特許第6519311号(P6519311)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6519311
(24)【登録日】2019年5月10日
(45)【発行日】2019年5月29日
(54)【発明の名称】発光装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 33/48 20100101AFI20190520BHJP
【FI】
   H01L33/48
【請求項の数】15
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2015-99116(P2015-99116)
(22)【出願日】2015年5月14日
(65)【公開番号】特開2016-27620(P2016-27620A)
(43)【公開日】2016年2月18日
【審査請求日】2017年10月24日
(31)【優先権主張番号】特願2014-133025(P2014-133025)
(32)【優先日】2014年6月27日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000226057
【氏名又は名称】日亜化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】新樹グローバル・アイピー特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】三次 智紀
(72)【発明者】
【氏名】小関 健司
【審査官】 島田 英昭
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−016588(JP,A)
【文献】 特開2010−157638(JP,A)
【文献】 特開2013−074050(JP,A)
【文献】 特開2008−294309(JP,A)
【文献】 特開2004−200253(JP,A)
【文献】 特開2013−140892(JP,A)
【文献】 特開2007−335734(JP,A)
【文献】 特開2010−238941(JP,A)
【文献】 特開2011−009508(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0215360(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L33/00−33/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1主面と該第1主面の反対側の第2主面とに導電パターンを有する基材と、
前記第1主面の前記導電パターン上に搭載された複数の発光素子と、
該複数の発光素子の側面を被覆する光反射性部材とを備え、
前記基材は、前記発光素子間において前記第2主面側に前記基材を分断する溝が設けられており、
前記光反射性部材は、前記発光素子の側面と、前記基材の第1主面の少なくとも一部を一体的に被覆して、前記複数の発光素子及び基材を保持している発光装置。
【請求項2】
前記基材は、前記光反射性部材よりも熱伝導率が高い絶縁材料からなる基体と、該基体の第1主面及び第2主面上に形成された導電パターンとを有し、
前記第1主面及び第2主面上に形成された導電パターンは、前記基体を貫通するビアを通じて電気的に接続されている請求項1に記載の発光装置。
【請求項3】
前記基体は、セラミックスからなる請求項1又は2に記載の発光装置。
【請求項4】
前記発光素子は、前記基材上にマトリクス状に配置されている請求項1〜3のいずれか1つに記載の発光装置。
【請求項5】
前記発光素子の上面を被覆する透光性部材をさらに備え、該透光性部材の側面が前記光反射性部材で被覆されている請求項1〜4のいずれか1つに記載の発光装置。
【請求項6】
前記光反射性部材は、樹脂を含んで形成される請求項1〜5のいずれか1つに記載の発光装置。
【請求項7】
前記上面側における前記透光性部材及び光反射性部材が面一である請求項5又は請求項5を引用する請求項6に記載の発光装置。
【請求項8】
隣接する前記発光素子間の距離が、前記発光素子の最大辺の長さの5〜50%である請求項1〜7のいずれか1つに記載の発光装置。
【請求項9】
前記複数の発光素子が、独立して駆動される請求項1〜8のいずれか1つに記載の発光装置。
【請求項10】
第1主面に導電パターンを有する複数の基材と、
前記複数の基材の前記導電パターン上にそれぞれ搭載された複数の発光素子と、
該複数の発光素子の側面を一体的に被覆する光反射性部材と、
前記複数の基材の前記導電パターン間を電気的に接続する導電部材と、を備え、
前記複数の基材のうち少なくとも1つは、前記第1主面の反対側の第2主面に放熱パターンを有することを特徴とする発光装置。
【請求項11】
前記導電部材は前記光反射性部材に埋設されている請求項10に記載の発光装置。
【請求項12】
前記放熱パターンは、前記導電パターンと電気的に独立している請求項10または11に記載の発光装置。
【請求項13】
前記複数の発光素子が一括して駆動される請求項10〜12のいずれか1つに記載の発光装置。
【請求項14】
第1主面と該第1主面の反対側の第2主面とに導電パターンを有する基材を準備し、
前記第1主面の前記導電パターン上に複数の発光素子を搭載し、
該複数の発光素子の側面を一体的に被覆する光反射性部材を形成し、
前記発光素子間に対応する前記基材の第2主面前記基材を分断する溝を形成し、前記複数の発光素子及び基材を前記光反射性部材によって保持することを含む発光装置の製造方法。
【請求項15】
さらに、発光素子の上面に透光性部材を配置することを含む請求項14に記載の発光装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の発光素子を備えた発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体発光素子は、蛍光灯に代わる照明用の光源のみならず、良好な指向性及び高い輝度を有することから、車両のヘッドライト、屋外に設置される表示装置、交通用表示装置、信号機などの光源として利用されている。
このような半導体発光素子を用いた発光装置として、配線を有する基材に発光素子を実装して用いるものが知られている。例えば、特許文献1に提案されている発光装置では、パッケージの基材において放熱性の良好な窒化アルミニウムを用い、窒化アルミニウム基材の表面側電極と基材を埋め込むビアで電気的に接続された裏面側電極を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−212134号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、高い輝度の発光装置が求められる一方で、用途によっては配光設計の容易さから発光面積を小さくした極小型の発光装置が求められている。そのために、近年、パッケージの平面サイズが発光素子とほぼ同等のチップサイズパッケージ(CSP)の開発が進められている。さらに、配光設計の容易さから、複数のCSPが実装基板上に高密度に実装されることが求められている。
【0005】
上記課題に鑑み、複数のCSPを高密度に実装可能な発光装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、小型かつ薄型で、非常に高い輝度を有する発光装置の開発について鋭意研究を行った。その結果、複数の発光装置を実装基板上に高密度に実装する場合、特に発光装置のサイズが極小型であると、それらを等間隔で隙間なく配列することは非常に高度な精度が要求され、困難であるという事実を突き止めた。その一方、複数の発光素子を同一の基体上に高密度に実装した発光装置を実装基板に実装する場合でも、接合部材を用いた実装基板又は回路基板への実装過程又はその後の熱サイクルの負荷によって、基体と実装基板との線膨張係数の差により接合部材の剥離が生じ、配線不良及び短絡等が発生する事実を突き止めた。特に、この現象は、発光装置の基体が大きくなるほど顕著となる。そこで、高い輝度を有し、かつ、比較的サイズが大きな発光装置であっても、熱サイクルによる発光素子、基体、接合部材、実装基板等の間の熱膨張/収縮を有効に吸収又は逃がすことにより、その信頼性を確保することができることを見出し、本発明の完成に至った。
【0007】
本発明の実施形態は以下の構成を含む。
(1)第1主面と該第1主面の反対側の第2主面とに導電パターンを有する基材と、
前記第1主面の前記導電パターン上に搭載された複数の発光素子と、
該複数の発光素子の側面を一体的に被覆する光反射性部材とを備え、
前記基材は、前記発光素子間において前記第2主面に溝が設けられている発光装置。
(2)第1主面に導電パターンを有する複数の基材と、
前記複数の基材の前記導電パターン上にそれぞれ搭載された複数の発光素子と、
該複数の発光素子の側面を一体的に被覆する光反射性部材と、
前記複数の基材の前記導電パターン間を電気的に接続する導電部材と、を備え、
前記複数の基材のうち少なくとも1つは、前記第1主面の反対側の第2主面に放熱パターンを有する発光装置。
(3)第1主面と該第1主面の反対側の第2主面とに導電パターンを有する基材を準備し、
前記第1主面の前記導電パターン上に複数の発光素子を搭載し、
該複数の発光素子の側面を一体的に被覆する光反射性部材を形成し、
前記発光素子間に対応する前記基材の第2主面に溝を形成することを含む発光装置の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明の実施形態に係る発光装置によれば、複数のCSPを均一かつ最小限の隙間で配列しながら、良好な放熱性を有し、接合不良等のない信頼性の高い発光装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1A】本発明の実施形態1の発光装置を示す概略平面図である。
図1B図1AのA−A’線断面図である。
図1C図1Aの発光装置を実装基板に搭載した形態を示す概略断面図である。
図2】本発明の実施形態2の発光装置を示す概略断面図である。
図3】本発明の実施形態3の発光装置を示す概略平面図である。
図4A】本発明の実施形態4の発光装置を示す概略平面図である。
図4B】本発明の実施形態4の発光装置の内部構造を示す概略平面図である。
図4C図4AのA−A’線断面図である。
図5】本発明の発光装置の変形例を示す概略断面図である。
図6】AからEは、実施形態1の発光装置の製造方法を示す概略断面工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本願においては、各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため誇張していることがある。以下の説明において、同一の名称、符号については同一又は同質の部材を示しており、詳細説明を適宜省略する。一実施例及び一実施形態において説明された内容は、他の実施例及び他の実施形態等に利用可能である。
本件明細書において、「上」、「下」、「第1主面」、「第2主面」という用語は、発光装置の光を取り出す側とその逆側を指す用語としても用いる。例えば「上面」、「第1主面」とは発光装置の光を取り出す側にある面を指し、「下面」、「第2主面」とはその逆側の面を指す。
【0011】
本実施形態の発光装置は、導電パターンを有する基材と、導電パターン上に搭載された複数の発光素子と、複数の発光素子の側面を一体的に被覆する光反射性部材とを備える。
これらの基材、発光素子及び光反射性部材は、通常、一体的に1つの発光装置を構成する。
【0012】
(基材)
基材は、複数の発光素子を搭載するものであり、複数の発光素子が搭載される第1主面と、該第1主面の反対側の第2主面とを備える。
このような基材は、当該分野で公知であり、発光素子等が実装されるために使用されるいずれの基材をも用いることができる。基材は、通常、導電パターンとそれを支持する基体とからなる。基体の材料としては、例えば、ガラスエポキシ、樹脂、セラミックス(HTCC、LTCC)などの絶縁材料から成る基体、絶縁材料を形成した金属部材等が挙げられる。なかでも、耐熱性及び耐候性の高いもの、熱伝導率の高いものが好ましい。例えば、熱導電率が20W/m・k程度以上のものが好ましく、30W/m・k程度以上、50W/m・k程度以上、100W/m・k程度以上のものがより好ましい。基体は、特に、後述する光反射性部材よりも熱伝導率が高い絶縁材料によって形成されているものがより好ましい。例えば、光反射性部材よりも熱導電率が2W/m・k程度以上高いもの、3W/m・k程度以上、5W/m・k程度以上、10W/m・k程度以上高いものが好ましい。このような基体を用いることにより、発光素子から発生する熱を効率的に放熱させることができる。
【0013】
具体的には、セラミックスを利用したものが好ましい。セラミックスとしては、アルミナ、窒化アルミニウム、ムライトなどが挙げられる。これらのセラミックスに、例えば、BTレジン、ガラスエポキシ、エポキシ系樹脂等の絶縁材料を組み合わせてもよい。
基体の厚みは特に限定されるものではなく、通常、100μm〜1mm程度が挙げられる。放熱性および第1主面と第2主面との導電パターンを電気的に接続させること等を考慮すると300μm〜700μm程度であることが好ましい。
【0014】
基材は、発光素子間において、第1主面と反対側の第2主面側に溝を有している。このような溝は、第2主面側から基体部分における厚み方向の一部のみに形成されていてもよいし、第2主面側から第1主面側に達する深さまで形成されていてもよい。つまり、基材は、複数の発光素子を搭載したまま、部分的に溝を有し、溝は第1主面側にまで達することなく基材は一体的に連結されていてもよいし、溝は第1主面側に達する深さまで形成されて基材が溝により複数に分断されていてもよい。言い換えると、1つの発光装置を構成する基材は、第2主面側に溝が形成された単一部材であってもよいし、複数の平板状の基材が等間隔で極細の隙間を介して整列されていてもよい。なお、本明細書中においては第1主面に達する深さまで溝が形成され、つまり基材が分断された状態における基材間の隙間についても「溝」と説明する。
いずれにしても、基材の第1主面側に発光素子が複数搭載され、それら複数の発光素子の側面が後述する光反射性部材で被覆されているため、基材と発光素子と光反射性部材とは、一体の発光装置として構成されている。
【0015】
溝の幅は、特に限定されるものではなく、発光素子による発熱及び放熱を考慮して、熱サイクルによる基材(導電パターン及び/又は基体)自体の膨張及び縮小等を吸収又は逃がし得る幅とすることが好ましい。具体的には、10μm〜200μm程度が挙げられ、100μm程度が好ましい。
同様の観点から、複数の基材が隙間を介して整列される場合の隙間の幅も上記溝の幅と同程度があげられる。
【0016】
溝の深さは、基材の厚みと同じであることが好ましく、基材の厚み以下とする場合は、用いる基体の種類及び厚みによって、基体の全厚みの50%以上、70%以上、80%以上、90%以上、95%以上、100%等が挙げられる。基体の厚み方向での連結は、上述した基体自体の膨張及び縮小による応力によって、基体を分断し得る程度であることが好ましい。これによって、このような応力がかかった場合に、意図的に基体を分断させて応力を効果的に逃がすことができる。
【0017】
溝は、当該分野で公知の方法、例えば、レーザ加工、スクライブ、ブレードによるダイシング法等を利用して形成することができる。
【0018】
基材は、基体と導電パターンを有する。導電パターンは、第1主面及び第2主面の双方に配置されていることが好ましい。さらに、第1主面及び第2主面の双方に隣接する側面に配置されていてもよい。あるいは、第1主面及び第2主面の双方におよぶ、つまり基体を貫通するビアが形成されていても良い。これによって、第1主面の導電パターンと第2主面の導電パターンが電気的に接続される。ここで、第1主面とは、発光素子が搭載される面を意味し、第1主面と反対側の第2主面は発光装置の発光面の反対側の面となる。
【0019】
上述したように、溝が形成される基体に導電パターンが配置している場合には、その導電パターンも基体とともに分断されていてもよい。導電パターンは、基体の第1主面と第2主面との双方に配置され、第1主面側の導電パターンと、第1主面側の導電パターンの直下に配置される第2主面側の導電パターンとは両者が電気的に接続されていることが好ましいが、全ての導電パターンが接続されていなくてもよい。また、導電パターンは、1つの発光素子に対応して一対の端子として機能し得るように配置されていてもよい。さらに、導電パターンは、電力供給制御等によって、複数の発光素子がそれぞれ独立して駆動し得るパターンに配置されていてもよいし、複数の発光素子が一括駆動し得るパターンに配置されていてもよい。独立した点滅制御は、当該分野で公知であり、通常使用される形態及び方法のいずれをも利用することができる。なお、溝が形成される部位の第1主面側に導電パターンが配置されていないかまたは導電パターンが配置されていても溝により分断されている場合、複数の発光素子を一括駆動させるために、複数の発光素子がそれぞれ載置される複数の導電パターン間を、ワイヤ等の導電部材によって電気的に接続させてもよい。このような導電部材としては、ワイヤの他に、導電性リボン、導電性シリコーンペースト等が挙げられる。
【0020】
このように、基材が溝を有することにより、複数の発光素子を配列した大きな発光面を有する1つの発光装置を実装基板に実装する場合においても、発光装置の実装基板への電気的接続を確保することができる。つまり、個々の発光素子で発生した熱および実装時の熱履歴等に起因して、実装基板が膨張又は縮小しても、その応力は、基材の溝によって分散して逃がすことができる。その結果、発光素子、基材、接合部材等を構成する材料固有の膨張及び縮小差による接合剥がれなどの接合不良を効果的に防止することができる。
溝の幅は、基材の厚み以下程度が挙げられ、基材の厚みの1/2以下が好ましく、1/4以下がより好ましい。実装基板が曲面を有する場合、1/10以上であることがさらに好ましい。
【0021】
溝は、必ずしも、複数の発光素子間のすべてに配置されていなくてもよい。例えば発光素子がマトリクス状に配置されている時は、一方向だけに溝を形成するなど、溝の数及び形状は、発光素子、基材の種類及び大きさによって、適宜選択することができる。
【0022】
(発光素子)
発光素子1は、通常、発光ダイオードが用いられる。
発光素子は、その組成、発光色又は波長、大きさ、個数等、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、青色、緑色の発光素子としては、ZnSe、窒化物系半導体(InAlGa1−X−YN、0≦X、0≦Y、X+Y≦1)、GaPなどの半導体層を用いたもの、赤色の発光素子としては、GaAlAs、AlInGaPなどの半導体層を用いたものが挙げられる。
【0023】
発光素子は、通常、成長用基板(例えば、サファイア基板)上に、半導体層を積層させて形成される。成長用基板は半導体層との接合面に凹凸を有していてもよい。これにより半導体層から出射された光が、基板に当たるときの臨界角を意図的に変えて、基板の外部に光を容易に取り出すことができる。
発光素子は、成長用基板が半導体層の積層後に除去されていてもよい。除去は、例えば、研磨、LLO(Laser Lift Off)等で行うことができる。
【0024】
発光素子は、同一面側に正負一対の電極を有していてもよい。これにより、発光素子を、導電パターンを有する基材にフリップチップ実装することができる。この場合、一対の電極が形成された面と対向する面が光取り出し面となる。フリップチップ実装は、Au、Cu等の金属バンプ、半田等の導電性を有するペースト状の接合部材、薄膜状の接合部材等を用いて、発光素子と基材の導電パターンとが電気的に接続される。あるいは、フェイスアップ実装する場合には、一対の電極が形成された面を光取り出し面としてもよい。
発光素子は、異なる側に正負一対の電極を有するものであってもよい。この場合、一方の電極が導電性接着材で基材に接着され、他方の電極が導電性ワイヤ等で基材と接続される。
【0025】
発光素子は、1つの発光装置において複数含まれている。複数の発光素子は、整列されている。例えば、一列に整列されてもよいし、マトリクス状に整列されていてもよい。発光素子の数は、得ようとする発光装置の特性、サイズ等に応じて適宜設定することができる。
【0026】
整列する複数の発光素子は、互いに近接していることが好ましく、車両用途、さらに輝度分布等を考慮すると、発光素子間距離は、発光素子の最大辺の長さの5〜50%程度が挙げられ、5〜30%程度が好ましく、5〜20%程度がさらに好ましい。このように発光素子同士を近接して配置させることにより、均一で良好な輝度分布を確保することができる。その結果、発光ムラの少ない発光品位の高い面光源の発光装置とすることができる。
【0027】
(光反射性部材)
光反射性部材は、発光素子の側面を被覆する。ここでの発光素子の側面とは、少なくとも半導体層の側面の厚み方向の一部、好ましくは半導体層の厚み方向の全部及び/又は半導体層の側面の外周における一部、好ましくは半導体層の外周における全側面を指す。発光素子の側面において、光反射部材と半導体層との間には、後述する接着材又は埋設部材等の別の層が介在していてもよいが、光反射部材が半導体層に接触していることが好ましい。なかでも、複数含まれる発光素子の全ての外周側面が光反射性部材で一体的に被覆されていることが好ましい。これにより、発光素子と光反射性部材との界面で、発光素子から出射された光が、発光素子内に反射される。その結果、隣接する発光素子に光が吸収されることなく、光が、発光素子の上面から外部へ効率的に出射される。発光素子を均一かつ最小限の隙間で配列しながら、良好な輝度分布を得ることができる。また、上述したように、基材が溝を有するとしても、1つの発光装置として取り扱いが容易となる。
【0028】
光反射性部材は、発光素子の側面とともに、基材の第1主面の少なくとも一部をも被覆していることが好ましい。これにより、上述したように、基材が1又は複数であっても、一体的に構成することができる。特に、光反射性部材は、発光素子の外周における基材の第1主面を被覆していることがより好ましい。なお、溝が基材の第1主面側にまで達している場合、基材間における光反射性部材の基材側の面は、基材の第1主面と一致していてもよいし、光反射性部材側に凹んでいてもよい。
さらに、基材間における光反射性部材の基材側の面は、別の部材で被覆されていてもよい。例えば、溝に光反射性部材または遮光性部材等を配置することにより、基材側への光漏れを抑制することが可能となる。
【0029】
発光素子の側面を被覆する光反射性部材、つまり、発光素子間に配置される光反射性部材は、発光素子の上面(光取り出し面)と面一とすることができる。ここで面一とは、光反射性部材の厚みの±10%程度、好ましくは±5%程度の高低差が許容されることを意味する。本明細書において「略」は同じ意味を示す。
あるいは、発光素子の上面に、後述するように発光素子の上面を被覆する透光性部材をさらに備える場合には、上面側における透光性部材及び光反射性部材は面一であることが好ましい。
【0030】
発光素子間における光反射性部材の厚み(幅)は、発光素子間の距離に等しく、例えば、10〜500μm程度が好ましく、100〜300μm程度がより好ましく、50〜200μm程度がさらに好ましい。このような厚みに設定することにより、隣接する発光素子間の距離を近接させても、各発光素子からの側面側への光漏れを最小限に止めることができる。よって、効率的な光反射を実現することができる。その結果、良好な輝度分布を確保することができる。
【0031】
光反射性部材は、発光素子から出射される光を反射することができる材料から形成される。これによって、発光素子と光反射性部材との界面で、発光素子から出射される光を発光素子内に反射させることができる。その結果、発光素子内で光が伝播し、最終的に発光素子の上面から透光性部材の上面、外部へと光を出射させることができる。
また、複数の発光素子が独立して駆動され、隣接する発光素子間で点灯/消灯の状態となる場合において、消灯している発光素子が点灯している発光素子に照らされて点灯しているように見えてしまうことが抑制される。つまり複数の発光素子間の光漏れが抑制される。
【0032】
光反射性部材は、通常、樹脂を含んで形成されていることが好ましい。具体的には、シリコーン樹脂、変性シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、変性エポキシ樹脂、アクリル樹脂の1種以上を含む樹脂又はハイブリッド樹脂と、光反射性物質とを用いて形成することができる。なかでも、耐熱性、電気絶縁性に優れ、柔軟性のあるシリコーン樹脂をベースポリマーとして含有する樹脂が好ましい。これにより、上述した基材の膨張および収縮による応力を吸収することができる。
光反射性物質としては、酸化チタン、酸化ケイ素、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム、珪酸カルシウム、酸化亜鉛、チタン酸バリウム、チタン酸カリウム、アルミナ、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、ムライトなどが挙げられる。なかでも酸化チタンは、水分などに対して比較的安定でかつ高屈折率であるため好ましい。
光反射性物質の含有量は、光反射性部材の光の反射量及び透過量等を変動させることができるため、得ようとする発光装置の特性等によって適宜調整することができる。例えば、光反射性物質の含有量を光反射性部材の全重量の15wt%以上とすることが好ましく、30wt%以上とすることがさらに好ましい。
【0033】
複数の発光素子間に配置される光反射部材は、複数の発光素子間における光反射部材間に、さらに遮光部材を備えてもよい。複数の発光素子間の光反射性部材間に遮光性部材を配置させることにより、発光素子間の光漏れによる影響をさらに低減することができる。また複数の発光素子間の距離をより近づけたとしても、光漏れを抑制することが容易となる。
遮光性部材としては、上述した光反射性部材に光吸収物質を含んだものが挙げられる。光吸収物質としては、例えば、黒色系の顔料、カーボンブラックなどが挙げられる。
【0034】
また、上述したように、導電パターン間を電気的に接続するためにワイヤ等の導電部材を配置する場合には、このような導電部材を、光反射性部材中に埋め込んでもよい。この際、導電部材が発光装置の外表面に露出しないように導電部材を光反射性部材に埋設することが好ましい。これにより、発光装置を基板に実装する際の半田等の接続部材が溝に侵入して導電部材と半田がつながることによる発光装置のショート等を防止することができる。
【0035】
光反射性部材は、反射性に加え、放熱性を有する材料を用いてもよい。光反射性部材の熱伝導率は0.2W/m・K以上が好ましく、1W/m・K以上、2W/m・K以上、3W/m・K以上がより好ましい。熱伝導率を高く設定することにより放熱性を向上させることができる。このような材料としては、熱伝導率の高い窒化アルミニウム、窒化ホウ素が挙げられる。
例えば、後述するように、透光性部材が蛍光体を含有する場合には、蛍光体がストークスロスに起因する自己発熱を起こし、この熱によって光変換効率を低下させることがある。一方、光反射性部材が、高い熱伝導率を有する場合には、透光性部材中の蛍光体の熱を効率的に放熱することが可能となる。
【0036】
光反射性部材は、例えば、射出成形、ポッティング成形、樹脂印刷法、トランスファーモールド法、圧縮成形などによって成形することができる。
【0037】
(透光性部材)
発光装置は、さらに、発光素子の上面(光取り出し面)を被覆する透光性部材を備えていることが好ましい(図1A及び1Bの4参照)。透光性部材は、発光素子から出射される光を透過させ、その光を外部に放出することが可能な部材である。
透光性部材は、発光素子から出射された光の全てを取り出すために、発光素子の上面の全部を透光性部材で被覆することが好ましい。ただし、透光性部材が発光素子よりも大きくなるほど、そこから取り出される光は、輝度が低下することがある。従って、発光素子を被覆する透光性部材は、できる限り発光素子と同等の大きさとすることが好ましい。これにより、発光装置のより一層の小型化が可能となることに加え、より一層高い輝度が得られる。
【0038】
発光素子よりも大きい透光性部材で複数の発光素子を個々に被覆する場合、透光性部材間距離は、透光性部材自体のサイズ(一辺の長さ)よりも短いものが好ましく、例えば、透光性部材自体のサイズの20%以下であることがより好ましい。このように透光性部材同士を近接して配置させることにより、発光ムラの少ない発光品位の高い面光源の発光装置とすることができる。
【0039】
透光性部材は、複数の発光素子を一体的に被覆するものであってもよいし、複数の発光素子を個々に被覆するものでもよい。
複数の発光素子を個々に被覆する透光性部材は、その側面が、発光素子と同様に光反射性部材に被覆されていることが好ましい。これにより、複数の発光素子が独立して駆動され、隣接する発光素子間で点灯/消灯の状態となることがある場合において、消灯している発光素子が点灯している発光素子に照らされて点灯しているように見えてしまうことが抑制される。つまり複数の発光素子間の光漏れが抑制される。
複数の発光素子を一体的に被覆する透光性部材は、その外側面が光反射性部材で被覆されていなくてもよいが、外側面からの光漏れを考慮すると、被覆されていることが好ましい。
透光性部材は、その上面側が、光反射性部材と面一であることが好ましい。これにより、透光性部材の側面から発する光同士の干渉を確実に防止することができる。また、隣接する消灯した発光素子に対する光の干渉を確実に防止することができる。
【0040】
透光性部材の厚みは、特に限定されるものではなく、例えば、50〜300μm程度とすることができる。
透光性部材は、上面が凹凸形状、曲面、レンズ状の種々の形状とすることができ、下面は、発光素子の光取り出し面に平行な面とすることが好ましい。
【0041】
透光性部材を構成する材料は限定されず、例えば、ケイ酸塩ガラス、ホウケイ酸ガラス、石英ガラスなどのガラス材料、シリコーン樹脂、シリコーン変性樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、トリメチルペンテン樹脂、ポリノルボルネン樹脂、又はこれらの樹脂を1種類以上含むハイブリッド樹脂等の樹脂成形体、サファイアなどが挙げられる。透明度が高いほど、光反射性部材との界面において光を反射させやすいため、輝度を向上させることが可能となる。
透光性部材は、蛍光体や拡散材等を有していてもよい。蛍光体や拡散材は透光性部材の内部に含有させてもよいし、透光性部材の両面又は片面に蛍光体や拡散材を含有する層を設けてもよい。蛍光体や拡散材を含有する層を形成する方法としては、特に限定されるものではなく、例えば、スプレー法、電着法、静電塗装法を用いることができる。あるいは樹脂に蛍光体を分散させた材料から成る蛍光体シート等を透光性部材に接着してもよい。
【0042】
蛍光体は発光素子からの発光を吸収して異なる波長の光に波長変換するものが選択される。蛍光体としては、当該分野で公知のものを使用することができる。例えば、セリウムで賦活されたYAG(イットリウム・アルミニウム・ガーネット)系蛍光体、セリウムで賦活されたLAG(ルテチウム・アルミニウム・ガーネット)系蛍光体、ユーロピウム及び/又はクロムで賦活された窒素含有アルミノ珪酸カルシウム(CaO−Al−SiO)系蛍光体、ユーロピウムで賦活されたシリケート((Sr,Ba)SiO)系蛍光体、βサイアロン蛍光体、クロロシリケート蛍光体、CASN系又はSCASN系蛍光体などの窒化物系蛍光体、希土類金属窒化物蛍光体、酸窒化物蛍光体、KSF(KSiF:Mn)系蛍光体、硫化物系蛍光体などが挙げられる。
これにより、可視波長の一次光及び二次光の混色光(例えば白色系)を出射する発光装置、紫外光の一次光に励起されて可視波長の二次光を出射する発光装置とすることができる。蛍光体は、複数の種類の蛍光体を組み合わせて用いても良い。所望の色調に適した組み合わせや配合比で用いて、演色性や色再現性を調整することもできる。
このような蛍光体を透光性部材に含有される場合、蛍光体の濃度を、透光性部材の全重量に対して、例えば5〜50重量%程度とすることが好ましい。
発光装置が複数の透光性部材を有する場合、複数の透光性部材それぞれに含有させる蛍光体の種類や量を異ならせても良い。含有される蛍光体の種類や組み合わせが異なる透光性部材を複数組み合わせて用いることにより、所望の色調に適した演色性や色再現性を調整することができる。
【0043】
また蛍光体材料は、例えば、いわゆるナノクリスタル、量子ドットと称される発光物質でもよい。このような材料としては、半導体材料、例えば、II−VI族、III−V族又はIV−VI族の半導体、具体的には、CdSe、コアシェル型のCdSSe1−X/ZnS、GaP、InAs等のナノサイズの高分散粒子を挙げることができる。このような蛍光体は、例えば、粒径が1〜100nm、好ましくは1〜20nm程度(原子10〜50個程度)のものを挙げることができる。このような蛍光体を用いることにより、内部散乱を抑制することができ、色変換された光の散乱を抑制し、光の透過率をより一層向上させることができる。
また、蛍光体材料として有機系の発光材料を用いてもよい。有機系の発光材料として代表的なものは、有機金属錯体を用いた発光材料を挙げることができ、透明性の高い発光材料が多い。このため、蛍光体材料として有機系の発光材料を用いた場合には、量子ドット蛍光体を用いた場合と同様の効果を得ることができる。
拡散材としては、例えば、シリカ、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム、珪酸カルシウム、酸化亜鉛、チタン酸バリウム、酸化アルミニウム、酸化鉄、酸化クロム、酸化マンガン、ガラス、カーボンブラック等を用いることができる。
【0044】
透光性部材は、発光素子の上面(光取り出し面)を被覆するように接合されている。接合は、例えば、圧着、焼結、エポキシ又はシリコーンのような周知の接着材による接着、高屈折率の有機接着材による接着、低融点ガラスによる接着などで行うことができる。
透光性部材と発光素子とを接着材により接合する場合、接着材に上述の蛍光体や拡散材を含有させることができる。
【0045】
透光性部材が発光素子の上面を被覆するように接合される場合、特に、発光素子より大きい透光性部材を用いる場合、発光素子からの光が透光性部材に伝播されやすいように、接着材を発光素子側面にまで配置することがある。この場合には、発光素子の半導体層と光反射部材との間に接着材が配置されることになる。ただし、接着材は、透光性部材の直下から外側に配置されないようにすることが好ましい。これにより、発光素子と光反射性部材との間で、光が適切に反射/伝播され、色むらの発生を防止することができる。
【0046】
(埋設部材)
発光素子が基材上に接合される場合、基材と発光素子との間に埋設部材が配置されていることが好ましい。基材と発光素子との間に埋設部材を配置することにより、発光素子と基材との熱膨張率の差による応力を吸収し、放熱性を高めることができる。
埋設部材は、発光素子の直下にのみ配置されていてもよいし、発光素子の直下から、発光素子間に及んでいてもよく、発光素子の側面の一部に接触していてもよい。埋設部材は、例えば、最も肉厚の部位において、数μm〜数百μm程度の膜厚とすることができる。
【0047】
埋設部材は、いわゆるアンダーフィルと呼称されるものであり、通常、樹脂を含んで構成され、光反射性樹脂によって形成されていることが好ましい。光反射性樹脂を用いることにより、発光素子の下方向へ出射される光を反射することができ、光束を高めることができる。
埋設部材は、光反射性部材と同じ材料で形成してもよいし、異なる材料で形成してもよい。特に、光反射性部材よりも低弾性及び/又は低線膨張の材料を用いることが好ましい。これにより、発光素子と基材との接合部における樹脂の膨張/収縮応力の緩和が可能となり、電気的な接合信頼性を向上させることができる。この場合、光反射性部材に機械強度の高い材料を使用し、埋設部材が外部に露出しないよう、光反射性部材で埋設部材を完全に覆う構成とすることが好ましい。これにより、発光素子及び埋設部材の外的応力に対する耐久性を確保できる。
【0048】
埋設部材と光反射性部材を異なる材料とする場合は、光反射性部材を充填する前に埋設部材を硬化することが好ましい。これにより、互いの樹脂が混合することを防止できるので、互いの樹脂の性能を損なうことがない。
埋設部材としては、例えば、シリコーン樹脂組成物、変性シリコーン樹脂組成物、エポキシ樹脂組成物、変性エポキシ樹脂組成物、アクリル樹脂組成物等、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、ユリア樹脂、フッ素樹脂及びこれらの樹脂を少なくとも1種以上含むハイブリッド樹脂等と、光反射性物質とを用いて形成することができる。なかでも、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂等をベースポリマーとして含有する樹脂が好ましい。
【0049】
光反射性物質としては、酸化チタン、酸化ケイ素、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム、珪酸カルシウム、酸化亜鉛、チタン酸バリウム、チタン酸カリウム、アルミナ、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、ムライトなどが挙げられる。これにより、効率よく光を反射させることができる。
埋設部材を構成する材料は単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。これにより、光の反射率を調整することができ、また、樹脂の線膨張係数を調整することが可能となる。
【0050】
本発明の発光装置には、ツェナーダイオード等の保護素子を搭載してもよい。例えば、保護素子を、光反射性部材に埋設することにより、発光素子からの光が保護素子に吸収されたり、保護素子に遮光されたりすることによる光取り出しの低下を防止することができる。
【0051】
(発光装置の製造方法)
上述した発光装置は、以下の方法で製造することができる。
第1主面と該第1主面の反対側の第2主面とに導電パターンを有する基材を準備し、
前記第1主面の前記導電パターン上に複数の発光素子を搭載し、
該複数の発光素子の側面を一体的に被覆する光反射性部材を形成し、
前記発光素子間に対応する前記基材の第2主面に溝を形成する。
さらに、発光素子の上面に透光性部材を配置することを含んでいてもよい。この工程は、発光素子を基材に搭載する前後のいずれに行ってもよいし、光反射部材を形成した後、その一部が光反射部材の上面を被覆するように又はしないように実施してもよい。
以下、本発明の発光装置の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0052】
実施形態1
この発光装置10は、図1A及び1Bに示したように、導電パターン3a、3bを有する基材2と、2つの発光素子1と、光反射性部材5とを備える。
【0053】
基材2は、厚みが400μm、熱電導率が170W/m・k程度の窒化アルミニウムのセラミックス板材によって形成されている。
基材2は、第2主面から第1主面に達する溝2aを有している。つまり基材は複数に分断されている。溝2aの幅は、100μmである。基材2は、第1主面及び第2主面にそれぞれ、チタン、白金、金が蒸着されて、正負の一対に対応する導電パターン3a、3bを有している。第1主面の導電パターン3aと反対側の第2主面の導電パターン3bとは、ビア3cを通じて電気的に接続されている。
【0054】
発光素子1は、1.0mm×1.0mm×0.11mm(厚み)のサイズを有しており、サファイア基板上に半導体層を積層させ、同一面側に正負対の電極が形成されたものである。
複数の発光素子1は、それぞれ、各基材2の第1主面の導電パターン3a上に、金からなるバンプによって、フリップチップ実装されている。従って、サファイア基板を光取り出し面としている。
【0055】
発光素子1の上面は、ガラス中にYAGが分散されてなる板状の透光性部材4によって被覆されている。透光性部材4は、YAG蛍光体を5〜15重量%含有し、サイズは1.15mm×1.15mm×0.18mm(厚み)である。透光性部材4は、シリコーン樹脂からなる接着材による熱硬化を利用して発光素子1の上面に接着されている。
隣接する発光素子1間の距離は、0.5mm程度で、発光素子1の最大辺の長さの50%程度である。隣接する透光性部材4間の距離は0.4mm程度である。
【0056】
発光素子1の側面と、発光素子1の上面に被覆された透光性部材4との側面4aを含む、これらの外周は、光反射性部材5により被覆されている。また、発光素子1の直下であって、基材2又は導電パターン3aと対向する領域にも光反射性部材5が配置されている。光反射性部材5によって、発光素子1と基材2と透光性部材4とは、一体的に構成されている。
光反射性部材5は、シリコーン樹脂に酸化チタンが30wt%含有されており、熱伝導率が0.2W/m・K程度である。
光反射性部材5は、発光素子1の上面上の透光性部材4と面一である。
【0057】
このような発光装置は、以下の方法により製造することができる。
まず、図6Aに示すように、第1主面と第1主面の反対側の第2主面とに導電パターン3a、3bを有する、平板状の基材2を準備する。
工程1:図6Bに示すように、基材2の第1主面の導電パターン3a上に、複数の発光素子1を搭載し、電気的接続をとる。
工程2:次に、図6Cに示すように、発光素子1の上面に、それぞれ、透光性部材4を接着材で接合する。その後、図6Dに示すように、発光素子1の側面及び透光性部材4の側面4aを光反射性部材5で一体的に被覆する。ここで、光反射性部材5の上面は、透光性部材4の光取り出し面と面一、または光取り出し面よりも低くすることが好ましい。このような被覆は、ポッティング、圧縮成形、トランスファーモールド等により行うことができる。
なお、透光性部材4と発光素子1との接合は、発光素子を基材に搭載する前に行ってもよいし、発光素子1の側面を光反射性部材5で被覆した後に行ってもよい。
【0058】
工程3:続いて、ブレード等を利用して、発光素子間に対応する基材2の第2主面に切込を入れる。この際、基材2の厚みと同等の深さで切込を入れることにより、図1Bに示すように、溝2aが形成される。ここでの切込深さは、基材2の第1主面までの深さとすることが好ましく、光反射性部材5にまで及ばないことが好ましい。光反射性部材5が部分的に薄膜となり、その部位からの光の漏れを防止するためである。
工程4: 発光装置を所望の構成単位(この場合は2つの発光素子)ごとにブレードを用いて個片化する。
その後、例えば、図1Cに示すように、表面に回路パターンを有する実装基板上に、半田からなる接合部材によって電気的に接続して、種々の用途に利用することができる。
【0059】
通常、このような発光装置を形成する場合、1つの発光装置の構成単位を複数、一体的に備えた集合基材が用いられる。上述した発光装置の製造方法において、作業性を考慮すると、工程1及び2は集合基材の上で行われるが、工程4は工程3の後に限らず、工程3の前に行ってもよい。
【0060】
このように、集合基板への発光素子の実装×2回、発光素子が2個連なった状態で1つの発光装置として個片化×1回、発光素子が2個連なった発光装置の実装基板への実装×1回の工程数によって、1つの発光装置が備える2つの発光面(発光素子)を実装基板に高密度に実装することができる。
一方、従来行われていた、集合基板への発光素子の実装×2回、集合基板の個片化×2回、個片化された発光装置の実装基板への実装×2回の一連の工程を行う場合と比較して、工程数を低減することができるため、実装基板における発光面の位置精度を格段に向上させることができる。発光素子を実装する精度、個片化時の切断精度、個片化された発光装置ごとの実装精度それぞれの工程におけるわずかなバラつきが、工程を重ねることにより、最終製品として実装した際の発光面の位置バラつきを大きくすることになるからである。
このように、精度のバラつきが発生することが予想される個片化工程及び実装基板への発光装置の実装工程において、工程ごとのバラつきを回避又は低減することにより、複数の発光面(発光素子)を均一かつ最小限の隙間で配列しながら、良好な輝度分布、放熱性等を確保し、配線不良及び短絡等のない信頼性の高い発光装置が得られる。
【0061】
実施形態2
この発光装置20は、図2に示したように、溝2bが基材2の第2主面側から基材の厚み方向の一部のみに形成されている。つまり、基材2は、基材2の第1主面まで達しない溝2bを有し、これによって、基材2は1つの部材として連結された形状である以外、発光装置10と同様の構成を有する。
発光装置20は、発光装置10と同様の効果を有する。
さらに、基材2は、溝2bを有し、基材2の厚み方向で連結しているが、この連結は、発光素子自体、基材自体及び/又は接合部材自体の膨張又は縮小による応力によって容易に分断することができる。これによって、このような応力を容易に吸収/緩和することができる。
【0062】
実施形態3
この発光装置30は、図3に示したように、複数の導電パターンを有する基材12と、複数の発光素子1と、光反射性部材5とを備える。複数の発光素子1は、マトリクス状に配列されている。この場合、基材12における溝12aは、マトリクス状に配置された発光素子間において、発光素子を取り囲むように格子状に形成されている。なお、溝12aは、行方向に延びる溝と列方向に延びる溝とで、幅が異なっていてもよいが、溝形成時の作業性を考慮すると、同じであることが好ましい。
【0063】
通常、配光設計に応じて、実装基板上での各発光装置が備える発光面の配置が定められているため、各発光装置を実装基板に実装する際、発光面の位置バラつきが大きいと、所望の配光パターンを形成することができない。
一方、この実施形態の発光装置によれば、発光装置が備える複数の発光面の位置バラつきを格段に低減させることが可能となるため、所望の配光設計に応じて発光面の位置及び向きを意図するように実装することができ、上述した効果を有効に発揮させることができる。
【0064】
さらに、発光素子がマトリクス状に配置され、基材における溝を格子状に設ける場合には、発光装置自体に柔軟性を付与することができ、よって、任意の形状の実装基板に実装することが可能となる。
【0065】
(剥離性評価)
本発明の実施形態にかかる発光装置の剥離性を観察するために、熱サイクル試験後の点灯不良率を調べた。測定用の発光装置は、(1a)発光素子が1列に5個連なった発光装置の発光素子間の基材部分が分断されたサンプル、(1b)発光素子が1列に10個連なった発光装置の発光素子間の基材部分が分断されたサンプル、(1c)発光素子が5列に10個ずつ(5×10個)連なった発光装置の発光素子間の基材部分が分断されたサンプル、(2a)発光素子が1列に5個連なったサンプル、(2b)発光素子が1列に10個連なったサンプル、(2c)発光素子が5列に10個ずつ連なったサンプルをそれぞれ準備した。
【0066】
これらの発光装置を、図1Cに示すように、表面に回路パターンを有する実装基板上に、半田からなる接合部材によって電気的に接続し、−40℃〜125℃の温度変化を繰り返す熱サイクルによる負荷を与え、サンプルごとの不点灯の発生状況を確認した。その結果、試験回数400サイクルを経過した時点で、発光素子間の基材部分が分断されたサンプル(1a)、(1b)、(1c)における不点灯のサンプルは確認されなかった。基材が連なったサンプルにおいては、(2a)で0/14個、(2b)で3/10個、(2c)で6/6個の不点灯のサンプルが確認された。さらに、試験回数560サイクルを経過した時点では、基材が連なったサンプルにおいては、(2b)で不点灯のサンプルがさらに6個増えた9/10個の不点灯のサンプルが確認された。発光素子間の基材部分が分断されたサンプル(1a)、(1b)、(1c)における不点灯のサンプルは確認されなかった。さらに、試験回数1040サイクルを経過した時点で、発光素子間の基材部分が分断されたサンプル(1a)、(1b)、(1c)における不点灯のサンプルは確認されなかった。基材が連なったサンプルにおいては、(2a)で6/14個、(2b)で9/10個、(2c)で6/6個の不点灯のサンプルが確認された。
【0067】
このように、この本発明の実施形態にかかる発光装置では、温度変化によって生じる基材の熱膨張および収縮による接合不良を基材間の溝部により低減させることができると考えられる。基材が大きいほど温度変化により生じる接合不良が多く生じることも確認された。
複数の発光素子を搭載することにより、発光素子の整列状態によって所望の形状に発光面を設計することが可能となり、その用途が広がる。複数の発光素子を搭載する基材が溝を有し、基材が分断されていることにより、基材自体の微小な移動、たわみ等を可能にする。これによって、個々の発光素子で発生した熱及び実装時の熱履歴等に起因する基材(導電パターン及び/又は基体)の膨張及び縮小、発光素子と基材とを連結する接合部材の膨張及び縮小等を、個々の基材単位で吸収又は逃がすことができる。その結果、発光素子、基材、接合部材等を構成する材料固有の膨張又は収縮に起因する材料間の剥離などの接合不良等を防止することができる。
【0068】
つまり、比較的サイズが大きな発光装置であっても、基材間の溝により、熱サイクルによる発光素子、基体、接合部材、実装基板等の間の熱膨張/収縮を有効に吸収又は逃がすことが可能となり、その信頼性を確保することができる。
【0069】
実施形態4
この発光装置40は、図4Aから4Cに示したように、第1主面に導電パターン33aを有する基材22a、22b、22cと、導電パターン33a上にそれぞれ搭載された複数の発光素子1と、複数の発光素子1それぞれの上面を被覆する複数の透光性部材4と、複数の発光素子1の側面を一体的に被覆する光反射性部材5と、保護素子35とを備える。基材22a、22b、22は溝により分離されており、基材22a、22b、22cの導電パターン33aは、ワイヤ34により電気的に接続されている。ワイヤ34は、光反射性部材5に埋設されており、発光装置40の外表面には露出しない。発光装置40は、光反射性部材5およびワイヤ34により、一体的に形成されている。
【0070】
発光装置の両端に位置する基材22aと22cとは、それぞれ第1主面の反対側の面である第2主面に導電パターン33bを有しており、導電パターン33bは、第1主面側の導電パターン33aと基体内に埋め込まれたビア3cを通じて電気的に接続されており、発光装置40の外部電極として機能することができる。
発光装置40の中央に位置する基材22bは第2主面に放熱パターン33cを有しており、放熱パターン33cは、第1主面側の導電パターン32aおよび複数の発光素子1と電気的に独立している。
上述した以外、発光装置10と同様の構成を有する。
【0071】
このような発光装置40の構成によれば、導電パターン33a、33bを発光装置40の一対の外部電極として機能させ、複数の発光素子を一括駆動することができる。また、この際、基材22bの第2主面側に、電位の無い放熱に特化した放熱パターン33cを配置できるため、特に放熱性に優れた発光装置とすることができる。一般的に、発光装置の中央近傍ほど熱がこもりやすいため、複数の発光素子を備える発光装置の場合、発光装置の中央領域に放熱に特化した放熱パターンを設けることにより、放熱性に優れた発光装置が得られる。放熱性の観点から、放熱パターンは平面視で直上に配置される発光素子より大きいことが好ましく、平面視における放熱パターンの領域内に発光素子の外縁が含まれることがより好ましい。
【0072】
図4Aから4Cに示した発光装置40では発光素子は3つであるが、発光素子の数は3つに限らず、4つ以上含まれていてもよい。また、4つ以上の発光素子が図3に示す発光装置30のようにマトリクス状に配置されていても良い。
発光素子が図3のようにマトリクス状に配置される場合、複数の発光素子を一括駆動させると、発光装置の中央部ほど熱がこもりやすく、放熱性が悪化する虞がある。このため、特に発光装置の中央部に配置される発光素子の直下の領域を、電位をもたない放熱に特化した放熱パターンとすることで、熱がこもりやすい発光装置の中央部における放熱性が向上する。
さらに、基材間の溝により、熱サイクルによる発光素子、基体、接合部材、実装基板等の間の熱膨張/収縮を有効に吸収又は逃がすことが可能となり、その信頼性を確保することができる。
【0073】
実施形態5
この発光装置50は、図5に示したように、透光性部材が、複数の発光素子上に一体として配置されている。
上述した以外、発光装置40と同様の構成を有する。
このような発光装置50の構成によれば、複数の発光素子を一括駆動させ、大きな発光面積をもつ面発光の発光装置を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明の発光装置は、照明用光源、各種インジケーター用光源、車載用光源、ディスプレイ用光源、液晶のバックライト用光源、信号機、車載部品、看板用チャンネルレターなど、種々の光源に使用することができ、特に、ヘッドライト、リアランプ、昼間点灯(DRL)等の車載用光源に好適に使用することができる。
【符号の説明】
【0075】
10、20、30、40 発光装置
1 発光素子
1a、1b 電極
2、22a、22b、22c 基材
2a、2b 溝
3a、3b、33a、33b 導電パターン
33c 放熱パターン
3c ビア
4、44 透光性部材
4a 側面
5 反射性部材
6 実装基板
7 接合部材
34 ワイヤ
35 保護素子
図1A
図1B
図1C
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図5
図6