(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6520320
(24)【登録日】2019年5月10日
(45)【発行日】2019年5月29日
(54)【発明の名称】光導波路デバイス、及び光導波路デバイスにおいてフォトリフラクティブ効果を解消又は低減する方法
(51)【国際特許分類】
G02F 1/03 20060101AFI20190520BHJP
【FI】
G02F1/03 505
【請求項の数】9
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-76516(P2015-76516)
(22)【出願日】2015年4月3日
(65)【公開番号】特開2016-197156(P2016-197156A)
(43)【公開日】2016年11月24日
【審査請求日】2018年2月14日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成26年度、独立行政法人情報通信研究機構「高度通信・放送研究開発委託研究/(高い臨時設営性を持つ有無線両用高速光伝送技術の研究開発)」、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000183266
【氏名又は名称】住友大阪セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001081
【氏名又は名称】特許業務法人クシブチ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中田 悠
(72)【発明者】
【氏名】近藤 勝利
(72)【発明者】
【氏名】藤野 哲也
(72)【発明者】
【氏名】市川 潤一郎
【審査官】
奥村 政人
(56)【参考文献】
【文献】
特開2013−140328(JP,A)
【文献】
特開2013−061454(JP,A)
【文献】
特開2013−174744(JP,A)
【文献】
特開2003−089555(JP,A)
【文献】
特開2010−033049(JP,A)
【文献】
特開2002−323638(JP,A)
【文献】
特開2000−151008(JP,A)
【文献】
特開2009−033120(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/00− 1/125
G02F 1/21− 7/00
G02B 6/12− 6/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マッハツェンダー型光導波路と、当該マッハツェンダー型光導波路を伝搬する光波を制御するための電極と、が形成された電気光学効果を有する基板と、
当該基板を収容する筺体と、
前記基板に紫外線光または紫色光を照射するための少なくとも一つの光源と、
を備え、
前記光源は、前記筺体の外に配され、
前記筺体は、前記光源が出射する紫外線光または紫色光を前記基板に照射するための、前記紫外線光または紫色光を透過する窓を有する、
光導波路デバイス。
【請求項2】
前記基板上において、1μm離れた地点間の紫外線光または紫色光の照度比が1.5以下である、
請求項1に記載の光導波路デバイス。
【請求項3】
前記光源は、前記筺体の内部に存在する接着剤、導電性樹脂、又はシール剤からアウトガスとして発生する残留モノマー、溶剤、帯電防止剤、可塑剤、難燃剤、酸化防止剤および又はそれらの反応物を含む有機系の物質を分解させて、当該物質の成長による前記電極間の空間電荷層の形成を防止するものである、
請求項1または請求項2に記載の光導波路デバイス。
【請求項4】
前記窓は、前記紫外線光または紫色光を拡散して透過させる拡散板である、
請求項1ないし3のいずれか一項に記載の光導波路デバイス。
【請求項5】
前記光源は、前記筺体と別体の光源ユニットに配置され、
前記光源への電源は、前記筺体に設けられた電気端子アレイの一部端子に接続された電源により供給され、
電気端子アレイの一部端子に入力された電気は、前記筺体及び前記光源ユニットのそれぞれに設けられた導電手段が接続されることにより前記光源へ供給される、
請求項1ないし4のいずれか一項に記載の光導波路デバイス。
【請求項6】
前記光源を複数備え、
前記複数の光源は、前記基板の長さ方向に沿って配列されている、
請求項1ないし5のいずれか一項に記載の光導波路デバイス。
【請求項7】
前記光源による前記基板への紫外線光または紫色光の照射は、前記電極による前記光波の制御についてのバイアスドリフト量が、予め定めた所定の量を超えたときに行われる、
請求項1ないし6のいずれか一項に記載の光導波路デバイス。
【請求項8】
前記基板に照射される紫外線光または紫色光の強度は、10mW/cm2以上である、
請求項1ないし7のいずれか一項に記載の光導波路デバイス。
【請求項9】
マッハツェンダー型光導波路と、当該マッハツェンダー型光導波路を伝搬する光波を制御するための電極と、が形成された電気光学効果を有する基板と、紫外線光または紫色光を前記基板に照射するための前記紫外線光または紫色光を透過する窓を備えた前記基板を収容する筺体と、を有する光導波路デバイスにおいて前記基板に生じたフォトリフラクティブ効果を解消又は低減する方法であって、
前記筺体が備える前記窓を介して、紫外線光又は紫色光の光源からの出射光を前記基板に照射するステップを含む、
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気光学材料により構成される導波路型光素子を用いた光変調モジュールに関し、特に、動作時間の経過に伴って生ずる特性変化、
特にフォトリフラクティブ効果を定期的に解消して長期動作を可能とし得る光導波路デバイス
、及び光導波路デバイスにおいてフォトリフラクティブ効果を解消又は低減する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光通信や光計測の分野においては、電気光学効果を有する基板上に形成した光導波路と、当該光導波路内を伝搬する光波を制御するための制御電極と、を備えた、導波路型光変調器などの光制御素子が多く用いられている。
【0003】
このような光制御素子として、例えば強誘電体結晶であるニオブ酸リチウム(LiNbO
3)(「LN」とも称する)を基板に用いたマッハツェンダ(MZ、Mach-Zehnder)型光変調器が広く用いられている。マッハツェンダ型光変調器は、外部から光を導入するための入射導波路と、当該入射導波路に導入された光を2つの光に分岐する分岐導波路と、当該分岐導波路により分岐された2つの光をそれぞれ伝搬させるための2本の並行導波路と、当該2本の並行導波路を伝搬した光を合波する合波導波路と、当該合波導波路により合波された光を外部へ出力するための出射導波路とにより構成されるマッハツェンダ型光導波路を備える。また、マッハツェンダ型光変調器は、上記並行導波路内を伝搬する光波の位相を電気光学効果により変化させて制御するための制御電極を備える。
【0004】
マッハツェンダ型光変調器は、2本の並行導波路を伝搬する2つの光の位相差を上記制御電極により変化させることにより、上記合波導波路から出力される光(合波光)の強度を変調する。すなわち、上記位相差を0及びπの間で変化させることで、上記合波光の光強度をON状態とOFF状態(強度ゼロ)との間で変化させるのである。
【0005】
ところが、2本の並行導波路を伝搬する2つの光の位相差は、環境温度の変化や動作時間の経過に伴って変化し、当該変化に伴い、上記位相差を所定の値にするために必要な上記制御電極への印加電圧(動作点)も変化(いわゆるバイアスドリフト)する。バイアスドリフトが発生する原因の一つに、フォトリフラクティブ効果に起因するバイアスドリフトがある。波長多重(WDM)光ファイバ長距離通信技術は、エルビウムドープファイバーアンプやラマンアンプによる多チャンネル光増幅を前提とした技術であり、波長は主に1550nm帯である。また上記増幅技術を前提としたシステムであるため、光変調器に入力される光の強度は、たかだが10−20mWである。光源としては、主に半導体レーザーダイオードが用いられている。
【0006】
ところで、光通信システムにおける伝送距離の拡大への要求は不変であり、マッハツェンダ型光変調器から光ファイバ伝送路へ送出する光信号の強度を高めるべく、当該マッハツェンダ型光変調器に入力する光の強度を高めることが必要とされる。
【0007】
光通信システムに用いられる波長1550nm帯においては、LNを用いた光導波路デバイスの光入力耐性について、入射光パワー75mWに対し100時間のスケールでは、位相変化(実効バイアス変化)、光挿入損失変化、光消光比変化、駆動電圧変化などの特性変化は生じないことが報告されている(非特許文献1)。しかしながら、原理的には、マッハツェンダ型光変調器に入力する光の強度が更に大きくなれば、当該光変調器に用いられる光学材料の特性に変化が生じ、当該変調器の変調特性も変化することがありうる。
【0008】
このような高パワー光が入力されることに伴う特性変化として、フォトリフラクティブ(photorefractive)効果に起因する諸現象がある(非特許文献1−3)。フォトリフラクティブ効果とは、高パワー光が光学材料に照射されたときに、当該材料中の不純物準位等にあった電子が光照射領域において励起されて移動し、当該移動した電子が、光照射されていない領域又は光照射領域のうち光強度の低い領域において固定されることで静電場が生成され、当該静電場により、ポッケルス効果等の電気光学効果を介して当該材料中に屈折率変化が誘起される現象をいう。屈折率変化が起こる形状、場所などにより、非特許文献に2に示される様々な現象がおこり、非特許文献1で試験された光学的特性が変化することが懸念される。
【0009】
マッハツェンダ型光変調器においては、フォトリフラクティブ効果によって例えば並行導波路の少なくとも一部の屈折率が変化することにより、上述した光によるバイアスドリフトが発生することが知られている。LN基板にTi拡散法にて形成されたマッハツェンダ型光導波路にレーザ光源から光を入射した場合には、当該光導波路のバイアスドリフトは、光入力強度75mWでは7時間程度は安定している(非特許文献1)。
【0010】
現在、通信用LN変調器の主要メーカーのLN変調器製品の多くの入力定格仕様は、ほぼこの値の横並びである。その一方で、通信波長帯におけるフォトリフラクティブ効果による特性変化の例が数少ないながら報告されている。LN変調器は、フォトリフラクティブ効果に起因する諸特性変化が小さく、高強度光入射に強いといわれているが、非特許文献4には、プロトン交換アニール法により形成された導波路について、1550nm帯の光を入射光として用いた場合の評価結果として、光入射強度100mW以上で10%程度、光入射強度300mWでは40%近くの、フォトリフラクティブ効果に起因する透過光強度の低下が起こることが記載されている。
【0011】
非特許文献5には、プロトン交換アニール法で形成された光導波路およびTi拡散法で形成された光導波路ともに、光入射強度およそ100mW以上の入射で、Y分岐導波路における分岐比の変化が起こることや、MZ型光導波路において消光比が劣化することが示されている。このように、フォトリフラクティブ効果に起因する光導波路の光学特性の変化は、通信波長帯1550nmであっても、光入力強度100mW以上になると顕著となり、長時間の安定動作は得られないことが知られている。
【0012】
また、通信波長帯1310nm帯においては、非特許文献3に、25mW以上の光入射において、LN導波路を用いた方向性結合器に特性変化が起こることが示されている。一方、非特許文献6には、フォトリフラクティブ効果によるLN導波路の特性の変化はそれほど激しくなく、125mW以上の光入射において、MZ型変調器のバイアス変化や消光比変化が起こること、および還元ガス中でのアニールにより耐性を改善し得ることが示されている。特許文献1,2には、光導波路基板内における二光束干渉を避ける構造にすることにより、光学特性の劣化を抑制する手段が示されている。特許文献1には、波長は示されていないが、光学特性の劣化は光入力強度10mW以上における現象であることが示されている。
【0013】
変調方式として多値変調(例えば、QPSK(Quadrature Phase Shift Keying)やOFDM(Orthogonal Frequency-Division Multiplexing))や波数多重変調、あるいは超高速TDM(Time Division Multiplexing)などが用いられる大容量光通信の用途や、高い測定精度が要求される光計測用途などのように、光信号品質(例えば、OSNR(Optical Signal-to-Noise Ratio))を高めるため線幅の狭いレーザ光源が用いられる場合には、当該光源の出力光のコヒーレンシー(干渉性)が高いことから、より低いパワーの光入力に対しても、フォトリフラクティブ効果が発生することとなる。例えば、本発明の発明者が実験から得た知見では、10MHz以下の狭線幅レーザを光源として用いた場合、光入力強度50mWでも、フォトリフラクティブ効果に起因するバイアスドリフトが発生し得る。
【0014】
このフォトリフラクティブ効果に起因するバイアスドリフトは、高パワーの光信号が入力される時間に伴って徐々に増加していくものであり、その程度が大きくない間は、例えば光導波路に設けた付加的な電極(バイアス電極)により光導波路に電界を印加することで上記バイアスドリフトを補償することが可能である(特許文献3)。しかしながら、フォトリフラクティブ効果に起因するバイアスドリフトが、バイアス電極による補償範囲を超えて増加した場合には、当該補償範囲を超えるバイアスドリフトによって光変調特性が劣化していくこととなる。
【0015】
従来、このような特性の劣化が生じた場合、当該特性劣化を生じた光導波路デバイスを光送信機から取り外して新しいデバイスと交換する必要がある。しかしながら、光導波路デバイスは、通常光送信機内部に備え得る回路基板に、直接、半田付けされて実装されるため、光導波路デバイスを取り外して交換することは困難な作業である。このため光導波路デバイスを取り外して交換する場合、当該回路基板を損傷したり、当該回路基板上に実装された他の回路部品を損傷することがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開2004−93905号公報
【特許文献2】特開2009−244811号公報
【特許文献3】特開平5−224163号公報
【非特許文献】
【0017】
【非特許文献1】A. R. Beaumont, C. G. Atkins, and R. C. Booth, “Optically induced drift effects in lithium niobate electro-optic waveguide devices operating at a wavelength of 1.51 μm,” Electron. Lett., vol.20, no.23, pp.1260-1261, 1986.
【非特許文献2】V. E. Wood, “Photorefractive Effect in Waveguide,” in Photorefractive Materials and Their Applications II - Topics in Applied Physics, ed. Gunter, P., and J.P. Huignard, Springer 1998.
【非特許文献3】G. T. Harvey, G. Astfalk, A. Feldblum, and B, Kassahun, “The Photorefractive Effect in Titanium Indiffused Lithium Niobate Optical Directional Coupler at 1.3 μm,” IEEE J. Quantum Electron, vol. QE-22, no.6, pp.893-946, 1986.
【非特許文献4】Y. Fujii, Y. Otsuka, and A. Ikeda,“Lithium Niobate as an Optical Waveguide and Its Application to Integrated Optics,” IEICE Trans. Electron., vol.90-C, no.5, pp.1081-1089, 2007.
【非特許文献5】S. M. Kostritskii, “Photorefractive effect in LiNbO3 - based integrated-optical circuits at wavelengths of third telecom window,” Applied. Physics, vol.B 95, no.3, pp.421-428. 2009
【非特許文献6】Betts, G. E., F. J. O'Donnell, and K. G. Ray. "Effect of annealing on photorefractive damage in titanium-indiffused LiNbO3 modulators." Photonics Technology Letters, IEEE vol.6, no.2 pp. 211-213 1994.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明が解決しようとする課題は、電気光学材料の基板上に形成された光導波路により構成される光機能素子を備えた光導波路デバイスに関し、高パワーの光信号が入力されることによって生ずるフォトリフラクティブ効果に起因した特性の変化を適時解消して、長期間の動作を可能とし得る光導波路デバイスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の一の態様は、マッハツェンダー型光導波路と、当該マッハツェンダー型光導波路を伝搬する光波を制御するための電極と、が形成された電気光学効果を有する基板と、当該基板を収容する筺体と、前記基板に紫外線光または紫色光を照射するための少なくとも一つの光源と、を備え、前記光源は、前記筺体の外に配され、前記筺体はは、前記光源が出射する紫外線光または紫色光を前記基板に照射するための、前記紫外線光または紫色光を透過する窓を有する、光導波路デバイスである。
本発明の他の態様によると、前記基板上において、1μm離れた地点間の紫外線光または紫色光の照度比が1.5以下である。
本発明の他の態様によると、
前記光源は、前記筺体の内部に
存在する接着剤、導電性樹脂、又はシール剤からアウトガスとして発生する残留モノマー、溶剤、帯電防止剤、可塑剤、難燃剤、酸化防止剤および又はそれらの反応物を含む有機系の物質
を分解させて、当該物質の成長による前記電極間の空間電荷層の形成を防止するものである。
本発明の他の態様によると、前記窓は、前記紫外線光または紫色光を拡散して透過させる拡散板である。
本発明の他の態様によると、前記光源は、前記筺体と別体の光源ユニットに配置され、前記光源への電源は、前記筺体に設けられた電気端子アレイの一部端子に接続された電源により供給され、電気端子アレイの一部端子に入力された電気は、前記筺体及び前記光源ユニットのそれぞれに設けられた導電手段が接続されることにより前記光源へ供給される。
本発明の他の態様によると、前記光導波路デバイスは前記光源を複数備え、前記複数の光源は、前記基板の長さ方向に沿って配列されている。
本発明の他の態様によると、前記光源による前記基板への紫外線光または紫色光の照射は、前記電極による前記光波の制御についてのバイアスドリフト量が、予め定めた所定の量を超えたときに行われる。
本発明の他の態様によると、前記基板に照射される紫外線光または紫色光の強度は、10mW/cm2以上である。
本発明の他の態様は、マッハツェンダー型光導波路と、当該マッハツェンダー型光導波路を伝搬する光波を制御するための電極と、が形成された電気光学効果を有する基板と、紫外線光または紫色光を前記基板に照射するための前記紫外線光または紫色光を透過する窓を備えた前記基板を収容する筺体と、を有する光導波路デバイスにおいて前記基板に生じたフォトリフラクティブ効果を解消又は低減する方法であって、前記筺体が備える前記窓を介して、紫外線光又は紫色光の光源からの出射光を前記基板に照射するステップを含む。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る光導波路デバイスの構成を示す図である。
【
図2】
図1に示す光導波路デバイスに用いられる、光源が配されたプリント基板を示す図である。
【
図3】
図1に示す光導波路デバイスに用いられる、光機能素子の構成を示す図である。
【
図4】本発明の第2の実施形態に係る光導波路デバイスの構成を示す図である。
【
図5】本発明の第1の実施形態に係る光導波路デバイスの構成を示す図である。
【
図6】
図5に示す光導波路デバイスの、光機能ユニットの構成を示す図である。
【
図7】
図5に示す光導波路デバイスの、光源ユニットの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。
【0022】
〔第1実施形態〕
まず、本発明の第1の実施形態について説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係る光導波路デバイスの構成を示す図であり、
図1(a)は上面図、
図1(b)は正面図、
図1(c)はAA断面矢視図である。
【0023】
光導波路デバイス10は、ケース100a及びカバー100bから成る筺体100と、筺体100内に収容された光機能素子102と、を有する。光機能素子102は、LN基板と、当該LN基板の表面(光機能素子102の図示上側の面)に形成されたマッハツェンダ型光導波路と、当該マッハツェンダ型光導波路上に形成された電極(例えば、高周波信号が印加されるRF電極と、直流電圧が印加されるバイアス電極)と、により構成される光変調素子である(光機能素子102の構成については、
図3を用いて後述する)。
【0024】
筺体100には、光機能素子102を動作させるための高周波信号及び直流電圧を、外部の電子装置から入力するための、高周波コネクタ104と、電気端子アレイ106と、が設けられている。
【0025】
光導波路デバイス10は、当該光機能素子102を構成する光導波路に光を入力する光ファイバ108aと、該光導波路からの出射光を筺体100の外部へ導く光ファイバ108bと、を有する。光ファイバ108a、108bと光機能素子102の光導波路との光学的な結合は、光機能素子102の端部において、光ファイバ108a、108bと、上記光導波路と、を突き合わせることにより行われる。
【0026】
光ファイバ108a、108bは、その端部にスリーブ112a、112bが固定され、上記光導波路と接着固定されている。また、光機能素子102には、光ファイバ108a、108bと、スリーブ112a、112b、及び上記光導波路との接着強度を補強するための補強部材110a、110bが設けられている。
【0027】
光ファイバ108a、108bは、フィードスルー114a、114bを通って、筺体100から、それぞれ図示左右方向に引き出されている。
【0028】
さらに、本実施形態の光導波路デバイス10は、光機能素子102の光導波路(光機能素子102の図示上面に形成されている)に紫外線光又は紫色光を照射するための複数の光源116a〜116kを有する。ここで、紫外線光とは、波長380nm以下の光をいい、紫色光とは、波長380nm〜430nmの範囲の光をいうものとする。光源116a〜116kは、例えばチップLEDであり、プリント基板118に取り付けられている。また、プリント基板118は、ケース100aに、例えば接着剤やハンダを用いて取り付けられている。
【0029】
図2は、光源116a〜116kが配されたプリント基板118を示す図である。光源116a〜116kは、光導波路デバイス10内に実装されたときに当該光源116a〜116kが光機能素子102のLN基板300の長さ方向に沿って並んで配置されるように(
図1(c))、プリント基板118上に、例えば等間隔に並べられ、当該プリント基板118に形成された導電パターン(不図示)により例えば電気的に並列に接続される。光源116a〜116kへの電源は、例えば、筐体100に設けられた電気端子アレイ106を構成する一部の電気端子から供給されるものとすることができる。
【0030】
なお、
図2では、光源116a〜116kは、例えばチップLEDの一般的な形状を持つものとして示されているが、これに限定されることはない。また、
図1(c)においては、光源116a〜116kは、矩形を持つものとして模式的に示されているが、当該形状に限定されることはない。
【0031】
図3は、光機能素子102を示す図である。本光機能素子102は、例えばXカットのLN基板300と、LN基板300の表面に形成されたマッハツェンダ型の光導波路302と、光導波路302を伝搬する光波を制御して光変調を行うための高周波電極304と、グランド電極306a、306bと、バイアスドリフトを補償するためのバイアス電極308a、308bと、で構成されている。また、光導波路302の光入出力部となるLN基板300の両端部には、補強部材110a、110bが配されている。そして、本実施形態では、
図1(c)に示すように、光機能素子102の光導波路302が形成された面と対向する位置に、
図2に示すプリント基板118が配され、当該プリント基板118上に配された光源116a〜116kからの紫外線光が、光機能素子102のLN基板300に照射されるように構成されている。なお、電極304、306a、306b、308a、308bは、通常Auなどの金属で形成されるが、光源116a〜116kから照射された紫外線光がLN基板300へ効率的に到達するように、前記電極を導電性の透明材料(例えば、ITO(Indium Tin Oxcide)、IZO(Indium Zinc Oxide)等)で構成された透明電極とすることができる。
【0032】
上記の構成を有する光導波路デバイス10は、上述のように、光機能素子102を構成するLN基板300に光源116a〜116kから紫外線光または紫色光が照射され得るように構成されている。このため、光ファイバ108aから高パワーの光が入力されることに起因して発生するフォトリフラクティブ効果により、光学的特性が劣化したり、バイアスドリフトの量が経時的に増加して当該ドリフト量が予め定めた閾値を超え変調特性を維持できなくなった場合には、光導波路デバイス10が光送信機内に実装された状態のまま、光機能素子102を非動作状態(電界を印加しない状態)にして、光源116a〜116kにより光機能素子102のLN基板300に紫外線光または紫色光を照射することで、当該フォトリフラクティブ効果により生じたバイアスドリフトを解消又は低減することができる。
【0033】
すなわち、光機能素子102の動作時、すなわち、電極304等により電界が印加されている状態において入力された高パワー光によって、LN基板300内で励起され、場所を移動し、再固定された電子を、上記電界を印加しない状態の下で当該LN基板300に紫外線光または紫色光を照射することにより再び励起して移動させることで、上記再固定によりLN基板300内で生じた空間電荷による静電場を消滅させるのである。その結果、上記静電場によりLN基板300内に生じていた屈折率変化を消滅させ、当該屈折率変化によって生じていたバイアスドリフトを消滅させることができる。この場合、LN基板300に照射する紫外線光または紫色光の照射量は、波長に依存するが、およそ3分の照射で回復させるには、365nm程度紫外線光の場合20mW/cm
2、410nm程度の紫色光の場合50mW/cm
2で十分である。
【0034】
回復の効果は、照度と時間の積にほぼ比例するため、回復時間のための照射が60分の場合、365nm程度紫外線光の場合1mW/cm
2、410nm程度の紫色光の場合2.5mW/cm
2で十分である。さらに短い波長の紫外線や軟X線などの場合やもっと弱い照射強度でよい。バイアスドリフトLN結晶の吸収端の波長はおよそ380nm付近であるが、波長380〜430nmの光程度であっても相応の吸収があり、紫色光であってもバンドギャップ(禁制帯)を越えて価電子帯と伝導帯の間を遷移させ、空間移動させることができる。照射はなるべく均一な分布で行う方が望ましい。照射強度分布に非常に強いコントラストがある状態で照射した後に、急激に照射を中止すると、照度比と距離に応じた空間電荷分布がLN結晶中に固定されて、屈折率分布が生じることがある。1μm離れた地点間の照度比が1.5倍程度あっても、両地点間に生じる屈折率差は10
−6程度であり、光学特性上の問題は無い。
【0035】
また、照射強度は一定に保たれる必要は無く、積算照度が隣接部位で大きく異ならなければ良い。光学特性の劣化、または、ドリフトの発生原因になっている導波光箇所に照射すれば、回復を実現できるが、それ以外の箇所に照射しても、デバイスが変質劣化することはないので、照射箇所を光導波路部や作用部などに限定する必要なない。
【0036】
なお、バイアスドリフト量について予め定める上記閾値は、例えば、光機能素子102が備えるバイアス電極308a、308bにより補償することが可能なバイアスドリフト量の上限値以下に設定、することできる。また、バイアスドリフト量が当該閾値に達したか否かは、現在のバイアスドリフトを補償すべく上記バイアス電極308a、308bに必要とされている電圧値を、上記閾値のバイアスドリフト量を補償するのに必要となる電圧値と比較することにより判断することができる。
【0037】
さらに、LN基板300上に形成された電極(不図示)において接着剤、導電性樹脂、シール剤などからアウトガスとして発生する残留モノマーや溶剤、帯電防止剤、可塑剤、難燃剤、酸化防止剤およびそれらの反応物などの有機系の堆積物・付着物を、光源116a〜116kによる光機能素子102への紫外線光または紫色光の照射により分解させて、当該有機系の堆積物・付着物の成長による電極間への空間電荷層の形成を防止することもできる。
【0038】
空間電荷の移動速度は遅いため、電極間に空間電荷層が形成されても、電気信号の高周波成分(メガHz以上)の電界分布にはほとんど影響しないが、バイアス信号や低周波信号(数百Hz以下)を打ち消す働きがあるため、電極間に印加したDCバイアス電界信号が打ち消されてしまい、いわゆるバイアスドリフトが発生する。この現象は、バッファー層や電荷分散膜を介さずに電極を電気光学基板上に形成する構成で特に顕著である。したがって、電極間に形成された空間電荷層は、除去する必要がある。
【0039】
この場合、LN基板300に照射する紫外線光または紫色光の照射量は、波長に大きく依存するが、365nm程度紫外線光の場合20mW/cm
2、410nm程度の紫色光の場合150mW/cm
2であることが望ましい。除去効果は、照射時間より波長への依存性が高い。光洗浄に一般的に用いられる波長200nm以下の紫外線であればなお望ましい。
【0040】
〔第2実施形態〕
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。本実施形態の光導波路デバイスは、紫外線光または紫色光を発光する光源としてLED等の複数の光源を並べて配置するのではなく、一の紫外線光または紫色光の光源からの光を、導光板を介して、光機能素子のLN基板のほぼ全域又は一部の領域に照射するものである。
【0041】
図4は、本発明の第2の実施形態に係る光導波路デバイスの構成を示す図であり、
図4(a)は上面図、
図4(b)は正面図、
図4(c)はBB断面矢視図である。なお、
図4において、第1の実施形態について示した
図1と同じ構成要素については、
図1と同じ符号を用いるものとし、上述した第1の実施形態における説明を援用するものとする。
【0042】
光導波路デバイス40は、第1の実施形態と同様の構成を有するが、LN基板300の長さ方向に並べられた光源116a〜116fの代わりに、回路基板418に搭載された紫外線光または紫色光を発光する光源416と導光板420とが、ケース400aとカバー100bとで構成される筺体400に収容されている。これにより、光源416から図示左方向に向けて出射する紫外線光または紫色光は、導光板420に図示右端部から入射し、当該導光板420により光機能素子102のほぼ全域に分配される。
【0043】
なお、光源416は、
図1における光源116a等と同様に、例えば紫外線光または紫色光を出射するLED等とすることができる。また、本実施形態では、紫外線光または紫色光を出射する光源416が一つだけ用いられ、その出射光が導光板420に対し図示右側の端部から入射するものとしたが、これに限らず光源416は複数設けることもできる。例えば、
図4における導光板420の左右両端部にそれぞれ光源416を配して、当該両端部から紫外線光を入射して光機能素子102の各領域に分配してもよい。これにより、光機能素子102に照射する紫外線光のパワーを高めることができる。
【0044】
本実施形態に係る光導波路デバイス40は、第1の実施形態に係る光導波路デバイス10と同様に、光ファイバ108aから高パワー光が入力されることに起因して発生するフォトリフラクティブ効果により光機能素子102のバイアスドリフトの量が経時的に増加して当該ドリフト量が予め定めた閾値を超えた場合には、光送信機内に実装された状態のまま光機能素子102を非動作状態(電界を印加しない状態)にして、光源416からの紫外線光または紫色光を導光板420を介して光機能素子102のLN基板300に照射することで、当該フォトリフラクティブ効果により生じたバイアスドリフトを解消又は低減することができる。
【0045】
また、光導波路デバイス10と同様に、上記のようにLN基板300に紫外線光または紫色光を照射することで、接着剤、導電性樹脂、シール剤などからアウトガスとして発生する残留モノマーや溶剤,帯電防止剤,可塑剤,難燃剤,酸化防止剤、半田フラックスおよびそれらの反応物などの有機系の堆積物・付着物を分解させて、当該有機系の堆積物・付着物の成長による電極間への空間電荷層の形成を防止することもできる。
【0046】
〔第3実施形態〕
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。本実施形態の光導波路デバイスは、光機能素子が筺体に収容された光機能ユニットと、当該光機能ユニット内の光機能素子のLN基板に紫外線光または紫色光を照射するための光源を収容した光源ユニットと、により構成される。そして、光源ユニットから出射される紫外線光または紫色光は、光機能ユニットの筺体に設けられた窓を介して、当該光機能ユニット内に収容された光機能素子のLN基板に照射される。
【0047】
図5は、本発明の第1の実施形態に係る光導波路デバイスの構成を示す図であり、
図5(a)は上面図、
図5(b)は正面図、
図5(c)はCC断面矢視図である。なお、
図5及び後述の
図6において、第1の実施形態について示した
図1と同じ構成要素については、
図1と同じ符号を用いるものとし、上述した第1の実施形態における説明を援用するものとする。
【0048】
本光導波路デバイス50は、光機能素子102を筺体500に収容した光機能ユニット520と、紫外線光または紫色光を出射する光源116a〜116kを収容した光源ユニット522と、により構成されている。
【0049】
図6は、
図5に示す光機能ユニット520の構成を示す図であり、
図6(a)はその上面図、
図6(b)は正面図、
図6(c)はDD断面矢視図である。本光機能ユニット520は、ケース500a及びカバー500bから成る筺体500と、筺体500内に収容された光機能素子102と、を有する。カバー500bには、光源ユニット522の光源116a〜116kから出射される紫外線光または紫色光を通過させる窓524が設けられている。当該窓524は、光源116a〜116kから出射される紫外線光または紫色光が光機能素子102のLN基板300に一様に照射されるように、例えば、くさび形状の溶融石英すりガラス拡散板で構成される拡散板とすることができる。
【0050】
尚、拡散板はこれに限定されず紫外線光または紫色光が光機能素子102のLN基板300に一様に照射されるように機能するものであれば用いることができる。
【0051】
また、カバー500bには、光機能ユニット520に対し光源ユニット522を結合すると共にこれらユニットの相対位置を規定するための、後述する光源ユニット522に設けられたピン730a、730bが挿入される孔626a、626bが設けられている。
【0052】
図7は、
図5に示す光源ユニット522の構成を示す図であり、
図7(a)は、
図5の図示下方から見た光源ユニット522の下面図、
図7(b)はEE断面矢視図である。本光源ユニット522は、ケース528と、当該ケース528の一の面に設けられた凹部に配されたプリント基板518と、当該プリント基板518上に搭載された光源116a〜116kと、を有する。光源116a〜116kは、第1の実施形態に係る光導波路デバイス10と同様に、光機能素子102のLN基板300の長さ方向に対応する方向に並べて配されている。
【0053】
また、光源ユニット522のケース528には、光機能ユニット520のカバー500bに設けられた孔626a、626bと勘合して光源ユニット522を光源ユニット522に結合すると共にこれらユニットの相対位置を規定するための、ピン730a、730bが設けられている。
【0054】
なお、光源116a〜116fへの電源供給は、電気端子アレイ106の一部端子に接続された電源を用いることができる。例えば、電気端子アレイ106の一部端子に入力された電気が孔626a、626b及びピン730a、730bを介してプリント基板518の配線パターンへ供給され、当該配線パターンから光源116a〜116fへ通電されることで行われるものとすることができる。あるいは、外部の電源装置からプリント基板518へ、直接、電源が供給されるものとしても良い。
【0055】
上記の構成を有する光導波路デバイス50は、第1の実施形態に係る光導波路デバイス10と同様に、光ファイバ108aから高パワー光が入力されることに起因して発生するフォトリフラクティブ効果によりバイアスドリフトの量が経時的に増加して当該ドリフト量が予め定めた閾値を超えた場合、光導波路デバイス10が光送信機内に実装された状態のまま、光機能素子102を非動作状態(電界を印加しない状態)にして、光源116a〜116fからの紫外線光を、窓524を介して光機能素子102のLN基板300に照射することで、当該フォトリフラクティブ効果により生じたバイアスドリフトを解消又は低減することができる。
【0056】
また、光導波路デバイス10と同様に、上記のようにLN基板300に紫外線光または紫色光を照射することで、接着剤、導電性樹脂、シール剤などからアウトガスとして発生する残留モノマーや溶剤,帯電防止剤,可塑剤,難燃剤,酸化防止剤, 半田フラックスおよびそれらの反応物などの有機系の堆積物・付着物を分解させて、当該有機系の堆積物・付着物の成長による電極間への空間電荷層の形成を防止することもできる。
【0057】
なお、光機能ユニット520と光源ユニット522とは、孔626a、626b及びピン730a、730bにより結合され一体として構成されて、光送信機の回路基板等に実装されるものとしてもよいし、互いに着脱可能に構成されて、光機能ユニット520のみが光送信機の回路基板等に実装されるものとしても良い。光機能ユニット520のみが光送信機の回路基板等に実装される場合には、光機能素子102のバイアスドリフト量が所定の量を超えたときに、光機能ユニット520を光送信機の回路基板等に実装したまま、又は当該回路基板から取り外した状態で、孔626a、626b及びピン730a、730bにより光源ユニット522を光機能ユニット520に結合させて、光機能素子102に紫外線光または紫色光を照射することで、フォトリフラクティブ効果に起因するバイアスドリフトを解消し又は低減するものとすることができる。
【0058】
また、本実施形態では、孔626a、626b及びピン730a、730bにより光源ユニット522を光機能ユニット520に結合できる構成としたが、これに限らず、光源ユニット522及び光機能ユニット520には、ピン730a、730b及び孔626a、626b等の、結合のための構造を備えないものとすることもできる。この場合、光機能ユニット520のみが光送信機の回路基板等に実装され、例えばバイアスドリフト量が所定の量を超えて紫外線光を照射する必要が生じたときに、光機能ユニット520を光送信機の回路基板等に実装したまま、又は当該回路基板から取り外した状態で、光源ユニット522を光機能ユニット520の外部に近接して配置して、光源ユニット522により、光機能ユニット520の窓524を介して当該機能ユニット520内の光機能素子102のLN基板300に紫外線光を照射するものとすることができる。
【0059】
また光機能ユニット520を光送信機内に配置された回路基板等に実装し、光源ユニット522を光送信機内に光機能ユニット520の外部に近接するように予め配置しておき、バイアスドリフト量が所定の量を超えて紫外線光を照射する必要が生じたときに光源ユニット522により、光機能ユニット520の窓524を介して当該機能ユニット520内の光機能素子102のLN基板300に紫外線光を照射するものとすることもできる。
【0060】
また、本実施形態では、光機能素子102のLN基板300の長さ方向に対応する方向に並べて配された光源116a〜116kにより、当該LN基板300に紫外線光を照射するものとしたが、これに限らず、光源116a〜116kをLN基板300の長さ方向に対応する方向に並べず、バイアスドリフトを解消する範囲内であれば任意に配置することができる。
【0061】
また光源116a〜116kに代えて、第2の実施形態において示した導光板420と光源416を用いるものとしても良い。また、光源116a〜116fに代えて、冷陰極管その他の、紫外線光を発光する任意の光源を用いることができる。
【0062】
さらに、導光板が光機能ユニット520の筺体500の内部に収容されているものとし、窓524に代えて当該導光板の光入射端が筺体500の外部に露出されているものとすることもできる。この場合、光源ユニット522は、当該導光板の光入射端に紫外線光または紫色光を入射するように、光源116a〜116kの少なくとも一つ、又はその他の紫外線光または紫色光を出射する任意の光源を備えるものとすることができる。
【0063】
また、上記実施例ではLN基板を有する光機能素子を例に説明したが、本発明はLN基板に限定されず、フォトリフラクティブ効果を生じる基板が筐体に収容された光導波路デバイスであれば本発明に属する。
【0064】
また、上記実施例では光導波路の構成としてマッハツェンダ型光導波路を例に説明したが、本発明はマッハツェンダ型光導波路に限定されることはない。例えば位相変調器など直線導波路で構成された光導波路デバイスであってもよい。
【0065】
また、上記実施例ではフォトリフラクティブ効果により生じたバイアスドリフトを解消又は低減する例について説明したが、本発明はこれに限定されず、フォトリフラクティブ効果により生じた光損失、動作電圧の変化、または光導波路からの出射光の消光比の劣化などの特性劣化を解消又は低減する場合も本発明に属する。
【0066】
以上説明したように、本実施形態に係る光導波路デバイス10、40、50は、光導波路302が形成された光機能素子102のLN基板300に紫外線光または紫色光を照射するための光源116a〜116f、又は光源416及び導光板420を、当該光機能素子102が収容された筺体100、400の内部、又は光機能素子102が収容された筺体500の内部に備える。これにより、フォトリフラクティブ効果に起因して発生する光機能素子102のバイアスドリフトを、光導波路デバイス10、40、50を例えば光送信機内に実装されたままの状態で、解消又は低減することができる。
【符号の説明】
【0067】
10、40、50・・・光導波路デバイス、100、400、500・・・筺体、100a、400a、500a、528・・・ケース、100b、500b・・・カバー、102・・・光機能素子、104・・・高周波コネクタ、106・・・電気端子アレイ、108a、108b・・・光ファイバ、110a、110b・・・補強部材、112a、112b・・・スリーブ、114a、114b・・・フィードスルー、116a〜116k、416・・・光源、118、418、518・・・プリント基板、300・・・LN基板、302・・・光導波路、304・・・高周波電極、306a、306b・・・グランド電極、308a、308b・・・バイアス電極、420・・・導光板、520・・・光機能ユニット、522・・・光源ユニット、524・・・窓、626a、626b・・・孔、730a、730b・・・ピン。