(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
窓層兼支持基板と、該窓層兼支持基板上に設けられ、第二導電型の第二半導体層と、活性層と、第一導電型の第一半導体層とをこの順に含む発光部とを有する発光素子において、
前記第一半導体層上に、第一選択エッチング層を介して設けられた第一オーミック電極を有し、
前記第一半導体層の表面及び前記発光部の側面の少なくとも一部は絶縁保護膜で被覆され、前記第一半導体層の表面及び前記窓層兼支持基板の表面が粗面化されているものであることを特徴とする発光素子。
基板上に、第二選択エッチング層と第一選択エッチング層を少なくとも有する選択エッチング層を形成する工程と、該選択エッチング層の上に前記基板と格子整合系の材料で第一半導体層、活性層、第二半導体層を順次エピタキシャル成長により成長させて発光部を形成する工程と、該発光部の上に前記基板に対して非格子整合系の材料で窓層兼支持基板をエピタキシャル成長により形成する工程と、前記基板及び前記第二選択エッチング層を除去して、前記第一半導体層の表面に前記第一選択エッチング層のみを残留させる工程と、前記第一選択エッチング層の表面に第一オーミック電極を形成する工程と、前記第一オーミック電極の下部以外の領域の前記第一選択エッチング層を除去する工程と、前記第一半導体層の表面に粗面処理を行う第一粗面処理工程と、前記発光部の一部の少なくとも前記第一半導体層と前記活性層を除去して除去部と、それ以外の非除去部を形成する素子分離工程と、前記除去部の窓層兼支持基板上に第二オーミック電極を形成する工程と、前記第一半導体層表面及び前記発光部の側面の少なくとも一部を絶縁保護膜で被覆する工程と、前記窓層兼支持基板の表面及び側面を粗面化する第二粗面処理工程を含むことを特徴とする発光素子の製造方法。
【背景技術】
【0002】
近年、発光ダイオード(LED)の高効率化が進み、照明器具への適用が進んでいる。従来の照明器具はInGaN系の青色LEDと蛍光剤を組み合わせた器具がほとんどであった。しかし、蛍光剤を使用した際には原理的にストークスロスの発生が避けられず、蛍光剤が受光した全ての光を別の波長に変換はできない問題があった。特に青色より相対的に長波長の黄色や赤色といった領域でこの問題が顕著である。
【0003】
この問題を解決するために、黄色や赤色LEDと青色LEDを組み合わせる技術が近年採用されている。その際、COB(chip on board)型のように一方の面に光を取り出すのではなく、ボードの上にLEDを並べてフィラメント型で発光させる電球タイプの照明器具が普及しつつある。このタイプの器具に適用するLED素子は、フィラメント全面にわたって光を取り出す必要があるため、素子の一方に光を取り出すタイプは適しておらず、チップ全球に光を取り出す配光を有する素子が理想的である。
【0004】
青色LEDであるInGaN系LEDはサファイア基板を用いるのが一般的であり、サファイア基板は発光波長に対して透明であるため、前述の照明器具に対しては理想的な形態になっている。しかし、黄色や赤色のLEDにおいては、発光波長に対して光吸収基板となるGaAsやGeを出発基板にしており、前記の用途には適さない。
【0005】
この問題を解決するために、特許文献1に示すように発光部に透明基板を接合する方法や、特許文献2に示すように支持基板に用いられるような厚さまで窓層を成長し、光吸収基板である出発基板を除去してLEDにする技術が開示されている。
【0006】
特許文献1で開示される方法では、必要な厚さ以上の透明基板を接合する必要があり、接合後に基板を所定の厚さまで削る必要があるため、コストアップの要因となる。また、通常、接合に用いられる基板は200μm以上の厚さがある。LED素子に要求される膜厚は、配光特性及び他の素子とのアセンブリ性を考慮すると、せいぜい100μm前後であるため、この程度の厚さまで薄膜化加工する必要がある。薄膜化加工にあたり、加工を行うことによる工数の増加、及び、ウェーハが割れるリスクも増大し、コストアップ及び歩留まり低下要因となる。
【0007】
一方、特許文献2に開示される支持基板に用いることができる厚さまで結晶成長により成長した窓層を支持基板として利用する方法では、所望の厚さまで窓層を成長すればよく、薄膜化加工や基板接合・接着の工程が不要のため、低コストでの形成が可能であり、優れた方法である。
【0008】
また、前述のような透明支持基板を有する発光素子においては、発光素子内部での多重反射を防止し、光吸収を抑制することで発光効率を上げる手法が取られるのが一般的である。特許文献3では、厚い窓層兼電流拡散層と厚い窓層兼支持基板が発光部を挟む構造において、窓層兼電流拡散層及び窓層兼支持基板に粗面をかけ、発光部には粗面をかけない方法が提案されている。ただ、この方法は窓層兼電流拡散層部を貫通する深いトレンチを形成する必要があり、コストがかかるだけでなく、上部と下部の電極の高低差が大きすぎるため、ワイヤーボンディングを行うことが難しい。フリップチップ型に適用するに際しても、厚い絶縁膜と非常に長い金属ビアを形成する必要があり、コストアップ要因となる。従って、上部電極部である窓層兼電流拡散層部が薄いことが望まれる。
【0009】
窓層兼電流拡散層の厚さが薄く、上部電極部と下部電極部の高低差が少なく、かつ、光取り出し部もしくは光反射部に粗面を有する開示技術として、特許文献4及び5が挙げられる。特許文献4では、光取り出し面側と反対側のn型半導体層表面に粗面を形成しているが、フリップチップ型への技術開示であり、電極側から窓層側への効率的な光反射を目的としている。また、窓層兼支持基板と発光部両者へ粗面をかけることの難しさが開示されている。
【0010】
特許文献5では、発光部表面に粗面が施されており、発光部側面に異なる角度のメサ形状あるいは単純なメサ形状を有する技術が開示されている。この場合、基板には粗面を必要としない反射型の構造が採用されている。また、発光部表面はフォトリソグラフィーにより2μm周期等の凹凸を形成する技術が開示されている。
【0011】
一方、窓層兼支持基板をエピタキシャル成長で形成した場合、格子不整に起因して基板は大きく反っており、たとえ密着露光法を採用したとしてもフォトリソグラフィー法では発光部表面に2μm以下のピッチの均一パターンを形成することが極めて困難である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
窓層兼支持基板部と発光部を有する発光素子において、発光効率は今だに十分とは言えない。しかしながら、発光部表面に細線電極が設けられている場合、発光効率を向上させるために、発光部表面に粗面処理を行うと、細線電極の下部にオーバーエッチングが生じ、電極の剥離が生じてしまうという問題がある。
【0014】
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであって、窓層兼支持基板と発光部を有し、素子分離を行う発光素子において、発光部表面の電極の剥離を抑制しつつ、発光効率を向上させた発光素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するために、窓層兼支持基板と、該窓層兼支持基板上に設けられ、第二導電型の第二半導体層と、活性層と、第一導電型の第一半導体層とをこの順に含む発光部とを有する発光素子において、
前記第一半導体層上に、第一選択エッチング層を介して設けられた第一オーミック電極を有し、
前記第一半導体層の表面及び前記発光部の側面の少なくとも一部は絶縁保護膜で被覆され、前記第一半導体層の表面及び前記窓層兼支持基板の表面が粗面化されているものであることを特徴とする発光素子を提供する。
【0016】
このような発光素子であれば、発光部表面の電極の剥離が抑制され、第一半導体層の表面だけでなく、窓層兼支持基板の表面が粗面化されているため、粗面化される面積をより大きく取ることができるので、光取り出し量が更に増加した発光素子となる。
【0017】
このとき、前記発光部が除去された除去部と、該除去部以外の非除去部と、該非除去部の前記第一半導体層上に、前記第一選択エッチング層を介して設けられた前記第一オーミック電極を有し、
前記除去部の前記窓層兼支持基板上に設けられた第二オーミック電極とを有するものであることが好ましい。
このようなものであれば、光取り出し量が更に増加した発光素子となるとともに、本発明が特に有効に作用する。
【0018】
このとき、前記窓層兼支持基板はGaP、GaAsP、AlGaAs、サファイア(Al
2O
3)、石英(SiO
2)、SiCのいずれかからなり、前記第一半導体層、前記活性層、前記第二半導体層がAlGaInPまたはAlGaAsからなるものであることが好ましい。
このように、窓層兼支持基板、第一半導体層、活性層、第二半導体層として、上記のような材料を好適に用いることができる。
【0019】
また、本発明によれば、基板上に、第二選択エッチング層と第一選択エッチング層を少なくとも有する選択エッチング層を形成する工程と、該選択エッチング層の上に前記基板と格子整合系の材料で第一半導体層、活性層、第二半導体層を順次エピタキシャル成長により成長させて発光部を形成する工程と、該発光部の上に前記基板に対して非格子整合系の材料で窓層兼支持基板をエピタキシャル成長により形成する工程と、前記基板及び前記第二選択エッチング層を除去して、前記第一半導体層の表面に前記第一選択エッチング層のみを残留させる工程と、前記第一選択エッチング層の表面に第一オーミック電極を形成する工程と、前記第一オーミック電極の下部以外の領域の前記第一選択エッチング層を除去する工程と、前記第一半導体層の表面に粗面処理を行う第一粗面処理工程と、前記発光部の一部を除去して除去部と、それ以外の非除去部を形成する素子分離工程と、前記発光部が除去された窓層兼支持基板上に第二オーミック電極を形成する工程と、前記第一半導体層表面及び前記発光部の側面の少なくとも一部を絶縁保護膜で被覆する工程と、前記窓層兼支持基板の表面及び側面を粗面化する第二粗面処理工程を含むことを特徴とする発光素子の製造方法を提供する。
【0020】
このような製造方法であれば、比較的簡単に、低コストで、発光部表面の電極の剥離を抑制しつつ、第一半導体層の表面及び窓層兼支持基板表面の粗面化により発光効率を向上させた発光素子を製造することができる。
【0021】
このとき、前記基板をGaAsまたはGeとし、前記窓層兼支持基板をGaP、GaAsP、AlGaAs、サファイア(Al
2O
3)、石英(SiO
2)、SiCのいずれかとし、前記第一半導体層、前記活性層、前記第二半導体層をAlGaInPまたはAlGaAsとすることが好ましい。
このように、基板、窓層兼支持基板、第一半導体層、活性層、第二半導体層として、上記のような材料を好適に用いることができる。
【0022】
このとき、前記第一粗面処理工程は、
有機酸と無機酸の混合液が用いられ、前記有機酸は、クエン酸・マロン酸・蟻酸・酢酸・酒石酸のいずれか一種類以上含有し、前記無機酸は塩酸・硫酸・硝酸・弗酸のいずれか一種類以上を含有する溶液を用いて行い、
前記第二粗面処理工程は、
有機酸と無機酸を含む混合液が用いられ、前記有機酸は、クエン酸・マロン酸・蟻酸・酢酸・酒石酸のいずれか1種類以上を含み、かつ、前記無機酸は塩酸、硫酸、硝酸、弗酸のいずれか1種類以上を含み、かつ、沃素を含む溶液を用いて行うことが好ましい。
【0023】
このようにすれば、確実に表面を粗面化することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、発光部表面の電極の剥離が抑制され、第一半導体層の表面だけでなく、窓層兼支持基板の表面が粗面化されているため、粗面化される面積をより大きく取ることができるので、光取り出し量が更に増加した発光素子を実現できる。
また、本発明の発光素子の製造方法では、比較的簡単に、低コストで、発光部表面の電極の剥離を抑制しつつ、第一半導体層の表面及び窓層兼支持基板表面の粗面化により発光効率を向上させた発光素子を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明について実施の形態を説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0027】
まず、本発明の発光素子について
図1を参照して説明する。
図1に示すように、本発明の発光素子1は、窓層兼支持基板107と、窓層兼支持基板107上に設けられ、第二導電型の第二半導体層105と、活性層104と、第一導電型の第一半導体層103とをこの順に含む発光部108とを有している。
【0028】
窓層兼支持基板107はGaP、GaAsP、AlGaAs、サファイア(Al
2O
3)、石英(SiO
2)、SiC等からなり、第一半導体層103、活性層104、第二半導体層105がAlGaInPまたはAlGaAsからなるものとすることができる。
【0029】
発光素子1は、発光部108の少なくとも第一半導体層103と活性層104が除去された除去部170と、除去部170以外の非除去部180と、該非除去部180の第一半導体層103上に、第一選択エッチング層102Bを介して設けられた第一オーミック電極121と、除去部170の窓層兼支持基板107上に設けられた第二オーミック電極122とを有していることが好ましい。
【0030】
第一半導体層103表面及び発光部108の側面の少なくとも一部は絶縁保護膜150で被覆され、第一半導体層103の表面と、窓層兼支持基板107の表面及び側面が粗面化されているものである。
【0031】
このような本発明の発光素子1であれば、発光部表面の電極の剥離が抑制され、第一半導体層の表面だけでなく、窓層兼支持基板の表面が粗面化されているため、粗面化される面積をより大きく取ることができるので、光取り出し量が更に増加した発光素子となる。
【0032】
次に、本発明の発光素子の製造方法について
図2―
図8を参照して説明する。
まず、
図3に示すように出発基板として、基板101を用意する(
図2のSP1)。
【0033】
基板101としては、GaAsまたはGeを好適に用いることができる。
このようにすれば、後述する活性層104の材料を格子整合系でエピタキシャル成長を行うことができるため、活性層104の品質を向上させやすく、輝度上昇や寿命特性の向上が得られる。
【0034】
次に、基板101の上に選択エッチング層102を形成する(
図2のSP2)。
選択エッチング層102は、基板101の上に、例えばMOVPE法(有機金属気相成長法)やMBE(分子線エピタキシー法)、CBE(化学線エピタキシー法)により形成することができる。
選択エッチング層102は、二層以上の層構造から成り、基板101に接する第二選択エッチング層102Aと、後述する第一半導体層103に接する第一選択エッチング層102Bを少なくとも有する。第二選択エッチング層102Aと第一選択エッチング層102Bは異なる材料あるいは組成から構成されることが好ましい。
【0035】
次に、基板101と格子整合系の第一導電型の第一半導体層103、活性層104、第二導電型の第二半導体層105を順次エピタキシャル成長により成長させて発光部108を形成する(
図2のSP3)。
【0036】
次に、発光部108の上に基板101に対して非格子整合系の材料で窓層兼支持基板107をエピタキシャル成長により形成して、エピタキシャル基板109を作製する(
図2のSP4)。
【0037】
上記SP3、4において、具体的には、
図3に示すように、第一導電型の第一半導体層103、活性層104、第二導電型の第二半導体層105からなる発光部108上に、緩衝層106、窓層兼支持基板107をこの順にエピタキシャル成長したエピタキシャル基板109を作製することができる。
なお、窓層兼支持基板107は、HVPE法(ハイドライド気相成長法)により形成してもよい。
【0038】
活性層104は発光波長に応じて(Al
xGa
1−x)
yIn
1−yP(0≦x≦1、0.4≦y≦0.6)またはAl
zGa
1―zAs(0≦z≦0.45)で形成される。可視光照明に適用する場合、AlGaInPを選択するのが好適であり、赤外照明に適用する場合、AlGaAsを選択するのが好適である。ただし、活性層104の設計に関しては、超格子等の利用により波長は材料組成に起因する波長以外に調整可能であるため、上記の材料に限られない。
【0039】
第一半導体層103、第二半導体層105はAlGaInPもしくはAlGaAsが選択され、その選択は活性層104と必ずしも同一の材料でなくともよい。
【0040】
本実施形態においては、最も単純な構造である第一半導体層103、活性層104、第二半導体層105が同一材料であるAlGaInPの場合を例示するが、第一半導体層103あるいは第二半導体層105は特性向上のため、各層内には複数層が含まれるのが一般的であり、第一半導体層103あるいは第二半導体層105が単一層であることに限定されない。
【0041】
窓層兼支持基板107としては、GaP、GaAsP、AlGaAs、サファイア(Al
2O
3)、石英(SiO
2)、SiC等を好適に用いることができる。窓層兼支持基板107をGaP、GaAsP、AlGaAs、サファイア(Al
2O
3)、石英(SiO
2)、SiC等で形成した場合、緩衝層106はGaInPで形成するのが最も好適であるが、緩衝層106は、緩衝機能のある材料であればいかなる材料の選択も可能で、これに限定されないことは言うまでもない。
また、窓層兼支持基板107は格子整合系の材料であるAlGaAsで形成することも可能である。また、窓層兼支持基板107として、GaAsPを選択すると、耐候性が良好である。
しかし、GaAsPと、AlGaInP系材料またはAlGaAs系材料との間には大きな格子不整が存在するため、GaAsPには高密度のひずみや貫通転位が入る。その結果、エピタキシャル基板109は大きな反りを有する。
【0042】
ここで、自然超格子の形成による波長シフトを防止するため、発光部108は、成長面に対して結晶学的に12度以上傾斜して成長が行われることが好ましい。この傾斜方向は、どの方向に選択することも可能だが、スクライブ・ブレーキング工程で素子を分離する工程を採用する場合、スクライブ線の一方には結晶軸が傾斜せず直交する方向を選択し、スクライブ線の他方には結晶軸が傾斜する方向を選択すれば、素子側面が素子表面及び裏面に対して傾斜する面を少なくできる。従って、通常はスクライブ線の一方は傾斜しない方向が選択されるが、20度程度の素子側面の傾斜は、アセンブリ上は大きな問題にならない。従って、上記直交方向は、厳密に一致する必要はなく、直交方向より±20度程度の角度範囲は直交方向に概念的に含まれる。
【0043】
次に、エピタキシャル基板109から基板101及び第二選択エッチング層102Aを除去して、
図4に示すように発光素子基板110の第一半導体層103の表面に第一選択エッチング層102Bのみを残留させる(
図2のSP5)。
具体的には、エピタキシャル基板109から第二選択エッチング層102Aを用いてウェットエッチング法により基板101を除去することで、第一半導体層103の表面に第一選択エッチング層102Bのみを残留させることができる。
【0044】
次に、
図5に示すように、第一選択エッチング層102Bの表面に、発光素子へ電位を供給するための第一オーミック電極121を形成する(
図2のSP6)。
【0045】
次に、
図5に示すように、第一オーミック電極121の下部以外の領域の第一選択エッチング層102Bを除去する(
図2のSP7)。
具体的には、第一オーミック電極121をエッチングマスクとし、第一オーミック電極121の下部以外の領域の第一選択エッチング層102Bを、エッチングにより除去することができる。
【0046】
次に、
図6に示すように第一半導体層103の表面に粗面処理を行う第一粗面処理工程を行う(
図2のSP8)。
【0047】
第一粗面処理工程は、有機酸と無機酸の混合液が用いられ、前記有機酸としてカルボン酸、特には、クエン酸・マロン酸・蟻酸・酢酸・酒石酸のいずれか一種類以上含有し、前記無機酸は塩酸・硫酸・硝酸・弗酸のいずれか一種類以上を含有する溶液を用いて行うことができる。
このようにすれば、確実に表面を粗面化することができる。
【0048】
第一粗面処理工程で粗面化した際の、第一半導体層103表面の粗面の粗さはR
a(算術平均粗さ)=0.3μm以上とすることが好ましい。
第一選択エッチング層102Bを第一粗面液に対して選択エッチング性がある材料で構成することで、第一粗面液は第一オーミック電極の形状に沿ってファセット面を形成する。このようにして、第一選択エッチング層102Bを第一オーミック電極121の下部に設けることにより第一オーミック電極121の下部へのオーバーエッチングの発生を防止することができるので、発光部表面の電極の剥離を抑制することができる。
【0049】
次に、
図7に示すように、発光部108の一部を除去して除去部170と、それ以外の非除去部180を形成する素子分離工程を行う(
図2のSP9)。
【0050】
素子分離工程は、例えば、フォトリソグラフィー法により、レジストで第一半導体層103上の所定の領域(
図6における第二オーミック電極形成領域140、スクライブ領域141)を開口させたパターンを形成し、このレジストをエッチングマスクとして用いてエッチングすることによって行うことができる。
上記エッチングは、塩酸を含有するウェットエッチング液によるウェットエッチング法により、第二半導体層105、緩衝層106もしくは窓層兼支持基板107を露出させた除去部170と、除去部170以外の非除去部180を形成することができる。
【0051】
また、素子分離工程は、上記で例示したウェットエッチング法の他、ハロゲンガス、好ましくは塩化水素を含有するガスを用いるRIE法もしくはICP法等の、ドライエッチング法にて行うこともできる。
【0052】
次に、
図8に示すように、発光部108が除去された窓層兼支持基板107上の除去部170上に第二オーミック電極122を形成する(
図2のSP10)。
【0053】
次に、
図8に示すように、第一半導体層103表面及び発光部108の側面の少なくとも一部を絶縁保護膜150で被覆する(
図2のSP11)。
絶縁保護膜150は透明で絶縁性を有する材料であれば、どのような材料でも可能である。絶縁保護膜150としては、例えばSiO
2もしくはSiN
xを用いることが好適である。このようなものであれば、フォトリソグラフィー法と弗酸を含有したエッチング液によって、第一オーミック電極121及び第二オーミック電極122の上部を開口する加工を容易に行うことができる。
【0054】
次に、
図1に示すように、窓層兼支持基板107の表面及び側面を粗面化する第二粗面処理工程を行う(
図2のSP12)。
【0055】
第二粗面処理を行う前に、まず、除去部170に沿ってスクライブ線をけがき、ブレーキングを行うことで発光素子を分離して、発光素子ダイスを形成することが好ましい。発光素子ダイス形成後、窓層兼支持基板107が上面になるように発光素子ダイスを保持テープに転写してから、下記の第二粗面処理を行うことが好ましい。
【0056】
第二粗面処理工程は、有機酸と無機酸を含む混合液が用いられ、前記有機酸は、クエン酸・マロン酸・蟻酸・酢酸・酒石酸のいずれか1種類以上を含み、かつ、前記無機酸は塩酸、硫酸、硝酸、弗酸のいずれか1種類以上を含み、かつ、沃素を含む溶液を用いて行うことができる。
このようにすれば、確実に表面を粗面化することができる。
【0057】
第二粗面処理工程で粗面化した際の、窓層兼支持基板107の表面および側面の粗面の粗さはR
a=0.3μm以上とすることが好ましい。
上述した第一粗面処理工程で用いた第一半導体層103に施す第一粗面液と、第二粗面処理工程で窓層兼支持基板107に施す第二粗面液とは液組成が異なる。そのため、エッチング特性が異なるため、必然的に第一半導体層103と窓層兼支持基板107が有する粗面の形状及びR
aは異なったものとなる。
【0058】
上述したような本発明の発光素子の製造方法では、発光部表面の電極の剥離を抑制しつつ、第一半導体層103の表面と、窓層兼支持基板107の表面及び側面を粗面化することができる。このように、粗面化される面積をより大きく取ることができるので、光取り出し量を更に増加させることができ、発光効率を向上させた発光素子を製造することができる。
【実施例】
【0059】
以下、本発明の実施例及び比較例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0060】
(実施例1)
結晶軸が[001]方向より[110]方向に15°傾斜した厚さ280μmのn型GaAs基板101上にn型GaAsバッファ層(不図示)を0.5μm、n型AlInP層からなる第二選択エッチング層102Aを1μm、n型GaAs層から成る第一選択エッチング層102Bを1μm成長させた後、MOVPE法でAlGaInPから成るn型クラッド層(第一半導体層103)、活性層104、p型クラッド層(第二半導体層105)で構成される発光部108を6.5μm形成し、更にp型GaInPからなる緩衝層106を0.3μm形成し、GaP窓層兼支持基板107の一部としてp型GaPからなる層を1μm形成した(
図3参照)。次に、HVPE炉に移してp型GaPからなる窓層兼支持基板107を120μm成長させ、エピタキシャル基板109を得た。
【0061】
次に、GaAs基板101、GaAsバッファ層および第二選択エッチング層102Aを除去して、第一選択エッチング層102Bを残留させた発光素子基板110を作製した(
図4参照)。
【0062】
次に、発光素子基板110の第一選択エッチング層102B上へ第一オーミック電極121を形成し(
図5参照)、第一オーミック電極121下部以外の領域の第一選択エッチング層102Bを過酸化水素水含有酸エッチャント(SPM)で除去した。
【0063】
次に、第一半導体層103表面に第一粗面処理工程を施した(
図6参照)。第一粗面液は酢酸と塩酸の混合液を作製し、常温で1分エッチングすることで粗面処理を実現した。このときの第一半導体層103表面の粗面の粗さを測定したところ、R
a=0.6μmであった。
【0064】
次に、フォトリソグラフィー法により、第二オーミック電極形成領域140及びスクライブ領域141(
図6参照)以外をレジストで被覆し、塩酸を含有するウェットエッチング液によるウェットエッチング法で素子分離工程を実施し、発光部108を除去して窓層兼支持基板107が露出した除去部170と、それ以外の非除去部180を形成した(
図7参照)。
【0065】
次に、除去部170に第二オーミック電極122を形成した(
図8参照)。次に、SiO
2からなる絶縁保護膜150を積層し、第一半導体層103表面及び発光部108の側面を絶縁保護膜150で被覆した。そして、第一オーミック電極121及び第二オーミック電極122部分をフォトリソグラフィー法と弗酸エッチングにより、絶縁保護膜150に開口部を形成した。
【0066】
次に、露出させた除去部170に沿ってスクライブ線をけがき、スクライブ線に沿ってクラック線を伸ばし、その後、ブレーキングを行うことで素子を分離し、発光素子ダイスを形成した。
【0067】
発光素子ダイス形成後、第一オーミック電極が設けられている面がテープ面側になるように保持テープに発光素子ダイスを転写し、その後、第二粗面処理工程を実施した。第二粗面処理工程で窓層兼支持基板の粗面化を行う際に用いる粗面液は、酢酸と弗酸、沃素の混合液を作製した。そして、常温で1分エッチングすることで第二粗面処理を行った。このときの窓層兼支持基板107の表面および側面の粗面の粗さを測定したところ、R
a=0.5μmであった。
【0068】
以上のようにして発光素子を製造した。そして、製造した発光素子をTO−18上に銀ペーストで固定後、Auワイヤーで結線し、ランプを作製し、発光出力を測定した。その結果、後述する比較例に対し、約60%発光出力が高かった。また、粗面処理による電極の剥離は生じなかった。
【0069】
(実施例2)
まず、実施例1と同様にして、第一粗面処理工程まで行った。このときの第一半導体層表面の粗面の粗さを測定したところ、実施例1と同様のR
a=0.6μmであった。
【0070】
次に、ドライエッチング法を行うために、第一半導体層、第一オーミック電極を被覆するようにSiO
2膜を300nm被覆し、フォトリソグラフィー法により、素子分離予定形状のレジストパターンを形成した。次に、弗酸によりパターン開口部をエッチングした。
【0071】
そして、開口パターンを有するSiO
2膜をエッチングマスクとして、ドライエッチング法を実施した。ドライエッチングに際してはICP法によって、基板温度100℃、ICP出力300W、バイアス20W、Cl
2ガス3sccm、圧力0.3Paの条件でエッチングを行って素子分離を実施し、発光部を除去して、窓層兼支持基板を露出させた除去部を形成した。
【0072】
その後、実施例1と同様にして、第二オーミック電極の形成から第二粗面処理工程までを行い、発光素子を製造した。このときの窓層兼支持基板の表面および側面の粗面の粗さを測定したところ、R
a=0.5μmであった。
【0073】
上記のようにして作製した発光素子を実施例1と同様にしてランプを作製し、発光出力を測定した。その結果、後述する比較例に対し、62%発光出力が高かった。また、粗面処理による電極の剥離は生じなかった。
【0074】
(比較例)
第一粗面処理及び第二粗面処理を行わず、また、第一オーミック電極の下部に第一選択エッチング層を設けなかったこと以外は、実施例1と同様の方法で発光素子を製造した。
【0075】
上記のようにして作製した発光素子で、実施例1と同様にしてランプを作製、発光出力を測定した。その結果、電極の剥離は生じなかったが、上述したように、実施例1及び実施例2に比べて発光出力が低かった。
【0076】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。