特許第6524743号(P6524743)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6524743
(24)【登録日】2019年5月17日
(45)【発行日】2019年6月5日
(54)【発明の名称】カテーテル
(51)【国際特許分類】
   A61M 25/06 20060101AFI20190527BHJP
   A61M 25/09 20060101ALI20190527BHJP
   A61F 2/95 20130101ALI20190527BHJP
【FI】
   A61M25/06 556
   A61M25/09 530
   A61F2/95
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-60314(P2015-60314)
(22)【出願日】2015年3月24日
(65)【公開番号】特開2016-179008(P2016-179008A)
(43)【公開日】2016年10月13日
【審査請求日】2017年11月9日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001494
【氏名又は名称】前田・鈴木国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】品川 裕希
【審査官】 芝井 隆
(56)【参考文献】
【文献】 特表2008−522742(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 25/00 − 25/18
A61F 2/95 − 2/97
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性チューブからなり、直径0.035インチのガイドワイヤである第1ワイヤが僅かな間隙をもって摺動可能に挿通される内腔を有し、遠位端側にステントが配置されるとともに、外側に前記ステントの近位端側の端面に当接可能な遠位端側の端面を有するアウターシースがスライド移動可能に挿通されているメインチューブと、
可撓性チューブからなり、直径0.025インチのガイドワイヤである第2ワイヤが僅かな間隙をもって摺動可能に挿通される0.636〜0.850mmの内径の内腔を有し、前記メインチューブの前記内腔に僅かな間隙をもって摺動可能に挿通されるサブチューブとを備え、
前記サブチューブの遠位端部を前記メインチューブの遠位端部よりも硬質の材料で形成し、前記サブチューブの遠位端部が狭窄部を突破または生体組織を穿孔するものであることを特徴とするカテーテル。
【請求項2】
前記メインチューブの近位端に第1コネクタを設け、
前記サブチューブの近位端に前記第1コネクタに接続可能な第2コネクタを設け、
前記サブチューブを前記メインチューブに挿入した状態で、前記第1コネクタに前記第2コネクタを接続した際に、前記サブチューブの遠位端部が前記メインチューブの遠位端よりもさらに遠位端側に突出することを特徴とする請求項1に記載のカテーテル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガイドワイヤにより誘導して体内に挿入されるカテーテルに関する。
【背景技術】
【0002】
体腔、管腔または血管等を通して、各種の臓器等の目的組織まで挿入されるカテーテルにおいては、その挿入や目的組織への接近の容易化等を図るため、カテーテルの挿入に先立って、ガイドワイヤを挿入して経路を確保し、このガイドワイヤに沿ってカテーテルを挿入することが行われる(例えば、下記特許文献1参照)。
【0003】
ガイドワイヤとしては、公称直径0.035inchのもの(以下、35ワイヤという)と、公称直径0.025inchのもの(以下、25ワイヤという)とが一般的に用いられており、術者は目的組織の位置や経路に応じてこれらのうちから最適な方を選択し用いるようにしている。このようなガイドワイヤに誘導されるカテーテルとしては、これらのガイドワイヤの直径に応じて最適化されたものが用いられている。すなわち、35ワイヤを用いる場合には該35ワイヤが僅かな間隙をもって挿通される内腔を有する35ワイヤ用のカテーテルが、25ワイヤを用いる場合には該25ワイヤが僅かな間隙をもって挿通される内腔を有する25ワイヤ用のカテーテルが用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−139471号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、カテーテルを用いた手技中において、ガイドワイヤを直径の異なるものに変更する必要が生じる場合があるが、従来のカテーテルでは、それぞれのガイドワイヤに最適化されているため、これに対応することが困難であった。かろうじて、35ワイヤおよび35ワイヤ用のカテーテルを用いている場合に、25ワイヤに変更したいという状況が発生した場合には、35ワイヤ用のカテーテルはそのままで、35ワイヤのみを引き抜き、35ワイヤ用のテーテルの内腔に25ワイヤを挿通して、手技を継続することができるが、35ワイヤ用のカテーテルの内腔と25ワイヤとの間の隙間が大きいため、カテーテルの先端において25ワイヤとの間に段差が生じること等に起因して、25ワイヤに沿わせてカテーテルを挿入することが困難となる場合があり、操作性が悪く、術者によっては不満に感じる場合があった。
【0006】
本発明は、このような点に鑑みてなされたものであり、体内に挿入したままの状態でガイドワイヤをその径が異なるものに問題なく交換できるカテーテルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るカテーテルは、
可撓性チューブからなり、直径0.035インチのガイドワイヤである第1ワイヤが僅かな間隙をもって摺動可能に挿通される内腔を有するメインチューブと、
可撓性チューブからなり、直径0.025インチのガイドワイヤである第2ワイヤが僅かな間隙をもって摺動可能に挿通される内腔を有し、前記メインチューブの前記内腔に僅かな間隙をもって摺動可能に挿通されるサブチューブと
を備えることを特徴とする。
【0008】
本発明に係るカテーテルにおいて、
前記メインチューブの近位端に第1コネクタを設け、
前記サブチューブの近位端に前記第1コネクタに接続可能な第2コネクタを設け、
前記サブチューブを前記メインチューブに挿入した状態で、前記第1コネクタに前記第2コネクタを接続した際に、前記サブチューブの遠位端部が前記メインチューブの遠位端よりもさらに遠位端側に突出するようできる。
【0009】
この場合において、
前記サブチューブの遠位端部を前記メインチューブの遠位端部よりも硬質の材料で形成することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、術者が、ガイドワイヤとして第1ワイヤを用いることを選択した場合には、メインチューブを単独で用いて、先行して挿入した第1ワイヤに沿って該メインチューブを挿入し、この状態で、第1ワイヤに代えて第2ワイヤを用いる必要が生じた場合には、メインチューブはそのままの状態で、第1ワイヤのみをメインチューブの内腔から引き抜き、メインチューブの内腔にサブチューブを挿入した後に第2ワイヤを該サブチューブの内腔に挿入し、または第2ワイヤがその内腔に挿入されたサブチューブをメインチューブの内腔に挿入することにより、手技を継続することができる。
【0011】
これと反対に、術者が、ガイドワイヤとして第2ワイヤを用いることを選択した場合には、メインチューブの内腔にサブチューブを挿入した状態で、先行して挿入した第2ワイヤに沿って該サブチューブが挿入されたメインチューブを一体的に挿入し、この状態で、第2ワイヤに代えて第1ワイヤを用いる必要が生じた場合には、メインチューブはそのままの状態で、サブチューブおよび第2ワイヤをメインチューブの内腔から引き抜き、これに代えて第1ワイヤを挿入することにより、手技を継続することができる。
【0012】
このように、手技中において、ガイドワイヤを直径の異なるものに変更する必要が生じた場合でも、カテーテルを体内に残したまま、これに柔軟に対応することができる。しかも、ガイドワイヤを直径の異なるものに変更しても、ガイドワイヤとカテーテルの内腔との間の隙間が小さいので、ガイドワイヤに沿わせてカテーテルを円滑に挿入することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態のステントデリバリ装置の25ワイヤ使用時の構成を示す平面図である。
図2】本発明の実施形態のステントデリバリ装置の35ワイヤ使用時の構成を示す平面図である。
図3】本発明の実施形態のステントデリバリ装置のインナーシースの構成を示す平面図である。
図4】本発明の実施形態のステントデリバリ装置のアダプタシースの構成を示す平面図である。
図5】本発明の実施形態のステントデリバリ装置のアウターシースの構成を示す平面図である。
図6図1のカテーテル部の遠位端部を拡大して示す一部断面図である。
図7図2のカテーテル部の遠位端部を拡大して示す一部断面図である。
図8】従来技術の問題点を示す一部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係るカテーテルを備えるステントデリバリ装置について、図面を参照して説明する。このステントデリバリ装置は、ステントを胆管の狭窄部に留置するために用いられる医療用処置具であり、通常、内視鏡の処置具案内管を介して胆管内に挿入して用いられる。
【0015】
但し、本発明に係るカテーテルは、胆管への挿入を目的とするものに限定されず、膵管、血管、その他の管腔への挿入を目的とするものであっても適用することができる。また、内視鏡の処置具案内管を介して挿入する経内視鏡方式のもののみならず、患者の皮膚に直接針を刺してアプローチする経皮方式のものにも適用することができる。
【0016】
また、本実施形態では、留置対象としてのステントはその径が固定されたチューブステントであるものとして説明するが、自己拡張型ステントやバルーン拡張型のステントをデリバリする装置に適用してもよい。加えて、本発明に係るカテーテルは、ステントデリバリ装置に用いて好適であるが、これに限定されず、先行して挿入されたワイヤに沿って挿入されるカテーテルに広く適用することが可能である。
【0017】
図1図7を参照する。ステントデリバリ装置1は、不図示の内視鏡の処置具案内管を介して、患者の体内(管腔)に挿入される細長いカテーテル部2およびカテーテル部2の近位端側に接続され、体外側から体内のカテーテル部2を操作するための操作部3、ガイドワイヤ4a、ガイドワイヤ4bおよび留置対象としてのチューブステント5を概略備えて構成されている。
【0018】
カテーテル部2には本発明が適用されており、カテーテル部2は、患者の体内に挿入するためのガイドとして用いられるガイドワイヤとして、直径0.035インチのガイドワイヤ(第1ワイヤ)4a(図2参照)と、直径0.025インチのガイドワイヤ(第2ワイヤ)4b(図1参照)との2つのタイプのガイドワイヤを選択して使用でき、さらに必要に応じて、手技中に、これらを適宜に交換して使用できるようになっている。なお、以下の説明では、直径0.035インチのガイドワイヤ4aを35ワイヤ4aと、直径0.025インチのガイドワイヤ4bを25ワイヤ4bという。
【0019】
カテーテル部2は、遠位端および近位端を有するインナーシース(メインチューブ)21と、遠位端および近位端を有するアウターシース22と、遠位端および近位端を有するアダプタシース(サブチューブ)23とを備えている。
【0020】
インナーシース21は可撓性を有する細長いチューブからなり、35ワイヤ4aが摺動可能に挿通される内腔を有している。したがって、インナーシース21の内径は、35ワイヤ4aの直径(0.035インチ≒0.889mm)よりも僅かに大きい直径に設定されている。35ワイヤ4aを体内に挿入して体外と体内との経路を確保した後、35ワイヤ4aに沿ってカテーテル部2を押し込む(進行させる)ことにより、カテーテル部2の遠位端側を体内の目的部位に挿入することができる。インナーシース21の内径は、例えば、0.890〜1.00mmの範囲で設定すればよく、本実施形態では、0.950mmに設定している。また、インナーシース21の外径は、アウターシース22の内径よりも僅かに小さい値に設定され、例えば、1.20〜2.50mmの範囲で設定すればよく、本実施形態では2.00mmに設定している。インナーシース21の長さは、例えば、1500〜2500mmの範囲で設定すればよく、本実施形態では2000mmに設定している。
【0021】
インナーシース21の遠位端部には、先端(遠位端)に行くにしたがって細くなるようにテーパ状に形成された先端テーパ部21aが形成されていて、先端テーパ部21aの遠位端部には、先端テーパ部21aの他の部分よりも傾斜が大きな先端微小テーパ部21bが形成されている(図6参照)。インナーシース21の近位端には、操作部3を構成するコネクタ(第1コネクタ)31が取り付けられている。
【0022】
アウターシース22は可撓性を有する細長いチューブからなり、インナーシース21の外径よりも僅かに大きい内径を有しており、その内側にインナーシース21がスライド可能に挿通される。本実施形態では、アウターシース22の内径は2.10mmに、外径は2.40mmに設定している。アウターシース22の近位端には、操作部3を構成するコネクタ32が取り付けられている。操作部3を操作することにより、アウターシース22は、インナーシース21に対して軸方向にスライド(相対移動)可能である。
【0023】
アダプタシース23は、可撓性を有する細長いチューブからなり、25ワイヤ4bが摺動可能に挿通される内腔を有している。したがって、アダプタシース23の内径は、25ワイヤ4bの直径(0.025インチ≒0.635mm)よりも僅かに大きい径に設定されている。アダプタシース23の内径は、例えば、0.636〜0.850mmの範囲で設定すればよく、本実施形態では、0.700mmに設定している。アダプタシース23の外径は、インナーシース21の内径よりも僅かに小さい値に設定され、例えば、0.650〜0.950mmの範囲で設定すればよく、本実施形態では、0.900mmに設定している。アダプタシース23の遠位端には、先端(遠位端)に行くにしたがって細くなるようにテーパ状に形成された先端微小テーパ部23bが形成されている(図6参照)。また、アダプタシース23の近位端には、操作部3を構成するコネクタ(第2コネクタ)33が取り付けられている。操作部3を操作することにより、アダプタシース23は、インナーシース21に対して軸方向にスライド(相対移動)可能である。
【0024】
本実施形態では、アダプタシース23をインナーシース21に挿入した状態で、コネクタ31にコネクタ33を接続した際に、アダプタシース23の遠位端部がインナーシース21の遠位端よりもさらに遠位端側に突出するように、アダプタシース23の長さが設定されている。アダプタシース23の長さは、コネクタ31にコネクタ33を接続した際に、アダプタシース23の遠位端がインナーシース21の遠位端よりも、例えば、1〜50mmの範囲で遠位端側に突出するように設定すればよく、本実施形態では10mm突出するように設定されている。
【0025】
インナーシース21、アウターシース22およびアダプタシース23の材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリアミド、ポリエーテルポリアミド、ポリエステルポリアミド、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルイミド、ポリテトラフルオロエチレンやテトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体等のフッ素系樹脂等の各種樹脂材料や、ポリスチレン系、ポリオレフィン系、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリブタジエン系等の各種熱可塑性エラストマーを使用することがでる。これらのうち2種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0026】
インナーシース21としては、管腔に対する追従性等の観点から比較的に軟質の材料を用いることが好ましく、アダプタシース23としては、狭窄部の突破性や生体組織への穿孔性等を向上させる観点から、少なくとも遠位端部は、インナーシース21よりも硬質の材料(ショア硬度が高い材料)を用いることが好ましい。このため、本実施形態では、インナーシース21全体を構成する材料として、可撓性に優れたポリアミド系エラストマーの1種であるポリエーテルブロックアミド共重合体(PEBAX(登録商標))を用い、アダプタシース23全体を構成する材料としては、ポリエーテルブロックアミド共重合体よりも硬質なPEEKを用いている。なお、アダプタシース23としては、遠位端部のみを硬質の材料で形成し、他の部分を該遠位端部よりも軟質の材料で形成したものを用いてもよい。
【0027】
操作部3を構成するコネクタ31,32,33は、それぞれ軸方向に貫通する貫通孔(不図示)を有しており、各貫通孔は対応するインナーシース21、アウターシース22およびアダプタシース23の内腔に連通されている。コネクタ32の近位端部とコネクタ31の遠位端部は、ルアーロック方式等により互いに接続または接続解除できるようになっている。また、コネクタ31の近位端部とコネクタ33の遠位端部は、ルアーロック方式等により互いに接続または接続解除できるようになっている。
【0028】
なお、本実施形態では省略しているが、アウターシース22の外周を覆うように、アウターシース22と同心状に配される最外管(不図示)を備えてもよい。最外管を設けることにより、その最外管の部分を掴んだ状態でアウターシース22を軸方向にスライドできるので、アウターシース22の操作を容易にすることが可能となる。最外管としては、その内径が、アウターシース22の外径よりも0.05〜1.0mm程度大きい寸法ものを用いることができる。最外管の材料としてはポリアセタール、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリプロピレンなどを用いることができる。
【0029】
インナーシース21、アウターシース22およびアダプタシース23の遠位端近傍には、造影マーカー(不図示)がそれぞれ取り付けられている。造影マーカーは、X線透視によりその位置が検出されて体内における標識となるものであり、例えば金、白金、タングステン等の金属材料や、硫酸バリウムや酸化ビスマスがブレンドされたポリマー等により形成される。
【0030】
図2に示すように、35ワイヤ4aは、インナーシース21の内腔内に挿通され、その遠位端部はインナーシース21の先端テーパ部21aから突出し、その近位端部はコネクタ31の貫通孔を介して外側に露出するように配置することができ、インナーシース21は35ワイヤ4aに沿ってスライド可能である。また、図1に示すように、25ワイヤ4bは、アダプタシース23の内腔内に挿通され、その遠位端部はアダプタシース23の遠位端から突出し、その近位端部はコネクタ33の貫通孔を介して外側に露出するように配置することができ、アダプタシース23は25ワイヤ4bに沿ってスライド可能である。
【0031】
チューブステント5は、例えばポリエチレン等の樹脂からなる細長い可撓性を有するチューブであり、胆管の狭窄部に挿入・留置されて胆汁等の流れを確保するために用いられる内視鏡用の医療器具である。チューブの管壁には、胆汁等の通路として、外側に開口するとともに、内腔に連通する側孔(不図示)が設けられる場合がある。チューブステント5の長さは20〜200mm程度、外径は2.40mm程度である。なお、チューブステント5には、マイグレーション(移動)防止のため、単一または複数の可撓性を有するフラップ(不図示)が設けられる場合がある。
【0032】
術者が、チューブステント5を、胆管内の狭窄部に留置する際に、ガイドワイヤとしてその直径が太い35ワイヤ4aを用いることを選択した場合には、内視鏡の処置具案内管を介して、まず、35ワイヤ4aを、狭窄部を通過させるように胆管内に挿入する。次に、図2に示すように、インナーシース21からアダプタシース23を引き抜いた状態で、インナーシース21のコネクタ31とアウターシース22のコネクタ32とを互いに接続(ロック)し、チューブステント5がその近位端側の端面がアウターシース22の遠位端側の端面に当接するように、インナーシース21の遠位端側に配置された状態で、インナーシース21およびアウターシース22を35ワイヤ4aに沿って挿入する。
【0033】
チューブステント5が胆管の狭窄部に合わせて適宜な位置まで押し込まれたならば、まず、コネクタ31とコネクタ32との接続(ロック)を解除して、アウターシース22の位置はそのままの状態で、インナーシース21および35ワイヤ4aを近位端側にスライドさせて引き抜き、その後に、アウターシース22を引き抜くことにより、胆管内へのチューブステント5の留置が完了する。
【0034】
一方、術者が、チューブステント5を、胆管内の狭窄部に留置する際に、ガイドワイヤとしてその直径が細い25ワイヤ4bを用いることを選択した場合には、内視鏡の処置具案内管を介して、まず、25ワイヤ4bを、狭窄部を通過させるように胆管内に挿入する。次に、図1に示すように、インナーシース21にアダプタシース23を挿入した状態で、インナーシース21のコネクタ31とアウターシース22のコネクタ32とを互いに接続(ロック)し、さらにインナーシース21のコネクタ31とアダプタシース23のコネクタ33とを互いに接続(ロック)し、チューブステント5がその近位端側の端面がアウターシース22の遠位端側の端面に当接するように、インナーシース21の遠位端側に配置された状態で、カテーテル部2全体を25ワイヤ4bに沿って挿入する。
【0035】
チューブステント5が胆管の狭窄部に合わせて適宜な位置まで押し込まれたならば、まず、コネクタ31とコネクタ32との接続(ロック)を解除して、アウターシース22の位置はそのままの状態で、インナーシース21、アダプタシース23および25ワイヤ4bを近位端側にスライドさせて引き抜き、その後に、アウターシース22を引き抜くことにより、胆管内へのチューブステント5の留置が完了する。
【0036】
このように、術者が、35ワイヤ4aおよび25ワイヤ4bの何れのガイドワイヤを用いるかの選択に応じて、アダプタシース23をインナーシース21の内腔に挿入し、または引き抜くことにより、最適な状態で手技を行うことができ、術者の要望に応じて柔軟に対応することができる。
【0037】
術者が、チューブステント5を、胆管内の狭窄部に留置する際に、ガイドワイヤとしてその直径が太い35ワイヤ4aを用いることを選択して、35ワイヤ4aを、狭窄部を通過させるように胆管内に挿入し、図2に示すように、インナーシース21からアダプタシース23を引き抜いた状態で、カテーテル部2を全体的に35ワイヤ4aに沿って挿入した状態において、例えば狭窄部の狭窄が著しいために35ワイヤ4aが通過不可である場合等、35ワイヤ4aをその直径が細い25ワイヤ4bに変更する必要が生じた場合には、カテーテル部2はそのままの状態で、35ワイヤ4aをインナーシース21の内腔から引き抜き、これに代えて、アダプタシース23をインナーシース21の内腔に挿入した後に、アダプタシース23の内腔に25ワイヤ4bを挿入し、または25ワイヤ4bがその内腔に挿入されたアダプタシース23をインナーシース21の内腔に挿入して、図1に示す状態とする。これにより、カテーテル部2を体内に残したままで、ガイドワイヤを太い35ワイヤ4aから細い25ワイヤ4bに交換することができ、ガイドワイヤの交換後に、手技をそのまま継続することができる。
【0038】
一方、術者が、チューブステント5を、胆管内の狭窄部に留置する際に、ガイドワイヤとしてその直径が細い25ワイヤ4bを用いることを選択して、25ワイヤ4bを、狭窄部を通過させるように胆管内に挿入し、図1に示すように、インナーシース21の内腔にアダプタシース23を挿入した状態で、カテーテル部2を全体的に25ワイヤ4bに沿って挿入した状態において、例えば25ワイヤ4bのコシが不足してガイドワイヤの操作性が不足する場合等、25ワイヤ4bをその直径が太い35ワイヤ4aに変更する必要が生じた場合には、カテーテル部2はそのままの状態で、25ワイヤ4bおよびアダプタシース23を、同時にまたは順に、インナーシース21の内腔から引き抜き、これに代えて、35ワイヤ4aをインナーシース21の内腔に挿入して、図2に示す状態とする。これにより、カテーテル部2を体内に残したままで、ガイドワイヤを細い25ワイヤ4bから太い35ワイヤ4aに交換することができ、ガイドワイヤの交換後に、手技をそのまま継続することができる。
【0039】
このように、手技中において、35ワイヤを25ワイヤに、または25ワイヤを35ワイヤに交換する必要が生じた場合であっても、カテーテル部2を体内に残したままの状態で、容易に交換することができ、これに柔軟に対応することができる。
【0040】
しかも、体内に残したカテーテル部2にガイドワイヤを挿入した際には、図6または図7に示すように、ガイドワイヤとこれが挿入される内腔との間の隙間(35ワイヤ4aの場合にはインナーシース21の内腔との隙間、25ワイヤ4bの場合にはアダプタシース23の内腔との隙間)が小さいので、ガイドワイヤに沿わせてカテーテル部2を狭窄部等へ押し進める際に狭窄部等にカテーテル部2の遠位端が引っ掛かり難くなり、カテーテル部2の挿入性に優れている。
【0041】
すなわち、本実施形態のようなアダプタシース23を用いない従来技術では、その径の太い35ワイヤからその径の細い25ワイヤへの交換は可能であったが、図8に示すように、25ワイヤ4bとインナーシース21の内腔との隙間6が大きいため、25ワイヤ4bに沿わせてインナーシース21を狭窄部等に進入させる際に、インナーシース21の遠位端において、狭窄部等にインナーシース21の遠位端が引っ掛かり、狭窄部等の生体組織等が該隙間6内に入り込む等して、その挿入性が低かった。しかし、本実施形態では、このような事態が生じることはない。
【0042】
また、上述した実施形態では、図1または図6に示すように、インナーシース21のコネクタ31に、アダプタシース23のコネクタ33を接続した状態で、アダプタシース23の遠位端部がインナーシース21の遠位端から突出するようになっており、カテーテル部2の遠位端部が近位端に向かって段階的に径が広がるため、狭窄部や生体組織等に対する突破性を向上することができる。さらに、これと相俟って、アダプタシース23はインナーシース21よりも、硬質の材料で形成されているため、図2の構成で用いた場合には、狭窄部や生体組織を突破(穿孔)できないような場合であっても、図1に示す構成に交換することにより、突破できる場合がある。
【0043】
また、アダプタシース23はインナーシース21のコシを増すためのスタイレットとしても機能させることが可能であるから、インナーシース21の遠位端部において、アダプタシース23の先端(遠位端)の位置を調整することにより、インナーシース21の遠位端部の剛性(または可撓性)をある程度調整できるので、挿入される管腔の形状や状態に応じて調整することにより、手技を容易化できる場合がある。
【0044】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。従って、上述した実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【符号の説明】
【0045】
1…ステントデリバリ装置
2…カテーテル部
21…インナーシース
22…アウターシース
23…アダプタシース
3…操作部
31,32,33…コネクタ
4a,4b…ガイドワイヤ
5…チューブステント
6…隙間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8