特許第6522900号(P6522900)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6522900ノニオン性水系ウレタン樹脂組成物及びそれを含有する塗料
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6522900
(24)【登録日】2019年5月10日
(45)【発行日】2019年5月29日
(54)【発明の名称】ノニオン性水系ウレタン樹脂組成物及びそれを含有する塗料
(51)【国際特許分類】
   C08L 75/04 20060101AFI20190520BHJP
   C08K 5/521 20060101ALI20190520BHJP
   C08G 18/10 20060101ALI20190520BHJP
   C08G 18/12 20060101ALI20190520BHJP
   C09D 175/04 20060101ALI20190520BHJP
【FI】
   C08L75/04
   C08K5/521
   C08G18/10
   C08G18/12
   C09D175/04
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-159562(P2014-159562)
(22)【出願日】2014年8月5日
(65)【公開番号】特開2016-37510(P2016-37510A)
(43)【公開日】2016年3月22日
【審査請求日】2017年6月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000387
【氏名又は名称】株式会社ADEKA
(74)【代理人】
【識別番号】100087631
【弁理士】
【氏名又は名称】滝田 清暉
(74)【代理人】
【識別番号】100136342
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 成美
(74)【代理人】
【識別番号】100144543
【弁理士】
【氏名又は名称】岩▲崎▼ 有穂
(72)【発明者】
【氏名】菊池 孝明
(72)【発明者】
【氏名】島村 信之
【審査官】 松浦 裕介
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−354847(JP,A)
【文献】 特開2006−206835(JP,A)
【文献】 特開平07−113005(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/045577(WO,A1)
【文献】 特開2000−327688(JP,A)
【文献】 特開2003−082159(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/020026(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC C08L 1/00 − 101/14
C08K 3/00 − 13/08
C08G 18/00 − 18/87
C08G 71/00 − 71/04
C09D 1/00 − 10/00
C09D 101/00 − 201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノニオン性基を有するイソシアネート基含有ウレタンプレポリマー、及び、下記平均組成式(I)で表されるリン系化合物の中から選択される少なくとも一種の化合物を含有してなることを特徴とする、ノニオン性水系ウレタン樹脂組成物;
平均組成式(I):
但し、上式における、nは2.6〜10の数を表し、mは0又は1を表し、Rはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基又はフェニル基を表し、Aは単結合、−C(CH−、−SO−、−S−又は−O−を表す。
【請求項2】
前記ノニオン性基を有するイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーがポリエチレンオキサイド鎖を有する、請求項1に記載されたノニオン性水系ウレタン樹脂組成物。
【請求項3】
更に、鎖延長剤及び水を混合してなる、請求項1又は2に記載されたノニオン性水系ウレタン樹脂組成物。
【請求項4】
前記ノニオン性基を有するイソシアネート基含有基ウレタンプレポリマーが、高分子ポリオール、及び、ポリオキシエチレン基を含有するジオールと有機ポリイソシアネートとを反応させて得られたイソシアネート含有ウレタンプレポリマーである、請求項1〜3の何れかに記載されたノニオン性水系ウレタン樹脂組成物。
【請求項5】
前記ノニオン性基を有するイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーが、予め、ジイソシアネートのイソシアヌレート体における一部のイソシアネート基とメトキシポリエチレングリコールとを反応させて得られたポリイソシアネート、及び、高分子ポリオールとを反応させて得られたイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーである、請求項1〜3の何れかに記載されたノニオン性水系ウレタン樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1〜5の何れかに記載されたノニオン性水系ウレタン樹脂組成物を含有してなる事を特徴とする塗料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノニオン性水系ポリウレタン樹脂組成物に関し、特に、酸性条件下における保存安定性が良好であり、塗膜としたときの柔軟性に優れたノニオン性水系ポリウレタン樹脂組成物、及び該樹脂組成物を含有する塗料に関する。
【背景技術】
【0002】
水系ポリウレタン樹脂組成物は、塗料、接着剤、繊維集束剤、合成皮革、基材への含浸剤、バッキング材、などの種々の用途に使用することができるが、特に、特殊衣料、自動車、航空機、バス、鉄道車両等の輸送車両の内装、家具(椅子、ソファ、カーテン、箪笥等)、建材(住宅の他、ホテル、映画館、公民館等の公共施設用建材)、及び電子回路基板材料等に使用する場合には、高い難燃性が要求されている。
【0003】
従来、難燃剤としてはハロゲン系の難燃剤が用いられていた(例えば特許文献1)が、近年においては、環境汚染防止の観点から非ハロゲン系の難燃剤が要望されており、リン系化合物からなる難燃剤が使用されるようになってきた(例えば、特許文献2及び3)。しかしながら、リン系化合物はハロゲン系化合物に比較すると難燃性が低いために、リン系化合物を難燃剤として使用する場合には、通常、樹脂の使用量と難燃剤の使用量をほぼ等しくするか、或いは難燃剤の使用量の方を多くしていた。しかしながら、難燃剤は一般的に染料のブリードアウトを誘発する傾向があるので、難燃剤を多量に用いると染色堅牢度が低下しやすくなるという欠点があった。
【0004】
上記の欠点は、特殊なウレタンプレポリマーと特殊なリン系化合物を用いたポリウレタン樹脂水分散液(特許文献4)によって改善されたが、この場合には、酸性条件下での貯蔵安定性及び塗膜の柔軟性が不十分であるという欠点があった。
そこで本発明者らは、上記の欠点を解決するために鋭意研究を重ねた結果、ノニオン性水系ポリウレタン樹脂組成物に特定のリン酸エステル化合物を含有させた場合には良好な結果を得ることができることを見出し、本発明を完成させた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−250086号公報
【特許文献2】特開平11−269766号公報
【特許文献3】特開2000−126523号公報
【特許文献4】WO2014/045577号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって本発明の第1の目的は、難燃剤としてのリン系化合物の使用量が少ないにもかかわらず難燃性に優れると共に、酸性条件下における貯蔵安定性が良好である上、塗膜としたときの柔軟性に優れる水系ポリウレタン樹脂組成物を提供することにある。
本発明の第2の目的は、環境適合性、難燃性、及び酸性条件下における貯蔵安定性に優れる上、塗膜としたときの柔軟性に優れた塗料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
即ち本発明は、ノニオン性基を有するイソシアネート基含有ウレタンプレポリマー、及び、下記平均組成式(I)で表されるリン系化合物の中から選択される少なくとも一種の化合物を含有してなることを特徴とするノニオン性水系ウレタン樹脂組成物、及び該組成物を含有してなる塗料である。
【0008】
平均組成式(I):
但し、上式中の、nは2.6〜10の数、mは0又は1を表し、Rはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基又はフェニル基を表し、Aは単結合、−C(CH−、−SO−、−S−又は−O−を表す。
本発明における前記ノニオン性基を有するイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーはポリエチレンオキサイド鎖を有することが好ましく、特に、高分子ポリオール及びポリオキシエチレン基を含有するジオールと、有機ポリイソシアネートとを反応させて得られたイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーであることが好ましく、予め、ジイソシアネートのヌレート体における一部のイソシアネート基とメトキシポリエチレングリコールとを反応させて得られたポリイソシアネート、及び、高分子ポリオールとを反応させて得られたイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーであることが最も好ましい。
また、本発明のノニオン性水系ウレタン樹脂組成物は、更に、鎖延長剤及び水を含有することが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明のノニオン性水系ポリウレタン樹脂組成物は、酸性条件下での貯蔵安定性、及び塗膜の柔軟性に優れるので、特殊衣料用、自動車、航空機、バス、鉄道車両等の輸送車両の内装用、家具用(椅子、ソファ、カーテン、タンスなど)、住宅の他、ホテル、映画館、公民館等の公共施設に使用する建材用、或いは塗料用としてのみならず、電子回路基板材料などの用途にも好適である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明のノニオン性水系ポリウレタン樹脂組成物について詳細に説明するが、本願発明はこれらの記載に限定されるものではなく、本明細書に基づいて当業者が設計変更することによって容易に得られる発明もまた、本発明に包含されることは当然である。
なお、本発明の塗料は、本発明のノニオン性水系ポリウレタン樹脂組成物に、必要に応じて、適宜、公知の染・顔料や消泡剤、溶剤等、通常塗料に使用する種々の添加剤を用いて、容易に調製することができる。
【0011】
本発明で使用するノニオン性基を有するイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーは、高分子ポリオールと有機ポリイソシアネートから得られる、ノニオン性基を有するイソシアネート基末端プレポリマーであり、特にポリエチレンオキサイド鎖を有することが好ましい。
【0012】
上記ノニオン性基を導入する方法は公知の方法の中から適宜選択することができるが、例えば、高分子ポリオールの一部を、ポリオキシエチレン基を含有するジオールに置き換えて製造する方法、或いは、ジイソシアネートのヌレート体における一部のイソシアネート基とメトキシポリエチレングリコールとを予め反応させておき、次いで高分子ポリオールと反応させる方法があげられる。
【0013】
本発明において使用することのできる高分子ポリオールは公知のものの中から適宜選択することができるが、好ましい高分子ポリオールとしては、例えば、ポリエステル系ポリオール、ポリカーボネート系ポリオール、ポリエーテル系ポリオール、及びダイマージオールを挙げることができる。
【0014】
本発明において使用するのに好ましいポリエステル系ポリオールの具体例としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、分子量300〜1000のポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ビスヒドロキシエトキシベンゼン、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールA、ビスフェノールS、水素添加ビスフェノールA、ハイドロキノン及びこれらのアルキレンオキシド付加体等のジオール成分と、ダイマー酸、琥珀酸、アジピン酸、アゼライン酸、セパシン酸、ドデカンジカルボン酸、無水マレイン酸、フマル酸、1,3−シクロペンタンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、2,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、ナフタル酸、ビフェニルジカルボン酸、1,2−ビスフェノキシエタン−p,p’−ジカルボン酸、ジカルボン酸の無水物並びにエステル形成性誘導体等のジカルボン酸成分との脱水縮合反応によって得られるポリエステル系ポリオール;ε−カプロラクトン等の環状エステル化合物の開環重合反応により得られるポリエステル系ポリオール;及びこれらを共重合したポリエステル系ポリオール等が挙げられる。具体的には、ポリエチレンアジペートジオール、ポリブチレンアジペートジオール、ポリヘキサメチレンイソフタレートアジペートジオール、3−メチル−1,5−ペンタンイソフタレートジオール、3−メチル−1,5−ペンタンテレフタレートジオール、1,6−ヘキサンジオールとダイマー酸の重縮合物等が挙げられる。
【0015】
また、本発明で使用するのに好ましいポリカーボネート系ポリオールとしては、例えば、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール等のグリコールと、ジフェニルカーボネート、ホスゲン等との反応によって得られるポリカーボネート系ポリオールを挙げることができる。具体的には、ポリヘキサメチレンカーボネートジオール、3−メチルー1,5−ペンタンジオールカーボネートジオール等を挙げることができる。
【0016】
本発明において好適なポリエーテル系ポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ソルビトール、しょ糖、ビスフェノールA、ビスフェノールS、水素添加ビスフェノールA、アコニット酸、トリメリット酸、ヘミメリット酸、燐酸、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリイソプロパノールアミン、ピロガロール、ジヒドロキシ安息香酸、ヒドロキシフタール酸、1,2,3−プロパントリチオール等の活性水素を少なくとも2個有する化合物に、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、スチレンオキサイド、エピクロロヒドリン、テトラヒドロフラン、シクロヘキシレン等のモノマーの1種又は2種以上を常法により付加重合させた単独重合体、ブロック共重合体及びランダム共重体等のポリエーテル系ポリオールが挙げられる。具体的には、ポリテトラメチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール等の単独重合体、ブロック共重合体、及びランダム共重合体等が挙げられる。
【0017】
また、本発明において好適なダイマージオールとしては、重合脂肪酸を還元して得られるジオールを主成分とするものが挙げられる。このような重合脂肪酸としては、オレイン酸、リノール酸等の炭素数18の不飽和脂肪酸、乾性油脂肪酸、半乾性油脂肪酸、これらの脂肪酸の低級モノアルコールエステル等を、触媒の存在下又は不存在下に、ディールスアルダー型の、二分子重合反応させたものを挙げることができる。種々のタイプの重合脂肪酸が市販されているが、代表的なものとしては、炭素数18のモノカルボン酸が0〜5質量%、炭素数36のダイマー酸が70〜98質量%、及び炭素数54のトリマー酸が0〜30質量%からなるものがある。
【0018】
また本発明においては、前記高分子ポリオールとして、ポリエーテル系とポリエステル系とを組み合わせたポリエーテル・エステル系を用いることも可能である。
【0019】
これらの高分子ポリオールは、単独で用いることも、あるいは、2種以上を組み合わせて用いることもできるが、平均分子量は500〜4000であることが好ましい。
【0020】
前記有機ポリイソシアネートとしては、例えば、テトラメチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート;イソホロンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、3,3’−ジメチル−4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、リジンジイソシアネート等の脂環式ジイソシアネート;m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4−ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3’−ジメチル−4,4’−ビフェニレンジイソシアネート、3,3’−ジクロロ−4,4’−ビフェニレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、テトラメチレンキシリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート等を挙げることができる。これら有機ポリイソシアネートのうち、脂肪族ジイソシアネート又は脂環式ジイソシアネートを用いた場合には、得られるポリウレタン樹脂がより無黄変性となる傾向があるので好ましい。本発明においては、特に、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートが好適である。これらの有機ポリイソシアネートは、単独で用いることも、あるいは、2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0021】
前記鎖延長剤としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール等の、低分子量多価アルコール等が挙げることができる。これらの鎖伸長剤は、単独で用いることも、あるいは、2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0022】
本発明に使用されるリン系化合物としては、例えば、下記に例示した化合物があげられるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0023】
【0024】
【0025】
【0026】
【0027】
【0028】
【0029】
【0030】
【0031】
本発明においては、本発明の樹脂組成物中に上記リン系化合物2.0〜15質量%含有することが好ましく、特に5.0〜10.0質量%含有することが好ましい。また、ノニオン性基を有するウレタン樹脂ポリマー中には、ポリエチレンオキシド鎖が、20〜60質量%含有されることが好ましく、特に35〜45質量%含有されることが好ましい。
次に、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらよって何ら限定されるものではない。
【実施例1】
【0032】
1Lの三ツ口フラスコに、1,6−ポリカーボネートジオール(平均分子量2000)を96g、ポリオキシエチレン基を含有するジオール(パーストープ社製、製品名Ymer−N120、水酸基価113)を128g、イソホロンジイソシアネートを58g、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体(旭化成ケミカルズ社製、製品名デュラネートTLA−100)を7g、溶剤としてN−エチル−2−ピロリドンを49g入れて、均一に混合した。100℃で4時間反応させ、イソシアネート基の含有量が2.5質量%のウレタンプレポリマー溶液を得た。得られたウレタンプレポリマー溶液を60℃まで冷却し、リン系化合物(5)を422g加え、温度を60℃に保ちながら均一になるまで混合した。
次いで、予め用意してある空の容器に500g移し、撹拌を行いながら徐々に40℃の水を添加して混合した後、室温まで冷却した。更に、鎖伸長剤として2.1gのエチレンジアミンを、水と一緒に添加し、IRによる測定でイソシアネート基が消失するまで25℃で混合し、不揮発分30質量%、粘度200mPa・s/25℃、pH=6、不揮発分中のリン含有量が5質量%の、ノニオン水系ポリウレタン樹脂組成物を得た。
【実施例2】
【0033】
1Lの三ツ口フラスコに、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体(旭化成ケミカルズ社製、製品名デュラネートTLA−100)を27g、メトキシPEGを50g、溶剤としてN−エチル−2−ピロリドンを49g入れて均一混合し、100℃で4時間反応させて、イソシアネート基の含有量が8質量%の反応溶液を得た。得られた反応溶液を冷却し、1.6−ポリカーボネートジオール(平均分子量2000)を96g加えて混合し、100℃で4時間反応させ、イソシアネート基の含有量が1.5質量%のウレタンプレポリマー溶液を得た。次に、得られたウレタンプレポリマー溶液を60℃まで冷却し、リン系化合物(5)を375g添加し、温度を60℃に保ちながら均一になるまで混合した。
次いで、予め用意してある空の容器に500g移し、撹拌を行いながら徐々に40℃の温水を添加し混合した後、室温まで冷却を行った。更に、鎖伸長剤として1.4gのエチレンジアミンを、水と一緒に仕込み、IRによる測定でイソシアネート基が消失するまで25℃で混合し、不揮発分30質量%、粘度200mPa・s/25℃、pH=6、不揮発分中のリン含有量が5質量%の、ノニオン水系ポリウレタン樹脂組成物を得た。
【0034】
(比較例1)
1Lの三ツ口フラスコに、3−メチル−1,5−ペンタンテレフタレートジオール(平均分子量2000)101.3g、ジメチロールブタン酸6.0g、1,4−ブタンジオール1.3g、ジブチルチンジラウレート0.005g、及びイソホロンジイソシアネート31.3g、及び溶剤としてメチルエチルケトン60.0gを入れて、均一に混合した。80℃で180分間反応させ、イソシアネート基の含有量が2.1%のウレタンプレポリマー溶液を得た。得られたウレタンプレポリマー溶液を60℃まで冷却した後、リン化合物(5)210gを添加して均一に混合した後、トリエチルアミン4.1gを加えて中和した。次いで、得られた溶液を40℃程度の温水359gの入った別容器に徐々に添加し、ディスパー羽根を用いて乳化分散させた。分散液を冷却した後、鎖伸長剤として、イソホロンジアミンの30質量%水溶液20.0gを添加し、90分間反応させた。次いで、得られたポリウレタン樹脂分散液を減圧下に50℃で脱溶剤することにより、不揮発分33質量%、粘度200mPa・s/25℃、pH=8、不揮発分中のリン含有量0.8質量%の、アニオン型水系ポリウレタン樹脂組成物を得た。
【0035】
(比較例2)
リン化合物(5)を用いなかったこと以外は、実施例1と同様にして、不揮発分が30質量%のノニオン水系樹脂組成物を得た。
【0036】
(比較例3)
ポリオキシエチレン基を含有するジオールの代わりに、ジメチロールブタン酸を用いたこと以外は実施例1と同様にして、不揮発分が30質量%のアニオン型水系樹脂組成物を得た。
【0037】
<試験例>
上記実施例及び比較例によって得られた樹脂組成物を使用して、難燃性及び安定性の評価を行った。評価方法は下記に示した通りである。
【0038】
<難燃性>
市販のフエルトに、上記実施例及び比較例で得られたポリウレタン樹脂水分散液をポリウレタン樹脂が15質量%含まれるように希釈した処理液を用い、絞り率60%でパディング処理した後、140℃で3分間乾燥し、樹脂加工布を得た。得られた樹脂加工布について、JIS L 1091に記載されているA−1法(45度ミクロバーナー法)に準じて難燃性を測定した。なお、残炎が3秒以内の場合を合格と判定した。
【0039】
<安定性>
pH4.0の酸性水溶液を調製し、ポリウレタン樹脂分散液中に10質量%となるよう添加した。次いで、撹拌羽を用いて均一になるまで混合した後、溶液をナイロン濾布を用いて濾過し、蓋付のガラス瓶に移した。ガラス瓶の蓋を閉めた状態で、50℃の恒温槽内で1週間静置した。1週間後、溶液底の沈降物および溶液中の凝集物の有無を、目視により確認して、沈降物および凝集物を生じていないものを合格(○)とした。
【0040】
<塗膜柔軟性>
増粘剤により、10,000〜30,000mPa程度に増粘させたポリウレタン樹脂を、市販の不織布に乾燥後の厚みが0.1mmとなるように片面に塗布し、120℃で1時間乾燥させた不織布の触感を下記の基準で官能評価した。
○:ごわつきがなく、不織布の風合いが損なわれない。
△:ごわつきが少しあるが、樹脂の割れは生じない。
×:ごわつきが大きく、屈曲させたときに樹脂の割れが生じる。
【0041】
【表1】
*1:難燃性は6回平均の数値
【0042】
上記表1に記載した結果からも明らかなように、本発明のノニオン性水系ポリウレタン樹脂組成物を含有する処理液で加工した樹脂加工布が、充分な難燃性を有すること、及び、本発明のノニオン性水系ポリウレタン樹脂組成物が、酸性溶液中で安定性に優れていることが実証された。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明のノニオン性水系ポリウレタン樹脂組成物は、酸性条件下で安定であると共に塗膜の柔軟性に優れている上、リン系化合物の使用量が少ないにもかかわらず難燃性にも優れており、特殊衣料用、自動車、航空機、バス、鉄道車両等の輸送車両の内装用、家具用(椅子、ソファ、カーテン、タンスなど)、住宅の他、ホテル、映画館、公民館等の公共施設に使用する建材用、或いは塗料用としてのみならず、電子回路基板材料などの用途にも好適であるので、産業上極めて有意義である。