(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6519785
(24)【登録日】2019年5月10日
(45)【発行日】2019年5月29日
(54)【発明の名称】貫通電極及びその製造方法、並びに半導体装置及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/3205 20060101AFI20190520BHJP
H01L 21/768 20060101ALI20190520BHJP
H01L 23/522 20060101ALI20190520BHJP
H01L 25/065 20060101ALI20190520BHJP
H01L 25/07 20060101ALI20190520BHJP
H01L 25/18 20060101ALI20190520BHJP
【FI】
H01L21/88 J
H01L25/08 C
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-96523(P2015-96523)
(22)【出願日】2015年5月11日
(65)【公開番号】特開2016-213349(P2016-213349A)
(43)【公開日】2016年12月15日
【審査請求日】2018年4月20日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 発行日 平成26年12月1日 刊行物 Proceedings of the 2014 IEEE International Conference on 3D System Integration (3DIC2014) (刊行物等) 開催日 平成26年12月1日 集会名 2014 IEEE International Conference on 3D System Integration (3DIC2014) 開催場所 Actons Hotel Kinsale,Co Cork,Ireland
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成26年度、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構委託研究「次世代スマートデバイス開発プロジェクト/車載用障害物センシングデバイスの開発」、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100144325
【弁理士】
【氏名又は名称】小澁 高弘
(72)【発明者】
【氏名】馮 ウェイ
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 直也
(72)【発明者】
【氏名】島本 晴夫
(72)【発明者】
【氏名】菊地 克弥
(72)【発明者】
【氏名】青柳 昌宏
(72)【発明者】
【氏名】ブイ タン トゥン
【審査官】
佐藤 靖史
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−010324(JP,A)
【文献】
特開2009−124087(JP,A)
【文献】
特開2013−125831(JP,A)
【文献】
特開2014−022637(JP,A)
【文献】
特開2014−120504(JP,A)
【文献】
特開2012−222141(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/3205
H01L 21/768
H01L 23/522
H01L 25/065
H01L 25/07
H01L 25/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコンを含む半導体基板に埋め込まれて形成され、125℃の条件下で使用され得る貫通電極であって、
前記半導体基板に接して形成された酸化シリコンを含む絶縁層と、
前記絶縁層の内側に形成された銅を含む導電性のコア層と、
前記コア層と前記絶縁層との間に形成され、前記半導体基板の一部からなる筒形状の半導体層と、
を有し、
前記貫通電極の径が、2μm〜10μmであり、
前記半導体基板の平面方向における前記半導体層の厚さが0.5μm〜5μmである、
貫通電極。
【請求項2】
請求項1に記載の貫通電極を備える半導体装置。
【請求項3】
125℃の条件下で使用され得る貫通電極の製造方法であって、
シリコンを含む半導体基板に筒形状の溝部を形成する工程と、
前記溝部に酸化シリコンを含む絶縁層を埋め込む工程と、
前記絶縁層の内側にスルーホールを形成し、かつ、前記絶縁層とスルーホールとの間に前記半導体基板の一部からなる筒形状の半導体層を形成する工程と、
前記スルーホールに銅を含む導電性材料を埋め込み、コア層を形成する工程と、
を有し、
前記絶縁層、前記コア層及び前記半導体層を備える貫通電極の径が、2μm〜10μmであり、
前記半導体基板の平面方向における前記半導体層の厚さが0.5μm〜5μmである、
貫通電極の製造方法。
【請求項4】
請求項3に記載の貫通電極の製造方法を含む、半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3次元集積回路に使用される貫通電極及びその製造方法、並びに半導体装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポータブルでワイヤレスな電子機器に対する縮小化の要求は、次世代のマイクロエレクトロニクスに使用される集積回路の微細化及び密度化を促進してきた。電子デバイスを相互接続する手法として、現在注目を浴びているものが、3次元実装技術である。シリコン貫通電極(TSV)等の貫通電極は、3次元実装を成し遂げるための技術の一つであり、ロジック、メモリ、センサ、アクチュエータ等の3次元に積層されたデバイスを電気的に接続するために使用される。
【0003】
この貫通電極は、例えば円筒型とすることができる(例えば非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】N. Khan, and S. Hassoun, "3次元集積回路のためのTSV の設計(Designing TSVs for 3D Integrated Circuits)." Springer New York, 2013.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
貫通電極の形成は、3次元相互接続における熱機械的信頼性の課題を生じる。貫通電極は一般的には銅により充填される。銅の熱膨張率(17×10
-6/oC)は、シリコンの熱膨張率(2.8×10
-6/oC)の6倍である。銅からなる貫通電極とシリコン等からなる半導体基板との間の熱膨張率の大きな相違により、熱負荷がかかると大きな応力が誘起される。このような応力は、クラックの発生といった、様々な信頼性の問題を引き起こす。
【0006】
また、半導体基板における応力は、薄いシリコンウェハ等の半導体基板に形成されるデバイスにとって、デバイス特性の変動やKOZ(デバイス配置禁止領域:keep out zone)の形成につながる。このように、貫通電極の形成に伴う熱機械的信頼性の問題を解決する手法が望まれている。
【0007】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、熱応力分布を最適化することができる新規な貫通電極及びその製造方法、並びに信頼性の高い半導体装置及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、半導体基板に絶縁層を介して形成された貫通電極であって、導電性のコア層と、コア層と絶縁層との間に形成され、半導体基板と同じ材料を含む筒形状の半導体層を有する。
【0009】
また、本発明は、このような貫通電極を備える半導体装置に関する。
【0010】
さらに、本発明は、半導体基板に筒形状の溝部を形成する工程と、溝部に絶縁層を埋め込む工程と、絶縁層より内側にスルーホールを形成し、かつ、絶縁層とスルーホールとの間に半導体基板の一部からなる筒形状の半導体層を形成する工程と、スルーホールに導電性材料を埋め込み、コア層を形成する工程を有する貫通電極の製造方法に関する。
【0011】
さらにまた、本発明は、上記貫通電極の製造方法を含む、半導体装置の製造方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本実施形態に係る貫通電極が適用される3次元積層デバイスの概略構成の一例を示す断面図である。
【
図2】本実施形態に係る貫通電極の構成を示す図であり、(a)は断面図、(b)は(a)のB−B線における断面図である。
【
図3】本実施形態に係る貫通電極の製造方法を示す工程断面図である。
【
図4】本実施形態に係る貫通電極の製造方法を示す工程断面図である。
【
図5】貫通電極付近のミーゼス応力を示す図であり、(a)は本発明での実施例、(b)は従来構造での比較例の結果を示す。
【
図6】径Dが5μmの貫通電極における中心からの距離と熱応力(ミーゼス応力)のFEM解析結果を示す図である。
【
図7】径Dが5μmの貫通電極における中心からの距離と熱応力(径方向と軸方向応力)のFEM解析結果を示す図である。
【
図8】径Dが20μmの貫通電極における中心からの距離と熱応力(ミーゼス応力)のFEM解析結果を示す図である。
【
図9】本発明による熱応力の低減効果を示す貫通電極径Dと熱応力の関係図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、図面中、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。さらに、図面の寸法比率は、図示の比率に限定されるものではない。また、以下の実施の形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明をその実施の形状のみに限定する趣旨ではない。さらに、本発明は、その要旨を逸脱しない限り、さまざまな変形が可能である。
【0014】
図1は、本実施形態に係る貫通電極が適用される3次元積層デバイスの概略構成の一例を示す断面図である。3次元積層デバイスは、インターポーザ2上に積層された複数の半導体チップ(半導体装置)1a〜1hを備える。半導体チップ1間には封止樹脂3が形成されている。なお、半導体チップ1a〜1hを特に区別する必要がない場合には、単に半導体チップ1と称する。各半導体チップ1a〜1hは、例えば、ロジック、メモリ、センサ、アクチュエータ等により構成される。各半導体チップ1a〜1hは、当該チップを貫通する貫通電極11を複数備えており、上下の半導体チップ1a〜1hが電気的に接続される。一方の半導体チップ1の貫通電極11と他方の半導体チップ1の貫通電極11との間には、両者を電気的かつ機械的に接続するバンプ5が形成されている。また、インターポーザ2にも、バンプ4が形成されている。バンプ4,5の材料に限定はないが、例えば、Au, Cu、Ag, Niなど、あるいは、はんだ系材料のSn-Ag-Cu, Sn-Bi, Au-Sn, Sn-Pbなどにより構成される。
【0015】
図1に示す例では、各半導体チップ1の中央部に貫通電極11が密集して形成されており、貫通電極11のアレイが形成されているが、これに限定はない。貫通電極11は、半導体チップの周辺部に形成されていてもよい。
【0016】
図2(a)は、半導体チップ1に形成される貫通電極11の構造の一例の詳細を示す断面図であり、
図2(b)は
図2(a)のB−B線における断面図である。
図2の一例では、半導体基板10には、シリコン貫通電極(TSV)とすることができる貫通電極11が形成されている。貫通電極11は、導電性のコア層12と、コア層12の外周に形成された半導体層13と、半導体層13の外周に形成された絶縁層14とを有する。絶縁層14は、半導体基板10の表面及び裏面にも形成されている。半導体基板10の表面及び裏面において、コア層12は絶縁層14から露出している。
【0017】
半導体基板10は、ロジック、メモリ、センサ、又はアクチュエータ等を形成するための基盤となる基材である。半導体基板10は、Si基板に限定されず、GaAs、InP、SiC、GaN、CaTe等の半導体基板であってもよい。また、半導体基板10には、各種の不純物が導入されていてもよい。
【0018】
貫通電極11の径Dに限定はないが、例えば、2μm〜25μmである。また、貫通電極のピッチPに限定はないが、例えば、径Dの2倍以上に設定される。複数の半導体チップ1間において信号の授受を担う貫通電極11は、密集して形成されてもよく、この場合には、貫通電極11の径及びピッチは小さくなる傾向にある。また、電源に接続される貫通電極11の場合には、貫通電極11の径及びピッチは大きくなる傾向にある。貫通電極11の高さHに限定はないが、例えば、20μm〜200μm程度である。
【0019】
コア層12は、貫通電極11の導電性のコアとなる部位であり、電気抵抗の小さな金属材料、例えば、銅、タングステン、アルミニウム、ポリシリコン等により構成され、さらに好ましくは銅により構成される。コア層12が銅を含む場合には、銅の拡散を抑制すべく、コア層12の外周部にバリア層が設けられていてもよい。半導体基板平面方向におけるコア層12の厚さ、すなわちコア層12の径は、例えば0.5μm〜20μmである。
【0020】
半導体層13は、コア層12の側面を被覆しており、コア層12と絶縁層14との間に形成された筒形状の層である。筒の断面形状は、真円、楕円、多角形のいずれでもよいが、真円が好ましい。半導体層13は、半導体基板10と同一の材料からなる。例えば、半導体基板10がシリコン半導体基板の場合には、半導体層13はシリコン層からなる。半導体基板平面方向における半導体層13の厚さは、例えば0.5μm〜5μmである。
【0021】
絶縁層14は、貫通電極11を構成するコア層12及び半導体層13を、半導体基板10から絶縁するためのものである。絶縁層14の材料に限定はないが、例えば、酸化シリコン又は窒化シリコン又は樹脂やガラス複合材から成る。半導体基板平面方向における絶縁層14の厚さは、例えば0.3μm〜2.0μmである。
【0022】
本実施形態に係る貫通電極は、半導体基板材料と同じ材料の半導体層13を備えることにより、コア層12と半導体層13の界面、すなわち貫通電極の主たる導電材料と半導体基板材料の界面を貫通電極の内側に位置付けることができる。この結果、貫通電極の主たる導電材料と半導体基板材料の熱膨張率差が大きい場合であっても、この熱膨張率差に起因する熱応力を貫通電極の内部に留めることができ、貫通電極のエッジ又はその外側の半導体基板領域に作用する熱応力を軽減することができる。これにより、貫通電極の周辺に形成されるデバイス特性の変動を抑制することができ、また、デバイス禁止領域を小さくすることができる。この結果、本実施形態に係る貫通電極は、高密度の貫通電極のアレイを形成することができる。このように、本実施形態に係る貫通電極は、貫通電極の形成に伴う熱機械的信頼性の問題を解決することができる。
【0023】
また、本実施形態に係る貫通電極を備える半導体装置によれば、貫通電極の形成に伴う熱機械的信頼性の問題を解決することができることから、デバイスの信頼性を向上させることができる。また、貫通電極を高密度に配置できることから、3次元実装に有用な半導体装置を提供することができる。
【0024】
次に、本実施形態に係る貫通電極の製造方法について、
図3及び
図4を参照して説明する。本実施形態では、半導体基板に半導体素子を形成した後にビアを形成するビアラスト方式を一例に説明するが、ビアファースト方式、ビアミドル方式、ボンディング後ビア方式(via-after bonding)であってもよい。
【0025】
図3(a)に示すように、例えばシリコンからなる半導体基板10に、図示しないトランジスタなどの素子が形成され、トランジスタなどの素子による回路を形成するための配線層20が形成されている。配線層20は、配線21及び絶縁層22を備える。半導体基板10の配線層20側を支持半導体基板30で支持し、配線層20が形成されていない半導体基板10の裏面側を研削して半導体基板を薄型化する。そして、半導体基板10の絶縁層14を形成すべき位置にリソグラフィ及びエッチングにより筒形状の溝10aを形成する。筒の断面形状は、真円、楕円、多角形のいずれでもよいが、真円が好ましい。溝10aは、半導体基板10を貫通するように形成する。溝10aの形成では、半導体基板10上にレジストパターンを形成し、レジストパターンをマスクとしたエッチングにより溝10aを形成し、その後レジストパターンを除去すればよい。
【0026】
次に、
図3(b)に示すように、溝10aの内部を埋め込むように半導体基板10上に絶縁層14を形成する。例えば、液体樹脂材料を、減圧下で溝に充填し、固化させる。これにより、アスペクト比の高い溝10aの内部を隙間なく絶縁膜で充填することができる。
【0027】
次に、
図3(c)に示すように、リソグラフィ及びエッチングにより、コア層12を形成する部位における絶縁層14に開口部14aを形成する。開口部14aの形成では、絶縁層14上にレジストパターンを形成し、レジストパターンをマスクとしたエッチングにより開口部14aを形成すればよい。あるいは絶縁材料を感光性にする事により、現像による開口部形成も可能である。
【0028】
次に、
図3(d)に示すように、開口部14aを形成する際に用いたレジストパターン(不図示)をマスクとして、開口部14aに露出した半導体基板10をエッチングして、スルーホール10bを形成する。これにより、絶縁層14とスルーホール10bとの間に半導体基板10の一部からなる筒形状の半導体層13が形成される。半導体基板10のエッチングでは、例えばボッシュプロセス(Bosch process)を用いる。ボッシュプロセスは、主に六フッ化硫黄 (SF
6) を用いて等方エッチングを行うエッチングステップと、テトラフルオロエチレン系のガス(C
4F
8など)を用いて側壁を保護する保護ステップとを繰り返し行うものである。その後、レジストパターンを除去する。スルーホール10bの断面形状は、真円、楕円、多角形のいずれでもよいが、真円が好ましい。
【0029】
次に、
図4(e)に示すように、スルーホール10bの内壁及び絶縁層14上にバリア層12aを形成し、バリア層12a上にシード層12bを形成する。バリア層12aは、コア層12として銅を用いる場合に必要な層であり、例えば、スパッタリング法又はCVD法により、Ti,TiN,TaN,Taのいずれかを形成する。シード層12bの形成では、無電解めっき又はスパッタリング法により銅層を形成する。
【0030】
次に、
図4(f)に示すように、シード層12b上に電気めっきにより銅を堆積させて、導電層12cを形成する。続いて、
図4(g)に示すように、CMP法により絶縁層14上に堆積した導電層12c、シード層12b、バリア層12aを順に除去する。これにより、スルーホール10b内にバリア層12a、シード層12b、導電層12cからなるコア層12が形成される。
【0031】
もしくは、
図4(e')に示すように、金属(溶融金属まはた金属ペーストなど)を減圧下で直接充填して、導電層12c’を形成してもよい。
【0032】
以上のようにして、コア層12、半導体層13及び絶縁層14を備える貫通電極11、並びに当該貫通電極を備える半導体装置が製造される。
【0033】
本実施形態に係る貫通電極の製造方法によれば、
図3(a)に示す筒形状の溝10aの形成工程を追加することにより、コア層12及び半導体層13を備え、熱応力分布を最適化することが可能な貫通電極11を簡易に形成することができる。
【0034】
本実施形態に係る半導体装置における貫通電極の製造方法によれば、貫通電極の形成に伴う熱応力分布を最適化し、熱応力分布に起因するデバイス特性の変動を抑止した、信頼性の高い半導体装置を製造することができる。
【0035】
次に、本実施形態の貫通電極の効果について、FEM(Finite Element Method)の結果を参照して説明する。FEMは、貫通電極による応力状態及び信頼性を解析する上で一般に使用されている手法である。
【0036】
(実施例の構造)
実施例では、半導体基板10は単結晶シリコンとし、コア層12は銅とし、半導体層13はシリコン層とし、絶縁層14は酸化シリコンとした。実施例の貫通電極11の各種寸法は、表1に示す通りである。具体的には、貫通電極11の径Dを5,10,15,20μmと変化させた。貫通電極11のピッチPは径Dの2倍に設定し、高さHを40μmとし、絶縁層14の厚さを0.5μmとし、半導体層13の厚さを1μmとした。
【0038】
(比較例の構造)
比較例として、従来構造として一般的な銅層と、銅層の側面を被覆する絶縁層からなる貫通電極を設定した。比較例の貫通電極の設計は、半導体層がない点を除き、表1に示す条件を採用した。
【0039】
図5は、125℃における径Dが5μmの貫通電極近辺の熱応力分布(等高線図)を示す図であり、(a)は実施例の結果、(b)は比較例の結果を示す。実際の半導体デバイスにおいて熱負荷がかかっている状態を想定するため、温度を125℃に設定した。
【0040】
実施例の構造は、貫通電極の中心から外側へ向かって、Cu/Si/SiO
2/Siの層構造をなしている。この構造において、熱膨張率の差は、Cu/Siの界面において最大となる。このため、最大応力がCu/Siの界面に存在している(図中、矢印参照)。ここで、デバイスの信頼性を確保するためには、貫通電極11周辺の半導体基板10における応力を小さくすることが非常に重要であることを強調しておく。実施例では、最大応力がCu/Siの界面に存在しているが、貫通電極11周辺の半導体基板10における応力は比較例に比べて小さいことがわかる。比較例のように貫通電極11の周辺の半導体基板に応力が分散しているのに比べて、実施例の構造の方がデバイスの信頼性の観点からは有利である。
【0041】
図6及び
図7は、径Dが5μmの貫通電極の位置Aにおける(
図2(a)参照)、貫通電極11の中心からの距離と熱応力のFEM解析結果を示す図である。位置Aは、半導体基板10の表面から0.5μmに設定した。
図6は貫通電極11のミーゼス応力を示し、
図7は貫通電極11の径方向(半導体基板の平面方向)にかかる応力(径方向応力)と軸方向(貫通電極の高さH方向)における応力(軸方向応力)を示す。
図6,7において、点線で示した「TSV edge」は貫通電極11のエッジ位置、すなわち、絶縁層14と半導体基板10の界面の位置を示す。また、
図6において、点線で示した「Cu/Si interface」は貫通電極11のコア層12と半導体層13の界面の位置を示す。
【0042】
図6に示すように、実施例の構造では、熱膨張率の差はCu/Siの界面において最大となることから、貫通電極の内部であるCu/Si界面に応力が集中することがわかる。その反面、実施例の構造では、半導体層13の外側の領域における応力が軽減している。実施例の構造は、貫通電極11のエッジにおいて(TSV edge)30MPaより低い応力を示しており、これは、比較例の構造に比べて80%の応力低減に相当する。
図7に示す結果から、実施例の構造は、軸方向応力よりも径方向応力の低減に効果があることがわかる。
【0043】
図8は、径Dが20μmの貫通電極の位置Aにおける(
図2(a)参照)、貫通電極11の中心からの距離と熱応力(ミーゼス応力)のFEM解析結果を示す図である。
図8に示すように、半導体層13を設けることによる応力低減効果は、径Dが5μmのとき(
図6)と比べると減少するものの、比較例の構造に比べて30%低減することができている。
【0044】
図9は、貫通電極の径Dと熱応力の関係を示す図である。
図9に示すように、貫通電極11の径が小さくなるにつれて、実施例の構造はシリコン半導体基板における熱応力低減に関し顕著な効果を奏することがわかる。これは、半導体層13の厚さを1μmに固定していることから、貫通電極11が小さくなるにつれてその影響が大きくなるからである。実施例の構造は、径Dを20μmから5μmに変化させると、熱応力が180MPa程度から40MPa程度へ減少する。比較例との関係でいえば、実施例の構造は、比較例に比べて、径Dが20μの場合には30%の熱応力低減効果を奏するのに対し、径Dが5μmの場合には80%の熱応力低減効果を奏する。
【0045】
上述したように、本発明は、その要旨を逸脱しない限り、さまざまな変形が可能である。本実施形態の効果を説明するために、FEMによる解析結果を用いたが、本実施形態は、FEM解析を行うための具体的な条件(材料や膜厚や形)に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0046】
1a〜1h…半導体チップ、2…インターポーザ、3…封止樹脂、4,5…バンプ、10…半導体基板、10a…溝、10b…スルーホール、11…貫通電極、12…コア層、12a…バリア層、12b…シード層、12c…導電層、13…半導体層、14…絶縁層、14a…開口部、20…配線層、21…配線、22…絶縁層、30…支持半導体基板。