(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
式(1)中の式(2)で表される2価の有機基が、式(2)中のDが、炭素数1〜20の2価の鎖状若しくは環状のアルキレン基である、請求項1又は2に記載の液晶配向剤。
前記有機溶媒が、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン、N−メチルカプロラクタム、2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシド、ジメチルスルホン、γ−ブチロラクトン、1,3−ジメチル−イミダゾリジノン、及び3−メトキシ−N,N−ジメチルプロパンアミドからなる群から選ばれる1種又は2種以上である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の液晶配向剤。
前記ポリアミック酸エステルとともに他の重合体が含有されるが、前記ポリアミック酸エステルが全重合体の5〜95質量%含有する、請求項1〜7のいずれか1項に記載の液晶配向剤。
【発明を実施するための形態】
【0019】
<ポリアミック酸エステル>
本発明の液晶配向剤は、上記式(1)で表される繰り返し単位を有するポリアミック酸エステルを含有する。
上記式(1)中、Xは4価の有機基であり、Yは2価の有機基である。Rは炭素数が1〜5、好ましくは1〜3のアルキル基である。A
1及びA
2は、それぞれ独立して、水素原子、又は置換基を有してもよい炭素数1〜10、好ましくは1〜3
を有するアルキル基、アルケニル基若しくはアルキニル基である。また、Yの少なくとも一部は、上記式(2)で表される2価の有機基である。)
【0020】
このポリアミック酸エステルは、上記のR、A
1、A
2、X及びYがそれぞれ1種、即ち同一構造の繰り返し単位のみからなるポリアミック酸エステルでもよく、また、R、A
1、A
2、X及びYがそれぞれ複数種存在する、即ち異なる構造の繰り返し単位を何種類か含有するポリアミック酸エステルでもよい。ただし、Yが上記式(2)で表される2価の有機基である単位を少なくとも1種は含むことが必要である。
上記式(2)中、Dは飽和炭化水素基、不飽和炭化水素基、芳香族炭化水素基、複素環から選ばれる炭素数1〜20、好ましくは1〜5を有する2価の基であり、これらは置換基を有していてもよい。mは、1又は0である。
【0021】
上記式(2)の構造は、2つあるベンゼン環の部分でそれぞれ式(1)のN−A
1又はN−A
2に結合していることを表している。このベンゼン環上のN−A
1又はN−A
2への結合位置は特に限定されないが、合成難易度や原料の入手性の観点では、式(2)中のDへと繋がるアミド結合を基準として、それぞれメタ又はパラの位置が好ましく、液晶配向性の観点ではパラの位置が特に好ましい。また、式(2)中のベンゼン環の水素原子は、フッ素原子、メチル基、トリフルオロメチル基、シアノ基、又は、メトキシ基で置換されていてもよい。原料の入手性などにより種々選択されるが、未置換のものが好ましい。
【0022】
式(2)中のDは、飽和炭化水素基、不飽和炭化水素基、芳香族炭化水素基、及び複素環から選ばれる炭素数1〜20、好ましくは1〜5の2価の基であり、これらは置換基を有していてもよい。電気特性や溶解性の観点では2価の炭化水素基などが好ましく、直鎖アルキレン基や環状アルキレン基などが特に好ましい。この炭化水素基は不飽和結合を有していても良く、さらには、水素原子がカルボン酸基やフッ素原子などで置換されていても良い。また、液晶配向性や電気特性の観点では、2価の芳香族炭化水素基や複素環などが好ましい。液晶配向性の観点からはDは置換基を有さないほうが好ましいが、溶解性の観点では、水素原子がカルボン酸基やフッ素原子などで置換されているものが好ましい。
【0023】
前記式(1)で表される繰り返し単位において、Yが式(2)で表される2価の有機基である割合は、全てのYが式(2)で表される2価の有機基であっても構わないが、本発明の液晶配向膜に更なる特性を付与する為に、式(2)で表される2価の有機基以外の構造を式(1)のYとして含むことは好ましい。この際の式(2)で表される2価の有機基の好ましい割合を示すならば、本発明の液晶配向剤に含まれる式(1)で表される繰り返し単位におけるY全体に対して式(2)で表される2価の有機基が1〜99モル%であり、好ましくは1〜50モル%であり、より好ましくは5〜30モル%、さらに好ましくは5〜20モル%である。なお、式(2)で表される2価の有機基が複数種含まれる場合はその合計を意味する。
【0024】
式(2)で表される2価の有機基以外のYの構造は特に限定されるものではないが、その好ましい具体例を示すならば、下記のY−1〜Y−100が挙げられる。これらのYは2種類以上混在していても構わない。
【0025】
このようなYのうち、液晶配向性をさらに高めるために、直線性の高い構造をポリアミック酸エステルに導入することは好ましく、Yとしては、Y−7、Y−21、Y−22、Y−23、Y−25、Y−26、Y−27、Y−43、Y−44、Y−45、Y−46、Y−48、Y−63、Y−71、Y−73、Y−74、Y−75、Y−98、Y−99,Y−100がより好ましい。
また、プレチルト角を高くしたい場合は、側鎖に長鎖アルキル基、芳香族環、脂肪族環、ステロイド骨格、又はこれらを組み合わせた構造を有する構造をポリアミック酸エステルに導入することが好ましく、Yとしては、Y−76、Y−77、Y−78、Y−79、Y−80、Y−81、Y−82、Y−83、Y−84、Y−85、Y−86、Y−87、Y−88、Y−89、Y−90、Y−91、Y−92、Y−93、Y−94、Y−95、Y−96、又はY−97がより好ましい。これらの構造を、Y全体に対して、好ましくは1〜50モル%とすることにより、任意のプレチルト角を発現することができる。一方、直流電圧により液晶表示素子内に蓄積する残留電荷の緩和が早い液晶配向膜を得るためには、Y−101〜Y−118がより好ましく、Y−111、Y−114,Y−115,Y−116が特に好ましい。
【0040】
上記のような式(2)以外の構造のYは、式(1)のY全体の50〜99モル%が好ましく、より好ましくは70〜95モル%、さらに好ましくは80〜95モル%である。
【0041】
前記式(1)において、Xは4価の有機基でありその構造は特に限定されるものではなく、2種類以上の構造が混在していてもよい。Xの具体例をあえて示すならば、以下に示すX−1〜X−46が挙げられる。なかでも、原料モノマーの入手性から、X−1、X−2、X−3、X−4、X−5、X−6、X−8、X−16、X−19、X−21、X−25、X−26、X−27、X−28、X−32、X−46などは好ましい。より高い透過率の液晶配向膜を得るためには、脂肪族構造を有するX−1、X−2、X−3、X−4、X−5、X−6、X−8、X−16、X−25、又はX−46が好ましく、X−1、又はX−2が特に好ましい。
【0046】
前記式(1)において、Rは、炭素数1〜5のアルキル基であり、好ましくは炭素数1〜2のアルキル基、さらに好ましくはメチル基である。
【0047】
前記式(1)において、A
1及びA
2はそれぞれ独立して水素原子、又は置換基を有してもよい、炭素数が1〜10、好ましくは1〜3のアルキル基、アルケニル基若しくはアルキニル基である。
【0048】
A
1及びA
2の上記アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、t−ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などが挙げられる。アルケニル基としては、上記のアルキル基に存在する1つ以上のCH−CH構造を、C=C構造に置き換えたものが挙げられ、より具体的には、ビニル基、アリル基、1−プロペニル基、イソプロペニル基、2−ブテニル基、1,3−ブタジエニル基、2−ペンテニル基、2−ヘキセニル基、シクロプロペニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基などが挙げられる。アルキニル基としては、前記のアルキル基に存在する1つ以上のCH2−CH2構造をC≡C構造に置き換えたものが挙げられ、より具体的には、エチニル基、1−プロピニル基、2−プロピニル基などが挙げられる。
【0049】
上記のアルキル基、アルケニル基や、アルキニル基は、全体として炭素数が1〜10、好ましくは1〜3であれば置換基を有していてもよく、更には置換基によって環構造を形成してもよい。なお、置換基によって環構造を形成するとは、置換基同士又は置換基と母骨格の一部(すなわちA
1やA
2を構成する原子)とが結合して環構造となることを意味する。
【0050】
この置換基の例としてはハロゲン基、水酸基、チオール基、ニトロ基、アリール基、オルガノオキシ基、オルガノチオ基、オルガノシリル基、アシル基、エステル基、チオエステル基、リン酸エステル基、アミド基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基を挙げることができる。
【0051】
置換基であるハロゲン基としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
【0052】
置換基であるアリール基としては、フェニル基が挙げられる。このアリール基には前述した他の置換基がさらに置換していてもよい。
【0053】
置換基であるオルガノオキシ基としては、O−Rで表される構造を示すことができる。このRは同一でも異なってもよく、前述したアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基などを例示することができる。これらのRには前述した置換基がさらに置換していてもよい。オルガノオキシ基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基などが挙げられる。
【0054】
置換基であるオルガノチオ基としては、−S−Rで表される構造を示すことができる。このRとしては、前述したアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基などを例示することができる。これらのRには前述した置換基がさらに置換していてもよい。オルガノチオ基の具体例としては、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ブチルチオ基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、ヘプチルチオ基、オクチルチオ基などが挙げられる。
【0055】
置換基であるオルガノシリル基としては、−Si−(R)
3で表される構造を示すことができる。このRは同一でも異なってもよく、前述したアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基などを例示することができる。これらのRには前述した置換基がさらに置換していてもよい。オルガノシリル基の具体例としては、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリプロピルシリル基、トリブチルシリル基、トリペンチルシリル基、トリヘキシルシリル基、ペンチルジメチルシリル基、ヘキシルジメチルシリル基などが挙げられる。
【0056】
置換基であるアシル基としては、−C(O)−Rで表される構造を示すことができる。このRとしては、前述したアルキル基、アルケニル基、アリール基などを例示することができる。これらのRには前述した置換基がさらに置換していてもよい。アシル基の具体例としては、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、バレリル基、イソバレリル基、ベンゾイル基などが挙げられる。
【0057】
置換基であるエステル基としては、−C(O)O−R、又は−OC(O)−Rで表される構造を示すことができる。このRとしては、前述したアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基などを例示することができる。これらのRには前述した置換基がさらに置換していてもよい。
【0058】
置換基であるチオエステル基としては、−C(S)O−R、又は−OC(S)−Rで表される構造を示すことができる。このRとしては、前述したアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基などを例示することができる。これらのRには前述した置換基がさらに置換していてもよい。
【0059】
置換基であるリン酸エステル基としては、−OP(O)−(OR)
2で表される構造を示すことができる。このRは同一でも異なってもよく、前述したアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基などを例示することができる。これらのRには前述した置換基がさらに置換していてもよい。
【0060】
置換基であるアミド基としては、−C(O)NH
2、又は、−C(O)NHR、−NHC(O)R、−C(O)N(R)
2、−NRC(O)Rで表される構造を示すことができる。このRは同一でも異なってもよく、前述したアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基などを例示することができる。これらのRには前述した置換基がさらに置換していてもよい。Rの水素原子を置換する置換基としては、アリール基が挙げられる。この置換基であるアリール基としては、前述したアリール基と同じものを挙げることができる。このアリール基には前述した他の置換基がさらに置換していてもよい。
【0061】
置換基であるアルキル基としては、前述したアルキル基と同じものを挙げることができる。このアルキル基には前述した他の置換基がさらに置換していてもよい。
【0062】
置換基であるアルケニル基としては、前述したアルケニル基と同じものを挙げることができる。このアルケニル基には前述した他の置換基がさらに置換していてもよい。
【0063】
置換基であるアルキニル基としては、前述したアルキニル基と同じものを挙げることができる。このアルキニル基には前述した他の置換基がさらに置換していてもよい。
【0064】
一般に、嵩高い構造を導入すると、アミノ基の反応性や液晶配向性を低下させる可能性があるため、A
1及びA
2としては、水素原子又は置換基を有してもよい炭素数1〜5のアルキル基がより好ましく、水素原子、メチル基又はエチル基が特に好ましい。
【0065】
また、本発明の液晶配向剤が含有するポリアミック酸エステルは、加熱することによって下記に示すイミド化反応が可能な部位を有するポリマー、即ちポリイミドを得ることができるポリイミド前駆体であることが好ましく、その意味ではA
1及びA
2のいずれか少なくとも一方は水素原子であることが好ましい。
【0066】
【化22】
(Rは、式(1)におけるRと同じである。)
【0067】
<ポリアミック酸エステルの製造方法>
本発明に用いられるポリアミック酸エステルは、以下に示す(1)〜(3)の方法で合成することができる。
【0068】
(1)ポリアミック酸から合成する場合
ポリアミック酸エステルは、ポリアミック酸をエステル化することによって合成することができる。
【0069】
ポリアミック酸は、テトラカルボン酸二無水物とジアミンとの反応によって合成することができる。具体的には、テトラカルボン酸二無水物とジアミンとを有機溶媒の存在下で−20℃〜150℃、好ましくは0℃〜50℃において、30分〜24時間、好ましくは1〜12時間反応させることによって合成できる。上記の反応に用いる有機溶媒は、モノマー及びポリマーの溶解性からN,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン、γ−ブチロラクトンが好ましく、これらは1種又は2種以上を混合して用いてもよい。ポリマーの濃度は、ポリマーの析出が起こりにくく、かつ高分子量体が得やすいという観点から、1〜30質量%が好ましく、5〜20質量%がより好ましい。このようにして得られたポリアミック酸は、反応溶液をよく撹拌させながら貧溶媒に注入することで、ポリマーを析出させて回収することができる。また、析出を数回行い、貧溶媒で洗浄後、常温あるいは加熱乾燥することで精製されたポリアミック酸の粉末を得ることができる。貧溶媒は、特に限定されないが、水、メタノール、エタノール、ヘキサン、ブチルセロソルブ、アセトン、トルエン等が挙げられる。
【0070】
ポリアミック酸をエステル化するには、ポリアミック酸とエステル化剤を、好ましくは有機溶剤の存在下で−20℃〜150℃、好ましくは0℃〜50℃において、30分〜24時間、好ましくは1〜4時間反応させることによって合成することができる。
【0071】
エステル化剤としては、精製によって容易に除去できるものが好ましく、N,N−ジメチルホルムアミドジメチルアセタール、N,N−ジメチルホルムアミドジエチルアセタール、N,N−ジメチルホルムアミドジプロピルアセタール、N,N−ジメチルホルムアミドジネオペンチルブチルアセタール、N,N−ジメチルホルムアミドジ−t−ブチルアセタール、1−メチル−3−p−トリルトリアゼン、1−エチル−3−p−トリルトリアゼン、1−プロピル−3−p−トリルトリアゼン、4−(4,6−ジメトキシー1,3,5−トリアジンー2−イル)−4−メチルモルホリニウムクロリドなどが挙げられる。エステル化剤の添加量は、ポリアミック酸の繰り返し単位1モルに対して、2〜6モル当量が好ましい。
【0072】
上記の反応に用いる溶媒は、ポリマーの溶解性からN,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン、又はγ−ブチロラクトンが好ましく、これらは1種又は2種以上を混合して用いてもよい。合成時の濃度は、ポリマーの析出が起こりにくく、かつ高分子量体が得やすいという観点から、1〜30質量%が好ましく、5〜20質量%がより好ましい。
【0073】
(2)ジカルボン酸ジエステルジクロリドとジアミンとの反応により合成する場合
ポリアミック酸エステルは、ジカルボン酸ジエステルジクロリドとジアミンから合成することができる。
具体的には、ジカルボン酸ジエステルジクロリドとジアミンとを塩基と有機溶剤の存在下で−20℃〜150℃、好ましくは0℃〜50℃において、30分〜24時間、好ましくは1〜4時間反応させることによって合成することができる。
【0074】
前記塩基には、ピリジン、トリエチルアミン、4−ジメチルアミノピリジンなどが使用できるが、反応が穏和に進行するためにピリジンが好ましい。塩基の添加量は、除去が容易な量で、かつ高分子量体が得やすいという観点から、ジカルボン酸ジエステルジクロリドに対して、2〜4倍モルであることが好ましい。
【0075】
上記の反応に用いる溶媒は、モノマー及びポリマーの溶解性からN−メチル−2−ピロリドン、γ−ブチロラクトンが好ましく、これらは1種又は2種以上を混合して用いてもよい。合成時のポリマー濃度は、ポリマーの析出が起こりにくく、かつ高分子量体が得やすいという観点から、1〜30質量%が好ましく、5〜20質量%がより好ましい。また、ジカルボン酸ジエステルジクロリドの加水分解を防ぐため、ポリアミック酸エステルの合成に用いる溶媒はできるだけ脱水されていることが好ましく、窒素雰囲気中で、外気の混入を防ぐのが好ましい。
【0076】
(3)ジカルボン酸ジエステルとジアミンからポリアミック酸を合成する場合
ポリアミック酸エステルは、ジカルボン酸ジエステルとジアミンを重縮合することにより合成することができる。
具体的には、ジカルボン酸ジエステルとジアミンを縮合剤、塩基、有機溶剤の存在下で0℃〜150℃、好ましくは0℃〜100℃において、30分〜24時間、好ましくは3〜15時間反応させることによって合成することができる。
【0077】
前記縮合剤には、トリフェニルホスファイト、ジシクロヘキシルカルボジイミド、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩、N,N’−カルボニルジイミダゾール、ジメトキシ−1,3,5−トリアジニルメチルモルホリニウム、O−(ベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウム テトラフルオロボラート、O−(ベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスファート、ジフェニル(2,3-ジヒドロ-2-チオキソ-3-ベンゾオキサゾリル)ホスホナートなどが使用できる。縮合剤の添加量は、ジカルボン酸ジエステルに対して2〜3倍モルであることが好ましい。
【0078】
前記塩基には、ピリジン、トリエチルアミンなどの3級アミンが使用できる。塩基の添加量は、除去が容易な量で、かつ高分子量体が得やすいという観点から、ジアミン成分に対して2〜4倍モルが好ましい。
【0079】
また、上記反応において、ルイス酸を添加剤として加えることで反応が効率的に進行する。ルイス酸としては、塩化リチウム、臭化リチウムなどのハロゲン化リチウムが好ましい。ルイス酸の添加量はジアミン成分に対して0〜1.0倍モルが好ましい。
【0080】
上記3つのポリアミック酸エステルの合成方法の中でも、高分子量のポリアミック酸エステルが得られるため、上記(3)の合成法が特に好ましい。
【0081】
以上のようにして得られるポリアミック酸エステルの溶液は、よく撹拌させながら貧溶媒に注入することで、ポリマーを析出させることができる。析出を数回行い、貧溶媒で洗浄後、常温あるいは加熱乾燥して精製されたポリアミック酸エステルの粉末を得ることができる。貧溶媒は、特に限定されないが、水、メタノール、イソプロピルアルコール、エタノール、ヘキサン、ブチルセロソルブ、アセトン、トルエン等が挙げられる。
【0082】
<液晶配向剤>
本発明の液晶配向剤は、前記した式(1)で表される繰り返し単位を有するポリアミック酸エステル(以下、特定重合体ともいう)が有機溶媒中に溶解された溶液の形態を有する。特定重合体の分子量は、重量平均分子量(Mw)で2,000〜500,000が好ましく、より好ましくは5,000〜300,000であり、さらに好ましくは、8,000〜100,000である。また、数平均分子量(Mn)は、好ましくは、1,000〜250,000であり、より好ましくは、2,500〜150,000であり、さらに好ましくは、4,000〜50,000である。
【0083】
本発明の液晶配向剤に含有される有機溶媒は、特定重合体が均一に溶解するものであれば特に限定されない。その具体例を挙げるならば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン、N−メチルカプロラクタム、2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシド、ジメチルスルホン、γ−ブチロラクトン、1,3−ジメチル−イミダゾリジノン、3−メトキシ−N,N−ジメチルプロパンアミド等を挙げることができる。これらは1種又は2種以上を混合して用いてもよい。また、単独では特定重合体を均一に溶解できない溶媒であっても、重合体が析出しない範囲であれば、上記の有機溶媒に混合してもよい。
【0084】
本発明の液晶配向剤に含有される有機溶媒は、、特定重合体を溶解させるための有機溶媒の他に、液晶配向剤を基板へ塗布する際の塗膜均一性を向上させるための溶媒を含有してもよい。かかる溶媒は、一般的に上記有機溶媒よりも低表面張力の溶媒が用いられる。その具体例を挙げるならば、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、エチルカルビトール、ブチルカルビトール、エチルカルビトールアセテート、エチレングリコール、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール、1−ブトキシ−2−プロパノール、1−フェノキシ−2−プロパノール、プロピレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールジアセテート、プロピレングリコール−1−モノメチルエーテル−2−アセテート、プロピレングリコール−1−モノエチルエーテル−2−アセテート、ブチルセロソルブアセテート、ジプロピレングリコール、2−(2−エトキシプロポキシ)プロパノール、乳酸メチルエステル、乳酸エチルエステル、乳酸n−プロピルエステル、乳酸n−ブチルエステル、乳酸イソアミルエステル等が挙げられる。これらの溶媒は2種類上を併用してもよい。
【0085】
本発明の液晶配向剤には、上記の成分の他、本発明の効果が損なわれない範囲であれば、特定重合体以外の重合体や種々の添加剤を含有していても良い。
【0086】
特定重合体以外の重合体としては、ポリアミック酸やポリアミック酸エステルなどのポリイミド前駆体、ポリイミド、ポリアミド、ポリシロキサン、アクリル重合体などを挙げることができる。特にポリアミック酸は、液晶表示素子の駆動によって蓄積する残留電荷の、緩和速度を向上させるので有用である。本発明の液晶配向剤に特定重合体以外の重合体を含有させる場合、液晶配向剤に含まれる重合体全体に対する特定重合体の割合としては5〜95質量%であることが好ましい。残留電荷の緩和速度を向上させる目的でポリアミック酸を含有させる場合は、特定重合体とポリアミック酸の合計量に対する特定重合体の割合が5〜60質量%であることが好ましく、より好ましくは5〜40質量%である。
【0087】
本発明の液晶配向剤における重合体の濃度は、形成させようとする塗膜の厚みの設定によって適宜変更することができるが、均一で欠陥のない塗膜を形成させるという点から1重重量%以上であることが好ましく、溶液の保存安定性の点からは10重量%以下とすることが好ましい。
【0088】
液晶配向剤に含有させる種々の添加剤としては、液晶配向膜の誘電率や導電性などの電気特性を変化させる目的の誘電体若しくは導電物質、液晶配向膜と基板との密着性を向上させる目的のシランカップリング剤、液晶配向膜にした際の膜の硬度や緻密度を高める目的の架橋性化合物、さらには塗膜を焼成する際にポリイミド前駆体の加熱によるイミド化を効率よく進行させる目的のイミド化促進剤などが挙げられる。
【0089】
<液晶配向膜>
本発明の液晶配向膜は、上記液晶配向剤を基板に塗布し、乾燥、焼成して得られる膜である。本発明の液晶配向剤を塗布する基板としては透明性の高い基板であれば特に限定されず、ガラス基板、窒化珪素基板、アクリル基板、ポリカーボネート基板等のプラスチック基板等を用いることができ、液晶駆動のための電極等が形成された基板を用いることがプロセスの簡素化の観点から好ましい。また、反射型の液晶表示素子では片側の基板のみにならばシリコンウエハー等の不透明な物でも使用でき、この場合の電極はアルミニウム等の光を反射する材料も使用できる。
【0090】
本発明の液晶配向剤の塗布方法としては、スピンコート法、印刷法、インクジェット法などが挙げられる。本発明の液晶配向剤を塗布した後の乾燥、焼成工程は、任意の温度と時間を選択することができる。通常は、含有される有機溶媒を十分に除去するために50℃〜120℃で1分〜10分乾燥させ、その後150℃〜300℃で5分〜120分焼成される。焼成後の塗膜の厚みは、特に限定されないが、薄すぎると液晶表示素子の信頼性が低下する場合があるので、5〜300nm、好ましくは10〜200nmである。
【0091】
得られた液晶配向膜を配向処理する方法としては、ラビング法、光配向処理法などが挙げられる。光配向処理法の具体例としては、前記塗膜表面に、一定方向に偏向した放射線を照射し、場合によってはさらに150〜250℃の温度で加熱処理を行い、液晶配向能を付与する方法が挙げられる。放射線としては、100nm〜800nmの波長を有する紫外線及び可視光線を用いることができる。
【0092】
上記のようにして本発明の液晶配向剤から得られた液晶配向膜は、優れた特性を有しているので、VA、TN、STN、TFT、横電界型等の液晶表示素子、更には、強誘電性及び反強誘電性の液晶表示素子用の液晶配向膜として用いることができる。
【0093】
<液晶表示素子>
本発明の液晶表示素子は、上記した手法により本発明の液晶配向剤から液晶配向膜付き基板を得、ラビング処理などにより配向処理を行った後、既知の方法により、液晶表示素子としたものである。
【0094】
液晶表示素の液晶セルの製造方法は特に限定されないが、一例を挙げるならば、液晶配向膜が形成された1対の基板を液晶配向膜面を内側にして、好ましくは1〜30μm、より好ましくは2〜10μmのスペーサーを挟んで設置した後、周囲をシール剤で固定し、液晶を注入して封止する方法が一般的である。液晶封入の方法については特に制限されず、作製した液晶セル内を減圧にした後液晶を注入する真空法、液晶を滴下した後封止を行う滴下法などが例示できる。
【実施例】
【0095】
以下に実施例を挙げ、本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
本実施例で使用する略号の説明
<有機溶媒>
NMP: N−メチル−2−ピロリドン
BCS: ブチルセロソルブ
<テトラカルボン酸誘導体>
TC−1 :2,4−ビス(メトキシカルボニル)シクロブタン−1,3−ジカルボン酸
TC−2 :3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物
【0096】
【化23】
<ジアミン>
DA−1 :ビス(4−アミノフェノキシ)メタン
DA−2 :N−(4−アミノフェニル)−N−メチルベンゼン−1,4−ジアミン
DA−3 :1,3−ビス(4−アミノフェネチル)ウレア
DA−4 :N1,N4−ビス[(2−tert―ブトキシカルボニルアミノ)−4−ニトロフェニル]アジパミド
DA−5 :4,4’−ジアミノジフェニルアミン
DA−6 :3,5−ジアミノ安息香酸
【0097】
【化24】
<縮合剤>
DBOP:ジフェニル(2,3-ジヒドロ-2-チオキソ-3-ベンゾオキサゾリル)ホスホナート
【0098】
【化25】
【0099】
<DA−4の合成>
本実施例で用いたジアミンDA−4は以下のようにして合成した。
【0100】
【化26】
【0101】
500mL四口フラスコに2−tertブトキシカルボニルアミノ−4−ニトロアニリンを20.0g(78.97mmol)、ピリジンを15.6g(197.43mmol)測り取り、脱水THF300mlとDMF100mlとの混合溶媒に溶解させ、氷浴中10℃以下を保ちながら、窒素雰囲気下でアジポイルクロリド6.5g(35.54mmol)のTHF溶液(20wt%)を滴下漏斗を用いてゆっくり滴下し、24時間攪拌反応させた。反応が進行するにつれて固体が析出してきた。反応終了後、反応溶液に純水300mlを加えしばらく攪拌し、1Lのメタノールに反応溶液を注ぎしばらく攪拌した。固体を濾過し、更にメタノール500mlで数回洗浄することで白灰色の固体19.5g(収率:89%)を得た。得られた固体はN1,N4−ビス[(2−tert―ブトキシカルボニルアミノ)−4−ニトロフェニル]アジパミドであった。
【0102】
その後、三方コックと攪拌子を備えた300mL四口フラスコにN1,N4−ビス[(2−tert―ブトキシカルボニルアミノ)−4−ニトロフェニル]アジパミド15.0gとパラジウムカーボン(5wt%)を1.5g計り取り、DMFを250ml加え、減圧脱気及び水素置換を行い、室温で48時間反応させた。
【0103】
反応終了後、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)製のメンブランフィルターにてパラジウムカーボンを除去し、濾液を10℃以下に冷やしたメタノール500mlに注ぎ、しばらく攪拌することで固体が析出した。得られた固体を回収し、メタノールで洗浄した後、酢酸エチルとn−ヘキサンの混合溶媒で洗浄し、60℃で真空乾燥させることにより、目的のジアミンである薄灰色の固体12.2g(収率:90%)を得た。得られた固体は[DA−4]であった。その構造は、分子内水素原子の核磁気共鳴スペクトルである
1H−NMRスペクトルにて確認した。測定データを以下に示す。
【0104】
1H NMR (400 MHz,[D
6]−DMSO)δ:9.19(s、2H)、7.97(s、2H)、7.00(d−d、2H)、6.83(d、2H)、6.33(d−d、2H)、5.04(s−br、4H)、2,50(m、4H)、1.44(m、4H)、1.48(s、18H)
【0105】
以下に、重合体溶液の粘度及び重合体の分子量の測定方法を示す。
[粘度]
合成例において、ポリアミック酸溶液又はポリアミック酸エステル溶液の粘度はE型粘度計TVE−22H(東機産業社製)を用い、サンプル量1.1mL、コーンロータTE−1(1°34’、R24)、温度25℃で測定した。
【0106】
[分子量]
ポリアミック酸及びポリアミック酸エステルの分子量はGPC(常温ゲル浸透クロマトグラフィー)装置によって測定し、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド換算値として、Mn及びMwを算出した。
GPC装置:(株)Shodex社製(GPC−101)
カラム:Shodex社製(KD803、KD805の直列)
カラム温度:50℃
溶離液:N,N−ジメチルホルムアミド(添加剤として、臭化リチウム−水和物(LiBr・H2O)が30mmol/L、リン酸・無水結晶(o−リン酸)が30mmol/L、テトラヒドロフラン(THF)が10ml/L)
流速:1.0ml/分
検量線作成用標準サンプル:東ソー社製 TSK 標準ポリエチレンオキサイド(Mw:約900,000、150,000、100,000、30,000)、及び、ポリマーラボラトリー社製 ポリエチレングリコール(ピークトップ分子量(Mp) 約12,000、4,000、1,000)。測定は、ピークが重なるのを避けるため、900,000、100,000、12,000、1,000の4種類を混合したサンプル、及び150,000、30,000、4,000の3種類を混合したサンプルの2サンプルを別々に測定。
【0107】
(合成例1)
撹拌子を入れた四つ口フラスコにテトラカルボン酸誘導体TC−1を4.94g(19.0mmol)投入した後、NMP95.0gを加えて撹拌して溶解させた。次いで、トリエチルアミンを6.07g(60.0mmol)、及びジアミンDA−1を3.45g(15.0mmol)、ジアミンDA−3を0.895g(3mmol)、ジアミンDA−4を1.11g(1.50mmol)加えて撹拌して溶解させた。
この溶液を撹拌しながら、縮合剤DBOPを16.1g(42.0mmol)添加し、更にNMPを16.8g加え、室温で12時間撹拌してポリアミック酸エステルの溶液を得た。このポリミック酸エステル溶液の温度25℃における粘度は43.4mPa・sであった。
このポリミック酸エステル溶液をメタノール866g中に投入し、得られた沈殿物を濾別した。この沈殿物をメタノールで洗浄した後に温度100℃で減圧乾燥し、特定重合体であるポリアミック酸エステルの粉末(PAE−a1)を得た。このポリアミック酸エステルの分子量はMn=13,612、Mw=31,063であった。
【0108】
(合成例2)
撹拌子を入れた四つ口フラスコにテトラカルボン酸誘導体TC−1を4.94g(19.0mmol)投入した後、NMP101.4gを加えて撹拌して溶解させた。次いで、トリエチルアミンを6.07g(60.0mmol)、及びジアミンDA−1を2.99g(13.0mmol)、ジアミンDA−3を0.90g(3.00mmol)、ジアミンDA−4を2.23g(4.00mmol)加えて撹拌して溶解させた。
この溶液を撹拌しながら、縮合剤DBOPを16.1g(42.0mmol)添加し、更にNMPを16.8g加え、室温で12時間撹拌してポリアミック酸エステルの溶液を得た。このポリミック酸エステル溶液の温度25℃における粘度は41.5mPa・sであった。
このポリミック酸エステル溶液をメタノール915g中に投入し、得られた沈殿物を濾別した。この沈殿物をメタノールで洗浄した後に温度100℃で減圧乾燥し、特定重合体であるポリアミック酸エステルの粉末(PAE−a2)を得た。このポリアミック酸エステルの分子量はMn=14,618、Mw=33,564であった。
【0109】
(合成例3)
撹拌子を入れた四つ口フラスコにテトラカルボン酸誘導体TC−1を106.5g(0.41mol)投入した後、NMP2120gを加えて撹拌して溶解させた。次いで、トリエチルアミンを133.6g(1.32mol)、及びジアミンDA−1を45.59g(0.20mol)、ジアミンDA−2を28.15g(0.13mol)、ジアミンDA−3を19.69g(0.07mol)、ジアミンDA−4を24.49g(0.044mol)を加えて撹拌して溶解させた。
この溶液を撹拌しながら、縮合剤DBOPを313.7g(0.82mol)添加し、更にNMPを291.2g加え、室温で12時間撹拌してポリアミック酸エステルの溶液を得た。このポリミック酸エステル溶液の温度25℃における粘度は36.5mPa・sであった。
このポリミック酸エステル溶液をメタノール915g中に投入し、得られた沈殿物を濾別した。この沈殿物をメタノールで洗浄した後に温度100℃で減圧乾燥し、特定重合体であるポリアミック酸エステルの粉末(PAE−a3)を得た。このポリアミック酸エステルの分子量はMn=13,113、Mw=30,067であった。
【0110】
(合成例4)
撹拌子を入れた四つ口フラスコにテトラカルボン酸誘導体TC−1を2.55g(9.80mmol)投入した後、NMP45.0gを加えて撹拌して溶解させた。次いで、トリエチルアミンを2.13g(21.0mmol)、及びジアミンDA−1を1.96g(8.50mmol)、ジアミンDA−3を0.45g(1.50mmol)加えて撹拌して溶解させた。
この溶液を撹拌しながら、縮合剤DBOPを8.05g(21.0mmol)添加し、更にNMPを7.94g加え、室温で12時間撹拌してポリアミック酸エステルの溶液を得た。このポリミック酸エステル溶液の温度25℃における粘度は50.0mPa・sであった。
このポリミック酸エステル溶液をメタノール408g中に投入し、得られた沈殿物を濾別した。この沈殿物をメタノールで洗浄した後に温度100℃で減圧乾燥し、特定重合体ではないポリアミック酸エステルの粉末(PAE−b1)を得た。このポリアミック酸エステルの分子量はMn=12,542、Mw=35,098であった。
【0111】
(合成例5)
撹拌子を入れた四つ口フラスコにテトラカルボン酸誘導体TC−1を8.28g(31.8mmol)投入した後、NMP45.0gを加えて撹拌して溶解させた。次いで、トリエチルアミンを2.13g(21.0mmol)、及びジアミンDA−1を4.24g(18.4mmol)、ジアミンDA−2を2.14g(10.0mmol)、ジアミンDA−3を1.50g(5.00mmol)加えて撹拌して溶解させた。
この溶液を撹拌しながら、縮合剤DBOPを25.69g(67.0mmol)添加し、更にNMPを18.78g加え、室温で12時間撹拌してポリアミック酸エステルの溶液を得た。このポリミック酸エステル溶液の温度25℃における粘度は55.1mPa・sであった。
このポリミック酸エステル溶液をメタノール1215g中に投入し、得られた沈殿物を濾別した。この沈殿物をメタノールで洗浄した後に温度100℃で減圧乾燥し、特定重合体ではないポリアミック酸エステルの粉末(PAE−b2)を得た。このポリアミック酸エステルの分子量はMn=14,132、Mw=34,191であった。
【0112】
(実施例1)
合成例1で得たポリアミック酸エステルの粉末(PAE−a1)4.10gを撹拌子の入った100mL三角フラスコに取り、NMP64.2gを加え、室温で18時間撹拌して溶解させた。続いて、BCS22.8gを加え、2時間撹拌して固形分濃度4.40質量%のポリアミック酸エステル溶液である液晶配向剤(A−1)を得た。
【0113】
(実施例2)
合成例2で得たポリアミック酸エステルの粉末(PAE−a2)3.81gを撹拌子の入った100mL三角フラスコに取り、NMP59.7gを加え、室温で18時間撹拌して溶解させた。続いて、BCS21.2gを加え、2時間撹拌して固形分濃度4.41質量%のポリアミック酸エステル溶液である液晶配向剤(A−2)を得た。
【0114】
(実施例3)
合成例3で得たポリアミック酸エステルの粉末(PAE−a3)4.21gを撹拌子の入った100mL三角フラスコに取り、NMP66.0gを加え、室温で18時間撹拌して溶解させた。続いて、BCS23.4gを加え、2時間撹拌して固形分濃度4.45質量%のポリアミック酸エステル溶液である液晶配向剤(A−3)を得た。
【0115】
(比較例1)
合成例4で得たポリアミック酸エステルの粉末(PAE−b1)1.77gを撹拌子の入った100mL三角フラスコに取り、NMP27.7gを加え、室温で18時間撹拌して溶解させた。続いて、BCS9.85gを加え、2時間撹拌して固形分濃度4.34質量%のポリアミック酸エステル溶液である液晶配向剤(B−1)を得た。
【0116】
(比較例2)
合成例5で得たポリアミック酸エステルの粉末(PAE−b2)3.87gを撹拌子の入った100mL三角フラスコに取り、NMP60.6gを加え、室温で18時間撹拌して溶解させた。続いて、BCS21.5gを加え、2時間撹拌して固形分濃度4.30質量%のポリアミック酸エステル溶液である液晶配向剤(B−2)を得た。
【0117】
(合成例6)
撹拌子を入れた四つ口フラスコにジアミンDA−5を3.98g(20.0mmol)、ジアミンDA−6を0.76g(5.00mmol)を投入した後、NMP54.5gを加えて撹拌し溶解させた。次いで、テトラカルボン酸誘導体TC−2を6.84g(23.3mmol)を添加し、NMPを30.4g加えて40℃で15時間反応させポリアミック酸の溶液を得た。このポリアミック酸の溶液の温度25℃における粘度は570mPa・sであった。また、このポリアミック酸の数平均分子量は13,700、重量平均分子量は32,300であった。
このポリアミック酸の溶液に、ポリアミック酸が6質量%、NMPが69質量%、BCSが25質量%になるよう、NMP、BCSを加え、ポリアミック酸溶液(D)を調製した。
【0118】
(実施例4)
合成例1で得られたポリアミック酸エステルの粉末(PAE−a1)にNMPを加えて、50℃にて30hr攪拌して溶解させた後、NMP、BCSを加え、ポリアミック酸エステルが6質量%、NMPが69質量%、BCSが25質量%になるよう調製した。このポリアミック酸エステル溶液6.10gと合成例6で調製したポリアミック酸溶液(D)14.0gとを攪拌子の入った三角フラスコに入れて、室温で3時間攪拌し、液晶配向剤(A−4)を得た。
【0119】
(実施例5)
合成例2で得られたポリアミック酸エステルの粉末(PAE−a2)にNMPを加えて、50℃にて30hr攪拌して溶解させた後、NMP、BCSを加え、ポリアミック酸エステルが6質量%、NMPが69質量%、BCSが25質量%になるよう調製した。このポリアミック酸エステル溶液6.00gと合成例6で調製したポリアミック酸溶液(D)13.9gとを、攪拌子の入った三角フラスコに入れて、室温で3時間攪拌し、液晶配向剤(A−5)を得た。
【0120】
(比較例3)
合成例4で得られたポリアミック酸エステルの粉末(PAE−b1)にNMPを加えて、50℃にて30hr攪拌して溶解させた後、NMP、BCSを加え、ポリアミック酸エステルが6質量%、NMPが69質量%、BCSが25質量%になるよう調製した。このポリアミック酸エステル溶液6.00gと合成例6で調製したポリアミック酸溶液(D)14.0gとを、攪拌子の入った三角フラスコに入れて、室温で3時間攪拌し、液晶配向剤(B−3)を得た。
【0121】
[電圧保持率のバックライト耐性の評価]
電圧保持率のバックライト耐性は以下のようにして評価した。
(電圧保持率測定用液晶セルの作製)
液晶配向剤を1.0μmのフィルターで濾過した後、電極付き基板(横30mm×縦40mmの大きさで、厚さが1.1mmのガラス基板。電極は幅10mm×長さ40mmの矩形で、厚さ35nmのITO電極)に、スピンコート塗布にて塗布した。50℃のホットプレート上で5分間乾燥させた後、230℃のIR式オーブンで20分間焼成を行い、膜厚100nmの塗膜を形成させて液晶配向膜付き基板を得た。この液晶配向膜をレーヨン布でラビング(ローラー直径:120mm、ローラー回転数:1000rpm、移動速度:20mm/sec、押し込み長:0.4mm)した後、純水中にて1分間超音波照射をして洗浄を行い、エアブローにて水滴を除去した後、80℃で15分間乾燥して液晶配向膜付き基板を得た。
【0122】
上記の液晶配向膜付き基板を2枚用意し、その1枚の液晶配向膜面上に4μmのスペーサーを散布した後、その上からシール剤を印刷し、もう1枚の基板をラビング方向が逆方向、かつ膜面が向き合うようにして張り合わせた後、シール剤を硬化させて空セルを作製した。この空セルに減圧注入法によって、液晶ZLI−4792(メルク社製)を注入し、注入口を封止して液晶セルを得た。その後、得られた液晶セルを110℃で1時間加熱し、23℃で一晩放置し、電圧保持率測定用液晶セルを得た。
【0123】
(バックライト耐性の評価)
上記の電圧保持率測定用液晶セルに60℃の温度下で1Vの電圧を60μsec印加し、100msec後の電圧を測定して、電圧がどのくらい保持できているかを電圧保持率として算出した。これを初期の電圧保持率とする。
次いでバックライト耐性試験として、この液晶セルを、温度70℃、LED光源(1000cd)の下で72時間放置した。この液晶セルの電圧保持率を上記と同様に測定した。これを耐性試験後の電圧保持率とする。
電圧保持率のバックライト耐性は、以上のようにして測定された電圧保持率の大小で評価した。即ち初期の電圧保持率と比較して耐性試験後の電圧保持率の変化量が少なければ、バックライト耐性は良好である。
【0124】
[電圧保持率の液晶不純物混入耐性の評価]
電圧保持率の液晶不純物混入耐性の評価は以下のようにして評価した。
液晶ZLI−4792(メルク社製)にポリエチレングリコール(和光純薬工業社製:和光1級品 平均分子量:360〜400)を500ppmとなるように添加し、24時間室温で放置し、不純物混入液晶とした。
空セルに注入する液晶として上記の不純物混入液晶を用いた以外は、前記と同様にして電圧保持率測定用液晶セルを作製した。この液晶セルに60℃の温度下で1Vの電圧を60μsec印加し、100msec後の電圧を測定して、電圧がどのくらい保持できているかを電圧保持率とし、その値の大小で電圧保持率の液晶不純物混入耐性を評価した。即ち通常の液晶(ポリエチレングリコールを添加していない液晶)を注入した液晶セルの電圧保持率と、不純物混入液晶を注入した液晶セルの電圧保持率とで、その差が少ないほど液晶不純物混入耐性は良好である。
【0125】
[液晶配向性の評価]
液晶配向性の評価は、以下のようにして評価した。
(FFS方式用電極付き基板の準備)
FFS方式用電極付きの基板を準備した。基板は、30mm×35mmの大きさで、厚さが0.7mmのガラス基板である。基板上には第1層目として対向電極を構成するIZO電極が全面に形成されている。第1層目のIZO電極の上には第2層目として、CVD法により成膜されたSiN(窒化珪素)膜が形成されている。第2層目のSiN膜の膜厚は500nmであり、層間絶縁膜として機能する。第2層目のSiN膜の上には、第3層目としてIZO膜をパターニングして形成された櫛歯状の画素電極が配置され、第1画素及び第2画素の2つの画素を形成している。各画素のサイズは、縦10mmで横約5mmである。このとき、第1層目の対向電極と第3層目の画素電極とは、第2層目のSiN膜の作用により電気的に絶縁されている。
第3層目の画素電極は、中央部分が屈曲したくの字形状の電極要素を複数配列して構成された櫛歯状の形状を有する。各電極要素の短手方向の幅は3μmであり、電極要素間の間隔は6μmである。各画素を形成する画素電極が、中央部分の屈曲したくの字形状の電極要素を複数配列して構成されているため、各画素の形状は長方形状ではなく、電極要素と同様に中央部分で屈曲する、太字のくの字に似た形状を備える。そして、各画素は、その中央の屈曲部分を境にして上下に分割され、屈曲部分の上側の第1領域と下側の第2領域を有する。
各画素の第1領域と第2領域とを比較すると、それらを構成する画素電極の電極要素の形成方向が異なるものとなっている。すなわち、後述する液晶配向膜のラビング方向を基準とした場合、画素の第1領域では画素電極の電極要素が+10°の角度(時計回り)をなすように形成され、画素の第2領域では画素電極の電極要素が−10°の角度(時計回り)をなすように形成されている。すなわち、各画素の第1領域と第2領域とでは、画素電極と対向電極との間の電圧印加によって誘起される液晶の、基板面内での回転動作(インプレーン・スイッチング)の方向が互いに逆方向となるように構成されている。
【0126】
(液晶配向性評価用液晶セルの作製)
液晶配向剤を1.0μmのフィルターで濾過した後、上記のFFS方式用電極付き基板にスピンコート塗布にて塗布した。100℃のホットプレート上で100秒間乾燥させた後、230℃の熱風循環式オーブンで20分間焼成を行い、膜厚60nmのポリイミド膜を得た。このポリイミド膜をレーヨン布でラビング(ローラー直径:120mm、ローラー回転数:500rpm、移動速度:30mm/sec、押し込み長:0.3mm、ラビング方向:3層目IZO櫛歯電極に対して10°傾いた方向)した後、イソプロピルアルコールと純水の3/7混合溶媒中にて1分間超音波照射をして洗浄を行い、エアブローにて水滴を除去した後、80℃で15分間乾燥して液晶配向膜付き基板を得た。
また、対向基板として、高さ4μmの柱状スペーサーを有し、裏面にITOが形成されているガラス基板にも、上記と同様にしてポリイミド膜を形成し、上記と同様の手順で配向処理が施された液晶配向膜付き基板を得た。
上記2枚の液晶配向膜付き基板を1組とし、基板上に液晶注入口を残した形でシール剤を印刷し、もう1枚の基板を、液晶配向膜面が向き合いラビング方向が逆平行になるようにして張り合わせた後、シール剤を硬化させてセルギャップが4μmの空セルを作製した。
この空セルに減圧注入法によって、液晶ZLI−4792(メルク社製)を注入し、注入口を封止して、FFS方式の液晶セルを得た。その後、得られた液晶セルを110℃で30分加熱し、23℃で一晩放置し液晶配向性評価用の液晶セルを得た。
【0127】
(液晶配向性の評価)
上記の液晶配向性評価用液晶セルを、60℃の恒温環境下、周波数30Hzで相対透過率が100%となる交流電圧を168時間印加した。その後、液晶セルの画素電極と対向電極との間をショートさせた状態にし、そのまま室温に一日放置した。放置の後、液晶セルを偏光軸が直交するように配置された2枚の偏光板の間に設置し、電圧無印加の状態でバックライトを点灯させておき、透過光の輝度が最も小さくなるように液晶セルの配置角度を調整した。そして、第1画素の第2領域が最も暗くなる角度から第1領域が最も暗くなる角度まで液晶セルを回転させたときの回転角度を角度△として算出した。第2画素でも同様に、第2領域と第1領域とを比較し、同様の角度△を算出した。そして、第1画素と第2画素の角度△値の平均値を液晶セルの角度△として算出し、その値の大小で液晶配向性を評価した。即ちこの角度△の値が小さければ、液晶配向性は良好である。
【0128】
以下の表1に実施例1〜5及び比較例3で得られた液晶配向剤を用いて作製した液晶セルの、電圧保持率のバックライト耐性の評価結果をまとめて示す。
【表1】
【0129】
以下の表2に実施例1〜3及び比較例1〜2で得られた液晶配向剤を用いて作製した液晶セルの、電圧保持率の液晶不純物混入耐性と液晶配向性の評価結果をまとめて示す。なお、表中、LC1は通常の液晶を注入した液晶セルの電圧保持率、LC2は不純物混入液晶を注入した液晶セルの電圧保持率である。
【表2】