(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1に記載の強化型ドハティ増幅器であって、前記キャリア入力回路網および前記キャリア出力回路網と、前記ピーキング入力回路網および前記ピーキング出力回路網とは、少なくとも二次の回路網である、強化型ドハティ増幅器。
請求項2に記載の強化型ドハティ増幅器であって、前記キャリア入力回路網および前記キャリア出力回路網と、前記ピーキング入力回路網および前記ピーキング出力回路網とは、集中素子を含む集中素子回路網である、強化型ドハティ増幅器。
請求項1に記載の強化型ドハティ増幅器であって、前記キャリア入力回路網および前記キャリア出力回路網と、前記ピーキング入力回路網および前記ピーキング出力回路網とは、集中素子を含む集中素子回路網である、強化型ドハティ増幅器。
請求項1に記載の強化型ドハティ増幅器であって、前記キャリア入力回路網および前記キャリア出力回路網と、前記ピーキング入力回路網および前記ピーキング出力回路網とのそれぞれは、望まれる位相シフトを提供するように構成される伝送線を含まない、強化型ドハティ増幅器。
請求項1に記載の強化型ドハティ増幅器であって、前記キャリア入力回路網は前記キャリア信号の位相を約45度進め、前記ピーキング入力回路網は前記ピーキング信号の位相を約45度遅らせ、前記キャリア信号と前記ピーキング信号とがそれぞれ前記キャリア電力増幅器回路と前記ピーキング電力増幅器回路とへ印加されたときに、前記ピーキング信号の位相が前記キャリア信号の位相より約90度遅れているようにする、強化型ドハティ増幅器。
請求項1に記載の強化型ドハティ増幅器であって、前記キャリア入力回路網は前記キャリア信号の位相を約45度進め、前記ピーキング入力回路網は前記ピーキング信号の位相を約45度遅らせ、前記キャリア信号と前記ピーキング信号とがそれぞれ前記キャリア電力増幅器回路と前記ピーキング電力増幅器回路とへ印加されたときに、前記ピーキング信号の位相が前記キャリア信号の位相より約90度遅れているようにする、強化型ドハティ増幅器。
請求項1に記載の強化型ドハティ増幅器であって、前記パワー・スプリッタは、前記入力信号を受け取り、前記入力信号を、均等に、前記キャリア信号と前記ピーキング信号とに分割し、前記キャリア信号と前記ピーキング信号とがほぼ同じパワーと関連するように構成される、強化型ドハティ増幅器。
請求項1に記載の強化型ドハティ増幅器であって、前記パワー・スプリッタは、前記入力信号を受け取り、前記入力信号を、不均等に、前記キャリア信号と前記ピーキング信号とに分割し、前記キャリア信号と前記ピーキング信号とがほぼ同じパワーと関連しないように構成される、強化型ドハティ増幅器。
請求項9に記載の強化型ドハティ増幅器であって、前記キャリア信号は約−1.7dBの分割と関連し、前記ピーキング信号は約−4.7dBの分割と関連する、強化型ドハティ増幅器。
請求項1に記載の強化型ドハティ増幅器であって、前記キャリア電力増幅器回路は、A/B級増幅器およびB級増幅器のうちの1つであり、前記ピーキング電力増幅器回路はC級増幅器である、強化型ドハティ増幅器。
請求項1に記載の強化型ドハティ増幅器であって、前記強化型ドハティ増幅器の周波数応答が、第1周波数範囲の第1通信帯域のための第1通過帯域と、前記第1通過帯域から分離している第2周波数範囲の第2通信帯域のための第2通過帯域とを提供するように構成される、強化型ドハティ増幅器。
請求項13に記載の強化型ドハティ増幅器であって、前記第1通信帯域は、PCS帯域とUMTS帯域とGSM帯域とのうちの1つであり、前記第2通信帯域は、LTE帯域とWiMax帯域とのうちの1つである、強化型ドハティ増幅器。
請求項13に記載の強化型ドハティ増幅器であって、前記第1通信帯域は、所与の通信標準に対する1つの通信帯域であり、前記第2通信帯域は、前記所与の通信標準に対する別の通信帯域である、強化型ドハティ増幅器。
請求項13に記載の強化型ドハティ増幅器であって、前記第1通信帯域と前記第2通信帯域との双方における無線周波数信号を増幅するときに、前記強化型ドハティ増幅器により、少なくとも15%の瞬時帯域幅と、6dBのバックオフ・パワーとピーク最大出力パワーとの間での45%より高い効率とが提供される、強化型ドハティ増幅器。
請求項1に記載の強化型ドハティ増幅器であって、無線周波数信号を増幅するときに、前記強化型ドハティ増幅器により、少なくとも15%の瞬時帯域幅と、6dBのバックオフ・パワーとピーク最大出力パワーとの間での40%より高い効率とが提供される、強化型ドハティ増幅器。
請求項1に記載の強化型ドハティ増幅器であって、無線周波数信号を増幅するときに、前記強化型ドハティ増幅器により、少なくとも20%の瞬時帯域幅と、6dBのバックオフ・パワーとピーク最大出力パワーとの間での35%より高い効率とが提供される、強化型ドハティ増幅器。
請求項1に記載の強化型ドハティ増幅器であって、無線周波数信号を増幅するときに、前記強化型ドハティ増幅器により、少なくとも20%の瞬時帯域幅と、6dBのバックオフ・パワーとピーク最大出力パワーとの間での40%より高い効率とが提供される、強化型ドハティ増幅器。
請求項1に記載の強化型ドハティ増幅器であって、無線周波数信号を増幅するときに、前記強化型ドハティ増幅器により、少なくとも10%の瞬時帯域幅と、6dBのバックオフ・パワーとピーク最大出力パワーとの間での45%より高い効率とが提供される、強化型ドハティ増幅器。
請求項1に記載の強化型ドハティ増幅器であって、無線周波数信号を増幅するときに、前記強化型ドハティ増幅器により、少なくとも250MHzの瞬時帯域幅と、6dBのバックオフ・パワーとピーク最大出力パワーとの間での40%より高い効率とが提供される、強化型ドハティ増幅器。
請求項1に記載の強化型ドハティ増幅器であって、前記キャリア位相オフセットは、前記キャリア電力増幅器回路の出力におけるインピーダンスによる位相シフトであり、前記インピーダンスは、前記キャリア電力増幅器回路の出力と、前記ドハティ組み合わせノードとの間に結合される無効成分により生成される、強化型ドハティ増幅器。
請求項1に記載の強化型ドハティ増幅器であって、前記ピーキング位相オフセットは、前記ピーキング電力増幅器回路の出力におけるインピーダンスによる位相シフトであり、前記インピーダンスは、前記ピーキング電力増幅器回路の出力と、前記ドハティ組み合わせノードとの間に結合される無効成分により生成される、強化型ドハティ増幅器。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[0024] 以下で説明する実施形態は、ここで開示されたものを当業者が実施できるようにするために必要な情報であり、開示されたものを実施する際の最適の実施形態を例示する。当業者であれば、添付の図面を参照して以下の説明を読むことにより、本開示の概念を理解し、それらの概念の、ここでは特定的に説明しない応用についても認識するであろう。それらの概念および応用は、本開示および特許請求の範囲の範囲内にあることを理解すべきである。
【0014】
[0025] 本開示は、ドハティ電力増幅器の動作帯域を増加させることと関連する。ドハティ電力増幅器の動作の帯域幅を増加させるための変更についての詳細を探求する前に、
図1を参照して従来のドハティ電力増幅器10を概略的に説明する。示されているように、変調されたRF入力信号RFINが、ウィルキンソン(Wilkinson)・スプリッタなどのようなパワー・スプリッタ12へ供給され、パワー・スプリッタは、RF入力信号RF
INを、「キャリア経路」と「ピーキング経路」とに沿って供給されるように分割する。伝統的には、RF入力信号RF
INは均等に分割され、キャリア経路とピーキング経路とは、RF入力信号RF
INの元の入力パワーの半分(−3dB)を受け取る。
【0015】
[0026] 一般に、キャリア経路は、キャリア電力増幅器回路(PA
C)14と、それに続く第1伝送線(TL)16とを含み、この伝送線は、動作帯域の中心周波数またはその近くで90度の位相シフトを提供するサイズとされている。キャリア経路はドハティ組み合わせノード18で終わり、ドハティ組み合わせノード18は変成器(transformer)24と結合され、変成器24は最終的にアンテナ(示さず)と結合される。ピーキング経路は第2伝送線(TL)20を含み、この伝送線は、動作帯域の中心周波数またはその近くで90度の位相シフトを提供するサイズとされており、この伝送線の後にはピーキング電力増幅器回路(PA
P)が続く。従って、キャリア経路とピーキング経路との双方に沿って供給されたRF入力信号RF
INは、それぞれにキャリア電力増幅器回路14とピーキング電力増幅器回路22とで増幅されたときに、互いに位相が90度ずれている。キャリア経路と同様に、ピーキング経路はドハティ組み合わせノード18で終わる。注目すべきこととして、パワー・スプリッタ12は、それ自体が、ピーキング経路への供給を行う脚部により90度の位相シフトを提供することもできる。その場合、第2伝送線20は含まれない。
【0016】
[0027] 従来のドハティ様式では、キャリア電力増幅器回路14はA/B(またはB)級増幅器を提供し、ピーキング電力増幅器回路22はC級増幅器を提供する。動作中、RF入力信号RF
INは分割され、キャリア経路とピーキング経路とに沿って、それぞれにキャリア電力増幅器回路14とピーキング電力増幅器回路22とへ送られる。注目すべきこととして、第2伝送線20は、RF入力信号RF
INのピーキング経路内にある部分を、ピーキング電力増幅器回路22へ到達する前に90度遅延させる。
【0017】
[0028] 一般に、ドハティ増幅器は、2つの動作領域を有するものと考えられている。第1領域では、キャリア電力増幅器回路14のみがターンオンされ、RF入力信号RF
INを増幅するように動作する。第2領域では、キャリア電力増幅器回路14とピーキング電力増幅器回路22との双方が動作して、キャリア経路とピーキング経路とのそれぞれにおいてRF入力信号RF
INを増幅する。2つの領域の間の閾値は、キャリア電力増幅器回路14が飽和するキャリア経路内のRF入力信号RF
INの大きさに対応する。第1領域では、RF入力信号RF
INのレベルは閾値未満である。第2領域では、RF入力信号RF
INのレベルは閾値以上である。
【0018】
[0029] RF入力信号RF
INのレベルが所与の閾値より下である第1領域において、キャリア電力増幅器回路14は、RF入力信号RF
INのキャリア経路内にある部分を増幅する。RF入力信号RF
INが所与の閾値より下であるとき、ピーキング電力増幅器回路22はターンオフされており、その消費電力は僅かなものである。従って、キャリア電力増幅器回路14のみが、増幅されたRF入力信号RF
INをドハティ組み合わせノード18および変成器24へ供給して、RF出力信号RF
OUTを提供する。ドハティ増幅器の全体的な効率は、主に、キャリア電力増幅器回路14のAB(またはB)級増幅器の効率により決まる。
【0019】
[0030] RF入力信号RF
INが所与の閾値以上である第2領域において、キャリア電力増幅器回路14は飽和し、その最大パワーを、第1伝送線16を介してドハティ組み合わせノード18へ送る。更に、RF入力信号RF
INが所与の閾値より高くなるので、ピーキング電力増幅器回路22がターンオン状態となり、RF入力信号RF
INのピーキング経路に沿って流れる部分の増幅を開始する。RF入力信号RF
INが所与の閾値より高くなり続けると、ピーキング電力増幅器回路22は、ピーキング電力増幅器回路22が飽和するまで、より多くのパワーをドハティ組み合わせノード18へ送る。
【0020】
[0031] 第2領域では、キャリア電力増幅器回路14とピーキング電力増幅器回路22との双方が、増幅された信号をドハティ組み合わせノード18へ送る。キャリア経路とピーキング経路とにおいて第1伝送線16と第2伝送線20とを用いることにより、それぞれの経路内の増幅された信号は、同相でドハティ組み合わせノード18へ到達して反応的に組み合わされる(reactively combined)。組み合わされた信号は、次に、変成器24により段階的に増大または減少させられて、増幅されたRF出力信号RF
OUTが生成される。
【0021】
[0032]
図2のグラフは、キャリア電力増幅器回路14と、ピーキング電力増幅器回路22と、ドハティ増幅器10全体との出力パワー(P
O)対入力パワー(P
I)を描いたものである。示されているように、キャリア電力増幅器回路14は、飽和するまで、第1領域R1全体において線形的に動作する。キャリア電力増幅器回路14が飽和状態に達すると、第2領域R2へ入る。第2領域R2では、ピーキング電力増幅器回路22がターンオンとなり、RF入力信号RF
INの増幅を開始する。第2領域R2におけるドハティ増幅器の全体的な出力パワーは、事実上、キャリア電力増幅器回路14とピーキング電力増幅器回路22との出力パワーの和である。
【0022】
[0033] 第2領域R2において動作するとき、ピーキング電力増幅器回路22により供給されるパワーは、事実上、キャリア電力増幅器回路14に対する見掛け負荷インピーダンスを低下させる。見掛け負荷インピーダンスを低下させることにより、キャリア電力増幅器回路14が、飽和状態にとどまりながらも、より多くのパワーを負荷へ送ることを可能とされる。その結果、キャリア電力増幅器回路14の最大効率が維持され、ドハティ増幅器10の全体的効率は、ピーキング電力増幅器回路22が飽和状態になるまで、第2領域R2全体を通して高い状態で維持される。
【0023】
[0034]
図3Aおよび
図3Bのグラフは、典型的な電力増幅器と典型的なドハティ増幅器とのそれぞれの効率対出力パワーを描いたものである。
図3Aを参照すると、典型的な電力増幅器の効率ηは、電力増幅器が飽和してその最大出力パワーP
MAXに到達するまで、出力パワーPに比例して増加する。
図3Bに示すように、ドハティ増幅器10のキャリア電力増幅器回路14も同様に動作する。第1領域R1を通しての動作では、ピーキング電力増幅器回路22はオフの状態であり、RF入力信号RF
INは、キャリア電力増幅器回路14が飽和する点へ向けて増加していく。第1領域R1全体において、キャリア電力増幅器回路14の効率、従って、ドハティ増幅器10の全体的効率ηは、キャリア電力増幅器回路14が所与の出力パワー・レベルにおいて飽和状態となるまで、出力パワーPに比例して増加していく。所与の出力パワー・レベルを、ここでは閾値パワー・レベルP
THと呼び、例示を目的として、ドハティ増幅器10の最大出力パワーP
MAXの1/9の位置(1/9P
MAX)に示している。
【0024】
[0035] RF入力信号RF
INが、キャリア電力増幅器回路14が飽和状態となる点を超えて増加すると、ドハティ増幅器は第2領域R2へ入る。第2の領域へ入ると、ピーキング電力増幅器回路22がRF入力信号RF
INの増幅を開始する。キャリア電力増幅器回路14は飽和状態を維持し、RF入力信号RF
INの増幅を続ける。RF入力信号RF
INが更に増加すると、ピーキング電力増幅器回路22は、ドハティ増幅器10の最大出力パワーP
MAXのところで飽和状態になるまで、更に多くのパワーを送り出す。第2領域R2全体において、ドハティ増幅器10の全体的効率ηは高い状態で維持され、キャリア電力増幅器回路14の飽和状態が始まる第2領域R2の最初の部分と、ピーキング電力増幅器回路22が飽和状態となる第2領域R2の最後の部分とがピークとなる。
図3Aおよび
図3Bに明確に示されているように、ドハティ増幅器10では、閾値パワー・レベルP
THあたりから最大出力パワーP
MAXまでのバックオフ・パワー・レベルでの、パワーを付加された効率が、典型的な電力増幅器と比べて大きく改善されている。
【0025】
[0036]
図1に戻る。例示されているドハティ増幅器10は、キャリア経路の第3伝送線26とピーキング経路の第4伝送線28とを有するものとして示されている。ピーキング電力増幅器回路22の変化する出力インピーダンスをキャリア電力増幅器回路14の出力インピーダンスへ適切にロードするようにするため、またはその逆のことを行う目的で、第3伝送線26と第4伝送線28とは、キャリア経路とピーキング経路との出力において位相のオフセットをもたらすために使用することができる。
【0026】
[0037] 上記で示したように、従来のドハティ増幅器10は、大きくバックオフされたパワー・レベルと最大パワー・レベルとの双方において非常に効率が高い。しかし残念ながら、従来のドハティ増幅器10の帯域は比較的限定されたものであり、使用可能な瞬時帯域幅は動作周波数の5%のみである。例えば、送信される信号の中心が約2.1GHzとなるように設計されたドハティ増幅器10では、使用可能な帯域幅は最大でも約105MHzである。
【0027】
[0038] 注目すべきこととして、キャリア電力増幅器回路14とピーキング電力増幅器回路22とは、従来のドハティ増幅器10の帯域幅を限定しない。たとえ、これらのキャリア電力増幅器回路14とピーキング電力増幅器回路22とが、広帯域増幅器として設計され、幾つかのオクターブの帯域幅を個々にサポートするとしても、従来のドハティ増幅器10の全体としての瞬時帯域幅は、なおも動作周波数の約5%に限定されるであろう。例えば、キャリア電力増幅器回路14とピーキング電力増幅器回路22とのそれぞれが、個々に使用可能な帯域幅を2GHzから4GHzの間とするように設計されたとしても、全体としてのドハティ増幅器10の瞬時帯域幅は、なおも動作周波数の約5%(2GHzでは100MHz、6GHzでは400MHz)に制限されるであろう。即ち、従来のドハティ増幅器10においてキャリア電力増幅器回路14とピーキング電力増幅器回路22との動作範囲をどのように広くしても、使用可能な帯域幅は、従来のドハティ増幅器10の他のコンポーネントにより制限される。
【0028】
[0039]
図4Aおよび
図4Bは上記の概念を示す。
図4Aは広帯域増幅器の利得対周波数を描き、
図4Bは従来のドハティ増幅器10の利得対周波数を描くものであり、このドハティ増幅器10では、キャリア電力増幅器回路14とピーキング電力増幅器回路22との双方に同じ広帯域増幅器を使用している。示されているように、従来のドハティ増幅器10は、キャリア電力増幅器回路14とピーキング電力増幅器回路22とに広帯域増幅器を用いた場合でも、その帯域幅が、スタンドアローンの広帯域増幅器の帯域幅よりも大幅に限定されている。即ち、ドハティ増幅器10において単に広帯域増幅器を使用するだけでは、ドハティ増幅器10の帯域幅を必ずしも増加させるというものではない。
【0029】
[0040] 従来のドハティ増幅器10の帯域幅を限定させる主なコンポーネントは、パワー・スプリッタ12と、90度の位相シフトを提供する第1伝送線16および第2伝送線20と、位相オフセットを提供する第3伝送線26および第4伝送線28と、変成器24とであることが発見されている。本開示は、従来のドハティ増幅器10の全体としての帯域幅を大幅に増加させるための、従来のドハティ増幅器10の様々なコンポーネントの置換または変更のための技術を提供する。
【0030】
[0041] 強化されたドハティ増幅器30の一例を
図5に示す。特定的には、変調されたRF入力信号RF
INが、ウィルキンソン・スプリッタなどのようなパワー・スプリッタ32へ供給され、パワー・スプリッタ32は、RF入力信号RF
INを、キャリア経路とピーキング経路とに沿って流れるように分割する。この例では、RF入力信号RF
INは不均等に分割され、キャリア経路は、1.7dB減衰されたRF入力信号RF
INの入力パワーを受け取り、ピーキング経路は、4.7dB減衰されたRF入力信号RF
INの入力パワーを受け取る。このように不均等に分割することにより、均等に分割する場合と比べて、強化型ドハティ増幅器30の効率が更に高くなる。なお、均等に分割する場合、RF入力信号RF
INは、キャリア経路とピーキング経路とで均等に分割される(−3dB)。
【0031】
[0042] キャリア経路は、キャリア入力回路網34と、キャリア電力増幅器回路(PA
C)36と、キャリア出力回路網38とを含む。キャリア経路はドハティ組み合わせノード40で終わり、ドハティ組み合わせノード40は更に変成器42へ結合され、変成器42は最終的にアンテナ(示さず)へ結合される。ピーキング経路は、ピーキング入力回路網44と、ピーキング電力増幅器回路(PA
P)46と、ピーキング出力回路網48とを含む。ピーキング経路はドハティ組み合わせノード40で終わる。
【0032】
[0043] この例では、パワー・スプリッタ32により供給される分割されたRF入力信号RF
INは、実質的に同相で、キャリア入力回路網34とピーキング入力回路網44とへ供給される。換言すると、この例では、パワー・スプリッタは、ピーキング経路へ供給されるRF入力信号RF
INへ90度の位相シフトを与えない。しかし、キャリア電力増幅器回路36とピーキング電力増幅器回路46とのそれぞれの入力へ供給されるRF入力信号RF
INは、約90度シフトされる必要がある。一般に、ピーキング電力増幅器回路46の入力へ供給されるRF入力信号RF
INは、キャリア電力増幅器回路36の入力へ供給されるRF入力信号RF
INよりも約90度遅れている。
【0033】
[0044] 1つの実施形態では、キャリア入力回路網34とピーキング入力回路網44とは集中定数素子回路網であり、それらは、ピーキング電力増幅器回路46の入力へ供給されるRF入力信号RF
INがキャリア電力増幅器回路36の入力へ供給されるRF入力信号RF
INよりも約90度遅れることを確実なものとするように、設計されている。集中定数素子回路網は、一次のフィルタリングおよび位相シフトのためのコンポーネントとして、インダクタ、キャパシタ、および抵抗を含むものである。例示の実施形態では、キャリア入力回路網34は、キャリア経路内のRF入力信号RF
INを45度(+45度)進め、ピーキング入力回路網44は、ピーキング経路内のRF入力信号RF
INを45度(−45度)遅らせる。キャリア経路内のRF入力信号RF
INを45度進め、ピーキング経路内のRF入力信号RF
INを45度(−45度)遅らせることにより、ピーキング電力増幅器回路46の入力へ供給されるRF入力信号RF
INは、キャリア電力増幅器回路36の入力へ供給されるRF入力信号RF
INよりも約90度遅れる。
【0034】
[0045] キャリア入力回路網34とピーキング入力回路網44とのそれぞれにおける+45度と−45度との位相シフトについて説明したが、別の組み合わせの位相シフトも可能である。例えば、キャリア入力回路網34とピーキング入力回路網44とのそれぞれにおいて、+60度と−30度との位相シフトや、−50度と+40度との位相シフトなどを用いることもできる。
【0035】
[0046]
図5のキャリア入力回路網34は、直列キャパシタC
1、分路インダクタL
1、および直列キャパシタC
2を含むものとして示されている。ピーキング入力回路網44は、直列インダクタL
2、分路キャパシタC
3、および直列インダクタL
3を含むものとして示されている。当業者には理解できるように、これらの回路網は単なる例であり、これよりも高次(二次や三次)の様々な構成の回路網で実施することもできる。
【0036】
[0047]
図5の参照を続けると、キャリア出力回路網38は、キャリア電力増幅器回路36とドハティ組み合わせノード40との間に結合されている。同様に、ピーキング出力回路網48は、ピーキング電力増幅器回路46とドハティ組み合わせノード40との間に結合されている。キャリア出力回路網38とピーキング出力回路網48との主な機能は、キャリア入力回路網34とピーキング入力回路網44とにより与えられた位相シフトを取り除き、望まれる性能の計量値(metric)を達成するために必要と考えられる任意の位相オフセットを与えることである。キャリア出力回路網38とピーキング出力回路網48とを通過した後、キャリア経路およびピーキング経路からの増幅されたRF入力信号RF
INは、位相が整合されてドハティ組み合わせノード40へ供給され、それにより、信号は、効率的に組み合わされ、変成器42により段階的に増大または減少させられる。増幅の後、ピーキング出力回路網48へ供給されるRF入力信号RF
INは、キャリア出力回路網38へ供給されるRF入力信号RF
INよりも約90度遅れている。示されている実施形態では、キャリア出力回路網38は、補償済キャリア位相シフトφ
C−COMPだけ、キャリア経路内のRF入力信号RF
INを実効的にシフトする。
【0037】
[0048] 補償済キャリア位相シフトφ
C−COMPは、キャリア入力回路網34により与えられる位相シフト(φ
C−IP)を負にしたものから、キャリア位相オフセットφC−POを減算したものであり、φ
C−COMP=−φ
C−IP−φ
C−POとなる。この例では、キャリア入力回路網34により与えられる位相シフト(φ
C−IP)は+45度である。キャリア位相オフセットφ
C−POは、意図された動作周波数の範囲(1以上の範囲)でキャリア電力増幅器回路36の出力へ与えられるインピーダンスの無効成分に対応する。このインピーダンスは、実際には、意図された動作周波数の範囲(1以上の範囲)でキャリア出力回路網38
、および変成器42により与えられる合成インピーダンスである。目的は、意図された動作周波数の範囲(1以上の範囲)でキャリア電力増幅器回路36の出力へ実質的な実インピーダンス(純粋な抵抗)を与えることである。
【0038】
[0049] 同様に、ピーキング出力回路網48は、ピーキング経路内のRF入力信号RFINを、補償済ピーキング位相シフトφ
P−COMPだけ実質的にシフトする。補償済ピーキング位相シフトφ
P−COMPは、ピーキング入力回路網44により与えられる位相シフト(φ
P−IP)を負にしたものから、ピーキング位相オフセットφ
P−POを減算したものであり、φ
P−COMP=−φ
P−IP−φ
P−POとなる。この例では、ピーキング入力回路網44により与えられる位相シフト(φ
P−IP)は−45度である。ピーキング位相オフセットφ
P−POは、意図された動作周波数の範囲(1以上の範囲)でピーキング電力増幅器回路46の出力へ与えられるインピーダンスの無効成分に対応する。このインピーダンスは、実際には、意図された動作周波数の範囲(1以上の範囲)でピーキング出力回路網48
、および変成器42により与えられる合成インピーダンスである。目的は、意図された動作周波数の範囲(1以上の範囲)でピーキング電力増幅器回路46の出力へ実質的な実インピーダンス(純粋な抵抗)を与えることである。キャリア出力回路網38とピーキング出力回路網48とのそれぞれにおける+45度(φ
C−IP)と−45度(φ
P−IP)という基準の位相シフトについて説明したが、これらの位相シフトは、単に、キャリア入力回路網34とピーキング入力網44とのそれぞれにおいて与えられた位相シフトを反映させているだけである。上記のように、他の組み合わ
せの位相シフトも可能である。
【0039】
[0050]
図5において、キャリア出力回路網38は、直列インダクタL
4、分路キャパシタC
4、および直列インダクタL
5を含むものとして示されている。ピーキング出力回路網48は、直列キャパシタC
5、分路インダクタL
6、および直列キャパシタC
6を含むものとして示されている。当業者には理解できるように、これらの回路網は単なる例であり、これよりも高次の様々な構成の回路網で実施することもできる。
【0040】
[0051] 示した実施形態では、キャリア電力増幅器回路36はA/B(またはB)級増幅器を提供し、ピーキング電力増幅器回路46はC級増幅器を提供する。これらの増幅器のそれぞれは、一般に、1以上のトランジスタから形成される。選択した実施形態では、増幅器は、窒化ガリウム(GaN)を用いる高電子移動度トランジスタ(HEMT)、ガリウム砒素(GAAs)または炭化シリコン(SiC)を用いる金属半導体電界効果トランジスタ(MESFET)、および横方向拡散金属酸化物半導体(laterally diffused metal oxide semiconductor)(LDMOS)のうちの1つから形成される。なお、当業者は、他の適用可能なトランジスタおよび材料系を適用できることを理解するであろう。
【0041】
[0052] 強化型ドハティ増幅器30の動作中、RF入力信号RF
INはパワー・スプリッタ32により分割され、キャリア経路とピーキング経路とに沿って、キャリア電力増幅器回路36とピーキング電力増幅器回路46とのそれぞれへ送られる。キャリア経路内で、RF入力信号RF
INは、キャリア電力増幅器回路36へ供給される前に、キャリア入力回路網34により45度進められる。ピーキング経路内で、RF入力信号RF
INは、ピーキング電力増幅器回路46へ供給される前に、ピーキング入力回路網44により45度遅らされる。
【0042】
[0053] 上記のように、ドハティ増幅器は、特徴的に、2つの領域で動作する。第1領域では、キャリア電力増幅器回路36のみがターンオンされ、RF入力信号RF
INを増幅するように動作する。第2領域では、キャリア電力増幅器回路36とピーキング電力増幅器回路46との双方が動作して、キャリア経路とピーキング経路とのそれぞれにおいてRF入力信号RF
INを増幅する。2つの領域の間の閾値は、キャリア経路のRF入力信号RF
INの大きさに対応し、その大きさのところでキャリア電力増幅器回路36は飽和する。第1領域では、RF入力信号RF
INのレベルは閾値未満である。第2領域では、RF入力信号RF
INのレベルは閾値以上である。
【0043】
[0054] RF入力信号RF
INのレベルが所与の閾値より下である第1領域R1において、キャリア電力増幅器回路36は、RF入力信号RF
INのキャリア経路内にある部分を増幅する。増幅されたRF入力信号RF
INは、キャリア出力回路網38により補償済キャリア位相シフトφ
C−COMPたげシフトされ、ドハティ組み合わせノード40へ送られる。注目すべきこととして、RF入力信号RF
INが所与の閾値より下であるとき、第1領域R1では、実際に、ピーキング経路を介してドハティ組み合わせノード40へ信号が提供されない。第1領域R1では、ピーキング電力増幅器回路46はターンオフされており、強化型ドハティ増幅器30の全体的な効率は、主に、キャリア電力増幅器回路36の効率により決まる。
【0044】
[0055] RF入力信号RF
INが所与の閾値以上である第2領域において、キャリア電力増幅器回路36は飽和し、その最大パワーを、キャリア出力回路網38を介してドハティ組み合わせノード40へ送る。ここでも、増幅されたRF入力信号RF
INは、キャリア出力回路網38により補償済キャリア位相シフトφ
C−COMPだけシフトされ、ドハティ組み合わせノード40へ送られる。
【0045】
[0056] 更に、RF入力信号RF
INが所与の閾値より高くなるので、ピーキング電力増幅器回路46がターンオンされ、RF入力信号RF
INのピーキング経路に沿って流れる部分の増幅を開始する。RF入力信号RF
INが所与の閾値より高くなり続けると、ピーキング電力増幅器回路46は、ピーキング電力増幅器回路46が飽和するまで、より多くのパワーをドハティ組み合わせノード40へ送る。注目すべきこととして、ピーキング出力回路網48は、補償済ピーキング位相シフトφ
P−COMPだけ、ピーキング経路内のRF入力信号RF
INを実際にシフトする。従って、キャリア経路とピーキング経路とのそれぞれからドハティ組み合わせノード40へ到達するRF入力信号RF
INは、ドハティ組み合わせノード40において反応的に組み合わされ、次に、変成器24により段階的に増大または減少させられて、RF出力信号RF
OUTが生成される。
【0046】
[0057] 従来のドハティ増幅器10(
図1)と比較すると、強化型ドハティ増幅器30(
図5)では、キャリア経路とピーキング経路との双方において、伝送線16、20、26、28を、入力回路網34、44および出力回路網38、48と効果的に置換している。キャリア経路およびピーキング経路において、集中定数素子ベースの入力回路網34、44および出力回路網38、48を用いることにより、強化型ドハティ増幅器30をバンドパス・フィルタとして見ること、およびバンドパス・フィルタとして統合する(synthesize)ことを可能とする。従って、個々の回路網と、パワー・スプリッタ32および変成器42とは、望まれる性能特性を得るために、バンドパス・フィルタが統合される場合と同様の様式で、強化型ドハティ増幅器30の一部として統合することができる。強化型ドハティ増幅器30の性能特性における主な関心事は、帯域、終端インピーダンス、パワー利得、および出力パワーを含む。
【0047】
[0058] 入力回路網34、44および出力回路網38、48は、伝送線16、20、26、28の振幅および位相の応答をエミュレートするように統合することができるが、そうした場合、強化型ドハティ増幅器30の性能を、従来のドハティ増幅器10の性能に限定することになる。性能を強化するために、入力回路網34、44および出力回路網38、48のオーダーおよび構成を、キャリア経路とピーキング経路との位相差を最適な状態に近づけるように、および入力と出力との整合性が更に良くなるように統合して、最大パワー・レベルおよびバックオフ・パワー・レベルにおいて望まれる性能特性を達成させる。注目すべきこととして、強化型ドハティ増幅器30の有効帯域幅は、従来のドハティ増幅器10で達成されたものよりも劇的に増加し、なおも、最大パワー・レベルおよびバックオフ・パワー・レベルにおいて高効率を維持する。
【0048】
[0059] 帯域幅が増加することを利用して、1つの強化型ドハティ増幅器30が、異なる周波数帯域の複数の通信帯域をカバーすることや、所与の通信帯域に対しての使用可能な帯域幅を増加させて、高いデータ・レートおよび追加のチャンネルをサポートすることや、これらの両方を可能とすることができる。上記のように、従来のドハティ増幅器10の帯域幅は比較的限定されたものであり、使用可能な瞬時帯域幅は動作周波数の5%のみである。例えば、UMTSには、2.11および2.17GHzの周波数帯が割り当てられており、60MHzの最小帯域を必要とする。従来のドハティ増幅器10は、105MHzの帯域をサポートできるので、UMTS帯域に対処することができる。しかし、同じ増幅器回路を用いて、2.11から2.17GHzの間のUMTS帯域と、2.6から2.7GHzのLTE帯域とに対応する必要がある場合、本質的に600MHzの帯域幅が必要であり、明らかに、このような帯域幅の要求に対して従来のドハティ増幅器10は適合しない。強化型ドハティ増幅器30は、これらの要求に適合するように設計することができ、なおも、望ましい効率、利得、および出力パワーの要求を満たすことができる。
【0049】
[0060] 以下では、多くの例の中の2つの例を提供するが、それらの例では、強化型ドハティ増幅器30は、2.11ないし2.17GHzの帯域にあるUMTS帯域と、2.6ないし2.7GHzの帯域にあるLTE帯域との双方に対応するように構成される。第1の例では、強化型ドハティ増幅器30は、2.11から2.17GHzの間の600MHzの帯域を通して比較的均一な利得とバックオフ・パワー効率とを提供するように統合され、UMTS帯域とLTE帯域との双方をカバーする。
図6Aは、6dBのバックオフ・パワー・レベルでの効率対周波数のグラフであり、
図6Aに示されているように、強化型ドハティ増幅器30は、バックオフ・パワー・レベルにおいて、2.11ないし2.17GHzの周波数範囲の全体で効率が比較的均一となるように、統合することができる。しかし、増幅器の設計における帯域に関する能力は、最終的には、効率、利得、および出力パワーの競合する特性により決まるので、それらの特性の中でのバランス(compromise)が、常に、帯域に関する能力を決めることになる。この例では、バランスの結果として、LTE帯域(2.6〜2.7GHz)におけるピーク出力パワーが、UMTS帯域におけるピーク出力パワーと比較して、顕著に低下している。なお、この低下は許容可能なものである。この低下は、ピーク出力パワー対周波数が描かれている
図6Bに示している。
【0050】
[0061] 第2の例も、UMTS帯域とLTE帯域との双方をサポートする必要があると想定しているが、UMTS帯域とLTE帯域との双方で動作しているときに、LTE帯域における追加の出力パワーと高い効率とが望まれている。更に、UMTS帯域とLTE帯域との間での効率、理解、および出力パワーは重要ではないか、またはUMTS帯域とLTE帯域との間(≒2.12ないし2.5GHz)の利得を意図的に低減することが望まれていると、想定する。入力回路網34、44および出力回路網38、48、そして可能性としてパワー・スプリッタ32および変成器42を適切に統合することにより、調整された応答を得ることができる。
図7Aは、6dBのバックオフ・パワー・レベルでの効率対周波数を描いており、
図7Aに示されているように、強化型ドハティ増幅器30は、UMTS帯域およびLTE帯域に対して最適化された効率的な応答を提供するように、統合することができる。従って、効率は、UMTS帯域とLTE帯域とのあたりでピークとなり、UMTS帯域とLTE帯域との間の使用しない周波数帯で大幅に落ちる。
【0051】
[0062] 同様に、
図7Bに示されているように、UMTS帯域およびLTE帯域の周波数の関数としてのピーク出力パワー応答も最適化される。効率と同様に、UMTS帯域およびLTE帯域のピーク出力パワーは、第1の例(
図6B)と比較して高められており、UMTS帯域とLTE帯域との間ではピーク出力パワー(そしておそらくは利得)が下降するようにされるか、またはゼロにされる。この下降部分も調整することができ、帯域間でのノイズや干渉を低減する手助けをすることができる。本質的には、強化型ドハティ増幅器30は、広帯域にわたる均一なパワーおよび効率と交換に、広い周波数範囲により分離された選択された通過帯域において格別の周波数およびピーク出力パワー応答を手に入れるように、調整することができる。
【0052】
[0063] UMTS帯域およびLTE帯域を例示したが、様々な標準のための別の通信帯域に関しても、同様の様式で考慮することができる。例えば、第1の通信帯域を、PCS帯域とUMTS帯域とGSM帯域とのうちの1つとし、第2の帯域を、LTE帯域とWiMax帯域とのうちの1つとすることができる。更に、これらの概念は、同じ標準における異なる通信帯域に対しても適用できる。例えば、1つの強化型ドハティ増幅器30を、2.5GHzのWiMax帯域と3.5GHzのWiMax帯域との双方をサポートするために使用することができる。また、所与の通過帯域を広げて、比較的近い通信帯域、例えば、1.8GHzのPCSと2.1GHzのUMTSとをサポートすることもできる。第2の例では2つの通信帯域のみを示したが、強化型ドハティ増幅器30は、3以上の帯域を同様の様式でサポートするように統合することができ、その様式では、望まれる場合に、また、望まれるように、バックオフのパワー効率、利得、または出力パワーにおける低下部分を提供できる。
【0053】
[0064] 入力回路網34、44および出力回路網38、48もまた、異なる通信帯域に対して異なる効率、利得、または出力パワーを有する応答が得られるように、統合することができる。例えば、200MHz、250MHz、300MHz、400MHz、500MHz、1GHz、または1GHzより大きい周波数だけ分離された通信帯域に関して、強化型ドハティ増幅器30は、高いバックオフ・パワー効率およびピーク出力パワーで、150MHz幅の低いほうの帯域をサポートし、僅かに低いバックオフ・パワー効率およびピーク出力パワーで、250MHz幅の高いほうの帯域をサポートすることができる。本質的に、強化型ドハティ増幅器30は、応答を多様に設定することを可能とし、なおも、広い周波数範囲にわたって、また、広い周波数範囲により分離された異なる通信帯域に対して、バックオフ・パワー・レベルおよび最大パワー・レベルにおいて効率を格別なものとする。従って、1つの電力増幅器のトポロジを用いて、複数の異なる通信帯域を効率的にサポートすることができる。
【0054】
[0065] 強化型ドハティ増幅器30はモジュール型であり、従って、高パワーでの応用では、1以上の他の強化型ドハティ増幅器30と並列にして使用することができる。
図8に、例示的なモジュール型ドハティ構成50を示す。モジュール型ドハティ構成50では、上記と同様の利益と設定能力(configurability)とが得られる。モジュール型ドハティ構成50は、2つの強化型ドハティ・モジュール52A、52Bを含み、それらは
図5のドハティ増幅器30に対応する。
【0055】
[0066] RF入力信号RF
INが、ウィルキンソン・スプリッタなどのようなパワー・スプリッタ54へ供給され、パワー・スプリッタ54は、RF入力信号RF
INを2つの経路に沿って流れるように分割する。第1の経路はパワー・スプリッタ32Aへと導くものであり、第2の経路はパワー・スプリッタ32Bへと導くものである。この実施形態では、RF入力信号RF
INは2つの経路に対して均等に分割され、ドハティ・モジュール52A52Bのそれぞれは、それぞれのパワー・スプリッタ32A、32Bを介して、3dB減衰したRF入力信号RF
INの入力パワーを受け取る。
【0056】
[0067] パワー・スプリッタ32A、32Bは、強化型ドハティ・モジュール52A52Bのそれぞれのキャリア経路とピーキング経路とに沿うように、RF入力信号RF
INを分割する。この例では、RF入力信号RF
INはパワー・スプリッタ32A、32Bにより不均等に分割され、キャリア経路は、更に1.7dB減衰したRF入力信号RF
INの入力パワーを受け取り、ピーキング経路は、更に4.7dB減衰したRF入力信号RF
INの入力パワーを受け取る。上記で説明したように、このように不均等に分割することにより、均等に分割した場合と比較して、強化型ドハティ増幅器の効率が更に向上する。
【0057】
[0068] 強化型ドハティ・モジュール52A、52Bのキャリア経路は、それぞれ、キャリア入力回路網34A、34Bと、キャリア電力増幅器回路(PA
C)36A、36Bと、キャリア出力回路網38A、38Bとを含む。キャリア経路はドハティ組み合わせノード40A、40Bで終わり、ドハティ組み合わせ40A、40Bは更にそれぞれ変成器42A、42Bへ結合される。ピーキング経路は、ピーキング入力回路網44A、44Bと、ピーキング電力増幅器回路(PA
P)46A、46Bと、ピーキング出力回路網48A、48Bとを含む。ピーキング経路は、それぞれ、ドハティ組み合わせノード40A、40Bで終わる。
【0058】
[0069] パワー・スプリッタ32A、32Bにより提供される分割されたRF入力信号RF
INは、キャリア入力回路網34A、34Bおよびピーキング入力回路網44A、44Bへ、実質的に同相で供給される。1つの実施形態では、キャリア入力回路網34A、34Bおよびピーキング入力回路網44A、44Bは集中定数素子回路網であり、それらは、ピーキング電力増幅器回路46A、46Bの入力へ供給されるRF入力信号RF
INがキャリア電力増幅器回路36A、36Bの入力へ供給されるRF入力信号RF
INよりも約90度遅れることを確実なものとするように、設計されている。例示の実施形態では、キャリア入力回路網34A、34Bは、キャリア経路内のRF入力信号RF
INを45度(+45度)進め、ピーキング入力回路網44A、44Bは、ピーキング経路内のRF入力信号RF
INを45度(−45度)遅らせる。キャリア経路内のRF入力信号RF
INを45度進め、ピーキング経路内のRF入力信号RF
INを45度(−45度)遅らせることにより、ピーキング電力増幅器回路46A、46Bの入力へ供給されるRF入力信号RF
INは、キャリア電力増幅器回路36A、36Bの入力へ供給されるRF入力信号RF
INよりも約90度遅れる。キャリア入力回路網34A、34Bとピーキング入力回路網44A、44Bとのそれぞれにおける+45度と−45度との位相シフトについて説明したが、別の組み合わせの位相シフトも可能である。
【0059】
[0070] キャリア出力回路網38A、38Bは、それぞれ、キャリア電力増幅器回路36A、36Bとドハティ組み合わせ40A、40Bとの間に結合される。同様に、ピーキング出力回路網48A、48Bは、それぞれ、ピーキング電力増幅器回路46A、46Bとドハティ組み合わせ40A、40Bとの間に結合される。キャリア出力回路網38、A38Bとピーキング出力回路網48A、48Bとの主な機能は、キャリア入力回路網34A、34Bとピーキング入力回路網44A、44Bとにより与えられた位相シフトを取り除き、望まれる性能の計量値(metric)を達成するために必要と考えられる任意の位相オフセットを与えることである。キャリア出力回路網38A、38Bとピーキング出力回路網48A、48Bとを通過した後、キャリア経路およびピーキング経路からの増幅されたRF入力信号RF
INは、位相が整合されてそれぞれにドハティ組み合わせノード40A、40Bへ供給され、それにより、信号は、効率的に組み合わされ、それぞれの変成器42A、42Bにより段階的に増大または減少させられる。
【0060】
[0071] 増幅の後、ピーキング出力回路網48A、48Bへ供給されるRF入力信号RF
INは、キャリア出力回路網38A、38Bへ供給されるRF入力信号RF
INよりも約90度遅れている。示されている実施形態では、キャリア出力回路網38A、38Bは、補償済キャリア位相シフトφ
C−COMPだけ、キャリア経路内のRF入力信号RF
INを実効的にシフトする。同様に、ピーキング出力回路網48A、48Bは、ピーキング経路内のRF入力信号RF
INを、補償済ピーキング位相シフトφ
P−COMPだけ実効的にシフトする。キャリア入力回路網34A、34Bおよびピーキング入力回路網44A、44Bは、二次、三次、または更に高次の回路網とすることもできる。
【0061】
[0072] それぞれのキャリア経路とピーキング経路とからの信号がドハティ組み合わせノード40A、40Bで組み合わされると、強化型ドハティ・モジュール52A、52Bのそれぞれから結果として出力される信号は、カプラ56を介して組み合わされてRF出力信号RF
OUTが生成される。
【0062】
[0073] ドハティ・モジュール52A、52Bのそれぞれは、強化型ドハティ増幅器30に関して上記で説明したように、2つの領域で動作する。第1領域では、キャリア電力増幅器回路36A、36Bのみがターンオンされ、RF入力信号RF
INを増幅するように動作する。第2領域では、キャリア電力増幅器回路36、A36Bとピーキング電力増幅器回路46A、46Bとが動作して、それぞれのキャリア経路とピーキング経路とのRF入力信号RF
INを増幅する。2つの領域の間の閾値は、キャリア電力増幅器回路36A、36Bが飽和するキャリア経路内のRF入力信号RF
INの大きさに対応する。第1領域では、RF入力信号RF
INのレベルは閾値未満である。第2領域では、RF入力信号RF
INのレベルは閾値以上である。
【0063】
[0074] 上記から理解できるように、ここで開示した強化型ドハティ増幅器(30、50)は、従来のドハティ増幅器と比べて、性能が大幅に改善されている。更に、強化型ドハティ増幅器(30、50)は設定が可能であるので、相対的に異なる周波数範囲にある複数の通信帯域をサポートすることを可能にする。帯域に関するこれらの改善は、キャリア経路とピーキング経路との間のインピーダンスの追跡を更に良好なものとする能力と、キャリア経路とピーキング経路との増幅器と関連して入力と出力との整合性を改善する能力とに基づいて、なされるものである。更に、大きくバックオフしたパワー・レベルと最大パワー・レベルとの双方での信号の入力および出力の戻りの大きい損失(large signal input and output return losses)を、従来の設計と比べて大幅に改善することができる。
【0064】
[0075] 無数の動作に対する構成が可能であるが、以下に示すのは幾つかの例示的構成であり、この例示的構成を上記の通信帯域の何れかにおいて提供するように強化型ドハティ増幅器(30、50)は構成される。
【0065】
・同じまたは異なる通信標準を用いる2つの異なる通信帯域(即ち、通信帯域が300MHzだけ分離されている場合)のうちの何れかの通信帯域の無線周波数信号を増幅するときに、少なくとも15%の瞬時帯域幅と、6dBのバックオフ・パワーとピーク最大出力パワーとの間での45%より高い効率、
・無線周波数信号を増幅するときに、少なくとも15%の瞬時帯域幅と、6dBのバックオフ・パワーとピーク最大出力パワーとの間での40%より高い効率、
・無線周波数信号を増幅するときに、少なくとも20%の瞬時帯域幅と、6dBのバックオフ・パワーとピーク最大出力パワーとの間での35%より高い効率、
・無線周波数信号を増幅するときに、少なくとも20%の瞬時帯域幅と、6dBのバックオフ・パワーとピーク最大出力パワーとの間での40%より高い効率、
・無線周波数信号を増幅するときに、少なくとも10%の瞬時帯域幅と、6dBのバックオフ・パワーとピーク最大出力パワーとの間での45%より高い効率、
・無線周波数信号を増幅するときに、少なくとも250MHzの瞬時帯域幅と、6dBのバックオフ・パワーとピーク最大出力パワーとの間での40%より高い効率。
【0066】
[0076] 当業者は、ここで開示したものに関する実施形態についての改善および変更について理解するであろう。そのような改善および変更の全ては、ここで開示した概念および特許請求の範囲内にあると考えられる。