(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記(メタ)アクリル酸塩単量体が、(メタ)アクリル酸リチウム、または/および、(メタ)アクリル酸ナトリウムである請求項1または請求項2に記載の電気化学素子電極用導電性接着剤組成物。
前記粒子状結着剤が、ビニルアルコール、スチレンまたは(メタ)アクリロニトリルのいずれか1種類以上を含む単量体成分をさらに10〜50重量部含む単量体混合物(但し、単量体成分の合計を100重量部とする)を重合して得られるものである請求項1〜3のいずれかに記載の電気化学素子電極用導電性接着剤組成物。
前記導電性カーボンの含有割合が8〜38重量%、前記粒子状結着剤の含有割合が0.5〜10重量%、前記水の含有割合が60〜90重量%であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の電気化学素子電極用導電性接着剤組成物。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の電気化学素子電極用導電性接着剤組成物について説明する。本発明の電気化学素子電極用導電性接着剤組成物は、導電性カーボン、粒子状結着剤、及び水を含み、前記粒子状結着剤が(メタ)アクリルアミド単量体及び(メタ)アクリル酸塩単量体に由来する構成単位を含む重合体であることを特徴とする。なお、本発明において、「(メタ)アクリル」は、「アクリル」又は「メタアクリル」を意味する。
【0012】
(導電性カーボン)
本発明に係る電気化学素子電極用導電性接着剤組成物(以下、単に「接着剤組成物」と記載することがある。)に用いる導電性カーボンは、その形態は特に限定はされないが、炭素粒子であることが好ましい。炭素粒子とは、炭素のみからなるか、又は実質的に炭素のみからなる粒子である。その具体例としては、グラファイト(具体的には天然黒鉛、人造黒鉛など)、カーボンブラック(具体的にはアセチレンブラック、ケッチェンブラック、その他のファーネスブラック、チャンネルブラック、サーマルランプブラックなど)、炭素繊維が挙げられる。これらの中でも、グラファイト、アセチレンブラックを用いることが好ましい。
【0013】
また、本発明に用いる導電性カーボンは、導電性接着剤層の導電性が向上する観点及び得られる電気化学素子の出力特性が良好となる観点から、上記の導電性カーボンの成分に加えて、さらにカーボンナノチューブ、グラフェンを含むことが好ましく、グラフェンを含むことがさらに好ましい。
【0014】
接着剤組成物中の導電性カーボンの含有割合は、導電性接着剤層の導電性が向上する観点及び得られる電気化学素子の出力特性が良好となる観点から、好ましくは8〜38重量%、より好ましくは10〜35重量%、さらに好ましくは12〜30重量%である。
【0015】
また、導電性カーボンがカーボンナノチューブ、グラフェンを含む場合における、接着剤組成物中のカーボンナノチューブ、グラフェンの含有割合は、導電性接着剤層の導電性が向上する観点及び得られる電気化学素子の出力特性が良好となる観点から、好ましくは0.1〜10重量%、より好ましくは0.5〜9重量%、さらに好ましくは1〜8重量%である。
【0016】
導電性カーボンの体積平均粒子径は、良好な導電性を保つ観点から、好ましくは0.01〜20μm、より好ましくは0.05〜15μm、特に好ましくは0.1〜10μmである。ここで体積平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定装置(SALD−3100島津製作所製)にて測定し、算出される体積平均粒子径である。
【0017】
導電性カーボンの電気抵抗率は、導電性接着剤層の電子移動抵抗をより低減し、リチウムイオン二次電池の内部抵抗をより低減する観点から、好ましくは0.0001〜1Ω・cmであり、より好ましくは0.0005〜0.5Ω・cm、特に好ましくは0.001〜0.1Ω・cmである。ここで、電気抵抗率は、粉体抵抗測定システム(MCP−PD51型:ダイアインスツルメンツ社製)を用いて、炭素粒子に圧力をかけ続けながら抵抗値を測定し、圧力に対して収束した抵抗値R(Ω)と、圧縮された炭素粒子層の面積S(cm
2)と厚みd(cm)から電気抵抗率ρ(Ω・cm)=R×(S/d)を算出する。
【0018】
(粒子状結着剤)
本発明に係る接着剤組成物に用いる粒子状結着剤は(メタ)アクリルアミド単量体及び(メタ)アクリル酸塩単量体に由来する構成単位を含む重合体である。
【0019】
(メタ)アクリルアミド単量体としては、集電体と電極活物質層との密着性が良好な導電性接着剤層が得られ、また、得られるリチウムイオン二次電池の高温サイクル特性が良好となる観点から、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチロール(メタ)アクリルアミド等のN−メチロール基を有するアクリルアミド単量体、及び、(メタ)アクリルアミド等の第一級アミンの(メタ)アクリルアミド単量体を用いることが好ましい。
【0020】
粒子状結着剤中の(メタ)アクリルアミド単量体に由来する構成単位の含有量は、集電体と電極活物質層との密着性が良好な導電性接着剤層が得られ、また、得られるリチウムイオン二次電池の高温サイクル特性が良好となる観点から、粒子状結着剤は、単量体成分の合計を100重量部として、(メタ)アクリルアミド単量体を、好ましくは5〜70重量部、より好ましくは10〜60重量部、さらに好ましくは20〜50重量部含む単量体混合物を重合して得られたものである。なお、単量体の重合転化率は好ましくは90%以上、より好ましくは93%以上、さらに好ましくは95%以上であり、得られる重合体の単量体の構成単位割合は、仕込んだ単量体の混合比と一致する。
【0021】
また、(メタ)アクリル酸塩単量体としては、集電体と電極活物質層との密着性が良好な導電性接着剤層が得られ、また、得られるリチウムイオン二次電池の高温サイクル特性が良好となる観点から、(メタ)アクリル酸リチウム、(メタ)アクリル酸ナトリウムを用いることが好ましく、(メタ)アクリル酸リチウムを用いることがより好ましい。
【0022】
粒子状結着剤中の(メタ)アクリル酸塩単量体に由来する構成単位の含有量は、集電体と電極活物質層との密着性が良好な導電性接着剤層が得られ、また、得られるリチウムイオン二次電池の高温サイクル特性が良好となる観点から、粒子状結着剤は、単量体成分の合計を100重量部として、(メタ)アクリル酸塩単量体を、好ましくは1〜50重量部、より好ましくは5〜45重量部、さらに好ましくは10〜40重量部、特に好ましくは20〜40重量部含む単量体混合物を重合して得られたものである。なお、単量体の重合転化率は好ましくは90%以上、より好ましくは93%以上、さらに好ましくは95%以上であり、得られる重合体の単量体の構成単位割合は、仕込んだ単量体の混合比と一致する。
【0023】
また、本発明に用いる粒子状結着剤は、さらに(メタ)アクリルアミド単量体及び(メタ)アクリル酸塩単量体と共重合可能な単量体(以下、「第3モノマー」ということがある。)に由来する構成単位を含んでいてもよい。
【0024】
第3モノマーとしては、本発明の効果を著しく損なわない限り特に制限はないが、導電性カーボンの分散性が良好となり、また、得られるリチウムイオン二次電池の出力特性が良好となる観点から、ビニルアルコール、スチレン、(メタ)アクリロニトリルを好ましく用いることができる。ここで、(メタ)アクリロニトリルとは、アクリロニトリルおよびメタアクリロニトリルの両者を含む意味で用いられる。すなわち、(メタ)アクリロニトリルは、アクリロニトリルあるいはメタアクリロニトリルのいずれか一方であってもよく、また両者を同時に含むものであってもよい。これらの第3モノマーは、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0025】
粒子状結着剤中の第3モノマーに由来する構成単位の含有量は、導電性カーボンの分散性が良好となり、また、得られるリチウムイオン二次電池の出力特性が良好となる観点から、粒子状結着剤は、単量体成分の合計を100重量部として、第3モノマーを、好ましくは10〜50重量部、より好ましくは15〜45重量部、さらに好ましくは20〜40重量部含む単量体混合物を重合して得られたものである。なお、単量体の重合転化率は好ましくは90%以上、より好ましくは93%以上、さらに好ましくは95%以上であり、得られる重合体の単量体の構成単位割合は、仕込んだ単量体の混合比と一致する。
【0026】
接着剤組成物中の粒子状結着剤の含有割合は、集電体と電極活物質層との密着性が良好であり、得られる電気化学素子のサイクル特性が良好となる観点から、好ましくは0.5〜10重量%、より好ましくは1〜9重量%、さらに好ましくは2〜8重量%である。
【0027】
また、粒子状結着剤の体積平均粒子径は、接着剤組成物において導電性カーボン同士の密着性が向上する観点から、好ましくは5〜500nm、より好ましくは50〜400nm、さらに好ましくは100〜300nmである。
【0028】
(粒子状結着剤の製造)
粒子状結着剤の製法は特に限定はされないが、例えば、(メタ)アクリルアミド単量体及び(メタ)アクリル酸塩単量体、必要に応じて用いられる第3モノマーを含む単量体混合物を乳化重合して得ることができる。乳化重合の方法としては、特に限定されず、従来公知の乳化重合法を採用すれば良い。
【0029】
乳化重合に使用する重合開始剤としては、たとえば、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過リン酸カリウム、過酸化水素等の無機過酸化物;t−ブチルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、p−メンタンハイドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、イソブチリルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシイソブチレート等の有機過酸化物;アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル、アゾビスイソ酪酸メチル等のアゾ化合物等が挙げられる。
【0030】
これらのなかでも、無機過酸化物が好ましく使用できる。これらの重合開始剤は、それぞれ単独でまたは2種類以上を組み合わせて使用することができる。また、過酸化物開始剤は、重亜硫酸ナトリウム等の還元剤と組み合わせて、レドックス系重合開始剤として使用することもできる。
重合開始剤の使用量は、重合に使用する単量体混合物の全量100重量部に対して、好ましくは0.05〜5重量部、より好ましくは0.1〜2重量部である。
【0031】
得られる粒子状結着剤のテトラヒドロフラン不溶解分量を調節するために、乳化重合時に連鎖移動剤を使用することが好ましい。連鎖移動剤としては、たとえば、n−ヘキシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、t−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、n−ステアリルメルカプタン等のアルキルメルカプタン;ジメチルキサントゲンジサルファイド、ジイソプロピルキサントゲンジサルファイド等のキサントゲン化合物;ターピノレンや、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラメチルチウラムモノスルフィド等のチウラム系化合物;2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、スチレン化フェノール等のフェノール系化合物;アリルアルコール等のアリル化合物;ジクロルメタン、ジブロモメタン、四臭化炭素等のハロゲン化炭化水素化合物;チオグリコール酸、チオリンゴ酸、2−エチルヘキシルチオグリコレート、ジフェニルエチレン、α−メチルスチレンダイマーなどが挙げられる。
【0032】
これらのなかでも、アルキルメルカプタンが好ましく、t−ドデシルメルカプタンがより好ましく使用できる。これらの連鎖移動剤は、単独または2種以上組み合わせて使用することができる。連鎖移動剤の使用量は、単量体混合物100重量部に対して、好ましくは0.05〜2重量部、より好ましくは0.1〜1重量部である。
【0033】
乳化重合時に、さらにアニオン性界面活性剤を使用することが好ましい。アニオン性界面活性剤を使用することにより、重合安定性を向上させることができる。アニオン性界面活性剤としては、乳化重合において従来公知のものが使用できる。アニオン性界面活性剤の具体例としては、ナトリウムラウリルサルフェート、アンモニウムラウリルサルフェート、ナトリウムドデシルサルフェート、アンモニウムドデシルサルフェート、ナトリウムオクチルサルフェート、ナトリウムデシルサルフェート、ナトリウムテトラデシルサルフェート、ナトリウムヘキサデシルサルフェート、ナトリウムオクタデシルサルフェートなどの高級アルコールの硫酸エステル塩;ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ヘキサデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどのアルキルベンゼンスルホン酸塩;ラウリルスルホン酸ナトリウム、ドデシルスルホン酸ナトリウム、テトラデシルスルホン酸ナトリウムなどの脂肪族スルホン酸塩;などが挙げられる。
【0034】
アニオン性界面活性剤の使用量は、単量体混合物100重量部に対して、好ましくは0.5〜10重量部、より好ましくは1〜5重量部である。この使用量が少ないと、得られる粒子の粒子径が大きくなり、使用量が多いと粒子径が小さくなる傾向がある。また、アニオン性界面活性剤に加えて、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤などを併用することもできる。
【0035】
さらに乳化重合の際に、水酸化ナトリウム、アンモニアなどのpH調整剤;分散剤、キレート剤、酸素捕捉剤、ビルダー、粒子径調節のためのシードラテックスなどの各種添加剤を適宜使用することができる。特にシードラテックスを用いた乳化重合が好ましい。シードラテックスとは、乳化重合の際に反応の核となる微小粒子の分散液をいう。微小粒子は粒子径が100nm以下であることが多い。微小粒子は特に限定はされず、アクリル系重合体などの汎用の重合体が用いられる。シード重合法によれば、比較的粒子径の揃った粒子状結着剤が得られる。
【0036】
重合反応を行う際の重合温度は、特に限定されないが、通常、0〜100℃、好ましくは40〜80℃とする。このような温度範囲で乳化重合し、所定の重合転化率で、重合停止剤を添加したり、重合系を冷却したりして、重合反応を停止する。重合反応を停止する重合転化率は、好ましくは93重量%以上、より好ましくは95重量%以上である。
【0037】
重合反応を停止した後、所望により、未反応単量体を除去し、pHや固形分濃度を調整して、粒子状結着剤が分散媒に分散された形態(ラテックス)で得られる。その後、必要に応じ、分散媒を置換してもよく、また分散媒を蒸発し、粒子状結着剤を粉末形状で得ても良い。
【0038】
得られる粒子状結着剤の分散液には、公知の分散剤、増粘剤、老化防止剤、消泡剤、防腐剤、抗菌剤、ブリスター防止剤、pH調整剤などを必要に応じて添加することができる。
【0039】
(接着剤組成物)
本発明に係る電気化学素子電極用導電性接着剤組成物は、導電性カーボン、粒子状結着剤、及び水を含む。また、接着剤組成物は、導電性カーボン、粒子状結着剤が水に分散されたスラリー状の組成物であることが好ましい。
【0040】
各成分の含有割合は特に限定はされないが、各成分の分散性や塗工性の観点から、上記した含有割合であることが好ましい。即ち、接着剤組成物中の導電性カーボンの含有割合は好ましくは8〜38重量%、より好ましくは10〜35重量%、さらに好ましくは12〜30重量%であり、粒子状結着剤の含有割合は、好ましくは0.5〜10重量%、より好ましくは1〜9重量%、さらに好ましくは2〜8重量%である。残部は、水および必要に応じて添加される各種成分である。水の含有割合は、接着剤組成物の粘度を所望のものとし、均一な導電性接着剤層の形成が可能である観点から、好ましくは60〜90重量%、より好ましくは62〜88重量%、さらに好ましくは65〜85重量%である。 分散媒の含有割合が大きすぎると、接着剤組成物により形成される導電性接着剤層の導電性が低下し、また、接着剤組成物のアルミニウム等からなる集電体用基材に対する濡れ性が低下する。また、分散媒の含有割合が小さすぎると、接着剤組成物の粘度が増加し、塗工に適さない。
【0041】
分散媒として水を用いることにより、直接接着剤組成物を製造することができるため、製造工程の簡素化を図ることができる。また、水を分散媒として用いることにより、作業環境の向上を図ることができる。
【0042】
さらに本発明の電気化学素子電極用導電性接着剤組成物には、界面活性剤が含まれていても良い。界面活性剤としては、ノニオン系界面活性剤を好ましく用いることができる。ノニオン系界面活性剤としては、ポリオキシアルキレンアルキルアリールエーテル界面活性剤、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル界面活性剤、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル界面活性剤、ソルビタン脂肪酸エステル界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、アセチレンアルコール系界面活性剤、含フッ素界面活性剤等が挙げられる。
【0043】
ポリオキシアルキレンアルキルアリールエーテル界面活性剤としては、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテルを挙げることができる。
【0044】
ポリオキシアルキレンアルキルエーテル界面活性剤としては、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテルを挙げることができる。
【0045】
ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル界面活性剤としては、ポリオキシエチレンオレイン酸エステル、ポリオキシエチレンラウリン酸エステル、ポリオキシエチレンジステアリン酸エステルを挙げることができる。
【0046】
ソルビタン脂肪酸エステル界面活性剤としては、ソルビタンラウレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンセスキオレエート、ポリオキシエチレンモノオレエート、ポリオキシエチレンステアレート等を挙げることができる。
シリコーン系界面活性剤としては、ジメチルポリシロキサン等を挙げることができる。
【0047】
アセチレンアルコール系界面活性剤としては、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、3,6−ジメチル−4−オクチン−3,6−ジオール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3オール等を挙げることができる。
含フッ素系界面活性剤としては、フッ素アルキルエステル等を挙げることができる。
これらの界面活性剤は、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用できる。
【0048】
接着剤組成物における界面活性剤の含有割合は、接着剤組成物が集電体用基材にはじかれることなく、泡立ちが抑制され、均一な導電性接着剤層が得られる観点から、好ましくは0.05〜1重量%、より好ましくは0.1〜0.9重量%、さらに好ましくは0.2〜0.8重量%である。
【0049】
また、本発明の接着剤組成物は、防腐剤を含んでいることが好ましい。防腐剤の具体例としては、イソチアゾリン系化合物やハロゲン化脂肪族ニトロアルコールなどが挙げられるが、本発明において、イソチアゾリン系化合物を好ましく用いることができる。
【0050】
なお、本発明において、本発明の効果を妨げない範囲において、上記以外の防腐剤も使用することができ、さらに防腐剤は、それぞれ単独でまたは2種以上の組み合わせで使用することもできる。
【0051】
さらに、本発明の接着剤組成物には、上記の成分に加えて、上記以外のバインダー、増粘剤、老化防止剤、消泡剤、抗菌剤、ブリスター防止剤、pH調整剤などを必要に応じて添加することができる。
【0052】
(集電体)
本発明の集電体は、例えば、上記の接着剤組成物を集電体用基材上に塗布乾燥することにより得られる。即ち、集電体用基材上に導電性接着剤層を形成することにより得られる。
【0053】
集電体用基材の材料は、例えば、金属、炭素、導電性高分子などであり、好適には金属が用いられる。集電体用金属としては、通常、アルミニウム、白金、ニッケル、タンタル、チタン、ステンレス鋼、銅、その他の合金等が使用される。これらの中で導電性、耐電圧性の面から銅、アルミニウムまたはアルミニウム合金を使用するのが好ましい。
集電体用基材の厚みは、1〜100μmで、好ましくは2〜70μm、特に好ましくは5〜50μmである。
【0054】
導電性接着剤層の形成方法は、特に制限されない。例えば、ドクターブレード法、ディップ法、リバースロール法、ダイレクトロール法、グラビア法、エクストルージョン法、ハケ塗りなどによって、集電体用基材上に導電性接着剤層が形成される。また、剥離紙上に、導電性接着剤層を形成した後に、これを集電体用基材に転写してもよい。
【0055】
導電性接着剤層の乾燥方法としては、例えば温風、熱風、低湿風による乾燥、真空乾燥、(遠)赤外線や電子線などの照射による乾燥法が挙げられる。中でも、熱風による乾燥法、遠赤外線の照射による乾燥法が好ましい。乾燥温度と乾燥時間は、集電体用基材上に塗布した接着剤組成物中の分散媒(水)を完全に除去できる温度と時間が好ましく、乾燥温度は好ましくは50〜300℃、より好ましくは80〜250℃である。乾燥時間は、好ましくは2時間以下、より好ましくは5秒〜30分である。
【0056】
導電性接着剤層の厚みは、導電性接着剤層を介して電極活物質層と集電体とが良好に密着し、得られる電気化学素子の出力特性が良好となる観点から、好ましくは0.5〜5μm、より好ましくは0.6〜4μm、さらに好ましくは0.7〜3μmである。
導電性接着剤層は、接着剤組成物の固形分組成に応じた組成を有し、導電性カーボン、粒子状結着剤、及び必要に応じて用いられる成分を含む。
【0057】
(電気化学素子用電極)
本発明の電気化学素子用電極は、上記集電体の導電性接着剤層上に電極活物質層を有する。電極活物質層は、電極活物質および電極用バインダー、必要に応じて用いられる電極用導電材とからなり、これら成分を含む電極活物質層用スラリーを用いて形成される。
【0058】
(電極活物質)
電極活物質は負極活物質であってもよく、また正極活物質であってもよい。電極活物質は、電池内で電子の受け渡しをする物質である。
【0059】
正極活物質としては、リチウムイオンの吸蔵放出が可能な活物質が用いられ、リチウムイオン二次電池用の正極活物質としては、無機化合物からなるものと有機化合物からなるものとに大別される。
【0060】
無機化合物からなる正極活物質としては、遷移金属酸化物、遷移金属硫化物、リチウムと遷移金属とのリチウム含有複合金属酸化物などが挙げられる。上記の遷移金属としては、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Mo等が使用される。
【0061】
遷移金属酸化物としては、MnO、MnO
2、V
2O
5、V
6O
13、TiO
2、Cu
2V
2O
3、非晶質V
2O−P
2O
5、MoO
3等が挙げられる。
【0062】
遷移金属硫化物としては、TiS
2、TiS
3、非晶質MoS
2、FeS等が挙げられる。リチウム含有複合金属酸化物としては、層状構造を有するリチウム含有複合金属酸化物、スピネル構造を有するリチウム含有複合金属酸化物、オリビン型構造を有するリチウム含有複合金属酸化物などが挙げられる。
【0063】
層状構造を有するリチウム含有複合金属酸化物としては、リチウム含有コバルト酸化物(LiCoO
2、(以下、「LCO」ということがある。))、リチウム含有ニッケル酸化物(LiNiO
2)、Co−Ni−Mnのリチウム複合酸化物、Ni−Mn−Alのリチウム複合酸化物、Ni−Co−Alのリチウム複合酸化物、LiMaO
2とLi
2MbO
3の固溶体である、xLiMaO
2・(1−x)Li
2MbO
3 (0<x<1、Maは平均酸化状態が3+である一つ以上の遷移金属、Mbは平均酸化状態が4+である一つ以上の遷移金属)等が挙げられる。二次電池のサイクル特性を向上させるという観点からは、LiCoO
2、を用いることが好ましく、二次電池のエネルギー密度を向上させるという観点からは、LiMaO
2とLi
2MbO
3の固溶体が好ましい。また、LiMaO
2とLi
2MbO
3の固溶体としては、特に、xLiMaO
2・(1−x)Li
2MbO
3(0<x<1、Ma=Ni,Co,Mn,Fe,Ti等、Mb=Mn、Zr、Ti等)が好ましく、中でもxLiMaO
2・(1−x)Li
2MnO
3(0<x<1、Ma=Ni,Co,Mn,Fe,Ti等)が好ましい。また、容量が高く、入手しやすいという観点から、Co−Ni−Mnのリチウム複合酸化物を用いることが好ましい。
【0064】
スピネル構造を有するリチウム含有複合金属酸化物としては、リチウムマンガン複合酸化物であるマンガン酸リチウム(LiMn
2O
4)のMnの一部を他の遷移金属で置換したLi
a[Mn
2-xMd
x]O
4(ここでMdは平均酸化状態が4+である1つ以上の遷移金属、Md=Ni,Co,Fe,Cu,Cr等、0<x<1、0≦a≦1)等が挙げられる。スピネル構造を有するリチウム含有金属酸化物の中でも、MnをFeで置換したLi
aFe
xMn
2-xO
4-z(0≦a≦1、0<x<1、0≦z≦0.1)は、コストが安価であることから好ましく、MnをNiで置換したLiNi
0.5Mn
1.5O
4などは構造劣化の因子と考えられているMn
3+を全て置換することができ、Ni
2+からNi
4+への電気化学反応をすることから高い作動電圧で、かつ、高い容量を有することができるので、好ましい。
【0065】
オリビン型構造を有するリチウム含有複合金属酸化物としては、Li
yMcPO
4(式中、Mcは平均酸化状態が3+である1つ以上の遷移金属、Mc=Mn,Co,Fe等、0≦y≦2)であらわされるオリビン型燐酸リチウム化合物が挙げられる。Mn,CoまたはFeは他の金属で一部置換されていてもよく、置換しうる金属としてはCu,Mg,Zn,V,Ca,Sr,Ba,Ti,Al,Si,B及びMoなどが挙げられる。
【0066】
その他、Li
2MeSiO
4(ここでMeは、Fe,Mn)等のポリアニオン構造を有する正極活物質や、ペロブスカイト構造を有するLiFeF
3、斜方晶構造を有するLi
2Cu
2O
4などが挙げられる。
【0067】
有機化合物としては、例えば、ポリアセチレン、ポリ−p−フェニレンなどの導電性高分子を用いることもできる。電気伝導性に乏しい、鉄系酸化物は、還元焼成時に炭素源物質を存在させることで、炭素材料で覆われた電極活物質として用いてもよい。また、これら化合物は、部分的に元素置換したものであってもよい。正極活物質は、上記の無機化合物と有機化合物の混合物であってもよい。
【0068】
上述した正極活物質の中でも、高電位向けの活物質(高電位活物質)を用いることが好ましい。ここで、高電位向けの活物質とは、より高電位まで充電され得る活物質を表す。具体的には、リチウムに対して、通常4.0V以上、好ましくは4.2V以上、より好ましくは4.3V以上の電位まで充電され得るものが望ましい。ここで、「リチウムに対する電位」とは、リチウム金属が非水電解液中で示す電位に対しての値であり、「充電され得る電位」とは、それぞれの正極活物質を用いる正極の作動電位において高電位側の値を表す。
【0069】
正極活物質の好ましい具体例としては、オリビン型燐酸リチウム化合物、リチウム含有コバルト酸化物、リチウム含有ニッケル酸化物、およびリチウムマンガン複合酸化物などが挙げられる。また、さらに高電位まで充電し得る正極活物質として、リチウム−マンガン−ニッケル複合酸化物などを用いてもよい。これらの正極活物質は、作用電位が高いことに加えて電池容量も大きく、大きなエネルギー密度を有する。これらの中でも、より高電位まで充電され得る点で、リチウム含有コバルト酸化物、リチウム含有ニッケル酸化物及びリチウム−マンガン−ニッケル複合酸化物が好ましく、リチウム含有コバルト酸化物(LCO)が特に好ましい。
【0070】
負極活物質としては、グラファイトやコークス等の炭素の同素体が挙げられる。前記炭素の同素体からなる負極活物質は、金属、金属塩、酸化物などとの混合体や被覆体の形態で利用することも出来る。また、負極活物質としては、ケイ素、錫、亜鉛、マンガン、鉄、ニッケル等の酸化物や硫酸塩、金属リチウム、Li−Al、Li−Bi−Cd、Li−Sn−Cd等のリチウム合金、リチウム遷移金属窒化物、シリコーン等を使用できる。
【0071】
電極活物質の体積平均粒子径は、正極活物質、負極活物質ともに好ましくは0.01〜100μm、より好ましくは0.05〜50μm、さらに好ましくは0.1〜20μmである。これらの電極活物質は、それぞれ単独でまたは二種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0072】
(電極用導電材)
電極用導電材は、導電性を有し、電気二重層を形成し得る細孔を有さない、粒子状の炭素の同素体からなり、具体的には、カーボンブラック、ファーネスブラック、アセチレンブラック、及びケッチェンブラック(アクゾノーベルケミカルズベスローテンフェンノートシャップ社の登録商標)などの導電性カーボンが挙げられる。これらの中でも、アセチレンブラックおよびファーネスブラックが好ましい。
【0073】
(電極用バインダー)
電極用バインダーは、電極活物質、電極用導電材を相互に結着させることができる化合物であれば特に制限はない。好適な電極用バインダーは、溶媒に分散する性質のある分散型バインダーである。分散型バインダーとして、例えば、フッ素重合体、ジエン重合体、アクリレート重合体、ポリイミド、ポリアミド、ポリウレタン重合体等の高分子化合物が挙げられ、フッ素重合体、ジエン重合体又はアクリレート重合体が好ましく、ジエン重合体又はアクリレート重合体が、耐電圧を高くでき、かつリチウムイオン二次電池のエネルギー密度を高くすることができる点でより好ましい。
ジエン重合体は、共役ジエンの単独重合体もしくは共役ジエンを含む単量体混合物を重合して得られる共重合体、またはそれらの水素添加物である。
【0074】
前記単量体混合物における共役ジエンの割合は、好ましくは40重量%以上、より好ましくは50重量%以上、さらに好ましくは60重量%以上である。ジエン重合体の具体例としては、ポリブタジエンやポリイソプレンなどの共役ジエン単独重合体;カルボキシ変性されていてもよいスチレン・ブタジエン共重合体(SBR)などの芳香族ビニル・共役ジエン共重合体;アクリロニトリル・ブタジエン共重合体(NBR)などのシアン化ビニル・共役ジエン共重合体;水素化SBR、水素化NBR等が挙げられる。
【0075】
アクリレート重合体は、一般式(1):CH
2=CR
1−COOR
2(式(1)中、R
1は水素原子またはメチル基を、R
2はアルキル基またはシクロアルキル基を表す。)で表される化合物を含む単量体混合物を重合して得られる重合体である。一般式で表される化合物の具体例としては、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、n−アミルアクリレート、イソアミルアクリレート、ヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ヘキシルアクリレート、ノニルアクリレート、ラウリルアクリレート、ステアリルアクリレートなどのアクリレート;エチルメタクリレート、n−プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、t−ブチルメタクリレート、n−アミルメタクリレート、イソアミルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、オクチルメタクリレート、イソデシルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、トリデシルメタクリレート、ステアリルメタクリレートなどのメタアクリレート等が挙げられる。これらの中でも、アクリレートが好ましく、ブチルアクリレートおよび2−エチルヘキシルアクリレートが、得られる電極の強度を向上できる点で、特に好ましい。アクリレート重合体中のアクリル酸エステルおよび/またはメタクリル酸エステル由来の単量体単位の割合は、耐熱性が高く、かつ得られる電気化学素子用電極の内部抵抗を小さくできる観点から、好ましくは50重量%以上、より好ましくは70重量%以上である。
【0076】
前記アクリレート重合体は、一般式(1)で表される化合物の他に、共重合可能なカルボン酸基含有単量体を用いることができ、具体例としては、アクリル酸、メタクリル酸などの一塩基酸含有単量体、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などの二塩基酸含有単量体が挙げられる。なかでも、二塩基酸含有単量体が好ましく、導電性接着剤層との結着性を高め、電極強度を向上できる点で、イタコン酸が特に好ましい。これらの一塩基酸含有単量体、二塩基酸含有単量体は、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用できる。共重合の際の、前記単量体混合物におけるカルボン酸基含有単量体の量は、導電性接着剤層との結着性に優れ、得られる電極強度が高まる観点から、一般式(1)で表される化合物100重量部に対して、好ましくは0.1〜50重量部、より好ましくは0.5〜20重量部、さらに好ましくは1〜10重量部である。
【0077】
前記アクリレート重合体は、一般式(1)で表される化合物の他に、共重合可能なニトリル基含有単量体を用いることができる。ニトリル基含有単量体の具体例としては、アクリロニトリルやメタクリロニトリルなどが挙げられ、中でもアクリロニトリルが、導電性接着剤層との結着性が高まり、電極強度が向上できる点で好ましい。共重合の際の、前記単量体混合物におけるアクリロニトリルの量は、導電性接着剤層との結着性に優れ、得られる電極強度が高まる観点から、一般式(1)で表される化合物100重量部に対して、好ましくは0.1〜40重量部、より好ましくは0.5〜30重量部、さらに好ましくは1〜20重量部である。
【0078】
電極用バインダーの形状は、特に制限はないが、導電性接着剤層との結着性が良く、また、作成した電極の容量の低下や充放電の繰り返しによる劣化を抑えることができるため、粒子状であることが好ましい。
【0079】
電極用バインダーのガラス転移温度(Tg)は、少量の使用量で結着性に優れ、電極強度が強く、柔軟性に富み、電極形成時のプレスエ程により電極密度を容易に高めることができる観点から、好ましくは50℃以下、さらに好ましくは−40〜0℃である。
【0080】
電極用バインダーが粒子状である場合、その数平均粒子径は、格別な限定はないが、少量の使用でも優れた結着力を電極に与えることができる観点から、好ましくは0.0001〜100μm、より好ましくは0.001〜10μm、さらに好ましくは0.01〜1μmである。ここで、数平均粒子径は、透過型電子顕微鏡写真で無作為に選んだ電極用バインダー粒子100個の径を測定し、その算術平均値として算出される個数平均粒子径である。粒子の形状は球形、異形、どちらでもかまわない。これらの電極用バインダーは単独でまたは二種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0081】
電極用バインダーの使用量は、得られる電極活物質層と導電性接着剤層との密着性が十分に確保でき、リチウムイオン二次電池の容量を高く且つ内部抵抗を低くすることができる観点から、電極活物質100重量部に対して、好ましくは0.1〜50重量部、より好ましくは0.5〜20重量部、さらに好ましくは1〜10重量部である。
【0082】
(電極活物質層)
電極活物質層は、導電性接着剤層上に設けられるが、その形成方法は制限されない。電極活物質層用スラリーは、電極活物質及び電極用バインダーを必須成分として、必要に応じて電極用導電材、その他の分散剤および添加剤を配合することができる。その他の分散剤の具体例としては、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロースおよびヒドロキシプロピルセルロースなどのセルロース系ポリマー、ならびにこれらのアンモニウム塩またはアルカリ金属塩;ポリ(メタ)アクリル酸ナトリウムなどのポリ(メタ)アクリル酸塩;ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド、ポリビニルピロリドン、ポリカルボン酸、酸化スターチ、リン酸スターチ、カゼイン、各種変性デンプンなどが挙げられる。
【0083】
これらの分散剤は、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用できる。中でも、セルロース系ポリマーが好ましく、カルボキシメチルセルロースまたはそのアンモニウム塩もしくはアルカリ金属塩が特に好ましい。これらの分散剤の量は、格別な限定はないが、電極活物質100重量部に対して、好ましくは0.1〜10重量部、より好ましくは0.5〜5重量部、さらに好ましくは0.8〜2重量部である。
【0084】
電極活物質層を形成する場合、ペースト状の電極活物質層用スラリーは、電極活物質および電極用バインダーの必須成分、並びに必要に応じて用いられる電極用導電材、分散剤および添加剤を、水またはN−メチル−2−ピロリドンやテトラヒドロフランなどの有機溶媒中で混練することにより製造することができる。
【0085】
電極活物質層用スラリーを得るために用いる溶媒は、特に限定されないが、上記の分散剤を用いる場合には、分散剤を溶解可能な溶媒が好適に用いられる。具体的には、通常水が用いられるが、有機溶媒を用いることもできるし、水と有機溶媒との混合溶媒を用いてもよい。有機溶媒としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール等のアルキルアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン等のアルキルケトン類;テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジグライム等のエーテル類;ジエチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルイミダゾリジノン等のアミド類;ジメチルスルホキサイド、スルホラン等のイオウ系溶剤;等が挙げられる。この中でも有機溶媒としては、アルコール類が好ましい。電極活物質層用スラリーは、電極活物質層の乾燥の容易さと環境への負荷に優れる点から水を分散媒とした水系スラリーが好ましい。水と、水よりも沸点の低い有機溶媒とを併用すると、乾燥速度を速くすることができる。また、水と併用する有機溶媒の量または種類によって、バインダーの分散性または分散剤の溶解性が変わる。これにより、スラリーの粘度や流動性を調整することができ、生産効率を向上させることができる。
【0086】
スラリーを調製するときに使用する溶媒の量は、各成分を均一に分散させる観点から、スラリーの固形分濃度が、好ましくは1〜90重量%、より好ましくは5〜85重量%、さらに好ましくは10〜80重量%となる量である。
【0087】
電極活物質および電極用バインダー、必要に応じて用いられる電極用導電材、その他の分散剤や添加剤を溶媒に分散または溶解する方法または手順は特に限定されず、例えば、溶媒に電極活物質、電極用導電材、電極用バインダーおよびその他の分散剤や添加剤を添加し混合する方法;溶媒に分散剤を溶解した後、溶媒に分散させた電極用バインダーを添加して混合し、最後に電極活物質および電極用導電材等を添加して混合する方法;溶媒に分散させたバインダーに電極活物質および電極用導電材等を添加して混合し、この混合物に溶媒に溶解させた分散剤を添加して混合する方法等が挙げられる。混合の手段としては、例えば、ボールミル、サンドミル、ビーズミル、顔料分散機、らい潰機、超音波分散機、ホモジナイザー、ホモミキサー、プラネタリーミキサー等の混合機器が挙げられる。混合は、好ましくは、室温〜80℃で、10分〜数時間行う。
【0088】
電極活物質層用スラリーの粘度は、室温において、生産性を上げる観点から、好ましくは10〜100,000mPa・s、より好ましくは30〜50,000mPa・s、さらに好ましくは50〜20,000mPa・sである。
【0089】
電極活物質層用スラリーの導電性接着剤層上への塗布方法は特に制限されない。例えば、ドクターブレード法、ディップ法、リバースロール法、ダイレクトロール法、グラビア法、エクストルージョン法、ハケ塗り法などの方法が挙げられる。電極活物質層用スラリーの塗布厚は、目的とする電極活物質層の厚みに応じて適宜に設定される。
【0090】
乾燥方法としては例えば温風、熱風、低湿風による乾燥、真空乾燥、(遠)赤外線や電子線などの照射による乾燥法が挙げられる。中でも、遠赤外線の照射による乾燥法が好ましい。乾燥温度と乾燥時間は、集電体の導電性接着剤層状に塗布した電極活物質層用スラリー中の溶媒を完全に除去できる温度と時間が好ましく、乾燥温度としては好ましくは100〜300℃、より好ましくは120〜250℃である。乾燥時間としては、好ましくは10分〜100時間、より好ましくは20分〜20時間である。
【0091】
電極活物質層の密度は、特に制限されないが、好ましくは0.30〜10g/cm
3、より好ましくは0.35〜8.0g/cm
3、さらに好ましくは0.40〜6.0g/cm
3である。また、電極活物質層の厚みは、特に制限されないが、好ましくは5〜1000μm、より好ましくは20〜500μm、さらに好ましくは30〜300μmである。
【0092】
(電気化学素子)
前記電気化学素子用電極の使用態様としては、かかる電極を用いたリチウムイオン二次電池、電気二重層キャパシタ、リチウムイオンキャパシタ、ナトリウム電池、マグネシウム電池などが挙げられ、リチウムイオン二次電池が好適である。たとえばリチウムイオン二次電池は、上記電気化学素子用電極、セパレーターおよび電解液で構成される。
【0093】
(セパレーター)
セパレーターは、電気化学素子用電極の間を絶縁でき、陽イオンおよび陰イオンを通過させることができるものであれば特に限定されない。具体的には、(a)気孔部を有する多孔性セパレーター、(b)片面または両面に高分子コート層が形成された多孔性セパレーター、または(c)無機セラミック粉末を含む多孔質の樹脂コート層が形成された多孔性セパレーターが挙げられる。これらの非制限的な例としては、ポリプロピレン系、ポリエチレン系、ポリオレフィン系、またはアラミド系多孔性セパレーター、ポリビニリデンフルオリド、ポリエチレンオキシド、ポリアクリロニトリルまたはポリビニリデンフルオリドヘキサフルオロプロピレン共重合体などの固体高分子電解質用またはゲル状高分子電解質用の高分子フィルム、ゲル化高分子コート層がコートされたセパレーター、または無機フィラー、無機フィラー用分散剤からなる多孔膜層がコートされたセパレーターなどを用いることができる。セパレーターは、上記一対の電極活物質層が対向するように、電気化学素子用電極の間に配置され、素子が得られる。セパレーターの厚みは、使用目的に応じて適宜選択されるが、好ましくは1〜100μm、より好ましくは10〜80μm、さらに好ましくは20〜60μmである。
【0094】
(電解液)
電解液は、特に限定されないが、例えば、非水系の溶媒に支持電解質としてリチウム塩を溶解したものが使用できる。リチウム塩としては、例えば、LiPF
6、LiAsF
6、LiBF
4、LiSbF
6、LiAlCl
4、LiClO
4、CF
3SO
3Li、C
4F
9SO
3Li、CF
3COOLi、(CF
3CO)
2NLi、(CF
3SO
2)
2NLi、(C
2F
5SO
2)NLiなどのリチウム塩が挙げられる。特に溶媒に溶けやすく高い解離度を示すLiPF
6、LiClO
4、CF
3SO
3Liは好適に用いられる。これらは、単独、または2種以上を混合して用いることができる。支持電解質の量は、電解液に対して、好ましくは1重量%以上、より好ましくは5重量%以上、また好ましくは30重量%以下、より好ましくは20重量%以下である。支持電解質の量が少なすぎても多すぎてもイオン導電度は低下し電池の充電特性、放電特性が低下する。
【0095】
電解液に使用する溶媒としては、支持電解質を溶解させるものであれば特に限定されないが、通常、ジメチルカーボネート(DMC)、エチレンカーボネート(EC)、ジエチルカーボネート(DEC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)、およびメチルエチルカーボネート(MEC)などのアルキルカーボネート類;γ−ブチロラクトン、ギ酸メチルなどのエステル類、1,2−ジメトキシエタン、およびテトラヒドロフランなどのエーテル類;スルホラン、およびジメチルスルホキシドなどの含硫黄化合物類;が用いられる。特に高いイオン伝導性が得易く、使用温度範囲が広いため、ジメチルカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネートが好ましい。これらは、単独、または2種以上を混合して用いることができる。また、電解液には添加剤を含有させて用いることも可能である。また、添加剤としてはビニレンカーボネート(VC)などのカーボネート系の化合物が好ましい。
【0096】
上記以外の電解液としては、ポリエチレンオキシド、ポリアクリロニトリルなどのポリマー電解質に電解液を含浸したゲル状ポリマー電解質や、硫化リチウム、LiI、Li
3Nなどの無機固体電解質を挙げることができる。
【0097】
リチウムイオン二次電池は、負極と正極とをセパレーターを介して重ね合わせ、これを電池形状に応じて巻く、折るなどして電池容器に入れ、電池容器に電解液を注入して封口して得られる。さらに必要に応じてエキスパンドメタルや、ヒューズ、PTC素子などの過電流防止素子、リード板などを入れ、電池内部の圧力上昇、過充放電の防止をすることもできる。電池の形状は、ラミネートセル型、コイン型、ボタン型、シート型、円筒型、角形、扁平型などいずれであってもよい。
【実施例】
【0098】
以下、実施例および比較例により本発明をさらに具体的に説明するが、これらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例および比較例における部および%は、特に断りのない限り重量基準である。実施例および比較例における各特性は、下記の方法に従い測定した。
【0099】
(高温サイクル特性)
実施例および比較例で製造したラミネート型セルのリチウムイオン二次電池を24時間静置させた後に、4.25V、0.1Cの充放電レートにて充放電の操作を行い、初期容量C
0を測定した。さらに、60℃の環境下で充放電を繰り返し、100サイクル後の容量C
2を測定した。高温サイクル特性は、ΔC
C=C
2/C
0×100(%)で示す充放電容量保持率ΔC
Cを、下記基準により評価した。結果を表1に示す。この充放電容量保持率ΔC
Cの値が高いほど、高温サイクル特性に優れることを示す。
A:充放電容量保持率が80%以上
B:充放電容量保持率が75%以上80%未満
C:充放電容量保持率が70%以上75%未満
D:充放電容量保持率が70%未満
【0100】
(低温出力特性)
実施例および比較例で製造したラミネート型セルのリチウムイオン二次電池を25℃の環境下で24時間静置させた後に、25℃の環境下で、4.25V、0.1C、5時間の充電の操作を行い、その時の電圧V
0を測定した。その後、−10℃環境下で、1Cの放電レートにて放電の操作を行い、放電開始15秒後の電圧V
1を測定した。低温出力特性は、ΔV=V
0−V
1で示す電圧降下を下記基準に評価し、結果を表1に示した。この値が小さいほど低温出力特性に優れることを示す。
A:電圧降下ΔVが100mV以上120mV未満
B:電圧降下ΔVが120mV以上140mV未満
C:電圧降下ΔVが140mV以上160mV未満
D:電圧降下ΔVが160mV以上180mV未満
E:電圧降下ΔVが180mV以上200mV未満
F:電圧降下ΔVが200mV以上
【0101】
また、実施例及び比較例において粒子状結着剤の体積平均粒子径として、レーザー回折式粒度分布測定装置(LS 13 320 ベックマンコールター社製)により測定した平均粒子径の体積分布から求めた、D50の値を用いた。
【0102】
(実施例1)
(粒子状結着剤の製造)
窒素雰囲気下(窒素気流下)において、攪拌機、温度計、冷却管を装着した反応容器に、イオン交換水、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを加え、60℃まで加熱し、保温した。60℃に達した所で、重合開始剤として過硫酸アンモニウムを加え、N−メチロール基を有するアクリルアミド単量体(N−メチロールアクリルアミド)40部、メタクリル酸リチウム30部及びビニルアルコール30部を、昇温しながら2時間かけて滴下した。
【0103】
滴下後70℃で5時間激しく攪拌し、同温度で保温した。単量体の重合転化率は95%であった。室温(25℃)に冷却後、反応液をろ別した。粒子状結着剤が、水及びドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムに分散したエマルションを得た。また、この粒子状結着剤の粒子径を測定したところ、130nmであった。
【0104】
(接着剤組成物の製造)
イオン交換水にノニオン系界面活性剤0.3部を溶かした水溶液へ、導電性カーボンA(グラファイト/アセチレンブラック=50/50、平均粒子径2μm)を18.5部及び導電性カーボンB(グラフェン)を1.2部添加し、ディスパーを使用して1500rpmで15分間撹拌した後、粒子状結着剤を固形分相当で7部添加して、さらにディスパーにて1500rpmで15分間撹拌した。さらにイオン交換水の量が73部となるようにイオン交換水を加え、接着剤組成物を作製した。
【0105】
(導電性接着剤層の形成)
アルミニウムからなる集電体用基材に前記導電性接着剤を、キャスト法を用いてロールバーにて20m/分の成形速度で集電体用基材上に塗布し、60℃で1分間、引き続き120℃で2分間乾燥して、厚さ1μmの導電性接着剤層を形成した。これにより集電体用基材上に導電性接着剤層が形成された集電体を得た。
【0106】
(電極の作製)
プラネタリーミキサーにコバルト酸リチウム100部、アセチレンブラック2部(電気化学工業社製、HS−100)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)2部(クレハ社製、KF−1100)、さらに全固形分濃度が67%となるようにN−メチル−2−ピロリドンを加えて混合し、正極用の電極活物質層用スラリーを調製した。
【0107】
前記にて導電性接着剤層を形成したアルミニウム集電体に前記正極用の電極活物質層用スラリーを20m/分の成形速度で集電体の導電性接着剤層上に塗布し、120℃で5分間乾燥した後、5cm正方に打ち抜いて、厚さ100μmの電極活物質層を有するリチウムイオン二次電池用の正極を得た。
【0108】
一方負極の活物質として、体積平均粒子径が3.7μmであるグラファイト(KS−6:ティムカル社製)を100部、分散剤としてカルボキシメチルセルロースアンモニウムの1.5%水溶液(DN−800H:ダイセル化学工業社製)を固形分相当で2.0部、電極用導電材としてアセチレンブラック(デンカブラック粉状:電気化学工業社製)を5部、電極用バインダーとしてガラス転移温度が−48℃で、数平均粒子径が0.18μmのジエン重合体の40%水分散体を固形分相当で3.0部、およびイオン交換水を全固形分濃度が35%となるように混合し、負極用の電極活物質層用スラリーを調製した。
【0109】
コンマコーターを用いて、上記負極用の電極活物質層用スラリーを厚さ18μmの銅箔の片面に乾燥後の膜厚が100μm程度になるように塗布した。そして、60℃で20分乾燥後、150℃で20分間加熱処理して負極活物質層を形成した。次いで、ロールプレスで圧延して5.2cm正方に打ち抜いて、片面厚さ50μmのリチウムイオン二次電池用の負極を得た。
【0110】
(リチウムイオン二次電池の製造)
前記正極、負極及びセパレーターを用いて、積層型ラミネートセル形状のリチウムイオン二次電池を作製した。電解液としてはエチレンカーボネート、ジエチルカーボネートを体積比で1:2とした混合溶媒にLiPF
6を1.0mol/リットルの濃度で溶解させたものを用いた。得られたリチウムイオン二次電池について高温サイクル特性及び低温出力特性の評価を行った。
【0111】
(実施例2)
粒子状結着剤の製造において、ビニルアルコールに代えて、スチレンを用いた以外は実施例1と同様に粒子状結着剤の製造を行った。単量体の重合転化率は95%であった。また、実施例2において得られた粒子状結着剤を用いた以外は、実施例1と同様に接着剤組成物の製造、導電性接着剤層の形成、電極の作製及びリチウムイオン二次電池の製造を行った。
【0112】
(
参考例3)
粒子状結着剤の製造において、ビニルアルコールに代えて、アクリロニトリルを用い、粒子状結着剤の製造における単量体の仕込み組成をN−メチロールアクリルアミド33部、メタクリル酸リチウム17部及びアクリロニトリル50部とした以外は実施例1と同様に粒子状結着剤の製造を行った。単量体の重合転化率は95%であった。また、
参考例3において得られた粒子状結着剤を用いた以外は、実施例1と同様に接着剤組成物の製造、導電性接着剤層の形成、電極の作製及びリチウムイオン二次電池の製造を行った。
【0113】
(実施例4)
粒子状結着剤の製造において、N−メチロール基を有するアクリルアミド単量体(N−メチロールアクリルアミド)に代えて、第一級アミンのアクリルアミド単量体を用い、さらにメタクリル酸リチウムに代えてメタクリル酸ナトリウムを用いた以外は実施例1と同様に粒子状結着剤の製造を行った。単量体の重合転化率は95%であった。また、実施例4において得られた粒子状結着剤を用いた以外は、実施例1と同様に接着剤組成物の製造、導電性接着剤層の形成、電極の作製及びリチウムイオン二次電池の製造を行った。
【0114】
(実施例5)
粒子状結着剤の製造において、N−メチロール基を有するアクリルアミド単量体(N−メチロールアクリルアミド)に代えて、第一級アミンのアクリルアミド単量体を用いた以外は実施例1と同様に粒子状結着剤の製造を行った。単量体の重合転化率は95%であった。
【0115】
また、実施例5において得られた粒子状結着剤を用い、さらにグラフェンに代えてカーボンナノチューブ(以下、「CNT」ということがある。)を用いた以外は、実施例1と同様に接着剤組成物の製造を行った。
【0116】
また、実施例5において得られた接着剤組成物を用いた以外は、実施例1と同様に導電性接着剤層の形成、電極の作製及びリチウムイオン二次電池の製造を行った。
【0117】
(実施例6)
粒子状結着剤の製造における単量体の仕込み組成をN−メチロールアクリルアミド50部、メタクリル酸リチウム30部、及びビニルアルコール20部とした以外は実施例1と同様に粒子状結着剤の製造を行った。単量体の重合転化率は95%であった。また、実施例6において得られた粒子状結着剤を用いた以外は、実施例1と同様に接着剤組成物の製造、導電性接着剤層の形成、電極の作製及びリチウムイオン二次電池の製造を行った。
【0118】
(実施例7)
粒子状結着剤の製造における単量体の仕込み組成をN−メチロールアクリルアミド20部、メタクリル酸リチウム40部、及びビニルアルコール40部とした以外は実施例1と同様に粒子状結着剤の製造を行った。単量体の重合転化率は95%であった。また、実施例7において得られた粒子状結着剤を用いた以外は、実施例1と同様に接着剤組成物の製造、導電性接着剤層の形成、電極の作製及びリチウムイオン二次電池の製造を行った。
【0119】
(比較例1)
粒子状結着剤の製造において、メタクリル酸リチウムを用いず、粒子状結着剤の製造における単量体の仕込み組成をN−メチロール基を有するアクリルアミド単量体(N−メチロールアクリルアミド)70部及びビニルアルコール30部とした以外は実施例1と同様に粒子状結着剤の製造を行った。単量体の重合転化率は95%であった。また、比較例1において得られた粒子状結着剤を用いた以外は、実施例1と同様に接着剤組成物の製造、導電性接着剤層の形成、電極の作製及びリチウムイオン二次電池の製造を行った。
【0120】
(比較例2)
粒子状結着剤の製造において、N−メチロールアクリルアミドを用いず、粒子状結着剤の製造における単量体の仕込み組成をメタクリル酸リチウム70部及びビニルアルコール30部とした以外は実施例1と同様に粒子状結着剤の製造を行った。単量体の重合転化率は95%であった。また、比較例2において得られた粒子状結着剤を用いた以外は、実施例1と同様に接着剤組成物の製造、導電性接着剤層の形成、電極の作製及びリチウムイオン二次電池の製造を行った。
【0121】
【表1】
【0122】
表1に示すように、導電性カーボン、粒子状結着剤、及び水を含み、前記粒子状結着剤が(メタ)アクリルアミド単量体及び(メタ)アクリル酸塩単量体に由来する構成単位を含む重合体である接着剤組成物を用いて形成された導電性接着剤層を有するリチウムイオン二次電池の高温サイクル特性及び低温出力特性は良好であった。