(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
臨床検査の分野において、病院で患者から採取した血液・尿などの検体は試験管に封入され、病院の検査室または検査センターに運ばれ分析装置にて分析される。
【0005】
分析の前には、検体が封入された試験管(以下、親試験管と称す)に対して、遠心分離、開栓、親試験管からの検体分注時に使用する複数の試験管(以下、子試験管と称す)への分注などの前処理を行う必要がある。近年、これらの前処理は自動化され、検体検査自動化システムとして病院の検査室、または検査センターなどで使用されている。
【0006】
検体は複数種類の子試験管に分注されて分析装置へと送られるが、その分注時に液量が不足するとその検査項目を測定できなくなるため、再度採血をしなければならない。
【0007】
これに対して、予め検体の液量を把握することができれば優先順位の高い検査項目から子検体を発行することが可能である。これに加え、再度採血を行うにあたっても早い段階で液量不足をアラームで出すことができるため、待ち時間などの患者負担を軽減することができる。
【0008】
しかしながら、検体の液量や状態のチェックはユーザによる目視確認(マニュアル作業)によるところが大きく、ユーザの経験や感覚に左右されやすい。また、向上した処理能力に同調して適切なタイミングで判断するには人的な方法では限界があった。
【0009】
検体の液量を検知する技術としては、例えば上述したような技術がある。
【0010】
ところで、試験管の表面には患者ID・個人情報・装置運用に必要なパラメータなどの重要情報が記載されたバーコードラベルが貼付されるが、試験管種類とラベルの大きさによっては試験管の管壁の全体が被覆されるというケースや、幾重にも重ねてラベルを貼付され、内容物が見えなくなるという場合も多い。
【0011】
特許文献1の静電容量を用いた方法では、非接触で界面を検知することができるため、子検体の発行よりも前に予め液量を把握することができる。また誘電率の低い紙の影響は受けにくいため、バーコードラベルが採血管の管壁全体や幾重にも重ねられても界面の検知をすることができる。
【0012】
静電容量型近接センサの原理はコンデンサと同じで、静電容量センサに印加された電圧によって形成された電界により対象物の分極が生じ、分極によって生じた電荷に応じて変化する静電容量を検出するため、対象物質の誘電率や対象物質との距離に大きく影響される。
【0013】
通常、試験管はホルダもしくはラックに載せられてシステム内を搬送されるため、静電容量センサで界面を走査する際には試験管をアームで持ち上げてホルダもしくはラックから引き抜き、把持・固定をしなければ、ホルダやラック高さより下の界面を検知することはできない。静電容量センサを用いた非接触の界面検知技術では、対象物質の距離(特に試験管の傾きや、直径13cmや直径16cm等の試験管種類)や対象物質周辺にある物質(把持アームや試験管の栓、試験管を置く台)に大きく影響されるため、把持・固定方法が重要な意味を持つ。
【0014】
しかしながら、特許文献1のような試験管にフィットするような孔の開いたアームで試験管の開口部を固定し、試験管底部を窪みのある台で固定する方法では、アームの孔自体の径が変化しないため、試験管径の異なる直径13cmと直径16cmに対応できず、試験管が傾く可能性がある。
【0015】
また、試験管の底部形状は試験管種類によって様々であるため、一律に同形状の窪みで試験管底部を固定するのは難しく、試験管が傾いて挿入された場合、底部での補正ができないため、傾いたまま固定されてしまう。静電容量センサは対象物質との距離に大きく影響されるため、試験管が傾くと界面検出の精度が悪くなり、上述の方法では複数種類の試験管に対応することが困難である。
【0016】
さらに、アーム近傍に液面が来た場合、静電容量センサから試験管までの距離よりもセンサからアームまでの距離のほうが近くなるため、液面を誤検出する可能性がある。また、センサの形状が試験管にフィットするような曲率を有するものを利用して界面高さを走査するにあたっても、試験管径の異なる直径13cmと直径16cmが混在する場合、曲率自体が変化するため一律に対応するのは難しい。
【0017】
本発明は、1つの試験管に収納された少なくとも1つの層を有する試料の界面に関する情報を静電容量センサによって取得する際に、界面の検出に影響せず、試験管の種類によらない把持方法で、試験管をホルダもしくはラックから引き抜き、固定することができる把持アームを備えた検体検査自動化システムおよび検体チェックモジュールを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記課題を解決するために、例えば特許請求の範囲に記載の構成を採用する。
本発明は、上記課題を解決する手段を複数含んでいるが、その一例を挙げるならば、試験管に収容された少なくとも1つの層を有する検体のチェックを行う検体検査自動化システムであって、前記試験管内の検体の界面に関する情報を非接触の静電容量方式によって検出する計測部と、この計測部を前記試験管に対して上下動させる移動部と、前記試験管を搬送用ホルダもしくは搬送用ラックから持ち上げる把持機構とを備え、この把持機構は、前記計測部が前記試験管に対して非接触で
正対して界面を検出する際に、前記試験管を前記計測部に対して左右方向からの開閉で把持
して正対させる把持アームであって、
前記試験管との接触箇所は水よりも誘電率の低いゴムで構成され、その他の箇所はプラスチックで構成されており、前記試験管の中心に比べて前記計測部に対して前面側で、前記試験管より前記計測部側に突出しない位置で片アームにつき1点以上の点で接触して把持して、前記試験管を把持アーム端面から前記計測部に対して突出させて固定する把持アームを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば以下の通りである。
すなわち、本発明によれば、1つの試験管に収納された少なくとも1つの層を有する試料の界面に関する情報を静電容量センサによって取得する際に、界面の検出に影響せず、試験管の種類によらない把持方法で、試験管をホルダもしくはラックから引き抜き、固定することができ、界面の検出精度の向上に大きく貢献することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る検体検査自動化システムの全体構成および自動分析装置との位置関係を示す構成図である。
【
図2A】本発明の第1の実施形態における検体検査自動化システムでチェックする検体容器および検体の概略の例を示す図である。
【
図2B】本発明の第1の実施形態における検体検査自動化システムでチェックする検体容器および検体の概略の例を示す図である。
【
図2C】本発明の第1の実施形態における検体検査自動化システムでチェックする検体容器および検体の概略の例を示す図である。
【
図3】本発明の第1の実施形態に係る検体検査自動化システムにおける生体試料の容量の測定を行う機能を備えたモジュールの概略を示す図である。
【
図4】本発明の第1の実施形態に係る検体検査自動化システムにおける生体試料の容量の測定を行う構成の概略を示す図である。
【
図5】本発明の第1の実施形態における把持アームと従来の把持アームの形状の一例を示す上面図である。
【
図6A】本発明の第1の実施形態における把持アームと従来の把持アームの形状を示す側面図である。
【
図6B】本発明の第1の実施形態における把持アームと従来の把持アームの形状を示す側面図である。
【
図6C】本発明の第1の実施形態における把持アームと従来の把持アームの形状を示す側面図である。
【
図7A】本発明の第1の実施形態における検体の液量の測定を行う際の把持アームの把持動作の流れの概略を説明する図である。
【
図7B】本発明の第1の実施形態における検体の液量の測定を行う際の把持アームの把持動作の流れの概略を説明する図である。
【
図7C】本発明の第1の実施形態における検体の液量の測定を行う際の把持アームの把持動作の流れの概略を説明する図である。
【
図7D】本発明の第1の実施形態における検体の液量の測定を行う際の把持アームの把持動作の流れの概略を説明する図である。
【
図7E】本発明の第1の実施形態における検体の液量の測定を行う際の把持アームの把持動作の流れの概略を説明する図である。
【
図7F】本発明の第1の実施形態における検体の液量の測定を行う際の把持アームの把持動作の流れの概略を説明する図である。
【
図7G】本発明の第1の実施形態における検体の液量の測定を行う際の把持アームの把持動作の流れの概略を説明する図である。
【
図8A】本発明の第1の実施形態における検体の液量の測定を行う際の把持動作および走査動作の流れの概略を示す図である。
【
図8B】本発明の第1の実施形態における検体の液量の測定を行う際の把持動作および走査動作の流れの概略を示す図である。
【
図8C】本発明の第1の実施形態における検体の液量の測定を行う際の把持動作および走査動作の流れの概略を示す図である。
【
図8D】本発明の第1の実施形態における検体の液量の測定を行う際の把持動作および走査動作の流れの概略を示す図である。
【
図9】本発明の第1の実施形態に係る検体検査自動化システム検体容器中の生体試料の容量の測定のフローチャート図である。
【
図10】本発明の第2の実施形態に係る把持アームの概略の一例を示す上面図である。
【
図11】本発明の第2の実施形態に係る把持アームの概略の他の一例を示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に本発明の検体検査自動化システムおよび検体チェックモジュールの実施形態を、図面を用いて説明する。
【0022】
<第1の実施形態>
本発明の検体検査自動化システムおよび検体チェックモジュールの第1の実施形態を、
図1乃至
図9を用いて説明する。
【0023】
図1は本実施形態の検体検査自動化システム1の全体構成図である。
図1において、検体検査自動化システム1は、検体検査自動化システム全体を制御するシステムマネージャ2、投入モジュール3,遠心分離モジュール4,検体チェックモジュール5,開栓モジュール6,バーコードラベラ7,検体分注モジュール8,閉栓モジュール9,検体分類モジュール10,収納モジュール11等の種々のモジュールと、それら各検体処理モジュールを結合し、検体を検体処理ユニットから他の検体検査自動化システムへと搬送する搬送ライン12を基本要素としている。
この検体検査自動化システム1の先には、検体中の成分の定性・定量分析を行うための自動分析装置13が接続されている。
【0024】
投入モジュール3は、検体が収容された試験管33を検体検査自動化システム1内に投入するモジュールであり、この投入モジュール3内に投入された試験管33の撮像を行うためのカメラ3aを備えている。遠心分離モジュール4は、投入された試験管33に対して遠心分離を行うモジュールである。開栓モジュール6は、試験管33の栓を開栓するモジュールである。バーコードラベラ7は、小分けされた試験管33にバーコード等を貼り付けるモジュールである。検体分注モジュール8は、遠心分離された検体を、自動分析装置13などで分析するために小分けを行うモジュールである。閉栓モジュール9は、小分けされた容器や分注元の試験管33に栓を閉栓するモジュールである。検体分類モジュール10は、分注された容器の分類を行うモジュールである。収納モジュール11は、閉栓された容器や試験管33を収納するモジュールである。
【0025】
システムマネージャ2は、検体検査自動化システム1内の各モジュールや各モジュール内の各機構の動作を制御する。このシステムマネージャ2は、投入モジュール3内に投入された試験管33の種類,試験管33の栓54の種類を特定する試験管情報特定部2aを有している。
試験管情報特定部2aは、カメラ3aによって撮像された、投入モジュール3に投入された試験管33の撮影画像を画像処理することにより試験管33の種別を認識する。認識の方法には、例えば、予め使用する試験管を撮影したデータベースを備え、撮像した画像とマッチングを行う方法などがある。また、試験管情報特定部2aは、特定した試験管33の種類から、試験管33に取り付けられた栓54の底の位置や試験管33の径の情報を取得する。この得られた情報を解析演算部42に対して出力する。試験管33の径の情報は、解析演算部42における血清52等の容量を演算する際に使用される。栓54の底の位置の情報は、試験管把持機構27の把持アーム36が試験管33を把持する位置の決定(把持アーム36の下降量)に用いる。
【0026】
ここで、
図2A乃至
図2Cを用いて測定対象について説明する。
試験管33の内容物である検体について、ここでは血液を例に挙げる。
【0027】
試験管33には分離剤51を有するものを用いる。採血後の遠心分離処理により、上から、血清52、分離剤51および血餅53の3層に分離されている。種類は問わないが、試験管33には栓54およびバーコード55が付いている。なお、バーコードの貼付状態には、
図2Aに示すようなバーコード55のサイズが試験管33の径より小さくかつ片面にのみに貼られた状態、すなわち隙間から内容物が見える状態と、
図2Bに示すようなバーコード55が試験管33を覆い隠すように側面全体に貼られる、あるいはバーコード55が2重3重に貼られることにより、内容物が見えない状況になっている状態がある。
また、測定対象には、
図2Cに示すような検体の量が過多な状態もある。
図2Cに示すように、検体量が多く、血清52が栓54の下面と接触しているような、規定量よりも多い検体が採血管に封入されている場合を考える。この場合、栓54を開ける際に、検体が栓54に付着して飛散する可能性が高く、また栓54を開けた状態での搬送時においても検体がこぼれる恐れがある。このため、感染防止のために開栓前に検体液量チェックを行い、エラー検体に関しては開栓を行わないでエラー検体として排出することが求められる。
本発明はいずれの状態にも一様に対応することが可能である。
【0028】
検体チェックモジュール5について、
図3を参照して以下説明する。
図3は、本実施形態の検体チェックモジュールの一例を示す概略図である。
【0029】
図3において、検体チェックモジュール5は、主構成要素として、検体検査自動化システム1に接続するための架台21、検体を設置するホルダ22、検体を搬送する搬入ライン23、搬出ライン24、追い越しライン25、走査機構26、試験管把持機構27とを備えている。
【0030】
図4は、本発明の一実施形態に係る検体チェックモジュール5に設けられた検体液量の測定を行う液量検出機能を備えた走査機構26および試験管把持機構27の構成の一例を示す構成図(上面
図31および正面
図32)であり、検体液量を測定する開始直前の様子を示している。
【0031】
検体チェックモジュール5は、
図1に示すように、検体検査自動化システム1内の各モジュール間に設置することができ、通信ケーブルで検体検査自動化システム1のシステムマネージャ2と接続され、検体の液量等の情報を授受することができるよう構成されている。
【0032】
図4において、検体チェックモジュール5は、主構成要素として、検体の液量を走査する走査機構26と、検体の封入された試験管33を持ち上げ・把持する試験管把持機構27の二つの機構と、走査機構26内の静電容量センサ34の信号を増倍する信号増倍部39、取得したアナログ信号をデジタル信号に変換するアナログ/デジタル変換部40、取得したデータを記憶するデータ記憶部41、解析演算部42から構成されている。
【0033】
解析演算部42は、静電容量センサ34によって検出した試験管33内の検体の液面56および血餅界面57に関する情報と試験管情報特定部2aによって特定された試験管33の種類から試験管33の径に関する情報等とから試験管33内の血清52の容量を演算する。この得られた血清52の容量の情報は、検体分注モジュール8における試験管33内の血清52の小分けの際に使用する。
また、この解析演算部42は、静電容量センサ34による検出結果が、
図2Cに示すような試験管33内の検体の高さが予め設定した検体過多液面高さ(規定高さ)より高いと判定されるときは、栓54をつけたまま異常検体として当該試験管33を検体検査自動化システム1の外に排出するようよう、制御信号をシステムマネージャ2に対して出力する。更に、検体量が規定量より少ないと判定されるときは優先順位の高い依頼項目の子検体から発行するよう、制御信号をシステムマネージャ2に対して出力する。
【0034】
走査機構26の主構成要素としては、界面高さを検出する静電容量センサ34と、この静電容量センサ34を試験管33に対して上下方向に移動させる駆動モータ35とからなる。
【0035】
試験管把持機構27の主構成要素としては、検体の封入された試験管33を持ち上げ・把持するための把持アーム36と、把持アーム36の開閉を行う把持駆動モータ37、把持アーム36を上下方向に移動させる駆動モータ38を有している。
【0036】
次に、本実施形態における測定系統である静電容量センサ34の詳細について以下説明する。
【0037】
静電容量センサ34は、非接触の静電容量方式によって検体の各層の静電容量の差異から層の境界を検出するセンサであり、液体の検出に優れている。
静電容量センサ34の原理はコンデンサと同じであり、静電容量センサ34に印加された電圧によって形成された電界により対象物の分極が生じ、分極によって生じた電荷に応じて変化する静電容量を検出する。そのため、対象物質の誘電率や対象物質との距離に大きく影響される。ここでは、誘電率の低い空気層と誘電率の高い血清52の界面である液面56の検出と、誘電率の比較的低い分離剤
51と誘電率の高い血餅53の界面である血餅界面57の検出に利用する。なお、先述のように、
図2Bに示すようなバーコード55で界面が見えない状態にあっても、容易に安定して液面56および血餅界面57を検出することが可能である。
【0038】
静電容量センサ34による液面56および血餅界面57の検出は、走査機構26を上から下に移動させて行う。
通常、センサのついた走査機構26を固定して、試験管33を上下させる方法が一般的と考えられる。しかし、試験管33を上下移動させる場合、血清5
2に揺れが生じ、この揺れによって測定誤差を生む要因となる。そこで、本実施形態では、試験管33を動かさずに走査機構26を上下させて液面56および血餅界面57の検出を行う。
【0039】
次に、本実施形態に係る静電容量センサ34を用いて非接触で界面を走査する際に試験管33を把持する、把持アーム36の形状に関して説明する。
【0040】
通常、試験管33を把持するアームとしては、
図5(a)に示すような、試験管33をトレイからホルダへの移載する際に使用されている試験管移載アームのように試験管33を4方向から把持する形状のアーム61や、
図5(b)に示すように一般的な試験管バサミのような試験管を囲う形状のアーム62が知られている。
【0041】
ここで、静電容量センサは、誘電率の低い物質であっても距離が近いと誘電率の高い物質として検知してしまうという欠点を有している。
【0042】
そのため、静電容量センサ34で液面56および血餅界面57を走査するにあたって、移載用チャックや試験管バサミのような形状の把持アーム61,62では、界面近くの位置で試験管33を把持したときに、把持アーム61,62に誘電率の低い材質を用いていたとしても、把持アーム61,62の端面63が試験管33の端面64よりも静電容量センサ34に対して近接しているため、試験管33内の界面より先に把持アーム61,62に反応してしまう場合があった。このため、誤検知しないようにするための感度調整が困難であるとの問題を有していた。この問題を避けるために、試験管33の栓54や開口部を把持することにしても、この場合試験管33が傾きやすく、この試験管33の傾きにより静電容量センサ34と試験管33との距離が均一でなくなるため、界面検出の精度が悪くなってしまうとの問題を有していた。
【0043】
これに対し、本実施形態の把持アーム36は、
図5(c)に示すように、上面側から見たときに、把持する対象の試験管33の中心を通る線66に比べて静電容量センサ34に対して近く、試験管33の端面64に比べて静電容量センサ34側に突出しない位置36aで試験管33に接触し、把持アーム36の端面65から試験管33の端面64を静電容量センサ34に対して突出させて固定することが可能な、試験管33を静電容量センサ34に対して左右方向からの開閉で把持する左右1対のアームである。把持アーム36は、把持する対象の試験管33の中心を通る線66に比べて静電容量センサ34に対して後面側の位置36bにおいても試験管33と接触している。
この把持アーム36は、試験管33と接触する位置36a,36bの間は、試験管33の径よりも大きな曲率で凹んでいる曲線部36cを有している。この曲線部36cは、本実施形態の検体検査自動化システム1に投入される様々な直径の試験管33のうち、最も径の小さい試験管33の曲率よりも大きな曲率を有している。
【0044】
把持アーム36の材質は、試験管33と接触する位置36a,36bや曲線部36cとその周囲は水よりも誘電率の低いゴムで構成され、その他の箇所はプラスチックで構成されている。
【0045】
次に、把持アーム36の側面形状について
図6A乃至
図6Cを用いて説明する。
図6A乃至
図6Cにおいて、一般的な移載チャックの把持アームの側面図は、
図6Aに示すように試験管33の中心に近い位置を、液面56および血餅界面57に重なる可能性が低くなるように短い長さで、極力点に近い状態で把持するような形状であった。
これに対し、本実施形態の把持アーム36は、
図6Bに示すように、栓54の直下を把持し、把持している試験管33が傾かないように、試験管33の長手方向において点ではなく線36dで試験管33に接触して把持するよう構成されている。
線36dの長さ74は、100mm高さの試験管が傾かないように把持するために、10mm以上あることが望ましい。また、
図6Cに示すように、65mm高さの試験管がホルダに収納された場合、把持が可能な栓54とホルダ間の距離75は18mm程度であるため、10〜18mm程度の長さであることが望ましい。なお、線36dの長さは10〜18mm程度としたが、試験管33が傾かない程度の長さがあればよい。
【0046】
次に、検体の処理手順に沿って、測定順序を説明する。
【0047】
ユーザは、最初に、血液の入った試験管33を投入モジュール3に投入する。そこでは、カメラ3aにより試験管33の撮像が行われ、試験管情報特定部2aによって試験管33の種類の特定が行われ、特定結果と検体IDを関連付けて記憶しておく。
【0048】
この後、血液の入った試験管33は専用のホルダ22に架設されて搬送ライン12上を移動し、必要に応じて遠心分離モジュール4に搬送される。例えば血球カウンタのような項目に対応するのであれば遠心分離モジュール4を飛ばして遠心処理されずに通過させる。遠心分離処理を終えた試験管33を検体チェックモジュール5に搬送して容量を計測する。計測された容量はシステムマネージャ2に送信される。この際、ホルダ22には検体IDに関する情報が記憶される。
【0049】
この時点で、システムマネージャ2は小分けの計画(小分け数、小分け量等)を決めるプロセスを開始する。小分けのスケジュールは基本的には依頼されている測定項目によって決まるが、本実施形態においては更に容量を加味する。例えば、依頼のある項目のうち測定された容量で全ての分析が可能か、あるいは不可能だとした場合に分析可能な項目数はいくらか、などをパラメータとして適正な小分けをする。
【0050】
検体チェックモジュール5において容量計測が終了した試験管33を開栓モジュール6に運び、開栓処理を行う。先述のスケジュールに基づいた小分け用容器の準備をバーコードラベラ7で行い、続けて実際の小分けを検体分注モジュール8で実施する。その後は、用途に応じて、自動分析装置13への搬送や、閉栓モジュール9による閉栓処理を経て、検体分類モジュール10での分類あるいは収納モジュール11への収納を行う。
【0051】
次に、本実施形態に係る検体チェックモジュール5の動作について
図7A乃至
図9を用いて以下説明する。
図7A乃至
図7Gは、検体チェックモジュール5に搬入された試験管33を把持アーム36で掴んでホルダ22から引き抜き、走査後にホルダ22内に収め、搬出するまでの一連の流れを説明する図、
図8A乃至
図8Dは把持アーム36で試験管33を掴んで引き抜き、走査開始から完了までの一連の流れを説明する図、
図9は検体チェックモジュール5での処理アルゴリズムを示す図である。
【0052】
検体チェックモジュール5に搬送された試験管33は、液量走査待機位置28に搬入される(ステップS81)。このとき、把持アーム36は
図7Aに示すような状態で待機している。
【0053】
ホルダ22が到着すると、センサがホルダ22を検知し、ストッパ等により液量走査待機位置28でホルダ22を停止させた後、IDリーダー30によりホルダ22に書き込まれている検体ID情報を読み取る(ステップS82)。この読み取った検体ID情報をシステムマネージャ2に送信し、システムマネージャ2は、到着したホルダ22に架設された試験管33についての、先に試験管情報特定部2aで特定した試験管種別、動作パラメータ、依頼項目等に関する情報の問い合わせ処理を実施する(ステップS83)。これにより試験管33の直径(直径13cm,直径16cm等)や試験管33の高さ(65mm,75mm,100mm等)、栓の種類(ゴム栓,スクリュー栓,オーバーキャップ)等様々な種類の試験管33に関する情報を入手し、対応することが可能となる。
【0054】
その後、液量走査位置29に向けて試験管33は搬送される。液量走査位置29にホルダ22が到着すると、システムマネージャ2はストッパを稼働させ、ホルダ22を液量走査位置29に停止させる。
【0055】
液量走査位置29でホルダ22が停止した後、システムマネージャ2は、駆動モータ38に対して信号を出力し、試験管把持機構27の把持アーム36を
図7Bに示すような試験管33の栓54の直下を掴む位置まで下降させる。このときの把持アーム36の下降量は先に試験管情報特定部2aで特定した試験管情報を利用して各試験管種類で定められた下降量とする。下降後、システムマネージャ2は、把持駆動モータ37に対して信号を出力し、把持アーム36を閉じ方向に稼働させて試験管33の把持を行う(ステップS84)。
【0056】
試験管33を把持した後は、システムマネージャ2は、駆動モータ38に対して信号を出力して把持アーム36を上昇させて、
図7Cおよび
図8Aに示すように試験管33をホルダ22から持ち上げる(ステップS85)。このとき、走査機構26は、
図8Aに示すような位置で待機した状態である。
【0057】
把持アーム36が
図8Bに示すような所定高さまで上昇した後、システムマネージャ2は、駆動モータ35に対して信号を出力し、静電容量センサ34を試験管33に向けて下降させ、液面56および血餅界面57の検出走査を行う(ステップS86)。
このステップS86では、走査機構26が下降を始め、最初に液面56を静電容量センサ34で検出する。続いて同じく静電容量センサ34で血餅界面57を検出する。走査時には、把持アーム36は試験管33を持ち上げた状態で停止しているため、液面を揺らすことなく界面走査することすることができる。また、把持する対象の試験管33を把持アーム端面65から静電容量センサ34側に露出させて固定しているため、静電容量センサ34が把持アーム36の影響を受けることなく液面56および血餅界面57を検出することができる。
【0058】
このステップS86における界面検出走査で得られた静電容量センサ34の信号は信号増倍部39で増倍され、取得したアナログ信号をデジタル信号に変換するアナログ/デジタル変換部40を経て、データ記憶部41に保存される。また、得られた液面56の高さ情報、血餅界面57の高さ情報および試験管種別情報とから、解析演算部42において血清52の液量を演算する(ステップS87)。
【0059】
その後、解析演算部42は、試験管33中の検体の高さが規定高さ以下であるか否かを判定する(ステップS88)。
【0060】
ステップS88において検体高さが規定高さより高いと判定されるときは、
図2Cに示すような液量過多などの検体異常、あるいは検体の液量異常のいずれかである可能性が高いため、解析演算部42は、エラー検体として、当該試験管33を開栓モジュール6に搬送せずに収納モジュール11に搬出させるようシステムマネージャ2に対して処理信号を出力する(ステップS89)。この搬出動作自体は後ほど実行する。また、その旨をシステムマネージャ2の画面などでオペレータなどに通知する。
【0061】
これに対し、ステップS88において検体高さが規定高さ以下であると判定されたときは、解析演算部42は、試験管33中の検体量が規定量以上であるか否かを判定する(ステップS90)。検体量が規定量以上であるときは検体量が正常であるため、検査依頼項目を参照して子検体発行を行うための信号をシステムマネージャ2に対して出力する(ステップS91)。これに対し検体量が規定量より少ないときは、検査依頼項目に対して血清液量が少ない場合であり、優先順位の高い依頼項目の子検体から発行するための信号をシステムマネージャ2に対して出力する(ステップS92)。同時に依頼項目に対して血清液量が少ない旨のアラームを出力し、その旨をシステムマネージャ2の画面などでオペレータなどに通知する。
【0062】
走査機構26が
図8Cに示すように位置まで下降し終えると、静電容量センサ34による界面走査は終了であり、システムマネージャ2は、把持アーム36の下降と走査機構26の上昇を同時に行う。具体的には、駆動モータ35に対して信号を出力して静電容量センサ34を上昇させて
図8Dに示す状態とするとともに、駆動モータ38に対して信号を出力して把持アーム36を下降させる。
【0063】
システムマネージャ2は、把持アーム36を
図7Dの位置から
図7Eの位置まで下降させて試験管33をホルダ22内に収める。
【0064】
次いで、システムマネージャ2は、把持駆動モータ37に対して信号を出力し、把持アーム36を開き方向に稼働させて、
図7Eから
図7Fに示すように試験管33を把持アーム36から解放させる。
【0065】
試験管33の解放後、システムマネージャ2は、駆動モータ38に対して信号を出力して把持アーム36を上昇させ、
図7Fから
図7Gに示すような状態となったら試験管33を搬出し、開栓モジュール6または収納モジュール11に搬出させる。その後、試験管33は開栓モジュール6または収納モジュール11に搬出され、開栓、分注等の処理が行われる。
【0066】
上述したように、本発明の検体検査自動化システムおよび検体チェックモジュールの第1の実施形態では、把持する対象の試験管33の中心を通る線66に比べて静電容量センサ34に対して前面側であり、試験管33の端面64に比べて静電容量センサ34側に突出しない位置36aで試験管33に接触し、把持アーム36の端面65から試験管33の端面64を静電容量センサ34に対して突出させて固定することが可能な、試験管33を静電容量センサ34に対して左右方向からの開閉で把持する左右1対の把持アーム36を有しており、静電容量センサによる液面56および血餅界面57の走査の際にこの把持アーム36により試験管33をホルダ22より持ち上げる。
【0067】
よって、現在一般的に用いられている試験管バサミや移載用チャックのような把持アームにおける端面63よりも、本実施形態の把持アーム端面65は静電容量センサ34との距離が試験管端面64よりも離れた距離に位置するようになり、試験管の種類によらず一律に、把持する対象の試験管33を把持アーム端面65から静電容量センサ34側に露出させて固定することができ、静電容量センサ34が把持アーム36の影響を受けることなく液面56および血餅界面57を検出することができる。また、把持アーム36で試験管33を持ち上げて固定するため、静電容量センサ34ではなく試験管33を動かして走査する場合に比べ、界面走査時に液面を揺らすことなく走査を行うことができる。その結果、非接触で検体の液量に関する情報を安定して精度良く得られる。よって、検体液量が検査項目に対して少ない場合でも測定項目の優先順位づけが可能となり、処理順序の最適化が図られる。また、再度採血を行うにあたっても早い段階で液量不足をアラームで出すことができるため、再採血を行って結果を受け取るまでの待ち時間などの患者負担を軽減することができる。
【0068】
また、把持アーム36は、試験管33の長手方向において点ではなく線36dで試験管33を把持するため、非接触で液面56および血餅界面57を走査するにあたって、栓54の直下を把持し、把持している試験管33が傾かないようにすることができ、傾きによる界面高さの誤検出を防ぐことができる。このため、検体の液量に関する情報が安定して精度良く得ることができる。
【0069】
更に、把持アーム36は、試験管33と接触する位置36a,36bの間は、様々な直径の試験管3
3のうち、最も径の小さい試験管3
3の曲率よりも大きな曲率で凹んでいる曲線部36cを有しているため、試験管33に対して線接でなく面での接触で把持することができる。このため、より安定して試験管33を把持することができ、検体の液量に関する情報を安定して精度良く得ることができる。
【0070】
また、把持アーム36の材質は、試験管33と接触する箇所36a,36bや曲線部36cとその周囲は水よりも誘電率の低いゴムで構成され、その他の箇所はプラスチックで構成されており、試験管33の高さ方向において把持アーム36で掴んでいる箇所に液面56および血餅界面57がある場合においても、把持アーム36に影響されることなく液面56および血餅界面57を検出することができる。
【0071】
なお、カメラ3aを投入モジュール3内に設けた例について説明したが、カメラ3aは検体チェックモジュール5の搬入ライン23に設けることができる。この場合、チェックモジュール単体で試験管33内の情報を把握することができ、既存の検体前処理システムや自動分析装置内部に追加するのに好適なモジュールとなる。
【0072】
また、カメラ3aは検体チェックモジュール5の搬入ライン23に設けるような態様は、自動分析装置13の試薬保冷庫に保管されている試薬容器内の試薬の残量測定にも適用できる。
試薬保冷庫に保管される試薬は、通常、遮光目的のため有色の容器に入れて運用されているため、残量の目視確認はできない。
しかし、上述の形態のようなチェックモジュールを自動分析装置13の試薬保冷庫やその付近に備えていることで、試薬の容量の目視確認ができない状況でも、試薬容器内の試薬の残量のチェックが可能となる。
【0073】
更に、血餅界面57の検出を静電容量センサ34で行う態様について説明したが、この血餅界面57は光学検出系によって行うことも可能である。
【0074】
<第2の実施形態>
本発明の検体検査自動化システムおよび検体チェックモジュールの第2の実施形態を
図10および
図11を用いて説明する。
図10および
図11に、本実施形態の検体チェックモジュールの試験管把持機構における把持アームの形状の上面図を示す。
【0075】
本実施形態の検体検査自動化システムは、検体チェックモジュール5における試験管把持機構27における把持アームの形状が第1の実施形態の検体検査自動化システムと異なる以外は第1の実施形態の検体検査自動化システムと同じ構成であり、その説明は省略する。
【0076】
図10に示すように、本実施形態の試験管把持機構における把持アーム91は、上面側から見たときに、片アームにつき、把持する対象の試験管33の中心を通る線66に比べて静電容量センサ34に対して前面側であり、試験管33の端面64に比べて静電容量センサ34側に突出しない位置91aと、把持する対象の試験管33の中心を通る線66に比べて静電容量センサ34に対して後面側である位置91bとの2点で接触することで試験管33を保持することが可能な、
試験管33を静電容量センサ34に対して左右方向からの開閉で把持する左右1対の把持アームである。この把持アーム91は、試験管33と接触する位置91a,91bの間は、曲線部ではなく直線となっており、角張って凹んでいる形状となっている。
【0077】
このような形状の把持アーム91によっても、把持アーム36の端面65から試験管33の端面64を静電容量センサ34に対して突出させて固定することが可能であり、前述した検体検査自動化システムおよび検体チェックモジュールの第1の実施形態とほぼ同様な効果が得られる。
【0078】
なお本実施形態の試験管把持機構における把持アームは、
図10に示すような形態に限られない。以下、
図11を用いて把持アームの他の形状について説明する。
【0079】
図11に示すように、把持アーム92は、片アームにつき、把持する対象の試験管33の中心を通る線66に比べて静電容量センサ34に対して前面側であり、試験管33の端面64に比べて静電容量センサ34側に突出しない位置92aで試験管33に接触するための腕部92cと、把持する対象の試験管33の中心を通る線66に比べて静電容量センサ34に対して後面側である位置92bで試験管33に接触するための腕部92dとを有している。把持アーム92も、位置92aおよび位置92bとの2点で試験管33と接触することで静電容量センサ34に対して左右方向からの開閉で試験管33を保持する左右1対の把持アームである。
【0080】
このような形状の把持アーム92でも、把持アーム36の端面65から試験管33の端面64を静電容量センサ34に対して突出させて固定することが可能であり、前述した検体検査自動化システムおよび検体チェックモジュールの第1の実施形態とほぼ同様な効果が得られることは言うまでもない。
【0081】
<その他>
なお、本発明は上記の実施形態に限られず、種々の変形、応用が可能なものである。上述の実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。
【0082】
例えば、本発明の検体チェックモジュールは、検体検査自動化システムに設けられるのではなく、自動分析装置に直接搭載することができる。
【0083】
また、解析演算部42がシステムマネージャ2と別体の例を説明したが、これらはシステムマネージャ2の内部に設けることができる。