特許第6519178号(P6519178)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6519178有機エレクトロニクスデバイス封止用樹脂組成物、及び有機エレクトロニクスデバイス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6519178
(24)【登録日】2019年5月10日
(45)【発行日】2019年5月29日
(54)【発明の名称】有機エレクトロニクスデバイス封止用樹脂組成物、及び有機エレクトロニクスデバイス
(51)【国際特許分類】
   H05B 33/04 20060101AFI20190520BHJP
   C08L 53/02 20060101ALI20190520BHJP
   C08L 23/00 20060101ALI20190520BHJP
   C08F 297/04 20060101ALI20190520BHJP
   C08F 8/04 20060101ALI20190520BHJP
   C08F 8/42 20060101ALI20190520BHJP
【FI】
   H05B33/04
   C08L53/02
   C08L23/00
   C08F297/04
   C08F8/04
   C08F8/42
【請求項の数】7
【全頁数】29
(21)【出願番号】特願2014-551973(P2014-551973)
(86)(22)【出願日】2013年11月28日
(86)【国際出願番号】JP2013082103
(87)【国際公開番号】WO2014091941
(87)【国際公開日】20140619
【審査請求日】2016年9月13日
(31)【優先権主張番号】特願2012-269669(P2012-269669)
(32)【優先日】2012年12月10日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】田崎 聡
(72)【発明者】
【氏名】柏木 幹文
(72)【発明者】
【氏名】石黒 淳
(72)【発明者】
【氏名】小出 洋平
【審査官】 中村 英司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−045016(JP,A)
【文献】 特開2010−083979(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/151029(WO,A1)
【文献】 特開平10−116442(JP,A)
【文献】 再公表特許第2011/096389(JP,A1)
【文献】 国際公開第2011/096389(WO,A1)
【文献】 特開2005−129520(JP,A)
【文献】 特開2010−107981(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 53/02
C08L 8/00
C08F297/04
H05B 33/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブロック共重合体の全不飽和結合の90%以上を水素化して得られるブロック共重合体水素化物、及び前記ブロック共重合体水素化物100重量部に対して1〜50重量部の可塑剤を含有する有機エレクトロニクスデバイス封止用樹脂組成物であって、
前記ブロック共重合体は、
芳香族ビニル化合物単位を90重量%以上含む、共重合体1分子あたり2個以上の重合体ブロック[A]と、
鎖状共役ジエン化合物単位を90重量%以上含む、共重合体1分子あたり1個以上の重合体ブロック[B]と
を有し、
前記ブロック共重合体全体に占める、全重合体ブロック[A]の重量分率wAと全重合体ブロック[B]の重量分率wBとの比(wA:wB)が20:80〜60:40であり、
前記ブロック共重合体水素化物における、芳香族性の炭素−炭素不飽和結合の水素化率が、90%以上であり、
前記可塑剤が、数平均分子量200〜5000の炭化水素重合体である、
有機エレクトロニクスデバイス封止用樹脂組成物。
【請求項2】
前記ブロック共重合体水素化物の重量平均分子量が、30,000〜200,000である、請求項1に記載の有機エレクトロニクスデバイス封止用樹脂組成物。
【請求項3】
前記ブロック共重合体が、前記重合体ブロック[B]の両端に、前記重合体ブロック[A]が結合したトリブロック共重合体である、請求項1又は2に記載の有機エレクトロニクスデバイス封止用樹脂組成物。
【請求項4】
前記ブロック共重合体水素化物がアルコキシシリル基を有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の有機エレクトロニクスデバイス封止用樹脂組成物。
【請求項5】
有機材料を含む素子と、請求項1〜のいずれか1項に記載の有機エレクトロニクスデバイス封止用樹脂組成物の層とを有する有機エレクトロニクスデバイス。
【請求項6】
前記素子と、前記封止用樹脂組成物の層との間に介在する吸着剤の層をさらに含む、請求項に記載の有機エレクトロニクスデバイス。
【請求項7】
前記素子と、前記封止用樹脂組成物の層との間に介在する仮封止層をさらに含む、請求項5又は6に記載の有機エレクトロニクスデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機エレクトロニクスデバイス封止用樹脂組成物、及び有機エレクトロニクスデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、適宜「有機EL素子」ということがある。)、及び有機半導体素子等の素子を備える有機エレクトロニクスデバイスには、封止用の部材が設けられることがある。かかる封止用の部材を、デバイスの内部の有機材料を封止するような態様で設けることにより、有機材料が水蒸気及び酸素により劣化することを防ぐことができ、ひいてはデバイスの性能の低下を防ぐことができる。
【0003】
かかる封止用の部材としては、スチレン系エラストマーを含む柔軟な材料(特許文献1)、エポキシ系材料(特許文献2)等の材料が知られている。かかる柔軟な樹脂の部材を封止用の部材として用いることにより、素子の封止を達成し、且つ、デバイスの凹凸をカバーし、デバイスの強度を高めることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−129520号公報(対応公報:欧州特許出願公開第1670292号明細書、米国特許出願公開第2008/220245号明細書)
【特許文献2】特開2006−183002号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の封止用の部材には、封止部材の層を形成した後の脱ガスが多いという問題点がある。係る脱ガスの現象は、封止部材層形成後の、デバイス製造の操作において障害となり得る。また、脱ガスにより封止部材外に出たガスが素子内部へ入ると、有機材料の劣化をもたらし得る。
【0006】
従って、本発明の目的は、脱ガスが少なく、良好な封止を達成することができる、有機エレクトロニクスデバイス封止用樹脂組成物を提供することにある。
本発明のさらなる目的は、有機材料が良好に封止され、経時的耐久性等において優れた性能を有する有機エレクトロニクスデバイスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上述の課題を解決するべく検討した結果、封止用の組成物として、特定のブロック共重合体水素化物を含むものを採用することにより、上記課題を解決しうることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明によれば、以下のものが提供される。
【0008】
〔1〕 ブロック共重合体の全不飽和結合の90%以上を水素化して得られるブロック共重合体水素化物を含有する有機エレクトロニクスデバイス封止用樹脂組成物であって、
前記ブロック共重合体は、
芳香族ビニル化合物単位を主成分とする、共重合体1分子あたり2個以上の重合体ブロック[A]と、
鎖状共役ジエン化合物単位を主成分とする、共重合体1分子あたり1個以上の重合体ブロック[B]と
を有し、
前記ブロック共重合体全体に占める、全重合体ブロック[A]の重量分率wAと全重合体ブロック[B]の重量分率wBとの比(wA:wB)が20:80〜60:40である、
有機エレクトロニクスデバイス封止用樹脂組成物。
〔2〕 前記ブロック共重合体水素化物の重量平均分子量が、30,000〜200,000である、〔1〕に記載の有機エレクトロニクスデバイス封止用樹脂組成物。
〔3〕 前記ブロック共重合体が、前記重合体ブロック[B]の両端に、前記重合体ブロック[A]が結合したトリブロック共重合体である、〔1〕又は〔2〕に記載の有機エレクトロニクスデバイス封止用樹脂組成物。
〔4〕 前記ブロック共重合体水素化物がアルコキシシリル基を有する、〔1〕〜〔3〕のいずれか1項に記載の有機エレクトロニクスデバイス封止用樹脂組成物。
〔5〕 前記重合体ブロック[A]が、前記芳香族ビニル化合物単位を90重量%以上含み、前記重合体ブロック[B]が、前記鎖状共役ジエン化合物単位を90重量%以上含む、〔1〕〜〔4〕のいずれか1項に記載の有機エレクトロニクスデバイス封止用樹脂組成物。
〔6〕 さらに、可塑剤を、前記ブロック共重合体水素化物100重量部に対して1〜50重量部含有する、〔1〕〜〔5〕のいずれか1項に記載の有機エレクトロニクスデバイス封止用樹脂組成物。
〔7〕前記可塑剤が、数平均分子量200〜5000の炭化水素重合体である〔6〕に記載の有機エレクトロニクスデバイス封止用樹脂組成物。
〔8〕 有機材料を含む素子と、〔1〕〜〔7〕のいずれか1項に記載の有機エレクトロニクスデバイス封止用樹脂組成物の層とを有する有機エレクトロニクスデバイス。
〔9〕 前記素子と、前記封止用樹脂組成物の層との間に介在する吸着剤の層をさらに含む、〔8〕に記載の有機エレクトロニクスデバイス。
〔10〕 前記素子と、前記封止用樹脂組成物の層との間に介在する仮封止層をさらに含む、〔8〕又は〔9〕に記載の有機エレクトロニクスデバイス。
【発明の効果】
【0009】
本発明の有機エレクトロニクスデバイス封止用樹脂組成物によれば、脱ガスが少なく、良好な、有機エレクトロニクスデバイス封止を達成することができる。
本発明の有機エレクトロニクスデバイスは、デバイスを構成する有機材料が良好に封止され、劣化が少なく、経時的耐久性等において優れた性能を有する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、有機EL素子等の構成要素を含む、有機エレクトロニクスデバイスを構成する組立体を概略的に示す斜視図である。
図2図2は、図1に示す組立体及び封止用樹脂組成物の層からなる有機エレクトロニクスデバイスの例を概略的に示す縦断面図である。
図3図3は、本発明の有機エレクトロニクスデバイスの別の例を概略的に示す縦断面図である。
図4図4は、本発明の有機エレクトロニクスデバイスのさらに別の例を概略的に示す縦断面図である。
図5図5は、有機半導体等の構成要素を含む、本発明の有機エレクトロニクスデバイスのさらに別の例を概略的に示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施形態及び例示物等を示して本発明について詳細に説明するが、本発明は以下に示す実施形態及び例示物等に限定されるものではなく、本発明の特許請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施しうる。
【0012】
[1.ブロック共重合体]
本発明に用いられるブロック共重合体は、芳香族ビニル化合物単位を主成分とする、共重合体1分子あたり2個以上の重合体ブロック[A]と、鎖状共役ジエン化合物単位を主成分とする、共重合体1分子あたり1個以上の重合体ブロック[B]とを有する。
【0013】
重合体ブロック[A]が有する芳香族ビニル化合物単位は、芳香族ビニル化合物の重合により得られる単位である。芳香族ビニル化合物としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、2,4−ジイソプロピルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、4−t−ブチルスチレン、5−t−ブチル−2−メチルスチレン、4−モノクロロスチレン、ジクロロスチレン、4−モノフルオロスチレン、4−フェニルスチレンなどが挙げられる。これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。中でも、吸湿性の面で極性基を含有しないものが好ましい。更に、工業的入手のし易さ、耐衝撃性の観点から、スチレンが特に好ましい。
【0014】
重合体ブロック[A]における芳香族ビニル化合物単位の含有率は、通常90重量%以上、好ましくは95重量%以上、より好ましくは99重量%以上である。重合体ブロック[A]において芳香族ビニル化合物単位の量を前記のように多くすることにより、封止用樹脂組成物の層の耐熱性を高めることができる。重合体ブロック[A]における芳香族ビニル化合物単位の含有率の上限は、100重量%以下としうる。
【0015】
重合体ブロック[A]は、芳香族ビニル化合物単位以外の成分を含んでいてもよい。芳香族ビニル化合物単位以外の成分としては、例えば、鎖状共役ジエン化合物単位、芳香族ビニル化合物以外のビニル化合物を重合して形成される構造を有する構造単位、などが挙げられる。
【0016】
鎖状共役ジエン化合物単位に対応する鎖状共役ジエン化合物としては、例えば、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエンなどが挙げられる。これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。中でも、吸湿性の面で極性基を含有しないものが好ましく、具体的には1,3−ブタジエン、イソプレンが特に好ましい。
【0017】
芳香族ビニル化合物以外のビニル化合物としては、例えば、鎖状ビニル化合物;環状ビニル化合物;ニトリル基、アルコキシカルボニル基、ヒドロキシカルボニル基、又はハロゲン基を有するビニル化合物;不飽和の環状酸無水物;不飽和イミド化合物などが挙げられる。好ましい例を挙げると、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ドデセン、1−エイコセン、4−メチル−1−ペンテン、4,6−ジメチル−1−ヘプテン等の鎖状オレフィン;ビニルシクロヘキサン等の環状オレフィン;などの、極性基を含有しないものが吸湿性の面で好ましい。中でも、鎖状オレフィンがより好ましく、エチレン、プロピレンが特に好ましい。また、これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0018】
重合体ブロック[A]における芳香族ビニル化合物単位以外の成分の含有率は、通常10重量%以下、好ましくは5重量%以下、より好ましくは1重量%以下である。重合体ブロック[A]における芳香族ビニル化合物単位以外の成分の含有率の下限は、0重量%以上としうる。
【0019】
ブロック共重合体1分子における重合体ブロック[A]の数は、通常2個以上であり、通常5個以下、好ましくは4個以下、より好ましくは3個以下である。1分子中に複数個ある重合体ブロック[A]は、互いに同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0020】
重合体ブロック[B]が有する鎖状共役ジエン化合物単位は、鎖状共役ジエン化合物の重合により得られる単位である。鎖状共役ジエン化合物としては、例えば、重合体ブロック[A]に含まれていてもよいものとして例示したものと同様のものを挙げられる。
【0021】
重合体ブロック[B]における鎖状共役ジエン化合物単位の含有率は、通常90重量%以上、好ましくは95重量%以上、より好ましくは99重量%以上である。重合体ブロック[B]において鎖状共役ジエン化合物単位の量を前記のように多くすることにより、封止用樹脂組成物の層の低温での耐衝撃性を向上させることができる。重合体ブロック[B]における鎖状共役ジエン化合物単位の含有率の上限は、100重量%以下としうる。
【0022】
また、重合体ブロック[B]は、鎖状共役ジエン化合物単位以外の成分を含んでいてもよい。鎖状共役ジエン化合物単位以外の成分としては、例えば、芳香族ビニル化合物単位、並びに、芳香族ビニル化合物以外のビニル化合物を重合して形成される構造を有する構造単位などが挙げられる。これらの芳香族ビニル化合物単位、並びに、芳香族ビニル化合物以外のビニル化合物を重合して形成される構造を有する構造単位は、例えば、重合体ブロック[A]に含まれていてもよいものとして例示したものが、同様に挙げられる。
【0023】
重合体ブロック[B]における鎖状共役ジエン化合物単位以外の成分の含有率は、通常10重量%以下、好ましくは5重量%以下、より好ましくは1重量%以下である。特に、重合体ブロック[B]における芳香族ビニル化合物単位の含有率を低くすることにより、封止用樹脂組成物の層の低温での柔軟性を向上させて、封止用樹脂組成物の層の低温での耐衝撃性を向上させることができる。重合体ブロック[B]における鎖状共役ジエン化合物単位以外の成分の含有率の下限は、0重量%以上としうる。
【0024】
ブロック共重合体1分子における重合体ブロック[B]の数は、通常1個以上であるが、2個以上であってもよい。ブロック共重合体における重合体ブロック[B]の数が2個以上である場合、重合体ブロック[B]は、互いに同じでもよく、異なっていてもよい。
【0025】
ブロック共重合体のブロックの形態は、鎖状型ブロックでもよく、ラジアル型ブロックでもよい。中でも、鎖状型ブロックが、機械的強度に優れ、好ましい。
鎖状型ブロックの形態である場合、その両端がブロック[A]であることが、封止用樹脂組成物のベタツキを所望の低い値に抑え、封止用樹脂組成物としての機能を発現させる上で特に好ましい。
ブロック共重合体の特に好ましい形態は、重合体ブロック[B]の両端に重合体ブロック[A]が結合したトリブロック共重合体;重合体ブロック[A]の両端に重合体ブロック[B]が結合し、更に、該両重合体ブロック[B]の他端にそれぞれ重合体ブロック[A]が結合したペンタブロック共重合体である。特に、[A]−[B]−[A]のトリブロック共重合体であることが、製造が容易であり且つ粘度等の物性を所望の範囲とすることができるため、特に好ましい。
【0026】
ブロック共重合体において、全重合体ブロック[A]がブロック共重合体全体に占める重量分率wAと、全重合体ブロック[B]がブロック共重合体全体に占める重量分率をwBとの比(wA:wB)は、20:80〜60:40であり、好ましくは30:70〜55:45である。wAの割合を前記範囲の下限値以上とすることにより、封止用樹脂組成物の層の耐熱性を向上させることができる。また、上限値以下とすることにより、封止用樹脂組成物の層の柔軟性を高めて、封止用樹脂組成物の層のガスバリア性を安定して良好に維持することができると共に、Tgを下げることで封止温度をも下げ、有機EL素子等の損傷を減少させることができる。
【0027】
1分子のブロック共重合体に、異なる重合体ブロック[A]又は重合体ブロック[B]が複数存在する場合、重合体ブロック[A]の中で重量平均分子量が最大の重合体ブロック及び最少の重合体ブロックの重量平均分子量をそれぞれMw(A1)及びMw(A2)とし、重合体ブロック[B]の中で重量平均分子量が最大の重合体ブロック及び最少の重合体ブロックの重量平均分子量をそれぞれMw(B1)及びMw(B2)とする。このとき、Mw(A1)とMw(A2)との比「Mw(A1)/Mw(A2)」、及び、Mw(B1)とMw(B2)との比「Mw(B1)/Mw(B2)」は、それぞれ、好ましくは2.0以下、より好ましくは1.5以下、特に好ましくは1.2以下である。これにより、各種物性値のばらつきを小さく抑えることができる。これらの比の下限は、1.0以上としうる。
【0028】
ブロック共重合体の分子量は、テトラヒドロフラン(THF)を溶媒とするGPCにより測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)で、通常30,000以上、好ましくは40,000以上、より好ましくは50,000以上であり、通常200,000以下、好ましくは150,000以下、より好ましくは100,000以下である。また、ブロック共重合体の分子量分布(Mw/Mn)は、好ましくは3以下、より好ましくは2以下、特に好ましくは1.5以下である。これらの比の下限は、1.0以上としうる。
【0029】
ブロック共重合体の製造方法の例としては、例えば3つの重合体ブロックを有するブロック共重合体を製造する場合、下記の方法が挙げられる。
【0030】
(製造方法1)芳香族ビニル化合物を含有するモノマー混合物(a1)を重合させて重合体ブロック[A]を形成する第1工程と、
かかる重合体ブロック[A]の一端において、鎖状共役ジエン化合物を含有するモノマー混合物(b1)を重合させて重合体ブロック[B]を形成し、[A]−[B]のジブロックの重合体を形成する第2工程と、
かかるジブロックの、ブロック[B]側の末端において、芳香族ビニル化合物を含有するモノマー混合物(a2)(ただし、モノマー混合物(a1)とモノマー混合物(a2)は同一でも異なっていてもよい。)を重合させて、ブロック共重合体を得る第3工程とを有する方法。
【0031】
(製造方法2)芳香族ビニル化合物を含有するモノマー混合物(a1)を重合させて重合体ブロック[A]を形成する第1工程と、
かかる重合体ブロック[A]の一端において、鎖状共役ジエン化合物を含有するモノマー混合物(b1)を重合させて重合体ブロック[B]を形成し、[A]−[B]のジブロックの重合体を形成する第2工程と、
かかるジブロックの重合体の、重合体ブロック[B]側の末端同士を、カップリング剤によりカップリングさせて、ブロック共重合体を得る第3工程とを有する方法。
【0032】
上記モノマー混合物を重合してそれぞれの重合体ブロックを得る方法としては、例えば、ラジカル重合、アニオン重合、カチオン重合、配位アニオン重合、配位カチオン重合などを用いうる。重合操作及び後工程での水素化反応を容易にする観点では、ラジカル重合、アニオン重合、カチオン重合などを、リビング重合により行う方法が好ましく、リビングアニオン重合により行う方法が特に好ましい。
【0033】
前記のモノマー混合物の重合は、重合開始剤の存在下で、通常0℃以上、好ましくは10℃以上、より好ましくは20℃以上、また、通常100℃以下、好ましくは80℃以下、より好ましくは70℃以下の温度範囲において行う。
リビングアニオン重合を行う場合は、重合開始剤として、例えば、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、t−ブチルリチウム、ヘキシルリチウム等のモノ有機リチウム;ジリチオメタン、1,4−ジリチオブタン、1,4−ジリチオ−2−エチルシクロヘキサン等の多官能性有機リチウム化合物;などを用いうる。これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0034】
重合反応の形態は、溶液重合、スラリー重合などのいずれでもよい。中でも、溶液重合を用いると、反応熱の除去が容易である。
溶液重合を行う場合、溶媒としては、各工程で得られる重合体が溶解しうる不活性溶媒を用いる。不活性溶媒としては、例えば、n−ペンタン、イソペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、イソオクタン等の脂肪族炭化水素類;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタン、メチルシクロヘキサン、デカリン等の脂環式炭化水素類;ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素類;などが挙げられる。これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。中でも、溶媒として脂環式炭化水素類を用いると、水素化反応にも不活性な溶媒としてそのまま使用でき、ブロック共重合体の溶解性も良好であるため、好ましい。溶媒の使用量は、全使用モノマー100重量部に対して、通常200重量部〜2000重量部である。
【0035】
それぞれのモノマー混合物が2種以上のモノマーを含む場合、ある1成分の連鎖だけが長くなるのを防止するために、例えばランダマイザーを使用しうる。特に重合反応をアニオン重合により行う場合には、例えばルイス塩基化合物等をランダマイザーとして使用することが好ましい。ルイス塩基化合物としては、例えば、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジフェニルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールメチルフェニルエーテル等のエーテル化合物;テトラメチルエチレンジアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン等の第3級アミン化合物;カリウム−t−アミルオキシド、カリウム−t−ブチルオキシド等のアルカリ金属アルコキシド化合物;トリフェニルホスフィン等のホスフィン化合物;などが挙げられる。これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0036】
[2.ブロック共重合体水素化物]
本発明の封止用樹脂組成物は、ブロック共重合体水素化物を含有する。かかるブロック共重合体水素化物は、上に述べた特定のブロック共重合体の全不飽和結合の90%以上を水素化して得られるものである。
【0037】
ブロック共重合体の全不飽和結合とは、ブロック共重合体の主鎖及び側鎖の、芳香族性及び非芳香族性の炭素−炭素不飽和結合の合計である。水素化率は、90%以上、好ましくは97%以上、より好ましくは99%以上である。水素化率が高いほど、封止用樹脂組成物の耐熱性及び耐光性を良好にできる。ここで、水素化物の水素化率は、H−NMRによる測定により求めることができる。水素化率の上限は、100重量%以下としうる。
【0038】
特に、非芳香族性の不飽和結合の水素化率は、好ましくは95%以上、より好ましくは99%以上である。非芳香族性の炭素−炭素不飽和結合の水素化率を高めることにより、封止用樹脂組成物の耐光性及び耐酸化性を更に高くできる。水素化率の上限は、100重量%以下としうる。
また、芳香族性の炭素−炭素不飽和結合の水素化率は、好ましくは90%以上、より好ましくは93%以上、特に好ましくは95%以上である。芳香環の炭素−炭素不飽和結合の水素化率を高めることにより、重合体ブロック[A]を水素化して得られる重合体ブロックのガラス転移温度が高くなるので、封止用樹脂組成物の層の耐熱性を効果的に高めることができる。水素化率の上限は、100重量%以下としうる。
【0039】
ブロック共重合体水素化物は、アルコキシシリル基を有するものとしうる。かかるアルコキシシリル基を有するブロック共重合体水素化物は、ブロック共重合体の水素化反応の後、反応生成物に対し、必要に応じてアルコキシシランによる変性の操作を行ない、アルコキシシリル基を導入することにより製造することができる。
アルコキシシリル基は、上記ブロック共重合体水素化物に直接結合していても、アルキレン基などの2価の有機基を介して結合していても良い。アルコキシシリル基の導入方法としては、通常、上記のブロック共重合体水素化物とエチレン性不飽和シラン化合物とを過酸化物の存在下で反応させる方法を採用しうる。アルコキシシリル基の導入量が多すぎると、微量の水分等で分解されたアルコキシシリル基同士の架橋度が高くなり、封止対象との接着性が低下し易くなるという問題を生じる。この観点から、アルコキシシリル基を有するブロック共重合体水素化物をブロック共重合体水素化物として用いる場合、アルコキシシリル基の導入量は、かかる基の導入前のブロック共重合体水素化物の重量に対し、通常0.1〜10g/100g、好ましくは0.2〜5g/100g、より好ましくは0.3〜3g/100gである。アルコキシシリル基の導入量は、H−NMRスペクトル(導入量が少ない場合は積算回数を増やす)にて算出される。
【0040】
エチレン性不飽和シラン化合物としては、特に限定されず、上記のブロック共重合体水素化物とグラフト重合し、ブロック共重合体水素化物にアルコキシシリル基を導入しうるものを適宜選択しうる。エチレン性不飽和シラン化合物の例としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、ジメトキシメチルビニルシラン、ジエトキシメチルビニルシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、p−スチリルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、及び2−ノルボルネン−5−イルトリメトキシシランなどのエチレン性不飽和シラン化合物から選択される少なくとも1種類を挙げることができる。本発明においては、中でも、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、ジメトキシメチルビニルシラン、ジエトキシメチルビニルシラン、p−スチリルトリメトキシシランが好適に用いられる。
【0041】
これらのエチレン性不飽和シラン化合物は、1種類を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。エチレン性不飽和シラン化合物の使用量は、ブロック共重合体水素化物100重量部に対して、通常0.1〜10重量部、好ましくは0.2〜5重量部、より好ましくは0.3〜3重量部である。
【0042】
過酸化物としては、例えば、ジベンゾイルパーオキシド、t−ブチルパーオキシアセテート、2,2−ジ−(t−ブチルパーオキシ)ブタン、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルクミルパーオキシド、ジクミルパーオキサイド、ジ−t−ヘキシルパーオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシヘキサン)、ジ−t−ブチルパーオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン−3、t−ブチルヒドロパーオキシド、t−ブチルパーオキシイソブチレート、ラウロイルパーオキシド、ジプロピオニルパーオキシド、p−メンタンハイドロパーオキサイドなどの有機過酸化物から選択される1種類以上を用いることができる。本発明においては、中でも、1分間半減期温度が170〜190℃のものが好ましく使用され、例えば、t−ブチルクミルパーオキシド、ジクミルパーオキサイド、ジ−t−ヘキシルパーオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシヘキサン)、ジ−t−ブチルパーオキシドなどが好適に用いられる。
【0043】
これらの過酸化物は、1種類を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。過酸化物の使用量は、ブロック共重合体水素化物100重量部に対して、通常0.01〜5重量部、好ましくは0.2〜3重量部、より好ましくは0.3〜2重量部である。
【0044】
上記のブロック共重合体水素化物とエチレン性不飽和シラン化合物とを過酸化物の存在下で反応させる方法は、過熱混練機や反応器を用いて行うことができる。例えば、ブロック共重合体水素化物とエチレン性不飽和シラン化合物と過酸化物との混合物を、二軸混練機にてブロック共重合体の溶融温度以上で加熱溶融させて、所望の時間混練することにより変性することができる。本発明のブロック共重合体では、その温度は、通常180〜240℃、好ましくは190〜230℃、より好ましくは200〜220℃である。加熱混練時間は、通常0.1〜15分、好ましくは0.2〜10分、より好ましくは0.3〜5分程度である。二軸混練機、短軸押出し機などの連続混練設備を使用する場合は、滞留時間が上記範囲になるようにして、連続的に混練、押出しを行いうる。
【0045】
アルコキシシリル基を有するブロック共重合体水素化物の分子量は、導入されるアルコキシシリル基の量が少ないため、アルコキシシリル基導入前のブロック共重合体水素化物の分子量から大きく変化しない。但し、過酸化物の存在下で変性反応させるため、重合体の架橋反応、切断反応も併発し、分子量分布は大きくなる。アルコキシシリル基を有するブロック共重合体水素化物の分子量は、テトラヒドロフランを溶媒としたゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)により測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)で、通常(30,000〜200,000)、好ましくは(40,000〜150,000)、より好ましくは(50,000〜120,000)、分子量分布(Mw/Mn)は、通常3.5以下、好ましくは2.5以下、特に好ましくは2.0以下である。Mw/Mnの下限は、1.0以上としうる。MwおよびMw/Mnがこの範囲であると、本発明の封止用樹脂組成物の良好な機械強度や引張り伸びが維持される。上記のようにして得られた変性重合体は、ガラス、無機物、金属などの材料との接着性が改善され、有機エレクトロニクスデバイスの封止層に使用した場合、仮封止層などの他の層との接着性が高くなる。それゆえ、有機エレクトロニクスデバイスの信頼性評価で通常行われる高温高湿環境に長時間暴露された後も、十分な接着力を維持することができ、好ましく適用される。
【0046】
具体的な水素化方法は、所望の水素化物が得られる限り制限は無いが、水素化率を高くでき、ブロック共重合体の鎖切断反応の少ない水素化方法が好ましい。このような好ましい水素化方法としては、例えば、ニッケル、コバルト、鉄、チタン、ロジウム、パラジウム、白金、ルテニウム、レニウムからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属を含む水素化触媒を用いて行う方法が挙げられる。水素化触媒は、不均一系触媒、均一系触媒のいずれも使用可能である。また、水素化反応は、有機溶媒中で行うのが好ましい。
【0047】
不均一系触媒は、例えば、金属又は金属化合物のままで用いてもよく、適切な担体に担持して用いてもよい。担体としては、例えば、活性炭、シリカ、アルミナ、炭酸カルシウム、チタニア、マグネシア、ジルコニア、ケイソウ土、炭化珪素、フッ化カルシウムなどが挙げられる。触媒の担持量は、触媒及び担体の合計量に対して、通常0.1重量%以上、好ましくは1重量%以上であり、通常60重量%以下、好ましくは50重量%以下である。また、担持型触媒の比表面積は、好ましくは100m/g〜500m/gである。さらに、担持型触媒の平均細孔径は、好ましくは100Å以上、より好ましくは200Å以上であり、好ましくは1000Å以下、好ましくは500Å以下である。ここで、比表面積は、窒素吸着量を測定しBET式を用いて求められる。また、平均細孔径は、水銀圧入法により測定しうる。
【0048】
均一系触媒としては、例えば、ニッケル、コバルト、チタン又は鉄の化合物と有機金属化合物とを組み合わせた触媒;ロジウム、パラジウム、白金、ルテニウム、レニウム等の有機金属錯体触媒;などを用いることができる。
ニッケル、コバルト、チタン又は鉄の化合物としては、例えば、各金属のアセチルアセトナト化合物、カルボン酸塩、シクロペンタジエニル化合物等が挙げられる。
また、有機金属化合物としては、例えば、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム等のアルキルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロリド、エチルアルミニウムジクロリド等のハロゲン化アルミニウム、ジイソブチルアルミニウムハイドライド等の水素化アルキルアルミニウムなどの有機アルミニウム化合物;並びに有機リチウム化合物などが挙げられる。
有機金属錯体触媒としては、例えば、ジヒドリド−テトラキス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム、ジヒドリド−テトラキス(トリフェニルホスフィン)鉄、ビス(シクロオクタジエン)ニッケル、ビス(シクロペンタジエニル)ニッケル等の遷移金属錯体が挙げられる。
【0049】
これらの水素化触媒は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
水素化触媒の使用量は、ブロック共重合体100重量部に対して、通常0.01重量部以上、好ましくは0.05重量部以上、より好ましくは0.1重量部以上であり、通常100重量部以下、好ましくは50重量部以下、より好ましくは30重量部以下である。
【0050】
水素化反応の温度は、通常10℃以上、好ましくは50℃以上、より好ましくは80℃以上であり、通常250℃以下、好ましくは200℃以下、より好ましくは180℃以下であるときに、水素化率が高くなり、分子切断も減少する。また、水素化反応時の水素圧力は、通常0.1MPa以上、好ましくは1MPa以上、より好ましくは2MPa以上であり、通常30MPa以下、好ましくは20MPa以下、より好ましくは10MPa以下であるときに、水素化率が高くなり、分子鎖切断も減少し、操作性にも優れる。
【0051】
水素化反応後の生成物は、そのまま、本発明に用いるブロック共重合体水素化物としうる。又は、水素化反応後の生成物に対し、必要に応じてさらに任意の操作を行い、本発明に用いるブロック共重合体水素化物としうる。例えば、水素化反応後の生成物に対し、必要に応じてアルコキシシランによる変性の操作を行うことができる。
【0052】
上記した方法で得られるブロック共重合体水素化物は、水素化触媒及び重合触媒を、水素化物を含む反応溶液から例えば濾過、遠心分離などの方法により除去した後、反応溶液から回収されうる。反応溶液から水素化物を回収する方法としては、例えば、水素化物が溶解した溶液からスチームストリッピングにより溶媒を除去するスチーム凝固法;減圧加熱下で溶媒を除去する直接脱溶媒法;水素化物の貧溶媒中に溶液を注いで析出及び凝固させる凝固法などが挙げられる。
【0053】
回収されたブロック共重合体水素化物の形態は限定されるものではないが、その後の成形加工又は変性反応に供し易いように、ペレット形状とするのが通常である。直接脱溶媒法により反応溶液から水素化物を回収した場合、例えば、溶融状態の水素化物をダイスからストランド状に押し出し、冷却後、ペレタイザーでカッティングしてペレット状にして、各種の成形に供してもよい。また、凝固法を用いる場合は、例えば、得られた凝固物を乾燥した後、押出機により溶融状態で押し出し、上記と同様にペレット状にして各種の成形に供してもよい。
【0054】
ブロック共重合体水素化物の分子量は、テトラヒドロフランを溶媒としたゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)により測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)で、通常30,000以上、好ましくは40,000以上、より好ましくは45,000以上であり、通常200,000以下、好ましくは150,000以下、より好ましくは100,000以下である。また、ブロック共重合体水素化物の分子量分布(Mw/Mn)は、好ましくは3以下、より好ましくは2以下、特に好ましくは1.5以下である。水素化物の分子量及び分子量分布を前記の範囲に収めることにより、封止用樹脂組成物の層の機械強度及び耐熱性を向上させることができる。
【0055】
ブロック共重合体水素化物における、全重合体ブロック[A]がブロック共重合体全体に占める重量分率wAと、全重合体ブロック[B]がブロック共重合体全体に占める重量分率をwBとの比(wA:wB)は、特に限定されないが、通常、ブロック共重合体におけるwA:wBと同様の値となる。
【0056】
[3.その他の成分]
本発明の封止用樹脂組成物は、上に述べた特定のブロック共重合体水素化物に加えて、任意の成分を含んでいてもよい。
【0057】
封止用樹脂組成物が含有しうる任意の成分としては、例えば、接着性や耐候性や耐熱性などを向上させるための可塑剤、光安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、滑剤、無機フィラーなどが挙げられる。また、これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0058】
可塑剤としては、ブロック共重合体水素化物以外のオリゴマー;一塩基性有機酸エステル、多塩基性有機酸エステルなどの有機酸エステル系可塑剤;有機リン酸エステル系、有機亜リン酸エステル系などのリン酸エステル系可塑剤などが好適に用いられる。これらの可塑剤は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0059】
オリゴマーは、ブロック共重合体水素化物に均一に溶解ないし分散できるものが好ましく、炭化水素重合体(特に、好ましくは数平均分子量200〜5,000、より好ましくは特に、数平均分子量300〜3,000の炭化水素重合体)が、耐熱性を大きく損なうことがないため、好ましい。炭化水素重合体の具体例としては、ポリイソブチレン、ポリブテン、ポリ−4−メチルペンテン、ポリ−1−オクテン、エチレン・α−オレフィン共重合体、ポリイソプレン、脂環族炭化水素樹脂、及びその他の脂肪族系炭化水素樹脂、前記の化合物の水素化物、インデン・スチレン共重合体水素化物などが挙げられる。これらの中でも、ポリイソブチレン、ポリブテン、水素化ポリイソブチレン、水素化ポリブテンが好ましい。
【0060】
有機酸エステル系可塑剤としては、例えば、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール又はトリプロピレングリコールなどのグリコールと、酪酸、イソ酪酸、カプロン酸、2−エチル酪酸、ヘプタン酸、ヘプチル酸、n−オクチル酸、2−エチルヘキシル酸、ペラルゴン酸(n−ノニル酸)又はデシル酸などの一塩基機酸との反応によって得られるグリコール系エステル;アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、フタル酸などの多塩基酸と、一分子当りの炭素数4〜8の直鎖状又は分枝状アルコールとの反応によって得られる多塩基酸エステル;などが挙げられる。これらの中でも、ブチルベンジルフタレート、ジベンジルフタレートなどが好ましい。
【0061】
リン酸エステル系可塑剤としては、例えば、トリブトキシエチルホスフェート、トリ(2−エチルヘキシル)ホスフェート、トリクレジルホスフェート、イソデシルジフェニルホスフェートなどが挙げられる。これらの中でも、接着性樹脂組成物層の屈折率をフロートガラスの屈折率に近づけ、優れた透光性の合わせガラス板が得られる点で、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェートなどが好ましい。
【0062】
可塑剤の配合量は特に限定されないが、ブロック共重合体水素化物100重量部に対して、好ましくは1〜50重量部、より好ましくは5〜40重量部である。1重量部未満の場合は、可塑化効果が小さく、ブロック共重合体水素化物を含有する封止用樹脂組成物層を介在させて貼り合せたガラス板に気泡が残り易く、より高温で貼り合せるなどの条件を要する場合がある。また、50重量部を超える場合は、可塑剤のブリードアウトにより、ガラスとの接着性が低下し易い。
【0063】
光安定剤としては、ヒンダードアミン系光安定剤が好ましく、構造中に例えば3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル基、2,2,6,6−テトラメチルピペリジル基、又は、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル基などを有している化合物が特に好ましい。
【0064】
光安定剤の具体例としては、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸と1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジノールと3,9−ビス(2−ヒドロキシ−1,1−ジメチルエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカンとの混合エステル化物、1,6−ヘキサンジアミン−N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)とモルフォリン−2,4,6−トリクロロ−1,3,5−トリアジンとの重縮合物、1−[2−〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ〕エチル]−4−〔3−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ〕−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチルマロン酸−ビス−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)、2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチルマロン酸−ビス−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)、4−(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ)−1−(2−(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ)エチル)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(N−(1−ベンジル−2−フェニルエチル)−N−ホルミルアミノ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(N−(2−(1−ピロリジル)エチル)−N−ホルミルアミノ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(N−(2−(4−モルホリニル)エチル)−N−ホルミルアミノ)−2,2,6,6−テトラメチル−N−メチルピペリジン、4−(N−(2−(4−モルホリニル)エチル)−N−ホルミルアミノ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(N−(2−(ジイソプロピルアミノ)エチル)−N−ホルミルアミノ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(N−(2,4,6−トリメチルベンジル)−N−ホルミルアミノ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(N−(3−(2−エチルヘキソキシ)プロピル)−N−ホルミルアミノ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(N−(3,4−(メチレンジオキシ)ベンジル)−N−ホルミルアミノ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(N−(ビシクロ〔2.2.1〕ヘプチル)−N−ホルミルアミノ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(N−1,2,2−トリメチルプロピル−N−ホルミルアミノ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(N−1、3−ジメチルブチル−N−ホルミルアミノ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(N−1−ベンジルエチル−N−ホルミルアミノ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(N−2,2−ジメチルプロピル−N−ホルミルアミノ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(N−2−エチルヘキシル−N−ホルミルアミノ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(N−3−メチルブチル−N−ホルミルアミノ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(N−4−ヒドロキシブチル−N−ホルミルアミノ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、
【0065】
4−(N−4−ヒドロキシブチル−N−ホルミルアミノ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(N−i−プロピル−N−ホルミルアミノ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(N−i−プロピル−N−ホルミルアミノ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(N−t−ブチル−N−ホルミルアミノ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(N−イソプロピルベンジル−N−ホルミルアミノ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(N−エトキシエチル−N−ホルミルアミノ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(N−エトキシプロピル−N−ホルミルアミノ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(N−オクタデシル−N−ホルミルアミノ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(N−オクチル−N−ホルミルアミノ)−2,2,6,6−テトラメチル−N−メチルピペリジン、4−(N−オクチル−N−ホルミルアミノ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(N−クロロベンジル−N−ホルミルアミノ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(N−ジエチルアミノエチル−N−ホルミルアミノ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(N−シクロドデシル−N−ホルミルアミノ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(N−シクロヘキシル−N−ホルミルアミノ)−2,2,6,6−テトラメチル−N−メチルカルボニルピペリジン、4−(N−シクロヘキシル−N−ホルミルアミノ)−2,2,6,6−テトラメチル−N−メチルピリジン、4−(N−シクロヘキシル−N−ホルミルアミノ)−2,2,6,6−テトラメチルピリジン、4−(N−シクロペンチル−N−ホルミルアミノ)−2,2,6,6−テトラメチル−N−メチルピペリジン、4−(N−シクロペンチル−N−ホルミルアミノ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(N−ジメチルアミノプロピル−N−ホルミルアミノ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(N−デシル−N−ホルミルアミノ)−2,2,6,6−テトラメチル−N−メチルピペリジン、4−(N−デシル−N−ホルミルアミノ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(N−ドデシル−N−ホルミルアミノ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(N−ピリジニルメチル−N−ホルミルアミノ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(N−フェニルエチル−N−ホルミルアミノ)−2,2,6,6−テトラメチル−N−メチルピリジン、4−(N−フェニルエチル−N−ホルミルアミノ)−2,2,6,6−テトラメチルピリジン、4−(N−ブチル−N−ホルミルアミノ)−2,2,6,6−テトラメチル−N−メチルピペリジン、4−(N−ブチル−N−ホルミルアミノ)−2,2,6,6−テトラメチル−N−メチルピペリジン、4−(N−フルオロベンジル−N−ホルミルアミノ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(N−ヘキシル−N−ホルミルアミノ)−2,2,6,6−テトラメチル−N−メチルピペリジン、4−(N−ヘキシル−N−ホルミルアミノ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(N−ペンチル−N−ホルミルアミノ)−2,2,6,6−テトラメチル−N−メチルピペリジン、4−(N−ペンチル−N−ホルミルアミノ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(N−メチルシクロヘキシル−N−ホルミルアミノ)−2,2,6,6−テトラメチルピリジン、4−(N−メチルベンジル−N−ホルミルアミノ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(N−メトキシベンジル−N−ホルミルアミノ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(ホルミルアミノ)−2,2,6,6−テトラメチル−N−メチルピペリジン、4−(ホルミルアミノ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−〔N−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−N−ホルミルアミノ〕−2,2,6,6−テトラメチル−N−メチルピリジン、4−〔N−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−N−ホルミルアミノ〕−2,2,6,6−テトラメチルピリジン、N,N’,N’’,N’’’−テトラキス−(4,6−ビス(ブチル−(N−メチル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)アミノ)−トリアジン−2−イル)−4,7−ジアザデカン−1,10−アミン、N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4ーN−メチルピペリジル)−N,N’−ジホルミル−1,4−キシリレンジアミン、N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−N−メチルピペリジル)−N,N’−ジホルミル−トリメチレンジアミン、
【0066】
N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4ーN−メチルピペリジル)−N,N’−ジホルミル−ヘキサメチレンジアミン、N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−N−メチルピペリジル)−N,N’−ジホルミル−エチレンジアミン、N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−N,N’−ジホルミル−1,4−キシリレンジアミン、N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−N,N’−ジホルミルエチレンジアミン、N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−N,N’−ジホルミル−トリメチレンジアミン、N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−N,N’−ジホルミルヘキサメチレンジアミン、N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−N,N’−ビスヘキサメチレンアクリル酸アミド、N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−N,N’−ビスヘキサメチレンアラキン酸アミド、N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−N,N’−ビスヘキサメチレンアンゲリカ酸アミド、N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−N,N’−ビスヘキサメチレンウンデシル酸アミド、N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−N,N’−ビスヘキサメチレンウンデシレン酸アミド、N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−N,N’−ビスヘキサメチレンオレイン酸アミド、N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−N,N’−ビスヘキサメチレンガドレイン酸アミド、N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−N,N’−ビスヘキサメチレンカプリル酸アミド、N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−N,N’−ビスヘキサメチレンカプリン酸アミド、N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−N,N’−ビスヘキサメチレンカプロン酸アミド、N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−N,N’−ビスヘキサメチレンクロトン酸アミド、N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−N,N’−ビスヘキサメチレンシトロネル酸アミド、N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−N,N’−ビスヘキサメチレンステアリン酸アミド、N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−N,N’−ビスヘキサメチレンゾマーリン酸アミド、N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−N,N’−ビスヘキサメチレントリデシル酸アミド、N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−N,N’−ビスヘキサメチレンノナデシル酸アミド、N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−N,N’−ビスヘキサメチレンパルチミン酸アミド、N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−N,N’−ビスヘキサメチレンブレンツテレビン酸アミド、N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−N,N’−ビスヘキサメチレンプロピオン酸アミド、N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−N,N’−ビスヘキサメチレンヘプタン酸アミド、N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−N,N’−ビスヘキサメチレンベヘン酸アミド、N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−N,N’−ビスヘキサメチレンペラルゴン酸アミド、N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−N,N’−ビスヘキサメチレンペンタデシル酸アミド、N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−N,N’−ビスヘキサメチレンマルガリン酸アミド、N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−N,N’−ビスヘキサメチレンミリスチン酸アミド、N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−N,N’−ビスヘキサメチレンラウリン酸アミド、N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−N,N’−ビスヘキサメチレンリンデル酸アミド、N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−N,N’−ビスヘキサメチレン吉草酸アミド、N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−N,N’−ビスヘキサメチレン酢酸アミド、N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−N,N’−ビスヘキサメチレン抹香酸アミド、N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−N,N’−ビスヘキサメチレン酪酸アミド、
【0067】
コハク酸ジメチルと4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジンエタノールとの重合物、ジブチルアミンと1,3,5−トリアジンとN,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ブチルアミンとの重縮合物、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチルマロネート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ポリ〔(6−モルフォリノ−s−トリアジン−2,4−ジイル)〔(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ〕−ヘキサメチレン〔(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ〕、ポリ〔{(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}〕、ポリ〔{6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}〕、N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)−1,6−ヘキサンジアミンと2,4,6−トリクロロ−1,3,5−トリアジンとの重合体とN−ブチル−1−ブタンアミンとN−ブチル−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジンアミンとの反応生成物などが挙げられる。
【0068】
これらの中でも、耐候性に優れる点で、N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−N−メチルピペリジル)−N,N’−ジホルミル−アルキレンジアミン類、N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−N,N’−ジホルミルアルキレンジアミン類、N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−N,N’−ビスアルキレン脂肪酸アミド類、ポリ〔{6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}〕が好ましく、N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−N,N’−ジホルミルアルキレンジアミン類、N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)−1,6−ヘキサンジアミンと2,4,6−トリクロロ−1,3,5−トリアジンとの重合体とN−ブチル−1−ブタンアミンとN−ブチル−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジンアミンとの反応生成物が特に好ましい。
【0069】
光安定剤の量は、ブロック共重合体水素化物100重量部に対して、通常0.01重量部以上、好ましくは0.02重量部以上、より好ましくは0.03重量部以上であり、通常5重量部以下、好ましくは2重量部以下、より好ましくは1重量部以下である。光安定剤の量を前記範囲の下限値以上とすることにより耐候性を高くできる。また、上限値以下とすることにより、封止用樹脂組成物をフィルム状に成形する溶融成形加工時に、押出し機のTダイや冷却ロールの汚れを防止でき、加工性を高めることができる。
【0070】
紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、サリチル酸系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤などが挙げられる。
ベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては、例えば、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−5−スルホン酸3水和物、2−ヒドロキシ−4−オクチロキシベンゾフェノン、4−ドデカロキシ−2−ヒドロキシベンゾフェノン、4−ベンジルオキシ−2−ヒドロキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノンなどが挙げられる。
【0071】
また、サリチル酸系紫外線吸収剤としては、例えば、フェニルサルチレート、4−t−ブチルフェニル−2−ヒドロキシベンゾエート、フェニル−2−ヒドロキシベンゾエート、2,4−ジ−t−ブチルフェニル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、ヘキサデシル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエートなどが挙げられる。
【0072】
また、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、例えば、2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)2H−ベンゾトリアゾール、2−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、5−クロロ−2−(3,5−ジ−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−アミル−2−ヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−t−オクチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−4−オクチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−メチル−6−(3,4,5,6−テトラヒドロフタリミジルメチル)フェノール、2,2’−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−[(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]]などが挙げられる。
【0073】
紫外線吸収剤の量は、ブロック共重合体水素化物100重量部に対して、通常0.01重量部以上、好ましくは0.02重量部以上、より好ましくは0.04重量部以上であり、通常1重量部以下、好ましくは0.5重量部以下、より好ましくは0.3重量部以下である。紫外線吸収剤を前記範囲の下限値以上用いることにより耐光性を改善することができるが、上限を超えて過剰に用いても、更なる改善は得られ難い。
【0074】
酸化防止剤としては、例えば、リン系酸化防止剤、フェノ−ル系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤などが挙げられ、着色がより少ないリン系酸化防止剤が好ましい。
リン系酸化防止剤としては、例えば、トリフェニルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(ジノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、10−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイドなどのモノホスファイト系化合物;4,4’−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニル−ジ−トリデシルホスファイト)、4,4’−イソプロピリデン−ビス(フェニル−ジ−アルキル(C12〜C15)ホスファイト)などのジホスファイト系化合物;6−〔3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロポキシ〕−2,4,8,10−テトラキス−t−ブチルジベンゾ〔d,f〕〔1.3.2〕ジオキサフォスフェピン、6−〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロポキシ〕−2,4,8,10−テトラキス−t−ブチルジベンゾ〔d,f〕〔1.3.2〕ジオキサフォスフェピンなどの化合物を挙げることができる。
【0075】
フェノ−ル系酸化防止剤としては、例えば、ペンタエリスリチル・テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,2−チオ−ジエチレンビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、3,9−ビス{2−[3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロオニルオキシ]−1,1−ジメチルエチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼンなどの化合物を挙げることができる。
【0076】
硫黄系酸化防止剤としては、例えば、ジラウリル−3,3’−チオジプロピオネート、ジミリスチル3,3’−チオジプロピピオネート、ジステアリル−3,3’−チオジプロピオネート、ラウリルステアリル−3,3’−チオジプロピオネート、ペンタエリスリトール−テトラキス−(β−ラウリル−チオ−プロピオネート)、3,9−ビス(2−ドデシルチオエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカンなどの化合物を挙げることができる。
【0077】
酸化防止剤の量は、ブロック共重合体水素化物100重量部に対して、通常0.01重量部以上、好ましくは0.05重量部以上、より好ましくは0.1重量部以上であり、通常1重量部以下、好ましくは0.5重量部以下、より好ましくは0.3重量部以下である。酸化防止剤を前記範囲の下限値以上用いることにより熱安定性を改善することができるが、上限を超えて過剰に用いても、更なる改善は得られ難い。
【0078】
ブロック共重合体水素化物と前記任意の成分とを混合する方法は、例えば、任意の成分を適切な溶媒に溶解してブロック共重合体水素化物の溶液と混合した後、溶媒を除去して任意の成分を含む封止用樹脂組成物を回収する方法;例えば二軸混錬機、ロール、ブラベンダー、押出機などでブロック共重合体水素化物を溶融状態にして任意の成分を混練する方法;などが挙げられる。
【0079】
封止用樹脂組成物は、高い透明性を有するものに必ずしも限られない。ただし、封止用樹脂組成物を光学的な部材の材料として用いる場合は、封止用樹脂組成物は、高い透明性を有するものが好ましい。例えば、封止用樹脂組成物を厚み1mmの試験片として測定した全光線透過率が、通常70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上であるものが好ましい。全光線透過率の上限は、100%以下としうる。
【0080】
[4.封止用樹脂組成物のフィルム]
本発明の封止用樹脂組成物は、使用に先立ち、フィルムの形状に成形することができる。かかるフィルムの厚みは、好ましくは10μm以上、より好ましくは20μm以上、特に好ましくは40μm以上であり、好ましくは500μm以下、より好ましくは200μm以下、特に好ましくは100μm以下である。フィルムの厚みを前記範囲の下限値以上とするとことにより、押出成形法によるフィルムの製造が可能となる。また、この程度の厚みがあれば、十分な封止機能を持ち、さらに仮にフィルムに小さい異物が混入しても、その異物によりフィルムの厚みが不均一となることを防止できる。また、上限値以下とすることにより、貼り合せ後の撓みが抑えられて均一なフィルムが形成でき、また、得られるデバイスの厚みを薄くできる。
【0081】
封止用樹脂組成物のフィルムは、通常は長尺のフィルムとして用意され、このフィルムを用いて、有機エレクトロニクスデバイスの製造が行われる。フィルムの製造方法に特に制限は無く、例えば、溶融成形法、溶液流延法のいずれを用いてもよい。溶融成形法は、さらに詳細に、押出成形法、例えばプレス成形法、インフレーション成形法、射出成形法、ブロー成形法、延伸成形法などに分類できる。これらの方法の中でも、機械強度、表面精度等に優れたフィルムを得るために、押出成形法、インフレーション成形法又はプレス成形法が好ましく、中でも効率よく簡単にフィルムを製造できる観点から、押出成形法が特に好ましい。
【0082】
[5.有機エレクトロニクスデバイス]
本発明の有機エレクトロニクスデバイスは、前記本発明の有機エレクトロニクスデバイス封止用樹脂組成物の層を有する。
本発明の有機エレクトロニクスデバイスは、デバイスの機能を発現する素子として、有機EL素子、有機半導体素子等の素子を有しうる。本発明の有機エレクトロニクスデバイスはまた、封止能を有する基板を有し、かかる基板と、封止用樹脂組成物の層とで、素子を封止した形態を有するものとしうる。
【0083】
素子として有機EL素子を有する有機エレクトロニクスデバイスの具体的な例を、図面を参照して説明する。
図1は、有機EL素子等の構成要素を含む、有機エレクトロニクスデバイスを構成する組立体を概略的に示す斜視図であり、図2は、当該組立体及び封止用樹脂組成物の層からなる有機エレクトロニクスデバイスの例を概略的に示す縦断面図である。
【0084】
図1において、組立体100は、基板101、基板101の上面101Uに細長い帯状に多数形成された第1の電極層102、第1の電極層102の周辺に形成されたエッジカバー層103、第1の電極層102上に設けられた発光層104、及び発光層104上に設けられた第2の電極層105を有する。
第1の電極層102、発光層104、及び第2の電極層105は、発光素子を構成し、第1及び第2の電極層に通電することにより発光層を発光させることができる。
組立体100を構成する要素の材料、厚み、及び製造方法については、特に限定されず既知のものを採用することができる。例えば、基板の材料の例としては、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、脂環式オレフィンポリマーなどの柔軟性のある透明プラスチックからなるフレキシブル基板、並びに、石英、ソーダガラス、無機アルカリガラスなどのガラス基板を挙げることができる。
【0085】
例えば、発光層としては、特に限定されず既知のものを適宜選択することができるが、光源としての用途に適合すべく、一種の層単独又は複数種類の層の組み合わせにより、所望のピーク波長を含む光を発光するものとすることができる。
第1及び第2の電極層を構成する材料は、特に限定されず有機EL素子の電極として用いられる既知の材料を適宜選択することができ、どちらか一方を陽極とし、他方を陰極とすることができる。第1の電極層及び第2の電極層の一方を透明電極、他方を反射電極とすることにより、透明電極側からの出光を達成することができる。または、第1の電極層及び第2の電極層の両方を透明電極とすることもできる。透明電極の材料の例としては、金属薄膜、ITO、IZO、及びSnOを挙げることができる。反射電極層の材料の例としては、アルミニウム及びMgAgを挙げることができる。
第1の電極層及び第2の電極層の間には、発光層に加えてホール注入層、ホール輸送層、電子輸送層、電子注入層及びガスバリア層等の任意の層をさらに有することもでき、これらも発光素子の構成要素となりうる。
【0086】
発光素子の具体的な層構成の例としては、陽極/正孔輸送層/発光層/陰極の構成、陽極/正孔輸送層/発光層/電子注入層/陰極の構成、陽極/正孔注入層/発光層/陰極の構成、陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極の構成、陽極/正孔輸送層/発光層/電子注入層/等電位面形成層/正孔輸送層/発光層/電子注入層/陰極の構成、及び陽極/正孔輸送層/発光層/電子注入層/電荷発生層/正孔輸送層/発光層/電子注入層/陰極の構成が挙げられる。本発明のデバイスにおける発光素子は、一層以上の発光層を陽極と陰極との間に有するものとすることができるが、発光層として、複数の発光色が異なる層の積層体、あるいはある色素の層に異なる色素がドーピングされた混合層を有していてもよい。発光層を構成する材料の例としては、ポリパラフェニレンビニレン系、ポリフルオレン系、およびポリビニルカルバゾール系の材料を挙げることができる。また正孔注入層及び正孔輸送層の材料の例としては、フタロシアニン系、アリールアミン系、およびポリチオフェン系の材料を挙げることができる。電子注入層及び電子輸送層の材料の例としては、アルミ錯体およびフッ化リチウムを挙げることができる。等電位面形成層及び電荷発生層の材料の例としては、ITO、IZO、及びSnOなどの透明電極、並びにAg及びAlなどの金属薄膜を挙げることができる。
【0087】
第1の電極層、発光層、第2の電極層及びそれ以外の発光素子を構成する任意の層は、基板上にこれらを順次積層することにより設けることができる。これら各層の厚さは、10〜1000nmとすることができる。
【0088】
組立体100はさらに、電極層へ通電するための配線等の任意の構成要素を有しうる。
【0089】
図2において、有機エレクトロニクスデバイス10は、組立体100の上面101U側に設けられた封止用樹脂組成物の層151とを含む。かかる構造を有することにより、発光層103が、基板101及び封止用樹脂組成物の層151により封止される。さらに、封止用樹脂組成物の層151が前記本発明の封止用樹脂組成物からなるものであるため、脱ガスが少ない。その結果、良好な封止が達成され、デバイスの寿命などの性能が高まる。さらに、封止用樹脂組成物の変形能により、組立体100の凹凸がカバーされ、その結果デバイスの強度を高めることができる。
【0090】
組立体100上に封止用樹脂組成物の層151を設ける方法の例としては、上に述べた封止用樹脂組成物のフィルムを圧着する方法を挙げることができる。圧着の方法は、例えば、フィルムを100〜150℃程度に温度を上げ、真空ラミネート装置で貼り付ける方法が挙げられる。
【0091】
図3は、本発明の有機エレクトロニクスデバイスの別の例を概略的に示す縦断面図である。
図3において、有機エレクトロニクスデバイス20は、組立体100と、組立体100の上面101U側に設けられた仮封止層152と、仮封止層152上に設けられた封止用樹脂組成物の層151とを含む。
【0092】
仮封止層152の材料の例としては、SiN、SiOなどの珪素を含む材料を挙げることができる。仮封止層152の厚みは、0.2〜1μm程度としうる。
仮封止層152は、発光層104及び第2の電極層105と同様の減圧環境下の条件において、蒸着などの成膜方法により形成することができる。従って、発光層104、第2の電極層105、及び仮封止層152を減圧環境下において連続的に設けることにより、発光層の劣化を効果的に抑制することができる。さらに、これらを減圧環境下から取り出した後に封止用樹脂組成物の層151で封止することにより、デバイスの使用環境下に耐えうる強固な封止を形成することができる。これにより、製造時における素子の劣化が少なく、且つその状態が使用環境下においても長期間維持されるデバイスを得ることができる。
【0093】
図4は、本発明の有機エレクトロニクスデバイスのさらに別の例を概略的に示す縦断面図である。
図4において、有機エレクトロニクスデバイス30は、組立体100と、組立体100の上面101U側に設けられた仮封止層152と、仮封止層152上に設けられた吸着剤層153と、吸着剤層153上に設けられた封止用樹脂組成物の層151とを含む。
【0094】
吸着剤層153の材料の例としては、有機アルミニウム錯体を挙げることができる。吸着剤層153の厚みは、0.1〜1μm程度としうる。吸着剤層153を設けることにより、封止をさらに強固なものとすることができる。例えば、封止用樹脂組成物の層151から僅かに放出されうるガス成分を吸着し、発光層104等の層の劣化をさらに防止することができる。
【0095】
素子として有機半導体を有する有機エレクトロニクスデバイスの具体的な例を、図面を参照して説明する。図5は、有機半導体等の構成要素を含む、本発明の有機エレクトロニクスデバイスのさらに別の例を概略的に示す縦断面図である。
【0096】
図5において、有機エレクトロニクスデバイス50は、組立体500、及び当該組立体500の上面に設けられた封止用樹脂組成物の層507を有する。組立体500は、基板501、基板501の上面に設けられたゲート電極502、基板501及びゲート電極502の上面に設けられたゲート電極絶縁層503、並びにゲート電極絶縁層503の上面に設けられた半導体層506、ソース電極504、およびドレイン電極505を有する。
有機エレクトロニクスデバイス50を構成する要素の材料、厚み、及び製造方法については、特に限定されず既知のものを採用することができる。
【0097】
例えば、基板501の材料としては、特に限定されず、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、脂環式オレフィンポリマーなどの柔軟性のあるプラスチックからなるフレキシブル基板、石英、ソーダガラス、無機アルカリガラスなどのガラス基板、シリコンウェハなどのシリコン基板などを挙げることができる。
【0098】
ゲート電極502は、導電性材料で形成しうる。導電性材料としては、例えば、白金、金、銀、ニッケル、クロム、銅、鉄、錫、アンチモン鉛、タンタル、インジウム、パラジウム、テルル、レニウム、イリジウム、アルミニウム、ルテニウム、ゲルマニウム、モリブデン、タングステン、酸化スズ・アンチモン、酸化インジウム・スズ(ITO)、フッ素ドープ酸化亜鉛、亜鉛、炭素、グラファイト、グラッシーカーボン、銀ペーストおよびカーボンペースト、リチウム、ベリリウム、マグネシウム、カリウム、カルシウム、スカンジウム、チタン、マンガン、ジルコニウム、ガリウム、ニオブ、ナトリウム、ナトリウム−カリウム合金、マグネシウム/銅混合物、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム混合物、リチウム/アルミニウム混合物等が挙げられる。またドーピング等で導電率を向上させた公知の導電性ポリマー、例えば導電性ポリアニリン、導電性ポリピロール、導電性ポリチオフェン(ポリエチレンジオキシチオフェンとポリスチレンスルホン酸の錯体など)が挙げられる。これらのなかでも、クロムおよびモリブデンが好ましく、クロムがより好ましい。ゲート電極502は、たとえば、上述した導電性材料を、スパッタリング法などにより基板501上に形成し、次いで、エッチング処理を行なうことにより、基板501上に所定パターンで形成される。
【0099】
ゲート絶縁膜503の材料は、密封性、耐湿性、絶縁性、及び耐薬品性を持ったものが好ましい。具体的にはポリイミド、ポリエステル、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルスルフォンなどの熱可塑性樹脂が例示できるが、封止用樹脂組成物の層507と同じ樹脂を使用することもできる。
【0100】
半導体層506は、有機半導体で形成しうる。有機半導体としては、pチャネル型として、ペンタセン、ナフタセン、チフェンオリゴマー、ペリレン、α−セキシフェニル及びその誘導体、ナフタレン、アントラセン、ルブレン及びその誘導体、コロネン及びその誘導体、金属含有/非含有フタロシアニン及びその誘導体などの低分子半導体、あるいはチオフェンやフルオレンをベースとしたポリアルキルチオフェン、ポリアルキルフルオレンやその誘導体などの高分子半導体などが挙げられる。半導体層506は、たとえば、上述した有機半導体を、塗布法やCVD法などにより、ゲート絶縁膜503上に形成し、次いで、所定のパターン形状となるようにパターンニングすることにより、形成される。
【0101】
ソース電極504およびドレイン電極505は、導電性材料で形成しうる。導電性材料としては、上述のゲート電極502と同様のものを用いることができる。ソース電極504およびドレイン電極505は、たとえば、上述した導電性材料を、スパッタリング法などにより半導体層506上に形成し、次いで、エッチング処理を行なうことにより、半導体層506上に所定パターンで形成される。
【0102】
図5において、有機半導体としての有機エレクトロニクスデバイスは、組立体500の上面501U側に設けられた封止用樹脂組成物の層507を含む。かかる構造を有することにより、半導体層506、ソース電極504、およびドレイン電極505が、ゲート電極絶縁層503及び封止用樹脂組成物の層507により封止される。さらに、封止用樹脂組成物の層507が前記本発明の封止用樹脂組成物からなるものであるため、脱ガスが少ない。その結果、良好な封止が達成され、デバイスの寿命などの性能が高まる。さらに、封止用樹脂組成物の変形能により、組立体500の凹凸がカバーされ、その結果デバイスの強度を高めることができる。
【実施例】
【0103】
以下、実施例を示して本発明について具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではなく、本発明の特許請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施しうる。
以下の説明において、量を表す「%」及び「部」は、別に断らない限り重量基準である。
【0104】
〔製造例1:白色有機EL素子を備える組立体〕
白色有機EL素子を備える、仮封止層付き組立体を作製した。仮封止層付き組立体の構造は、概略的には、図3に示す、組立体100と仮封止層152の通りとした。但し、第1の電極及び第2の電極の間に、発光層1層のみではなく、正孔輸送層と、複数の発光層と、電子輸送層と、バッファー層とを設けた。
【0105】
光透過性を有するガラス製の基板101の上に、蒸着(10−4Pa減圧下)により、ITOの層を形成した。このITOの層を、フォトリソグラフィーにより成形し、厚さ0.25μm、幅500μm、長さ10mmの短冊状の形状とし、第1の電極層102としての透明の陽極を形成した。
【0106】
次に、フォトレジスト(日本ゼオン製ZWD6216)の塗布及びフォトリソグラフィーを行い、陽極の周囲に、厚み1.0μmのエッジカバー層103を形成した。
次に、陽極の上にNPB(4,4'−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル)を蒸着して、厚さ40nmの正孔輸送層を形成した。
次に、正孔輸送層の上に青色発光材料であるADS082(4,4−ビス(ジフェニルビニレン)−ビフェニル)を蒸着して、厚さ0.05μmの青色発光層を形成した。
次に、青色発光層の上に赤色発光材料であるDCJTB(4−(ジシアノメチレン)−2−t−ブチル−6−(1,1,7,7−テトラメチルジュロリジル−9−エニル)−4H−ピラン)を蒸着して、厚さ0.05μmの赤色発光層を形成した。
次に、赤色発光層の上にAlq(トリス(8−ヒドロキシキノリナト)アルミニウム)を蒸着して、厚さ0.05μmの緑色発光層、および電子輸送層を形成した。
次に、電子輸送層の上にLiFを蒸着して、厚さ0.5nmのバッファー層を形成した。
次に、バッファー層の上にアルミニウムを蒸着して、第2の電極層105としての、厚さ50nmの陰極(反射電極)を形成した。
そして、形成した層及び基板全体を覆うようにSiNを蒸着し、厚さ0.3μmの仮封止層152を形成した。
正孔輸送層から仮封止層までの蒸着は、圧力10−4〜10−6Paの条件を維持したまま続けて行った。
以上の操作により、仮封止層付き組立体を作製した。
【0107】
〔製造例2:封止用樹脂組成物のフィルム1〕
芳香族ビニル化合物としてスチレンを用い、鎖状共役ジエン化合物としてイソプレンを用いて、重合体ブロック[B]の両端に重合体ブロック[A]が結合したトリブロック構造を有するブロック共重合体を、以下の手順により製造した。
【0108】
内部が充分に窒素置換された、攪拌装置を備えた反応器に、脱水シクロヘキサン256部、脱水スチレン25.0部、及びn−ジブチルエーテル0.615部を入れ、60℃で攪拌しながらn−ブチルリチウム(15%シクロヘキサン溶液)1.35部を加えて重合を開始させ、さらに、攪拌しながら60℃で60分反応させた。この時点での重合転化率は99.5%であった(ガスクロマトグラフィーにより測定、以下にて同じ。)。
次に、脱水イソプレン50.0部を加え、同温度で30分攪拌を続けた。この時点での重合転化率は99%であった。
その後、更に、脱水スチレンを25.0部加え、同温度で60分攪拌した。この時点での重合転化率はほぼ100%であった。次いで、反応液にイソプロピルアルコール0.5部を加えて反応を停止させて、ブロック共重合体を含む溶液(i)を得た。
得られた溶液(i)中のブロック共重合体の重量平均分子量(Mw)は44,900、分子量分布(Mw/Mn)は1.03であった。
【0109】
次に、溶液(i)を攪拌装置を備えた耐圧反応器に移送し、水素化触媒としてシリカ−アルミナ担持型ニッケル触媒(E22U、ニッケル担持量60%;日揮化学工業社製)4.0部及び脱水シクロヘキサン350部を添加して混合した。反応器内部を水素ガスで置換し、さらに溶液を攪拌しながら水素を供給し、温度170℃、圧力4.5MPaにて6時間水素化反応を行ない、ブロック共重合体を水素化し、ブロック共重合体水素化物(ii)を含む溶液(ii)とした。溶液(ii)中のブロック共重合体水素化物(iii)の重量平均分子量(Mw)は45,100、分子量分布(Mw/Mn)は1.04であった。
【0110】
水素化反応終了後、溶液(ii)をろ過して水素化触媒を除去した後、リン系酸化防止剤である6−〔3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロポキシ〕−2,4,8,10−テトラキス−t−ブチルジベンゾ〔d,f〕〔1.3.2〕ジオキサフォスフェピン(スミライザー(登録商標)GP、住友化学社製、以下、「酸化防止剤A」という。))0.1部を溶解したキシレン溶液1.0部を添加して溶解させ、溶液(iii)を得た。
【0111】
次いで、溶液(iii)を、ゼータプラス(登録商標)フィルター30H(キュノー社製、孔径0.5〜1μm)にて濾過し、更に別の金属ファイバー製フィルター(孔径0.4μm、ニチダイ社製)にて順次濾過して微小な固形分を除去した後、円筒型濃縮乾燥器(製品名「コントロ」、日立製作所社製)を用いて、温度260℃、圧力0.001MPa以下で、溶液から、溶媒であるシクロヘキサン、キシレン及びその他の揮発成分を除去し、濃縮乾燥器に直結したダイから溶融状態でストランド状に押出し、冷却後、ペレタイザーでカットして、ブロック共重合体水素化物及び酸化防止剤Aを含有する、封止用樹脂組成物のペレット(iv)85部を得た。得られたペレット(iv)中のブロック共重合体水素化物の重量平均分子量(Mw)は45,000分子量分布(Mw/Mn)は1.08であった。水素化率は99.9%であった。
【0112】
このペレット(iv)を、バレル温度200℃で一軸押出し成形することにより、厚み50μmの、封止用樹脂組成物のフィルム1を得た。
【0113】
〔製造例3:封止用樹脂組成物のフィルム2〕
製造例2で得られたペレット(iv)100部に対して、ビニルトリメトキシシラン2.0部及びジ-t−ブチルパーオキサイド0.2部を添加し、混合物を得た。この混合物を、二軸押出し機を用いてバレル温度210℃滞留時間80〜90秒で混練、押し出しした後、ペレタイザーによってペレット(v)を得た。このペレット(v)を、バレル温度200℃で一軸押出し成形することにより、厚み50μmの、封止用樹脂組成物のフィルム2を得た。
【0114】
〔製造例4:封止用樹脂組成物のフィルム3〕
内部が充分に窒素置換された、攪拌装置を備えた反応器に、脱水シクロヘキサン550部、脱水スチレン25.0部、及びn−ジブチルエーテル0.59部を入れ、60℃で攪拌しながらn−ブチルリチウム(15%シクロヘキサン溶液)1.14部を加えて重合を開始した。攪拌しながら60℃で60分反応させた。得られた反応混合物を、ガスクロマトグラフィーにより分析した。この時点で重合転化率は99.5%であった(ガスクロマトグラフィー分析により測定、以下にて同じ。)。
次に、脱水イソプレン50.0部を加えそのまま30分攪拌を続けた。この時点で重合転化率は99.5%であった。
その後、更に、脱水スチレンを25.0部加え、60分攪拌した。この時点での重合転化率はほぼ100%であった。ここでイソプロピルアルコール0.5部を加えて反応を停止させて、ブロック共重合体を含む溶液(vi)を得た。得られたブロック共重合体の重量平均分子量(Mw)は47,000、分子量分布(Mw/Mn)は1.03、wA:wB=50:50であった。
【0115】
次に、溶液(vi)を、攪拌装置を備えた耐圧反応器に移送し、水素化触媒として珪藻土担持型ニッケル触媒(製品名「T−8400RL」、ズードケミー触媒社製)3.0部及び脱水シクロヘキサン100部を添加して混合した。反応器内部を水素ガスで置換し、さらに溶液を攪拌しながら水素を供給し、温度190℃、圧力4.5MPaにて6時間水素化反応を行ない、それによりブロック共重合体を水素化し、ブロック共重合体水素化物(vii)を含む溶液(vii)とした。溶液(vii)中のブロック共重合体水素化物(vii)の重量平均分子量(Mw)は48,000、分子量分布(Mw/Mn)は1.04であった。
【0116】
水素化反応終了後、溶液(vii)をろ過して水素化触媒を除去した後、フェノール系酸化防止剤であるペンタエリスリチル・テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](製品名「Songnox1010」、SONGWON社製)0.1部を溶解したキシレン溶液1.0部を添加して溶解させ、溶液(viii)を得た。
次いで、溶液(viii)を、金属ファイバー製フィルター(孔径0.4μm、ニチダイ社製)にてろ過して微小な固形分を除去した後、円筒型濃縮乾燥器(製品名「コントロ」、日立製作所社製)を用いて、温度260℃、圧力0.001MPa以下で、溶液から、溶媒であるシクロヘキサン、キシレン及びその他の揮発成分を除去し、溶融ポリマーとした。これを、連続して濃縮乾燥器に連結した孔径5μmのステンレス製焼結フィルターを備えたポリマーフィルター(富士フィルター製)により、温度260℃でろ過した後、ダイから溶融ポリマーをストランド状に押出し、冷却後、ペレタイザーによりカットして、ブロック共重合体水素化物(ix)のペレット96部を作成した。得られたブロック共重合体水素化物(ix)の重量平均分子量(Mw)は48,000、分子量分布(Mw/Mn)は1.04であった。水素化率はほぼ100%であった。
【0117】
得られたブロック共重合体水素化物(ix)のペレット100部に対してビニルトリメトキシシラン2.0部及び2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン(製品名「パーヘキサ(登録商標) 25B」、日油社製)0.2部を添加して、混合物とした。この混合物を、二軸押出機(製品名「TEM37B」、東芝機械社製)を用いて、樹脂温度200℃、滞留時間60〜70秒で混練し、ストランド状に押出し、空冷した後、ペレタイザーによりカットし、アルコキシシリル基を有する変性ブロック共重合体水素化物(x)のペレット97部を得た。
【0118】
得られた変性ブロック共重合体水素化物(x)のペレット10部をシクロヘキサン100部に溶解した後、脱水したメタノール400部中に注いで変性ブロック共重合体水素化物(x)を凝固させ、濾別した後、25℃で真空乾燥して変性ブロック共重合体水素化物(x)のクラム9.5部を単離した。これについてFT−IRスペクトル及びH−NMRスペクトルを観察した。FT−IRスペクトルでは、1090cm−1にSi−OCH基に由来する新たな吸収帯が観察され、825cm−1と739cm−1にSi−CH基に由来する新たな吸収帯が観察された。これらの吸収帯の位置は、ビニルトリメトキシシランの吸収帯の位置である1075cm−1、808cm−1、及び766cm−1と異なる位置である。また、H−NMRスペクトル(重クロロホルム中)では3.6ppmにメトキシ基のプロトンに基づく吸収帯が観察された。これらのスペクトルにおけるピーク面積比から、ブロック共重合体水素化物(ix)の100部に対してビニルトリメトキシシラン1.7部が結合したことが確認された。
【0119】
変性ブロック共重合体水素化物(x)のペレット100重量部に、紫外線吸収剤である2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン0.5部を添加し、混合物とした。この混合物を、液状物を添加できるサイドフィーダーを備えた二軸押出機(製品名「TEM37BS」、東芝機械社製)を用いて、樹脂温度190℃で押し出した。
一方、サイドフィーダーから可塑剤としてポリイソブテン(製品名「日石ポリブテンLV−100」、数平均分子量500、JX日鉱日石エネルギー社製)を、変性ブロック共重合体水素化物(x)の100重量部に対して10重量部の割合となるように連続的に添加して、ストランド状に押出し、空冷した後、ペレタイザーによりカットして、変性ブロック共重合体水素化物(x)及びポリイソブテンを含むペレット(xi)102部を得た。
【0120】
このペレット(xi)を、バレル温度200℃で一軸押出し成形することにより、厚み100μmの、封止用樹脂組成物のフィルム3を得た。
【0121】
〔実施例1〕
製造例1で得られた仮封止層付き組立体の仮封止層側の表面に、製造例3で得た厚さ50μmの封止用樹脂組成物のフィルム2を、150℃で圧着することにより、発光素子を熱封止した。これにより、図3に概略的に示す構造を有し、組立体100、仮封止層152及び封止用樹脂組成物の層151を有する有機ELデバイスを得た。
得られた有機ELデバイスに通電し、問題なく点灯することを確認した。その後、有機ELデバイスを非点灯状態で85℃で所定時間(300時間又は1000時間)熱処理し、その後室温に戻し、再び通電して点灯させ、出光面のダークスポットを観察し、下記の評価基準に従って評価した。結果を表1に示す。
【0122】
A:ダークスポットが無いか、あっても径が50μm未満のものしかない。
B:径50μm以上200μm未満のダークスポットが少数(10個/cm未満)ある。
C:径50μm以上200μm未満のダークスポットが多数(10個/cm以上)ある。
D:径200μm以上のダークスポットがある。
【0123】
〔実施例2〕
製造例1で得られた仮封止層付き組立体の仮封止層側の表面に、吸着剤化合物(双葉電子工業製OleDry−F)を塗布し、100℃でベークして、厚さ0.5μmの吸着剤層を形成した。その上に、製造例3で得た厚さ50μmの封止用樹脂組成物フィルム2を、150℃で圧着することにより、発光素子を熱封止し、図4に示す構造を有する有機ELデバイスを得た。
【0124】
得られた有機ELデバイスに通電し、問題なく点灯することを確認した。その後、有機ELデバイスを非点灯状態で85℃で所定時間(300時間又は1000時間)熱処理し、その後室温に戻し、再び通電して点灯させ、実施例1と同様に評価した。結果を表1に示す。
【0125】
〔実施例3〕
実施例2の、製造例3で得た厚さ50μmの封止用樹脂組成物フィルム2の代わりに、製造例2で得た厚さ50μmの封止用樹脂組成物フィルム1を使用すること以外は、実施例2と同様に有機ELデバイスを得て、評価した。結果を表1に示す。
【0126】
〔実施例4〕
実施例2の、製造例3で得た厚さ50μmの封止用樹脂組成物フィルム2の代わりに、製造例4で得た厚さ100μmの封止用樹脂組成物フィルム3を使用し、圧着温度を100℃に変更した以外は、実施2と同様に有機ELデバイスを得て、評価した。結果を表1に示す。得られた有機ELデバイスは、ホットメルト方式の封止用樹脂組成物フィルムの使用に起因する大きなダークスポットを有さず、したがって高品質なデバイスであった。
【0127】
〔比較例1〕
製造例1で得られた仮封止層付き組立体の仮封止層側の表面に、SEBS(旭化成ケミカルズ社製タフテックH1051、水素化率60.5%)を、バレル温度210℃で一軸押出しして得た厚さ50μmのフィルムを、150℃で圧着することにより、発光素子を熱封止した。これにより、図3に示す構造を有し、組立体100、仮封止層152及び封止用樹脂組成物の層151を有する有機ELデバイスを得た。
得られた有機ELデバイスに通電し、問題なく点灯することを確認した。その後、有機ELデバイスを非点灯状態で85℃で所定時間(300時間又は1000時間)熱処理し、その後室温に戻し、再び通電して点灯させ、実施例1と同様に評価した。結果を表1に示す。
【0128】
〔比較例2〕
製造例1で得られた仮封止層付き組立体の仮封止層側の表面に、実施例2で用いたものと同一の吸着剤化合物の溶液を塗布し、ベークして、その後溶媒を揮発させ、厚さ0.5μmの吸着剤層を形成した。その上に、比較例1で用いたものと同一のSEBSフィルムを、150℃で圧着することにより、発光素子を熱封止し、図4に示す層構成を有する有機ELデバイスを得た。
得られた有機ELデバイスに通電し、問題なく点灯することを確認した。その後、有機ELデバイスを非点灯状態で85℃で所定時間(300時間又は1000時間)熱処理し、その後室温に戻し、再び通電して点灯させ、実施例1と同様に評価した。結果を表1に示す。
【0129】
【表1】
【0130】
表1の結果から明らかな通り、本願に規定する要件を満たす封止用樹脂組成物のフィルムを用いた実施例では、比較例よりも良好な封止性能を得ることができた。
また、実施例4においては、可塑剤を多く含み、ホットメルト方式で用いうる封止用樹脂組成物フィルム(製造例4で製造したもの)を用いた。通常、このようなホットメルト方式の封止用樹脂組成物フィルムを、有機ELデバイスの構成要素として用いた場合、有機ELデバイスにおいて、有機発光層材料と電極材料層との界面、及び電極材料層と基板層との界面において剥離を起こしうる。このような剥離は、大きなダークスポットの発生原因となる。しかしながら、実施例4においては、そのようなダークスポットを有しない有機ELデバイスを作成することができた。
【符号の説明】
【0131】
10:有機エレクトロニクスデバイス
20:有機エレクトロニクスデバイス
30:有機エレクトロニクスデバイス
50:有機エレクトロニクスデバイス
100:組立体
101:基板
101U:基板の上面
102:第1の電極層
103:エッジカバー層
104:発光層
105:第2の電極層
151:封止用樹脂組成物の層
152:仮封止層
153:吸着剤層
500:組立体
501:基板
501U:組立体の上面
502:ゲート電極
503:ゲート電極絶縁層
504:ソース電極
505:ドレイン電極
506:半導体層
507:封止用樹脂組成物の層
図1
図2
図3
図4
図5