特許第6522404号(P6522404)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6522404オイルミスト検出装置、オイルミスト検出方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6522404
(24)【登録日】2019年5月10日
(45)【発行日】2019年5月29日
(54)【発明の名称】オイルミスト検出装置、オイルミスト検出方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/53 20060101AFI20190520BHJP
   G01N 15/06 20060101ALI20190520BHJP
【FI】
   G01N21/53 Z
   G01N15/06 C
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-87592(P2015-87592)
(22)【出願日】2015年4月22日
(65)【公開番号】特開2016-205995(P2016-205995A)
(43)【公開日】2016年12月8日
【審査請求日】2018年3月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000155023
【氏名又は名称】株式会社堀場製作所
(73)【特許権者】
【識別番号】390033042
【氏名又は名称】ダイハツディーゼル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 真大
(74)【代理人】
【識別番号】100182121
【弁理士】
【氏名又は名称】三宅 紘子
(72)【発明者】
【氏名】野村 俊行
(72)【発明者】
【氏名】日下 竹史
(72)【発明者】
【氏名】安部 昇
(72)【発明者】
【氏名】望月 勝
【審査官】 嶋田 行志
(56)【参考文献】
【文献】 特表2006−515431(JP,A)
【文献】 特開昭57−069230(JP,A)
【文献】 特開2008−157648(JP,A)
【文献】 特開2006−234836(JP,A)
【文献】 特開2004−219131(JP,A)
【文献】 米国特許第05200607(US,A)
【文献】 特開2008−064685(JP,A)
【文献】 特開昭62−249033(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00−21/61
G01N 15/06
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光素子及び受光素子を収容した収容空間とオイルミストが導入される導入空間とを有する収容体を具備し、前記収容体内において、前記発光素子から射出された光をオイルミストに照射し、オイルミストに当たって反射又は散乱した光を前記受光素子で受光してオイルミストを検出するオイルミスト検出装置であって、
前記収容空間と前記導入空間とを仕切るとともに、前記収容空間側に開口する有底溝が形成されたレンズを備え、
前記レンズが、前記有底溝によって分けられた一方に、前記発光素子から射出された光を前記導入空間に導く第1導光領域を備えるとともに、前記有底溝によって分けられた他方に、オイルミストによって反射又は散乱された光を前記受光素子に導く第2導光領域を備え、
前記レンズが、前記収容空間側に配置されて前記有底溝が形成された球面形状をなす第1レンズ要素と、前記導入空間側に配置されて円柱形状をなす第2レンズ要素とを備えたものであることを特徴とするオイルミスト検出装置。
【請求項2】
前記レンズが、ポリエチレンナフタレートで構成されることを特徴とする請求項1記載のオイルミスト検出装置。
【請求項3】
前記収容体と前記レンズとの間に隙間なく配置される密閉部材をさらに備えることを特徴とする請求項1又は2記載のオイルミスト検出装置。
【請求項4】
請求項1に記載のオイルミスト検出装置を用いて、オイルミストを検出するオイルミスト検出方法であって、
前記レンズの前記導入空間側を遮光部材で覆って、前記発光素子から射出した光を前記受光素子で受光した初期受光量を記録し、
再度前記レンズの前記導入空間側を遮光部材で覆って、前記発光素子から射出した光を前記受光素子で受光した診断受光量を記録して、
前記初期受光量と前記診断受光量とを比較することによって、前記オイルミスト検出装置の劣化を判断することを特徴とするオイルミスト検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、オイルミストを検出するオイルミスト検出装置及びオイルミスト検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば内燃機関に用いられる潤滑油は、軸受の過熱等により熱せられてオイルミストとなることがあり、このようなオイルミストを検出するオイルミスト検出装置として、例えば特許文献1に記載されたものがある。
【0003】
この特許文献1記載のオイルミスト検出装置は、発光素子、受光素子、第1屈折手段及び第2屈折手段が収容されるセンサ収容室と、オイルミストが導入拡散されるオイルミスト導入室とを備えるケーシングを備え、このケーシング内において、発光素子から射出された光が第1屈折手段を経てオイルミストに照射され、オイルミストに当たって反射又は散乱した光が第2屈折手段を経て受光素子で受光されることにより、オイルミストを検出するものである。
そして、センサ収容室にオイルミストが侵入することを防ぐために、センサ収容室とオイルミスト導入室との間は、透光窓で仕切られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−234836号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1記載の装置では、センサ収容室又はオイルミスト導入室に導出入する光の一部を透光窓が反射してしまい、この反射光を受光素子が誤って受光するとオイルミストの検出精度が悪化するという問題がある。さらにこの反射光は、オイルミストに曝される透光窓の汚れ具合によって変化するので、補正することが難しい。
【0006】
本願は上記課題に鑑みてなされたものであって、反射光による検出精度の悪化を防止することができるオイルミスト検出装置を提供することをその主たる課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のオイルミスト検出装置は、発光素子及び受光素子を収容した収容空間とオイルミストが導入される導入空間とを有する収容体を具備し、前記収容体内において、前記発光素子から射出された光をオイルミストに照射し、オイルミストに当たって反射又は散乱した光を前記受光素子で受光して、オイルミストを検出するオイルミスト検出装置であって、前記収容空間と前記導入空間とを仕切るとともに、前記収容空間側に開口する有底溝が形成されたレンズを備え、前記レンズが、前記有底溝によって分けられた一方に、前記発光素子から射出された光を前記導入空間に導く第1導光領域を備えるとともに、前記有底溝によって分けられた他方に、オイルミストによって反射又は散乱された光を前記受光素子に導く第2導光領域を備えることを特徴とする。
【0008】
このようなものであれば、レンズの収容空間側に設けられた第1導光領域及び第2導光領域が1つのレンズ内に一体的に構成され、収容空間又は導入空間へ光を導出入させるとともに、導入空間側のレンズが、収容空間へのオイルミストの侵入を防ぐので、透光窓等の別部材を配置する必要がなくなる。そのため、反射光を低減することができ、検出精度の悪化を防止することができる。また、部品点数を減らすことができるので、装置の簡素化及び小型化を図ることができる。
【0009】
本発明のオイルミスト検出装置の具体的な一態様としては、前記レンズが、前記収容空間側に配置された前記有底溝が形成された球面形状をなす第1レンズ要素と、前記導入空間側に配置された円柱形状をなす第2レンズ要素と備えるものを挙げることができる。
【0010】
第2レンズ要素の厚みを薄くして、第2レンズ要素内の光路長を短くすれば、第2レンズ要素を介して、第1導光領域から第2導光領域に光が漏れることを防ぐことができる。また、導入空間側レンズ面にオイルミストによる汚れが付着していた場合であっても、第2レンズ要素内の光路長を短くすれば、その汚れによる受光素子の受光量の変動を、無視できるレベルにまで減らすことができる。
【0011】
本発明のオイルミスト検出装置の具体的な一態様としては、前記レンズが、ポリエチレンナフタレートで構成されるものを挙げることができる。
【0012】
一般的なレンズの材料は耐薬品性に乏しいので、オイルミストが発生する環境で使用するためには、保護フィルム等でレンズの表面を覆う必要がある。しかし、保護フィルムは、収容空間又は導入空間に導出入する光の一部を反射したり、オイルミストが発生する高温環境下において剥離したりする問題がある。これに対し、本発明のオイルミスト検出装置では、耐薬品性や耐熱性に優れたポリエチレンナフタレートでレンズを構成するので、保護フィルム等でレンズの表面を覆わなくても、オイルミストによってレンズが劣化又は破損することを防止できる。
【0013】
本発明のオイルミスト検出装置の具体的な一態様としては、前記収容体と前記レンズとの間に隙間なく配置される密閉部材をさらに備えるものを挙げることができる。
【0014】
このようなものであれば、収容体の収容空間にオイルミストが侵入することをより確実に防止することができるので、オイルミスト検出装置の劣化を防ぐことができる。
【0015】
本発明のオイルミスト検出方法は、発光素子及び受光素子を収容した収容空間とオイルミストが導入される導入空間とを有する収容体内において、前記発光素子から射出された光をオイルミストに照射し、オイルミストに当たって反射又は散乱した光を前記受光素子で受光してオイルミストを検出するオイルミスト検出方法であって、前記収容空間と前記導入空間とを仕切るとともに、前記収容空間側に開口する有底溝が形成された上述のレンズの前記導入空間側を遮光部材で覆って、前記発光素子から射出した光を前記受光素子で受光した初期受光量を記録し、再度前記レンズの前記導入空間側を遮光部材で覆って、前記発光素子から射出した光を前記受光素子で受光した診断受光量を記録して、前記初期受光量と前記診断受光量とを比較することによって、前記オイルミスト検出装置の劣化を判断することを特徴とする。
【0016】
発光素子又は受光素子の劣化を診断する場合、劣化診断時の受光素子の受光量を予め取得した初期受光量と比較する方法があるが、劣化診断時はレンズにオイルミストによる汚れが付着しているので、この汚れを取り除かないとノイズによる影響が受光量に現れてしまい、正確な劣化診断をおこなうことができない。
これに対し、本発明のオイルミスト検出装置は、汚れが付着したレンズの導入空間側を遮光部材で覆うので、汚れによるノイズの影響が受光量に現れることを防ぎ、また汚れを取り除く必要がないので、簡便に劣化診断を行うことができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、透光窓や保護フィルム等の別部材を設ける必要がないので、反射光を低減して、検出精度の悪化を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】第1実施形態におけるオイルミスト検出装置の斜視図。
図2】第1実施形態におけるオイルミスト検出装置の側面図。
図3】第1実施形態におけるオイルミスト検出装置のAA断面図。
図4】第1実施形態におけるレンズの斜視図。
図5】第1実施形態におけるオイルミスト検出装置の光路を示す概略図。
図6】第2実施形態におけるオイルミスト検出装置のAA断面図。
図7】第2実施形態におけるオイルミスト検出装置の光路を示す概略図。
図8】第2実施形態におけるオイルミスト検出装置のブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明のオイルミスト検出装置の一実施形態について、以下図面を用いて説明する。
【0020】
<第1実施形態>
第1実施形態のオイルミスト検出装置1は、例えば大型ディーゼルエンジン等に取り付けられるものであって、エンジン室で使用される潤滑油等が過熱されて発生するオイルミストを検出する、すなわちオイルミストの有無を検知したり、オイルミストの濃度を測定したりするために用いられるものである。
そして、図1及び図2に示すように、オイルミストに起因して生じる検出信号を生成する円筒形状のセンサ部2と、センサ部2の基端に連設されて直方体形状をなし、センサ部2で生成された検出信号を処理する情報処理部3とを備え、オイルミストの発生位置に、センサ部2をほぼ水平に突出させるように配置して使用されるものである。
【0021】
センサ部2は、発光素子4から射出される光をオイルミストに照射し、オイルミストに当たって反射又は散乱した光を受光素子5で受光して、この受光素子5が受光した受光量から検出信号を生成するものであり、図3に示すように、発光素子4及び受光素子5を収容する収容空間7及びオイルミストが導入拡散される導入空間8が設けられた収容体6を備える。
【0022】
発光素子4は、例えばLEDであり、オイルミストの粒子径に適合する波長帯域の光を発するものである。なお、発光素子4はLEDに限られず、例えばLD等の他の発光素子であっても構わない。
【0023】
受光素子5は、例えばPD(フォトダイオード)であり、その受光面に受けた光の強度に応じた値の検出信号を情報処理部3へ送信するものである。なお、受光素子5は、PDに限られず、例えばCCD等の他の受光素子であっても構わない。
【0024】
収容体6は、末端が情報処理部3に連設されるとともに、その内部に収容空間7が形成された円筒形状をなす第1収容要素6aと、第1収容要素6aに連結されて、その内部に導入空間8が形成された一端が閉塞した円筒形状をなす第2収容要素6bとを備える。そして、第1収容要素6aと第2収容要素6bとの間にはレンズ9が配置されて、収容空間7と導入空間8との間を仕切っている。
【0025】
収容空間7は、図3に示すように、第1収容要素6aの一端開口を塞ぐように配置された支持板10と、レンズ9とによって仕切られた空間のことである。この支持板10には、軸方向に対して対称となるように、発光素子4及び受光素子5がそれぞれ取り付けられている。また、これら発光素子4と受光素子5との間には、収容空間7を二分する軸方向に延伸した仕切り板11が設けられ、仕切り板11の一端は、支持板10に支持されている。そのため、この収容空間7は、仕切り板11によって、発光素子4から射出する光がレンズ9に導かれる第1空間7aと、レンズ9から入射した光が受光素子5に導かれる第2空間7bとに分けられている。
【0026】
導入空間8は、図3に示すように、レンズ9と第2収容要素6bの閉塞する一端との間に設けられた空間である。なお、第2収容要素6bの側周面は、内壁12及び外壁13からなる2重壁構造となるように構成され、内壁12と外壁13のそれぞれに貫通孔14が形成されている。そして、この貫通孔14からオイルミストが導出入される。
【0027】
しかしてレンズ9は、図3及び図4に示すように、収容空間7側に配置されて凸状面をなす第1屈折面S1と、導入空間8側に配置されて平滑面をなす第2屈折面S2とを備えるものであって、第1屈折面S1に、該凸面を縦断する凹形状の有底溝18が形成され、この有底溝18に、収容空間7を二分する仕切り板11の他端が嵌めこまれている。
【0028】
また、レンズ9は、図3及び図4に示すように、第1屈折面S1を有し、球面形状をなす第1レンズ要素15と、第2屈折面S2を有し、円柱形状をなす第2レンズ要素16とで構成されている。このレンズを構成する材料としては、例えば、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、アクリル、シクロオレフィンポリマーなどの光学用樹脂材料、より好ましくはポリエチレンナフタレートを用いることができる。
【0029】
第1レンズ要素15は、発光素子4の光を導入空間8に導くとともに、導入空間8に存在するオイルミストに当たって反射又は散乱した光を受光素子5へと導くものである。具体的には、有底溝18によって分けられた一方に、第1空間7aに配置されて、発光素子4から射出された光を導入空間8に導く第1導光領域19aを備え、有底溝18によって分けられた他方に、第2空間7bに配置されて、導入空間8に存在するオイルミストによって反射又は散乱された光を受光素子5に導く第2導光領域19bを備えるものである。
【0030】
第2レンズ要素16は、導入空間8から収容空間7にオイルミストが侵入することを防ぐ役割も果たす。第2レンズ要素16の厚みは、レンズ本体15の厚みに比べて薄くなるように構成されている。なお、この厚みは、適宜変更することができる。
【0031】
このレンズ9は以下のようにして収容体6内に配置されている。
図3に示すように、レンズ9の側周端部を固定しながら、レンズ9と収容体6との間に隙間なく配置される円環形状をなす密閉部材17が配置された状態で、レンズ9及び密閉部材17を第2収容要素6bの開口する一端に配置して、レンズ9及び密閉部材17を第2収容要素6bの一端に押し付けながら、第2収容要素6bの該一端近傍の外側周面を覆うように第1収容要素6aを第2収容要素6bに取り付けることによって、レンズ9を第1収容要素6aと第2収容要素6bとの間に固定する。このとき、例えば密閉部材17を弾性変形するパッキン等で構成すれば、密閉部材17はその形を変形させながら、第1収容要素6aとレンズ9との間を埋めるとともに、第2収容要素6bとレンズ9との間を埋める。そのため、密閉部材17によって第1収容要素6aとレンズ9との間及び第2収容要素6bとレンズ9との間に、隙間が生じることを防ぐことができる。
【0032】
情報処理部3は、構造的には、CPU、内部メモリ、I/Oバッファ回路、ADコンバータ等を有した所謂コンピュータ回路である。そして、内部メモリの所定領域に格納したプログラムに従って動作することで情報処理を行うものであり、本実施形態では、受光素子から送信される検出信号に基づいて、オイルミストの有無を検知したり、検出信号に基づいてオイルミストの濃度を測定したりするものである。
【0033】
上述のように構成されたオイルミスト検出装置1のオイルミストの検出動作について説明する。
【0034】
発光素子4から射出された光は、図5に示すように、第1空間7aの中で若干広がりながら収容体6の軸方向と平行な方向に進行し、レンズ本体15の第1導光領域19aで光軸を曲げられるとともに略平行化され、第2レンズ要素16を通過した後に導入空間8に入射し、第1導光領域19aの焦点近傍に設定してある領域Sに照射される。
【0035】
ここで、第2レンズ要素16は第1レンズ要素15に一体に成型されたものであるから、第1導光領域19aで曲げられた光はほとんどその進行方向を変えることがなく、第2レンズ要素16を通過する。
【0036】
そして、導入空間8の領域Sに存在するオイルミストに当たって反射又は散乱した光のうち、第2レンズ要素16を介して第2導光領域19bに入射したものは、第2導光領域19bで、その光軸が収容体6の軸方向と平行となるように屈折して受光素子5へと導かれ、受光素子5で受光される。
【0037】
受光素子5は、受けた光の強度に応じた値の検出信号を、プリアンプ回路等を経た後に情報処理部3に送信する。情報処理部3は、この検出信号に基づいて処理を行い、オイルミストの有無の判定やオイルミストの濃度を測定して、この結果を例えばランプやディスプレイ等の表示手段に表示する。なお、この表示手段は情報処理部3に設けられていてもよいし、情報処理部3とは別に設けられたものであってもよい。
【0038】
上述のように構成した第1実施形態におけるオイルミスト検出装置1は、以下のような格別の効果を奏する。
【0039】
つまり、レンズ9の収容空間側に設けられた第1導光領域19a及び第2導光領域19bが、収容空間7から導入空間8へ光を導出入させるとともに、レンズ9の導入空間側が、導入空間8に存在するオイルミストが収容空間7に侵入することを防ぐので、透光窓を配置する必要がなくなり、反射光を低減することができ、検出精度の悪化を防止することができる。また、透光窓を配置する場合と比べて部品点数を減らすことができるので、オイルミスト検出装置1の小型化や簡素化を図ることができる。
【0040】
また、第2レンズ要素16の厚みを薄くして、第2レンズ要素16内の光路長を短くすれば、第2レンズ要素16を介して、第1導光領域19aから第2導光領域19bに光が漏れることを防ぐことができる。このため、第2屈折面S2にオイルミストによる汚れが付着していた場合であっても、その汚れによる受光素子5の受光量の変動を、無視できるレベルにまで減らすことができる。
【0041】
さらに、耐薬品性や耐熱性に優れたポリエチレンナフタレートでレンズ9を構成するので、オイルミストによってレンズ9が破損又は劣化することを防止できるとともに、高温環境下におけるオイルミスト検出装置1の使用の信頼性を高めることができる。
【0042】
加えて、収容体6とレンズ9の隙間には、密閉部材17が配置されているので、収容体6の収容空間7にオイルミストが侵入することをより確実に防止することができ、オイルミスト検出装置1の劣化を防ぐことができる。
【0043】
<第2実施形態>
次に第2実施形態のオイルミスト検出装置20について説明する。
なお、第2実施形態のオイルミスト検出装置20は、第1実施形態のオイルミスト検出装置1に加えて情報処理部3が発光素子4又は受光素子5の劣化診断機能を有するものであり、それ以外の部分は第1実施形態と同様であるため、ここでは説明を省略する。なお、以下では、発光素子4を診断する場合について説明する。
【0044】
第2実施形態の情報処理部3は、図8に示すように、受光素子5から送信された検出信号を受け付けて記録する記録部23と、記録部23から所定の情報を取得して、オイルミスト検出装置の劣化判断を行う判断部24とを備えるものである。なお、記録部23は、例えば検出信号を取得した日時を示す日時信号を検出信号に紐付けて記録するものであってもよい。
【0045】
第2実施形態のオイルミスト検出装置20では、以下のようにしてオイルミスト検出装置の劣化診断を行う。
【0046】
まず、オイルミスト検出装置20が未使用の状態で、図6に示すように、ユーザは、レンズ9の導入空間8側を覆うように遮光部材21をセットする。
【0047】
ここで、遮光部材21は、密閉部材17の内径とほぼ同一の面積の側面を有する円板状をなすものであって、レンズ9と密閉部材17との間に挟まれて押圧固定されることにより、収容体6に収容される。この遮光部材21は、完全に光を遮断するものであってもよいし、汚れの影響を無視できる程度の反射率を備えるものであってもよい。このような遮光部材としては、例えば、黒色のナイロン系樹脂板、又はフッ素系のゴム板等の耐薬品性に優れた材料を用いることができる。
【0048】
そして、この状態でオイルミスト検出装置20を作動させると、発光素子4から射出された光のうち、図7に示すように、収容体6の側周面やレンズ9内で反射又は散乱した光が受光素子5に到達する。受光素子5は、受光した光の受光量に応じた値の検出信号を生成して情報処理部3に送信する。この検出信号は、所謂迷光によって生じるものであり、信号量は微量なものであるが、この信号量を、通常のオイルミストの検出に用いる信号量の1%未満となるように第2レンズ要素16の厚みによって調整することが望ましい。このように調整すれば、通常のオイルミスト濃度の検出時に、この迷光によって生じた信号による弊害を防ぐことが可能となるからである。
【0049】
情報処理部3では、図8に示すように、記録部23が受光素子5から送られてきた検出信号を受け付けて記録する。この記録部23が記録した検出信号を、以下初期受光量とする。初期受光量が記録されると、ユーザはレンズ9から遮光部材21を取り外す。
【0050】
次に、オイルミスト検出装置20の発光素子4の劣化が疑われる場合や定期的に発光素子4の劣化を診断したい場合、ユーザはレンズ9の導入空間8側を覆うように遮光部材21をセットする。
【0051】
そして、この状態でオイルミスト検出装置20を作動させると、発光素子4から射出された光のうち、図7に示すように、収容体6の側周面で反射又は散乱した光が受光素子5に到達する。受光素子5は、受光した光の受光量に応じた値の検出信号を生成して情報処理部3に送信する。
【0052】
情報処理部3では、図8に示すように、記録部23が受光素子5から送られてきた検出信号を受け付けて記録する。この記録部23が記録した検出信号を、以下診断受光量とする。そして、判断部24が、記録部23から初期受光量及び診断受光量を抽出して、診断受光量が、初期受光量の所定割合以下となっていれば、発光素子4が劣化していると判断して、表示手段等にその旨を表示する。
【0053】
上述のように構成した第2実施形態におけるオイルミスト検出装置20は、以下のような格別の効果を奏する。
【0054】
つまり、汚れが付着したレンズの導入空間8側を遮光部材21で覆うので、汚れによるノイズの影響が受光量に現れることを防ぐことができ、汚れを取り除く必要がないので、簡便に劣化診断を行うことができる。
【0055】
本発明は上記実施形態に限られたものではない。
【0056】
上記実施形態では、第1レンズ要素が球面形状をなすものであったが、例えば直方体形状をなすようなものであっても構わず、第1導光領域及び第2導光領域を備えるものであれば、その形状は適宜自由に変更することができる。また、上記実施形態では、有底溝18を第1レンズ要素15と第2レンズ要素16の境目までの深さとしていたが、有底溝の深さも適宜変更しても構わない。例えば、有底溝18は、第1レンズ要素15の途中までの深さであってもよいし、第1レンズ要素15と第2レンズ要素16の境目を超えて、第2レンズ要素16の一部まで達していてもよい。
【0057】
また、レンズを構成する材料は、上記実施形態に限られず、耐薬品性、耐熱性、耐油性等に優れた材料であれば何でもよい。
【0058】
さらに、上記第2実施形態では、初期受光量をユーザが取得するものであったが、初期受光量は、例えば出荷時の段階で予め記録部に記録されたものであってもよい。また、情報処理部に判断部がなく、ユーザが、記録部が記録した初期受光量及び診断受光量を比較して、オイルミスト検出装置の劣化診断を行うものであってもよい。
【0059】
加えて、上記第2実施形態において、例えば遮光部材を自動で開閉するシャッタのように構成し、例えば別途設けられたスイッチをユーザが押すことによって、要求信号を情報処理装置が受け付けて、情報処理装置から送信される開閉信号に基づいて開閉するように構成してもよい。また、導入空間側に開閉扉を設けて、この扉から遮光部材の着脱を行ってもよい。
【0060】
また、レンズを例えばCOP、PC、PMMA等の材料で構成し、このレンズの導入空間側を覆うように、例えば薄膜で構成した保護フィルムを貼り付けたものであってもよい。保護フィルムを薄く構成すれば、その反射光を減らすことができるので、レンズを上記のような一般的な材料で構成して、その導入空間側に保護フィルムを貼り付けることでコストを低減することができる。
【0061】
本発明は、その他その趣旨に反しない範囲で様々な変形が可能である。
【符号の説明】
【0062】
1・・・オイルミスト検出装置
4・・・発光素子
5・・・受光素子
7・・・収容空間
8・・・導入空間
9・・・レンズ
18・・有底溝
19a・第1導光領域
19b・第2導光領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8