子の前記測定方向の幅は、前記原点検出用受光格子を構成する格子の前記測定方向の幅と同じ所定の幅であり、
前記位相補償用受光格子を構成する前記格子は、前記原点検出用受光格子を構成する前記格子に対して、前記測定方向に前記所定の幅の1/2だけシフトして配置されるものである。
【0011】
本発明の第3の態様であるエンコーダは、上記のエンコーダであって、
前記原点検出用受光格子を構成する格子は、前記測定方向に複数個並んで配置され、
前記位相補償用受光格子は、前記原点検出用受光格子を構成する複数の前記格子のそれぞれに対応する複数の格子が、前記測定方向にシフトして配置されるものである。
【0012】
本発明の第4の態様であるエンコーダは、上記のエンコーダであって、
前記位相補償用受光格子は、前記原点検出用受光格子に対して、前記スケールの前記原点検出用受光格子及び前記位相補償用受光格子が形成される面に平行かつ前記測定方向に垂直な方向に離れて配置されるものである。
【0013】
本発明の第5の態様であるエンコーダは、上記のエンコーダであって、
前記信号処理部は、前記位相補償信号の振幅値を−1倍から1倍の範囲で増幅する増幅器と、
増幅後の前記位相補償信号と前記原点信号とを加算した信号を前記原点信号として出力する加算器と、を備えるものである。
【0014】
本発明の第6の態様であるエンコーダは、上記のエンコーダであって、
前記光源は、前記スケールに平行光を照射するものである。
【0015】
本発明の第7の態様であるエンコーダは、上記のエンコーダであって、
前記複合受光格子には、前記光源から出射され、かつ、前記スケールを透過した光が入射するものである。
【0016】
本発明の第8の態様であるエンコーダは、上記のエンコーダであって、
前記複合受光格子には、前記光源から出射され、かつ、前記スケールで反射された光が入射するものである。
【0017】
本発明の第9の態様であるエンコーダは、上記のエンコーダであって、
前記複合受光格子は、前記変位検出パターンからの光を透過させる変位検出用受光格子を更に有し、
前記複合受光素子は、前記変位検出用受光格子を透過した光を光電変換して前記変位検出信号を出力する変位検出用受光素子を更に有するものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、検出ヘッドの取り付け誤差に関わらず、原点位置の精度を保つことができるエンコーダを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。各図面においては、同一要素には同一の符号が付されており、必要に応じて重複説明は省略される。
【0021】
実施の形態1
本発明の実施の形態1にかかる光学式エンコーダについて説明する。
図1は、実施の形態に1かかる光学式エンコーダ100の概略構成を示す斜視図である。
図1に示すように、光学式エンコーダ100は、スケール1、検出ヘッド2及び信号処理部3を有する。スケール1と検出ヘッド2とは、スケール1の長手方向である測定方向(
図1のX軸方向)に沿って相対的に移動が可能なように構成される。スケール1は、位置検出に用いるパターンが設けられ、パターンに光が照射されることで干渉光が生じる。検出ヘッド2は、干渉光の測定方向の変化を検出し、検出結果を示す電気信号を信号処理部3に出力する。信号処理部3は、受け取った電気信号を信号処理することで、スケール1と検出ヘッド2との間の位置関係を検出することができる。
【0022】
なお、以下では、測長方向(
図1のX軸方向)に対して垂直、かつ、スケール1の幅を示す方向をY軸とする。すなわち、スケール1の主面は、X−Y平面となる。また、スケール1の主面(X−Y平面)に垂直、すなわちX軸及びY軸に垂直な方向をZ軸とする。また、以下で参照する斜視図では、紙面左下手前から右上奥へ向かう方向を、X軸の正方向とする。紙面右下手前から左上奥へ向かう方向を、Y軸の正方向とする。紙面下側から上側へ向かう方向を、Z軸の正方向とする。
【0023】
光学式エンコーダ100について、より詳細に説明する。
図2は、実施の形態1にかかる光学式エンコーダ100の構成を示す斜視図である。
図2に示すように、検出ヘッド2は、光源4、複合受光格子5及び複合受光素子6を有する。上述のように、スケール1と検出ヘッド2とは、測定方向(
図2のX軸方向)に相対的に移動可能に構成される。
【0024】
光源4は、光源素子41及び光源格子42を有する。光源素子41は、光源格子42の上方(
図2のZ軸の正方向側)に配置される。光源格子42は、
図2のZ軸に垂直な面(X−Y平面)を主面とし、X軸方向を長手方向とする板状の部材である。光源格子42を構成する板状部材には、
図2のY軸を長手方向とする格子状の光透過部42Aが、X軸方向に並んで複数配置される。つまり、光源格子42では、光透過部42Aと光透過部以外の不透過部42Bとが、X軸方向に交互に、かつ、繰り返して配置される。光源素子41が発した光は、光源格子42を透過することで、Z軸に沿って伝搬する平行光となる。光源素子41としては、例えば、LED(Light Emitting Diode:発光ダイオード)、半導体レーザ、SLED(Self-Scanning Light Emitting Device:自己走査型発光素子)、OLED(Organic light-emitting diode:有機発光ダイオード)などを用いることができる。
【0025】
スケール1は、
図2のZ軸に垂直な面(X−Y平面)を主面とし、X軸方向を長手方向とする板状の部材である。スケール1は、光源4からの平行光が主面(X−Y平面)に垂直に入射する位置に配置される。
図2では、スケール1は、光源4に対してZ軸の負方向側に配置される。
【0026】
スケール1を構成する板状部材には、変位検出用パターン11及び原点検出用パターン12が形成される。変位検出用パターン11では、
図2のY軸を長手方向とする格子状の光透過部が、X軸方向に並んで複数配置される。つまり、変位検出用パターン11では、光透過部11Aと不透過部11Bとが、X軸方向に交互に、かつ、繰り返して配置される。原点検出用パターン12は、変位検出用パターン11からY軸の正方向に離れた位置に、
図2のY軸を長手方向とする1つの格子状の光透過部として配置される。スケール1は、ガラスで構成されることが好適であるが、光を透過する格子状の光透過部と、光を透過しない不透過部を構成できる材料であれば、いずれも適用することができる。
【0027】
複合受光格子5は、スケール1からの光、すなわちスケール1を透過した光が入射する位置に配置される。
図2では、複合受光格子5は、スケール1に対してZ軸の負方向側に配置され、スケール1を透過した光が入射する。なお、光学式エンコーダ100は透過型の光学式エンコーダであるが、反射型の光学式エンコーダとして構成することもできる。この場合、複合受光格子5は、スケール1に対してZ軸の正方向側に配置され、スケール1で反射された光が入射することとなる。
【0028】
複合受光格子5は、
図2のZ軸に垂直な面を主面とし、X軸方向を長手方向とする板状の部材である。
図3は、実施の形態1にかかる複合受光格子5の上面図である。複合受光格子5を構成する板状部材には、変位検出用受光格子51、原点検出用受光格子52及び位相補償用受光格子53が形成される。変位検出用受光格子51は、スケール1の変位検出用パターン11を透過した光が入射する位置に配置される。原点検出用受光格子52及び位相補償用受光格子53は、スケール1の原点検出用パターン12を透過した光が入射する位置に配置される。ここでは、原点検出用受光格子52は、変位検出用受光格子51に対してY軸の正方向に離れた位置に形成される。位相補償用受光格子53は、原点検出用受光格子52に対してY軸の正方向に離れた位置に形成される。
【0029】
変位検出用受光格子51、原点検出用受光格子52及び位相補償用受光格子53では、
図3のY軸を長手方向とする格子状の光透過部が、X軸方向に並んで複数配置される。つまり、変位検出用受光格子51では、光透過部51Aと不透過部51Bとが、X軸方向に交互に、かつ、繰り返して配置される。原点検出用受光格子52では、光透過部52Aと不透過部52Bとが、X軸方向に交互に、かつ、繰り返して配置される。位相補償用受光格子53では、光透過部53Aと不透過部53Bとが、X軸方向に交互に、かつ、繰り返して配置される。
【0030】
原点検出用受光格子52の光透過部52Aと位相補償用受光格子53の光透過部53Aとは、X軸方向で同じ幅Waを有する。しかし、位相補償用受光格子53の光透過部53Aは、原点検出用受光格子52の光透過部52Aに対して測定方向(X軸方向)にシフトして配置される。
図3では、位相補償用受光格子53の光透過部53Aは、原点検出用受光格子52の光透過部52Aに対して、測定方向(X軸方向)の幅Waの1/2だけX軸の正方向にシフトして配置されている。
【0031】
複合受光素子6は、複合受光格子5を透過した光が入射する位置に配置される。
図2では、複合受光素子6は、複合受光格子5に対してZ軸の負方向側に配置される。
【0032】
複合受光素子6は、変位検出用受光素子61、原点検出用受光素子62及び位相補償用受光素子63を有する。変位検出用受光素子61、原点検出用受光素子62及び位相補償用受光素子63は、フォトダイオード・アレーで構成されることが望ましい。また、変位検出用受光素子61、原点検出用受光素子62及び位相補償用受光素子63は、入射する光を電気信号に変換できる素子であれば、フォトトランジスタ、フォトレジスタなどの他の受光手段を適用してもよい。
【0033】
変位検出用受光素子61、原点検出用受光素子62及び位相補償用受光素子63は、それぞれ、変位検出用受光格子51、原点検出用受光格子52及び位相補償用受光格子53を透過した光を受光する位置に配置される。
【0034】
変位検出用受光素子61は、光源格子42、変位検出用パターン11及び変位検出用受光格子51を透過した光を電気信号に変換し、変換した信号を変位検出信号Smとして出力する。原点検出用受光素子62は、光源格子42、原点検出用パターン12及び原点検出用受光格子52を透過した光を電気信号に変換し、変換した信号を原点検出信号S1として出力する。位相補償用受光素子63は、光源格子42、原点検出用パターン12及び位相補償用受光格子53を透過した光を電気信号に変換し、変換した信号を位相補償信号S2として出力する。
【0035】
上述の通り、位相補償用受光格子53の光透過部53Aは、原点検出用受光格子52の光透過部52Aに対して測定方向(X軸方向)にシフトして配置される。そのため、位相補償信号S2は、原点検出信号S1に対して所定の位相差を有する信号となる。本実施の形態では、
図2に示すように、位相補償用受光格子53の光透過部53Aは、原点検出用受光格子52の光透過部52Aに対して、測定方向(X軸方向)の幅の1/2だけX軸(+)方向にシフトして配置されている。そのため、位相補償信号S2は、原点検出信号S1に対して90°の位相差を有することになる。本実施の形態では、原点検出信号S1及び位相補償信号S2の一方または両方を増幅して加算することにより、原点信号S
origを生成することができる。
【0036】
次に、信号処理部3の構成について説明する。ここでは、信号処理部3が位相補償信号S2を増幅する例について説明する。
図4は、実施の形態1にかかる信号処理部3の構成を示すブロック図である。信号処理部3は、原点信号生成部31、変位検出信号処理部32、位置検出部33を有する。
【0037】
原点信号生成部31は、検出ヘッド2が出力した原点検出信号S1及び位相補償信号S2を用いて、位相が調整された原点信号S
origを出力する。原点信号S
origは、スケール1の測長方向における測定の原点位置において、最も強くなる。
【0038】
変位検出信号処理部32は、検出ヘッド2が出力した変位検出信号Smを用いて、スケール1と検出ヘッド2との間の相対的な移動量を検出する。スケール1と検出ヘッド2とが相対的に変位すると、ヤングの干渉の原理に従い、変位検出用受光素子61の受光強度が変化する。変位検出用受光素子61の受光強度の変化に伴って、変位検出信号Smの強度も変化する。変位検出信号処理部32は、変位検出信号Smの強度の変化を測定することで、測長方向(X軸方向)の相対的な移動量Sdを測定することができる。
【0039】
位置検出部33は、原点信号生成部31が出力する原点信号S
origと変位検出信号処理部32が出力する移動量Sdとから、スケール1と検出ヘッド2との間の絶対的な位置関係、換言すれば、スケール1に対する検出ヘッド2の位置を検出することができる。位置検出部33は、検出結果を、例えば位置検出信号Spとして出力する。
【0040】
以下、原点信号生成部31について説明する。原点信号生成部31は、検出ヘッド2が出力した原点検出信号S1及び位相補償信号S2を用いて、位相が調整された原点信号S
origを出力する。
図4に示すように、原点信号生成部31は、増幅器311及び加算器312を有する。
【0041】
増幅器311は、位相補償信号S2を増幅し、増幅した信号を加算器312へ出力する。増幅器311の増幅率は、−1倍から1倍の範囲で可変である。増幅器311としては、トランジスタ、OPアンプなどの電気信号を増幅する構成であれば、いずれも適用することができる。また、位相補償信号S2をアナログデジタル変換した後、デジタルデータの演算を行うことで増幅してもよい。
【0042】
加算器312は、増幅された位相補償信号S2と原点検出信号S1とを加算し、加算した信号を原点信号S
origとして出力する。原点信号S
origは、原点検出信号S1の位相が補償された信号として出力される。加算器312は、演算増幅器を用いたアナログの加算回路でもよいし、被加算信号をアナログデジタル変換し、デジタル値を演算するデジタルの加算回路であってもよい。
【0043】
原点信号生成部31は、上述のように、原点検出信号S1と増幅された位相補償信号S2とを加算することで、出力する原点信号S
origの位相を調整することができる。以下、原点信号生成部31での原点信号S
origの位相調整について説明する。
【0044】
上述したように、位相補償信号S2は、原点検出信号S1に対して90°の位相差を有している。すなわち、原点検出信号S1を(ヤングの干渉縞で示されるような)余弦関数、位相補償信号S2を正弦関数で表すことができる。よって、原点検出信号S1及び位相補償信号S2を、それぞれ式(1)及び(2)で表すことができる。但し、Aは原点検出信号S1の振幅、Bは位相補償信号S2の振幅、θは原点検出信号S1及び位相補償信号S2の位相である。
【数1】
【数2】
【0045】
原点検出信号S1及び位相補償信号S2を加算した原点信号S
origは、以下の式(3)で表される。但し、αは原点検出信号S1に対する位相補償信号S2の位相差である。
【数3】
【数4】
【0046】
式(3)に示すように、原点信号S
origは、同じ周期の余弦関数で表される原点検出信号S1に対して、位相差αだけ位相がシフトした信号として表される。式(4)に示すように、位相差αは、原点検出信号S1の振幅Aと位相補償信号S2の振幅Bとを変数とする関数である。よって、増幅器311の増幅率を変化させることで、位相差αを調整することができる。増幅器311の増幅率は−1倍から1倍の範囲で可変であるので、位相差αがとり得る値の範囲は、−45°≦α≦45°となる。位相差αの変化ピッチは、増幅器の分解能を適宜選択することで、好適に設定できる。
【0047】
以上、本構成によれば、原点検出信号S1に対して位相差を有する位相補償信号S2の振幅値を所定の増幅率で増幅して原点検出信号S1に加算することで、原点検出信号S1の位相をシフトさせた信号を、原点信号S
origとして出力することができる。
【0048】
なお、原点検出信号S1及び位相補償信号S2は、原点位置付近のピークから位相方向に離れるに従って信号の強度が弱くなる。
図5は、原点検出信号S1の例を示す図である。
図6は、位相補償信号S2の例を示す図である。
図5では、横軸は移動方向に対するスケール1の位置(すなわち、原点検出信号S1の位相)を示し、縦軸は原点検出信号S1の信号強度を示す。
図6では、横軸は移動方向に対するスケール1の位置(すなわち、位相補償信号S2の位相)を示し、縦軸は位相補償信号S2の信号強度を示す。
図5及び6では、信号強度の極大値と極小値とを線でつないでいるが、横軸方向のサンプリング間隔を短くすると、原点検出信号S1は余弦関数に近似した波形となり、位相補償信号S2は正弦関数に近似した波形となる。
【0049】
図7は、原点検出信号S1と位相補償信号S2とを加算して得た原点信号S
origの例を示す図である。
図7では、横軸は移動方向に対するスケール1の位置(すなわち、原点信号S
origの位相)を示し、縦軸は信号の強度を示す。また、
図7では、原点検出信号S1を破線、位相補償信号S2を実戦で示している。
図7に示すように、原点信号S
origは、原点検出信号S1に対して横軸方向にシフトしていることが理解できる。
【0050】
本構成では、スケール1を原点に位置させた際に得られる原点信号の位相にずれが生じていた場合、原点信号の位相のシフト量αの調整を行うことが効果的である。すなわち、スケール1を原点に位置させた状態で、原点信号の位相のずれが無くなるまで位相補償信号の増幅率を変化させることで、現実の原点位置に対する原点信号の位相のずれを打ち消すことができる。これにより、機械的なミスアライメントに起因する光学的なずれを、電気信号の処理で容易に校正することができる。
【0051】
比較例
続いて、機械的なミスアライメントに起因する光学的なずれについて、比較例を提示して説明する。ここでは、光学式エンコーダにおいて、平行光の伝搬方向(上述のZ軸)を回転軸とする回転ずれ(ミスアライメント)が生じた場合について説明する。
【0052】
図8は、比較例である光学式エンコーダ200の構成を模式的に示す斜視図である。光学式エンコーダ200は、スケール7、検出ヘッド8及び信号処理部9を有する。光学式エンコーダ200のスケール7、検出ヘッド8及び信号処理部9は、それぞれ上述の光学式エンコーダ100のスケール1、検出ヘッド2及び信号処理部3に対応する。
【0053】
検出ヘッド8は、光源4、複合受光格子81及び複合受光素子82を有する。光源4は、上述の光学式エンコーダ100と同様であるので、説明を省略する。
【0054】
スケール7を構成する板状部材には、変位検出用パターン11及び原点検出用パターン13が形成される。変位検出用パターン11は、上述の光学式エンコーダ100と同様であるので、説明を省略する。原点検出用パターン13は、原点検出用パターン12と同様であるので、説明を省略する。
【0055】
複合受光格子81は、光学式エンコーダ100の複合受光格子5に対応するものである。複合受光格子81を構成する板状部材には、変位検出用受光格子51及び原点検出用受光格子54が形成される。変位検出用受光格子51は、上述の光学式エンコーダ100と同様であるので、説明を省略する。原点検出用受光格子54は、スケール7の原点検出用パターン13を透過した光が入射する位置に配置される。ここでは、原点検出用受光格子54は、変位検出用受光格子51に対してY軸の正方向に離れた位置に形成される。
【0056】
複合受光素子82は、光学式エンコーダ100の複合受光素子6に対応するものである。複合受光素子82は、変位検出用受光素子61及び原点検出用受光素子64を有する。変位検出用受光素子61は、上述の光学式エンコーダ100と同様であるので、説明を省略する。原点検出用受光素子64は、原点検出用受光格子54を透過した光を受光する位置に配置される。原点検出用受光素子64は、光源格子42、原点検出用パターン13及び原点検出用受光格子54を透過した光を電気信号に変換し、変換した信号を原点信号S10として出力する。
【0057】
図9は、比較例にかかる光学式エンコーダ200において回転ずれが発生していない場合のスケール7及び複合受光格子81の上面図である。Z軸を回転軸とする回転ずれが発生していない場合、
図9に示すように、スケール7の変位検出用パターン11と変位検出用受光格子51との位置が一致し、スケール7の原点検出用パターン13と原点検出用受光格子54との位置が一致する。そのため、変位検出用パターン11の検出と原点検出用パターン13の検出との間に位相差は存在しないので、原点検出用パターン13の検出結果をそのまま原点信号として用いることができる。
【0058】
これに対し、光学式エンコーダ200でZ軸を回転軸とする回転ずれが発生する場合について検討する。
図10は、比較例にかかる光学式エンコーダ200において回転ずれが発生している場合のスケール7及び複合受光格子81の上面図である。ここでは、スケール7の原点検出用パターン13の中心と原点検出用受光格子54の中心とが一致した時のずれに注目する。Z軸を回転軸とする回転ずれが発生している場合、
図10に示すように、スケール7の原点検出用パターン13の中心と原点検出用受光格子54の中心とが一致した時に、スケール7の変位検出用パターン11と変位検出用受光格子51との間で位置ずれΔθが生じる。
【0059】
図11は、比較例にかかる光学式エンコーダ200において回転ずれが発生している場合の原点信号及び変位検出信号の例を示す図である。
図11では、横軸はスケール7の変位を示し、縦軸は信号強度を示す。回転ずれがない場合には原点信号が検出されるときの変位検出信号の位相は0°となる。しかし、
図11に示すように、回転ずれが生じることで、原点信号が検出される時の変位検出信号がΔθだけずれてしまう。このように、原点信号が検出されるときの変位検出信号の位相がずれることで、光学式エンコーダ200が検出する検出ヘッド8の移動量には誤差が含まれることになる。
【0060】
このような位置ずれΔθが生じた場合でも、本構成によれば、位相補償信号の増幅率を変化させることで位置ずれΔθを打ち消すことができる。その結果、回転ずれによる位相ずれを容易に校正することができる。
【0061】
その他の実施の形態
また、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。例えば、上述の実施の形態では、上述の実施の形態では、本発明の光学式エンコーダはリニアエンコーダであるものとして説明したが、これは例示である。つまり、本発明は、ロータリーエンコーダとして構成してもよい。
【0062】
上述の実施の形態では、複合受光格子5において、原点検出用受光格子52に対する位相補償用受光格子53のシフト量は、格子の幅の1/2としたが、シフト量はこれに限られない。
【0063】
また、複合受光格子5における、変位検出用受光格子51、原点検出用受光格子52及び位相補償用受光格子53の順序は例示であり、順序は入れ替えても良い。この場合、変位検出用受光素子61、原点検出用受光素子62及び位相補償用受光素子63は、それぞれ変位検出用受光格子51、原点検出用受光格子52及び位相補償用受光格子53に対応する位置に配置される。
【0064】
また、各格子及びスケールは、不透明部と光透過部を構成する素材の組み合わせであればいずれも適用できる。すなわち、不透明ガラスに格子形状の孔を形成して光透過部としても良いし、透明ガラスの一部を遮蔽して不透明部を形成しても良い。またガラス以外の材料についても同様に適用できる。