(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記非導電性無機粒子および前記有機粒子の合計配合量に対する前記非導電性無機粒子の配合量の割合が50質量%超98質量%以下である、請求項1に記載の非水系二次電池機能層用組成物。
請求項1〜3のいずれか一項に記載の非水系二次電池機能層用組成物を基材上に塗布し、塗布された非水系二次電池機能層用組成物を乾燥させることにより形成された、非水系二次電池用機能層。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
ここで、本発明の非水系二次電池機能層用組成物は、本発明の非水系二次電池用機能層を調製する際の材料として用いられる。そして、本発明の非水系二次電池用機能層は、本発明の非水系二次電池機能層用組成物を用いて調製され、例えばセパレータの一部を構成する。また、本発明の非水系二次電池は、少なくとも本発明の非水系二次電池用機能層を備えるものである。
【0019】
(非水系二次電池機能層用組成物)
非水系二次電池機能層用組成物は、非導電性無機粒子と有機粒子とを含有し、任意に、機能層用粒子状重合体、その他の成分を含有する、水などを分散媒としたスラリー組成物である。そして、本発明の非水系二次電池機能層用組成物を用いて調製される機能層は、セパレータ等の耐熱性や強度を高める多孔質の保護層としての機能を発揮しつつ、電解液中において電池部材同士、例えばセパレータおよび電極を強固に接着する接着剤層としての機能も発揮することができる。
【0020】
<非導電性無機粒子>
非水系二次電池機能層用組成物に含有される非導電性無機粒子は、無機の粒子であるため、通常は機能層の耐熱性や強度を高くすることができる。また、非導電性無機粒子の材料としては、非水系二次電池の使用環境下で安定に存在し、電気化学的に安定であると共に、後述する有機粒子との間で所定の密度差を確保することができる材料が好ましい。このような観点から非導電性無機粒子の材料の好ましい例を挙げると、酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化アルミニウムの水和物(ベーマイト(AlOOH)、ギブサイト(Al(OH)
3)、酸化ケイ素、酸化マグネシウム(マグネシア)、水酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化チタン(チタニア)、チタン酸バリウム(BaTiO
3)、ZrO、アルミナ−シリカ複合酸化物等の酸化物粒子;窒化アルミニウム、窒化ホウ素等の窒化物粒子;シリコン、ダイヤモンド等の共有結合性結晶粒子;硫酸バリウム、フッ化カルシウム、フッ化バリウム等の難溶性イオン結晶粒子;タルク、モンモリロナイト等の粘土微粒子;などが挙げられる。これらの中でも、酸化アルミニウム、ベーマイト、硫酸バリウム、チタン酸バリウムが好ましく、更にこれらの中でも、球状、扁平状、または板状の形状を有する酸化アルミニウム、ベーマイト、硫酸バリウム、チタン酸バリウムがより好ましい。また、これらの粒子は、必要に応じて元素置換、表面処理、固溶体化等が施されていてもよい。
なお、上述した非導電性無機粒子は、1種類を単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
ここで、本発明において、粒子が「球状」であるとは、扁平率が0.45未満であることを指し、粒子が「扁平状」であるとは、扁平率が0.45以上1.0未満であることを指し、粒子が「板状」であるとは、アスペクト比が5以上であることを指す。
なお、扁平率は、楕円または回転楕円体の長半径をa、短半径をbとして、(a−b)/aの式で求められた値である。
【0021】
非導電性無機粒子の体積平均粒子径D50は、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは0.2μm以上、更に好ましくは0.3μm以上であり、好ましくは1.0μm以下、より好ましくは0.9μm以下、更に好ましくは0.8μm以下である。このような体積平均粒子径D50の非導電性無機粒子を用いることにより、機能層の厚みが薄くても優れた保護機能を発揮する機能層を得ることができるので、電池の容量を高くすることができるからである。
なお、体積平均粒子径D50は、レーザー回折法で測定された粒度分布(体積基準)において小径側から計算した累積体積が50%となる粒子径を表す。
【0022】
また、非導電性無機粒子は、後述する有機粒子よりも密度が大きい必要があり、且つ、有機粒子との密度の差(非導電性無機粒子の密度−有機粒子の密度)は、1.5g/cm
3以上である必要がある。そして、非導電性無機粒子は、有機粒子との密度の差が2.0g/cm
3以上であることが好ましく、2.5g/cm
3以上であることがより好ましく、3.0g/cm
3以上であることが更に好ましく、また、5.0g/cm
3以下が好ましく、4.5g/cm
3以下であることがより好ましい。非導電性無機粒子の密度と有機粒子の密度との差が1.5g/cm
3未満であると、機能層用組成物を用いて形成した機能層が電解液中において高い接着性を十分に発現させることができなくなるからである。また、非導電性無機粒子の密度と有機粒子の密度との差が4.5g/cm
3以下であれば、機能層用組成物を用いて形成した機能層のイオン伝導性を良好に維持することができるからである。
【0023】
ここで、非導電性無機粒子の密度と有機粒子の密度との差を上記範囲外とすると高い接着性およびイオン伝導性が得られない理由は、明らかではないが、以下の通りであると推察される。即ち、非導電性無機粒子と有機粒子とを含む機能層用組成物を用いて形成した機能層では、主に非導電性無機粒子により保護機能が発揮されると共に、主に有機粒子により電解液中における高い接着性が発揮される。そのため、機能層に高い接着性を発揮させるためには、機能層内において非導電性粒子と有機粒子とが均一に混在しているのではなく、機能層形成時のマイグレーションなどにより有機粒子が機能層の表面側に適度に偏在していることが好ましい。従って、非導電性無機粒子の密度と有機粒子の密度との差が小さすぎると、機能層の形成の過程で非導電性無機粒子と有機粒子とが分離されず(即ち、有機粒子が機能層の表面側に偏在せず)、それによって有機粒子由来の高い接着性を十分に発現させることができなくなると推察される。一方、非導電性無機粒子の密度と有機粒子の密度との差が大きすぎると、機能層内で非導電性無機粒子および有機粒子が過度に偏在してしまい、裏面側に過度に偏在した非導電性無機粒子間の隙間が確保されずにイオン伝導性が低下すると推察される。
【0024】
なお、非導電性無機粒子の密度は、後述する有機粒子の密度よりも大きく、且つ有機粒子の密度との差が1.5g/cm
3以上であれば、特に制限はされないが、好ましくは3.0g/cm
3以上であり、好ましくは7.0g/cm
3以下であり、より好ましくは6.5g/cm
3以下である。非導電性無機粒子の密度が低すぎると、機能層中で非導電性無機粒子と有機粒子とが十分に分離せず、電極との十分な接着性が得られない虞がある。また、非導電性無機粒子の密度が高すぎると、機能層中で偏在した非導電性無機粒子により機能層のイオン伝導性が悪化する虞がある。
【0025】
−非導電性無機粒子の配合量−
機能層用組成物中の非導電性無機粒子の量は、非導電性無機粒子および有機粒子の合計配合量に対する非導電性無機粒子の配合量の割合が所定の範囲に収まるように設定することが好ましい。具体的には、非導電性無機粒子および有機粒子の合計配合量に対する非導電性無機粒子の配合量の割合は、好ましくは50質量%超、より好ましくは55質量%以上、更に好ましくは60質量%以上、より一層好ましくは65質量%以上、特に好ましくは70質量%以上であり、好ましくは98質量%以下、より好ましくは97質量%以下、更に好ましくは95質量%以下、特に好ましくは90質量%以下である。前記割合を前記範囲の下限値以上にすることにより、機能層に高い保護機能(例えば、耐熱性など)を発揮させることができる。また、前記割合を前記範囲の上限値以下にすることにより、機能層に高い接着性およびイオン伝導性をもたらすことができる。
【0026】
<有機粒子>
非水系二次電池機能層用組成物に含有される有機粒子は、機能層において、非水系二次電池の電池部材同士、例えばセパレータ基材と電極とを強固に接着させる接着剤としての機能を担う粒子である。そして、有機粒子は、コア部と、コア部の外表面を部分的に覆うシェル部とを備えるコアシェル構造を有しており、コア部は、電解液膨潤度が5倍以上30倍以下の重合体からなり、且つ、シェル部は、電解液膨潤度が1倍超4倍以下の重合体からなることを特徴とする。
【0027】
ここで、上記構造および性状を有する有機粒子は、電解液中において優れた接着性を発揮し、機能層を備える非水系二次電池の電池特性を良好に向上させることができる。更に、非水系二次電池の製造に使用されるセパレータ等の電池部材は、巻き重ねられた状態で保存および運搬されることがあるが、上記非水系二次電池用機能層が形成された基材は、巻き重ねられた場合でもブロッキング(機能層を介した電池部材同士の膠着)を生じ難く、ハンドリング性に優れている。
【0028】
なお、上記有機粒子を使用することで上述したような優れた効果が得られる理由は、明らかではないが、以下の通りであると推察される。
即ち、有機粒子のシェル部を構成する重合体は、電解液に対して膨潤する。このとき、例えば膨潤したシェル部の重合体が有する官能基が活性化して電池部材(例えば、機能層が設けられるセパレータ基材、機能層を有するセパレータと接着される電極等)の表面にある官能基と化学的または電気的な相互作用を生じるなどの要因により、シェル部は電池部材と強固に接着できる。そのため、有機粒子を含む機能層により、電池部材同士(例えば、セパレータと電極)を電解液中において強力に接着することが可能となっているものと推察される。また、このような理由により、セパレータ基材と電極との間に有機粒子を含む機能層を設けた場合に、電解液中においてそのセパレータ基材と電極とを強力に接着することが可能になっているものと推察される。
また、有機粒子を含む機能層を使用した場合、上述したように電解液中においてセパレータ基材と電極とを強力に接着することができるので、当該機能層を備える二次電池では、機能層を介して接着された電池部材間(例えば、セパレータと電極との間)に空隙を生じ難い。そのため、有機粒子を含む機能層を使用した二次電池では、二次電池内において正極と負極との距離が大きくなり難く、二次電池の内部抵抗を小さくできると共に、電極における電気化学反応の反応場が不均一になり難い。更に、当該二次電池では、充放電を繰り返してもセパレータと電極との間に空隙ができ難く、電池容量が低下しにくい。これにより、優れた耐膨らみ性やサイクル特性などの電池特性が実現できるものと推察される。
更に、有機粒子のコア部を構成する重合体は、電解液に対して大きく膨潤する。そして、重合体は、電解液に大きく膨潤した状態では、重合体の分子間の隙間が大きくなり、その分子間をイオンが通り易くなる。また、有機粒子のコア部の重合体は、シェル部によって完全に覆われてはいない。そのため、電解液中においてイオンがコア部を通りやすくなるので、有機粒子は高いイオン拡散性を発現できる。従って、上記有機粒子を使用すれば、機能層による抵抗の上昇を抑制し、低温出力特性などの電池特性の低下を抑制することも可能である。
また、シェル部の重合体は、電解液に膨潤していない状態においては、通常、接着性を有さず、電解液に膨潤することにより始めて接着性を発現する。そのため、有機粒子は、電解液に膨潤していない状態において、通常、接着性を発現しない。このため、その有機粒子を含む機能層は、電解液に膨潤していない状態では、通常、大きな接着性を発現せず、その機能層が形成されたセパレータ基材等の基材は、重ねてもブロッキングを生じ難いものと推察される。なお、有機粒子は、電解液に膨潤しない限りは接着性を全く発揮しないというものではなく、電解液に膨潤していない状態であっても、例えば一定温度以上(例えば50℃以上)に加熱されることにより、接着性を発現し得る。
【0029】
[有機粒子の構造]
ここで、有機粒子は、コア部と、コア部の外表面を覆うシェル部とを備えるコアシェル構造を有している。また、シェル部は、コア部の外表面を部分的に覆っている。即ち、有機粒子のシェル部は、コア部の外表面を覆っているが、コア部の外表面の全体を覆ってはいない。外観上、コア部の外表面がシェル部によって完全に覆われているように見える場合であっても、シェル部の内外を連通する孔が形成されていれば、そのシェル部はコア部の外表面を部分的に覆うシェル部である。したがって、例えば、シェル部の外表面(即ち、有機粒子の周面)からコア部の外表面まで連通する細孔を有するシェル部を備える有機粒子は、上記有機粒子に含まれる。
【0030】
具体的には、有機粒子の一例の断面構造を
図1に示すように、有機粒子100は、コア部110およびシェル部120を備えるコアシェル構造を有する。ここで、コア部110は、この有機粒子100においてシェル部120よりも内側にある部分である。また、シェル部120は、コア部110の外表面110Sを覆う部分であり、通常は有機粒子100において最も外側にある部分である。そして、シェル部120は、コア部110の外表面110Sの全体を覆っているのではなく、コア部110の外表面110Sを部分的に覆っている。
【0031】
ここで、有機粒子では、コア部の外表面がシェル部によって覆われる平均割合(被覆率)は、好ましくは10%以上、より好ましくは30%以上、更に好ましくは40%以上、特に好ましくは60%以上であり、好ましくは99.9%以下、より好ましくは99%以下、更に好ましくは95%以下、より一層好ましくは90%以下、特に好ましくは85%以下である。コア部の外表面がシェル部によって覆われる平均割合を前記範囲に収めることにより、イオンの拡散性と機能層の接着性とのバランスを良好にできる。
【0032】
なお、コア部の外表面がシェル部によって覆われる平均割合は、有機粒子の断面構造の観察結果から測定しうる。具体的には、以下に説明する方法により測定しうる。
まず、有機粒子を常温硬化性のエポキシ樹脂中に十分に分散させた後、包埋し、有機粒子を含有するブロック片を作製する。次に、ブロック片を、ダイヤモンド刃を備えたミクロトームで厚さ80nm〜200nmの薄片状に切り出して、測定用試料を作製する。その後、必要に応じて、例えば四酸化ルテニウムまたは四酸化オスミウムを用いて測定用試料に染色処理を施す。
次に、この測定用試料を、透過型電子顕微鏡(TEM)にセットして、有機粒子の断面構造を写真撮影する。電子顕微鏡の倍率は、有機粒子1個の断面が視野に入る倍率が好ましく、具体的には10,000倍程度が好ましい。
撮影された有機粒子の断面構造において、コア部の外表面に相当する周の長さD1、および、コア部の外表面とシェル部とが当接する部分の長さD2を測定する。そして、測定された長さD1および長さD2を用いて、下記の式(1)により、その有機粒子のコア部の外表面がシェル部によって覆われる割合Rcを算出する。
被覆割合Rc(%)=(D2/D1)×100 ・・・(1)
前記の被覆割合Rcを、20個以上の有機粒子について測定し、その平均値を計算して、コア部の外表面がシェル部によって覆われる平均割合(被覆率)とする。
ここで、前記の被覆割合Rcは、断面構造からマニュアルで計算することもできるが、市販の画像解析ソフトを用いて計算することもできる。市販の画像解析ソフトとして、例えば「AnalySIS Pro」(オリンパス株式会社製)を用いることができる。
【0033】
また、有機粒子の体積平均粒子径D50は、好ましくは0.01μm以上、より好ましくは0.1μm以上、更に好ましくは0.3μm以上であり、好ましくは10μm以下、より好ましくは5μm以下、更に好ましくは1μm以下である。有機粒子の体積平均粒子径D50を前記範囲の下限値以上にすることにより、機能層の接着力を高めることができると共に、機能層の内部抵抗の上昇を抑制することができる。また、上限値以下にすることにより、低温出力特性を高めることができると共に、機能層を介して接着される電極とセパレータとの密着性を高めることができる。
【0034】
また、有機粒子の密度は、前述の非導電性無機粒子の密度よりも小さく、且つ非導電性無機粒子の密度との差が1.5g/cm
3以上であれば、特に制限はされないが、好ましくは0.9g/cm
3以上であり、より好ましくは1.0g/cm
3以上であり、好ましくは1.30g/cm
3以下であり、より好ましくは1.20g/cm
3以下である。有機粒子の密度が低すぎると、機能層中で偏在した非導電性無機粒子により機能層のイオン伝導性が悪化する虞がある。また、有機粒子の密度が高すぎると、機能層中で非導電性無機粒子と有機粒子とが十分に分離せず、電極との十分な接着性が得られない虞がある。
【0035】
なお、有機粒子は、所期の効果を著しく損なわない限り、上述したコア部およびシェル部以外に任意の構成要素を備えていてもよい。具体的には、例えば、有機粒子は、コア部の内部に、コア部とは別の重合体で形成された部分を有していてもよい。具体例を挙げると、有機粒子をシード重合法で製造する場合に用いたシード粒子が、コア部の内部に残留していてもよい。ただし、所期の効果を顕著に発揮する観点からは、有機粒子はコア部およびシェル部のみを備えることが好ましい。
【0036】
−コア部−
有機粒子のコア部は、電解液に対して所定の膨潤度を有する重合体からなる。具体的には、コア部の重合体の電解液膨潤度は、5倍以上であることが必要であり、6倍以上であることが好ましく、7倍以上であることがより好ましく、また、30倍以下であることが必要であり、25倍以下であることが好ましく、20倍以下であることがより好ましい。コア部の重合体の電解液膨潤度を前記範囲の下限値以上にすることにより、電解液中での機能層の接着性を高めることができる。更に、コア部の重合体の電解液膨潤度を前記範囲の上限値以下にすることにより、サイクル特性等の電池特性を確保することができる。
【0037】
ここで、コア部の重合体の電解液膨潤度を測定するために用いる電解液としては、エチレンカーボネート(EC)と、ジエチルカーボネート(DEC)と、ビニレンカーボネート(VC)との混合溶媒(体積混合比:EC/DEC/VC=68.5/30/1.5、SP値12.7(cal/cm
3)
1/2)に、支持電解質としてのLiPF
6を1mol/Lの濃度で溶かした溶液を用いる。
【0038】
そして、コア部の重合体の電解液膨潤度は、具体的には、下記のようにして測定することができる。
まず、有機粒子のコア部の重合体を用意する。例えば、有機粒子の調製においてコア部を形成するために行うのと同様の工程を行うことにより得られた重合体を用意する。その後、用意した重合体によりフィルムを作製する。例えば重合体が固体であれば、温度25℃、48時間の条件で重合体を乾燥した後、その重合体をフィルム状に成形して、厚み0.5mmのフィルムを作製する。また、例えば、重合体がラテックス等の溶液または分散液である場合は、その溶液または分散液を、ポリテトラフルオロエチレン製のシャーレに入れ、温度25℃、48時間の条件で乾燥して、厚み0.5mmのフィルムを作製する。
次に、上記のようにして作製したフィルムを1cm角に裁断して、試験片を得る。この試験片の重量を測定し、W0とする。また、この試験片を上記電解液に温度60℃で72時間浸漬し、その試験片を電解液から取り出す。取り出した試験片の表面の電解液を拭き取り、浸漬後の試験片の重量W1を測定する。
そして、これらの重量W0およびW1を用いて、膨潤度S(倍)を、S=W1/W0にて計算する。
【0039】
なお、コア部の重合体の電解液膨潤度を調整する方法としては、例えば、電解液のSP値を考慮して、当該コア部の重合体を製造するための単量体の種類および量を適切に選択することが挙げられる。一般に、重合体のSP値が電解液のSP値に近い場合、その重合体はその電解液に膨潤しやすい傾向がある。他方、重合体のSP値が電解液のSP値から離れていると、その重合体はその電解液に膨潤し難い傾向がある。
【0040】
ここでSP値とは、溶解度パラメーターのことを意味する。
そして、SP値は、Hansen Solubility Parameters A User’s Handbook,2ndEd(CRCPress)で紹介される方法を用いて算出することができる。
また、有機化合物のSP値は、その有機化合物の分子構造から推算することも可能である。具体的には、SMILEの式からSP値を計算できるシミュレーションソフトウェア(例えば「HSPiP」(http=//www.hansen−solubility.com))を用いて計算しうる。このシミュレーションソフトウェアでは、Hansen SOLUBILITY PARAMETERS A User’s Handbook SecondEdition、Charles M.Hansenに記載の理論に基づき、SP値が求められている。
【0041】
コア部の重合体を調製するために用いる単量体としては、その重合体の電解液膨潤度が前記範囲となるものを適宜選択して用いうる。そのような単量体としては、例えば、塩化ビニル、塩化ビニリデン等の塩化ビニル系単量体;酢酸ビニル等の酢酸ビニル系単量体;スチレン、α−メチルスチレン、スチレンスルホン酸、ブトキシスチレン、ビニルナフタレン等の芳香族ビニル単量体;ビニルアミン等のビニルアミン系単量体;N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド等のビニルアミド系単量体;カルボン酸基を有する単量体、スルホン酸基を有する単量体、リン酸基を有する単量体、水酸基を有する単量体等の酸基含有単量体;メタクリル酸2−ヒドロキシエチル等の(メタ)アクリル酸誘導体;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、2−エチルヘキシルアクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル単量体;アクリルアミド、メタクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド単量体;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等の(メタ)アクリロニトリル単量体;2−(パーフルオロヘキシル)エチルメタクリレート、2−(パーフルオロブチル)エチルアクリレート等のフッ素含有(メタ)アクリレート単量体;マレイミド;フェニルマレイミド等のマレイミド誘導体;1,3−ブタジエン、イソプレン等のジエン系単量体;などが挙げられる。また、これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0042】
前記の単量体の中でも、コア部の重合体の調製に用いられる単量体としては、(メタ)アクリル酸エステル単量体、(メタ)アクリロニトリル単量体を用いることが好ましく、(メタ)アクリル酸エステル単量体を用いることがより好ましい。即ち、コア部の重合体は、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位または(メタ)アクリロニトリル単量体単位を含むことが好ましく、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位を含むことがより好ましい。これにより、重合体の膨潤度の制御が容易になると共に、有機粒子を用いた機能層のイオン拡散性を一層高めることができる。
【0043】
また、コア部の重合体における(メタ)アクリル酸エステル単量体単位および(メタ)アクリロニトリル単量体単位の合計の割合は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは55質量%以上、更に好ましくは60質量%以上、特に好ましくは70質量%以上であり、好ましくは100質量%以下、より好ましくは99質量%以下、更に好ましくは95質量%以下、特に好ましくは90質量%以下である。(メタ)アクリル酸エステル単量体単位および(メタ)アクリロニトリル単量体単位の割合を前記範囲に収めることにより、有機粒子の電解液膨潤度を前記範囲に制御しやすくなる。また、機能層のイオン拡散性を高めることができる。更に、二次電池の低温出力特性をより向上させることができる。
【0044】
また、コア部の重合体は、酸基含有単量体単位を含みうる。ここで、酸基含有単量体としては、酸基を有する単量体、例えば、カルボン酸基を有する単量体、スルホン酸基を有する単量体、リン酸基を有する単量体、および、水酸基を有する単量体が挙げられる。
【0045】
そして、カルボン酸基を有する単量体としては、例えば、モノカルボン酸、ジカルボン酸などが挙げられる。モノカルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸などが挙げられる。ジカルボン酸としては、例えば、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などが挙げられる。
また、スルホン酸基を有する単量体としては、例えば、ビニルスルホン酸、メチルビニルスルホン酸、(メタ)アリルスルホン酸、(メタ)アクリル酸−2−スルホン酸エチル、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、3−アリロキシ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸などが挙げられる。
更に、リン酸基を有する単量体としては、例えば、リン酸−2−(メタ)アクリロイルオキシエチル、リン酸メチル−2−(メタ)アクリロイルオキシエチル、リン酸エチル−(メタ)アクリロイルオキシエチルなどが挙げられる。
また、水酸基を有する単量体としては、例えば、アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸−2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸−2−ヒドロキシプロピルなどが挙げられる。
【0046】
これらの中でも、酸基含有単量体としては、カルボン酸基を有する単量体が好ましく、中でもモノカルボン酸が好ましく、(メタ)アクリル酸がより好ましい。
また、酸基含有単量体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0047】
また、コア部の重合体における酸基含有量体単位の割合は、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1質量%以上、更に好ましくは3質量%以上であり、好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下、更に好ましくは7質量%以下である。酸基含有量体単位の割合を前記範囲に収めることにより、有機粒子の調製時に、コア部の重合体の分散性を高め、コア部の重合体の外表面に対し、コア部の外表面を部分的に覆うシェル部を形成し易くすることができる。
【0048】
また、コア部の重合体は、上記単量体単位に加え、架橋性単量体単位を含んでいることが好ましい。架橋性単量体とは、加熱またはエネルギー線の照射により、重合中または重合後に架橋構造を形成しうる単量体である。架橋性単量体単位を含むことにより、重合体の膨潤度を、前記の範囲に容易に収めることができる。
【0049】
架橋性単量体としては、例えば、2個以上の重合反応性基を有する多官能単量体が挙げられる。このような多官能単量体としては、例えば、ジビニルベンゼン等のジビニル化合物;ジエチレングリコールジメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート等のジ(メタ)アクリル酸エステル化合物;トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート等のトリ(メタ)アクリル酸エステル化合物;アリルグリシジルエーテル、グリシジルメタクリレート等のエポキシ基を含有するエチレン性不飽和単量体;などが挙げられる。これらの中でも、コア部の重合体の電解液膨潤度を容易に制御する観点から、ジ(メタ)アクリル酸エステル化合物およびエポキシ基を含有するエチレン性不飽和単量体が好ましく、ジ(メタ)アクリル酸エステル化合物がより好ましい。また、これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0050】
ここで、一般に、重合体において架橋性単量体単位の割合が増えると、その重合体の電解液に対する膨潤度は小さくなる傾向がある。したがって、架橋性単量体単位の割合は、使用する単量体の種類および量を考慮して決定することが好ましい。コア部の重合体における架橋性単量体単位の具体的な割合は、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上、更に好ましくは0.5質量%以上であり、好ましくは5質量%以下、より好ましくは4質量%以下、更に好ましくは3質量%以下である。架橋性単量体単位の割合を前記範囲の下限値以上にすることにより、機能層の接着性を高めることができる。また、架橋性単量体単位の割合を前記範囲の上限値以下にすることにより、非水系二次電池のサイクル特性を向上させることができる。
【0051】
また、コア部の重合体のガラス転移温度は、好ましくは0℃以上、より好ましくは30℃以上、更に好ましくは50℃以上、より一層好ましくは60℃以上、特に好ましくは80℃以上であり、好ましくは150℃以下、より好ましくは130℃以下、更に好ましくは110℃以下、より一層好ましくは100℃以下である。コア部の重合体のガラス転移温度を前記範囲の下限値以上にすることにより、機能層の接着性を高めることができる。更に、ガラス転移温度を前記範囲の上限値以下にすることにより、二次電池の寿命を長くすることができる。また、コア部の重合体のガラス転移温度を前記範囲に収めることにより、二次電池の低温出力特性を改善することができる。ここで、ガラス転移温度は、JIS K7121に従って測定することができる。
【0052】
−シェル部−
有機粒子のシェル部は、コア部の電解液膨潤度よりも小さい所定の電解液膨潤度を有する重合体からなる。具体的には、シェル部の重合体の電解液膨潤度は、1倍超であることが必要であり、1.05倍以上であることが好ましく、1.1倍以上であることがより好ましく、1.2倍以上であることが更に好ましく、また、4倍以下であることが必要であり、3.5倍以下であることが好ましく、3倍以下であることがより好ましく、2倍以下であることが更に好ましい。シェル部の重合体の電解液膨潤度を前記範囲に収めることにより、電解液中における機能層の接着性を高めることができる。そのため、二次電池の内部抵抗を小さくできるので、二次電池の電池特性を良好に維持することができる。また、シェル部の重合体の電解液膨潤度を前記範囲の下限値以上にすることにより、二次電池の低温出力特性を良好にできる。更に、電解液膨潤度を前記範囲の上限値以下にすることにより、機能層の接着性を高めることができる。
【0053】
ここで、シェル部の重合体の電解液膨潤度を測定するために用いる電解液としては、コア部の重合体の電解液膨潤度を測定するために用いる電解液と同様のものを用いる。
【0054】
そして、シェル部の重合体の電解液膨潤度は、具体的には、下記のようにして測定することができる。
まず、有機粒子のシェル部の重合体を用意する。例えば、有機粒子の調製において、コア部の形成に用いる単量体組成物の代わりにシェル部の形成に用いる単量体組成物を用いて、コア部の製造方法と同様にして重合体を製造する。
その後、コア部の重合体の膨潤度の測定方法と同様の方法で、シェル部の重合体によりフィルムを作製し、そのフィルムから試験片を得て、膨潤度Sを求める。
【0055】
ここで、シェル部の重合体の電解液膨潤度を調整する方法としては、例えば、電解液のSP値を考慮して、当該シェル部の重合体を製造するための単量体の種類および量を適切に選択することが挙げられる。
【0056】
そして、シェル部の重合体を調製するために用いる単量体としては、その重合体の電解液膨潤度が前記範囲となるものを適宜選択して用いうる。そのような単量体としては、例えば、コア部の重合体を製造するために用いうる単量体として例示した単量体と同様の単量体が挙げられる。また、このような単量体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0057】
これらの単量体の中でも、シェル部の重合体の調製に用いられる単量体としては、芳香族ビニル単量体が好ましい。即ち、シェル部の重合体は、芳香族ビニル単量体単位を含むことが好ましい。また、芳香族ビニル単量体の中でも、スチレンおよびスチレンスルホン酸等のスチレン誘導体がより好ましい。芳香族ビニル単量体を用いれば、重合体の電解液膨潤度を制御し易い。また、機能層の接着性を一層高めることができる。
【0058】
そして、シェル部の重合体における芳香族ビニル単量体単位の割合は、好ましくは20質量%以上、より好ましくは40質量%以上、更に好ましくは50質量%以上、より一層好ましくは60質量%以上、特に好ましくは80質量%以上 であり、好ましくは100質量%以下、より好ましくは99.5質量%以下、更に好ましくは99質量%以下である。芳香族ビニル単量体単位の割合を前記範囲に収めることにより、シェル部の電解液膨潤度を前記範囲に制御しやすい。また、電解液中における機能層の接着力をより高めることができる。
【0059】
また、シェル部の重合体は、芳香族ビニル単量体単位以外に、酸基含有単量体単位を含みうる。ここで、酸基含有単量体としては、酸基を有する単量体、例えば、カルボン酸基を有する単量体、スルホン酸基を有する単量体、リン酸基を有する単量体、および、水酸基を有する単量体が挙げられる。
【0060】
そして、カルボン酸基を有する単量体としては、例えば、モノカルボン酸、ジカルボン酸などが挙げられる。モノカルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸などが挙げられる。ジカルボン酸としては、例えば、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などが挙げられる。
また、スルホン酸基を有する単量体としては、例えば、ビニルスルホン酸、メチルビニルスルホン酸、(メタ)アリルスルホン酸、(メタ)アクリル酸−2−スルホン酸エチル、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、3−アリロキシ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸などが挙げられる。
更に、リン酸基を有する単量体としては、例えば、リン酸−2−(メタ)アクリロイルオキシエチル、リン酸メチル−2−(メタ)アクリロイルオキシエチル、リン酸エチル−(メタ)アクリロイルオキシエチルなどが挙げられる。
また、水酸基を有する単量体としては、例えば、アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸−2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸−2−ヒドロキシプロピルなどが挙げられる。
【0061】
これらの中でも、酸基含有単量体としては、カルボン酸基を有する単量体が好ましく、中でもモノカルボン酸が好ましく、(メタ)アクリル酸がより好ましい。
また、酸基含有単量体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0062】
シェル部の重合体中の酸基含有単量体単位の割合は、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1質量%以上、更に好ましくは3質量%以上であり、好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下、更に好ましくは7質量%以下である。酸基含有単量体単位の割合を前記範囲に収めることにより、機能層中での有機粒子の分散性を向上させ、機能層全面に渡って良好な接着性を発現させることができる。
【0063】
また、シェル部の重合体は、架橋性単量体単位を含みうる。架橋性単量体としては、例えば、コア部の重合体に用いうる架橋性単量体として例示したものと同様の単量体が挙げられる。また、架橋性単量体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0064】
そして、シェル部の重合体における架橋性単量体単位の割合は、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上、更に好ましくは0.5質量%以上であり、好ましくは5質量%以下、より好ましくは4質量%以下、更に好ましくは3質量%以下である。
【0065】
また、シェル部の重合体のガラス転移温度は、好ましくは50℃以上、より好ましくは80℃以上、更に好ましくは90℃以上であり、好ましくは200℃以下、より好ましくは180℃以下、更に好ましくは150℃以下、特に好ましくは120℃以下である。シェル部の重合体のガラス転移温度を前記範囲の下限値以上にすることにより、機能層のブロッキングを抑制することができると共に、二次電池の低温出力特性を更に向上させることができる。また、ガラス転移温度を前記範囲の上限値以下にすることにより、電解液中における機能層の接着性を更に高めることができる。また、シェル部の重合体のガラス転移温度を前記範囲に収めることにより、二次電池のサイクル特性を改善することが可能である。
【0066】
更に、シェル部は、有機粒子の体積平均粒子径D50に対して、所定の範囲に収まる平均厚みを有することが好ましい。具体的には、有機粒子の体積平均粒子径D50に対するシェル部の平均厚み(コアシェル比率)は、好ましくは1.5%以上、より好ましくは2%以上、更に好ましくは5%以上であり、好ましくは30%以下、より好ましくは25%以下、更に好ましくは20%以下である。シェル部の平均厚みを前記範囲の下限値以上にすることにより、機能層の接着性を更に高めることができる。また、シェル部の平均厚みを前記範囲の上限値以下にすることにより、二次電池の低温出力特性を更に高めることができる。
【0067】
ここで、シェル部の平均厚みは、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて有機粒子の断面構造を観察することにより求められる。具体的には、TEMを用いて有機粒子の断面構造におけるシェル部の最大厚みを測定し、任意に選択した20個以上の有機粒子のシェル部の最大厚みの平均値を、シェル部の平均厚みとする。ただし、シェル部が重合体の粒子によって構成されており、かつ、有機粒子の径方向で、シェル部を構成する粒子同士が重なり合わず、それらの重合体の粒子が単層でシェル部を構成している場合は、シェル部を構成する粒子の個数平均粒子径をシェル部の平均厚みとする。
【0068】
また、シェル部の形態は特に制限されないが、シェル部は、重合体の粒子によって構成されていることが好ましい。シェル部が重合体の粒子によって構成されている場合、有機粒子の径方向にシェル部を構成する粒子が複数重なり合っていてもよい。ただし、有機粒子の径方向では、シェル部を構成する粒子同士が重なり合わず、それらの重合体の粒子が単層でシェル部を構成していることが好ましい。
【0069】
[有機粒子の調製方法]
そして、上述したコアシェル構造を有する有機粒子は、例えば、コア部の重合体の単量体と、シェル部の重合体の単量体とを用い、経時的にそれらの単量体の比率を変えて段階的に重合することにより、調製することができる。具体的には、有機粒子は、先の段階の重合体を後の段階の重合体が順次に被覆するような連続した多段階乳化重合法および多段階懸濁重合法によって調製することができる。
【0070】
そこで、以下に、多段階乳化重合法により上記コアシェル構造を有する有機粒子を得る場合の一例を示す。
【0071】
重合に際しては、常法に従って、乳化剤として、例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム等のアニオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ソルビタンモノラウレート等のノニオン性界面活性剤、またはオクタデシルアミン酢酸塩等のカチオン性界面活性剤を用いることができる。また、重合開始剤として、例えば、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、過硫酸カリウム、キュメンパーオキサイド等の過酸化物、2,2’−アゾビス(2−メチル−N−(2−ハイドロキシエチル)−プロピオンアミド)、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)塩酸塩等のアゾ化合物を用いることができる。
【0072】
そして、重合手順としては、まず、コア部を形成する単量体および乳化剤を混合し、一括で乳化重合することによってコア部を構成する粒子状の重合体を得る。更に、このコア部を構成する粒子状の重合体の存在下にシェル部を形成する単量体の重合を行うことによって、上述したコアシェル構造を有する有機粒子を得ることができる。
【0073】
この際、コア部の外表面をシェル部によって部分的に覆う観点から、シェル部の重合体を形成する単量体は、複数回に分割して、もしくは、連続して重合系に供給することが好ましい。シェル部の重合体を形成する単量体を重合系に分割して、もしくは、連続で供給することにより、シェル部を構成する重合体が粒子状に形成され、この粒子がコア部と結合することで、コア部を部分的に覆うシェル部を形成することができる。
【0074】
なお、シェル部の重合体を形成する単量体を複数回に分割して供給する場合には、単量体を分割する割合に応じてシェル部を構成する粒子の粒子径およびシェル部の平均厚みを制御することが可能である。また、シェル部の重合体を形成する単量体を連続で供給する場合には、単位時間あたりの単量体の供給量を調整することで、シェル部を構成する粒子の粒子径およびシェル部の平均厚みを制御することが可能である。
【0075】
また、シェル部を形成した後の有機粒子の体積平均粒子径D50は、例えば、乳化剤の量、単量体の量などを調整することで、所望の範囲にすることができる。
【0076】
更に、コア部の外表面がシェル部によって覆われる平均割合は、コア部を構成する粒子状の重合体の体積平均粒子径D50に対応して、例えば、乳化剤の量、および、シェル部の重合体を形成する単量体の量を調整することで、所望の範囲にすることができる。
【0077】
<機能層用粒子状重合体>
ここで、上述した通り、有機粒子は、電解液に膨潤していない状態では、通常、接着性を発現しない。そのため、電解液への浸漬前に機能層に含まれる成分が機能層から脱落するのを抑制する観点からは、結着材として、電解液に膨潤していない温度25℃の環境下において有機粒子よりも高い接着性を発揮する機能層用粒子状重合体を併用することが好ましい。機能層用粒子状重合体を用いることにより、電解液に膨潤している状態および膨潤していない状態の両方において、非導電性無機粒子等の成分が脱落するのを抑制することができる。
【0078】
そして、上記有機粒子と併用し得る機能層用粒子状重合体としては、非水溶性で、水などの分散媒中に分散可能な既知の粒子状重合体、例えば、熱可塑性エラストマーが挙げられる。そして、熱可塑性エラストマーとしては、共役ジエン系重合体およびアクリル系重合体が好ましく、アクリル系重合体がより好ましい。
ここで、共役ジエン系重合体とは、共役ジエン単量体単位を含む重合体を指し、共役ジエン系重合体の具体例としては、スチレン−ブタジエン共重合体(SBR)などの芳香族ビニル単量体単位および脂肪族共役ジエン単量体単位を含む重合体が挙げられる。また、アクリル系重合体とは、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位を含む重合体を指す。
なお、これらの機能層用粒子状重合体は、1種類を単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。ただし、2種類以上を組み合わせた機能層用粒子状重合体を用いる場合、かかる重合体は、上述した所定の電解液膨潤度を有する重合体からなるコアシェル構造を有する有機粒子とは異なるものである。
【0079】
更に、機能層用粒子状重合体としてのアクリル系重合体は、(メタ)アクリロニトリル単量体単位を含むことが更に好ましい。これにより、機能層の強度を高めることができる。
【0080】
ここで、機能層用粒子状重合体としてのアクリル系重合体において、(メタ)アクリロニトリル単量体単位および(メタ)アクリル酸エステル単量体単位の合計量に対する(メタ)アクリロニトリル単量体単位の量の割合は、好ましくは1質量%以上、より好ましくは5質量%以上であり、好ましくは30質量%以下、より好ましくは25質量%以下である。前記割合を前記範囲の下限値以上にすることにより、機能層用粒子状重合体としてのアクリル系重合体の強度を高め、当該アクリル系重合体を用いた機能層の強度をより高くすることができる。また、前記割合を前記範囲の上限値以下にすることにより、機能層用粒子状重合体としてのアクリル系重合体が電解液に対して適度に膨潤するため、機能層のイオン伝導性の低下および二次電池の低温出力特性の低下を抑制することができる。
【0081】
また、機能層用粒子状重合体としての重合体のガラス転移温度は、好ましくは−50℃以上であり、好ましくは25℃以下である。機能層用粒子状重合体としての重合体のガラス転移温度を前記範囲の下限値以上にすることにより、電解液への浸漬前の機能層の接着性を高めることができる。また、ガラス転移温度を前記範囲の上限値以下にすることにより、機能層の柔軟性を高めることができる。
【0082】
更に、機能層用粒子状重合体の体積平均粒子径D50は、好ましくは0.1μm以上0.5μm以下である。機能層用粒子状重合体の体積平均粒子径D50を前記範囲の下限値以上にすることにより、機能層用粒子状重合体の分散性を高めることができる。また、体積平均粒子径D50を前記範囲の上限値以下にすることにより、機能層の接着性を高めることができる。
【0083】
そして、機能層用組成物中の機能層用粒子状重合体の含有量は、非導電性無機粒子および有機粒子の合計量100質量部当たり、0.1質量部以上であることが好ましく、0.2質量部以上であることがより好ましく、30質量部以下であることが好ましく、20質量部以下であることがより好ましい。機能層用粒子状重合体の含有量を前記範囲の下限値以上にすることにより、非導電性無機粒子および有機粒子が機能層から脱落するのを十分に防止するとともに、機能層と基材との接着性を高めることができる。また、機能層用粒子状重合体の含有量を前記範囲の上限値以下にすることにより、機能層のイオン拡散性が低下するのを抑制することができる。
【0084】
機能層用粒子状重合体の製造方法としては、例えば、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法などが挙げられる。中でも、水中で重合をすることができ、粒子状重合体を含む水分散液をそのまま機能層用組成物の材料として好適に使用できるので、乳化重合法および懸濁重合法が好ましい。また、機能層用粒子状重合体としての重合体を製造する際、その反応系は分散剤を含むことが好ましい。機能層用粒子状重合体は、通常、実質的にそれを構成する重合体により形成されるが、重合に際して用いた添加剤等の任意の成分を同伴していてもよい。
【0085】
<その他の成分>
非水系二次電池機能層用組成物は、上述した成分以外にも、任意のその他の成分を含んでいてもよい。前記その他の成分は、電池反応に影響を及ぼさないものであれば特に限られず、公知のものを使用することができる。また、これらのその他の成分は、1種類を単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
前記その他の成分としては、例えば、粘度調整剤、濡れ剤、電解液添加剤などの既知の添加剤が挙げられる。
【0086】
[粘度調整剤]
粘度調整剤としては、水などの分散媒に溶解して機能層用組成物の粘度を調整し得るものであれば特に限定されず、キサンタンガム、デキストラン、サクシノグルカン、ブルラン等の天然高分子;セルロース硫酸ナトリウム、メチルセルロース、メチルエチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース(CMC)およびそれらの塩等の半合成高分子;ポリアクリル酸塩、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド、ポリビニルピロリドン、アクリル酸またはアクリル酸塩とビニルアルコールとの共重合体、無水マレイン酸またはマレイン酸もしくはフマル酸と酢酸ビニルとの共重合体の完全または部分ケン化物、変性ポリビニルアルコール、変性ポリアクリル酸、ポリエチレングリコール、ポリカルボン酸、ポリアクリルアミド、エチレン−ビニルアルコール共重合体、酢酸ビニル重合体等の合成高分子;などの水溶性高分子が挙げられる。これらの中でも、機能層に耐熱性を付与し、セパレータ基材等の基材の熱収縮を抑制する観点からは、キサンタンガム、カルボキシメチルセルロースおよびポリアクリルアミドが好ましい。
【0087】
そして、機能層用組成物中の粘度調整剤の含有量は、非導電性無機粒子および有機粒子の合計量100質量部当たり、0.2質量部以上2.0質量部以下であることが好ましい。粘度調整剤の含有量を前記範囲の下限値以上にすることにより、機能層用組成物の粘度を適度な大きさにし、機能層用組成物中で非導電性無機粒子等の各成分を良好に分散させることができる。また、粘度調整剤の含有量を前記範囲の上限値以下にすることにより、機能層を形成する過程でマイグレーション等により有機粒子および非導電性無機粒子を適度に偏在させ、機能層に高い接着性を発現させることができる。
【0088】
<非水系二次電池機能層用組成物の調製方法>
機能層用組成物の調製方法は、特に限定はされないが、通常は、上述した非導電性無機粒子と、有機粒子と、分散媒としての水と、必要に応じて用いられる機能層用粒子状重合体およびその他の成分とを混合して機能層用組成物を調製する。混合方法は特に制限されないが、各成分を効率よく分散させるため、通常は混合装置として分散機を用いて混合を行う。
分散機は、上記成分を均一に分散および混合できる装置が好ましい。例を挙げると、ボールミル、サンドミル、顔料分散機、擂潰機、超音波分散機、ホモジナイザー、プラネタリーミキサーなどが挙げられる。また、高い分散シェアを加えることができる観点から、ビーズミル、ロールミル、フィルミックス等の高分散装置も挙げられる。
【0089】
なお、得られる非水系二次電池機能層用組成物の粘度は、1mPa・s以上であることが好ましく、5mPa・s以上であることがより好ましく、10mPa・s以上であることが更に好ましく、15mPa・s以上であることが特に好ましく、100mPa・s以下であることが好ましく、90mPa・s以下であることがより好ましく、60mPa・s以下であることが更に好ましく、50mPa・s以下であることが特に好ましい。機能層用組成物の粘度が1mPa・s以上であれば、機能層用組成物中で非導電性無機粒子等の各成分を良好に分散させることができるからである。また、機能層用組成物の粘度が100mPa・s以下であれば、機能層を形成する過程でマイグレーション等により有機粒子および非導電性無機粒子を適度に偏在させ、機能層に有機粒子由来の高い接着性を発現させることができるからである。
【0090】
(非水系二次電池用機能層)
非水系二次電池用機能層は、上述した非水系二次電池機能層用組成物を用い、適切な基材上に形成することができる。この非水系二次電池用機能層は、機能層が設けられた電池部材の耐熱性や強度を向上させる保護層としての機能を発揮しつつ、非水系二次電池の電池部材同士、例えばセパレータ基材と電極とを電解液中において強固に接着させる接着剤層としての機能も発揮することができる。
【0091】
ここで、機能層用組成物を用いて基材上に機能層を形成する方法としては、機能層用組成物を適切な基材上に塗布して塗膜を形成し、形成した塗膜を乾燥することにより機能層を形成する方法が挙げられる。また、基材上に形成した機能層の用法に特に制限は無く、例えばセパレータ基材等の上に機能層を形成してそのままセパレータ等の電池部材として使用してもよいし、電極上に機能層を形成して使用してもよいし、離型基材上に形成した機能層を基材から一度剥離し、他の基材に貼り付けて電池部材として使用してもよい。
しかし、機能層から離型基材を剥がす工程を省略して電池部材の製造効率を高める観点からは、基材としてセパレータ基材等を用いることが好ましい。セパレータ基材に設けられた機能層は、セパレータの耐熱性や強度を高める保護層としての機能と、特に電解液中においてセパレータと電極とを強固に接着させる接着剤層としての機能とを同時に発現させる単一の層として、好適に使用することができる。
【0092】
そして、非水系二次電池用機能層をセパレータ基材上に形成してなるセパレータ(機能層付きセパレータ)は、従来の保護層および接着剤層を備えるセパレータに比べて、より短縮した工数および時間で作製することができるため、生産性が高い。また、上述した非水系二次電池用機能層をセパレータ基材上に形成してなるセパレータは、所定の有機粒子を使用して接着性を発揮させているので、従来の保護層および接着剤層を備えるセパレータに比べて、非水系二次電池に高い電池特性を発揮させることが可能である。
【0093】
なお、機能層は、セパレータ基材の片面のみの上に形成してもよいし、セパレータ基材の両面上に形成してもよい。そして、機能層をセパレータ基材の片面のみの上に形成してなるセパレータを使用すれば、電解液中において、正極とセパレータ、または、負極とセパレータが機能層を介して強固に接着した二次電池を製造することができる。また、機能層をセパレータ基材の両面上に形成してなるセパレータを使用すれば、電解液中において、正極とセパレータと負極とが、それぞれ機能層を介して強固に接着した二次電池を製造することができる。
【0094】
ここで、本発明の非水系二次電池用機能層は、通常、電解液中において接着性を示す。具体的には、例えば、表1に条件を示すセパレータ基材に、表1に条件を示す機能層を形成して機能層付きセパレータを作製し、その機能層の表面に、表1に条件を示す負極の負極合材層を沿わせ、温度80℃、圧力0.5MPaで10秒間プレスして作製した積層体について、表1に条件を示す電解液を用い、実施例と同様の方法により、接着性の評価として機能層付きセパレータと負極とのピール強度を求めた場合において、かかるピール強度が、通常は1N/m以上であり、好ましくは2N/m以上であり、より好ましくは3N/m以上である。
このように、非水系二次電池用機能層が電解液中において接着性を示せば、その機能層を二次電池に用いたときに、電解液中における電池部材間の接着性不良に伴うセルの膨らみや電池特性の低下を抑制することができる。
【0096】
(非水系二次電池)
本発明の非水系二次電池は、上述した非水系二次電池用機能層が形成されたセパレータと、電極とを備えることを特徴とする。具体的には、本発明の非水系二次電池は、正極と、負極と、セパレータ基材上に上述した非水系二次電池用機能層が形成されたセパレータ(機能層付きセパレータ)と、電解液とを備えるものである。そして、本発明の非水系二次電池では、非水系二次電池用機能層により、正極とセパレータ、および/または、負極とセパレータが、電解液中において強固に接着されているので、充放電の繰り返しに伴う電極の極板間の距離の拡大も抑制されて、サイクル特性などの電池特性が良好なものとなっている。また、本発明の非水系二次電池においては、非水系二次電池用機能層により、セパレータの耐熱性および強度が向上している。更に、本発明の非水系二次電池は、従来の保護層および接着剤層を備えるセパレータを使用する場合と比較し、セパレータの製造に要する時間を短縮して高い生産性で製造することができる。
【0097】
なお、上述した正極、負極、セパレータ基材および電解液としては、非水系二次電池において用いられている既知の正極、負極、セパレータ基材および電解液を使用することができる。
【0098】
具体的には、電極(正極および負極)としては、電極合材層を集電体上に形成してなる電極を用いることができる。なお、集電体としては、鉄、銅、アルミニウム、ニッケル、ステンレス鋼、チタン、タンタル、金、白金等の金属材料からなるものを用いることができる。これらの中でも、負極用の集電体としては、銅からなる集電体を用いることが好ましい。また、正極用の集電体としては、アルミニウムからなる集電体を用いることが好ましい。更に、電極合材層としては、電極活物質とバインダーとを含む層を用いることができる。
【0099】
また、電解液としては、通常、有機溶媒に支持電解質を溶解した有機電解液が用いられる。例えば、非水系二次電池がリチウムイオン二次電池である場合には、支持電解質としては、リチウム塩が用いられる。リチウム塩としては、例えば、LiPF
6、LiAsF
6、LiBF
4、LiSbF
6、LiAlCl
4、LiClO
4、CF
3SO
3Li、C
4F
9SO
3Li、CF
3COOLi、(CF
3CO)
2NLi、(CF
3SO
2)
2NLi、(C
2F
5SO
2)NLiなどが挙げられる。中でも、溶媒に溶けやすく高い解離度を示すので、LiPF
6、LiClO
4、CF
3SO
3Liが好ましく、LiPF
6が特に好ましい。なお、電解質は1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。通常は、解離度の高い支持電解質を用いるほどリチウムイオン伝導度が高くなる傾向があるので、支持電解質の種類によりリチウムイオン伝導度を調節することができる。
【0100】
更に、電解液に使用する有機溶媒としては、支持電解質を溶解できるものであれば特に限定されないが、例えば、ジメチルカーボネート(DMC)、エチレンカーボネート(EC)、ジエチルカーボネート(DEC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)、エチルメチルカーボネート(EMC)等のカーボネート類;γ−ブチロラクトン、ギ酸メチル等のエステル類;1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン等のエーテル類;スルホラン、ジメチルスルホキシド等の含硫黄化合物類;などが好適に用いられる。またこれらの溶媒の混合液を用いてもよい。中でも、誘電率が高く、安定な電位領域が広いのでカーボネート類を用いることが好ましく、エチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートとの混合物を用いることが更に好ましい。
なお、電解液中の電解質の濃度は適宜調整することができ、例えば0.5〜15質量%することが好ましく、2〜13質量%とすることがより好ましく、5〜10質量%とすることが更に好ましい。また、電解液には、既知の添加剤、例えばフルオロエチレンカーボネートやエチルメチルスルホンなどを添加してもよい。
【0101】
また、セパレータ基材としては、特に限定されることなく、例えば特開2012−204303号公報に記載のものを用いることができる。これらの中でも、セパレータ全体の膜厚を薄くすることができ、これにより、二次電池内の電極活物質の比率を高くして体積あたりの容量を高くすることができるという点より、ポリオレフィン系(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリ塩化ビニル)の樹脂からなる微多孔膜が好ましい。
【0102】
<非水系二次電池の製造方法>
本発明の非水系二次電池は、例えば、正極と、負極とを、上述の非水系二次電池用機能層を備えるセパレータを介して重ね合わせ、これを必要に応じて電池形状に応じて巻く、折るなどして電池容器に入れ、電池容器に電解液を注入して封口することにより製造することができる。非水系二次電池の内部の圧力上昇、過充放電等の発生を防止するために、必要に応じて、ヒューズ、PTC素子等の過電流防止素子、エキスパンドメタル、リード板などを設けてもよい。二次電池の形状は、例えば、コイン型、ボタン型、シート型、円筒型、角形、扁平型など、何れであってもよい。
なお、上述した本発明の一実施形態では、機能層をセパレータ基材上に設ける場合について説明したが、本発明の機能層は電極上に設けてもよい。この場合においても、セパレータ基材上に設けた場合と同様の効果が得られる。
【実施例】
【0103】
以下、本発明について実施例に基づき具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、以下の説明において、量を表す「%」および「部」は、特に断らない限り、質量基準である。
また、複数種類の単量体を共重合して製造される重合体において、ある単量体を重合して形成される構造単位の前記重合体における割合は、別に断らない限り、通常は、その重合体の重合に用いる全単量体に占める当該ある単量体の比率(仕込み比)と一致する。
実施例および比較例において、有機粒子を構成する重合体の電解液膨潤度、有機粒子のコア部の外表面がシェル部によって覆われる平均割合(被覆率)、有機粒子のシェル部の平均厚み(コアシェル比率)、各粒子(非導電性無機粒子、有機粒子および機能層用粒子状重合体)の体積平均粒子径D50、非導電性無機粒子および有機粒子の密度、各重合体(コア部の重合体、シェル部の重合体および機能層用粒子状重合体)のガラス転移温度、機能層用組成物の粘度、機能層のイオン伝導性、機能層付きセパレータの耐熱性、機能層付きセパレータと電極とのピール強度、並びに、二次電池の低温出力特性、耐膨らみ性およびサイクル特性は、下記の方法で測定および評価した。
【0104】
<有機粒子を構成する重合体の電解液膨潤度>
有機粒子のコア部およびシェル部の調製に使用した単量体組成物を使用し、コア部およびシェル部の重合条件と同様の重合条件で測定試料となる重合体(コア部の重合体およびシェル部の重合体)の水分散液をそれぞれ作製した。
次に、得られた水分散液を、ポリテトラフルオロエチレン製のシャーレに入れ、温度25℃で48時間乾燥して、厚み0.5mmのフィルムを製造した。そして、得られたフィルムを1cm角に裁断し、試験片を得た。この試験片の重量を測定し、W0とした。また、前記試験片を電解液に温度60℃で72時間浸漬した。その後、試験片を電解液から取り出し、試験片の表面の電解液を拭き取り、浸漬後の試験片の重量W1を測定した。そして、これらの重量W0およびW1を用いて、膨潤度S(倍)を、S=W1/W0にて計算した。
なお、電解液としては、エチレンカーボネート(EC)と、ジエチルカーボネート(DEC)と、ビニレンカーボネート(VC)との混合溶媒(体積混合比:EC/DEC/VC=68.5/30/1.5、SP値12.7(cal/cm
3)
1/2)に、支持電解質としてのLiPF
6を1mol/Lの濃度で溶かしたものを用いた。
【0105】
<有機粒子のコア部の外表面がシェル部によって覆われる平均割合(被覆率)>
有機粒子を、可視光硬化性樹脂(日本電子株式会社製「D−800」)に十分に分散させた後、包埋し、有機粒子を含有するブロック片を作製した。次に、ブロック片を、ダイヤモンド刃を備えたミクロトームで厚さ100nmの薄片状に切り出して測定用試料を作製した。その後、四酸化ルテニウムを用いて測定用試料に染色処理を施した。
次に、染色した測定用試料を、透過型電子顕微鏡(日本電子社製「JEM−3100F」)にセットして、加速電圧80kVにて、粒子状重合体の断面構造を写真撮影した。電子顕微鏡の倍率は、視野に有機粒子1個の断面が入るように倍率を設定した。そして、撮影された有機粒子の断面構造において、コア部の周の長さD1、および、コア部の外表面とシェル部とが当接する部分の長さD2を計測し、下記式(1)により、その有機粒子のコア部の外表面がシェル部によって覆われる割合Rcを算出した。
被覆割合Rc(%)=(D2/D1)×100 ・・・(1)
そして、被覆割合Rcを、任意に選択した20個の有機粒子について測定し、その平均値を計算して、コア部の外表面がシェル部によって覆われる平均割合(被覆率)とした。
【0106】
<有機粒子のシェル部の平均厚み(コアシェル比率)>
有機粒子のシェル部の平均厚みを、以下の手順で測定した。
シェル部が重合体の粒子により構成されている場合、上記被覆率の測定方法と同様にして、透過型電子顕微鏡によって、有機粒子の断面構造を観察した。そして、観察された有機粒子の断面構造から、シェル部を構成する重合体の粒子の最長径を測定した。任意に選択した20個の有機粒子についてシェル部を構成する重合体の粒子の最長径を測定し、その最長径の平均値をシェル部の平均厚みとした。
また、シェル部が粒子以外の形状を有している場合、上記被覆率の測定方法と同様にして、透過型電子顕微鏡によって、有機粒子の断面構造を観察した。そして、観察された有機粒子の断面構造から、シェル部の最大厚みを測定した。任意に選択した20個の有機粒子についてシェル部の最大厚みを測定し、その最大厚みの平均値をシェル部の平均厚みとした。
そして、測定されたシェル部の平均厚みを有機粒子の体積平均粒子径D50で割ることにより、有機粒子の体積平均粒子径D50に対するシェル部の平均厚みの比率であるコアシェル比率(単位:%)を計算し、シェル部の平均厚みを評価した。
【0107】
<各粒子の体積平均粒子径D50>
各粒子(非導電性無機粒子、有機粒子および機能層用粒子状重合体)の体積平均粒子径D50は、レーザー回折式粒子径分布測定装置(島津製作所社製「SALD−3100」)により測定された粒子径分布において、小径側から計算した累積体積が50%となる粒子径とした。
【0108】
<非導電性無機粒子および有機粒子の密度>
非導電性無機粒子および有機粒子の密度は、気相置換法に基づき乾式自動密度計(アキュピックII1340、島津製作所社製)を用いて測定した。
【0109】
<コア部の重合体、シェル部の重合体および機能層用粒子状重合体のガラス転移温度>
各重合体の調製に使用した単量体組成物を使用し、当該重合体の重合条件と同様の重合条件で、測定試料となる重合体を含む水分散液をそれぞれ作製した。
次に、示差熱分析測定装置(エスアイアイ・ナノテクノロジー社製、製品名「EXSTAR DSC6220」)を用い、乾燥させた測定試料10mgをアルミパンに計量し、リファレンスとして空のアルミパンを用い、測定温度範囲−100℃〜500℃の間で、昇温速度10℃/分、常温常湿下で、DSC曲線を測定した。この昇温過程で、微分信号(DDSC)が0.05mW/分/mg以上となるDSC曲線の吸熱ピークが出る直前のベースラインと、吸熱ピーク後に最初に現れる変曲点でのDSC曲線の接線との交点から、ガラス転移温度を求めた。
【0110】
<機能層用組成物の粘度>
調製した機能層用組成物について、B型粘度計を用いて、温度25℃、回転速度60rpmでの粘度(mPa・s)を測定した。
【0111】
<機能層のイオン伝導性>
作製した機能層付きセパレータおよび機能層を形成する前のセパレータ基材について、ガーレー測定器(熊谷理機工業製SMOOTH&POROSITYMETER(測定径=φ2.9cm))を用いてガーレー値(sec/100cc)を測定した。具体的には、機能層形成前の「セパレータ基材」のガーレー値G0と、機能層形成後の「機能層付きセパレータ」のガーレー値G1とから、ガーレー値の増加率ΔG(=(G1/G0)×100(%))を求めて、以下の基準で評価した。このガーレー値の増加率ΔGが小さいほど、機能層のイオン伝導性が優れていることを示す。
A:ガーレー値の増加率ΔGが150%未満
B:ガーレー値の増加率ΔGが150%以上200%未満
C:ガーレー値の増加率ΔGが200%以上250%未満
D:ガーレー値の増加率ΔGが250%以上
【0112】
<機能層付きセパレータの耐熱性>
作製した機能層付きセパレータを、一辺が12cmの正方形に切り、かかる正方形の内部に一辺が10cmの正方形を描いて試験片とした。そして、試験片を130℃の恒温槽に入れて1時間放置した後、内部に描いた正方形の面積変化(={(放置前の正方形の面積−放置後の正方形の面積)/放置前の正方形の面積}×100%)を熱収縮率として求め、下記の基準で評価した。この熱収縮率が小さいほど、機能層付きセパレータの耐熱性が優れていることを示す。
A:熱収縮率が5%未満
B:熱収縮率が5%以上10%未満
C:熱収縮率が10%以上20%未満
D:熱収縮率が20%以上
【0113】
<機能層付きセパレータと電極とのピール強度>
作製した負極および機能層付きセパレータを備える積層体について、10mm幅に切り出して、試験片とした。この試験片を電解液中に温度60℃で3日間浸漬した。ここで、電解液としては、エチレンカーボネート、ジエチルカーボネートおよびビニレンカーボネートの混合溶媒(エチレンカーボネート/ジエチルカーボネート/ビニレンカーボネート(体積混合比)=68.5/30/1.5;SP値12.7(cal/cm
3)
1/2)に、支持電解質としてのLiPF
6を溶媒に対して1mol/リットルの濃度で溶かしたものを用いた。
その後、試験片を取り出し、表面に付着した電解液を拭き取った。次いで、この試験片を、電極(負極)の集電体側の面を下にして、電極の表面にセロハンテープを貼り付けた。この際、セロハンテープとしては、JIS Z1522に規定されるものを用いた。また、セロハンテープは、水平な試験台に固定しておいた。そして、セパレータの一端を鉛直上方に引張り速度50mm/分で引っ張って剥がしたときの応力を測定した。この測定を3回行い、応力の平均値をピール強度(N/m)として求めた。ピール強度が大きいほど、機能層付きセパレータと電極との接着性が優れていることを示す。
【0114】
<二次電池の低温出力特性>
製造した放電容量800mAhの捲回型リチウムイオン二次電池を、25℃の環境下で24時間静置させた後に、25℃の環境下で、4.2V、0.1C、5時間の充電の操作を行い、その時の電圧V0を測定した。その後、−10℃の環境下で、1Cの放電レートにて放電の操作を行い、放電開始15秒後の電圧V1を測定した。そして、ΔV=V0−V1で示す電圧変化を求め、下記の基準で評価した。この電圧変化が小さいほど、低温出力特性に優れていることを示す。
A:電圧変化ΔVが450mV未満
B:電圧変化ΔVが450mV以上600mV未満
C:電圧変化ΔVが600mV以上
【0115】
<二次電池の耐膨らみ性>
製造した放電容量800mAhの捲回型リチウムイオン二次電池を、25℃の環境下で24時間静置させた後に、25℃の環境下で、4.35V、0.1Cの定電圧・定電流充電、2.75V、0.1Cの定電流放電にて充放電の操作を行った。その後、捲回型リチウムイオン二次電池を流動パラフィンに浸漬し、その体積V’0を測定した。体積V’0の測定後、流動パラフィンから取り出し、更に、60℃の環境下で、充放電の操作を繰り返し、1000サイクル後の捲回型リチウムイオン二次電池を流動パラフィンに浸漬し、その体積V’1を測定した。そして、サイクル前後でのセルの体積変化率ΔV’(%)=(V’1−V’0)/V’0×100を算出し、下記の基準で評価した。体積変化率ΔV’の値が小さいほど、セルの耐膨らみ性に優れていることを示す。
A:体積変化率ΔV’が40%未満
B:体積変化率ΔV’が40%以上55%未満
C:体積変化率ΔV’が55%以上
【0116】
<二次電池のサイクル特性>
製造した放電容量800mAhの捲回型リチウムイオン二次電池を、25℃の環境下で24時間静置させた後に、25℃の環境下で、4.35V、0.1Cの定電圧・定電流充電、2.75V、0.1Cの定電流放電にて充放電の操作を行い、初期容量C0を測定した。その後、更に、60℃の環境下で、充放電を繰り返し、1000サイクル後の容量C1を測定した。そして、サイクル前後での容量維持率ΔC(%)=C1/C0×100を算出し、下記の基準で評価した。容量維持率ΔCの値が大きいほど、サイクル特性に優れ、高い電池特性を有していることを示す。
A:容量維持率ΔCが85%以上
B:容量維持率ΔCが75%以上85%未満
C:容量維持率ΔCが75%未満
【0117】
(実施例1)
<有機粒子の調製>
攪拌機付き5MPa耐圧容器に、有機粒子のコア部形成用として、(メタ)アクリル酸エステル単量体としてのメタクリル酸メチル75部、(メタ)アクリル酸単量体としてのメタクリル酸4部、架橋性単量体としてのエチレングリコールジメタクリレート(EDMA)1部、乳化剤としてのドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム1部、イオン交換水150部、および、重合開始剤としての過硫酸カリウム0.5部を添加し、十分に攪拌した後、60℃に加温して重合を開始した。重合転化率が96%になった時点で、続いて、有機粒子のシェル部形成用として、芳香族ビニル単量体としてのスチレン19部と、酸基含有単量体としてのメタクリル酸1部とを連続添加し、70℃に加温して重合を継続した。添加した全単量体の重合転化率が96%になった時点で、冷却し反応を停止して、有機粒子を含む水分散液を得た。
そして、得られた有機粒子の被覆率およびコアシェル比率、体積平均粒子径D50および密度を測定した。また、有機粒子を構成する重合体の電解液膨潤度も測定した。結果を表2に示す。
【0118】
<機能層用粒子状重合体の調製>
撹拌機を備えた反応器に、イオン交換水70部、乳化剤としてのラウリル硫酸ナトリウム(花王ケミカル社製、製品名「エマール2F」)0.15部、並びに過硫酸アンモニウム0.5部を、それぞれ供給し、気相部を窒素ガスで置換し、60℃に昇温した。
一方、別の容器で、イオン交換水50部、分散剤としてのドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.5部、並びに、(メタ)アクリル酸エステル単量体としてのブチルアクリレート94部、アクリロニトリル2部、メタクリル酸2部、N−メチロールアクリルアミド1部およびアクリルアミド1部を混合して単量体混合物を得た。この単量体混合物を4時間かけて前記反応器に連続的に添加して重合を行った。添加中は、60℃で反応を行った。添加終了後、更に70℃で3時間撹拌して反応を終了し、機能層用粒子状重合体Aを含む水分散液を調製した。
そして、得られた機能層用粒子状重合体Aの体積平均粒子径D50およびガラス転移温度を測定した。結果を表2に示す。
【0119】
<機能層用組成物の調製>
非導電性無機粒子としての球状の硫酸バリウム(体積平均粒子径D50:0.7μm、密度:4.5g/cm
3)80質量部、前述の有機粒子20部、および粘度調整剤としてのポリアクリルアミド1.5部を、イオン交換水と混合して分散させた。更に、前述の機能層用粒子状重合体を含む水分散液を固形分相当で10部、および濡れ剤としてのポリエチレングリコール型界面活性剤(サンノプコ株式会社製、製品名:サンノプコ(登録商標)SNウェット366)0.2部を混合し、機能層用組成物を調製した。
調製した機能層用組成物について、粘度を測定した。結果を表2に示す。
【0120】
<機能層および機能層付きセパレータの作製>
セパレータ基材として、ポリエチレン製の多孔材料からなる有機セパレータ(厚さ16μm、ガーレー値210s/100cc)を用意した。用意した基材の両面に、前述の機能層用組成物を塗布し、50℃で3分間乾燥させた。これにより、片面当たり厚さ5μmの機能層を備えるセパレータ(機能層付きセパレータ)を作製した。
得られた機能層付きセパレータについて、イオン伝導性および耐熱性を評価した。結果を表2に示す。
【0121】
<負極の調製>
攪拌機付き5MPa耐圧容器に、1,3−ブタジエン33.5部、イタコン酸3.5部、スチレン62部、2−ヒドロキシエチルアクリレート1部、乳化剤としてのドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.4部、イオン交換水150部および重合開始剤としての過硫酸カリウム0.5部を入れ、十分に攪拌した後、50℃に加温して重合を開始した。重合転化率が96%になった時点で冷却して反応を停止して、負極合材層用の粒子状結着材(SBR)を含む混合物を得た。上記粒子状結着材を含む混合物に、5%水酸化ナトリウム水溶液を添加して、pH8に調整後、加熱減圧蒸留によって未反応単量体の除去を行った。その後、30℃以下まで冷却し、所望の粒子状結着材を含む水分散液を得た。
次に、負極活物質としての人造黒鉛(体積平均粒子径D50:15.6μm)100部、粘度調整剤としてのカルボキシメチルセルロースナトリウム塩(日本製紙社製「MAC350HC」)の2%水溶液を固形分相当で1部、および、イオン交換水を混合して固形分濃度が68%となるように調整した後、25℃で60分間混合した。次いで、固形分濃度が62%となるようにイオン交換水で調整し、更に25℃で15分間混合した。その後、得られた混合液に、前述の粒子状結着材を含む水分散液を固形分相当で1.5部、およびイオン交換水を入れ、最終固形分濃度が52%となるように調整し、更に10分間混合した。これを減圧下で脱泡処理し、流動性の良い負極用スラリー組成物を得た。
そして、前述のようにして得られた負極用スラリー組成物を、コンマコーターで、集電体である厚さ20μmの銅箔の上に、乾燥後の膜厚が150μm程度になるように塗布し、乾燥させた。この乾燥は、銅箔を0.5m/分の速度で60℃のオーブン内を2分間かけて搬送することにより行った。その後、120℃にて2分間加熱処理してプレス前の負極原反を得た。このプレス前の負極原反をロールプレスで圧延して、負極合材層の厚さが80μmのプレス後の負極を得た。
【0122】
<正極の調製>
正極活物質としてのLiCoO
2(体積平均粒子径D50:12μm)を100部、導電材としてのアセチレンブラック(電気化学工業社製「HS−100」)を2部、バインダーとしてのポリフッ化ビニリデン(クレハ社製、#7208)を固形分相当で2部と、N−メチルピロリドンとを混合し、全固形分濃度を70%とした。これらをプラネタリーミキサーにより混合し、正極用スラリー組成物を調製した。
前述のようにして得られた正極用スラリー組成物を、コンマコーターで、集電体である厚さ20μmのアルミ箔の上に、乾燥後の膜厚が150μm程度になるように塗布し、乾燥させた。この乾燥は、アルミ箔を0.5m/分の速度で60℃のオーブン内を2分間かけて搬送することにより行った。その後、120℃にて2分間加熱処理して、正極原反を得た。このプレス前の正極原反をロールプレスで圧延して、正極合材層の厚さが80μmのプレス後の正極を得た。
【0123】
<接着性評価用の電極および機能層付きセパレータを備える積層体の調製>
前述のようにして得られた負極と機能層付きセパレータとを、それぞれ、直径14mmおよび18mmの円形に切り抜いた。そして、円形の機能層付きセパレータの機能層の面に負極の負極合材層を沿わせた後、温度80℃、圧力0.5MPaで10秒間加熱プレスし、負極および機能層付きセパレータを備える積層体を調製した。
得られた積層体を用いて、機能層付きセパレータと電極とのピール強度を評価した。結果を表2に示す。
【0124】
<リチウムイオン二次電池の製造>
上記で得られたプレス後の正極を49cm×5cmに切り出して正極合材層側の表面が上側になるように置き、その上に55cm×5.5cmに切り出した両面に機能層を有するセパレータを配置した。更に、上記で得られたプレス後の負極を、50cm×5.2cmに切り出し、これを機能層付きセパレータ上に、負極合材層側の表面が機能層付きセパレータに向かい合うよう配置した。これを捲回機により、捲回し、捲回体を得た。この捲回体を60℃、0.5MPaでプレスし、扁平体とし、電池の外装としてのアルミ包材外装で包み、電解液(溶媒:エチレンカーボネート/ジエチルカーボネート/ビニレンカーボネート(体積混合比)=68.5/30/1.5、電解質:濃度1MのLiPF
6)を空気が残らないように注入し、更に、アルミ包材外装の開口を密封するために、150℃のヒートシールをしてアルミ包材外装を閉口し、非水系二次電池として放電容量800mAhの捲回型リチウムイオン二次電池を製造した。
得られたリチウムイオン二次電池について、低温出力特性、耐膨らみ性およびサイクル特性を評価した。結果を表2に示す。
【0125】
(実施例2,3)
有機粒子を含む水分散液の調製時に、有機粒子のコア部形成用として添加した単量体の種類および割合を表2に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様にして、有機粒子、機能層用粒子状重合体、機能層用組成物、機能層、機能層付きセパレータ、負極、正極、電極および機能層付きセパレータを備える積層体を調製し、リチウムイオン二次電池を製造した。そして、実施例1と同様にして各種評価を行った。結果を表2に示す。
【0126】
(実施例4)
有機粒子を含む水分散液の調製時に、有機粒子のシェル部形成用として添加した単量体の種類および割合を表2に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様にして、有機粒子、機能層用粒子状重合体、機能層用組成物、機能層、機能層付きセパレータ、負極、正極、電極および機能層付きセパレータを備える積層体を調製し、リチウムイオン二次電池を製造した。そして、実施例1と同様にして各種評価を行った。結果を表2に示す。
【0127】
(実施例5)
機能層用組成物の調製時に、非導電性無機粒子として、球状の硫酸バリウムに代えて、扁平状の酸化アルミニウムの水和物(ベーマイト、体積平均粒子径D50:0.9μm、密度:3.04g/cm
3)を用い、粘度調整剤としてのポリアクリルアミドの配合量を1.0部に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、有機粒子、機能層用粒子状重合体、機能層用組成物、機能層、機能層付きセパレータ、負極、正極、電極および機能層付きセパレータを備える積層体を調製し、リチウムイオン二次電池を製造した。そして、実施例1と同様にして各種評価を行った。結果を表2に示す。
【0128】
(実施例6)
機能層用組成物の調製時に、非導電性無機粒子として、球状の硫酸バリウムに代えて、球状のチタン酸バリウム(体積平均粒子径D50:0.4μm、密度:6.02g/cm
3)を用い、粘度調整剤としてのポリアクリルアミドの配合量を1.0部に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、有機粒子、機能層用粒子状重合体、機能層用組成物、機能層、機能層付きセパレータ、負極、正極、電極および機能層付きセパレータを備える積層体を調製し、リチウムイオン二次電池を製造した。そして、実施例1と同様にして各種評価を行った。結果を表2に示す。
【0129】
(実施例7)
機能層用組成物の調製時に、粘度調整剤としてのポリアクリルアミドの配合量を2.0部に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、有機粒子、機能層用粒子状重合体、機能層用組成物、機能層、機能層付きセパレータ、負極、正極、電極および機能層付きセパレータを備える積層体を調製し、リチウムイオン二次電池を製造した。そして、実施例1と同様にして各種評価を行った。結果を表2に示す。
【0130】
(実施例8,9)
機能層用組成物の調製時に、非導電性無機粒子としての硫酸バリウムと、有機粒子との配合量を表2に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様にして、有機粒子、機能層用粒子状重合体、機能層用組成物、機能層、機能層付きセパレータ、負極、正極、電極および機能層付きセパレータを備える積層体を調製し、リチウムイオン二次電池を製造した。そして、実施例1と同様にして各種評価を行った。結果を表2に示す。
【0131】
(実施例10)
有機粒子を含む水分散液の調製時に、有機粒子のコア部形成用として添加した単量体および有機粒子のシェル部形成用として添加した単量体の割合を表2に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様にして、有機粒子、機能層用粒子状重合体、機能層用組成物、機能層、機能層付きセパレータ、負極、正極、電極および機能層付きセパレータを備える積層体を調製し、リチウムイオン二次電池を製造した。そして、実施例1と同様にして各種評価を行った。結果を表2に示す。
【0132】
(比較例1)
機能層用組成物の調製時に、非導電性無機粒子として、球状の硫酸バリウムに代えて、球状のシリカ(体積平均粒子径D50:0.5μm、密度:2.2g/cm
3)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、有機粒子、機能層用粒子状重合体、機能層用組成物、機能層、機能層付きセパレータ、負極、正極、電極および機能層付きセパレータを備える積層体を調製し、リチウムイオン二次電池を製造した。そして、実施例1と同様にして各種評価を行った。結果を表2に示す。
【0133】
(比較例2〜4)
有機粒子を含む水分散液の調製時に、有機粒子のコア部形成用として添加した単量体の種類および割合、並びに有機粒子のシェル部形成用として添加した単量体の種類および割合を表2に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様にして、有機粒子、機能層用粒子状重合体、機能層用組成物、機能層、機能層付きセパレータ、負極、正極、電極および機能層付きセパレータを備える積層体を調製し、リチウムイオン二次電池を製造した。そして、実施例1と同様にして各種評価を行った。結果を表2に示す。
【0134】
【表2】
【0135】
表2より、所定の電解液膨潤度を有する重合体により形成され、所定のコアシェル構造を有する有機粒子と、当該有機粒子との密度の差が1.5g/cm
3以上である非導電性無機粒子とを含有する組成物を使用した実施例1〜9では、セパレータに高耐熱性を発揮させつつ、セパレータと電極とを電解液中において強固に接着することができ、良好な電池特性を有する二次電池を得ることができることが分かる。
また、表2より、有機粒子との密度の差が1.5g/cm
3未満である比較例1では、電解液中におけるセパレータと電極の接着性が低く、その結果、耐膨らみ性やサイクル特性等の電池特性に優れる二次電池が得られないことが分かる。
更に、表2より、コア部を構成する重合体の電解液膨潤度が所定下限値未満である比較例2では、電解液中におけるセパレータと電極との接着性が低く、耐膨らみ性に優れる二次電池が得られないことが分かり、また、当該電解液膨潤度が所定上限値超である比較例3では、サイクル特性等の電池特性に優れる二次電池が得られないことが分かる。
そして、表2より、シェル部を構成する重合体の電解液膨潤度が所定上限値超である比較例4では、電解液中におけるセパレータと電極との接着性が低く、耐膨らみ性やサイクル特性等の電池特性に優れる二次電池が得られないことが分かる。
【0136】
更に、表2の実施例1〜4より、有機粒子を構成する重合体の電解液膨潤度を調整することで、二次電池の低温出力特性やサイクル特性などの電池特性を向上させることができることが分かる。
また、表2の実施例1および5〜6より、非導電性無機粒子を変更することで、機能層のイオン伝導性、セパレータと電極との接着性、二次電池の耐膨らみ性を向上させることができることが分かる。
更に、表2の実施例1および7より、粘度調整剤の配合量を変えて機能層用組成物の粘度を調整することで、セパレータと電極との接着性、二次電池の耐膨らみ性を向上させることができることが分かる。
また、表2の実施例1および8〜9より、機能層用組成物における有機粒子と非導電性無機粒子との比率を変更することで、機能層のイオン伝導性、耐熱性、セパレータと電極との接着性、二次電池の耐膨らみ性および低温出力特性を向上させることができることが分かる。