(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
先に打設されたフレッシュコンクリートの凝結時間が外気温及び貫入抵抗値で規定される期限に達する前に、新たなフレッシュコンクリートを重ねて打設する打重ねに用いられる打重ね用のコンクリートであって、
濃度2質量%の水溶液における粘度が90mPa・s以上920mPa・s以下である水溶性セルロースエーテルが添加されていることを特徴とする打重ね用のコンクリート。
先に打設されたフレッシュコンクリートの凝結時間が外気温及び貫入抵抗値で規定される期限に達する前に、新たなフレッシュコンクリートを重ねて打設する打重ねに用いられる打重ね用のコンクリートであって、
濃度2質量%の水溶液における粘度が90mPa・s以上920mPa・s以下である水溶性セルロースエーテルと凝結遅延剤とが添加されていることを特徴とする打重ね用のコンクリート。
前記水溶性セルロースエーテルは、ヒドロキシプロピルメチルセルロースまたはヒドロキシエチルメチルセルロースであることを特徴とする請求項1又は2に記載の打重ね用のコンクリート。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明者等は、鋭意検討を重ねた結果、20℃における2質量%の水溶液粘度がB−H型粘度計の20rpmにおいて90mPa・s以上920mPa・s以下である水溶性セルロースエーテルを特殊増粘剤として用い、この特殊増粘剤を添加して打設することで、打設後のコンクリートを柔らかいまま所定期間に亘って維持でき、かつ、ブリーディングに起因する過剰な浮き水の発生を抑制できるという着想を得た。そして、特殊増粘剤が添加されたフレッシュコンクリートを用いて打重ねをすることで、先の打設から後の打設までの時間を空けてもコールドジョイントの発生を抑制できると考えた。
【0018】
この着想を確認すべく、第1試験〜第7試験からなる7種類の試験を行った。各試験の概略について説明すると次の通りである。なお、第1〜第6試験では、水溶性セルロースエーテルとしてヒドロキシプロピルメチルセルロース(以下、HPMCと略記する)を使用した。第7試験では、水溶性セルロースエーテルとしてヒドロキシエチルメチルセルロース(以下、HEMCと略記する)を使用した。
【0019】
第1試験(
図1〜
図4)では、このHPMCを主成分とし、かつ、規定濃度の水溶液における粘度が異なる複数種類の特殊増粘剤を用い、スランプ、空気量、ブリーディング率、及び、凝結時間を測定した。第2試験(
図5〜
図8)では、第1試験で結果が良好であった特殊増粘剤と、同じ濃度(2質量%)における水溶液の粘度が近い他の特殊増粘剤を用いスランプ等を測定した。第3試験(
図9〜
図11)では、第1試験で結果が良好であった特殊増粘剤を対象とし、ベースコンクリートに対する添加量を変化させてスランプやブリーディング率等を測定した。第4試験(
図12〜
図14)では、第2試験で用いた特殊増粘剤を対象とし、凝結遅延剤と併用して用いてスランプやブリーディング率等を測定した。第5試験(
図15〜
図17)では、凝結遅延剤を添加し、かつHPMCを主成分とする特殊増粘剤のベースコンクリートに対する添加量を変化させてブリーディング率や凝結時間等を測定した。第6実験(
図18〜
図20)では、HPMCを主成分とし、規定濃度の水溶液における粘度が約880mPa・sの特殊増粘剤を用い、ブリーディング率や凝結時間等を測定した。第7実験(
図21〜23)では、HEMCを主成分とし、規定濃度の水溶液における粘度が異なる複数種類の特殊増粘剤を用い、ブリーディング率や凝結時間等を測定した。
【0020】
まず、第1試験について詳細に説明する。
図1は、第1試験での使用材料を説明する図である。同図に示すように、第1試験では、セメント(C)として、太平洋セメント社製の普通ポルトランドセメントを用いた。この普通ポルトランドセメントは、密度3.16g/cm
3、比表面積3340cm
2/gである。細骨材(S)として、千葉県木更津市産の陸砂を用いた。この陸砂は、表乾密度2.59g/cm
3、吸水率2.54%、粗粒率2.67、実績率69.2%である。粗骨材(G)として、東京都青梅市産の砕石を用いた。この砕石は、区分が砕石2005、表乾密度2.64g/cm
3、吸水率0.74%、粗粒率6.63、実績率59.3%である。水(W)は、上水道水(密度1.00g/cm
3)を用いた。
【0021】
次に、混和剤について説明する。混和剤としてAE減水剤(WR)を用いた。このAE減水剤は、BASFジャパン社製のマスターポゾリス(登録商標)No70を用いた。このAE減水剤は、リグニンスルホン酸を主成分として含有している。なお、減水剤に関し、メラミン系、リグニン系、ポリカルボン酸系といった他の種類の薬剤も使用することができる。
【0022】
次に、特殊増粘剤について説明する。今回の試験では、特殊増粘剤VA1〜VA3を用いた。何れも信越化学工業株式会社製の増粘剤であり、水溶性セルロースエーテルの一種であるHPMCを主成分として含有している。これらの薬剤の違いは、主として規定濃度の水溶液における粘度(言い換えれば分子量)にある。すなわち、特殊増粘剤VA1は、DSが1.26、MSが0.15、20℃における2質量%の水溶液粘度がB−H型粘度計の20rpmにおいて14800mPa・sである。特殊増粘剤VA2は、DSが1.48、MSが0.20、20℃における1質量%の水溶液粘度がB−H型粘度計の20rpmにおいて19300mPa・s(2質量%の水溶液での換算粘度は約290000mPa・s)である。特殊増粘剤VA3は、DSが1.40、MSが0.14、20℃における2質量%の水溶液粘度がB−H型粘度計の20rpmにおいて109mPa・sである。なお、以下の説明において、水溶液粘度に関しては、単に濃度2質量%の水溶液における粘度と記載されていても、前述の粘度を示している。
【0023】
なお、DSは、置換度(degree of substitution)を表し、セルロースのグルコース環単位当たりに存在するアルコキシ基の個数であり、MSは、置換モル数(molar substitution)を表し、セルロースのグルコース環単位当たりに付加したヒドロキシアルコキシ基の平均モル数である。上記アルキル基の置換度及びヒドロキシアルキル基の置換モル数の測定方法としては、第16改正日本薬局方記載のヒプロメロース(ヒドロキシプロピルメチルセルロース)の置換度分析方法により測定できる。
【0024】
次に、第1試験における各サンプルの配合について説明する。
図2に示すように、この第1試験では、配合1−1〜4からなる4種類のサンプルを作製した。ここで、ベースコンクリートに関し、各サンプルの配合は共通である。すなわち、単位量(1m
3)あたり、水(W)165kg、セメント(C)330kg、細骨材(S)798kg、粗骨材(G)997kgである。これにより、水セメント比(W/C)50.0%、細骨材率(s/a)45.0%、粗骨材の絶対容積(Vg)377L/m
3となる。なお、この配合条件は、練り上がり5分後におけるスランプが12cmとなるように定められている。
【0025】
各サンプルでは、特殊増粘剤の種類と添加量が異なっている。まず、配合1−1のサンプルは、特殊増粘剤が添加されていない対照サンプルである。そして、配合1−2のサンプルは、特殊増粘剤VA1が単位量あたり400g添加されている。同様に、配合1−3のサンプルは、特殊増粘剤VA2が単位量あたり200g添加され、配合1−4のサンプルは、特殊増粘剤VA3が単位量あたり1000g添加されている。ここで、
図2に示す特殊増粘剤VA1〜VA3の添加量は、水溶液での重量を示している。この添加量は標準添加量であり、練り上がったフレッシュコンクリートのワーカビリティが作業に適する状態となる量に定められている。
【0026】
なお、AE減水剤(WR)については、全てのサンプルに対し、セメント量の0.25%添加されている。また、実際の施工においては、たとえば特殊増粘剤を後添加するようにしてもよい。
【0027】
上記配合の各材料を練り混ぜてサンプルを作製した。練り混ぜには、公称容量60Lの強制二軸練りミキサーを用いた。練り混ぜ量は、1回のバッチ処理あたり50Lとした。練り混ぜに際しては、まず骨材と粉体をミキサーに投入して10秒空練りをし、その後、混和剤、特殊増粘剤、水を投入して60秒練り混ぜた。なお、特殊増粘剤を後添加する場合には、たとえば現場まで運搬されてきたフレッシュ状態のレディミクストコンクリートに対し、溶液状の特殊増粘剤を添加して攪拌すればよい。
【0028】
練り混ぜ後の各サンプルに対し、スランプ、空気量、ブリーディング率、凝結時間、コンクリート温度を測定した。なお、スランプは、JIS A 1101によって測定した。空気量は、JIS A 1128によって測定した。ブリーディング率は、JIS A 1123によって測定した。凝結時間は、JIS A 1147によって測定した。
【0029】
測定結果を
図3に示す。ここで、スランプ、空気量、ブリーディング率、コンクリート温度については、練り上がりから5分経過した時点でサンプリングした試料の測定値である。
【0030】
スランプについて説明する。特殊増粘剤の入っていない配合1−1のサンプルではスランプが12.5cmであった。そして、特殊増粘剤VA1を用いた配合1−2のサンプル、及びVA2を用いた配合1−3のサンプルではスランプが9.0cmであった。すなわち、特殊増粘剤VA1,VA2を添加して練り上げたコンクリートは、特殊増粘剤を添加せずに練り上げたコンクリートに比べて固くなっていることが判る。これに対し、特殊増粘剤VA3を添加した配合1−4のサンプルではスランプが13.5cmであった。このことから、濃度2%の水溶液における粘度が100mPa・s程度と、比較的粘度の低い特殊増粘剤を添加することにより、特殊増粘剤を添加していないコンクリートに比べて柔らかいフレッシュコンクリートが得られることが判った。
【0031】
次に、ブリーディング率について説明する。ブリーディング率は、配合1−1のサンプルでは5.2%、配合1−2のサンプルでは3.5%、配合1−3のサンプルでは1.5%、配合1−4のサンプルでは0.4%であった。ブリーディング率に関しては、特殊増粘剤VA1〜VA3を添加することで、特殊増粘剤を添加していないコンクリートに比べて抑制できることが判った。そして、配合1−4のサンプルについては、ブリーディング率が0.4%であり、配合1−2や配合1−3のサンプルと比べても十分にブリーディングが抑制されているといえる。
【0032】
凝結時間について説明する。
図3及び
図4に示すように、配合1−1のサンプルでは始発が5時間35分、終結が7時間40分、配合1−2のサンプルでは始発が8時間00分、終結が10時間35分であった。配合1−3のサンプルでは始発が6時間15分、終結が8時間40分、配合1−4のサンプルでは始発が8時間05分、終結が10時間40分であった。凝結時間に関し、特殊増粘剤を添加することで、特殊増粘剤を添加していないコンクリートよりも凝結時間を遅延できることが判った。特に、特殊増粘剤VA1,VA3を添加することで、凝結時間を長時間遅延できることが判った。
【0033】
なお、空気量については5.3%〜5.8%の範囲内であり、サンプル間の差はなかった。また、コンクリート温度については、19.3℃〜19.8℃の範囲内であり、サンプル間の差はなかった。
【0034】
この第1試験によって次のことが確認された。第1に、HPMCを主成分とする特殊増粘剤を添加することで、ブリーディングの発生を抑制できることが確認された。特に、濃度2質量%における水溶液の粘度が109mPa・sである特殊増粘剤VA3を添加すると、特殊増粘剤を添加していないコンクリートに比べ、ブリーディング率が1/10未満に抑えられることが確認された。
【0035】
第2に、この特殊増粘剤を添加することで、コンクリートの凝結を遅延できることが確認された。特に、濃度2質量%における水溶液の粘度が14800mPa・sである特殊増粘剤VA1、及び、前述の特殊増粘剤VA3を添加すると、特殊増粘剤を添加していないコンクリートに比べて、凝結時間を2時間程度遅延できることが確認された。
【0036】
第3に、練り上がったコンクリートの柔らかさに関し、水溶液の粘度が比較的高い特殊増粘剤VA1,VA2を添加すると、特殊増粘剤を添加していないコンクリートに比べて固くなる傾向が確認されたが、水溶液の粘度が比較的低い特殊増粘剤VA3を添加すると、特殊増粘剤を添加していないコンクリートよりも柔らかくなることが確認された。
【0037】
以上より、特殊増粘剤VA3の添加によって、特殊増粘剤を添加しないコンクリートよりも柔らかく、ブリーディングの発生を抑制でき、かつ、凝結時間を遅延させることのできる、打重ねに適したコンクリートが実現できることが確認された。
【0038】
次に、第2試験について詳細に説明する。
図5は、第2試験での使用材料を説明する図である。同図に示すように、この第2試験では、特殊増粘剤として前述したVA3の他、VA4を用いている点で第1試験と異なっている。この特殊増粘剤VA4は、VA3と同様に水溶性セルロースエーテルの一種であるHPMCを主成分として含有している。これらの特殊増粘剤VA3とVA4の違いは、主として規定濃度の水溶液における粘度(言い換えれば分子量)にある。すなわち、VA4は、DSが1.41、MSが0.15、濃度2質量%の水溶液における粘度が481mPa・sである。そして、他の使用材料については、第1試験と同じであるので説明を省略する。
【0039】
次に、第2試験における各サンプルの配合について説明する。
図6に示すように、この第2試験では、配合2−1〜2−3からなる3種類のサンプルを作製した。ここで、ベースコンクリートについては、各サンプルの配合は共通である。すなわち、単位量(1m
3)あたり、水(W)175kg、セメント(C)350kg、細骨材(S)785kg、粗骨材(G)976kgである。これにより、水セメント比(W/C)50.0%、細骨材率(s/a)45.0%、粗骨材の絶対容積(Vg)368L/m
3となる。なお、この配合条件は、練り上がり5分後におけるスランプが18cmとなるように定められている。また、各サンプルにおいて、AE減水剤(WR)は、セメント量の0.25%添加されている。
【0040】
各サンプルでは、特殊増粘剤の種類と添加量が異なっている。まず、配合2−1のサンプルは、特殊増粘剤が添加されていない対照サンプルである。そして、配合2−2のサンプルは、特殊増粘剤VA3が単位量あたり1000g添加され、配合2−3のサンプルは、特殊増粘剤VA4が単位量あたり700g添加されている。ここで、
図6に示す特殊増粘剤VA3,VA4の添加量もまた水溶液での重量であり、標準添加量を示している。
【0041】
第2試験でも、第1試験と同様に練り混ぜを行ってサンプルを作製した。そして、練り混ぜ後の各サンプルに対し、スランプ、空気量、ブリーディング率、凝結時間、コンクリート温度を前述のJISに即して測定した。
【0042】
測定結果を
図7に示す。ここで、スランプ、空気量、コンクリート温度については、練り上がりから5分経過した時点でサンプリングした試料の測定値である。また、ブリーディング率については、練り上がりから30分経過した時点でサンプリングした試料の測定値である。
【0043】
スランプについて説明する。特殊増粘剤の入っていない配合2−1のサンプルではスランプが18.0cmであった。そして、特殊増粘剤VA3を用いた配合2−2のサンプルではスランプが19.0cm、特殊増粘剤VA4を用いた配合2−2のサンプルではスランプが18.0cmであった。このことから、濃度2質量%の水溶液における粘度が100〜500mPa・s程度と、比較的粘度の低い特殊増粘剤(HPMC)を用いることにより、特殊増粘剤を添加していないコンクリートと同等かそれよりも柔らかいフレッシュコンクリートが得られることが判った。
【0044】
次に、ブリーディング率について説明する。ブリーディング率は、配合2−1のサンプルでは3.7%、配合2−2のサンプルでは1.1%、配合2−3のサンプルでは1.0%であった。このことから、比較的粘度の低い特殊増粘剤を添加することで、特殊増粘剤を添加していないコンクリートに比べてブリーディング率を70%以上抑制できることが判った。
【0045】
凝結時間について説明する。
図7及び
図8に示すように、配合2−1のサンプルでは始発が5時間40分、終結が7時間40分、配合2−2のサンプルでは始発が7時間55分、終結が10時間10分、配合2−3のサンプルでは始発が7時間45分、終結が10時間00分であった。凝結時間に関し、特殊増粘剤VA3,VA4を添加することで、特殊増粘剤を添加していないコンクリートよりも凝結時間を2時間半程度遅延できることが判った。
【0046】
なお、空気量については配合2−1のサンプルが4.5%であったのに対し、配合2−2のサンプルが5.0%、配合2−3のサンプルが5.5%であった。このことから、特殊増粘剤VA3,VA4を用いることにより、多少ではあるが空気量が増える傾向が確認された。また、コンクリート温度については、20.6℃〜20.9℃の範囲内であり、サンプル間の差はなかった。
【0047】
この第2試験によって次のことが確認された。すなわち、特殊増粘剤として、HPMCを主成分とすると共に濃度2質量%水溶液の粘度が109mPa・s,481mPa・sである混和剤が好適に使用できることが確認できた。ここで、粘度109mPa・sと粘度100mPa・s、及び、粘度481mPa・sと粘度500mPa・sとは、コンクリート用の添加剤として用いる場合等価である。このため、HPMCを主成分とし、濃度2質量%水溶液の粘度が100〜500mPa・sである水溶性セルロースエーテルであれば、特殊増粘剤として好適に使用できるといえる。
【0048】
次に、第3試験について説明する。
図9は、第3試験での使用材料を説明する図である。同図に示すように、この第3試験では、特殊増粘剤として第1試験及び第2試験で用いたVA3を用いた。その他の使用材料については第1試験及び第2試験と同じであるので、説明は省略する。
【0049】
次に、第3試験における各サンプルの配合について説明する。
図10に示すように、この第3試験では、配合3−1〜3−10からなる10種類のサンプルを作製した。ここで、ベースコンクリートに関し、各サンプルの配合は共通である。すなわち、単位量(1m
3)あたり、水(W)175kg、セメント(C)350kg、細骨材(S)779kg、粗骨材(G)973kgである。これにより、水セメント比(W/C)50.0%、細骨材率(s/a)45.0%となる。なお、各サンプルにおいて、AE減水剤(WR)は、セメント量の0.25%添加されている。
【0050】
各サンプルでは、添加される特殊増粘剤の量が第1試験及び第2試験と異なっている。概略を説明すると、特殊増粘剤の添加量を、標準添加量に対する0.0〜2.0倍まで変化させている。まず、配合3−1のサンプルは、特殊増粘剤を添加していない(標準添加量の0.0倍)に設定したものであり、対照サンプルである。
【0051】
配合3−2のサンプルは特殊増粘剤の添加量を標準添加量の0.1倍(100g/m
3)とし、配合3−3のサンプルは同じく標準添加量の0.2倍(200g/m
3)とし、配合3−4のサンプルは同じく標準添加量の0.4倍(400g/m
3)としたものである。同様に、配合3−5のサンプルは標準添加量の0.6倍(600g/m
3)、配合3−6のサンプルは標準添加量の0.8倍(800g/m
3)、配合3−7のサンプルは標準添加量の1.0倍(1000g/m
3)である。さらに、配合3−8のサンプルは標準添加量の1.2倍(1200g/m
3)、配合3−9のサンプルは標準添加量の1.5倍(1500g/m
3)、配合3−10のサンプルは標準添加量の2.0倍(2000g/m
3)である。
【0052】
第3試験でも、第1試験と同様に練り混ぜを行ってサンプルを作製した。そして、練り混ぜ後の各サンプルに対し、スランプ、空気量、ブリーディング率、凝結時間、コンクリート温度を前述のJISに即して測定した。
【0053】
測定結果を
図11に示す。なお、スランプ、空気量、コンクリート温度については、練り上がりから5分経過した時点でサンプリングした試料の測定値である。また、ブリーディング率については、練り上がりから30分経過した時点でサンプリングした試料の測定値である。
【0054】
スランプについて説明する。特殊増粘剤の入っていない配合3−1のサンプルではスランプが16.5cmであった。そして、特殊増粘剤VA3を標準添加量の0.1倍添加した配合3−2のサンプルではスランプが17.0cm、標準添加量の0.2倍添加した配合3−3のサンプルではスランプが17.0cm、標準添加量の0.4倍添加した配合3−4のサンプルではスランプが17.5cmであった。同様に、特殊増粘剤VA3を標準添加量の0.6倍添加した配合3−5のサンプル、標準添加量の0.8倍添加した配合3−6のサンプル、及び、標準添加量の1.0倍添加した配合3−7のサンプルではスランプが18.5cmであった。さらに、特殊増粘剤VA3を標準添加量の1.2倍添加した配合3−8のサンプル、標準添加量の1.5倍添加した配合3−9のサンプル、及び、標準添加量の2.0倍添加した配合3−10のサンプルではスランプが17.0cmであった。
【0055】
このことから、濃度2質量%の水溶液における粘度が109mPa・s程度と、比較的粘度の低い特殊増粘剤VA3を用いた場合、その添加量が標準添加量の0.1〜2.0倍の範囲で特殊増粘剤を添加していないコンクリートと同等かそれよりも柔らかいフレッシュコンクリートが得られることが判った。
【0056】
次に、ブリーディング率について説明する。ブリーディング率は、配合3−1のサンプルでは4.3%であり、配合3−2のサンプルでは4.0%であった。同様に、配合3−3のサンプルでは3.4%、配合3−4のサンプルでは3.9%、配合3−5のサンプルでは3.1%、配合3−6のサンプルでは2.1%、配合3−7のサンプルでは1.1%
であった。さらに、配合3−8のサンプルでは1.1%、配合3−9のサンプルでは0.03%、配合3−10のサンプルでは0%であった。
【0057】
このことから、特殊増粘剤VA3を標準添加量の0.1倍以上添加することで、特殊増粘剤を添加していないコンクリートよりもブリーディングを抑制できることが判った。そして、特殊増粘剤VA3を標準添加量の0.8倍以上添加することで、特殊増粘剤を添加していないコンクリートに対してブリーディング率を半減できることも判った。さらに、特殊増粘剤VA3の添加量を増やすほどにブリーディング率を低減できることも判った。
【0058】
凝結時間について説明する。配合3−1のサンプルでは始発が5時間50分、終結が7時間55分、配合3−2のサンプルでは始発が5時間55分、終結が8時間40分、配合3−3のサンプルでは始発が6時間10分、終結が8時間40分であった。また、配合3−4のサンプルでは始発が7時間00分、終結が9時間55分、配合3−5のサンプルでは始発が7時間45分、終結が10時間20分、配合3−6のサンプルでは始発が8時間05分、終結が10時間25分であった。配合3−7のサンプルでは始発が8時間20分、終結が10時間50分、配合3−8のサンプルでは始発が8時間30分、終結が11時間00分、配合3−9のサンプルでは始発が8時間50分、終結が11時間35分、配合3−10のサンプルでは始発が9時間30分、終結が12時間00分であった。
【0059】
これらの結果より、特殊増粘剤VA3の添加量が標準添加量の0.1〜2.0倍の範囲内にある場合、特殊増粘剤VA3の添加量が多いほど、凝結時間を遅延できることが確認できた。
【0060】
なお、空気量については4.5%〜5.7%の範囲内であり、特殊増粘剤VA3の添加量と空気量との関係はみられなかった。また、コンクリート温度については、21.5℃〜22.0℃の範囲内であり、サンプル間の差はなかった。
【0061】
ところで、以上は特殊増粘剤VA3についての測定結果であるが、第2試験の結果を考慮すると、特殊増粘剤VA4でも同様の結果が得られると考えられる。このため、濃度2質量%の水溶液における粘度が100〜500mPa・s程度と、比較的粘度の低い特殊増粘剤(HPMC)を用いた場合、この特殊増粘剤を標準添加量の0.1〜2.0倍の範囲で添加することで、特殊増粘剤を添加していないコンクリートと同等かそれよりも柔らかく、かつ、ブリーディングを抑制できるフレッシュコンクリートが得られるといえる。さらに、特殊増粘剤の添加量を増やすほど、凝結時間を遅延できるといえる。
【0062】
次に、第4試験について説明する。
図12は、第4試験での使用材料を説明する図である。同図に示すように、この第4試験では、遅延剤(超遅延性減水剤)を用いている。この遅延剤は、BASFジャパン社製のマスターポゾリス(登録商標)No89を用いた。この遅延剤は、変性リグニンスルホン酸とオキシカルボン酸化合物の複合体を主成分として含有している。また、特殊増粘剤は、第2試験で用いたVA3及びVA4を用いた。その他の使用材料についても第2試験と同じであるので、説明は省略する。
【0063】
次に、第4試験における各サンプルの配合について説明する。
図13に示すように、この第4試験では、配合4−1〜4−12からなる12種類のサンプルを作製した。ここで、ベースコンクリートに関し、各サンプルの配合は共通である。すなわち、単位量(1m
3)あたり、水(W)175kg、セメント(C)350kg、細骨材(S)785kg、粗骨材(G)976kgである。これにより、水セメント比(W/C)50.0%、細骨材率(s/a)45.0%、粗骨材の絶対容積(Vg)368L/m
3となる。なお、各サンプルにおいて、AE減水剤(WR)は、セメント量の0.25%添加されている。
【0064】
各サンプルでは、添加される遅延剤の有無が第2試験と異なっている。簡単に説明すると、配合4−1,4−5,4−9の各サンプルでは遅延剤が添加されていない。そして、配合4−1のサンプルは、特殊増粘剤も添加されていないので、配合2−1のサンプルと同じ配合となっている。配合4−5のサンプルは、標準添加量の特殊増粘剤VA3が添加されており、配合2−2のサンプルと同等の配合となっている。同様に、配合4−9のサンプルは、標準添加量の特殊増粘剤VA4が添加されており、配合2−3のサンプルと同等の配合となっている。
【0065】
そして、配合4−2〜4−4のサンプルでは、配合4−1のサンプルをベースに遅延剤(R−WR)の添加量を段階的に増やしている。すなわち、配合4−2のサンプルでは、遅延剤がセメント量の0.60%添加されている。そして、配合4−3のサンプルでは遅延剤がセメント量の0.80%添加され、配合4−4のサンプルでは遅延剤がセメント量の1.00%添加されている。
【0066】
配合4−6〜4−8のサンプルでは、配合4−5のサンプルをベースに遅延剤の添加量を段階的に増やしている。すなわち、配合4−6のサンプルでは、遅延剤がセメント量の0.60%添加され、配合4−7のサンプルでは遅延剤がセメント量の0.80%添加され、配合4−8のサンプルでは遅延剤がセメント量の1.00%添加されている。
【0067】
配合4−10〜4−12のサンプルでは、配合4−9のサンプルをベースに遅延剤の添加量を段階的に増やしている。すなわち、配合4−10のサンプルでは、遅延剤がセメント量の0.60%添加され、配合4−11のサンプルでは遅延剤がセメント量の0.80%添加され、配合4−12のサンプルでは遅延剤がセメント量の1.00%添加されている。
【0068】
上記配合の各材料を練り混ぜてサンプルを作製した。なお、練り混ぜに用いたミキサー及び練り混ぜ手順は第1試験と同じであるので、説明を省略する。そして、練り混ぜ後の各サンプルに対し、スランプ、空気量、ブリーディング率、貫入抵抗値の0.1N/mm
2到達時間、凝結時間、コンクリート温度を前述のJISに即して測定した。
【0069】
ここで、貫入抵抗値の0.1N/mm
2到達時間は、打重ねに適した柔らかさの指標として測定した。貫入抵抗値に関しては、土木学会のコンクリートライブラリー「コンクリート構造物のコールドジョイント問題と対策」に、「コールドジョイントを防止できる下層コンクリートの凝結の上限はプロクター貫入抵抗値で0.01〜1.0N/mm
2の範囲にある」と記載されており、今回は判断値として中心値である0.1N/mm
2を採用した。
【0070】
そして、先に打設したコンクリートの貫入抵抗値が0.1N/mm
2に到達する以前に後のコンクリートを重ねて打設すれば、コールドジョイントの発生を防止できてコンクリートを一体化できるといえる。なお、この到達時間は、コンクリートの性状や施工現場の温度(外気温)によって変動するものである。
【0071】
打重ねには、貫入抵抗値0.1N/mm
2に達するまでの時間が重要であり、具体的には、貫入抵抗値0.1N/mm
2に到達する時間が、好ましくは、2〜36時間、より好ましくは3〜24時間である。さらに、凝結遅延させることは、凝結遅延剤の併用で可能であるが、一般的に、この場合、ブリーディング率が大きくなり、コンクリートの品質は低下する。つまり、ブリーディングも低い方が好ましく、具体的には、ブリーディング率 0.01〜10%、更に好ましくは0.1〜7%である。
【0072】
測定結果を
図14に示す。なお、スランプ、空気量、コンクリート温度については、練り上がりから5分経過した時点でサンプリングした試料の測定値である。また、ブリーディング率については、練り上がりから30分経過した時点でサンプリングした試料の測定値である。
【0073】
スランプについて説明する。特殊増粘剤及び遅延剤が添加されていない配合4−1のサンプルではスランプが18.0cmであった。そして、遅延剤がセメント量の0.60%添加された配合4−2のサンプルではスランプが21.0cm、0.80%添加された配合4−3のサンプル、及び、1.00%添加された配合4−4のサンプルではスランプが22.5cmであった。
【0074】
特殊増粘剤VA3が添加され、遅延剤が添加されていない配合4−5のサンプルではスランプが18.5cmであった。そして、遅延剤がセメント量の0.60%添加された配合4−6のサンプルではスランプが21.5cm、0.80%添加された配合4−7のサンプルではスランプが22.5cm、1.00%添加された配合4−8のサンプルではスランプが23.0cmであった。
【0075】
特殊増粘剤VA4が添加され、遅延剤が添加されていない配合4−9のサンプルではスランプが18.5cmであった。そして、遅延剤がセメント量の0.60%添加された配合4−10のサンプルではスランプが21.0cm、0.80%添加された配合4−11のサンプルではスランプが22.5cm、1.00%添加された配合4−12のサンプルではスランプが23.0cmであった。
【0076】
スランプに関しては、配合4−1〜4−4のサンプル群,配合4−5〜4−8のサンプル群,4−9〜4−12のサンプル群の何れにおいても、遅延剤の添加量が増えるに連れてスランプが大きくなる傾向が確認された。加えて、特殊増粘剤VA3,VA4を添加しても、特殊増粘剤を添加しない各サンプルと同等のスランプが得られることも確認された。
【0077】
次に、ブリーディング率について説明する。ブリーディング率に関し、特殊増粘剤が添加されていない配合4−1〜4−4のサンプル群では、遅延剤の添加量が増えるに連れてブリーディング率が増大する傾向が確認された。すなわち、ブリーディング率に関し、配合4−1では4.6%、配合4−2及び4−3では11.8%、配合4−4では14.2%であった。
【0078】
一方、特殊増粘剤VA3が添加された配合4−5〜4−8のサンプル群と、特殊増粘剤VA4が添加された配合4−9〜4−12のサンプル群では、遅延剤の添加量が増えても、ブリーディング率の増加量は僅かであった。すなわち、ブリーディング率に関し、配合4−5では1.6%、配合4−6では2.9%、配合4−7では3.8%、配合4−8では5.1%であった。同様に、配合4−9では1.6%、配合4−10では3.4%、配合4−11では4.3%、配合4−12では5.0%であった。
【0079】
このように、ブリーディング率に関して、特殊増粘剤VA3,VA4を用いた配合4−5〜4−12の各サンプルでは、特殊増粘剤を用いない配合4−1〜4−4の各サンプルに比べて、ブリーディング率が非常に小さかった。このことは、特殊増粘剤VA3,VA4を遅延剤と併用することにより、遅延剤の添加に伴う浮き水の増大を効果的に抑制できることを示している。
【0080】
貫入抵抗値の0.1N/mm
2到達時間について説明する。貫入抵抗値の0.1N/mm
2到達時間に関し、配合4−1のサンプルでは3時間00分、配合4−2のサンプルでは8時間00分、配合4−3のサンプルでは13時間00分、配合4−4のサンプルでは19時間00分であった。また、配合4−5のサンプルでは4時間00分、配合4−6のサンプルでは9時間00分、配合4−7のサンプルでは12時間00分、配合4−8のサンプルでは20時間00分であった。配合4−9のサンプルでは5時間00分、配合4−10のサンプルでは10時間00分、配合4−11のサンプルでは14時間00分、配合4−12のサンプルでは18時間00分であった。
【0081】
このように、遅延剤に関して、特殊増粘剤VA3,VA4を用いた配合4−5〜4−12の各サンプルでは、特殊増粘剤を用いない配合4−1〜4−4の各サンプルと同等の遅延効果が得られることが確認された。このことは、特殊増粘剤VA3,VA4が遅延剤の遅延効果を阻害しないことを示している。
【0082】
凝結時間について説明する。配合4−1のサンプルでは始発が5時間30分、終結が7時間50分、配合4−2のサンプルでは始発が11時間20分、終結が13時間20分、配合4−3のサンプルでは始発が15時間00分、終結が17時間30分、配合4−4のサンプルでは始発が22時間00分、終結が24時間20分であった。また、配合4−5のサンプルでは始発が8時間25分、終結が10時間50分、配合4−6のサンプルでは始発が12時間45分、終結が15時間30分、配合4−7のサンプルでは始発が16時間50分、終結が20時間00分、配合4−8のサンプルでは始発が25時間30分、終結が28時間30分であった。さらに、配合4−9のサンプルでは始発が8時間00分、終結が10時間10分、配合4−10のサンプルでは始発が14時間25分、終結が17時間35分、配合4−11のサンプルでは始発が17時間45分、終結が20時間15分、配合4−12のサンプルでは始発が23時間00分、終結が25時間20分であった。
【0083】
このように、凝結時間に関し、遅延剤の添加量が多いほど、凝結時間を遅延できることが確認できた。また、特殊増粘剤VA3,VA4を用いることで、特殊増粘剤を用いない各サンプルよりも凝結時間をさらに遅延できることも確認できた。
【0084】
なお、空気量については配合4−1〜4−4のサンプル群が4.5〜4.6%であったのに対し、配合4−5〜4−8のサンプル群が4.1〜5.2%、配合4−9〜4−12のサンプル群が5.1〜5.6%であった。このことから、特殊増粘剤VA3,VA4を用いることにより、多少ではあるが空気量が増える傾向が確認された。また、コンクリート温度については、19.8℃〜20.9℃の範囲内であり、サンプル間の差はなかった。
【0085】
この第4試験によって次のことが確認された。すなわち、特殊増粘剤VA3,VA4は遅延剤による遅延効果を阻害せず、遅延剤との併用が可能であることが確認された。そして、特殊増粘剤VA3,VA4と遅延剤を併用することで、ブリーディングによる浮き水の発生を抑制しつつ凝結時間を遅延させることができ、先の打設から後の打設まで時間を空けてもコールドジョイントの発生を抑制できるコンクリートを作製できることが確認された。
【0086】
次に、第5試験について説明する。
図15は、第5試験での使用材料を説明する図である。同図に示すように、第5試験では、セメント(C)として、太平洋セメント社製の普通ポルトランドセメントを用いた。この普通ポルトランドセメントは、密度3.16g/cm
3、比表面積3320cm
2/gである。細骨材(S)として、千葉県木更津市産の陸砂を用いた。この陸砂は、表乾密度2.63g/cm
3、吸水率1.90%、粗粒率2.45、実績率66.7%である。粗骨材(G)として、東京都青梅市産の砕石を用いた。この砕石は、区分が砕石2005、表乾密度2.65g/cm
3、吸水率0.92%、粗粒率6.61、実績率58.9%である。水(W)は、上水道水(密度1.00g/cm
3)を用いた。
【0087】
混和剤としてAE減水剤(WR)を用いた。このAE減水剤は、BASFジャパン社製のマスターポゾリス(登録商標)No70を用いた。また、遅延剤(超遅延性減水剤)として、BASFジャパン社製のマスターポゾリス(登録商標)No89を用いた。
【0088】
特殊増粘剤について説明する。今回の試験では、特殊増粘剤VA5を用いた。これは信越化学工業株式会社製の増粘剤であり、水溶性セルロースエーテルの一種であるHPMCを主成分として含有している。特殊増粘剤VA5は、DSが1.40、MSが0.14、20℃における2質量%の水溶液粘度がB−H型粘度計の20rpmにおいて105mPa・sである。また、特殊増粘剤VA5の標準添加量は、1000g/m
3である。
【0089】
次に、第5試験における各サンプルの配合について説明する。
図16に示すように、この第5試験では、配合5−1〜5−4からなる4種類のサンプルを作製した。ここで、ベースコンクリートに関し、各サンプルの配合は共通である。すなわち、単位量(1m
3)あたり、水(W)175kg、セメント(C)350kg、細骨材(S)792kg、粗骨材(G)974kgである。これにより、水セメント比(W/C)50.0%、細骨材率(s/a)45.0%、粗骨材の絶対容積(Vg)368L/m
3となる。なお、この配合条件は、練り上がり5分後におけるスランプが15±2.5cm、練り上がり5分後における空気量が4.5±1.5%となるように定められている。
【0090】
各サンプルでは、特殊増粘剤の添加量が異なっている。配合5−1のサンプルは、特殊増粘剤VA5を添加していない(標準添加量の0.0倍)ものであり、比較例に相当する。配合5−2のサンプルは、特殊増粘剤VA5が単位量あたり500g添加されている。配合5−3のサンプルは、特殊増粘剤VA5が単位量あたり1000g添加されている。配合5−4のサンプルは、特殊増粘剤VA5が単位量あたり2000g添加されている。ここで、
図16に示す特殊増粘剤VA5の添加量は、水溶液での重量を示している。
【0091】
なお、AE減水剤(WR)については、全てのサンプルに対し、セメント量の0.25%添加されている。また遅延剤(R)については、全てのサンプルに対し、セメント量の0.6%添加されている。
【0092】
上記配合の各材料を練り混ぜてサンプルを作製した。練り混ぜには、公称容量60Lの強制二軸練りミキサーを用いた。練り混ぜ量は、1回のバッチ処理あたり40Lとした。練り混ぜに際しては、まず骨材、粉体、特殊増粘剤をミキサーに投入して10秒空練りをし、その後、混和剤、水を投入して60秒練り混ぜた。
【0093】
練り混ぜ後の各サンプルに対し、スランプ、空気量、ブリーディング率、ブリーディング量、貫入抵抗値0.1N/mm
2到達時間、凝結時間、コンクリート温度を測定した。なお、スランプは、JIS A 1101によって測定した。空気量は、JIS A 1128によって測定した。ブリーディング率及びブリーディング量は、JIS A 1123によって測定した。貫入抵抗値0.1N/mm
2到達時間は、打重ねに適した柔らかさの指標として測定した。凝結時間は、JIS A 1147によって測定した。
【0094】
測定結果を
図17に示す。ここで、スランプ、空気量、コンクリート温度については、練り上がりから5分経過した時点及び30分経過した時点でサンプリングした試料の測定値である。また、ブリーディング率及びブリーディング量については、練り上がりから30分経過した時点でサンプリングした試料の測定値である。
【0095】
スランプについて説明する。たとえば、5分経過した時点でのスランプを見ると、配合5−1のサンプルは、20.5cmであり、配合5−2のサンプルは、21.5cmであり、配合5−3のサンプルは、21.0cmであり、配合5−4のサンプルは、22.0cmである。このことから、特殊増粘剤に遅延剤を添加した場合であっても、特殊増粘剤を添加していないコンクリートに比べて柔らかいフレッシュコンクリートが得られることが判った。
【0096】
次に、ブリーディング率及びブリーディング量について説明する。ブリーディング率は、配合5−1のサンプルでは7.3%、配合5−2のサンプルでは4.3%、配合5−3のサンプルでは2.6%、配合5−4のサンプルでは0.1%であった。ブリーディング量は、配合5−1のサンプルでは0.32cm
3/cm
2、配合5−2のサンプルでは0.19cm
3/cm
2、配合5−3のサンプルでは0.12cm
3/cm
2、配合5−4のサンプルでは0.01cm
3/cm
2であった。この結果から明らかなように、遅延剤を添加した場合であっても特殊増粘剤の添加量が増えるにつれてブリーディング率及びブリーディング量が減少することが判った。
【0097】
凝結時間について説明する。配合5−1のサンプルでは始発が10時間10分、終結が12時間50分、配合5−2のサンプルでは始発が13時間00分、終結が16時間00分であった。配合5−3のサンプルでは始発が15時間00分、終結が17時間40分、配合5−4のサンプルでは始発が16時間30分、終結が19時間40分であった。この結果から明らかなように、遅延剤を添加した場合であっても特殊増粘剤を添加することで、特殊増粘剤を添加していないコンクリートよりも凝結時間を遅延できることが判った。
【0098】
貫入抵抗値の0.1N/mm
2到達時間について説明する。貫入抵抗値の0.1N/mm
2到達時間に関し、配合5−1のサンプルでは7時間00分、配合5−2のサンプルでは9時間00分、配合5−3のサンプルでは10時間00分、配合5−4のサンプルでは12時間00分であった。この結果から明らかなように、遅延剤に関して、特殊増粘剤VA5を用いた配合5−2〜5−4の各サンプルでは、特殊増粘剤を用いない配合5−1のサンプルと同等かそれ以上の遅延効果が得られることが確認された。このことは、特殊増粘剤VA5が遅延剤の遅延効果を阻害しないことを示している。
【0099】
なお、空気量については4.4%〜5.6%の範囲内であり、サンプル間の差はなかった。また、コンクリート温度については、20.0℃〜21.0℃の範囲内であり、サンプル間の差はなかった。
【0100】
この第5試験によって次のことが確認された。第1に、遅延剤を添加した場合においても、第3試験と同様、特殊増粘剤の量が増えるとブリーディング率及びブリーディング量が減少することが確認された。
【0101】
第2に、遅延剤を添加した場合においても、第3試験と同様、特殊増粘剤を添加することにより凝結時間を遅延させることが確認された。
【0102】
次に、第6試験について説明する。
図18は、第6試験での使用材料を説明する図である。同図に示すように、この第6試験では、一部に特殊増粘剤VA6を用いた。これは信越化学工業株式会社製の増粘剤であり、水溶性セルロースエーテルの一種であるHPMCを主成分として含有している。特殊増粘剤VA6は、DSが1.75、MSが0.15、20℃における2質量%の水溶液粘度がB−H型粘度計の20rpmにおいて880mPa・sである。また、特殊増粘剤VA6の標準添加量は、400g/m
3である。その他の使用材料については第5試験と同じであるので、説明は省略する。
【0103】
次に、第6試験における各サンプルの配合について説明する。
図19に示すように、この第6試験では、配合6−1〜6−8からなる8種類のサンプルを作製した。ここで、ベースコンクリートに関し、各サンプルの配合は第5実験と共通である。なお、各サンプルにおいて、AE減水剤(WR)は、セメント量の0.25%添加されている。
【0104】
配合6−1〜6−4のサンプルは、特殊増粘剤VA6を添加していない(標準添加量の0.0倍)ものであり、比較例に相当する。配合6−1〜6−4のサンプルは、遅延剤の添加量が異なっている。具体的には、配合6−1のサンプルは遅延剤を添加していない。配合6−2のサンプルは遅延剤をセメント量の0.6%添加しており、配合6−3のサンプルは遅延剤をセメント量の0.8%添加しており、配合6−4のサンプルは遅延剤をセメント量の1.0%添加している。配合6−2のサンプルは、配合5−1のサンプルと同じ配合となっている。
【0105】
一方、配合6−5〜6−8のサンプルは、特殊増粘剤VA6を添加する実施例に相当する。配合6−5〜6−8のサンプルは、特殊増粘剤VA6の添加量を400g/m
3としたものである。配合6−5〜6−8のサンプルは遅延剤の添加量が異なっている。具体的には、配合6−5のサンプルは遅延剤を添加していない。配合6−6のサンプルは遅延剤をセメント量の0.6%添加しており、配合6−7のサンプルは遅延剤をセメント量の0.8%添加しており、配合6−8のサンプルは遅延剤をセメント量の1.0%添加している。
【0106】
第6試験でも、第5試験と同様に練り混ぜを行ってサンプルを作製した。そして、練り混ぜ後の各サンプルに対し、スランプ、空気量、ブリーディング率、ブリーディング量、貫入抵抗値0.1N/mm
2到達時間、凝結時間、コンクリート温度を前述のJIS等に即して測定した。
【0107】
測定結果を
図20に示す。ここで、スランプ、空気量、コンクリート温度については、練り上がりから5分経過した時点及び30分経過した時点でサンプリングした試料の測定値である。また、ブリーディング率及びブリーディング量については、練り上がりから30分経過した時点でサンプリングした試料の測定値である。
【0108】
スランプについて説明する。たとえば、5分経過した時点でのスランプを見ると、比較例に相当する配合6−1のサンプルは、17.5cmであり、配合6−2のサンプルは、20.5cmであり、配合6−3のサンプルは、20.5cmであり、配合6−4のサンプルは、22.5cmである。一方、実施例に相当する配合6−5のサンプルは、18.5cmであり、配合6−6のサンプルは、20.5cmであり、配合6−7のサンプルは、23.0cmであり、配合6−8のサンプルは、22.0cmである。このことから、HPMCを主成分とし、粘度が880mPa・sの特殊増粘剤VA6を添加した場合であっても、少なくとも特殊増粘剤を添加していないコンクリートと同程度の柔らかさのフレッシュコンクリートが得られることが判った。
【0109】
次に、ブリーディング率及びブリーディング量について説明する。ブリーディング率は、比較例に相当する配合6−1のサンプルでは3.4%、配合6−2のサンプルでは7.3%、配合6−3のサンプルでは9.0%、配合6−4のサンプルでは11.5%であった。一方、実施例に相当する配合6−5のサンプルでは0.9%、配合6−6のサンプルでは2.2%、配合6−7のサンプルでは3.4%、配合6−8のサンプルでは5.7%であった。ブリーディング量は、比較例に相当する配合6−1のサンプルでは0.15cm
3/cm
2、配合6−2のサンプルでは0.32cm
3/cm
2、配合6−3のサンプルでは0.40cm
3/cm
2、配合6−4のサンプルでは0.51cm
3/cm
2であった。一方、実施例に相当する配合6−5のサンプルでは0.04cm
3/cm
2、配合6−6のサンプルでは0.10cm
3/cm
2、配合6−7のサンプルでは0.15cm
3/cm
2、配合6−8のサンプルでは0.26cm
3/cm
2であった。この結果から明らかなように、HPMCを主成分とし、粘度が880mPa・sの特殊増粘剤VA6を添加した場合であっても、特殊増粘剤を添加しない場合に比べ、ブリーディング率及びブリーディング量が減少することが判った。
【0110】
凝結時間について説明する。比較例に相当する配合6−1のサンプルでは始発が6時間00分、終結が8時間20分、配合6−2のサンプルでは始発が10時間10分、終結が12時間50分であった。配合6−3のサンプルでは始発が13時間15分、終結が16時間00分、配合6−4のサンプルでは始発が21時間20分、終結が23時間50分であった。一方、実施例に相当する配合6−5のサンプルでは始発が6時間20分、終結が8時間40分、配合6−6のサンプルでは始発が11時間00分、終結が13時間20分であった。配合6−7のサンプルでは始発が14時間40分、終結が17時間20分、配合6−8のサンプルでは始発が26時間30分、終結が29時間10分であった。この結果から明らかなように、HPMCを主成分とし、粘度が880mPa・sの特殊増粘剤VA6を添加した場合であっても、特殊増粘剤を添加していないコンクリートよりも凝結時間を遅延できることが判った。
【0111】
貫入抵抗値の0.1N/mm
2到達時間について説明する。貫入抵抗値の0.1N/mm
2到達時間に関し、比較例に相当する配合6−1のサンプルでは3時間00分、配合6−2のサンプルでは7時間00分、配合6−3のサンプルでは10時間00分、配合6−4のサンプルでは18時間00分であった。一方、実施例に相当する配合6−5のサンプルでは3時間00分、配合6−6のサンプルでは8時間00分、配合6−7のサンプルでは11時間00分、配合6−8のサンプルでは22時間00分であった。この結果から明らかなように、遅延剤に関して、特殊増粘剤VA6を用いた配合6−5〜6−8の各サンプルでは、特殊増粘剤を用いない配合6−1〜6−4の各サンプルと同等かそれ以上の遅延効果が得られることが確認された。このことは、特殊増粘剤VA6が遅延剤の遅延効果を阻害しないことを示している。
【0112】
なお、空気量については4.4%〜6.0%の範囲内であり、サンプル間の差はなかった。また、コンクリート温度については、20.0℃〜21.0℃の範囲内であり、サンプル間の差はなかった。
【0113】
この第6試験によって次のことが確認された。第1に、特殊増粘剤として、HPMCを主成分とし、濃度2質量%水溶液の粘度が880mPa・sの特殊増粘剤VA6を用いてもブリーディング率及びブリーディング量が減少することが確認された。第2に、特殊増粘剤VA6を添加することにより凝結時間を遅延させることが確認された。ここで、粘度880mPa・sと粘度920mPa・sとは、コンクリート用の添加剤として用いる場合等価である。以上の試験結果から明らかなように、HPMCを主成分とし、濃度2質量%水溶液の粘度が100〜920mPa・sである水溶性セルロースエーテルであれば、特殊増粘剤として好適に使用できるといえる。
【0114】
次に、第7試験について説明する。
図21は、第7試験での使用材料を説明する図である。同図に示すように、この第7試験では、特殊増粘剤VA7または特殊増粘剤VA8を用いた。これらは信越化学工業株式会社製の増粘剤であり、水溶性セルロースエーテルの一種であるHEMCを主成分として含有している。特殊増粘剤VA7は、DSが1.71、MSが0.10、20℃における2質量%の水溶液粘度がB−H型粘度計の20rpmにおいて94mPa・sである。また、特殊増粘剤VA7の標準添加量は、1000g/m
3である。特殊増粘剤VA8は、DSが1.61、MSが0.11、20℃における2質量%の水溶液粘度がB−H型粘度計の20rpmにおいて860mPa・sである。また、特殊増粘剤VA8の標準添加量は、400g/m
3である。その他の使用材料については第5試験と同じであるので、説明は省略する。
【0115】
次に、第7試験における各サンプルの配合について説明する。
図22に示すように、この第7試験では、配合7−1〜7−12からなる12種類のサンプルを作製した。ここで、ベースコンクリートに関し、各サンプルの配合は第5実験と共通である。なお、各サンプルにおいて、AE減水剤(WR)は、セメント量の0.25%添加されている。
【0116】
配合7−1〜7−4のサンプルは、特殊増粘剤を添加していない(標準添加量の0.0倍)ものであり、比較例に相当する。配合7−1〜7−4のサンプルは、遅延剤の添加量が異なっており、それぞれ配合6−1〜6−4のサンプルと同じ配合となっている。配合7−5〜7−8のサンプルは、特殊増粘剤VA7を添加する実施例に相当する。配合7−5〜7−8のサンプルは、特殊増粘剤VA7の添加量を1000g/m
3としたものである。配合7−5〜7−8のサンプルは遅延剤の添加量が異なっている。具体的には、配合7−5のサンプルは遅延剤を添加していない。配合7−6のサンプルは遅延剤をセメント量の0.6%添加しており、配合7−7のサンプルは遅延剤をセメント量の0.8%添加しており、配合7−8のサンプルは遅延剤をセメント量の1.0%添加している。
【0117】
また、配合7−9〜7−12のサンプルは、特殊増粘剤VA8を添加する実施例に相当する。配合7−9〜7−12のサンプルは、特殊増粘剤VA8の添加量を400g/m
3としたものである。配合7−9〜7−12のサンプルは遅延剤の添加量が異なっている。具体的には、配合7−9のサンプルは遅延剤を添加していない。配合7−10のサンプルは遅延剤をセメント量の0.6%添加しており、配合7−11のサンプルは遅延剤をセメント量の0.8%添加しており、配合7−12のサンプルは遅延剤をセメント量の1.0%添加している。
【0118】
第7試験でも、第5試験、第6試験と同様に練り混ぜを行ってサンプルを作製した。そして、練り混ぜ後の各サンプルに対し、スランプ、空気量、ブリーディング率、ブリーディング量、貫入抵抗値0.1N/mm
2到達時間、凝結時間、コンクリート温度を前述のJIS等に即して測定した。
【0119】
測定結果を
図23に示す。ここで、スランプ、空気量、コンクリート温度については、練り上がりから5分経過した時点及び30分経過した時点でサンプリングした試料の測定値である。また、ブリーディング率及びブリーディング量については、練り上がりから30分経過した時点でサンプリングした試料の測定値である。
【0120】
スランプについて説明する。たとえば、5分経過した時点でのスランプを見ると、比較例に相当する配合7−1のサンプルは、17.5cmであり、配合7−2のサンプルは、20.5cmであり、配合7−3のサンプルは、20.5cmであり、配合7−4のサンプルは、22.5cmである。一方、実施例に相当する配合7−5のサンプルは、18.0cmであり、配合7−6のサンプルは、21.0cmであり、配合7−7のサンプルは、22.0cmであり、配合7−8のサンプルは、21.5cmであり、配合7−9のサンプルは、16.5cmであり、配合7−10のサンプルは、17.5cmであり、配合7−11のサンプルは、21.5cmであり、配合7−12のサンプルは、22.0cmである。このことから、HEMCを主成分とする特殊増粘剤VA7、VA8を添加した場合であっても、少なくとも特殊増粘剤を添加していないコンクリートと同程度の柔らかさのフレッシュコンクリートが得られることが判った。
【0121】
次に、ブリーディング率及びブリーディング量について説明する。ブリーディング率は、比較例に相当する配合7−1のサンプルでは3.4%、配合7−2のサンプルでは7.3%、配合7−3のサンプルでは9.0%、配合7−4のサンプルでは11.5%であった。一方、実施例に相当する配合7−5のサンプルでは0.5%、配合7−6のサンプルでは1.6%、配合7−7のサンプルでは2.3%、配合7−8のサンプルでは3.0%、配合7−9のサンプルでは1.8%、配合7−10のサンプルでは4.3%、配合7−11のサンプルでは6.6%、配合7−12のサンプルでは7.9%であった。ブリーディング量は、比較例に相当する配合7−1のサンプルでは0.15cm
3/cm
2、配合7−2のサンプルでは0.32cm
3/cm
2、配合7−3のサンプルでは0.40cm
3/cm
2、配合7−4のサンプルでは0.51cm
3/cm
2であった。一方、実施例に相当する配合7−5のサンプルでは0.02cm
3/cm
2、配合7−6のサンプルでは0.07cm
3/cm
2、配合7−7のサンプルでは0.10cm
3/cm
2、配合7−8のサンプルでは0.13cm
3/cm
2、配合7−9のサンプルでは0.08cm
3/cm
2、配合7−10のサンプルでは0.19cm
3/cm
2、配合7−11のサンプルでは0.30cm
3/cm
2、配合7−12のサンプルでは0.36cm
3/cm
2であった。この結果から明らかなように、HEMCを主成分とする特殊増粘剤VA7、VA8を添加した場合であっても、特殊増粘剤を添加しない場合に比べ、ブリーディング率及びブリーディング量が減少することが判った。
【0122】
凝結時間について説明する。比較例に相当する配合7−1のサンプルでは始発が6時間00分、終結が8時間20分、配合7−2のサンプルでは始発が10時間10分、終結が12時間50分であった。配合7−3のサンプルでは始発が13時間15分、終結が16時間00分、配合7−4のサンプルでは始発が21時間20分、終結が23時間50分であった。一方、実施例に相当する配合7−5のサンプルでは始発が7時間20分、終結が9時間40分、配合7−6のサンプルでは始発が12時間10分、終結が14時間50分であった。配合7−7のサンプルでは始発が16時間20分、終結が19時間00分、配合7−8のサンプルでは始発が22時間00分、終結が24時間50分、配合7−9のサンプルでは始発が7時間00分、終結が9時間30分、配合7−10のサンプルでは始発が11時間20分、終結が14時間20分であった。配合7−11のサンプルでは始発が15時間20分、終結が18時間00分、配合7−12のサンプルでは始発が23時間00分、終結が25時間30分であった。この結果から明らかなように、HEMCを主成分とする特殊増粘剤VA7、VA8を添加した場合であっても、特殊増粘剤を添加していないコンクリートよりも凝結時間を遅延できることが判った。
【0123】
貫入抵抗値の0.1N/mm
2到達時間について説明する。貫入抵抗値の0.1N/mm
2到達時間に関し、比較例に相当する配合7−1のサンプルでは3時間00分、配合7−2のサンプルでは7時間00分、配合7−3のサンプルでは10時間00分、配合7−4のサンプルでは18時間00分であった。一方、実施例に相当する配合7−5のサンプルでは4時間00分、配合7−6のサンプルでは8時間00分、配合7−7のサンプルでは12時間00分、配合7−8のサンプルでは18時間00分、配合7−9のサンプルでは3時間00分、配合7−10のサンプルでは8時間00分、配合7−11のサンプルでは11時間00分、配合7−12のサンプルでは18時間00分であった。この結果から明らかなように、遅延剤に関して、特殊増粘剤VA7またはVA8を用いた配合7−5〜7−12の各サンプルでは、特殊増粘剤を用いない配合7−1〜7−4の各サンプルと同等の遅延効果が得られることが確認された。このことは、特殊増粘剤VA7及びVA8が遅延剤の遅延効果を阻害しないことを示している。
【0124】
なお、空気量については4.1%〜5.5%の範囲内であり、サンプル間の差はなかった。また、コンクリート温度については、20.0℃〜21.0℃の範囲内であり、サンプル間の差はなかった。
【0125】
この第7試験によって次のことが確認された。第1に、特殊増粘剤として、HEMCを主成分とし、濃度2質量%水溶液の粘度が94mPa・sの特殊増粘剤VA7、または860mPa・sの特殊増粘剤VA8を用いてもブリーディング率及びブリーディング量が減少することが確認された。第2に、特殊増粘剤VA7またはVA8を添加することにより凝結時間を遅延させることが確認された。ここで、粘度94mPa・sと粘度90mPa・s、及び、粘度860mPa・sと粘度920mPa・sとは、コンクリート用の添加剤として用いる場合等価である。以上の試験結果から明らかなように、HEMCを主成分とし、濃度2質量%水溶液の粘度が90〜920mPa・sである水溶性セルロースエーテルであれば、特殊増粘剤として好適に使用できるといえる。
【0126】
以上の実施形態の説明は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明はその趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に本発明にはその等価物が含まれる。
【0127】
水溶性セルロースエーテルに関し、前述の実施形態では、HPMC及びHEMCを例示したが、濃度2質量%の水溶液における粘度が90mPa・s以上920mPa・s以下であれば、他の種類の水溶性セルロースエーテルを用いることもできる。
【0128】
水溶性セルロースエーテルは、レディミクストコンクリートに添加してもよいし、コンクリート製造時に添加することでもよい。
【0129】
なお、凝結遅延剤に関し、前述の実施形態では、変性リグニンスルホン酸とオキシカルボン酸化合物の複合体を主成分として含有するものを例示したが、他の種類の凝結遅延剤であっても使用できる。例えば、リグニンスルホン酸塩、オキシカルボン酸塩、糖類誘導体を主成分とするものであっても、同様に適用できる。