(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6524944
(24)【登録日】2019年5月17日
(45)【発行日】2019年6月5日
(54)【発明の名称】気相エッチング方法及びエピタキシャル基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/302 20060101AFI20190527BHJP
H01L 21/205 20060101ALI20190527BHJP
C23C 16/44 20060101ALI20190527BHJP
【FI】
H01L21/302 201A
H01L21/205
C23C16/44 J
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-55179(P2016-55179)
(22)【出願日】2016年3月18日
(65)【公開番号】特開2017-168781(P2017-168781A)
(43)【公開日】2017年9月21日
【審査請求日】2018年3月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000190149
【氏名又は名称】信越半導体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147935
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 進介
(74)【代理人】
【識別番号】100080230
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 詔二
(72)【発明者】
【氏名】輪嶋 孝樹
【審査官】
鈴木 聡一郎
(56)【参考文献】
【文献】
特開平11−200053(JP,A)
【文献】
特開平11−345778(JP,A)
【文献】
特開2001−102358(JP,A)
【文献】
特開2002−299328(JP,A)
【文献】
特開2004−119707(JP,A)
【文献】
特開2008−004603(JP,A)
【文献】
特開2013−051350(JP,A)
【文献】
特開2013−077627(JP,A)
【文献】
特開2016−072585(JP,A)
【文献】
特表2008−503089(JP,A)
【文献】
特表2009−510269(JP,A)
【文献】
国際公開第1998/001894(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/205
H01L 21/302
C23C 16/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板が載置されるサセプタと、前記サセプタが収容され、透明石英部材により封止されたチャンバーと、
前記チャンバーの外側に設けられ、測定光路が前記透明石英部材の内壁面上のウォールデポの生成が予測される箇所を横切って前記チャンバー内のサセプタ温度を測定するように設置されたサセプタ温度測定用パイロメーターと、を有する気相成長装置において実施される気相エッチング方法であり、
前記チャンバー内を昇温させ、前記ウォールデポの存在しない状態での前記サセプタ温度を予め測定することにより基準温度を設定しておく工程と、
前記チャンバー内を昇温させた状態での前記サセプタ温度が前記基準温度よりも低い場合には、前記ウォールデポが生成されているものとみなして気相エッチングを行う気相エッチング開始工程と、
前記サセプタ温度が前記基準温度となったら前記気相エッチングを終了する気相エッチング終了工程と、
を含む気相エッチング方法。
【請求項2】
前記気相エッチング終了工程において、ウォールデポが無い場合における、サセプタ温度を所定の値に制御したときのヒーター出力を予め測定しておき、前記サセプタ温度が一定の温度となるようにヒーター出力をフィードバック制御し、前記ヒーター出力が上記予め測定しておいたヒーター出力に到達したときに、前記サセプタ温度が前記基準温度となったとみなして前記気相エッチングを終了するようにした、請求項1記載の気相エッチング方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の気相エッチング方法によって、気相成長装置のチャンバーを気相エッチングによりクリーニングした後に、前記クリーニングされたチャンバー内のサセプタ上に基板を載置し、前記基板を加熱装置で昇温しながら原料ガスをチャンバー内に導入することにより、前記基板の表面上にエピタキシャル層を形成してなるエピタキシャル基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気相成長装置において実施される気相エッチング方法に関し、より詳しくは、気相成長装置のチャンバー内のウォールデポを除去するための気相エッチング方法及びそれを用いたエピタキシャル基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体基板(以下基板という)であるシリコンウェーハを用いて、コンピュータのメモリや演算素子、またデジタルカメラやビデオの撮像素子等、さまざまなデバイスが作られている。特に、先端向けのデバイスには、シリコンウェーハの表面に気相成長によりシリコン層を堆積させたエピタキシャルシリコンウェーハ(エピウェーハ)が用いられている。
【0003】
一般的にエピウェーハは、1100℃以上の高温でトリクロロシラン等の原料を気相反応させ、シリコン基板上にエピタキシャルシリコン層を成膜させ作られる。気相成長装置では、ウェーハと前記ウェーハを載置するサセプタをヒーターで加熱し、炉体を冷却するコールドウォール式の装置が一般的である。
【0004】
図4に、気相成長装置の透明石英部材で封止されたチャンバーの様子を模式的に示す。
気相成長装置は、サセプタ支持具6に支持されてウェーハWを載置するサセプタ2を具備するチャンバー1を有している。チャンバー1は、上下に設置された透明石英部材4,4’によって封止される構成となっている。透明石英部材4,4’を通してウェーハWおよびサセプタ2を昇温するため、チャンバー上部および下部にランプ等のヒーター10が設置される。
【0005】
エピタキシャル成長反応はシリコン基板であるウェーハW上で発生すると同時に、サセプタ2上やチャンバー1の壁面上でも反応し、ポリシリコンや珪素化合物が副生成物として堆積する。このような副生成物はウォールデポ(ウォールデポジション)と呼ばれる。
図4に示すように、ウォールデポ14がウェーハWと加熱用ランプであるヒーター10の間の透明石英部材4上に付着すると、エピタキシャル反応中に壁面から剥離し、前記ウェーハW上に付着することでパーティクルとなる。
【0006】
また、ウォールデポ14が生成されると、
図4に示すようにヒーター10の照射光15を遮ることとなってしまい、ウォールデポ14によって影となる領域の温度が低下し、温度分布が悪化するため、エピタキシャルウェーハの膜厚分布・抵抗分布が悪化し、スリップ転位が発生しやすくなる。
【0007】
さらに、気相成長装置の透明石英部材で封止されたチャンバー1において、前記透明石英部材4,4’上に生成するウォールデポ14は、シリコン基板の温度を測定するパイロメーターに入射する輻射光を遮り、測定温度の精度を悪化させる。
【0008】
故に、ウォールデポは定期的に除去する必要があり、ウォールデポの除去には塩化水素ガス(HCl)を用いた気相エッチングが行われる。しかし、過度にエッチングを行うと、チャンバーの部材の寿命を低下させるとともに、サイクルタイムが増加し、生産性が悪化するという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2013-051350
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
前述のように、気相成長においてはHClを用いた気相エッチングにより定期的にウォールデポを除去する必要がある。必要なエッチングの時間は、反応したエピタキシャル膜の厚さの累積に応じて変化する。種々のエピタキシャル膜厚・エッチング時間でチャンバー内のウォールデポ残存量を評価し、必要なエッチング時間を計算する。
【0011】
しかしながら、上記ウォールデポ残存量の評価は目視で行うため、必ずしも正確ではない。また、必要なエッチング時間は、反応したエピタキシャル膜厚の累積だけでなく、ソースガス種やプロセス温度、キャリアガス流量等のエピタキシャル反応条件にも影響を受ける。
【0012】
このように、エッチング時間はエピタキシャル膜厚の累計に加え、確実にエッチングを行うためには、オーバーエッチング時間の導入が必要となる。しかし、過度のエッチングはSiC部材からなるサセプタにダメージを与えてしまう。また、エッチング時間の増大は生産性を悪化させてしまう。
【0013】
本発明は上記従来技術の問題点に鑑みなされたもので、気相成長装置のチャンバー内に堆積したウォールデポをエッチングにより除去する際、エッチング時間を短縮でき、オーバーエッチングによるサセプタのダメージを減少させ、生産性を向上することができる気相エッチング方法及びエピタキシャル基板の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するため、本発明の気相エッチング方法は、基板が載置されるサセプタと、前記サセプタが収容され、透明石英部材により封止されたチャンバーと、前記チャンバーの外側に設けられ、測定光路が前記透明石英部材の内壁面上のウォールデポの生成が予測される箇所を横切って前記チャンバー内のサセプタ温度を測定するように設置されたサセプタ温度測定用パイロメーターと、を有する気相成長装置において実施される気相エッチング方法であり、前記チャンバー内を昇温させ、前記ウォールデポの存在しない状態での前記サセプタ温度を予め測定することにより基準温度を設定しておく工程と、前記チャンバー内を昇温させた状態での前記サセプタ温度が前記基準温度よりも低い場合には、前記ウォールデポが生成されているものとみなして気相エッチングを行う気相エッチング開始工程と、前記サセプタ温度が前記基準温度となったら前記気相エッチングを終了する気相エッチング終了工程と、を含む気相エッチング方法、である。
【0015】
コールドウォール型の気相成長装置は、サセプタをヒーターで加熱し、炉体を冷却しながらエピタキシャル反応および気相エッチングを行う。気相エッチングは高温であると反応効率が高いため、サセプタ上のウォールデポは除去が容易であるのに対し、チャンバー壁面のウォールデポは長時間のエッチングが必要となる。特に透明石英部材は昇温しづらく、前記透明石英部材上のウォールデポはエッチング残りとなりやすい。
【0016】
このため、前記チャンバー内の透明石英部材上のウォールデポが除去されたタイミングでは、前記チャンバー内の透明石英部材上以外の箇所に堆積しているウォールデポについても既に除去されたとみなすことができる。故に、気相エッチング中におけるチャンバー内の透明石英部材上のウォールデポを逐次検出し、前記ウォールデポが除去されたタイミングで気相エッチングを終了するようにすれば、エッチング時間を最小限に抑え、サセプタのダメージを減少させ、生産性を向上することができる。
【0017】
前記チャンバー内の透明石英部材上のウォールデポ検出方法として、サセプタ温度測定用にパイロメーター(放射温度計)を使用する。サセプタ温度測定用パイロメーターは、チャンバー外部から透明石英部材を通してサセプタ表面の温度を測定し、かつ、前記チャンバー内の透明石英部材上のウォールデポの生成が予測される箇所が、前記サセプタ表面の温度測定点と前記サセプタ温度測定用パイロメーターの検出部との間の測定光路を横切る位置に設置する。
【0018】
前記チャンバー内の透明石英部材上にウォールデポ生成がある場合、前記ウォールデポがサセプタ表面の輻射光を反射・吸収し、サセプタ温度測定用パイロメーターの測定値が実際の温度より低く表示される。一定のヒーター出力でサセプタを加熱しながら気相エッチングを行うと、次第に透明石英部材上のウォールデポが除去され、前記サセプタ表面温度の測定値が増加する。
【0019】
ウォールデポ生成が無い状態における所定のヒーター出力でのサセプタ温度を予め測定し基準温度を設定しておき、ヒーターを前記出力に制御しながら気相エッチングを行い、サセプタが前記基準温度に到達したときにエッチングを終了するようにすれば、チャンバー内にウォールデポ除去残りがなく、かつ、エッチング時間を最小限とすることができる。
【0020】
前記チャンバーのウォールデポの生成が予測される内壁面の箇所としては、前記チャンバーの透明石英部材の内壁面上におけるウォールデポが形成されやすい箇所とすればよい。特に、前記チャンバーの透明石英部材の内壁面上の最もウォールデポが形成されやすい箇所を前記チャンバーのウォールデポの生成が予測される内壁面の箇所として、サセプタ温度測定用パイロメーターを設置するのが好適である。
【0021】
前記気相エッチング終了工程において、前記サセプタ温度が所定の温度となるようにヒーター出力を制御し、前記ヒーター出力が所定の値となったときに、前記サセプタ温度が前記基準温度となったとみなして前記気相エッチングを終了するようにしてもよい。
【0022】
即ち、前述のように、ヒーター出力を一定に制御しながら気相エッチングを行い、サセプタが所定の温度となったタイミングでエッチングを終了する方法と同様に、サセプタ温度を一定に制御しながら気相エッチングを行い、ヒーター出力が所定の値となったタイミングで、前記サセプタ温度が前記基準温度となったとみなしてエッチングを終了する方法でも、エッチング時間の短縮が実現できる。
【0023】
透明石英部材上にウォールデポの堆積がある場合、サセプタ温度測定用パイロメーターによるサセプタ温度の測定値が低下する。サセプタ温度が一定となるようにヒーター出力をフィードバック制御すると、気相エッチングにより次第にヒーター出力が低下する。ウォールデポが無い場合における、サセプタ温度を所定の値に制御したときのヒーター出力を予め測定しておき、サセプタ温度を一定に制御しながら気相エッチングを行い、サセプタが前記ヒーター出力に到達したときにエッチングを終了することで、チャンバー内にウォールデポ除去残りなく、かつ、エッチング時間を最小限とすることができる。
【0024】
本発明のエピタキシャル基板の製造方法は、前記気相エッチング方法によって、気相成長装置のチャンバーを気相エッチングによりクリーニングした後に、前記クリーニングされたチャンバー内のサセプタ上に基板を載置し、前記基板を加熱装置で昇温しながら原料ガスをチャンバー内に導入することにより、前記基板の表面上にエピタキシャル層を形成してなるエピタキシャル基板の製造方法である。
【発明の効果】
【0025】
本発明の気相エッチング方法によれば、気相成長装置のチャンバー内に堆積したウォールデポをエッチングにより除去する際、エッチング時間を短縮でき、オーバーエッチングによるサセプタのダメージを減少させ、生産性を向上することができる気相エッチング方法及びエピタキシャル基板の製造方法を提供することができるという著大な効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明の気相エッチング方法が実施される気相成長装置の一例を示す断面図である。
【
図2】本発明の気相エッチング方法が実施される気相成長装置の要部概略図である。
【
図3】本発明の実施例における、気相エッチング中のサセプタ温度の推移である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しながら説明するが、これらは例示的に示されるもので、本発明の技術思想から逸脱しない限り種々の変形が可能なことはいうまでもない。
【0028】
本発明の気相エッチング方法では、チャンバー内にウェーハを載置するサセプタを具備し、透明石英部材で封止されたチャンバーをもつ、コールドウォール式の枚葉式気相成長装置を用いる。
図1に、本発明の気相エッチング方法が実施される気相成長装置の一例を示す。
【0029】
図1に示される如く、コールドウォール式の気相成長装置13は、チャンバー1内にウェーハWを載置するサセプタ2を具備している。また、SUS(ステンレス鋼)からなるチャンバーベース3,3’とそれを上下から挟み、チャンバー1を封止する透明石英部材4,4’と、チャンバーベース3,3’をカバーする不透明石英部材5,5’を備える。サセプタ2はサセプタ支持具6に支持されており、サセプタ支持具6は回転機構7に接続されている。
【0030】
チャンバー1には原料ガス(例えばSiCl
4、SiHCl
3、SiH
2Cl
2、SiH
4、およびドーパントなど)およびキャリアガス(例えば水素)を含む気相成長ガスをサセプタの上側の領域に導入する気相成長ガス導入口8が設けられている。また、チャンバー1には、気相成長ガス導入口8と反対側に、ガスを排出するためのガス排出口9が設けられている。
【0031】
透明石英部材4,4’を通してウェーハWおよびサセプタ2を昇温するため、チャンバー上部および下部にランプ等のヒーター10,10’が設置される。また、ウェーハ上部からそれぞれウェーハWおよびサセプタ2の温度を測定するための、ウェーハ温度測定用パイロメーター11とサセプタ温度測定用パイロメーター12が設置される。
【0032】
サセプタ温度測定用パイロメーター12は、測定光路が前記透明石英部材4,4’の内壁面上のウォールデポの生成が予測される箇所を横切って前記チャンバー1内のサセプタ2の温度を測定するように設置する。特に、透明石英部材4,4’上において最もウォールデポが堆積しやすい箇所を測定光路が横切る視野で、サセプタ表面温度を測定するように設置するのが好適である。
【0033】
このような枚葉式気相成長装置を用いて、例えば直径300mmのシリコンウェーハ上にシリコンエピタキシャル層を形成することでエピタキシャルウェーハとなる。エピタキシャルウェーハのエピタキシャル層製造フローを以下に説明する。
【0034】
まず、基板搬入用ロボット(図示せず)などにより、チャンバー1にウェーハWを搬入し、サセプタ2上に載置する。気相成長ガス導入口8から水素を例えば50slm供給し、ウェーハWを回転機構7で50rpmに回転させながら、加熱装置であるヒーター10,10’によりウェーハWを例えば1100℃に昇温する。ウェーハ温度測定用パイロメーター11の測定値をフィードバックして温度が一定に維持するようにヒーター10,10’の出力を制御し、例えば30秒間アニールを行う。これにより、ウェーハW表面の自然酸化膜が除去されウェーハW表面が水素終端される。
【0035】
アニール後、ウェーハ温度を1100℃に維持した状態で、例えば原料ガスとしてSiHCl
3を水素で例えば3%に希釈し、ドーパントを数ppb導入した反応ガスを、例えば50slmチャンバー1に導入する。SiHCl
3がウェーハW上で還元され、シリコンエピタキシャル膜が生成し、未反応ガスや反応副生成物からなる排出ガスはガス排気口9から排出される。そして、ウェーハを例えば600℃まで降温させた後、チャンバー1からウェーハWが搬出される。
【0036】
このようなエピタキシャル反応が繰り返されることで、サセプタ2、透明石英部材4,4’、不透明石英部材5,5’の表面上にウォールデポが堆積する。そこで、エピタキシャルウェーハの累積膜厚が、例えば20μm以上となった時点で、気相エッチングによりウォールデポを除去するようにする。本発明に係る気相エッチング方法のフローを以下に示す。
【0037】
まず、前記チャンバー1内を昇温させ、ヒーター出力を一定に制御し、ウォールデポの存在しない状態でのサセプタ2の温度を予め測定し、これを基準温度とする。基準温度は例えば1200℃である。
【0038】
サセプタ2を所定のヒーター出力で加熱し、サセプタ2上をサセプタ温度測定用パイロメーター12で温度測定した場合、
図2(a)に示すように、輻射光16は減衰されることがないため、表示される測定温度は正確なものとなる。
【0039】
しかし、サセプタ2とサセプタ温度測定用パイロメーター12との間の測定光路上に、ウォールデポ14が存在すると、サセプタ温度測定用パイロメーター12の輻射光16は減衰された輻射光16’となり、表示される測定温度が低くなる。したがって、前記チャンバー1内を昇温させ、ヒーター出力を一定に制御し、
図2(a)のようにウォールデポの存在しない状態でのサセプタ2の温度を予め測定し、これを基準温度とする。
【0040】
次に、前記チャンバー1内を昇温させた状態での前記サセプタ温度が前記基準温度よりも低い場合には、
図2(b)のようにウォールデポ14が生成されているものとみなして気相エッチングを開始する。基準温度が例えば1200℃であり、前記チャンバー1内を昇温させてもサセプタ温度が例えば1160℃にしか到達しないのであれば、ウォールデポが形成されていると考えられる。
【0041】
気相エッチングにあたっては、ヒーター出力を制御し、サセプタ2を例えば1200℃まで昇温する。前記サセプタ温度で例えば60秒間維持し、透明石英部材4,4’や不透明石英部材5,5’の温度を増加させる。続いて、ヒーター出力を一定に制御しながら、HClガスを例えば25slmチャンバー1に導入し、ウォールデポを除去する。
【0042】
このようにして、チャンバー壁面のウォールデポが除去されるが、サセプタ温度が所定の基準温度となったときをエッチングの終点とする。その後、チャンバー1内を降温する。
【0043】
気相エッチングの経過時間とサセプタ温度の関係を示した例を
図3に示す。
図3に示した例では、エッチング開始後50秒間は透明石英部材4,4’上のウォールデポが除去されることにより、サセプタ温度の測定値が上昇するが、50秒以降は温度変化がなく、オーバーエッチングである。上述した本発明に係る気相エッチング方法のフローの例では、温度変化が1200℃となったときにエッチングを終了するため、過不足なくエッチングできる。また、従来は約70秒間気相エッチングを行っていたため、気相エッチングの時間が20秒間短縮されることとなる。
【0044】
このように、本実施形態によれば、気相エッチング時にサセプタ温度測定用パイロメーター12でサセプタ表面温度を測定し、サセプタ温度が所定の値となった時をエッチングの終点とすることで、チャンバー1の透明石英部材4,4’上のウォールデポ上に付着するウォールデポを確実に除去することができる。また、チャンバー1内の部材上(サセプタ2の表面、透明石英部材4,4’の内壁、不透明石英部材5,5’の内壁)に生成されたウォールデポも除去されることとなる。
【0045】
本発明に係る気相エッチング方法では、従来よりも気相エッチング時間が短縮されるため、SiC部材へのエッチングによるダメージを低減し、生産性を向上することができる。
【0046】
また、上記した実施形態においては、サセプタ温度が所定の温度となったときにエッチングを終了する例を示したが、サセプタ温度が一定となるようにヒーター出力をフィードバック制御し、ヒーター出力が所定の値となった場合に前記サセプタ温度が前記基準温度となったとみなして気相エッチングを終了するようにしてもよい。
【0047】
次に、本発明のエピタキシャル基板の製造方法について説明する。
まず、前述のように本発明の気相エッチング方法によってクリーニングされたチャンバー1を有するエピタキシャル成長装置13を用いて、基板搬入用ロボット(図示せず)などにより、エピタキシャル成長装置13のチャンバー1に、基板としてシリコン単結晶のウェーハWを搬入し、サセプタ2上に載置する。
【0048】
その後、前述したエピタキシャル層製造フローと同様にして、加熱装置であるヒーター10,10’によりウェーハWを例えば1100℃に昇温しながら原料ガスをチャンバー内に導入し、前記ウェーハの表面上にエピタキシャル層を形成し、エピタキシャルウェーハを製造する。これにより、ウェーハWの主表面上にシリコンエピタキシャル層が形成され、シリコンエピタキシャルウェーハを製造することができる。
【符号の説明】
【0049】
1:チャンバー、2:サセプタ、3,3’:チャンバーベース、4,4’:透明石英部材、5,5’:不透明石英部材、6:サセプタ支持具、7:回転機構、8:気相成長ガス導入口、9:ガス排出口、10,10’:ヒーター、11:ウェーハ温度測定用パイロメーター、12:サセプタ温度測定用パイロメーター、13:気相成長装置、14:ウォールデポ、15:照射光、16:輻射光、16’:減衰された輻射光、W:ウェーハ。