特許第6525271号(P6525271)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6525271残餌量測定装置および残餌量測定用プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6525271
(24)【登録日】2019年5月17日
(45)【発行日】2019年6月5日
(54)【発明の名称】残餌量測定装置および残餌量測定用プログラム
(51)【国際特許分類】
   A01K 5/00 20060101AFI20190527BHJP
   G06T 1/00 20060101ALI20190527BHJP
【FI】
   A01K5/00 Z
   G06T1/00 300
【請求項の数】7
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-63282(P2016-63282)
(22)【出願日】2016年3月28日
(65)【公開番号】特開2017-175936(P2017-175936A)
(43)【公開日】2017年10月5日
【審査請求日】2018年9月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】501203344
【氏名又は名称】国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構
(74)【代理人】
【識別番号】100105784
【弁理士】
【氏名又は名称】橘 和之
(72)【発明者】
【氏名】冨田 宗樹
(72)【発明者】
【氏名】豊田 成章
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 三喜
【審査官】 竹中 靖典
(56)【参考文献】
【文献】 特表2016−514482(JP,A)
【文献】 特表2010−522663(JP,A)
【文献】 特開2008−275391(JP,A)
【文献】 特表2015−513070(JP,A)
【文献】 特開平08−201022(JP,A)
【文献】 特表2012−510278(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2016/0050888(US,A1)
【文献】 中国特許出願公開第104082169(CN,A)
【文献】 実開平04−126110(JP,U)
【文献】 特表2011−503609(JP,A)
【文献】 特開平03−041306(JP,A)
【文献】 特開2003−232621(JP,A)
【文献】 特開2001−289612(JP,A)
【文献】 特開2000−275083(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 5/00 − 9/00
A01K 39/00 − 39/06
G06T 1/00
G01B 11/00 − 11/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
家畜の飼槽面を座標軸平面に持つ第1の3次元座標系において、離散的に配置された複数の測定点を設定する測定点設定部と、
上記測定点設定部により設定された上記複数の測定点を、3次元カメラの光軸に垂直な面を座標軸平面に持つ第2の3次元座標系上の測定点に変換する測定点変換部と、
上記3次元カメラにより撮影した撮影画像を入力する撮影画像入力部と、
上記撮影画像入力部により入力された撮影画像から、上記測定点変換部により変換された測定点である変換後測定点における画像を抽出する画像抽出部と、
上記画像抽出部により抽出された複数の変換後測定点における画像に基づいて、上記飼槽上にある飼料の量を測定する飼料量測定部とを備えたことを特徴とする残餌量測定装置。
【請求項2】
上記測定点設定部は、飼料量の測定領域を設定し、当該測定領域を等間隔に分割して複数の小領域を設定し、上記複数の小領域における代表点をそれぞれ上記測定点として設定することを特徴とする請求項1に記載の残餌量測定装置。
【請求項3】
上記測定点設定部は、上記複数の小領域に対してそれぞれ設定する上記代表点の数を、上記小領域の場所によって異ならせるようにしたことを特徴とする請求項2に記載の残餌量測定装置。
【請求項4】
上記測定点設定部は、飼料量の測定領域を設定し、当該測定領域を不等間隔に分割して複数の小領域を設定し、上記複数の小領域における代表点をそれぞれ上記測定点として設定することを特徴とする請求項1に記載の残餌量測定装置。
【請求項5】
上記飼料量測定部は、上記3次元カメラによる上記撮影画像の一情報として得られる深度値に基づいて、上記変換後測定点における上記飼料の高さを求め、当該高さと所定面積とを乗ずることにより、当該変換後測定点における飼料の量を算出することを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の残餌量測定装置。
【請求項6】
上記飼料量測定部は、上記3次元カメラから上記変換後測定点までの距離から上記深度値を減算した値を上記飼料の高さとして求めることを特徴とする請求項5に記載の残餌量測定装置。
【請求項7】
家畜の飼槽面を座標軸平面に持つ第1の3次元座標系において、離散的に配置された複数の測定点を設定する測定点設定手段、
上記測定点設定手段により設定された上記複数の測定点を、上記3次元カメラの光軸に垂直な面を座標軸平面に持つ第2の3次元座標系上の測定点に変換する測定点変換手段、
上記3次元カメラにより撮影した撮影画像を入力する撮影画像入力手段、
上記撮影画像入力手段により入力された撮影画像から、上記測定点変換手段により変換された測定点である変換後測定点における画像を抽出する画像抽出手段、および
上記画像抽出手段により抽出された複数の変換後測定点における画像に基づいて、上記飼槽上にある飼料の量を測定する飼料量測定手段
としてコンピュータを機能させるための残餌量測定用プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、残餌量測定装置および残餌量測定用プログラムに関し、特に、撮影画像に基づいて、家畜の飼槽上に堆積した飼料の量を測定する装置に用いて好適なものである。
【背景技術】
【0002】
乳牛および肉牛の飼養においては、飼料価格および子牛の価格が上昇傾向にあることから、農家の経営状態が悪化しており、1頭および単位飼料量あたりの生産性の増大が求められている。そのための方法として、家畜の各個体がその時点で必要としている栄養量に応じた飼料を過不足なく給与することが必要とされ、そのための技術開発が行われている。
【0003】
例えば、飼槽上に給与した飼料量のうち、家畜が実際に摂取した飼料量から、その時点で必要としている栄養量を推定することが行われている。家畜が実際に摂取した飼料量は、摂取後に飼槽上に堆積した飼料の量、つまり残飼量を測定することによって推定することができる。そこで、個体別の残飼量を正確に測定する技術の開発が求められている。
【0004】
残飼量の測定に用いられている従来技術としては、各個体の飼槽上に重量計を設置する方法や、3次元カメラを用いて各個体の飼槽を撮影し、その撮影画像を解析して残飼量を測定する方法がある。しかしながら、重量計は設置に多大な経費を要するため、生産現場への適用は困難である。3次元カメラを用いる方法においても、カメラを多数用意して各個体の飼槽ごとに固定的に設置すると、多大な経費を要するため、生産現場への適用は困難である。
【0005】
これに対し、牛舎にレール等の移動機構を設けてカメラを移動させ、各飼槽位置で停止をしながら撮影する方法を採用すれば、カメラの設置台数を少なくすることが可能である。また、既存の自動給餌機のレールをカメラ移動機構として兼用すれば、設備投資の増大を抑制することが可能である。ただし、この場合、各個体の飼槽に対するカメラの停止位置を正確に制御することが必要である。
【0006】
また、牛舎においては、飼槽側に張り出したネックレールや牛の首の存在によって、真上から飼槽全体を撮影することは困難である。そのため、カメラを飼槽面に対して傾斜させた位置に設定する必要があることから、両者の位置関係を同定することも必要である。さらに、飼槽面に対して斜めの位置から撮影した画像では、同じ残飼量であっても、撮影画像内の写る位置によって画像上で占める被写体面積が異なるため、これを補正する手段を備える必要がある。
【0007】
従来、このような斜め撮影の被写体に対する測定誤差を低減するようにした技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。この特許文献1に記載の装置では、圃場を上空から撮影し、その撮影画像内から離散的に存在する作物部分の画像を抽出する。そして、抽出した画像を真上から見た状態に補正した上で、当該補正後の画像から作物の生育量を測定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2003−9664号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記特許文献1に記載の技術では、撮影画像内から作物部分の画像を選択的に抽出する処理や、抽出した画像を真上から見た状態に補正する処理を行ってから生育量を測定しているため、計算負荷が高くなってしまうという問題があった。
【0010】
本発明は、このような問題を解決するために成されたものであり、撮影画像に基づいて、家畜の飼槽上に堆積した飼料の量を少ない計算負荷で測定することができるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記した課題を解決するために、本発明では、家畜の飼槽面を座標軸平面に持つ第1の3次元座標系において、離散的に配置された複数の測定点を設定し、当該設定した複数の測定点を、飼槽の斜め上方に設置された3次元カメラの光軸に垂直な面を座標軸平面に持つ第2の3次元座標系上の測定点に変換する。そして、飼槽の斜め上方から3次元カメラにより撮影した撮影画像から、変換後の測定点における画像を抽出し、当該抽出した画像に基づいて、飼槽上にある飼料の量を測定するようにしている。
【発明の効果】
【0012】
上記のように構成した本発明によれば、飼槽の斜め上方から撮影した画像そのものに基づいて、離散的な複数の変換後測定点の画像部分のみを対象として飼料量が測定される。このため、本発明によれば、撮影画像内から飼料部分の画像を選択的に抽出する処理を行ってから当該抽出画像を補正する処理を行うことなく、あらかじめ定められた位置にある変換後測定点の画像のみから飼料量を適切に測定することができる。これにより、撮影画像に基づいて、家畜の飼槽上に堆積した飼料の量を少ない計算負荷で測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本実施形態による残餌量測定装置の機能構成例を示すブロック図である。
図2】カメラの配置例を示す図である。
図3】本実施形態の測定点設定部による測定点の設定例を示す図である。
図4】本実施形態の測定点変換部により変換が行われた後の測定点を示す図である。
図5】残餌高さの算出例を示す模式図である。
図6】本実施形態の測定点設定部による測定点の他の設定例を示す図である。
図7】本実施形態の測定点設定部による測定点の他の設定例を示す図である。
図8】本実施形態の測定点設定部による測定点の他の設定例を示す図である。
図9】残餌高さの他の算出例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本実施形態による残餌量測定装置100の機能構成例を示すブロック図である。図1に示すように、本実施形態の残餌量測定装置100は、その機能構成として、測定点設定部11、測定点変換部12、撮影画像入力部21、画像抽出部22および飼料量測定部23を備えて構成されている。
【0015】
また、残餌量測定装置100には、3次元カメラ200および入出力装置50が接続されている。本実施形態の残餌量測定装置100は、家畜(例えば、牛)に給与した飼料の食べ残しである残餌量を撮影画像から測定するものである。なお、入出力装置50は、残餌量測定装置100に対して取り外し可能に有線により接続してもよいし、無線により接続してもよい。あるいは、入出力装置50を残餌量測定装置100と一体に設けてもよい。
【0016】
図1に示す残餌量測定装置100の各機能ブロック11〜12,21〜23は、ハードウェア、DSP(Digital Signal Processor)、ソフトウェアの何れによっても構成することが可能である。例えばソフトウェアによって構成する場合、上記各機能ブロック11〜12,21〜23は、実際にはコンピュータのCPU、RAM、ROMなどを備えて構成され、RAMやROM、ハードディスクまたは半導体メモリ等の記録媒体に記憶されたプログラムが動作することによって実現される。
【0017】
入出力装置50は、残餌量の測定に関する各種のパラメータを設定したり、測定結果を表示したりするインターフェースである。具体的には、入出力装置50は、マウス、キーボード、タッチパネル等の入力デバイスと、ディスプレイ等の出力デバイスとを備えて構成される。
【0018】
3次元カメラ200は、画像のRGB値の他に、被写体までの奥行情報としての深度値を画素ごとに得ることが可能なカメラである。深度値とは、その画素が位置しかつ光軸中心と垂直な平面と焦点との間の距離である。この3次元カメラ200と残餌量測定装置100との間は、有線により接続してもよいし、無線により接続してもよい。
【0019】
図2は、3次元カメラ200の配置例を示す図である。図2の例では、繋ぎ飼い牛舎に設置された自動給餌機のレール211に懸架して走行可能な移動機構212を設け、その移動機構212に3次元カメラ200を取り付けている。通常、牛舎においては、牛床302から飼槽301側に張り出したネックレール303や、牛床302から飼槽301側に出てくる牛の首の存在によって、飼槽301の全体を真上から撮影することは困難である。そのため、3次元カメラ200は、飼槽301を斜め上方から撮影することになる。
【0020】
図2に示す例では、3次元カメラ200が移動機構212に取り付けられ、残餌量測定装置100(図2中には図示せず)は3次元カメラ200と無線で接続される。なお、3次元カメラ200と残餌量測定装置100との間を有線により接続する場合は、残餌量測定装置100も移動機構212に取り付けられる。そして、入出力装置50が残餌量測定装置100に対して無線で接続される。
【0021】
測定点設定部11は、家畜の飼槽301がある面を座標軸平面(例えば、XY平面)に持つ第1の3次元座標系において、飼槽301の上方における仮想視点からみて均等に配置された離散的な複数の測定点を設定する。第1の3次元座標系は、例えば、飼槽面上の所定の点(例えば、飼槽301の中心点)を原点とし、矩形形状をした飼槽301の一辺の方向をX軸、他辺の方向をY軸、高さ方向をZ軸とする座標系である。また、仮想視点は、XY平面上の飼槽301の中心点から真上で所定距離の位置にあるものとする。
【0022】
測定点設定部11による測定点の設定は、入出力装置50に対するユーザ操作を通じて行う。例えば、入出力装置50のディスプレイに所定の設定画面を表示し、当該設定画面において入力デバイスを操作することにより、複数の測定点を設定する。測定点の設定方法は任意であるが、一例として、測定点設定部11は、矩形領域を等間隔の格子状に分割して複数の小領域を設定し、複数の小領域における代表点をそれぞれ測定点として設定する。ここで、代表点の設定方法は任意であるが、一例として、格子の各交点を測定点として用いることが可能である。あるいは、小領域の中心点を代表点とするようにしてもよい。
【0023】
図3は、測定点設定部11による測定点の設定例を示す図である。本実施形態では、残餌の測定対象とする測定領域301Pを設定するとともに、当該測定領域301P内に複数の離散的な測定点30を均等に設定する。図3の例では、飼槽301を真上から見下ろした状態で矩形となる測定領域301Pを設定するとともに、当該測定領域301Pの縦横を均等に分割し、格子の各交点位置を測定点30としている。なお、測定領域301Pは、飼槽301と同形同大となるように設定するのが好ましいが、飼槽301内の特定の領域だけを測定領域301Pとして設定するようにしてもよい。
【0024】
図2のように、飼槽301を斜め上から撮影した場合、飼槽301は3次元カメラ200に近い手前側ほど大きく写り、3次元カメラ200から遠い奥側ほど小さく写る。そのため、3次元カメラ200から得られた画像の飼槽301部分の全体を用いて残飼量を測定すると、奥側の残餌量に比べて手前側の残餌量が大きく反映されてしまうため、測定誤差が大きくなるおそれがある。これに対し、図3のように測定点30を均等に配置し、各測定点30上の残餌の高さを測定して残餌量を求めるようにすることで、そのような測定誤差を回避することが可能である。
【0025】
測定領域301Pの設定は、例えば、マウスのドラッグ操作あるいはタッチパネルへのタッチ操作により行うことが可能である。あるいは、測定領域301Pの大きさや位置(座標)などの値をキーボード操作により入力することによって行うようにしてもよい。また、測定点30の設定は、例えば、縦横の分割数を入力することによって行うことが可能である。なお、ここに示した設定方法は一例であって、これに限定されるものではない。
【0026】
なお、測定領域301Pおよび測定点30を設定する際に、飼料の給与されていない飼槽301をあらかじめ撮影した画像をディスプレイの設定画面上に表示し、測定領域301Pや測定点30をその画像に重ねて表示するのが好ましい。設定の妥当性が容易に確認できるからである。ここで表示する画像は、例えば、飼槽301を真上の仮想視点の位置からカメラ(3次元カメラ200でもそれ以外のカメラでもよい)により撮影した画像であってもよいし、図2のようにレール211に設置された3次元カメラ200により飼槽301を斜め上方から撮影した画像であってもよい。あるいは、当該斜め上方から撮影した画像を真上から見たのと同じ状態となるように平面視に画像変換したものであってもよい。なお、この場合の画像変換の内容については後述する。
【0027】
上記3タイプの画像のうち、飼槽301を真上から撮影した画像、または、飼槽301を斜め上方から撮影した画像を平面視に画像変換した画像の何れかをディスプレイの設定画面上に表示させるのがより好ましい。設定画面上に表示された飼槽301の画像部分に合わせて測定領域301Pを設定することが容易にできるからである。なお、飼槽301を斜め上方から撮影した画像を設定画面上に表示させる場合、図3のように設定した測定領域301Pの画像を、真上から見た状態から斜め上方から見た状態に画像変換(上述の画像変換の逆変換)し、これを飼槽301の画像に重ねて表示させるようにしてもよい。このようにすれば、測定領域301Pの設定の妥当性をより容易に確認することができる。
【0028】
測定点変換部12は、飼槽301の斜め上方に設置された3次元カメラ200の位置および姿勢、仮想視点の位置、並びに飼槽301の位置の相関から求められた変換情報に基づいて、測定点設定部11により設定された複数の測定点30を、第2の3次元座標系上の測定点に変換する。第2の3次元座標系は、3次元カメラ200の光軸に垂直な面を座標軸平面に持ち、3次元カメラ200の光軸中心との交点を原点とする座標系である。すなわち、第2の3次元座標系は、3次元カメラ200と飼槽301の中心点とを結ぶ光軸に垂直な平面上の所定の点(例えば、光軸上の点)を原点とし、当該平面に平行な2軸をX’軸およびY’軸とし、光軸方向をZ’軸とする座標系である。
【0029】
なお、変換情報は、公知のキャリブレーション処理によってあらかじめ求めておくことが可能である。この変換情報は、測定点30に関するものだけでなく、画像の全画素に関するものである。測定点設定部11によってどの画素が測定点30に設定されるかは任意だからである。測定点変換部12は、この変換情報を記憶している。測定点変換部12は、このあらかじめ記憶しておいた変換情報に基づいて、第1の3次元座標系において測定点設定部11により設定された複数の測定点30を第2の3次元座標系の測定点に座標変換する。
【0030】
なお、斜め上方から飼槽301を撮影した画像を真上から平面視した画像に変える上述の画像変換は、この変換情報に基づく座標変換の逆変換に相当するものである(ただし、画像の全画素について変換する点で、測定点変換部12が測定点30だけを座標変換するのとは異なる)。
【0031】
図4は、図3のように設定した測定領域301Pおよび測定点30が、測定点変換部12により変換を受けた結果の例を示す図である。図4に示すように、測定点変換部12により、測定領域301Pは、撮影画像の手前側から奥側に向けて左右の間隔が狭くなる台形状(手前側が長辺で奥側が短辺となる台形状)の測定領域401Pに変換される。
【0032】
また、図3において測定点30を水平に繋ぐ水平線(図において横方向に示す線)と、測定点30を垂直に繋ぐ垂直線(図において縦方向に示す線)は、図4においては水平線の間隔が奥側に向かうに従って狭くなり、垂直線の間隔が奥側に向かうに従って狭くなるように変換される。また、それに伴って、変換後の測定点40も、手前側から奥側に向けて間隔が狭くなる。
【0033】
なお、図4では、3次元カメラ200が飼槽301の左右方向中央に位置した場合の変換例を示しているが、これに限られるものではない。3次元カメラ200と同様にレール211を走行する自動給餌機との関係などで、3次元カメラ200を飼槽301の左右方向中央に停止できない場合は、3次元カメラ200の停止位置に応じて変換情報を設定すればよい。この場合は、変換後の水平線も、垂直線と同様に互いに平行ではなくなる。
【0034】
撮影画像入力部21は、家畜の飼槽301上を斜め上方から3次元カメラ200により撮影した撮影画像を入力する。残餌量測定装置100と3次元カメラ200との間を無線により接続する場合は、残餌量測定装置100および3次元カメラ200の双方に無線通信手段を設け、3次元カメラ200で撮影した画像を残餌量測定装置100に無線送信し、これを撮影画像入力部21が入力する。なお、3次元カメラ200で撮影した画像を3次元カメラ200内のリムーバル記憶媒体に記録し、当該リムーバル記憶媒体を残餌量測定装置100に接続することにより、撮影画像入力部21がリムーバル記憶媒体から撮影画像を入力するようにしてもよい。
【0035】
画像抽出部22は、撮影画像入力部21により入力された撮影画像から、測定点変換部12により変換された測定点(以下、変換後測定点40という)における画像を抽出する。
【0036】
飼料量測定部23は、画像抽出部22により抽出された複数の変換後測定点40における画像に基づいて、飼槽301上にある飼料の量を測定する。例えば、飼料量測定部23は、3次元カメラ200による撮影画像の一情報として得られる深度値に基づいて、変換後測定点40における飼料の高さを求め、当該高さと所定面積とを乗ずることにより、当該変換後測定点40における飼料の量を算出する。そして、飼料量測定部23は、複数の変換後測定点40において上述のように算出した飼料量を合計することにより、飼槽301上の残餌量を測定する。
【0037】
一例として、飼料量測定部23は、3次元カメラ200から変換後測定点40までの距離から深度値を減算した値を飼料の高さとして求める。図5は、これを示すための模式図である。図5に示すように、飼槽301には残餌Fが堆積している。この飼槽301の斜め上方に設置された3次元カメラ200が、当該飼槽301の3次元画像を撮影する。なお、図5には、変換後測定点40の位置が飼槽301上に示されている。
【0038】
ここで、ある変換後測定点40の上に堆積している残餌Fの高さを求める方法を説明する。変換後測定点40と3次元カメラ200とを結ぶ直線をLとすると、直線Lの長さdは、3次元カメラ200と変換後測定点40との位置関係から幾何学的計算で得ることができる。また、直線Lが残餌Fの表面を通過する位置を残餌点Uとし、変換後測定点40と残餌点Uとの間の距離をh’とする。
【0039】
3次元カメラ200が撮影した3次元画像データにより得られる深度値は、3次元カメラ200と残餌点Uとの距離を表すものであるから、変換後測定点40における3次元画像データを読み取れば、3次元カメラ200と残餌点Uとの間の距離(深度値)sが求まる。従って、距離h’は、
h’=d−s
となる。
【0040】
変換後測定点40における残餌Fの本来の高さはhであるが、本実施形態では、距離h’を残餌高さhとみなしている。本来の高さhと距離h’との差は十分に小さいといえるからである。すなわち、図5では説明の便宜上、隣接する変換後測定点40間のピッチを大きく図示しているが、実際には変換後測定領域401Pを縦横に数百分割した交点に変換後測定点40が設定されるため、変換後測定点40間の間隔は短い。そして、本実施形態において測定対象とする残飼Fの形状は、短区間で急速に変化するものではなく、かつ高さhは直線Lの長さdに比べて十分小さいため、本来の高さhと距離h’との差は十分に小さくなる。
【0041】
飼料量測定部23は、以上のように算出した変換後測定点40における残餌高さh’(≒h)と所定面積Sとを乗ずることにより、変換後測定点40における残餌量を算出(測定)する。ここで、所定面積Sは、例えば、変換後測定点40の前後左右に隣接する4つの変換後測定点40どうしの中間位置間の距離から求めることが可能である。
【0042】
飼料量測定部23は、変換後測定領域401P内の全ての変換後測定点40における残餌高さh’を算出し、所定面積Sと掛け合わせることにより、飼槽301全体での残餌量を測定する。このようにして求められた残餌量は、データとして飼料量測定部23に保管されてもよいし、入出力装置50に送られて表示あるいは保管されてもよい。更には、入出力装置50からデータ記録媒体に取り出せるようにしてもよい。
【0043】
また、飼槽301に所定量(あらかじめ測定した量)の飼料を給与し、その一定時間後に、飼槽301上に残っている飼料の量を飼料量測定部23により測定することにより、家畜が実際に摂取した飼料量を算出し、その時点で必要としている栄養量を推定することが可能である。この摂取量を残餌量に代えて、あるいは残餌量とともに飼料量測定部23および/または入出力装置50に保管するようにしても良い。
【0044】
このようにして3次元カメラ200による飼槽301の残餌の撮影が終了、あるいはそれに続く残餌量および/または摂取量の測定が終了すると、自動給餌機のレール211を移動機構212が走行し、次の牛床302に移動して3次元カメラ200が飼槽301を撮影する。この際、飼槽301の形態に変化がなければ、既に設定した変換後測定点40をそのまま用いても良い。一方、飼槽301が横に広いなどで測定領域301Pを変更する必要があるときは、測定点30の再設定が必要となる。
【0045】
なお、個々の飼槽301に合わせて測定点設定部11により測定点30をあらかじめ設定し、さらに測定点変換部12により変換後測定点40を算出して、その結果をデータとして残飼料測定装置100に保管しておき、測定する飼槽301に合わせて該当する変換後測定点40のデータを呼び出して残飼料を測定するようにしてもよい。
【0046】
以上詳しく説明したように、本実施形態では、真上から見た状態の飼槽301上にあらかじめ設定した測定領域301P内に設けた離散的な測定点30を、飼槽301の斜め上方に設置した3次元カメラ200から得られる撮影画像上の対応する位置の測定点40に変換するとともに、飼槽301を斜め上方から3次元カメラ200により撮影した画像から変換後測定点40に対応する位置の画像を抽出して飼槽301上にある残餌量を測定するようにしている。
【0047】
このように構成した本実施形態によれば、飼槽301の斜め上方から撮影した画像そのものに基づいて、離散的な複数の測定点30を基にして変換された変換後測定点40の画像部分のみを対象として飼料量が測定される。このため、撮影画像内から飼料部分の画像を選択的に抽出する処理を行ってから当該抽出画像を補正する処理を行うことなく、あらかじめ定められた位置にある変換後測定点40の画像のみから飼料量を測定することができる。これにより、撮影画像に基づいて、飼槽301上に堆積した飼料の量を少ない計算負荷で測定することができる。
【0048】
特に、飼料量の測定に用いる変換後測定点40は、測定領域301P内に偏りを生じることなく均等に配置した測定点30から座標変換されたものであるため、飼槽301上の特定の領域における飼料量が他の領域の飼料量より大きく反映されてしまうことを防ぐことができる。これにより、飼槽301の全体に分布する飼料の量を正確に測定することができる。
【0049】
すなわち、図2に示したように、3次元カメラ200が飼槽301の斜め上方から残餌を撮影することになることから、撮影画像上では手間側の方が面積は大きくなり(残餌が大きく写り込むことになり)、奥側の方が面積は小さくなる(残餌が小さく写り込むことになる)。このため、離散的な測定点30を設定することなく、撮影画像の全画素から残餌量を測定すると、手前側の小領域ほど残餌量が過大に算出されてしまう。本実施形態によれば、このような不都合を生じることなく、画像の手前側から奥側まで均等な密度で得た変換後測定点40の画像から残餌量を正確に測定することができる。
【0050】
なお、上記実施形態では、測定領域301Pを飼槽301の形状に合わせて矩形とする例について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、家畜の栄養摂取量や健康状態などを評価する上においてより重要となる領域について測定点の設定数が多くなるような形状としてもよい。例えば、図6に示すように、測定領域301P’を、牛床302側を底辺、3次元カメラ200に近い側を頂点とする三角形状としてもよい。このようにすることにより、家畜を適正に管理しつつ、計算量やデータ量を減らすことができる。
【0051】
また、別の例として、残餌量を精度良く把握するために、測定領域301Pの中で残餌の形態のばらつきが大きい牛床302に近い部分に配置する測定点30の数を増やしてもよい。すなわち、測定点設定部11は、複数の小領域に対してそれぞれ設定する代表点(測定点30)の数を、小領域の場所によって異ならせるようにしてもよい。あるいは、測定点設定部11は、測定領域301Pを不等間隔の格子状に分割して複数の小領域を設定し、複数の小領域における代表点をそれぞれ測定点30として設定するようにしてもよい。
【0052】
図7および図8は、このような測定点30の設定例を示す図である。図7の例では、図3と同様に水平垂直方向に均等に設けられた格子点上に測定点30を設けたうえ、牛床302に近い位置(撮影画像の奥側にある1〜数行の小領域)では、格子点で区切られた小領域の中央部にも更に測定点30を設けている。
【0053】
また、図8の例では、図3と同様に水平垂直方向に均等に設けられた格子点に加え、牛床302に近い位置(撮影画像の奥側にある1〜数行の小領域)では、水平垂直方向に更に細かいピッチの水平線および垂直線を加え、その格子点も更に測定点30として設定している。このように、牛床302に近い位置において測定点30の数を多くすることにより、重要視する部分の測定精度を向上させることができる。
【0054】
また、上記実施形態では、変換後測定点40と残餌点Uとの間の距離h’(3次元カメラ200から変換後測定点40までの距離dから深度値sを減算した値)を残餌高さhとみなす例について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、飼料量測定部23は、図9に示すように、距離h’に対して、測定点変換部12が保有する変換情報により示される変換の逆変換を行うことによって距離h”を求め、これを残餌高さhとみなすようにしてもよい。
【0055】
あるいは、残餌高さhを演算によって求めるようにしても良い。例えば、変換後測定点40の座標を(Xo,Yo,0)、残餌点Uの座標を(Xg,Yg,Zg)とした場合、変換後測定点40を点40’(Xo,Yo,Zg)に投影して、当該投影点40’(Xo,Yo,Zg)において上述の逆変換と同様の計算を行うことで、残餌点Uに対する投影点U’(Xg’,Yg’,Zg’)を求めることができる。このような計算を、|Xo-Xg’|+|Yo-Yg’|の値が一定の閾値内になるまで繰り返すことで、投影点U’の高さを求めることが可能であり、これを高さhとすることが可能である。
【0056】
高さhのその他の算出方法として、次の方法を用いることも可能である。すなわち、残餌点UとX軸方向で隣接する別の残餌点Vの座標(Xf,Yf,Zf)から、δZx=(Xg-Xo)/(Xg-Xf)×(Zg-Zf)なる計算を行い、Y軸方向で隣接する別の残餌点についても同様の計算を行って、得られる2つの座標値の補間によって高さhを推定することも可能である。
【0057】
なお、上述したように、距離h’は本来の高さhとの誤差が十分に小さいといえるため、距離h”を算出したり、高さhを算出したりすることは必須ではない。むしろ、残餌量をより少ない計算負荷で測定するという本発明の目的からすれば、距離h’を本来の高さhとみなす実施形態が好ましいといえる。
【0058】
また、上記実施形態では、平面状の飼槽301を残餌量の測定対象とする場合について説明したが、本発明はこれに限られない。例えば、くぼみ型あるいは箱型の飼槽であっても、それらの寸法を残餌量測定装置100のパラメータに設定し、それを残餌量測定に反映させればよい。
【0059】
その他、上記実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその要旨、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【符号の説明】
【0060】
11 測定点設定部
12 測定点変換部
21 撮像画像入力部
22 画像抽出部
23 飼料量測定部
50 入出力装置
100 残餌量測定装置
200 3次元カメラ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9