(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る真空排気システムを示す図である。この真空排気システムは、CVD装置、エッチング装置などの半導体デバイス製造装置に使用される複数の処理チャンバから処理ガスを排気するために使用される。
【0014】
図1に示すように、真空排気システムは、複数の処理チャンバ1にそれぞれ接続される複数の第1真空ポンプ5と、複数の第1真空ポンプ5に接続された第1集合管7と、第1集合管7に接続された第2真空ポンプ8と、複数の処理チャンバ1から排気された気体を無害化するガス処理装置10とを備えている。本実施形態では、第1真空ポンプ5として、ターボ分子ポンプなどの高真空ポンプが使用されている。
【0015】
処理チャンバ1は、搬送チャンバ12に接続されている。この搬送チャンバ12には粗引きポンプ15が接続されており、搬送チャンバ12内には常に真空が形成されている。搬送チャンバにはロードロックチャンバ16が接続されており、このロードロックチャンバ16にも粗引きポンプ15が接続されている。ロードロックチャンバ16は、搬送チャンバ12内の真空を維持しつつ、搬送チャンバ12内の真空空間と大気圧領域との間でウェハの搬送を可能とするゲートである。搬送チャンバ12内には図示しない搬送ロボットが配置されており、ウェハはこの搬送ロボットによっていずれかの処理チャンバ1に搬送される。
【0016】
各処理チャンバ1内には、エッチングガスなどの処理ガスが供給され、ウェハは処理チャンバ1内で処理される。
図1に示す処理チャンバ1は、その内部で1枚のウェハが処理される、いわゆる枚葉式処理チャンバである。複数の(
図1では5つの)第1真空ポンプ5は、複数の(
図1では5つの)処理チャンバ1にそれぞれ隣接し、これら処理チャンバ1にそれぞれ接続されている。各処理チャンバ1内の真空は第1真空ポンプ5の運転によって形成される。1つの処理チャンバ1に複数の第1真空ポンプ5が接続される場合もある。
【0017】
本実施形態では、1つの第2真空ポンプ8が設けられている。第2真空ポンプ8は第1集合管7に接続されている。第2真空ポンプ8は、第1集合管7を通じて複数の第1真空ポンプ5のすべてに連結されている。第1集合管7は、複数の第1真空ポンプ5にそれぞれ接続された複数の排気管20と、これら排気管20が接続された1本の横引き管(連通管)21と、横引き管21に接続された1本の主管22とを備えている。主管22は第2真空ポンプ8の吸引口に接続されている。第1集合管7の排気管20には開閉弁24が取り付けられている。第2真空ポンプ8は第1集合管7により第1真空ポンプ5に接続されているので、第2真空ポンプ8の数は、第1真空ポンプ5の数よりも少ない。
【0018】
第2真空ポンプ8としては、容積式真空ポンプ(例えば、多段乃至は単段ルーツ型真空ポンプ、多段乃至は単段クロー型真空ポンプ、スクリュー型真空ポンプまたはそれらを複合させたポンプ)が使用されている。第2真空ポンプ8は、第1真空ポンプ5の背圧を数十Paに維持するとともに、数千Pa(例えば1000〜5000Pa)にまで処理ガスを圧縮する。
【0019】
第2真空ポンプ8の下流側には複数の(
図1では2つの)第3真空ポンプ28が並列に配置されている。これらの第3真空ポンプ28は第2真空ポンプ8に連結されている。第2真空ポンプ8は主管38に接続されており、主管38には複数の分岐管39が接続されている。複数の第3真空ポンプ28は、複数の分岐管39にそれぞれ接続されている。各分岐管39には開閉弁43が取り付けられている。
【0020】
本実施形態では、2台の第3真空ポンプ28が設けられている。2つの第3真空ポンプ28の両方を運転してもよいし、または2つの第3真空ポンプ28のうちの一方のみを運転し、他方を予備ポンプとして使用してもよい。2つの第3真空ポンプ28が同時に運転される場合は両方の開閉弁43が開かれ、1つの第3真空ポンプ28のみが運転される場合は一方の開閉弁43のみが開かれる。このように、2つの第3真空ポンプ28が並列に配置されているので、一方の第3真空ポンプ28が故障した場合には、他方の第3真空ポンプ28に切り替えることで、真空排気システム全体の運転を継続することができる。
【0021】
複数の第3真空ポンプ28には不活性ガス供給装置47が接続されている。この不活性ガス供給装置47は、窒素ガスなどの不活性ガスを第3真空ポンプ28に供給することによって、処理ガスを希釈し、第3真空ポンプ28の腐食を防止するためのものである。従来の真空排気システムでは、処理チャンバ1の数と同じ数の真空ポンプユニットが設けられているため、多量の不活性ガスを真空ポンプユニットに供給する必要があった。これに対し、
図1に示す実施形態の真空排気システムは、処理チャンバ1よりも少ない数の第3真空ポンプ28を備えている。したがって、より少ない量の不活性ガスが処理ガスに注入され、後述する排ガス処理装置10への負荷を低減することができる。
【0022】
第3真空ポンプ28としては、容積式真空ポンプ(例えば、多段乃至は単段ルーツ型真空ポンプ、多段乃至は多段クロー型真空ポンプ、スクリュー型真空ポンプまたはそれらの複合ポンプ)が使用されている。第3真空ポンプ28は、第2真空ポンプ8の背圧を数千Pa(例えば1000〜5000Pa)に維持するとともに、大気圧にまで処理ガスを圧縮する。本実施形態では、複数の第3真空ポンプ28が設けられているが、1つの第3真空ポンプ28のみを設けてもよい。
【0023】
ガス処理装置10は、第3真空ポンプ28の下流側に配置されている。処理チャンバ1内で使用される処理ガスは、CVDに使用される原料ガス、またはドライエッチング処理に使用されるエッチングガスなどの有害ガスであり、このような処理ガスをそのまま大気に放出することはできない。そこで、処理ガスを処理して無害化するためにガス処理装置10が設けられている。本実施形態では、3つのガス処理装置10が並列に設けられている。ガス処理装置10は、集合管50を介して第3真空ポンプ28に連結されている。集合管50は2つの第3真空ポンプ28に接続される2つの排気管51を有しており、これらの排気管51には開閉弁53が取り付けられている。
【0024】
各ガス処理装置10は、上段湿式除害装置61、触媒式除害装置62、および下段湿式除害装置63を備えており、これら3つの除害装置61,62,63はこの順に直列に並んでいる。半導体デバイス製造装置からは、TMAH(水酸化テトラメチルアンモニウム)などのアルカリ廃水が排出される。通常、このアルカリ廃水は廃棄されるのであるが、本実施形態ではこのアルカリ廃水を利用して処理ガスを処理する。半導体デバイス製造装置から排出されるアルカリ廃水は、上段湿式除害装置61および下段湿式除害装置63に供給され、これら湿式除害装置61,63は、アルカリ廃水を利用して処理ガスに含まれる臭化水素などの酸性ガスを除去する。このようにアルカリ廃水を使用することにより、湿式除害装置61,63でのランニングコストを低減することができる。
【0025】
湿式除害装置61,63は、乾式除害装置に比べて多量のガスの処理ができ、ランニングコストが低いという利点がある。上段湿式除害装置61は、主に、エッチング処理に使用されるガス、例えば臭化水素(HBr)、臭素(Br
2)、塩素ガス(Cl
2)などを除去する。触媒式除害装置62は、処理ガスに含まれる有害なPFCs(パーフルオロコンパウンズ)ガスを分解するために設けられている。この触媒式除害装置62は、燃焼式除害装置、プラズマヒータ式除害装置に比べて、低い温度でガスを処理することができるので、ランニングコストが低いという利点がある。ただし、除害装置台数を削減するという目的においては、上段湿式除害装置61、触媒式除害装置62、および下段湿式除害装置63は、燃焼式除害装置、ヒータ式除害装置、プラズマ式除害装置など他処理方式でもよい。
【0026】
PFCs(パーフルオロコンパウンズ)ガスを分解すると、HF(フッ化水素)などの酸性ガスが発生する。この酸性ガスを除去するために、触媒式除害装置62の下流側に下段湿式除害装置63が設けられている。この下段湿式除害装置63は、上述したように、半導体デバイス製造装置から排出されるアルカリ廃水を利用して酸性ガスを除去する。下段湿式除害装置63として水シャワーを使用してもよい。また、酸性ガスの濃度が排出濃度規制値を超過しなければ下段湿式除害装置63を省略してもよい。
【0027】
本実施形態では3つのガス処理装置10が並列に設けられているので、処理すべき処理ガスの流量に基づいて3つすべてのガス処理装置10を運転してもよいし、1つ、または2つのガス処理装置10のみを運転してもよい。
【0028】
上述したように、従来の真空排気システムに比べて、第3真空ポンプ28の台数は少ないので、第3真空ポンプ28に供給される不活性ガスの量も少ない。したがって、ガス処理装置10で処理すべき処理ガスの量が、従来の真空排気システムに比べて少なくできる。結果として、ガス処理装置10全体としてより小型化することができる。
【0029】
本実施形態では、処理チャンバ1に直接接続される第1真空ポンプ5は、ターボ分子ポンプなどの高真空ポンプであり、第1真空ポンプ5に連結される第2真空ポンプ8は、容積式多段真空ポンプからなるブースタポンプであり、第2真空ポンプ8に連結される第3真空ポンプ28は、容積式多段真空ポンプからなるメインポンプである。
【0030】
図1に示すように、処理チャンバ1、第1真空ポンプ5、および第2真空ポンプ8は、同じ第1の部屋(例えばクリーンルーム)内に配置されている。第3真空ポンプ28およびガス処理装置10は、第1の部屋とは離れた別の部屋(第2の部屋)に配置されている。例えば、第1の部屋は階上にあり、第2の部屋は階下にある。第1真空ポンプ5と第2真空ポンプ8は同じ第1の部屋内に配置されているので、第2真空ポンプ8を第1真空ポンプ5に連結する第1集合管7を短くすることができる。第2真空ポンプ8は第1真空ポンプ5の近くに配置されている。好ましくは、第1真空ポンプ5と第2真空ポンプ8との距離は、1m〜5mであり、さらに好ましくは1m〜2mである。
【0031】
従来の真空排気システムでは、第1真空ポンプと第2真空ポンプは別々の階に配置され、第1真空ポンプと第2真空ポンプとの距離は約10mであったが、本実施形態では第1真空ポンプ5と第2真空ポンプ8との距離は約2mである。結果として配管コンダクタンスが向上し、第2真空ポンプ8に要求される容量を小さくすることができる。したがって、第2真空ポンプの台数を減らすことができる。
【0032】
上述したように、第2真空ポンプ8はブースタポンプとして機能する。通常、ブースタポンプは容積式単段真空ポンプが使用されるが、本実施形態では、容積式多段真空ポンプが採用されている。容積式多段真空ポンプは、動作可能な圧力範囲が単段真空ポンプに比べて広い。言い換えれば、第2真空ポンプ8が運転できるために必要とされる背圧は、単段真空ポンプに比べて高い。したがって、下流側に連結されるメインポンプである第3真空ポンプ28として、より小型の真空ポンプを使用することができ、さらには第3真空ポンプ28の台数を減らすことができる。
【0033】
複数の処理チャンバ1には、大気排出管30が接続されている。この大気排出管30は複数の第3真空ポンプ28に接続されている。大気排出管30には、処理チャンバ1に連通する複数の開閉弁32が取り付けられている。さらに、大気排出管30には、複数の処理チャンバ1と、大気排出管30が接続された第3真空ポンプ28との連通を確立および遮断する開閉弁40が設けられている。通常の運転時には、これら開閉弁32,40は閉じられている。
【0034】
処理チャンバ1から大気を排出すべきとき、開閉弁32,40が開かれる。例えば、複数の処理チャンバ1のうちのある処理チャンバ1のメンテナンスが終了した後、処理チャンバ1を真空引きする必要がある。このとき、処理チャンバ1から大気を第1真空ポンプ5、第2真空ポンプ8、および第3真空ポンプ28で排気すると、大気が他の処理チャンバ1に侵入するおそれがある。そこで、大気で満たされた処理チャンバ1に連通している開閉弁32のみを開き、さらに開閉弁40を開くとともに、2つの開閉弁43のうちの一方を閉じる。そして、大気排出管30が接続された第3真空ポンプ28を始動させる。処理チャンバ1内の大気は大気排出管30を通じて第3真空ポンプ28によって排気され、その一方で他の処理チャンバ1ではウェハの処理を継続することができる。
【0035】
図2は、真空排気システムの他の実施形態を示す図である。本実施形態では、2つの第2真空ポンプ8が設けられている。これら第2真空ポンプ8は並列に配置され、2つの第1集合管7にそれぞれ接続されている。第2真空ポンプ8のそれぞれは、第1集合管7を通じて複数の第1真空ポンプ5のすべてに連結されている。各第1集合管7は、複数の第1真空ポンプ5にそれぞれ接続された複数の排気管20と、これら排気管20が接続された1本の横引き管(連通管)21と、横引き管21に接続された1本の主管22とを備えている。主管22は第2真空ポンプ8の吸引口に接続されている。本実施形態では、2つの第2真空ポンプ8が並列に配置され、これら2つの第2真空ポンプ8にそれぞれ接続された2つの第1集合管7も並列に配置されている。
【0036】
2つの第2真空ポンプ8のうちの一方は予備ポンプとして機能し、通常は運転されない。したがって、予備ポンプとしての第2真空ポンプ8に連通する開閉弁24は閉じられている。他方の第2真空ポンプ8が故障した場合は、この故障した第2真空ポンプ8に連通する開閉弁24が閉じられ、その一方で、予備ポンプとしての第2真空ポンプ8が起動され、これに連通する開閉弁24が開かれる。
【0037】
このように、2つの第2真空ポンプ8および2つの第1集合管7が並列に配置されているので、万が一、一方の第2真空ポンプ8が故障した場合であっても、他方の第2真空ポンプ8に切り替えることで、真空排気システム全体の運転を継続することができる。第2真空ポンプ8は第1集合管7により第1真空ポンプ5に接続されているので、第2真空ポンプ8の数は、第1真空ポンプ5の数よりも少ない。
【0038】
複数の第3真空ポンプ28は、第2集合管35を介して複数の第2真空ポンプ8に連結されている。第2集合管35は、複数の第2真空ポンプ8にそれぞれ接続される複数の排気管36と、これら排気管36が接続された1本の横引き管(連通管)37と、横引き管37に接続された1本の主管38と、主管38に接続された複数の分岐管39とを有する。複数の第3真空ポンプ28は、複数の分岐管39にそれぞれ接続されている。
【0039】
複数の処理チャンバ1には、大気排出管30が接続されており、この大気排出管30には粗引きポンプ31が接続されている。粗引きポンプ31は、大気圧下で動作することが可能に構成されている。大気排出管30には、処理チャンバ1に連通する複数の開閉弁32が取り付けられている。通常の運転時には、これら開閉弁32は閉じられており、粗引きポンプ31は停止している。
【0040】
粗引きポンプ31は、処理チャンバ1から大気を排出するために使用される。具体的には、大気で満たされた処理チャンバ1に連通している開閉弁32のみを開き、粗引きポンプ31を始動させる。処理チャンバ1内の大気は大気排出管30を通じて粗引きポンプ31によって排気され、その一方で他の処理チャンバ1ではウェハの処理を継続することができる。
【0041】
図3は、真空排気システムのさらに他の実施形態を示す図である。特に説明しない本実施形態の構成は、
図1に示す実施形態の構成と同じであるので、その重複する説明を省略する。
図3に示す記号TLは、
図1に示す5つの処理チャンバ1、5つの第1真空ポンプ5、搬送チャンバ12、2つのロードロックチャンバ16、および粗引きポンプ15を含む組立体を模式的に表している。言い換えれば、
図3に示す各組立体TLは、5つの処理チャンバ1、5つの第1真空ポンプ5、搬送チャンバ12、2つのロードロックチャンバ16、および粗引きポンプ15を含んでいる。
【0042】
図3に示すように、複数の(
図3では6つの)排気ユニット70が並列に並べられている。各排気ユニット70は、5つの第1真空ポンプ5、1つの第2真空ポンプ8、1つの第1集合管7、および第1集合管7に取り付けられた開閉弁24から構成されている。複数の排気ユニット70に含まれる複数の第2真空ポンプ8は、第2集合管35を介して複数の第3真空ポンプ28に連結されている。本実施形態では、3台の第3真空ポンプ28が並列に配置されている。
【0043】
第2集合管35は、複数の排気ユニット70に含まれるすべての第2真空ポンプ8にそれぞれ接続された複数の排気管36と、これら排気管36が接続された1本の横引き管(連通管)37と、横引き管37に接続された1本の主管38と、主管38に接続された複数の(
図3では3本の)分岐管39とを有する。複数の第3真空ポンプ28は、複数の分岐管39にそれぞれ接続されている。各排気管36には開閉弁42が取り付けられており、同様に、各分岐管39にも開閉弁43が取り付けられている。横引き管37には、複数の遮断弁73が取り付けられている。各遮断弁73は、複数の排気ユニット70のうちの隣接する2つの間に位置している。
【0044】
本実施形態では、3台の第3真空ポンプ28のすべてが運転される。3台の第3真空ポンプ28のうちの1台が故障またはメンテナンスのために停止した場合には、他の2台の第3真空ポンプ28によって処理ガスの排気が継続される。このように複数の第3真空ポンプ28を並列に配置することにより、ポンプ故障またはポンプメンテナンス中にも真空排気システム全体の運転を継続することができる。
【0045】
本実施形態では、各ガス処理装置10は、湿式除害装置61および触媒式除害装置62を備えている。ガス処理装置10と第3真空ポンプ28とを連結する集合管50は、分岐管54およびバイパス排気ライン55を備えている。分岐管54は、ガス処理装置10にそれぞれ接続されている。これらの分岐管54には開閉弁56が取り付けられており、バイパス排気ライン55には開閉弁57が取り付けられている。バイパス排気ライン55は、通常は開閉弁57によって閉じられている。
【0046】
図4は、1つの排気ユニット70を立ち上げるときの動作を説明する図である。以下の説明では、この排気ユニット70を排気ユニット70’と称する。この排気ユニット70’の第2真空ポンプ8の出口は、立ち上げ配管72を介して集合管50に連結される。排気ユニット70’の立ち上げ運転中は、排気ユニット70’に連通する開閉弁42は閉じられる。バイパス排気ライン55に取り付けられた開閉弁57は閉じられたままである。立ち上げ配管72には立ち上げ用ポンプ74が設置され、この立ち上げ用ポンプ74によって立ち上げ時の処理ガスが排気ユニット70’から排気され、集合管50を通じてガス処理装置10に送られる。
【0047】
排気ユニット70’の立ち上げ運転は、他の排気ユニット70の排気運転とは独立した排気ルートを通じて行われる。したがって、他の排気ユニット70の排気運転に影響を与えることなく、排気ユニット70’の立ち上げ運転を実行することができる。
【0048】
排気ユニット70’の立ち上げ運転が終了した後、立ち上げ配管72および立ち上げ用ポンプ74が取り外される。次に、粗引きポンプ31を駆動して排気ユニット70’に接続された処理チャンバ1(
図1参照)を真空排気する。そして排気ユニット70’に連通する開閉弁42を開く。このような運転により、排気ユニット70’から排気されるガスが他の排気ユニット70に侵入することなく、排気ユニット70’を他の排気ユニット70に連結することができる。
【0049】
図5は、真空排気システムの他の実施形態を示す図である。特に説明しない本実施形態の構成は、
図3に示す実施形態の構成と同じであるので、その重複する説明を省略する。各排気ユニット70は、
図2に示す実施形態と同じように、並列に配置された2つの第2真空ポンプ8と、並列に配置された2つの第1集合管7を備えている。すなわち、各排気ユニット70は、5つの第1真空ポンプ5、2つの第2真空ポンプ8、2つの第1集合管7、および第1集合管7に取り付けられた開閉弁24から構成されている。複数の排気ユニット70に含まれる複数の第2真空ポンプ8は、第2集合管35を介して複数の第3真空ポンプ28に連結されている。本実施形態では、3台の第3真空ポンプ28が並列に配置されている。
【0050】
図6は、真空排気システムのさらに他の実施形態を示す図である。特に説明しない本実施形態の構成は、
図5に示す実施形態の構成と同じであるので、その重複する説明を省略する。本実施形態では、2つの第2集合管35が並列に配置されている。2つの第2集合管35のそれぞれは複数の(
図6では4つの)排気ユニット70に含まれるすべての第2真空ポンプ8に接続されている。さらに、2つの第2集合管35には、それぞれ複数の(
図6では2台の)第3真空ポンプ28が接続されており、さらに第3真空ポンプ28にはそれぞれ排ガス処理装置10が連結されている。
【0051】
各第2集合管35は、複数の排気ユニット70に含まれるすべての第2真空ポンプ8にそれぞれ接続された複数の排気管36と、これら排気管36が接続された1本の横引き管(連通管)37と、横引き管37に接続された1本の主管38と、主管38に接続された複数の(
図6では2本の)分岐管39とを有する。複数の第3真空ポンプ28は、複数の分岐管39にそれぞれ接続されている。各排気管36には開閉弁42が取り付けられており、同様に、各分岐管39にも開閉弁43が取り付けられている。横引き管37には、複数の遮断弁73が取り付けられている。各遮断弁73は、複数の排気ユニット70のうちの隣接する2つの間に位置している。
【0052】
図6に示す実施形態は、開閉弁42および遮断弁73が取り付けられた2つの第2集合管35と、これら第2集合管35にそれぞれ連結された2セットの第3真空ポンプ28と、これら2セットの第3真空ポンプ28にそれぞれ連結されたガス処理装置10を有している。このような構成により、複数の排気ユニット70のうちのある排気ユニット70をメンテナンスする場合、その排気ユニット70と他の排気ユニット70との連通を遮断することができる。
【0053】
さらに、
図7に示すように、ある排気ユニット70のみを2つの第2集合管35のうちの一方に連通させ、他の排気ユニット70を他方の第2集合管35に連通させることができる。このような場合、ある排気ユニット70の排気速度を、他の排気ユニット70の排気速度よりも高くすることができる。さらに、ある排気ユニット70で排気される処理ガスの種類は、他の排気ユニット70で排気される処理ガスの種類と異なってもよい。
【0054】
図8は、真空排気システムのさらに他の実施形態を示す図である。特に説明しない本実施形態の構成は、
図1に示す実施形態の構成と同じであるので、その重複する説明を省略する。
図8に示す処理チャンバ1は、その内部で複数のウェハが処理される、いわゆるバッチ式処理チャンバである。各処理チャンバ1内には、CVDの原料ガスなどの処理ガスが供給され、複数のウェハは処理チャンバ1内で処理される。
【0055】
複数の処理チャンバ1には、複数の第1真空ポンプ5がそれぞれ連結されている。これらの第1真空ポンプ5は、例えばターボ分子ポンプ、容積式真空ポンプ(例えば、ルーツ型真空ポンプ、クロー型真空ポンプまたはスクリュー型真空ポンプ)などである。各処理チャンバ1内の真空は第1真空ポンプ5の運転によって形成される。これらの第1真空ポンプ5は、集合管7を介して第2真空ポンプ8に連結されている。
【0056】
本実施形態では、3つの第2真空ポンプ8が設けられている。これら第2真空ポンプ8は並列に配置され、集合管7にそれぞれ接続されている。第2真空ポンプ8のそれぞれは、集合管7を通じて複数の第1真空ポンプ5のすべてに連結されている。集合管7は、複数の第1真空ポンプ5にそれぞれ接続された複数の排気管20と、これら排気管20が接続された1本の横引き管(連通管)21と、横引き管21に接続された1本の主管22と、主管22に接続された複数の分岐管23とを有する。複数の第2真空ポンプ8は、複数の分岐管23にそれぞれ接続されている。各排気管20には開閉弁24が取り付けられており、同様に、各分岐管23にも開閉弁25が取り付けられている。
【0057】
第2真空ポンプ8としては、処理ガスに対して耐性を有する真空ポンプが使用される。本実施形態では、3台の第2真空ポンプ8のすべてが運転される。3台の第2真空ポンプ8のうちの1台が故障またはメンテナンスのために停止した場合には、他の2台の第2真空ポンプ8によって処理ガスの排気が継続される。このように複数の第2真空ポンプ8を並列に配置することにより、ポンプ故障またはポンプメンテナンス中にも真空排気システム全体の運転を継続することができる。
【0058】
ガス処理装置10は、第2真空ポンプ8の下流側に配置されている。本実施形態では、2つのガス処理装置10が並列に設けられている。ガス処理装置10は、集合管50を介して第2真空ポンプ8に連結されている。各ガス処理装置10は、燃焼式除害装置101と、湿式除害装置102とを有している。これら燃焼式除害装置101と湿式除害装置102は、この順に直列に配置されている。
【0059】
燃焼式除害装置101は、CVD(化学蒸着)に使用されるシランガス(SiH
4)を除去するために設けられており、湿式除害装置102は、処理ガスの燃焼により生じたSiO
2からなる粉体や酸性ガスを除去するために設けられている。燃焼式除害装置101は、ヒータ式除害装置、プラズマ式除害装置でもよい。また、粉体排出量が規定値を超過しない場合や酸性ガスの濃度が排出濃度規制値を超過しなければ湿式除害装置102を省略してもよい。
【0060】
複数の第1真空ポンプ5には、クリーニングガス排出管80を介して複数のクリーニングガス排出用ポンプ81が連結されている。本実施形態では、3つのクリーニングガス排出用ポンプ81が設けられている。クリーニングガス排出管80は集合管の形状を有している。具体的には、クリーニングガス排出管80は、複数の第1真空ポンプ5にそれぞれ接続された複数の排気管84と、これら排気管84が接続された1本の横引き管(連通管)85と、横引き管85に接続された1本の主管86と、主管86に接続された複数の分岐管87とを有する。複数のクリーニングガス排出用ポンプ81は、複数の分岐管87にそれぞれ接続されている。各排気管84には開閉弁91が取り付けられており、同様に、各分岐管87にも開閉弁92が取り付けられている。
【0061】
処理チャンバ1内でCVD処理が行われる場合、処理ガスとして使用される原料ガスに含まれる原料が処理チャンバ1の内部に堆積する。そこで、処理チャンバ1の内部をクリーニングするために、クリーニングガスが処理チャンバ1内に供給される。クリーニングガスは、第1真空ポンプ5およびクリーニングガス排出用ポンプ81により処理チャンバ1から排気される。クリーニングガス排出用ポンプ81としては、クリーニングガスに対して耐性を有する真空ポンプが使用される。
【0062】
クリーニングガス排出用ポンプ81から排気されたクリーニングガスを無害化するための排ガス処理装置118が、クリーニングガス排出用ポンプ81の下流側に設けられている。この排ガス処理装置118は、湿式除害装置119から構成されている。また、排ガス処理装置118は、燃焼式除害装置など他の処理方式でもよい。排ガス処理装置118は、集合管110を介してクリーニングガス排出用ポンプ81に連結されている。集合管110は複数のクリーニングガス排出用ポンプ81に接続される複数の排気管111を有しており、これらの排気管111には開閉弁112が取り付けられている。
【0063】
複数の第1真空ポンプ5には、大気排出管30を介して複数の粗引きポンプ31が連結されている。本実施形態では、2つの粗引きポンプ31が設けられている。大気排出管30は集合管の形状を有している。具体的には、大気排出管30は、複数の第1真空ポンプ5にそれぞれ接続された複数の排気管33と、これら排気管33が接続された1本の横引き管(連通管)34と、横引き管34に接続された1本の主管41と、主管41に接続された複数の分岐管45とを有する。複数の粗引きポンプ31は、複数の分岐管45にそれぞれ接続されている。各排気管33には開閉弁32が取り付けられており、同様に、各分岐管45にも開閉弁95が取り付けられている。
【0064】
粗引きポンプ31は、大気圧下で動作することが可能に構成されている。通常の運転時には、大気排出管30に取り付けられたすべての開閉弁32,95は閉じられており、粗引きポンプ31は停止している。粗引きポンプ31は、処理チャンバ1から大気を排出するために使用される。例えば、ある処理チャンバ1のメンテナンスが終了した後、大気で満たされた処理チャンバ1に連通している開閉弁32のみを開くとともに、開閉弁95を開き、さらに粗引きポンプ31を始動させる。処理チャンバ1内の大気は大気排出管30を通じて粗引きポンプ31によって排気される。粗引きポンプ31の下流側には、ガス処理装置10は設けられていない。
【0065】
上述した集合管7、クリーニングガス排出管80、および大気排出管30は、並列に配置されている。処理ガス、クリーニングガス、および大気は、別々のルートを通じて別々の真空ポンプ8,81,31により排出される。したがって、第2真空ポンプ8、クリーニングガス排出用ポンプ81、および粗引きポンプ31として、排気すべきガスの種類に基づいて最適な真空ポンプを選択することができる。さらに、排気すべきガスの種類に基づいて最適な除害装置を選択することができる。
【0066】
第1真空ポンプ5は第1の部屋(例えばクリーンルーム)内に配置されており、第2真空ポンプ8、クリーニングガス排出用ポンプ81、および粗引きポンプ31は、クリーンルームとは別の部屋(第2の部屋)に配置されている。例えば、第1の部屋は階上にあり、第2の部屋は階下にある。
図1に示す実施形態と同じように、第1真空ポンプ5は、処理チャンバ1に隣接して配置されている。
【0067】
図9は、真空排気システムのさらに他の実施形態を示す図である。特に説明しない本実施形態の構成は、
図8に示す実施形態の構成と同じであるので、その重複する説明を省略する。本実施形態では、2つの集合管7が並列に配置されており、2つの第2真空ポンプ8も並列に配置されている。これらの第2真空ポンプ8は、これらの集合管7を通じて複数の第1真空ポンプ5に連結されている。2つの第2真空ポンプ8には、2つのガス処理装置10がそれぞれ連結されている。ガス処理装置10としては、燃焼式除害装置101が使用されている。集合管7の横引き管(連通管)21には、複数の遮断弁121が取り付けられている。遮断弁121は、各排気管20と横引き管21との接続点の両側に配置されている。
【0068】
同様に、2つのクリーニングガス排出管80が並列に配置されており、2つのクリーニングガス排出用ポンプ81も並列に配置されている。これらのクリーニングガス排出用ポンプ81は、これらのクリーニングガス排出管80を通じて複数の第1真空ポンプ5に連結されている。クリーニングガス排出管80の横引き管(連通管)85には、複数の遮断弁122が取り付けられている。遮断弁122は、各排気管84と横引き管85との接続点の両側に配置されている。
【0069】
さらに、2つの大気排出管30が並列に配置されており、2つの粗引きポンプ31も並列に配置されている。これらの粗引きポンプ31は、これらの大気排出管30を通じて複数の第1真空ポンプ5に連結されている。大気排出管30の横引き管(連通管)34には、複数の遮断弁124が取り付けられている。遮断弁124は、各排気管33と横引き管34との接続点の両側に配置されている。
【0070】
図9に示す実施形態は、開閉弁24および遮断弁121が取り付けられた2つの集合管7と、これら集合管7にそれぞれ連結された2つの第2真空ポンプ8と、これら2つの第2真空ポンプ8にそれぞれ連結された2つのガス処理装置10を有している。このような構成により、複数の排気チャンバ1のうちのある排気チャンバ1をメンテナンスする場合、その排気チャンバ1と他の排気チャンバ1との連通を遮断することができる。
【0071】
さらに、
図10に示すように、ある排気チャンバ1のみを2つの集合管7のうちの一方に連通させ、他の排気チャンバ1を他方の集合管7に連通させることができる。このような場合、ある排気チャンバ1の排気速度を、他の排気チャンバ1の排気速度よりも高くすることができる。さらに、ある排気チャンバ1で排気される処理ガスの種類は、他の排気チャンバ1で排気される処理ガスの種類と異なってもよい。
【0072】
図11は、真空排気システムのさらに他の実施形態を示す図である。特に説明しない本実施形態の構成は、
図8に示す実施形態の構成と同じであるので、その重複する説明を省略する。本実施形態では、除害装置130が集合管7に取り付けられている。より具体的には、集合管7の複数の排気管20に、複数の除害装置130がそれぞれ取り付けられている。
【0073】
本実施形態は、シリコン窒化膜を形成する低圧CVDが処理チャンバ1内で行われる場合に好適である。シリコン窒化膜を形成する低圧CVDでは、副生成物として塩化アンモニウム(NH
4CL)が生成される。この塩化アンモニウムは、大気圧下で330℃程度で昇華する特性を有している。このため、高真空中ではガス状態で存在するが、圧力の上昇により固形化しやすくなる。
【0074】
塩化アンモニウムのような副生成物が真空ポンプ内で固形化すると、真空ポンプのメンテナンス頻度が高くなる。メンテナンス頻度を増やさないためには、処理ガスを高温に加熱し、副生成物をガス状態に維持する必要がある。しかし、処理ガスの加熱はエネルギー使用量の増大を招き、また、プロセス条件によっては、処理ガスの加熱のみではガス状態を維持できない場合もある。
【0075】
そこで、本実施形態では、第1真空ポンプ5の出口近傍に除害装置130を設置し、当該除害装置130で処理ガスの分解(低分子化)を行う。これにより、除害装置130の下流側では、塩化アンモニウムとしてのガスは存在しなくなるため、塩化アンモニウムが固形化しない。よって、処理ガスを高温に維持する必要がなくなり、省エネルギー化を達成できる。また、第2真空ポンプ8への負荷を小さく出来るため、第2真空ポンプ8の簡略化、メンテナンス頻度低減が実現できる。
【0076】
上述した実施形態は、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が本発明を実施できることを目的として記載されたものである。上記実施形態の種々の変形例は、当業者であれば当然になしうることであり、本発明の技術的思想は他の実施形態にも適用しうる。したがって、本発明は、記載された実施形態に限定されることはなく、特許請求の範囲によって定義される技術的思想に従った最も広い範囲に解釈されるものである。