特許第6523872号(P6523872)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6523872
(24)【登録日】2019年5月10日
(45)【発行日】2019年6月5日
(54)【発明の名称】研削装置
(51)【国際特許分類】
   B24B 7/04 20060101AFI20190527BHJP
   B24B 47/12 20060101ALI20190527BHJP
【FI】
   B24B7/04 A
   B24B47/12
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-167610(P2015-167610)
(22)【出願日】2015年8月27日
(65)【公開番号】特開2017-42875(P2017-42875A)
(43)【公開日】2017年3月2日
【審査請求日】2018年6月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110001014
【氏名又は名称】特許業務法人東京アルパ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山中 聡
【審査官】 須中 栄治
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−255952(JP,A)
【文献】 特開2005−153090(JP,A)
【文献】 特開2000−254857(JP,A)
【文献】 特開2011−136398(JP,A)
【文献】 特開2015−132538(JP,A)
【文献】 特開2010−162665(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0102227(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B7/00−7/30
B24B41/00−51/00
B24B37/04
H01L21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウエーハを保持するチャックテーブルを回転させるモータを有する2以上の保持手段と、2以上の該保持手段が均等間隔に配設され回転するターンテーブルと、該ターンテーブルの上に配設され2以上のチャックテーブルの間を仕切る仕切り部と、該チャックテーブルに保持されるウエーハを研削する研削砥石を有する研削手段と、ウエーハと該研削砥石とに研削水を供給する研削水供給手段と、を備える研削装置であって、
該モータは、該ターンテーブルの上に配設され、
該仕切り部は、該ターンテーブルの上に配設される該モータを内側に収容する凹部を有し、
該仕切り部の外側に該研削水を当てることにより、該仕切り部と該仕切り部に収容される該モータとを冷却することを特徴とする研削装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウエーハを保持する複数のチャックテーブルを備える研削装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ウエーハを保持する2以上のチャックテーブルをターンテーブル上に有するタイプの研削装置は、ターンテーブルを回転させることにより、各チャックテーブルを公転させウエーハを加工する加工領域とウエーハを搬入出する搬入出領域とにそれぞれ位置づけ、加工領域に位置づけられたウエーハを研削している。ウエーハの研削中は、加工領域で使用される研削水や研削屑が飛散するため、加工領域に位置するチャックテーブルと搬入出領域に位置するチャックテーブルとの間に仕切り板を設けて加工領域と搬入出領域とを遮断している(例えば、下記の特許文献1及び2を参照)。
【0003】
上記のチャックテーブルは、ターンテーブル上で回転可能となっており、例えば、チャックテーブルを回転させるモータをチャックテーブルの下部に直結させた構成となっている。また、図5に示す従来の研削装置40は、2つのチャックテーブル42がターンテーブル41上で回転可能に配設され、各チャックテーブル42の下方側にモータ43が配設された構成となっている。各モータ43には、駆動プーリ44がそれぞれ取り付けられるとともに、各チャックテーブル42の下部に連結された回転軸420に従動プーリ45がそれぞれ取り付けられ、駆動プーリ44と従動プーリ45とにベルト46がそれぞれ巻かれている。このように、いずれの構成の場合であっても、ターンテーブルの下側にモータが配置されているため、モータの交換作業を容易にしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−255952号公報
【特許文献2】特開2013−086244号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、ターンテーブルの下側にモータが配置された構成においては、モータの発熱による熱がターンテーブルに伝達されるため、ターンテーブルが熱変形してしまい、研削されたウエーハが所定の厚みにならないという加工不良が発生している。
【0006】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、モータの発熱による熱がターンテーブルに及ぶのを防ぎ、ターンテーブルが熱変形しないようにすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、ウエーハを保持するチャックテーブルを回転させるモータを有する2以上の保持手段と、2以上の該保持手段が均等間隔に配設され回転するターンテーブルと、該ターンテーブルの上に配設され2以上のチャックテーブルの間を仕切る仕切り部と、該チャックテーブルに保持されるウエーハを研削する研削砥石を有する研削手段と、ウエーハと該研削砥石とに研削水を供給する研削水供給手段と、を備える研削装置であって、該モータは、該ターンテーブルの上に配設され、該仕切り部は、該ターンテーブルの上に配設される該モータを内側に収容する凹部を有し、該仕切り部の外側に該研削水を当てることにより、該仕切り部と該仕切り部に収容される該モータとを冷却することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明にかかる研削装置は、チャックテーブルを回転させるモータを有する2以上の保持手段と、2以上の保持手段が均等間隔に配設され回転するターンテーブルと、ターンテーブルの上に配設され2以上のチャックテーブルの間を仕切る仕切り部と、ウエーハを研削する研削砥石を有する研削手段と、ウエーハと該研削砥石とに研削水を供給する研削水供給手段とを備え、モータは、ターンテーブルの上に配設されるため、発熱しやすいモータの上部がターンテーブルから露出し、モータの発熱による熱がターンテーブルに伝達されない。
また、仕切り部は、ターンテーブルの上に配設されるモータを内側に収容する凹部を有するため、この凹部にモータを収容した状態で、研削水を仕切り部の外側に当てることにより、仕切り部とモータとを冷却してターンテーブルに熱影響を及ぼさないようにすることができる。
これにより、ウエーハの研削中にターンテーブルが熱変形するのを防ぎ、ウエーハに加工不良が発生することはない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】研削装置の構成を示す斜視図である。
図2】研削装置の構成の一部を示す断面図である。
図3】チャックテーブルに保持されたウエーハを研削する状態を示す断面図である。
図4】研削時に使用される研削水が飛散する方向を示す平面図である。
図5】従来の研削装置の構成の一部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1に示す研削装置1は、被加工物であるウエーハWを保持する複数のチャックテーブルを備える研削装置の一例であって、装置ベース2を有する。装置ベース2のY軸方向前部側の上面2aには、ウエーハWを保持するチャックテーブル50a,50bとこれらを回転させるモータ54とを有する2以上の保持手段5a,5bと、保持手段5a,5bが均等間隔に配設され回転するターンテーブル3と、ターンテーブル3の上に配設され2以上のチャックテーブル50a,50bの間を仕切る仕切り部6とを備えている。
【0011】
装置ベース2のY軸方向後部側の上面2bには、Z軸方向に延在するコラム9が立設されている。コラム9の側方には、チャックテーブル50a,50bに保持されるウエーハWを研削する研削砥石16を有する研削手段10が研削送り手段30を介して配設されている。
【0012】
研削手段10は、Z軸方向の軸心を有するスピンドル11と、スピンドル11を回転可能に囲繞して支持するスピンドルハウジング12と、スピンドル11の一端に接続されたモータ13と、スピンドル11の下端に連接されたマウンタ14と、マウンタ14に回転可能に装着された研削ホイール15と、研削ホイール15の下部に環状に固着された研削砥石16とにより構成されている。モータ13がスピンドル11を所定の回転速度で回転させることにより、研削ホイール15を所定の回転速度で回転させることができる。
【0013】
研削手段10には、研削水供給源21を有する研削水供給手段20が接続されている。研削水供給手段20は、ウエーハWの研削時において、研削水供給源21から研削砥石16とウエーハWとの接触部分に研削水を供給することができる。なお、研削水としては、例えば、純水を用いる。
【0014】
研削送り手段30は、Z軸方向に延在するボールネジ31と、ボールネジ31の一端に接続されたモータ32と、ボールネジ31と平行に延在する一対のガイドレール33と、内部に備えたナットがボールネジ31に螺合するとともに側部がガイドレール33に摺接し研削手段10が一方の面に固定された昇降部34とにより構成されている。研削送り手段30は、モータ32によって駆動されてボールネジ31が回動し、一対のガイドレール33に沿って昇降部34をZ軸方向に移動させることにより、昇降部34とともに研削手段10をZ軸方向に昇降させることができる。
【0015】
ターンテーブル3の上面には、ターンテーブル3を覆うターンテーブルカバー4が装着されている。このターンテーブルカバー4を介して保持手段5a,5bと、仕切り部6とがターンテーブル3上に配設されている。図2に示す回転軸3aを中心にターンテーブル3が回転すると、保持手段5a,5bを公転させ、ウエーハWを研削加工する加工領域P1とウエーハWを搬入出する搬入出領域P2との間で保持手段5a,5bを順次移動させることができる。なお、保持手段5bは、保持手段5aと同様の構成であるため、以下では、保持手段5aの構成について詳述する。
【0016】
図1に示すように、保持手段5aを構成するチャックテーブル50aの上面は、ウエーハWを保持する保持面51となっている。保持面51は、例えば、ポーラスセラミックス等の多孔質部材によって形成されている。チャックテーブル50aの下端には、図2に示すように、鉛直方向の軸心を有する回転軸52が連結されている。回転軸52には、ロータリージョイント53が接続され、ロータリージョイント53には、チャックテーブル50aの保持面51に連通する吸引源7と、ターンテーブル3の下面に連通するエアー供給源8とが接続されている。そして、吸引源7によりチャックテーブル50aの保持面51に吸引力を作用させると、ウエーハWを保持面51で吸引保持することができ、エアー供給源8からターンテーブル3の下面にエアーを吹きつけることにより、ターンテーブル3を浮上させることができる。
【0017】
回転軸52には、チャックテーブル50aをターンテーブル3の上で回転させる回転機構が接続されている。回転機構は、図2に示すように、ターンテーブル3の上に配設されたモータ54と、モータ54に取り付けられた駆動プーリ55と、回転軸52に取り付けられた従動プーリ56と、駆動プーリ55と従動プーリ56とに巻かれたベルト57とにより構成されている。なお、図2の例では、図示していないが、チャックテーブル50b側にもチャックテーブル50aと同様の回転機構が接続されている。
【0018】
モータ54は、ターンテーブル3の上から突出するように配設されている。すなわち、モータ54の駆動時に発熱しやすい上部540をターンテーブル3から露出させることによって、モータ54の熱がターンテーブル3に伝達されない配置構成となっている。そして、モータ54により駆動プーリ55を駆動させると、ベルト57が従動プーリ56を従動させて回転軸52とともにチャックテーブル50aを回転させることができる。
【0019】
仕切り部6は、図1に示すように、X軸方向に延在しており、チャックテーブル50aとチャックテーブル50bとの間に配設されている。仕切り部6でチャックテーブル50a,50bの間を仕切ることにより、研削時において加工領域P1と搬入出領域P2とを遮断する。このように、仕切り部6によって、加工領域P1で使用される研削水などが搬入出領域P2に位置するチャックテーブル50aまたはチャックテーブル50bに飛散するのを防止することができる。
【0020】
仕切り部6は、図2に示すように、ターンテーブル3の上に配設される各モータ54を内側に収容するための凹部60を少なくとも2箇所(図2では、1箇所のみ図示)に有している。この凹部60に、保持手段5a,5bの各モータ54が収容されている。そのため、研削時に研削水供給源21から研削砥石16とウエーハWとに供給される研削水が仕切り部6の外側面61に当たることにより、仕切り部6と仕切り部6の凹部60に収容されるモータ54とを冷却することができる。なお、仕切り部6の上端面62の高さ位置は、少なくともチャックテーブル50a,50bの保持面51よりも高い位置にあればよい。
【0021】
次に、研削装置1の動作例について説明する。図1に示すウエーハWは、被加工物の一例であって、その材質や厚み等が限定されるものでない。まず、ウエーハWを、例えば搬入出領域P2で待機するチャックテーブル50aに搬送する。
【0022】
チャックテーブル50aの保持面51でウエーハWを吸引保持した後、ターンテーブル3を回転させることにより、チャックテーブル50aを加工領域P1に移動させる。具体的には、エアー供給源8から送られるエアーをターンテーブル3の下面に吹きつけて浮上させた状態でターンテーブル3を例えば矢印A方向に回転させる。そして、ターンテーブル3の回転にともない、チャックテーブル50aを研削手段10の下方に移動させる。
【0023】
次いで、図3に示すように、モータ54が駆動することによってチャックテーブル50aを例えば矢印A方向に回転させるとともに、研削手段10は、スピンドル11を回転させることにより、研削ホイール15を例えば矢印A方向に回転させながら、図1に示した研削送り手段30によって、研削手段10をチャックテーブル50aの保持面51に接近する方向に下降させ、回転しながら下降する研削砥石16でウエーハWを押圧しながら所定の厚みに至るまで研削する。
【0024】
このとき、図3に示すように、研削水供給源21からウエーハWと研削砥石16との接触部分に研削水22を供給し、研削砥石16を冷却するとともに研削屑を洗い流す。研削水22は、回転する研削砥石16の周囲に飛散するが、仕切り部6の外側面61に当たって遮られるため、チャックテーブル50bにまで研削水22が飛散することはない。
【0025】
ここで、研削水22が飛散する方向は、図4に示すように、チャックテーブル50aや研削砥石16の回転にともなって、仕切り部6の内部に収容されたモータ54側に向いている。すなわち、研削水22は、実際に研削砥石16がウエーハWに接触して研削する接触部分100から矢印B方向に向けて飛ばされる。そのため、モータ54が収容された位置に対応する仕切り部6の外側面61に研削水22を効率よく当てることができ、仕切り部6と仕切り部6に収容されるモータ54とを冷却することができる。
【0026】
ウエーハWの研削中は、図3に示す研削水供給源21から常に研削水22をウエーハWと研削砥石16とに供給し続けて、仕切り部6の外側面61に研削水22を当て続ける。こうして、研削水22の冷却作用により、モータ54の上部540を常に冷却することにより、モータ54の熱を除熱し、ターンテーブル3に熱影響を及ぼさないようにする。
【0027】
ウエーハWを所定の厚みに研削した後、図4に示すターンテーブル3がさらに回転し、チャックテーブル50aを搬入出領域P2に移動させるとともに、未加工のウエーハWが保持されたチャックテーブル50bを加工領域P1に移動させ、上記同様の研削動作を繰り返し行う。
【0028】
このように、本発明にかかる研削装置1は、チャックテーブル50a,50bを回転させるモータ54を有する2以上の保持手段5a,5bと、保持手段5a,5bが均等間隔に配設され回転するターンテーブル3と、ターンテーブル3の上に配設されチャックテーブル50a,50bの間を仕切る仕切り部6とを備え、モータ54をターンテーブル3の上に突出させて配設したため、モータ54の熱がターンテーブル3に伝達されない。また、仕切り部6は、モータ54を内側に収容する凹部60を有するため、モータ54を仕切り部6の凹部60に収容した状態で、研削水22を仕切り部6の外側面61に当てることにより、仕切り部6とモータ54とを冷却することができ、ターンテーブル3に熱影響が及ぶことがない。このように、研削時においてターンテーブル3が熱変形することはなく、ウエーハWを所定の研削厚みに加工することができる。
【0029】
研削装置1は、モータ54をターンテーブル3の上から突出させた配置構成となっているが、ターンテーブル3の下方側からモータ54の交換が可能となっているため、従来と同様にモータの交換作業を容易に行うことができる。
【0030】
本実施形態では、1つの仕切り部6をチャックテーブル50a,50bの間に配設したが、この構成に限定されず、ターンテーブルに配設するチャックテーブルの数に応じて、仕切り部6の数,形状及び配設位置を変更することができる。
【0031】
また、本実施形態では、1つの研削手段10を備えた構成となっているが、この構成に限定されない。例えば、2つの研削手段(粗研削手段及び仕上げ研削手段)を備えてもよいし、研磨手段を備えてもよい。
【符号の説明】
【0032】
1:研削装置 2:装置ベース 2a,2b:上面 3:ターンテーブル 3a:回転軸4:ターンテーブルカバー 5a,5b:保持手段 50a,50b:チャックテーブル
51:保持面 52:回転軸 53:ロータリージョイント 54:モータ
55:駆動プーリ 56:従動プーリ 57:ベルト
6:仕切り部 60:凹部 61:外側面 7:吸引源 8:エアー供給源 9:コラム
10:研削手段 100:接触部分 11:スピンドル 12:スピンドルハウジング
13:モータ 14:マウンタ 15:研削ホイール 16:研削砥石
20:研削水供給手段 21:研削水供給源 22:研削水
30:研削送り手段 31:ボールネジ 32:モータ 33:ガイドレール
34:昇降部
40:研削装置 41:ターンテーブル 42:チャックテーブル
420:回転軸 4:モータ 44:駆動プーリ 45:従動プーリ 46:ベルト
図1
図2
図3
図4
図5