特許第6520310号(P6520310)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6520310
(24)【登録日】2019年5月10日
(45)【発行日】2019年5月29日
(54)【発明の名称】ジルコニア焼結体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 35/486 20060101AFI20190520BHJP
   C04B 35/638 20060101ALI20190520BHJP
【FI】
   C04B35/486
   C04B35/638
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-71709(P2015-71709)
(22)【出願日】2015年3月31日
(65)【公開番号】特開2016-190760(P2016-190760A)
(43)【公開日】2016年11月10日
【審査請求日】2018年2月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】戸床 正明
(72)【発明者】
【氏名】篠崎 直樹
(72)【発明者】
【氏名】山内 正一
【審査官】 小川 武
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−234202(JP,A)
【文献】 特開平01−219070(JP,A)
【文献】 特開平07−048166(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 35/00−35/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
オレフィン樹脂である有機バインダーとジルコニアを含有する成形体とアルカリ水溶液とを接触するアルカリ処理工程、成形体から有機バインダーの除去を行う脱脂工程、及び、成形体を焼結する焼結工程、を有するジルコニア焼結体の製造方法であって、該成形体と該アルカリ水溶液との接触がアルカリ水溶液中に成形体を浸漬することによる接触であり、該アルカリ水溶液中のアルカリ濃度が0.1mol/L以上1mol/L以下であり、該接触させる条件が温度10〜40℃で1〜60時間の条件であり、該アルカリ処理工程後の該成形体の表面から50μm超の領域のアルカリ含有量が0重量ppm以上50重量ppm以下であることを特徴するジルコニア焼結体の製造方法
【請求項2】
アルカリ水溶液が水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、及び、テトラメチルアンモニウムハイドロキサイド水溶液からなる群の少なくとも1種である請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記成形体中のジルコニア100重量部に対する有機バインダーの重量が30重量部以下である請求項1又は2に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジルコニア焼結体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ジルコニア粉末と有機バインダーを含む組成物(以下、「ジルコニアコンパウンド」又は「コンパウンド」ともいう。)は、これを成形し、有機バインダーを除去した後に、焼結することでジルコニア焼結体が得られる。コンパウンドは有機バインダーを含有するため、流動性が高い。そのため、コンパウンドから得られる成形体は形状の自由度が高く、これを焼結することで任意形状の焼結体が得られる。任意形状の焼結体を得るため、これまでに以下のコンパウンドから得られる成形体、及び、これを焼結する焼結体の製造方法が報告されている。
【0003】
例えば、特許文献1ではポリオキシメチレン、オキシメチレン共重合体、及び分散助剤を有機バインダーとして含むコンパウンドから得られたジルコニア成形体が開示されている。この成形体は、150℃程度の酸性雰囲気下で処理した後、500℃程度で処理することにより、バインダーを除去している。このような酸処理及び加熱処理により、有機バインダーの除去に伴う成形体の変形を抑制している。
【0004】
また、特許文献2では、熱可塑性ポリエステルを主成分とする有機バインダーを含むコンパウンドから得られたジルコニア成形体が開示されている。当該成形体は、熱可塑性ポリエステルを水中で加水分解することにより、成形体から有機バインダーを除去している。特許文献2では加水分解により、有機バインダーの除去に伴う成形体の変形を抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平05−004860号公報
【特許文献2】特開2001−234202号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
酸性雰囲気での有機バインダーの除去は、酸性ガスの管理及び処理を必要とすることに加え、最終的に加熱工程が必要となる。そのため、加熱による有機バインダーの除去と比べ、酸性雰囲気での有機バインダーの除去は製造プロセスが多くなり、得られる成形体はそのコストが高くなりやすい。一方、加水分解による有機バインダーの除去は、成形体内部の有機バインダーの除去が困難であり、特に複雑形状の成形体や、大型の成形体ではその形状を変化させること無く有機バインダーを除去することができない。
【0007】
本発明は、コンパウンドを用いたジルコニア焼結体の製造方法において、有機バインダーの除去前後における成形体の形状変形を極めて抑制したジルコニア焼結体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らはコンパウンドから得られる成形体の形状変化について検討した。その結果、成形後のジルコニア成形体とアルカリとを接触させることで、有機バインダー除去前後におけるジルコニア成形体の形状変化が著しく抑制されることを見出した。
【0009】
すなわち、本発明は、有機バインダーとジルコニアを含有する成形体とアルカリ水溶液とを接触するアルカリ処理工程、及び、成形体を焼結する焼結工程、を有することを特徴とするジルコニア焼結体の製造方法である。
【0010】
以下、本発明の製造方法について説明する。
【0011】
本発明の製造方法は、有機バインダーとジルコニアを含有する成形体とアルカリ水溶液とを接触するアルカリ処理工程(以下、単に「アルカリ処理工程」ともいう。)を有する。
【0012】
アルカリ処理工程に供する成形体は、ジルコニア粉末と有機バインダーを含有する成形体(以下、単に「成形体」ともいう。)であればよい。成形体は、ジルコニア粉末と有機バインダーを含有する組成物(コンパウンド)を成形して得ることができる。
【0013】
コンパウンドが含有するジルコニア粉末はジルコニアを主成分とする粉末であればよく、イットリア含有ジルコニア粉末、更には2〜4mol%イットリア含有ジルコニア粉末を挙げることができる。
【0014】
ジルコニア粉末としては、平均粒子径が0.2μm以上2.0μm以下、更には0.4μm以上1.8μm以下であることが挙げられる。また、BET比表面積は4m/g以上21m/g以下、更には6m/g以上16m/g以下を挙げることができる。
【0015】
コンパウンドに含有される有機バインダーは、ジルコニア粉末と混合することで流動性が付与できるものであればよく、熱可塑性樹脂を含んでいればよい。熱可塑性樹脂は、オレフィン樹脂又はアクリル樹脂の少なくともいずれか及びその共重合体を挙げることができ、オレフィン樹脂系の有機バインダーであることが好ましい。具体的な熱可塑性樹脂として、例えば、アクリル、ポリスチレン及びポリエチレンからなる群の少なくとも1種を挙げることができる。また、有機バインダーはワックスを含んでいてもよい。ワックスとしては、パラフィンワックス又はエステルワックスの少なくともいずれかを例示することができる。
【0016】
コンパウンドは、流動性を有する程度の有機バインダーを含有していればよい。有機バインダーの含有量は、例えば、コンパウンド中のジルコニア100重量部に対する有機バインダーの重量が30重量部(23重量%)以下、更には25重量部(20重量%)以下、また更には21重量部(17重量%)以下であることが挙げられる。また、有機バインダーの含有量は17重量部(14.5重量%)以上であればよい。
【0017】
ジルコニア粉末と有機バインダーとを均一になるように混合することでコンパウンドが得られる。混合方法は、例えば、加圧式ニーダー、双腕式ニーダー又はスクリュー押出機等により混合することを挙げることができる。有機バインダーは温度が高いほど流動性が高くなるため、混合の温度は80℃以上250℃以下、更には100℃以上200℃以下を挙げることができる。
【0018】
アルカリ処理工程に供する成形体は、コンパウンドを成形することで得られる。所望の形状の成形体が得られれば成形方法は任意である。成形方法として、プレス成形、冷間静水圧プレス、鋳込み成形、シート成形及び射出成形からなる群のいずれか1以上の成形方法であればよい。成形体の形状の自由度が高くなるため、成形方法は鋳込み成形又は射出成形の少なくともいずれかであることが好ましい。さらに、複雑形状や大型形状の成形体が再現よく得られやすいため、成形は射出成形であることが好ましい。
【0019】
アルカリ処理工程では、成形体とアルカリ水溶液とを接触させる。成形体とアルカリ水溶液とを接触させることで、有機バインダー除去前後における成形体の形状変化が極めて小さくなる。アルカリ処理工程は、有機バインダーとジルコニアを含有する成形体とアルカリ水溶液とを接触するアルカリ工程、を含むジルコニア成形体の製造方法としてもよい。これにより脱脂前後の形状変化が抑制されたジルコニア成形体が得られる。
【0020】
アルカリ水溶液はアルカリ性を示す水溶液であればよく、例えば、アルカリ金属水酸化物水溶液、又はテトラメチルアンモニウムハイドロキサイド(以下、「TMAOH」とする。)水溶液の少なくともいずれか、更には水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、及びTMHAOH水溶液からなる群の少なくとも1種を挙げることができる。これらに含まれるアルカリ成分としては、ナトリウム、テトラメチルアンモニム、カリウム及びストロンチウムからなる群の少なくとも1種を挙げることができる。
【0021】
アルカリ水溶液中のアルカリ濃度は0.1mol/L以上、更には0.5mol/L以上であることが挙げられる。アルカリ濃度は0.1mol/L未満では、処理後の成形体が変形しやすくなる。アルカリ濃度は5mol/L以下、更には2mol/L以下、また更には1mol/Lであれば、歩留まりが高くなりやすい。
【0022】
成形体とアルカリ水溶液とが接触すればアルカリ処理の方法は任意である。簡便であるため、アルカリ水溶液中に成形体を浸漬することが好ましい。この場合、成形体とアルカリ水溶液とを接触させる条件は、温度が10〜40℃、更には10〜30℃であること、及び、時間は1〜60時間、更には1〜30時間であることが例示できる。
【0023】
アルカリ処理を施すことで、成形体からの有機バインダーの除去(以下、「脱脂」ともいう。)の前後における成形体の形状変化が抑制される。例えば、有機バインダー除去前後の成形体の形状変化量(以下、単に「変化量」ともいう。)が、40〜80mm×40〜80mm程度の大きさの成形体であるとき、2mm以下、更には1mm以下、また更には0.5mm以下である。
【0024】
本発明における変形量の測定方法の模式図を図1に示した。図1(a)、(b)及び(c)は、それぞれ測定方法の上面、前面及び側面を示す模式図である。図1において、(1)は変形量測定用の成形体、(2)は支持部材、(3)は2つの支持部材間の距離、及び、(4)は支持部材の高さである。上記(2)の成形体を支持する。支持部材の材質は、脱脂処理をして、反応、焼結、及び変形が生じず、なおかつ、通気性を有するものであればよい。上記(3)は有機バインダー除去前の成形体が支持部材に支えられる距離であればよく、成形体のサイズにより調整することができる。例えば、1辺が70mmの成形体であれば、(3)は40〜50mmであることが挙げられる。
【0025】
有機バインダー除去により、成形体は中心部分が垂れ下がるように変形する。図2は有機バインダー除去後の前面を示す模式図である。図2中(5)を測定することにより、変形量を測定することができる。そのため、上記(4)は変形量が十分に図れる高さであればよい。本発明の成形体の変形量は2mm以下であるため、上記(4)は10mm以下、更には5mm以下であれば十分である。
【0026】
また、アルカリ処理工程後の成形体は、アルカリ含有量が0.05重量%以上であり、なおかつ、ジルコニアと有機バインダーを含有するジルコニア成形体である。アルカリ処理により、アルカリ水溶液中のアルカリ成分の一部がジルコニア成形体に含浸する。これにより、変形量が小さくなる。アルカリ含有量が多くなるほど変形量が小さくなる傾向にあるため、アルカリ含有量は0.05重量%以上、更には0.06重量%以上であることが好ましい。また、アルカリ含有量は0.15重量%以下、更には0.10重量%以下を挙げることができる。
【0027】
ここで、アルカリ含有量とは成形体重量に対するアルカリ成分の重量割合である。成形体中のアルカリ成分の重量はICP法などの組成分析により求めることができる。
【0028】
また、アルカリ処理後の成形体は成形体表面部のアルカリ含有量が、成形体内部のアルカリ含有量よりも多くなる。
【0029】
ここで、成形体表面部とは、成形体の表面から50μm以内の領域であり、成形体内部とは成形体の表面から50μm超の領域である。
【0030】
本発明において、成形体表面部及び内部のアルカリ成分の存在は、SEM−EDS分析により測定することできる。具体的には、本発明の成形体を切断し、その断面におけるSEM−EDS分析によるアルカリ成分の測定を行うことで確認することができる。
【0031】
アルカリ処理後の成形体は、成形体内部のアルカリ含有量が300重量ppm以下、更には100重量ppm以下、また更には10重量ppm以下であることが好ましい。成形体内部のアルカリ含有量が300重量ppm以下であることで、これを焼結して得られる焼結体が割れにくくなる。同様な理由により、アルカリ処理後の成形体は成形体内部に実質的にアルカリを含まないこと、すなわちアルカリ含有量が0重量ppmであることが好ましい。通常、成形体の成形体内部のアルカリ含有量は0重量ppm以上50重量ppm以下であることが挙げられる。
【0032】
アルカリ処理後の成形体は、成形体内部よりも成形体表面部のアルカリ含有量が高ければよく、成形体表面部のアルカリ含有量として、例えば、300重量ppm超、更には0.1重量%以上、また更には1.0重量%以上であることが挙げられる。また、成形体表面部のアルカリ含有量は2重量%以下であることが挙げられる。
【0033】
本発明のジルコニア焼結体の製造方法では、アルカリ処理後の成形体を焼結する前に、アルカリ処理後、成形体を洗浄する洗浄工程、又は成形体から有機バインダーを除去する脱脂工程の少なくともいずれかの工程、を含んでいてもよい。
【0034】
洗浄工程では成形体を洗浄する。不純物やアルカリ処理工程により付着した過剰なアルカリが成形体から除去できれば洗浄方法は任意の方法を用いることができる。洗浄方法として、例えば、水又はエタノール水溶液等の溶媒中に成形体を浸漬し、溶媒を撹拌することや、これらの溶媒を成形体に流通させることが挙げられる。
【0035】
脱脂工程では、成形体から有機バインダーの除去(脱脂)を行う。脱脂の方法は酸処理、加熱処理、溶媒処理などが挙げられる。本発明の製造方法においては、簡便な方法で十分に有機バインダーを除去することができるため、酸処理等を使用する必要はなく、加熱処理により脱脂すればよい。
【0036】
加熱処理による脱脂において、脱脂温度は200℃以上500℃以下、更には300℃以上500℃以下である。
【0037】
加熱処理による脱脂における昇温速度は1〜170℃/hの任意の速度が例示できる。効率よく昇温するため、例えば、150℃までは、50〜150℃/hとし、なおかつ、150℃超は2〜10℃/hとすることが好ましい。
【0038】
脱脂時間は成形体形状によるが20〜100時間、更には30〜80時間であることが挙げられる。
【0039】
焼結工程では、成形体を焼結する。これによりジルコニア焼結体が得られる。
【0040】
焼結条件として、例えば、大気中で、昇温速度が50〜150℃/hであること、焼結温度が1400℃〜1600℃であること、及び、焼結時間が1〜5時間であることが挙げられる。
【0041】
焼成工程に供する成形体はアルカリ処理を経た後の成形体であればよく、アルカリ処理工程後、洗浄工程後、又は脱脂工程後のいずれの成形体であってもよい。加熱により脱脂をする場合、脱脂と焼結を別々に行ってもよいが、脱脂と焼結を連続的に行ってもよい。
【0042】
上記の様に、本発明の製造方法は、脱脂時の形状変化が抑制されているため、複雑形状又は大型形状の焼結体を得ることができる。そのため、本発明の製造方法により、例えば、長さ120〜150mm×幅50〜75mm×高さ10〜20mm程度の大きさの焼結体を得ることができる。
【発明の効果】
【0043】
本発明により、コンパウンドを用いたジルコニア焼結体の製造方法における、有機バインダーの除去前後における成形体の形状変形が極めて小さいジルコニア焼結体の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
図1】変形量の測定方法を示す模式図
図2】有機バインダー除去後の成形体形状を示す模式図
図3】脱脂処理後の実施例1の成形体の概観を示す図
図4】脱脂処理後の比較例2の成形体の概観を示す図
【実施例】
【0045】
以下、実施例及び比較例により本発明を具体的に説明する。
(アルカリ含有量の測定)
アルカリ処理後の成形体を450℃で4時間加熱処理し、有機バインダーを除去した。有機バインダー除去後の成形体を硫酸で溶解して試料溶液として。得られた試料溶液を、一般的なICP装置(装置名:Vista−PRO、セイコーインスツルメント社製)を用いたICP分析によって、ナトリウム含有量を測定した。
得られたナトリウム含有量を、成形体重量(すなわち、ジルコニア粉末及び有機バインダーの合計重量)で割ることにより、アルカリ処理後の成形体中のアルカリ濃度を求めた。
【0046】
(表面部、内部の元素分析)
アルカリ処理後の成形体を切断し、その断面を走査型電子顕微鏡(装置名JSM−7600F、日本電子製)にて成形体の表面部、及び内部を観察した。得られたSEM観察像をSEM−EDSにより元素分析を行った。EDSには、一般的なEDS装置(装置名:NSS312E+UltraDry30mm、サーモフィッシャーサイエンティフィック製)を用い、EDSマッピングの電子線加速電圧は5kvとした
(ジルコニア成形体の変形量の測定)
図1に示した方法に従って、変形量を測定した。長さ70mm×幅40mm、及び、厚さ2mmの板状成形体を測定試料として用いた。測定試料を5cmの間隔で両端を橋かけ状に配置した後、これを、大気中にて150℃までは昇温速度と50℃/h、その後、温度450℃を時間75時間で処理した。
【0047】
実施例1
ジルコニア粉末100重量、及び、オレフィン樹脂系有機バインダー21重量部を170℃で混練して、コンパウンドを得た。
【0048】
得られたコンパウンドを圧力60MPaで射出成形し、長さ40mm×幅70mm、及び、厚さ2mmの板状成形体を得た。
【0049】
得られた板状成形体は、25℃で24時間、アルカリ水溶液に浸漬した。アルカリ水溶液は、水酸化ナトリウム濃度が1mol%の水酸化ナトリウム水溶液を使用した。
【0050】
アルカリ処理後、板状成形体を純水で洗浄した後、大気中で12時間、乾燥させた。
【0051】
成形体断面のSEM−EDS測定の結果から、当該成形体の成形体表面部にはナトリウムが確認されたが、成形体内部にはナトリウムは確認されなかった。これより、得られた成形体はその表面部のみにナトリウムを含有することが確認できた。また、組成分析の結果、成形体のナトリウム含有量は793重量ppmであり、これより、成形体表面部のナトリウム含有量は1.5重量%であった。
【0052】
乾燥後の板状成形体を、大気中、450℃で脱脂した。なお、昇温速度は150℃までは50℃/h、150℃から450℃までは4℃/hとし、その後は炉冷とした。脱脂時間としては計85hrであった。脱脂処理後の成形体を図3に示した。
【0053】
脱脂後の成形体を焼成してジルコニア焼結体を得た。焼成条件は、大気中、昇温速度100℃/h、焼結温度1500℃、焼結時間2時間とした。本実施例の条件及び結果を表1に示した。
【0054】
実施例2
アルカリ水溶液として、水酸化ナトリウム濃度が0.5mol%の水酸化ナトリウム水溶液を使用したこと以外は実施例1と同様な方法により、ジルコニア焼結体を得た。本実施例の条件及び結果を表1に示した。
【0055】
実施例3
35℃で3時間、アルカリ水溶液に浸漬することでアルカリ処理を行ったこと以外は実施例1と同様な方法によりジルコニア焼結体を得た。本実施例の条件及び結果を表1に示した。
【0056】
実施例4
アルカリ水溶液として、水酸基濃度が1mol/Lのテトラメチルアンモニウムハイドロキサイド(以下、「TMAOH」とする。)水溶液を使用したこと以外は実施例1と同様な方法により、ジルコニア焼結体を得た。本実施例の条件及び結果を表1に示した。
【0057】
実施例5
アルカリ水溶液として、水酸化カリウム濃度が1mol/Lの水酸化カリウム水溶液を使用したこと以外は実施例1と同様な方法により、ジルコニア焼結体を得た。本実施例の条件及び結果を表1に示した。
【0058】
比較例1
アルカリ処理を行わなかったこと以外は実施例1と同様な方法によりジルコニア焼結体を得た。本比較例の条件及び結果を表1に示した。
【0059】
比較例2
アルカリ処理の代わりに、板状成形体を25℃で24時間、蒸留水に浸漬することで処理したこと以外は実施例1と同様な方法によりジルコニア焼結体を得た。本比較例の条件及び結果を表1に示した。
【0060】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明の製造方法は、ジルコニア焼結体の製造方法として、特に任意形状、複雑形状、大型形状のジルコニア焼結体の製造方法として使用することができる。
図1
図2
図3
図4