特許第6526711号(P6526711)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許65267112−アルキル−4,4−ジメチル−1,3−ジオキサンを含有する出発物質からの2−置換4−ヒドロキシ−4−メチル−テトラヒドロピランの製造
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6526711
(24)【登録日】2019年5月17日
(45)【発行日】2019年6月5日
(54)【発明の名称】2−アルキル−4,4−ジメチル−1,3−ジオキサンを含有する出発物質からの2−置換4−ヒドロキシ−4−メチル−テトラヒドロピランの製造
(51)【国際特許分類】
   C07D 309/10 20060101AFI20190527BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20190527BHJP
   C07D 309/04 20060101ALN20190527BHJP
   C07D 309/06 20060101ALN20190527BHJP
   C07D 309/18 20060101ALN20190527BHJP
【FI】
   C07D309/10
   !C07B61/00 300
   !C07D309/04
   !C07D309/06
   !C07D309/18
【請求項の数】13
【全頁数】36
(21)【出願番号】特願2016-562220(P2016-562220)
(86)(22)【出願日】2015年4月8日
(65)【公表番号】特表2017-513846(P2017-513846A)
(43)【公表日】2017年6月1日
(86)【国際出願番号】EP2015057582
(87)【国際公開番号】WO2015158585
(87)【国際公開日】20151022
【審査請求日】2018年4月6日
(31)【優先権主張番号】14164581.2
(32)【優先日】2014年4月14日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
(74)【代理人】
【識別番号】100091096
【弁理士】
【氏名又は名称】平木 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100118773
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 節
(74)【代理人】
【識別番号】100122389
【弁理士】
【氏名又は名称】新井 栄一
(74)【代理人】
【識別番号】100111741
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 夏夫
(74)【代理人】
【識別番号】100169971
【弁理士】
【氏名又は名称】菊田 尚子
(74)【代理人】
【識別番号】100180862
【弁理士】
【氏名又は名称】花井 秀俊
(72)【発明者】
【氏名】シュトルク,ティモン
(72)【発明者】
【氏名】リューデナウアー,シュテファン
【審査官】 早川 裕之
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−166891(JP,A)
【文献】 特開2006−045111(JP,A)
【文献】 特表2013−530167(JP,A)
【文献】 特表2012−527419(JP,A)
【文献】 ソ連国特許発明第00573483(SU,A)
【文献】 国際公開第2015/158586(WO,A1)
【文献】 国際公開第2015/158584(WO,A1)
【文献】 国際公開第2014/060345(WO,A1)
【文献】 ROMANOV N A; KANTOR E A; BRUDNIK I M; ET AL,ISOMERIZATION OF 2-R-4,4-DIMETHYL- AND 2-R-4-METHYL-4-PHENYL-1,3-DIOXANES TO 以下備考,JOURNAL OF APPLIED CHEMISTRY OF USSR,米国,1983年 1月 1日,PAGE(S):2526 - 2528,2-R-4-METHYL- AND 2-R-4-PHENYLTETRAHYDROPYRAN-4-OLS
【文献】 Chemistry of Heterocyclic Compounds,1982年,18,1240−1242
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 309/04〜18
C07B 61/00
CAplus/REGISTRY(STN)
CASREACT(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)
【化1】
(式中、R1は、直鎖又は分枝C1〜C12アルキル、直鎖又は分枝C2〜C12アルケニル、合計3〜20個の炭素原子を有する、非置換の又はC1〜C12アルキル及び/若しくはC1〜C12アルコキシ置換されているシクロアルキル、或いは合計6〜20個の炭素原子を有する、非置換の又はC1〜C12アルキル及び/若しくはC1〜C12アルコキシ置換されているアリールである)
の2-置換4-ヒドロキシ-4-メチルテトラヒドロピランの製造方法であって、
a) 少なくとも1種の一般式(II)
【化2】
(式中、R1は上記の通りである)
のジオキサン化合物を含み、
式(III.1)、(III.2)又は(III.3)
【化3】
(式中、R1は上記の通りである)
のうちの少なくとも1種の化合物を追加で含む出発物質を準備し、
b) 出発物質を、強酸及び/又は酸性イオン交換体の存在下で反応にかけ、出発物質と比べて、式(II)のジオキサン化合物が欠乏し、式(I)の化合物に富んだ生成混合物を得、
c) 工程b)で得た生成混合物を分離にかけて、式(I)の化合物に富んだ画分を得る、
方法。
【請求項2】
工程a)で出発物質を準備するために、
a1) 式(IV)
【化4】
の3-メチルブタ-3-エン-1-オールを、酸触媒の存在下で、式(V)
R1-CHO (V)
(式中、R1は、直鎖又は分枝C1〜C12アルキル、直鎖又は分枝C2〜C12アルケニル、合計3〜20個の炭素原子を有する、非置換の又はC1〜C12アルキル及び/若しくはC1〜C12アルコキシ置換されているシクロアルキル、或いは合計6〜20個の炭素原子を有する、非置換の又はC1〜C12アルキル及び/若しくはC1〜C12アルコキシ置換されているアリールである)
のアルデヒドと反応させて、少なくとも1種の一般式(I)の2-置換4-ヒドロキシ-4-メチルテトラヒドロピラン、少なくとも1種のジオキサン化合物(II)及び少なくとも1種の化合物(III.1)、(III.2)又は(III.3)
【化5】
(式中、R1は上記の通りである)
を含む反応混合物を得、
a2) 工程a1)からの反応混合物を分離にかけて、少なくとも1つの一般式(I)の2-置換4-ヒドロキシ-4-メチルテトラヒドロピランに富んだ画分(F-I.a2)及びジオキサン化合物(II)及び少なくとも1種の化合物(III.1)、(III.2)又は(III.3)を含む画分を得、後者の画分を工程b)における反応の出発物質として使用する、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
a1) 式(IV)
【化6】
の3-メチルブタ-3-エン-1-オールを、酸触媒の存在下で、式(V)
R1-CHO (V)
(式中、R1は、直鎖又は分枝C1〜C12アルキル、直鎖又は分枝C2〜C12アルケニル、合計3〜20個の炭素原子を有する、非置換の又はC1〜C12アルキル及び/若しくはC1〜C12アルコキシ置換されているシクロアルキル、或いは合計6〜20個の炭素原子を有する、非置換の又はC1〜C12アルキル及び/若しくはC1〜C12アルコキシ置換されているアリールである)
のアルデヒドと反応させて、一般式(I)の少なくとも1種の2-置換4-ヒドロキシ-4-メチルテトラヒドロピラン、少なくとも1種のジオキサン化合物(II)及び少なくとも1種の化合物(III.1)、(III.2)又は(III.3)
【化7】
(式中、R1は上記の通りである)
を含む反応混合物を得、
a2) 工程a1)からの反応混合物を分離にかけて、少なくとも1つの一般式(I)の2-置換4-ヒドロキシ-4-メチルテトラヒドロピランに富んだ画分(F-I.a2)及びジオキサン化合物(II)及び少なくとも1種の化合物(III.1)、(III.2)又は(III.3)を含む画分を得、
b) ジオキサン化合物(II)及び少なくとも1種の化合物(III.1)、(III.2)又は(III.3)を含む、工程a2)で得た画分を出発物質として、強酸及び/又は酸性イオン交換体の存在下で反応にかけ、出発物質と比べて、式(II)のジオキサン化合物が欠乏し、式(I)の化合物及び少なくとも1種の式(III.1)、(III.2)又は(III.3)の化合物に富んだ生成混合物を得、
c) 工程b)で得た生成混合物を分離にかけ、式(I)の化合物に富んだ画分(F-I.c)及び少なくとも1種の式(III.1)、(III.2)又は(III.3)の化合物に富んだ画分を得る、
請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
工程c)で得た式(I)の化合物に富んだ画分(F-I.c)が、工程a2)における分離に供給される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
蒸留塔の配置が工程a2)の蒸留分離のために用いられ、配置が上流従来型蒸留塔及び下流隔壁塔又は下流側の熱的結合により相互接続された2つの従来型蒸留塔を備え、
a21) 工程a1)からの反応混合物を先ず、従来型蒸留塔中で分離にかけ、ジオキサン化合物(II)並びに化合物(III.1)、(III.2)及び(III.3)に富み、一般式(I)の化合物を本質的に一切含まない第1の上部生成物を得、また化合物(III.1)、(III.2)及び(III.3)並びにジオキサン化合物(II)が欠乏し、大部分の一般式(I)の化合物を含む第1の底部生成物を得、
a22) 工程a21)からの第1の底部生成物を、隔壁塔中又は熱的結合により相互接続された2つの従来型蒸留塔中で分離にかけ、第1の上部生成物中に存在しない化合物(III.1)、(III.2)、(III.3)及び(II)並びに場合により少量の一般式(I)の化合物も含む第2の上部生成物を得、一般式(I)の化合物を本質的に含有する副流を得、上部生成物中に存在せず、副流中にもない一般式(I)の化合物を含む第2の底部生成物を得、
第1の上部生成物及び/又は第2の上部生成物を、工程b)の出発物質として使用する、
請求項3又は4に記載の方法。
【請求項6】
少なくとも1種の化合物(III.1)、(III.2)又は(III.3)に富んだ、工程c)で得た画分を水素化(すなわち、工程d))にかけ、少なくとも1種の一般式(VI)
【化8】
(式中、R1は、直鎖又は分枝C1〜C12アルキル、直鎖又は分枝C2〜C12アルケニル、合計3〜20個の炭素原子を有する、非置換の又はC1〜C12アルキル及び/若しくはC1〜C12アルコキシ置換されているシクロアルキル、或いは合計6〜20個の炭素原子を有する、非置換の又はC1〜C12アルキル及び/若しくはC1〜C12アルコキシ置換されているアリールである)
の2-置換4-メチルテトラヒドロピランを含む水素化生成物を得る、請求項3から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
残基R1がイソブチル又はフェニルである、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
工程a1)及び/又は工程b)における反応が、塩酸、硫酸、メタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸及び強酸性陽イオン交換体から選択される酸触媒の存在下で行われる、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
工程a1)及び/又は工程b)における反応が、強酸性陽イオン交換体の存在下で実施される、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
工程d)における水素化が、金属、金属酸化物、金属化合物及びこれらの混合物から選択される、少なくとも1種の金属成分を含む均一系及び不均一系触媒から選択される水素化触媒の存在下で行われる、請求項6から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
少なくとも1種の金属成分が、炭素担持パラジウム、炭素担持白金、ラネーニッケル及びラネーコバルトから選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
工程d)で得た水素化生成物を蒸留分離(すなわち、工程e))にかける、請求項6から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
2-(2-メチルプロピル)-4-ヒドロキシ-4-メチルテトラヒドロピラン(I)を製造するための請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1種の2-アルキル-4,4-ジメチル-1,3-ジオキサンを含む出発物質から2-置換4-ヒドロキシ-4-メチルテトラヒドロピランを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
2-置換4-ヒドロキシ-4-メチルテトラヒドロピランは、香料として使用するのに有益な化合物である。したがって、例えば、2-(2-メチルプロピル)-4-ヒドロキシ-4-メチルテトラヒドロピランのシス/トランスジアステレオマー混合物は、スズランの心地良い香りを特徴とし、例えばフレグランス組成物を製造するための香料としての使用に特に適している。
【0003】
【化1】
【0004】
EP 1 493 737 A1は、対応するアルデヒドをイソプレノールと反応させることによってエチレン性不飽和4-メチル-又は4-メチレンピラン及び対応する4-ヒドロキシピランの混合物を製造する方法であって、アルデヒドとイソプレノールのモル比が1超である、すなわちアルデヒドを過度に使用する反応系において反応を開始する、方法を開示している。更に、この文献は、後続して前述の混合物を脱水して所望のエチレン性不飽和ピランを得る方法を開示している。
【0005】
WO 2011/147919は、イソプレノールをプレナールと反応させ、後続して水素化することによって、2-置換4-ヒドロキシ-4-メチルテトラヒドロピラノール、具体的には2-イソブチル-4-ヒドロキシ-4-メチルテトラヒドロピランを製造する方法を記載している。
【0006】
WO 2010/133473は、式(A)
【化2】
(式中、残基R1は、1〜12個の炭素原子を有する直鎖若しくは分枝アルキル残基若しくはアルケニル残基、場合によりアルキル置換されている合計3〜12個の炭素原子を有するシクロアルキル残基、又は場合によりアルキル及び/若しくはアルコキシ置換されている合計6〜12個の炭素原子を有するアリール残基である)
の2-置換4-ヒドロキシ-4-メチルテトラヒドロピランを製造する方法であって、イソプレノール(3-メチルブタ-3-エン-1-オール)を式R1-CHOのアルデヒドと反応させ、反応を、水の存在下且つ強酸性陽イオン交換体の存在下で実施する、方法を記載している。
【0007】
WO 2011/154330は、得られた反応混合物を、隔壁塔中で又は2つの熱的に結合した蒸留塔中で蒸留による後処理にかける、WO 2010/133473と同様の方法を記載している。
【0008】
WO 2010/133473及びWO 2011/154330に記載の通り、イソプレノール(3-メチルブタ-3-エン-1-オール)と式R1-CHOのアルデヒドとの酸触媒反応から複合反応混合物が得られるが、これは、2-置換4-ヒドロキシ-4-メチルテトラヒドロピランに加え、式(D)、(E)及び/又は(F)
【化3】
の脱水副生成物も含み、また、更なる副生成物、とりわけ1,3-ジオキサン(G)
【化4】
も含む。
【0009】
これらの副生成物は、現在まで、更に価値のある材料を提供するために使用することができず、廃棄するか、又は過剰で使用する出発化合物と一緒にイソプレノールとアルデヒドとの反応に戻し入れていた。後者の戻し入れは、反応混合物中にこれらの成分が蓄積する可能性があるので問題となる。
【0010】
未刊の国際特許出願PCT/EP2013/071409は、一般式(A)の2-置換4-ヒドロキシ-4-メチルテトラヒドロピラン及び一般式(B)の2-置換4-メチル-テトラヒドロピラン
【化5】
(式中、
R1は、直鎖又は分枝C1〜C12アルキル、直鎖又は分枝C2〜C12アルケニル、合計3〜20個の炭素原子を有する非置換の又はC1〜C12アルキル及び/若しくはC1〜C12アルコキシ置換されているシクロアルキル、或いは合計6〜20個の炭素原子を有する非置換の又はC1〜C12アルキル及び/若しくはC1〜C12アルコキシ置換されているアリールである)
を製造する方法であって、
a) 3-メチルブタ-3-エン-1-オールを、酸触媒の存在下で、式R1-CHO(式中のR1は上記の通りである)のアルデヒドと反応させ、少なくとも1種の一般式(A)の2-置換4-ヒドロキシ-4-メチルテトラヒドロピラン、少なくとも1種の化合物(D)、(E)又は(F)及び少なくとも1種のジオキサン化合物(G)
【化6】
(式中、R1は上記の通りである)
を含む反応混合物を得、
b) 工程a)の反応生成物を分離にかけ、一般式(A)の2-置換4-ヒドロキシ-4-メチルテトラヒドロピランに富んだ画分並びに少なくとも1種の化合物(D)、(E)又は(F)及び少なくとも1種のジオキサン化合物(G)を含む画分を得、
c) 少なくとも1種の化合物(D)、(E)又は(F)及び少なくとも1種のジオキサン化合物(G)を含む画分を水素化にかけ、
d) 2-置換4-メチルテトラヒドロピラン(B)に富んだ画分及び少なくとも1種のジオキサン化合物(G)に富んだ画分を工程c)で得た水素化生成物から単離する、
方法を記載している。
【0011】
容易に入手可能な出発物質から2-置換4-ヒドロキシ-4-メチルテトラヒドロピランを製造する効果的な方法に対する必要性は依然として高い。純粋物質の合成に加え、現在に至るまで使用できなかった4-ヒドロキシ-4-メチルテトラヒドロピランの合成又は他の合成法からの副生成物の使用も本明細書において特に対象とする。これは、例えば、基礎反応から開始する、少なくとも2種の芳香剤又は香味料の統合された製造も含む。
【0012】
更に重要な芳香剤及び香味料の部類は、アルキル置換4-メチルテトラヒドロピランである。この部類の既知の代表例は、2-(2-メチルプロピル)-4-メチルテトラヒドロ-2H-ピランであり、ジヒドロローズオキシドとも呼ばれる。
【0013】
ジヒドロローズオキシドの第1の合成は、M. Julia及びB. JacquetによりBulletin de la Societe Chimique de France 1963、8〜9、1983中に記載された。
【0014】
Liuらは、J. Heterocyclic Chem、21、129〜132(1984)の中で、酢酸中PtO2を用いた2-イソブチル-4-メチル-5,6-ジヒドロ-4H-ピランの水素化によるシス-ジヒドロローズオキシドの製造を記載している。
【0015】
Schindler及びVogelは、Perfume & Flavorist、11巻, 29〜30(1986)の中で、3-メチルブタ-3-エン-1-オール及び出発物質3-メチルブタナールからのジヒドロローズオキシドの製造であって、シス/トランス混合物が70:30の比率で得られる、製造を概略的に記載している。
【0016】
EP 0 770 670 B1は、2-置換(4R)-シス-4-メチルテトラヒドロ-2H-ピランを含む香水組成物を記載している。この出願には、ローズオキシド及びジヒドロローズオキシドの異性体の匂い特性が記載されている。ジヒドロローズオキシドの異性体は、対応するローズオキシドの異性体の水素化によって合成される。
【0017】
Romanovらは、Journal of Applied Chem. of the USSR、55 (1)、140〜143頁(1982)(Zhurnal Prikladnoi Khimii, Bd. 55、Nr. 1、157〜161 (1981)の英訳)の中で、ジオキサン化合物G')の酸触媒反応によるジヒドロピランE')及びF')の生成を記載している。
【化7】
4-メチル-2-イソブチル-5,6-ジヒドロピラン及び4-メチル-2-イソブチル-3,6-ジヒドロピランが表中に列挙されている。使用した酸触媒はH2SO4又はスルホン酸基含有スチレンジビニルベンゼンイオン交換体である。反応は、純粋形態のジオキサン化合物G')を用いて且つ溶剤シクロヘキサン又はトルエンの存在下で行われる。
【0018】
Romanovらは、Journal of Applied Chem. of the USSR、56(1)、2526〜2528頁(1983)(Zhurnal Prikladnoi Khimii, Bd. 55、Nr. 12、2778〜2780(1982)の英訳)の中で、2-R-4,4-ジメチル-及び2-R-4-メチル-4-フェニル-1,3-ジオキサンから2-R-4,4-メチル-及び2-R-4-フェニル-1,3-テトラヒドロピラン-4-オールへの酸触媒による異性化を記載している。
【0019】
SU 19752312401は、酸触媒の存在下での2-置換4,4-ジメチル-1,3-ジオキサンの異性化による、上式(A)(式中、Rは低級アルキル又はフェニルである)のテトラヒドロピラノールの製造を記載している。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0020】
【非特許文献1】M. Julia及びB. Jacquet、Bulletin de la Societe Chimique de France 1963、8〜9、1983
【非特許文献2】Liuら、J. Heterocyclic Chem、21、129〜132(1984)
【非特許文献3】Schindler及びVogel、Perfume & Flavorist、11巻, 29〜30(1986)
【非特許文献4】Romanovら、Journal of Applied Chem. of the USSR、55 (1)、140〜143頁(1982)(Zhurnal Prikladnoi Khimii, Bd. 55、Nr. 1、157〜161 (1981)の英訳)
【非特許文献5】Romanovら、Journal of Applied Chem. of the USSR、56(1)、2526〜2528頁(1983)(Zhurnal Prikladnoi Khimii, Bd. 55、Nr. 12、2778〜2780(1982)の英訳)
【特許文献】
【0021】
【特許文献1】EP 1 493 737 A1
【特許文献2】WO 2011/147919
【特許文献3】WO 2010/133473
【特許文献4】WO 2011/154330
【特許文献5】PCT/EP2013/071409
【特許文献6】EP 0 770 670 B1
【特許文献7】SU 19752312401
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
本発明の目的は、2-置換4-ヒドロキシ-4-メチルテトラヒドロピランの改善された製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0023】
今回、2-アルキル-4,4-ジメチル-1,3-ジオキサン含有出発物質を、強酸及び/又は酸性イオン交換体の存在下で反応させることによって、2-置換4-ヒドロキシ-4-メチルテトラヒドロピランに富んだ生成混合物が得られることが発見された。
【0024】
驚くべきことに、3-メチルブタ-3-エン-1-オール及びアルデヒドR1-CHOから開始する2-置換4-ヒドロキシ-4-メチルテトラヒドロピランの合成からの画分は、そのジオキサン含有量が原因で、現在に至るまで価値のある材料を得るために使用することができなかったが、酸処理の出発混合物として適していることも発見された。したがって、この合成において、2-置換4-ヒドロキシ-4-メチルテトラヒドロピランの全収率を際立って増加することが可能である。
【0025】
また、驚くべきことに、4-ヒドロキシ-4-メチルテトラヒドロピラン(I)と式(III.1)、(III.2)及び/又は(III.3)のジヒドロピランとの両方の生成混合物の含有量が、2-アルキル-4,4-ジメチル-1,3-ジオキサン(以下で、式IIを特徴とする)に加えて、少なくとも1種の4-ヒドロキシ-4-メチルテトラヒドロピラン(以下で、式Iを特徴とする)及び少なくとも1種のジヒドロピラン(III.1)、(III.2)又は(III.3)も含む出発混合物の酸性反応によって更に増加し得ることも発見された。式(III.1)、(III.2)及び/又は(III.3)のジヒドロピランは、前述の通り、対応する2-置換4-メチルテトラヒドロピランに水素化されてよい。したがって、本発明による酸処理は、2-置換4-ヒドロキシ-4-メチルテトラヒドロピラン及び2-置換4-メチルテトラヒドロピランの統合された製造方法に適している。
【0026】
とりわけ、イソプレノール(3-メチルブタ-3-エン-1-オール)と好適なアルデヒド(特にイソバレルアルデヒド)を反応させることによる2-置換4-ヒドロキシ-4-メチルテトラヒドロピランの酸触媒による製造において得られるジオキサン含有副流(すなわち廃棄流)が、本発明による酸処理によって、香料、特にフレグランスとして使用するために、多量に供給され得ることが発見された。
【0027】
本発明は、一般式(I)
【化8】
(式中、
R1は、直鎖又は分枝C1〜C12アルキル、直鎖又は分枝C2〜C12アルケニル、合計3〜20個の炭素原子を有する、非置換の又はC1〜C12アルキル及び/若しくはC1〜C12アルコキシ置換されているシクロアルキル、或いは合計6〜20個の炭素原子を有する、非置換の又はC1〜C12アルキル及び/若しくはC1〜C12アルコキシ置換されているアリールである)
の2-置換4-ヒドロキシ-4-メチルテトラヒドロピランの製造方法であって、
a) 少なくとも1種の一般式(II)
【化9】
(式中、R1は上記の通りである)、
のジオキサン化合物を含む出発物質を準備し、
b) 出発物質を、強酸及び/又は酸性イオン交換体の存在下で反応にかけ、出発物質と比べて、式(II)のジオキサン化合物が欠乏し、式(I)の化合物に富んだ生成混合物を得、
c) 工程b)で得た生成混合物を分離にかけて、式(I)の化合物に富んだ画分を得る、
方法を提供する。
【0028】
具体的な実施形態は、
a1) 式(IV)
【化10】
の3-メチルブタ-3-エン-1-オールを、酸触媒の存在下で、式(V)
R1-CHO (V)
(式中、R1は、直鎖又は分枝C1〜C12アルキル、直鎖又は分枝C2〜C12アルケニル、合計3〜20個の炭素原子を有する、非置換の又はC1〜C12アルキル及び/若しくはC1〜C12アルコキシ置換されているシクロアルキル、或いは合計6〜20個の炭素原子を有する、非置換の又はC1〜C12アルキル及び/若しくはC1〜C12アルコキシ置換されているアリールである)
のアルデヒドと反応させて、少なくとも1種の一般式(I)の2-置換4-ヒドロキシ-4-メチルテトラヒドロピラン、少なくとも1種のジオキサン化合物(II)及び少なくとも1種の化合物(III.1)、(III.2)又は(III.3)
【化11】
(式中、R1は上記の通りである)、
を含む反応混合物を得、
a2) 工程a1)からの反応混合物を分離にかけて、少なくとも1つの一般式(I)の2-置換4-ヒドロキシ-4-メチルテトラヒドロピランに富んだ画分(F-I.a2)及びジオキサン化合物(II)及び少なくとも1種の化合物(III.1)、(III.2)又は(III.3)を含む画分を得、
b) ジオキサン化合物(II)及び少なくとも1種の化合物(III.1)、(III.2)又は(III.3)を含む、工程a2)で得た画分を出発物質として、強酸及び/又は酸性イオン交換体の存在下で反応にかけ、出発物質と比べて、式(II)のジオキサン化合物が欠乏し、式(I)の化合物及び少なくとも1種の式(III.1)、(III.2)又は(III.3)の化合物に富んだ生成混合物を得、
c) 工程b)で得た生成混合物を分離にかけ、式(I)の化合物に富んだ画分及び少なくとも1種の式(III.1)、(III.2)又は(III.3)の化合物に富んだ画分を得る、
方法である。
【0029】
この実施形態によれば、工程c)で得られる式(I)の化合物に富んだ画分は、好ましくは、工程a2)における分離に供給される。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明による方法は、以下の利点を有する。
- 本発明による方法を用いて、2-アルキル-4,4-ジメチル-1,3-ジオキサン含有出発物質を使用して2-置換4-ヒドロキシ-4-メチルテトラヒドロピランを製造することができ、すなわち、当該出発物質が、香料として、特にフレグランスとしての使用を満たすことができる。
- 本発明による酸処理によって得られる生成混合物は、2-アルキル-4,4-ジメチル-1,3-ジオキサンの残留含有量が少ないことを特徴とする。このようなジオキサン含有流の分離及び/又は更なる処理において従来技術から知られる問題は、こうして回避される、又はかなり低減される。
- 本発明による方法を用いて、2-置換4-ヒドロキシ-4-メチルテトラヒドロピランの酸触媒による製造における大部分の本発明の副流(廃棄流)を、とりわけ、価値のある材料として使用することができる。一方ではこの副流中に存在する式(III.1)、(III.2)及び/又は(III.3)のジヒドロピランの分離、また他方では2-アルキル-4,4-ジメチル-1,3-ジオキサン(II)の分離における上記の問題のために、この副流は、現在に至るまで、一般的に廃棄されてきた。
- 更に、2-置換4-ヒドロキシ-4-メチルテトラヒドロピランの全収率は、本発明による酸処理によってかなり向上する。
- 本発明による酸処理によって、更に存在する式(III.1)、(III.2)及び/又は(III.3)のジヒドロピランの水素化が可能なことから、2-置換4-メチルテトラヒドロピラン(VI)、特にジヒドロローズオキシドを入手する機会も得られる。
【0031】
別段、以下により詳細に指定されない限り、以下の用語
「2-置換4-メチルテトラヒドロピラン」、
「2-(2-メチルプロピル)-4-メチルテトラヒドロピラン」(すなわち「ジヒドロローズオキシド」)、
「2-置換4-ヒドロキシ-4-メチルテトラヒドロピラン」、
「2-(2-メチルプロピル)-4-ヒドロキシ-4-メチルテトラヒドロピラン」
は、本発明との関係において、任意の組成物のシス/トランス混合物、また純粋な配座異性体を意味する。上記の用語は、純粋形態の全ての鏡像異性体、またこれらの化合物の鏡像異性体のラセミ及び光学活性混合物も意味する。
【0032】
以下で、化合物(I)又は(VI)のシス及びトランスジアステレオ異性体を問題とする場合、いずれの場合にも、鏡像異性体の形態のうちの1つだけを示す。例示目的のみのために、2-(2-メチルプロピル)-4-ヒドロキシ-4-メチルテトラヒドロピラン(I)の異性体を以下に示す。
【化12】
【0033】
本発明との関係においては、直鎖又は分枝アルキルという表現は、好ましくは、C1〜C6アルキル、特に好ましくはC1〜C4アルキルを表す。具体的には、アルキルは、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル(2-メチルプロピル)、sec-ブチル(1-メチルプロピル)、tert-ブチル(1,1-ジメチルエチル)、n-ペンチル又はn-ヘキシルである。アルキルは、とりわけ、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、又はイソブチルである。
【0034】
本発明との関係においては、直鎖又は分枝アルコキシという表現は、好ましくは、C1〜C6アルコキシ、特に好ましくはC1〜C4アルコキシを表す。具体的には、アルコキシは、メトキシ、エトキシ、n-プロピルオキシ、イソプロピルオキシ、n-ブチルオキシ、イソブチルオキシ、sec-ブチルオキシ、tert-ブチルオキシ、n-ペンチルオキシ又はn-ヘキシルオキシである。アルコキシは、とりわけ、メトキシ、エトキシ、n-プロピルオキシ、イソプロピルオキシ、又はイソブチルオキシである。
【0035】
本発明との関係においては、直鎖又は分枝アルケニルという表現は、好ましくは、C2〜C6アルケニル、特に好ましくはC2〜C4アルケニルを表す。アルケニル残基は、単結合に加えて、1つ以上の、好ましくは1〜3つの、特に好ましくは1つ又は2つの、とりわけ好ましくは1つのエチレン性二重結合を有する。具体的には、アルケニルは、エテニル、1-プロペニル、2-プロペニル、1-メチルエテニル、1-ブテニル、2-ブテニル、3-ブテニル、1-メチル-1-プロペニル、2-メチル-1-プロペニル、1-メチル-2-プロペニル又は2-メチル-2-プロペニルである。
【0036】
本発明との関係においては、シクロアルキルは、好ましくは3〜10個、特に好ましくは5〜8個の炭素原子を有する脂環式残基を意味する。シクロアルキル基の例として、特に、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル又はシクロオクチルがある。シクロアルキルは、とりわけシクロヘキシルである。
【0037】
置換シクロアルキル基は、環のサイズに応じて1つ以上の置換基(例えば、1つ、2つ、3つ、4つ又は5つ)を有してよい。これらは、それぞれ、好ましくは、独立にC1〜C6アルキル及びC1〜C6アルコキシから選択される。置換基の場合、シクロアルキル基は、好ましくは、1つ以上、例えば1つ、2つ、3つ、4つ又は5つのC1〜C6アルキル基を有する。置換シクロアルキル基の例として、特に2-及び3-メチルシクロペンチル、2-及び3-エチルシクロペンチル、2-、3-及び4-メチルシクロヘキシル、2-、3-及び4-エチルシクロヘキシル、2-、3-及び4-プロピルシクロヘキシル、2-、3-及び4-イソプロピルシクロヘキシル、2-、3-及び4-ブチルシクロヘキシル及び2-、3-及び4-イソブチルシクロヘキシルがある。
【0038】
本発明との関係においては、表現「アリール」は、典型的には6〜18個、好ましくは6〜14個、特に好ましくは6〜10個の炭素原子を有する単環式又は多環式芳香族炭化水素残基を含む。アリールの例として、特にフェニル、ナフチル、インデニル、フルオレニル、アントラセニル、フェナントレニル、ナフタセニル、クリセニル、ピレニル等、とりわけフェニル又はナフチルがある。
【0039】
置換アリールは、その環系の数及びサイズに応じて1つ以上の置換基(例えば、1つ、2つ、3つ、4つ又は5つ)を有してよい。これらはそれぞれ、好ましくは、独立にC1〜C6アルキル及びC1〜C6アルコキシから選択される。置換アリール残基の例として、2-、3-及び4-メチルフェニル、2,4-、2,5-、3,5-及び2,6-ジメチルフェニル、2,4,6-トリメチルフェニル、2-、3-及び4-エチルフェニル、2,4-、2,5-、3,5-及び2,6-ジエチルフェニル、2,4,6-トリエチルフェニル、2-、3-及び4-プロピルフェニル、2,4-、2,5-、3,5-及び2,6-ジプロピルフェニル、2,4,6-トリプロピルフェニル、2-、3-及び4-イソプロピルフェニル、2,4-、2,5-、3,5-及び2,6-ジイソプロピルフェニル、2,4,6-トリイソプロピルフェニル、2-、3-及び4-ブチルフェニル、2,4-、2,5-、3,5-及び2,6-ジブチルフェニル、2,4,6-トリブチルフェニル、2-、3-及び4-イソブチルフェニル、2,4-、2,5-、3,5-及び2,6-ジイソブチルフェニル、2,4,6-トリイソブチルフェニル、2-、3-及び4-sec-ブチルフェニル、2,4-、2,5-、3,5-及び2,6-ジ-sec-ブチルフェニル、2,4,6-トリ-sec-ブチルフェニル、2-、3-及び4-tert-ブチルフェニル、2,4-、2,5-、3,5-及び2,6-ジ-tert-ブチルフェニル及び2,4,6-トリ-tert-ブチルフェニルがある。
【0040】
式(I)、(II)、(III.1)、(III.2)、(III.3)、(V)及び(VI)の化合物において、R1は、好ましくは、直鎖若しくは分枝C1〜C12アルキル又は直鎖若しくは分枝C2〜C12アルケニルである。特に好ましくは、R1は、直鎖若しくは分枝C1〜C6アルキル又は直鎖若しくは分枝C2〜C6アルケニルである。更に好ましい実施形態では、R1はフェニルである。
【0041】
したがって、残基R1についての本発明による好ましい定義は、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、n-ペンチル、n-ヘキシル又はn-ヘプチル、好ましくはメチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、特に好ましくはイソブチル(2-メチルプロピル)である。
【0042】
したがって、好ましい実施形態との関係においては、本発明は、式(I.a)
【化13】
の2-(2-メチルプロピル)-4-ヒドロキシ-4-メチルテトラヒドロピランを製造及び単離する方法に関する。
【0043】
工程a)
工程a)で使用する好適な出発物質は、少なくとも1種の一般式(II)
【化14】
(式中、R1は、上記の通りである)
のジオキサン化合物を本質的に純粋な形態で含んでよい。本質的に純粋な形態とは、工程a)で使用される出発物質が、好ましくは、出発物質の総重量に対して、少なくとも90重量%、特に好ましくは少なくとも95重量%、具体的には少なくとも99重量%の少なくとも1種の一般式(II)のジオキサン化合物を含むことを意味すると理解される。
【0044】
式(II)の1,3-ジオキサンを製造する好適な方法は、原則として、当業者に知られている。これは、例えば、以下のスキーム
【化15】
による、3-メチル-1,3-ブタンジオールと好適に置換されているアルデヒドとの反応を含む。
【0045】
3-メチル-1,3-ブタンジオールは、例えばSigma Aldrichから市販されている。多くの式R1-CHOのアルデヒドも同様である。
【0046】
好ましくは、少なくとも1種のジオキサン化合物(II)に加えて、少なくとも更なる成分を含む出発物質を工程a)で準備する。
【0047】
工程a)で準備される出発物質は、好ましくは、香料又は芳香剤の合成及び/又は単離からの天然又は合成生成混合物である。
【0048】
工程a)で準備される出発物質は、特に好ましくは、一般式(I)の2-置換4-ヒドロキシ-4-メチルテトラヒドロピランの合成及び/又は単離からの生成混合物又は画分である。
【0049】
工程a)で準備される出発物質は、具体的には、
a1) 式(IV)
【化16】
の3-メチルブタ-3-エン-1-オールを、酸触媒の存在下で式(V)
R1-CHO (V)
(式中、R1は、直鎖又は分枝C1〜C12アルキル、直鎖又は分枝C2〜C12アルケニル、合計3〜20個の炭素原子を有する、非置換の又はC1〜C12アルキル及び/若しくはC1〜C12アルコキシ置換されているシクロアルキル、或いは合計6〜20個の炭素原子を有する、非置換の又はC1〜C12アルキル及び/若しくはC1〜C12アルコキシ置換されているアリールである)
のアルデヒドと反応させる、一般式(I)の2-置換4-ヒドロキシ-4-メチルテトラヒドロピランの合成及び/又は単離からの生成混合物又は画分である。
【0050】
特定の実施形態では、工程a1)からの反応混合物を分離(すなわち工程a2))にかけて、少なくとも1つの一般式(I)の2-置換4-ヒドロキシ-4-メチルテトラヒドロピランに富んだ画分及び一般式(I)の2-置換4-ヒドロキシ-4-メチルテトラヒドロピランが欠乏している画分を得る。少なくとも1種のジオキサン化合物(II)を含む一般式(I)の2-置換4-ヒドロキシ-4-メチルテトラヒドロピランが欠乏している画分を、好ましくは、工程b)の反応の出発物質として使用する。
【0051】
工程a)で準備される出発物質は、好ましくは、少なくとも1種のジオキサン化合物(II)を、出発物質の総重量に対して、1〜99重量%、特に好ましくは2〜90重量%、具体的には10〜60重量%、とりわけ15〜50重量%の量で含む。
【0052】
工程a)で準備される出発物質は、好ましくは、少なくとも1種の一般式(I)の化合物を、出発物質の総重量に対して、0〜90重量%、好ましくは0〜70重量%、具体的には0〜40重量%の量で含む。
【0053】
好ましい実施形態では、ピラノール合成からの反応混合物を工程a)で使用し、一般式(I)の2-置換4-ヒドロキシ-4-メチルテトラヒドロピランに富んだ画分は、該反応混合物から既に分離除去しておいた。工程a)で準備される出発物質は、特に好ましくは、少なくとも1種の一般式(I)の化合物を、出発物質の総重量に対して、0〜50重量%、好ましくは0.1〜40重量%、具体的には0.5〜30重量%の量で含む。
【0054】
少なくとも1種の一般式(I)の化合物を既に含む出発物質を、強酸及び/又は酸性イオン交換体の存在下で反応させることによって、式(I)の化合物の含有量を、出発物質と比べて、更に有利に増加することができる。
【0055】
好ましい実施形態では、少なくとも1種のジオキサン化合物(II)に加えて、式(III.1)、(III.2)又は(III.3)
【化17】
(式中、R1は、直鎖又は分枝C1〜C12アルキル、直鎖又は分枝C2〜C12アルケニル、合計3〜20個の炭素原子を有する、非置換の又はC1〜C12アルキル及び/若しくはC1〜C12アルコキシ置換されているシクロアルキル、或いは合計6〜20個の炭素原子を有する、非置換の又はC1〜C12アルキル及び/若しくはC1〜C12アルコキシ置換されているアリールである)
の少なくとも1種の化合物を含む出発物質を工程a)で準備する。
【0056】
式(III.1)、(III.2)又は(III.3)のうちの少なくとも1種のジヒドロピラン化合物を含む生成混合物は、上記の水素化によって、2-置換4-メチルテトラヒドロピランに、とりわけジヒドロローズオキシドに変換してよい。
【0057】
少なくとも1種のジオキサン化合物(II)及び式(III.1)、(III.2)又は(III.3)のうちの少なくとも1種の化合物を含む出発物質を、強酸及び/又は酸性イオン交換体の存在下で反応させることによって、式(III.1)、(III.2)及び(III.3)の化合物から得られる生成混合物の含有量を、出発物質と比べて、更に有利に増加することができる。
【0058】
工程a)で準備される出発物質は、好ましくは、式(III.1)、(III.2)及び/又は(III.3)の化合物を、出発物質の総重量に対して、1〜99重量%、好ましくは5〜95重量%、具体的には15〜70重量%の総量で含む。
【0059】
本発明による方法の工程a)で準備される出発物質は、更なる化合物、例えば、一般式(I)の2-置換4-ヒドロキシ-4-メチルテトラヒドロピランを製造する合成からの未反応の反応物質を含んでよい。工程a)で準備される出発物質は、好ましくは、3-メチルブタ-3-エン-1-オール(IV)、少なくとも1種のアルデヒドR1-CHO(V)及びこれらの混合物から選択される少なくとも1種の化合物を含む。
【0060】
工程b)の反応条件は、有利には、一般的に、化合物(IV)及び(V)の更なる反応を可能にし、式(I)、(III.1)、(III.2)又は(III.3)の化合物を得る。したがって、本発明による方法の工程a)で準備される出発物質は、好ましくは、化合物(IV)及び(V)を、本質的に等モル量で含む。したがって、有利には、出発物質の準備において、モル過剰で存在する一成分(IV)又は(V)を補い、その結果、化合物(IV)及び(V)が本質的に等モル量で存在する。
【0061】
工程a)で準備される出発物質は、好ましくは、式(IV)の化合物を、出発物質の総重量に対して、0〜25重量%、好ましくは0.1〜20重量%、具体的には0.5〜15重量%の量で含む。
【0062】
工程a)で準備される出発物質は、好ましくは、式(V)の化合物を、出発物質の総重量に対して、0〜25重量%、好ましくは0.1〜20重量%、具体的には0.5〜15重量%の量で含む。
【0063】
典型的な組成物において、工程a)で準備される出発物質は、いずれの場合にも反応混合物の総重量に対して、以下の化合物:
ジオキサン化合物(II):15〜50重量%、
4-ヒドロキシ-4-メチルテトラヒドロピラン(I):0〜30重量%、
式(III.1)、(III.2)及び/又は(III.3)の化合物:合計15〜70重量%、
イソバレルアルデヒド:0〜15重量%、
イソプレノール:0〜15重量%、
(II)の種々のアセタール:0〜5重量%、
水:0〜10重量%
を含む。
【0064】
具体的な実施形態は、工程a)において出発物質を準備するために、
a1) 式(IV)
【化18】
の3-メチルブタ-3-エン-1-オールを、酸触媒の存在下で、式(V)
R1-CHO (V)
(式中、R1は、直鎖又は分枝C1〜C12アルキル、直鎖又は分枝C2〜C12アルケニル、合計3〜20個の炭素原子を有する、非置換の又はC1〜C12アルキル及び/若しくはC1〜C12アルコキシ置換されているシクロアルキル、或いは合計6〜20個の炭素原子を有する、非置換の又はC1〜C12アルキル及び/若しくはC1〜C12アルコキシ置換されているアリールである)
のアルデヒドと反応させて、少なくとも1種の一般式(I)の2-置換4-ヒドロキシ-4-メチルテトラヒドロピラン、少なくとも1種のジオキサン化合物(II)及び少なくとも1種の化合物(III.1)、(III.2)又は(III.3)
【化19】
(式中、R1は上記の通りである)
を含む反応混合物を得、
a2) 工程a1)からの反応混合物を分離にかけて、少なくとも1つの一般式(I)の2-置換4-ヒドロキシ-4-メチルテトラヒドロピランに富んだ画分(F-I.a2)並びにジオキサン化合物(II)及び少なくとも1種の化合物(III.1)、(III.2)又は(III.3)を含む画分を得、後者の画分を、工程b)の反応の出発物質として使用する、
方法である。
【0065】
工程a1)
本発明による方法の工程a1)の出発物質の1つは、式(IV)の3-メチルブタ-3-エン-1-オール(イソプレノール)である。
【化20】
【0066】
イソプレノールは、既知の方法によってイソブテン及びホルムアルデヒドから任意の規模で容易に利用可能であり、市販されている。本発明に従って使用するイソプレノールの純度、品質又は製造プロセスに関して特に必要条件はない。これは、本発明による方法の工程a)において、商用品質及び純度で使用することができる。イソプレノールは、好ましくは、90重量%以上、特に好ましくは95〜100重量%、とりわけ好ましくは97〜99.9重量%又は更により好ましくは98〜99.8重量%の純度を有する。
【0067】
本発明による方法の工程a1)の更なる出発物質は、式(V) R1-CHOのアルデヒドであり、式(V)のR1は、上記の通りである。
【0068】
使用する好ましい式(V)のアルデヒドとして、アセトアルデヒド、バレルアルデヒド、イソバレルアルデヒド、ペンタナール、ヘキサナール、ヘプタナール、ベンズアルデヒド、シトラール、シトロネラルがある。本発明に従って使用する、特に好ましい式(V)のアルデヒドは、イソバレルアルデヒド及びベンズアルデヒド、特にイソバレルアルデヒドである。
【0069】
工程a1)における3-メチルブタ-3-エン-オール(IV)及びアルデヒド(V)は、好ましくは、約1対2から2対1、特に好ましくは0.7対1から2対1、具体的には1対1から2対1のモル比で使用される。具体的な実施形態では、工程a)における3-メチルブタ-3-エン-オール(IV)及びアルデヒド(V)は、1対1から1.5対1のモル比で使用される。
【0070】
工程a1)の反応は、好ましくは、酸触媒の存在下で行なわれる。原則として、いずれの酸触媒も、すなわちブレーンステッド又はルイス酸性を有するいずれの物質も、工程a1)の反応に使用することができる。好適な触媒の例として、塩酸、硫酸、リン酸、メタンスルホン酸及びp-トルエンスルホン酸等のプロトン酸、塩化アルミニウム、三フッ化ホウ素、塩化亜鉛、五フッ化リン、三フッ化ヒ素、四塩化スズ、四塩化チタン及び五フッ化アンチモン等の酸性分子元素化合物(acidic molecular elemental compound)、酸化物酸性固体(oxidic acidic solids)、例えばゼオライト、ケイ酸塩、アルミン酸塩、アルミノケイ酸塩、粘土及び酸性イオン交換体がある。
【0071】
工程a1)で使用する酸触媒は、好ましくは、塩酸、硫酸、メタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸及び強酸性陽イオン交換体から選択される。
【0072】
第1の変形形態では、工程a1)の反応が、好ましくは塩酸、硫酸、メタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸から選択されるブレーンステッド酸の存在下で行なわれる。この第1の変形形態において、好ましくは炭化水素及び炭化水素混合物から選択される溶剤を工程a1)で使用してよい。好適な溶剤は、例えば、ヘキサン、ヘプタン、ナフサ、石油エーテル、シクロヘキサン、デカリン、トルエン、キシレン及びこれらの混合物である。溶剤は、好ましくは使用しない。この第1の変形形態において、触媒は、好ましくは、アルデヒド(V)を基として、0.05〜5モル%、特に好ましくは0.1〜4モル%の量で使用する。反応は、好ましくは、この第1の変形形態による工程a1)において、20〜120℃、特に好ましくは30〜80℃の範囲の温度で行われる。
【0073】
第2の変形形態では、工程a1)の反応が、強酸性陽イオン交換体の存在下で行われる。強酸性陽イオン交換体という用語は、強酸性基を有するH+形態の陽イオン交換体を意味すると理解される。強酸性基は、一般的に、スルホン酸基である。酸性基は、一般的に、例えば、ゲル形態又はマクロ多孔性であってよいポリマーマトリックスに結合されている。これに応じて、本発明による方法の好ましい実施形態は、スルホン酸基を有する強酸性陽イオン交換体を使用することを特徴とする。好適な強酸性陽イオン交換体は、参照により本明細書に全内容が組み込まれるWO 2010/133473及びWO 2011/154330に記載されている。
【0074】
工程a1)における使用に好適なのは、ポリスチレン並びにH+形態のスルホン酸基及びスルホン酸基(-SO3H)で官能化されたイオン交換基を含む支持マトリックスとしてのスチレン及びジビニルベンゼンのコポリマーをベースとする、強酸性イオン交換体(例えば、Amberlyst、Amberlite、Dowex、Lewatit、Purolite、Serdolit)である。イオン交換体は、ポリマー骨格の構造が異なり、ゲル様樹脂及びマクロ多孔性樹脂間で区別される。特定の実施形態では、ペルフルオロ化ポリマーイオン交換樹脂を工程a)で使用する。このような樹脂は、例えばDuPontから名称Nafion(登録商標)で市販されている。このようなペルフルオロ化ポリマーイオン交換樹脂の例として、Nafion(登録商標)NR-50が挙げられる。
【0075】
工程a1)における反応に好適な市販の強酸性陽イオン交換体は、例えば、商標名Lewatit(登録商標)(Lanxess)、Purolite(登録商標)(The Purolite Company)、Dowex(登録商標)(Dow Chemical Company)、Amberlite(登録商標)(Rohm and Haas Company)、Amberlyst(商標)(Rohm and Haas Company)で知られる。好ましい強酸性陽イオン交換体は、Lewatit(登録商標)K 1221、Lewatit(登録商標)K 1461、Lewatit(登録商標)K 2431、Lewatit(登録商標)K 2620、Lewatit(登録商標)K 2621、Lewatit(登録商標)K 2629、Lewatit(登録商標)K 2649、Amberlite(登録商標)FPC 22、Amberlite(登録商標)FPC 23、Amberlite(登録商標)IR 120、Amberlyst(商標)131、Amberlyst(商標)15、Amberlyst(商標)31、Amberlyst(商標)35、Amberlyst(商標)36、Amberlyst(商標)39、Amberlyst(商標)46、Amberlyst(商標)70、Purolite(登録商標)SGC650、Purolite(登録商標)C100H、Purolite(登録商標)C150H、Dowex(登録商標)50X8、Serdolit(登録商標)red及びNation(登録商標)NR-50である。
【0076】
強酸性イオン交換樹脂は、一般的に、塩酸及び/又は硫酸を使用して再生される。
【0077】
特定の実施形態では、3-メチルブタ-3-エン-オール(IV)及びアルデヒド(V)は、工程a1)において、強酸性陽イオン交換体の存在下且つ水の存在下で反応する。特定の実施形態によれば、イソプレノール(IV)及び式(V)のアルデヒド以外に、水も反応混合物に追加で添加する。
【0078】
好適な構成において、出発物質は、少なくとも25モル%、好ましくは少なくとも50モル%の水の存在下で反応する。出発物質は、例えば、25〜150モル%、好ましくは40〜150モル%、特に好ましくは50〜140モル%、具体的には50〜80モル%の水の存在下で反応する。この場合、使用する水の量は、場合により少量で使用する出発物質の物質量を意味するか、又は等モル反応の場合は、いずれかと等量を意味する。
【0079】
反応は、好ましくは、少なくとも約3重量%、特に好ましくは少なくとも5重量%の追加した水の存在下で実施する。式(IV)のアルコール及び式(V)のアルデヒドは、例えば、3重量%〜15重量%の水、好ましくは5重量%〜12重量%の水の存在下で反応する。上記の重量%は、この場合、式(IV)及び(V)の化合物並びに水も含む反応混合物の総量を基準とする。
【0080】
水の量は、規定の値より多く自由に選択することができ、仮に制限があったとしても、プロセス技術又は経済面によってのみ限定され、かなり大過剰、例えば5〜15倍以上で使用してもよい。イソプレノール(IV)と式(V)のアルデヒド、好ましくはイソバレルアルデヒドとの混合物は、イソプレノール及びアルデヒドの混合物に添加する水が溶解したままになる、すなわち二相系が存在しないような量の水を添加して製造されることが好ましい。
【0081】
工程a1)においてイソプレノール(IV)をアルデヒド(V)と反応させるために、前述の出発物質及び場合により追加の水を酸性陽イオン交換体と接触させてよい。イソプレノール(IV)、アルデヒド(V)及び場合により追加の水は、好ましくは、工程a)において混合物の形態で使用される。前述の出発物質、すなわちイソプレノール(IV)及びアルデヒド(V)及び前述の量で使用する水を、任意の順序で接触又は混合させてよい。
【0082】
工程a1)における強酸性陽イオン交換体の量は重要ではなく、経済面及びプロセス技術面を考慮して広範にわたって自由に選択してよい。これに応じて、反応は、触媒量又は大過剰の強酸性陽イオン交換体の存在下のいずれかで実施してよい。強酸性陽イオン交換体は、典型的には、いずれの場合にも、使用するイソプレノール(IV)及び式(V)のアルデヒドの合計に対して、約5〜約40重量%の量で、好ましくは約20〜約40重量%の量で、特に好ましくは約20〜約30重量%の量で使用される。ここでの数値は、一般的に水で前処理した、すぐに使える陽イオン交換体を指し、これに応じて、最高で約70重量%、好ましくは約30〜約65重量%、特に好ましくは約40〜約65重量%の量の水を含んでよい。特にバッチ式法の手順では、本発明による方法を実施する場合、過剰量の水の添加は余分である。前述の強酸性陽イオン交換体は、工程a1)において、個別及び混合物の両形態で使用できる。
【0083】
連続モードでは、触媒の1時間毎の空間速度は、例えば、1時間当たり触媒50〜2500モル/m3の範囲、好ましくは1時間当たり触媒100〜2000モル/m3の範囲、具体的には1時間当たり触媒130〜1700モル/m3の範囲であり、物質のモル量は式(IV)の出発物質を指す。
【0084】
また、工程a1)における強酸性陽イオン交換体の存在下での反応は、場合により、更に反応条件下で不活性の溶剤の存在下で実施することもできる。好適な溶剤は、例えば、tert-ブチルメチルエーテル、シクロヘキサン、デカリン、ヘキサン、ヘプタン、ナフサ、石油エーテル、トルエン又はキシレンである。前記溶剤は単独で使用しても、互いとの混合物の形態で使用してもよい。工程a1)の反応は、好ましくは、強酸性陽イオン交換体の存在下で、有機溶剤を添加せずに実施される。
【0085】
工程a1)におけるイソプレノール(IV)と選択されたアルデヒド(V)の反応は、好ましくは、水の存在下且つ強酸性陽イオン交換体の存在下で、0〜70℃の範囲の温度、特に好ましくは20〜70℃の範囲の温度、具体的には20〜60℃の範囲の温度にて実施する。ここで、温度は反応混合物を指す。
【0086】
工程a1)における反応は、バッチ式モードで又は連続的に実施してよい。バッチ式の場合では、例えば、イソプレノール(IV)、アルデヒド(V)、場合により水及び場合により有機溶剤の混合物を好適な反応容器に満たし、酸触媒を添加して、反応を実施することができる。反応の完了後、好適な分離法によって、得られた反応混合物から触媒を除去することができる。個々の成分を接触させる順序は重要ではなく、各プロセス技術構成に応じて変更してよい。工程a1)で、好ましくは塩酸、硫酸、メタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸から選択されるブレーンステッド酸を触媒として使用する場合、触媒は、例えば、水性の後処理後の蒸留によって、又は直接蒸留することによって除去することができる。工程a1)で、強酸性陽イオン交換体を触媒として使用する場合、触媒は、例えば、濾過法によって又は遠心分離法によって除去することができる。
【0087】
好ましい実施形態との関係においては、工程a)におけるイソプレノール(IV)とアルデヒド(V)の反応は連続的に実施する。この目的のために、例えば、反応させる出発物質イソプレノールと式(V)のアルデヒドの混合物は、水を用いて製造することができ、この混合物を連続的に強酸性陽イオン交換体と接触させてよい。例えば、選択した陽イオン交換体を好適な流通反応器、例えば入口及び出口を備えた攪拌反応器又は管型反応器に投入してよく、出発物質及び水をそこに連続的に供給してよく、反応混合物を連続的に廃棄してよい。ここで、出発物質及び水は、場合により、個々の成分として又は前述のような混合物の形態でも、流通反応器に投入してよい。この種の方法は、欧州特許出願13165767.8及び13165778.5に記載されている。
【0088】
工程a1)において、本発明に従って得られる反応混合物は、少なくとも1種の一般式(II)
【化21】
のジオキサン化合物に加えて、少なくとも1種の一般式(I)
【化22】
の2-置換4-ヒドロキシ-4-メチルテトラヒドロピラン及び追加で少なくとも1種の式(III.1)、(III.2)又は(III.3)
【化23】
[式(I)、(II)、(III.1)、(III.2)、(III.3)中、R1は、上記の通りである]
の化合物を含む。R1は、好ましくは、イソブチルである。一般的に、反応混合物は、化合物(III.1)、(III.2)及び(III.3)の混合物を含む。
【0089】
工程a1)において、本発明による方法で得られる反応混合物は、少なくとも1種の更なる副生成物、例えばアセタール(VII)
【化24】
(式中、R1は、上記の通りである)
を含んでよい。R1は、好ましくは、イソブチルである。
【0090】
工程a1)において、本発明による方法で得られる反応混合物は、更なる成分、例えば未反応の3-メチルブタ-3-エン-1-オール(IV)、未反応のアルデヒド(V)、水、有機溶剤等を含んでよい。
【0091】
工程a1)で得られる反応混合物は、好ましくは、反応混合物の総重量に対して、5〜20重量%、特に好ましくは5〜最大約15重量%の総量で、式(II)のジオキサン化合物を含む。
【0092】
工程a1)で得られる反応混合物は、好ましくは、反応混合物の総重量に対して、5〜20重量%、特に好ましくは5〜最大約15重量%の総量で、式(III.1)、(III.2)及び(III.3)の化合物を含む。
【0093】
工程a1)で得られる反応混合物は、好ましくは、反応混合物の総重量に対して、50〜90重量%、特に好ましくは60〜最大約80重量%の量で、式(I)の2-置換4-ヒドロキシ-4-メチルテトラヒドロピランを含む。
【0094】
典型的な組成物において、工程a1)で得られる反応混合物は、いずれの場合にも、反応混合物の総重量に対して、以下の化合物:
イソバレルアルデヒド:0〜5重量%、
イソプレノール:0〜10重量%、
ジオキサン化合物(II):5〜15重量%、
式(III.1)、(III.2)及び/又は(III.3)の化合物:合計5〜15重量%、
(II)の種々のアセタール:0〜5重量%、
トランス-(I):15〜22重量%、
シス-(I):45〜65重量%、
水:2〜10重量%
を含む。
【0095】
工程a1)で得られる反応混合物は、好ましくは、式(I)の2-置換4-ヒドロキシ-4-メチルテトラヒドロピランを、式シス-(I)のシス-ジアステレオ異性体及び式トランス-(I)のトランス-ジアステレオ異性体
【化25】
の混合物の形態で含み、ここで、シス-ジアステレオ異性体のシス-(I)とトランス-ジアステレオ異性体のトランス-(I)のジアステレオ異性体比は、好ましくは65対35〜95対5、特に好ましくは70対30〜85対15であり、R1は、ここでも上記の通りである。
【0096】
工程a1)で得られる反応混合物は、好ましくは、2-イソブチル-4-ヒドロキシ-4-メチルテトラヒドロピランを、式シス-(I.a)のシス-ジアステレオ異性体及び式トランス-(I.a)のトランス-ジアステレオ異性体
【化26】
の混合物の形態で含み、ここで、シス-ジアステレオ異性体のシス-(Ia)とトランス-ジアステレオ異性体のトランス-(Ia)のジアステレオ異性体比は、好ましくは65対35〜95対5、特に好ましくは70対30〜85対15である。
【0097】
このような混合物は、その特異的な匂い特性のために、香料、例えば、フレグランス組成物を製造するためのスズランの香りを有する成分としての使用に特に適している。
【0098】
工程a2)
工程a1)からの反応混合物を、好ましくは、分離にかけ、少なくとも1つの一般式(I)の2-置換4-ヒドロキシ-4-メチルテトラヒドロピランに富んだ画分(F-I.a2)並びにジオキサン化合物(II)及び少なくとも1種の化合物(III.1)、(III.2)又は(III.3)を含む画分が得られる。次いで、ジオキサン化合物(II)及び少なくとも1種の化合物(III.1)、(III.2)又は(III.3)を含む画分を、好ましくは、工程b)における反応の出発物質として使用する。
【0099】
工程a2)における分離に使用する工程a1)からの反応生成物は、典型的には、総重量に対して、45〜65重量%のシス-ジアステレオ異性体のシス-(I)、15〜22重量%のトランス-ジアステレオ異性体のトランス-(I)、10〜40重量%の、化合物(I)よりも低沸点の化合物、1〜3重量%の、化合物(I)よりも高沸点の化合物を含む。工程a1)からの反応生成物は、好ましくは、立体異性化合物(I)に近い沸点を有する化合物をほとんど含まない。本発明との関係においては、立体異性化合物(I)に近い沸点を有する化合物をほとんど含まないとは、工程a1)からの反応生成物が、1重量%以下、特に好ましくは0.5重量%以下、具体的には0.1重量%以下の、立体異性化合物(I)に近い沸点を有する化合物を含むことを意味する。
【0100】
工程a2)における分離に使用する工程a1)からの反応生成物は、好ましくは、45〜65重量%の式シス-(I.a)の2-イソブチル-4-ヒドロキシ-4-メチルテトラヒドロピランのシス-ジアステレオ異性体、15〜20重量%の式トランス-(I.a)のトランス-ジアステレオ異性体、20〜40重量%の、化合物(I)よりも低沸点の化合物、1〜3重量%の、化合物(I)よりも高沸点の化合物を含む。
【0101】
本発明による方法の工程a1)からの反応混合物を、好ましくは、工程a2)における蒸留分離にかける。蒸留分離の好適な装置は、バブルキャップ、篩板、網目トレイ、構造化パッキング、ランダムパッキング、バルブ、側部抜出部(side draw)等を備えていてもよいトレイカラム等の蒸留塔、薄膜蒸発器、流下膜式蒸発器、強制循環蒸発器、サンベイ蒸発器等の蒸発器、及びこれらの組み合わせを含む。
【0102】
蒸留塔は、好ましくは分離トレイ、スタックドパッキング、例えばシートメタル又はファブリックパッキング、例えばSulzer Mellapak(登録商標)、Sulzer BX、Montz B1若しくはMontz A3若しくはKuhni Rombopak、又はディクソンリング、ラシヒリング、高流量リング(High-Flow ring)又はラシヒスーパーリング等のランダムパッキングのランダムベッドから選択される分離内部構造物を有してよい。実証済みで、特に有用なのは、100〜750m2/m3、特に250〜500m2/m3の比表面積を有するスタックドパッキング、好ましくはシートメタル又はファブリックパッキングである。これらは、低い圧力損失で高い分離性能をもたらす。
【0103】
装置は、好ましくは、工程a2)における分離に使用され、
- 供給部の上に位置する精留部及び供給部の下に位置する回収部を備えた供給カラム、
- 精留部の上端に連通する上部結合カラム(upper combining column)及び回収部の下端に連通する下部結合カラム(lower combining column)、
- 上部結合カラム及び下部結合カラムに連通する抜出カラム(draw column)
を含む。
【0104】
工程a2)における分離は、好ましくは、
(i) 工程a1)からの反応生成物を、供給部の上に位置する精留部及び供給部の下に位置する回収部を備えた供給カラムに投入し、
(ii) 冷却器を有する、精留部の上端に連通する上部結合カラム、並びにその下端に加熱器を有する、回収部の下端に連通する下部結合カラムを準備し、
(iii) 上部結合カラムに連通する抜出カラム及び少なくとも1つの側部抜出部を有する下部結合カラムを準備し、
(iv) 抜出カラムの最上部から又は上部領域において2-置換4-ヒドロキシ-4-メチルテトラヒドロピラン(I)よりも低沸点の化合物を除去し、下部結合カラムの底部又は下部領域から、少なくとも1種の側部抜出物として少なくとも一部の2-置換4-ヒドロキシ-4-メチルテトラヒドロピラン(I)を除去し、側部抜出物として抜き出さない2-置換4-ヒドロキシ-4-メチルテトラヒドロピラン(I)を除去し、2-置換4-ヒドロキシ-4-メチルテトラヒドロピラン(I)よりも高沸点の化合物を除去する
ことによって実施する。
【0105】
好ましい実施形態では、抜出カラムの最上部から又は上部領域において取り出される取出物は、
- 工程a1)からの反応生成物中に存在する、少なくとも一部の又は全体の量のジオキサン化合物(II)、
- 工程a1)からの反応生成物中に存在する、少なくとも一部の又は全体の量の化合物(III.1)、(III.2)及び(III.3)、
- 存在する場合、未反応の式(IV)の3-メチルブタ-3-エン-1-オール、
- 存在する場合、未反応のアルデヒド(V)、
- 少量の又は存在しない4-ヒドロキシ-4-メチルテトラヒドロピラン(I)、
- 水
を含む。
【0106】
特に好ましい実施形態では、式(IV)の3-メチルブタ-3-エン-1-オール及びイソバレルアルデヒド(V)を、工程a1)における反応に使用する。次いで、抜出カラムの最上部から又は上部領域において取り出される取出物は、
- 工程a)からの反応生成物中に存在する、少なくとも一部の又は全体の量のジオキサン化合物(II)(式中、R1はイソブチルである)、
- 工程a)からの反応生成物中に存在する、少なくとも一部の又は全体の量の化合物(III.1)、(III.2)及び(III.3)(式中、R1はイソブチルである)、
- 存在する場合、未反応の式(IV)の3-メチルブタ-3-エン-1-オール、
- 存在する場合、未反応のイソバレルアルデヒド(V.a)、
- 少量の又は存在しない式(I.a)の2-(2-メチルプロピル)-4-ヒドロキシ-4-メチルテトラヒドロピラン、
- 水
を含む。
【0107】
こうして得られる上部生成物を相分離にかけて大部分の水分を除去してよい。該相分離とは別に、こうして得た上部生成物は、一般的に、更なる後処理をせずに、工程b)の反応に使用することができる。所望に応じて、上部生成物を更なる後処理にかけて、化合物(III.1)、(III.2)、(III.3)とは異なる成分の少なくとも一部を除去してもよい。この目的のために、上部生成物を、例えば、更なる蒸留分離にかけてもよい。
【0108】
好ましい実施形態では、抜出カラムから副流を出す、又は抜出カラムから2つの副流を出す。特定の実施形態では、抜出カラムから副流を1つのみ取り出す。
【0109】
工程a2)において、2-置換4-ヒドロキシ-4-メチルテトラヒドロピラン(I)を含む複数の取出物、例えば2つの異なる側部取出物又は1つの側部取出物及び1つの底部取出物が取り出される場合、これらは、一般的に、立体異性体の組成とは異なる。したがって、反応生成物と比べて、工程a1)からのシス-ジアステレオ異性体に富んだ画分及びトランス-ジアステレオ異性体に富んだ画分を単離することが可能である。十分な分離性能を有する蒸留装置を使用することによって、少なくとも1つのジアステレオ異性体を、所望に応じて、純粋形態で得ることができる。
【0110】
供給カラム、抜出カラム、上部結合カラム及び下部結合カラムは、別個の部品であってよい、又はいくつかの機能をまとめた蒸留塔のセクション若しくはチャンバの形態をとってよい。「連通するカラム」という表現は、これらの間で生じる、立ち上る蒸気及び流下する凝縮液の両方の交換を意味する。
【0111】
本発明による方法の好ましい実施形態において、工程a2)における蒸留分離は、隔壁塔又は少なくとも熱的結合により相互接続された2つの従来型蒸留塔を含む蒸留塔の配置で行なわれる。
【0112】
隔壁塔は、少なくとも1つの供給部及び少なくとも3つの取出部を有する特別蒸留塔であり、いわゆる精留領域が蒸発器と冷却器との間に位置し、冷却器中で形成された一部の凝縮液が、蒸発器から上がってくる蒸気に対する逆流でランバック(run back)として下方に移動し、液流及び/又は蒸気流の横断混合を防止するために供給部の下及び/又は上のカラムのサブ領域に少なくとも1つの長手方向の分割機構(隔壁)を有し、したがって蒸留によって混合物を分離することを可能にする。隔壁塔の基本原理は周知であり、例えば、米国特許第2,471,134号、EP-A-0 122 367又はG. Kaibel、Chem. Eng. Technol.、10巻、1987年、92〜98頁に記載されている。
【0113】
隔壁塔の一般的な基本構造は、隔壁の片側に少なくとも1つの横方向の供給部を含み、少なくとも3つの取出部を含むが、そのうちの少なくとも1つは隔壁の他方側に位置する。この種の構造では、液流及び/又は蒸気流の横断混合が隔壁の領域内で防止されるため、副生成物を純粋形態で得ることが可能である。これは、一般的に、多成分混合物の分留において必要とされる蒸留塔の合計数を減少する。更に、連続的に単純接続された2つの従来型蒸留塔の代わりに隔壁塔を使用すると、資本コスト及びエネルギーも節約することができる(M. Knott、Process Engineering、2巻、1993年2月、33〜34頁を参照)。
【0114】
本発明との関係においては、隔壁を含まない全ての蒸留塔は、従来型蒸留塔と呼ばれる。熱的に結合された従来型蒸留塔において、質量流及びエネルギー流は、相互に交換される。したがって、連続単純接続の従来型蒸留塔と比べて、大幅なエネルギー節約が可能である。2つの熱的に結合した蒸留塔の接続は、隔壁塔の代替として好ましい。様々な配置の概略は、例えば、G. Kaibelら、Chem. Ing. Tech.、61巻、1989年、16〜25頁及びG. Kaibelら、Gas Separation & Purification、4巻、1990年6月、109〜114頁に記載されている。
【0115】
第1の好ましい実施形態において、熱的に結合したプレカラム、すなわち抜出カラムを有する蒸留塔が蒸留に使用され、上部結合カラム及び下部結合カラムは、単一セクションの蒸留塔の形態をとり、供給カラムは蒸留塔に対しプレカラムの形態をとる。第2の好ましい実施形態では、熱的に結合したポストカラム、すなわち供給カラムを有する蒸留塔を使用し、上部結合カラム及び下部結合カラムは、単一セクションの蒸留塔の形態をとり、抜出カラムは蒸留塔に対しポストカラムの形態をとる。補助カラムが接続された蒸留塔は既知であり、例えば、Chem. Eng. Res. Des.、Part A: Trans IChemE、1992年3月、118〜132頁、「The design and optimisation of fully thermally coupled distillation columns」に記載されている。
【0116】
供給カラムに投入する前に、工程a1)からの反応生成物から2-置換4-ヒドロキシ-4-メチルテトラヒドロピラン(I)より低沸点の化合物を少なくともいくつか除去することが好ましいことが証明された。したがって、特定の一実施形態では、工程a)からの反応生成物の蒸留分離に蒸留塔の配置を使用するが、この配置は、上流側従来型蒸留塔及び下流側隔壁塔又は下流側の熱的結合により相互接続された2つの従来型蒸留塔を含む。
【0117】
好ましくは、工程a2)における蒸留分離の場合、
a21) 工程a1)からの反応混合物を先ず従来型蒸留塔中で分離にかけて、ジオキサン化合物(II)並びに化合物(III.1)、(III.2)及び(III.3)に富み、一般式(I)の化合物は本質的に一切含まない第1の上部生成物が得られ、また化合物(III.1)、(III.2)及び(III.3)並びにジオキサン化合物(II)が欠乏し、大部分の一般式(I)の化合物を含む第1の底部生成物が得られ、
a22) 工程a21)からの第1の底部生成物を隔壁塔又は熱的結合により相互接続された2つの従来型蒸留塔中で分離にかけて、第1の上部生成物中には存在しない化合物(III.1)、(III.2)、(III.3)及び(II)並びに場合により少量の一般式(I)の化合物も含む第2の上部生成物が得られ、且つ一般式(I)の化合物を本質的に含有する副流が得られ、且つ上部生成物中にも副流中にも存在しない一般式(I)の化合物を含む第2の底部生成物が得られ、
第1の上部生成物及び/又は第2の上部生成物は、工程b)において出発物質として使用される。
【0118】
前記実施形態における式(II)、(III.1)、(III.2)、(III.3)及び(VI)の化合物中、R1は好ましくはイソブチルでもある。
【0119】
第1の上部生成物が一般式(I)の化合物を本質的に一切含まないという表現は、第1の上部生成物中の一般式(I)の化合物の比率が、第1の上部生成物の総重量に対して、5重量%以下、特に好ましくは2重量%以下、具体的には1重量%以下、とりわけ0.1重量%以下であることを意味する。特定の実施形態では、第1の上部生成物は、一般式(I)の化合物を一切含まない。
【0120】
第2の上部生成物は、例えば、第2の上部生成物の総重量に対して、1〜40重量%、特に好ましくは2〜30重量%、具体的には5〜25重量%、とりわけ10〜20重量%の一般式(I)の化合物を含んでよい。
【0121】
特定の実施形態では、副流は、一般式(I)の化合物のみからなる。
【0122】
特定の実施形態では、第2の底部生成物は、一般式(I)の化合物よりも高沸点を有する化合物を含んでよい。
【0123】
この実施形態によれば、第1の上部生成物(特に水中で欠乏している第1の上部生成物の有機相)及び/又は第2の上部生成物は、好ましくは、工程b)における反応に使用される。これは、第2の上部生成物が依然として一般式(I)の化合物を少量含む場合には重要ではないが、その理由は、これらが、工程b)において、この成分を更に形成する反応に悪影響を与えないためであり、後続して(I)に富んだ画分を分離して取り出し、工程c)で利用する。
【0124】
一般的に、この実施形態では、副生成物及び第2の底部生成物は、式(I)の化合物の立体異性体の比率と異なるであろう。
【0125】
工程b)
本発明による方法の工程b)では、工程a)で準備した出発物質を、強酸及び/又は酸性イオン交換体の存在下で反応にかけ、出発物質と比べて、式(II)のジオキサン化合物が欠乏し、少なくとも1種の式(III.1)、(III.2)又は(III.3)の化合物及び化合物(I)にも富んだ生成混合物が得られる。
【化27】
(式中、R1は上記の通りである)
【0126】
工程b)における反応に適した酸は、原則として、工程a1)で挙げた酸触媒である。これらの酸触媒の好適かつ好ましい実施形態を、参照により本明細書に全体的に組み込む。
【0127】
原則として、ブレーンステッド又はルイス酸性度を有する任意の物質を、工程b)における反応に使用することができる。好適な触媒の例として、プロトン酸、酸性分子元素化合物、酸性イオン交換体及びこれらの混合物がある。
【0128】
工程b)における反応は、好ましくは、塩酸、硫酸、メタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸及び強酸性陽イオン交換体から選択される酸の存在下で実施する。
【0129】
特定の実施形態では、工程b)における反応は、強酸性陽イオン交換体又はメタンスルホン酸の存在下で実施する。
【0130】
第1の変形形態では、工程b)における反応は、好ましくは塩酸、硫酸、メタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸から選択されるブレーンステッド酸の存在下で行なう。
【0131】
この第1の変形形態では、反応混合物の含水量は、反応混合物の総重量に対して、0〜10重量%、特に好ましくは1〜5重量%である。
【0132】
この第1の変形形態では、ブレーンステッド酸を、好ましくは、一般式(II)のジオキサン化合物に対して、ブレーンステッド酸の酸性基の1〜5モル%、特に好ましくは1〜3モル%の量で使用する。
【0133】
この第1の変形形態では、好ましくは炭化水素及び炭化水素混合物から選択される溶剤を場合により工程b)で使用する。好適な溶剤は、例えば、ヘキサン、ヘプタン、ナフサ、石油エーテル、シクロヘキサン、デカリン、トルエン、キシレン及びこれらの混合物である。溶剤は、好ましくは使用しない。
【0134】
この第1の変形形態による工程b)において、反応は、好ましくは、20〜180℃、特に好ましくは50〜140℃の範囲の温度で行われる。
【0135】
第2の変形形態では、工程b)における反応は、強酸性陽イオン交換体の存在下で行われる。好適な強酸性陽イオン交換体は、工程a1)で上述したものであり、これは参照により全内容が本明細書に組み込まれる。
【0136】
強酸性イオン交換樹脂は、一般的に、塩酸及び/又は硫酸を使用して再生される。
【0137】
工程b)における反応は、好ましくは、強酸性陽イオン交換体の存在下且つ水の存在下で行なう。次いで、工程b)における反応を、典型的には、反応混合物の総重量に対して、1〜10重量%の水、特に好ましくは2〜5重量%の水の存在下で実施する。
【0138】
工程b)における強酸性陽イオン交換体の量は重要ではなく、経済面及びプロセス技術の面を考慮して広範にわたって自由に選択してよい。これに応じて、反応を、触媒量又は過剰量の強酸性陽イオン交換体の存在下のいずれかで実施してよい。強酸性陽イオン交換体は、典型的には、いずれの場合にも、反応混合物の総重量に対して、約0.1〜約5重量%、好ましくは約0.5〜約3重量%、特に好ましくは約1〜約3重量%の量で使用する。ここでの数値は、一般的に水で前処理し、これに応じて、最大約70重量%、好ましくは約30〜約65重量%、特に好ましくは約40〜約65重量%の量の水を含み得る、すぐに使用できる陽イオン交換体を意味する。特にバッチ式方法の手順では、本発明による方法を実施する場合、過剰量の水の添加は余分である。前述の強酸性陽イオン交換体は、工程b)において、個別の使用及び混合物形態の使用の両方が可能である。
【0139】
工程b)における強酸性陽イオン交換体の存在下での反応は、場合により、更に反応条件下で不活性な溶剤の存在下でも実施できる。好適な溶剤は、例えば、tert-ブチルメチルエーテル、シクロヘキサン、デカリン、ヘキサン、ヘプタン、ナフサ、石油エーテル、トルエン又はキシレンである。前記溶剤は、単独で使用しても、互いとの混合物の形態で使用してもよい。工程a)における反応は、好ましくは、強酸性陽イオン交換体の存在下で、有機溶剤を添加せずに実施する。
【0140】
工程a1)で準備した出発物質の工程b)における反応は、好ましくは、水の存在下且つ強酸性陽イオン交換体の存在下で、10〜200℃の範囲の温度、特に好ましくは50〜180℃の範囲の温度、具体的には80〜150℃の範囲の温度で実施する。
【0141】
工程b)における反応は、バッチ様式で又は連続的に実施することができる。バッチ式の場合、例えば、反応は、工程a)で準備した出発物質、場合により水及び場合により有機溶剤を好適な反応容器に充填し、酸触媒を添加して実施することができる。反応の完了後、好適な分離法によって、得られた反応混合物から強酸を除去することができる。
【0142】
工程b)で、好ましくは塩酸、硫酸、メタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸から選択されるブレーンステッド酸を使用する場合、例えば、直接又は水性の後処理の後の蒸留によって、酸を除去することができる。
【0143】
工程b)で強酸性陽イオン交換体を使用する場合、例えば、濾過法又は遠心分離法によって除去することができる。
【0144】
好適な実施形態では、工程b)において、反応を連続的に実施する。この目的のために、工程a)で準備した出発物質の混合物を、例えば、水で調製してよく、この混合物を強酸性陽イオン交換体と連続的に接触させてよい。例えば、選択した陽イオン交換体を好適な流通反応器、例えば入口及び出口を備えた攪拌反応器又は管型反応器に投入してよく、出発物質及び水をそれに連続的に供給してよく、反応混合物を連続的に排出させてよい。ここで、出発物質及び水は、場合により、個々の成分として又は前述のような混合物の形態でも流通反応器に投入してよい。
【0145】
工程b)における反応は、一般的に、反応混合物中の一般式(II)のジオキサン化合物の含有量が所望の最大値より低くなるまで続ける。
【0146】
工程b)で得られた反応混合物は、好ましくは、式(II)のジオキサン化合物を、反応混合物の総重量に対して、5重量%以下、特に好ましくは2重量%以下、具体的には1重量%以下の総量で含む。
【0147】
出発物質中に存在する好ましくは5〜50重量%、特に好ましくは10〜40重量%、具体的には15〜30重量%の式(II)のジオキサン化合物は、工程b)における反応によって、式(III.1)、(III.2)及び(III.3)の化合物に変換される。
【0148】
工程b)で得られた反応混合物は、好ましくは、式(III.1)、(III.2)及び(III.3)の化合物を、反応混合物の総重量に対して、20〜80重量%、特に好ましくは35〜65重量%の総量で含む。
【0149】
出発物質中に存在する、好ましくは10〜70重量%、特に好ましくは20〜60重量%、具体的には30〜50重量%の式(II)のジオキサン化合物は、工程b)における反応によって、式(I)の2-置換4-ヒドロキシ-4-メチルテトラヒドロピランに変換される。
【0150】
工程b)で得られた反応混合物は、好ましくは、式(I)の2-置換4-ヒドロキシ-4-メチルテトラヒドロピランを、反応混合物の総重量に対して、10〜40重量%、特に好ましくは15〜30重量%の総量で含む。
【0151】
典型的な組成物において、工程b)で得られた反応混合物は、いずれの場合にも、反応混合物の総重量に対して、以下の化合物:
イソバレルアルデヒド:0〜15重量%、
イソプレノール:0〜5重量%、
ジオキサン化合物(II):0〜2重量%、
式(III.1)、(III.2)及び/又は(III.3)の化合物:合計30〜75重量%、
(II)の種々のアセタール:0〜2重量%、
式(I)の化合物:10〜35重量%
を含む。
【0152】
工程c)
本発明による方法の工程c)において、工程b)で得られた生成混合物を分離にかけて、式(I)の化合物に富んだ画分を得る。
【0153】
生成混合物を、好ましくは、蒸留分離にかける。好適な蒸留分離の装置は、工程a2)で述べたものであり、これは参照により全内容が本明細書に組み込まれる。
【0154】
工程c)において、工程b)で得られた生成混合物を、好ましくは、分離にかけて、式(I)の化合物に富んだ画分及び少なくとも1種の式(III.1)、(III.2)又は(III.3)の化合物に富んだ画分が得られる。
【0155】
この実施形態によれば、工程c)で得られた式(I)の化合物に富んだ画分を、好ましくは、工程a2)における分離に供給する。
【0156】
工程b)で得られた生成混合物からの式(I)の化合物から本質的になる工程c)における画分を単離することも明らかに可能である。次いで、この画分を、工程a2)で得られた一般式(I)の2-置換4-ヒドロキシ-4-メチルテトラヒドロピランに富んだ画分(F-I.a2)と一緒に又はこの画分とは別に使用するために供給してもよい。
【0157】
工程d)
本発明による方法の好ましい実施形態では、工程c)で得られた、少なくとも1種の化合物(III.1)、(III.2)又は(III.3)に富んだ画分を水素化にかける(工程d))。
【0158】
この場合、少なくとも1種の一般式(VI)
【化28】
(式中、R1は、直鎖又は分枝C1〜C12アルキル、直鎖又は分枝C2〜C12アルケニル、合計3〜20個の炭素原子を有する、非置換の又はC1〜C12アルキル及び/若しくはC1〜C12アルコキシ置換されているシクロアルキル、或いは合計6〜20個の炭素原子を有する、非置換の又はC1〜C12アルキル及び/若しくはC1〜C12アルコキシ置換されているアリールである)
の2-置換4-メチルテトラヒドロピランを含む水素化生成物が得られる。
【0159】
有利には、この特定の実施形態は、2-置換4-ヒドロキシ-4-メチルテトラヒドロピラン(I)及び2-置換4-メチルテトラヒドロピラン(VI)を同時に製造する統合された方法を可能にする。
【0160】
したがって、特に好ましい実施形態との関係においては、本発明は、式(I.a)の2-(2-メチルプロピル)-4-ヒドロキシ-4-メチルテトラヒドロピラン及びジヒドロローズオキシド(VI.a)
【化29】
を製造及び単離する方法に関する。
【0161】
工程d)における水素化は、従来技術の水素化触媒を使用して従来の方法で実施してよい。水素化は、気相又は液相中で触媒作用によって実施してよい。本発明による方法の工程c)における水素化は、好ましくは液相中で、不均一系水素化触媒及び水素を含有するガスの存在下で実施する。
【0162】
好適な水素化触媒には、原則として、不飽和有機化合物の水素化に適した全ての均一系及び不均一系触媒が挙げられる。これらは、例えば、金属、金属酸化物、金属化合物又はこれらの混合物を含む。好適な水素化触媒は、好ましくは元素周期表の遷移族I及びVI〜VIIIからの少なくとも1種の遷移金属を含むことが好ましい。これらは、好ましくは、Cu、Cr、Mo、Mn、Re、W、Fe、Rh、Co、Ni、Pd、Pt、Ru、Zn又はこれらの混合物を含む。
【0163】
触媒は、もっぱら活性成分のみからなってよい、又は活性成分が担体に加えられてもよい。好適な担体材料は、例えばAl2O3、SiO2、ZrO2、TiO2、活性炭、ZnO、BaO及びMgO又はこれらの混合物である。
【0164】
触媒活性を増加するために、ラネー触媒の形態又は表面積が非常に大きい金属スポンジの形態を含めた、Fe、Co及び好ましくはNiを使用してもよい。
【0165】
ラネーニッケル又はラネーコバルトは、好ましくは、本発明による方法の工程d)における水素化に使用する。更に、炭素担持パラジウム又は炭素担持白金を効果的に使用することができる。
【0166】
その他の好適な触媒は、例えば、80〜100重量%のニッケル及び/又はコバルト並びに最大20重量%の銅及び/又はクロム等の活性化金属を含む。このような触媒は、担持触媒として使用することが特に有利である。このような担持触媒の触媒活性金属の含有量は、一般的に、触媒活性金属及び担体の合計に対して、5〜80重量%である。
【0167】
工程d)における水素化のための触媒は、成形体として使用してよい。例として、リブ付き押出物及びその他の押出物形態等の触媒押出物、卵殻触媒、錠剤、リング、球、小片等を含む。
【0168】
優先的には、工程d)における水素化を、20〜220℃、好ましくは40〜200℃、具体的には50〜180℃の温度で実施する。
【0169】
反応を気相中で実施する場合、圧力は、好ましくは、1〜200バール、特に好ましくは10〜150バールの範囲内である。
【0170】
反応を液相中で実施する場合、圧力は、好ましくは、2〜500バール、特に好ましくは3〜300バール、具体的には4〜250バール、とりわけ5〜200バールの範囲内である。
【0171】
工程d)における水素化は、一反応装置又は複数の連続的に接続された反応装置中で実施することができる。水素化は、連続的に又はバッチ式で行うことができる。
【0172】
バッチ式の水素化の場合、例えば、圧力容器を使用してもよい。好適な圧力容器は、例えば、反応装置の内容物を加熱し、攪拌するための装置を備えたオートクレーブである。水素化は、好ましくは、固定床上の液相中で、好ましくは液相モード若しくは細流モードで又は懸濁触媒作用の形態で実施する。
【0173】
水素化は、溶剤を添加して実施しても、添加せずに実施してもよい。有用な溶剤として、アルコール、エーテル、炭化水素、例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール、ジオキサン、テトラヒドロフラン、n-ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、トルエン等が挙げられる。工程d)における水素化は、好ましくは、溶剤を添加せずに実施する。
【0174】
工程d)における水素化では、工程b)で得られた生成混合物を水素含有ガス及び水素化触媒と接触させてもよい。好適な水素含有ガスは、水素並びに水素及び少なくとも1種の不活性ガスの混合物から選択される。好適な不活性ガスは、例えば、窒素又はアルゴンである。工程d)における水素化では、水素は、好ましくは、希釈していない形態で、典型的には約99.9容%の純度で使用される。
【0175】
出発混合物中に存在する化合物(III.1)、(III.2)及び(III.3)は、工程d)における水素化によって2-置換4-メチルテトラヒドロピラン(VI)に変換される。水素化に使用する出発混合物は、好ましくは、式(III.1)、(III.2)及び(III.3)の化合物を含む(式中、残基R1はイソブチルである)。次いで、出発混合物中に存在する化合物(III.1)、(III.2)及び(III.3)は、工程d)における水素化によって2-イソブチル-4-メチルテトラヒドロピラン(VI.a)(ジヒドロローズオキシド)に変換される。
【0176】
このような混合物は、その特異的な匂い特性のために、香料として、例えばフレグランス組成物を製造するためのバラの香りの特性を有する成分としての使用に特に適している。
【0177】
工程e)
工程d)で得られた水素化生成物は、有利には、出発物質と比べてかなり少ない含有量の一般式(II)のジオキサン化合物を特徴とする。これは、容易な精製工程によって商業利用に適した形態に変換することができる。
【0178】
所望に応じて、工程d)における水素化生成物を更に処理してもよい。この目的のために、工程d)で得られた水素化生成物を、原則として、当業者に知られる従来の精製プロセスにかけてよい。これは、例えば、蒸留、抽出又はこれらの組み合わせを含む。
【0179】
2-置換4-メチルテトラヒドロピラン(VI)に富んだ画分及び2-置換4-メチルテトラヒドロピラン(VI)が欠乏している画分を、好ましくは、工程d)で得られた水素化生成物から単離する。2-置換4-メチルテトラヒドロピラン(I)が欠乏している画分は、好ましくは、ジオキサン化合物(II)及び/又は一般式(I)の2-置換4-ヒドロキシ-4-メチルテトラヒドロピランに富んでいる。
【0180】
工程d)で得られた水素化生成物を、好ましくは、蒸留分離にかける。好適な蒸留分離の装置は、バブルキャップ、篩板、網目トレイ、構造化パッキング、ランダムパッキング、バルブ、側部抜出部等を備えていてもよいトレイカラム等の蒸留塔、薄膜蒸発器、流下膜式蒸発器、強制循環蒸発器、サンベイ蒸発器等の蒸発器、及びこれらの組み合わせを含む。
【0181】
工程d)で得られた水素化生成物を、好ましくは、工程e)において、分離内部構造物を備えた少なくとも1つの蒸留塔中で蒸留分離にかける。
【0182】
2-置換4-メチルテトラヒドロピラン(VI)に富んだ画分を、好ましくは、工程e)において、工程d)で得られた水素化生成物から単離し、シス-ジアステレオ異性体とトランス-ジアステレオ異性体とのジアステレオ異性体比は、60対40〜100対0、好ましくは65対35〜90対10の範囲である。
【0183】
2-イソブチル-4-メチルテトラヒドロピラン(VI)に富んだ画分を、特に好ましくは、工程e)において、工程d)で得られた水素化生成物から単離し、シス-ジアステレオ異性体とトランス-ジアステレオ異性体とのジアステレオ異性体比は、60対40〜100対0、好ましくは65対35〜90対10の範囲である。
【0184】
2-置換4-メチルテトラヒドロピラン(VI)に富んだ画分を、好ましくは、工程e)において、工程d)で得られた水素化生成物から単離したところ、画分は、2重量%以下、特に好ましくは1重量%以下、特に好ましくは0.1重量%以下の含有量の一般式(II)のジオキサン化合物(式中、R1は前述の通りであり、特にイソブチルである)を有する。
【0185】
更なる水溶性不純物を除去するために、工程e)で得られた2-置換4-メチルテトラヒドロピラン(VI)に富んだ画分を、少なくとも1回の水による洗浄工程にかけてよい。或いは又は更に、工程e)で得られた2-置換4-メチルテトラヒドロピラン(I)に富んだ画分を更なる蒸留精製にかけてよい。
【0186】
本発明による組成物及び本発明による方法によって得ることができる組成物は、特に有利には、フレグランスとして又はフレグランスをもたらすために適している。
【0187】
フレグランスとして使用する本発明による組成物は、所望に応じて、この用途の分野において、少なくとも1種の従来の溶剤で希釈することができる。好適な溶剤の例として、エタノール、ジプロピレングリコール若しくはそのエーテル、フタレート、プロピレングリコール、又はジオールの炭酸塩、好ましくはエタノールがある。水も、本発明によるフレグランス組成物を希釈する溶剤として適しており、有利には、好適な乳化剤と一緒に使用することができる。
【0188】
成分の構造的及び化学的類似点に起因して、本発明による方法によって得られるフレグランスは、高い安定性及び耐久性を有する。本発明による方法によって得ることができる式(I.a)の2-(2-メチルプロピル)-4-ヒドロキシ-4-メチルテトラヒドロピランの異性体混合物は、スズランの心地良い匂いを特徴とする。本発明による方法によって場合により追加で得ることができる式(VI.a)の2-(2-メチルプロピル)-4-メチルテトラヒドロピラン(ジヒドロローズオキシド)の異性体混合物は、心地良いバラのような特性を特徴とする。
【0189】
本発明による方法によって得られるフレグランスは、化粧品組成物への組み込みに適しており、また、実用品及び消費財又は助剤等が、以下により詳しく説明されており、フレグランスが前述の消費財に組み込まれてよく、又はこのような消費財に適用されてもよい。ここで、本発明全体の目的のために、感覚刺激的に有効な量とは、使用者又は消費者に香りの印象を与えるために使用するときに満たす特定の量を意味するものと理解される。
【0190】
好適な化粧品組成物は、全ての従来の化粧品組成物である。問題となる組成物は、好ましくは、香水、オードトワレ、デオドラント、石鹸、シャワーゲル、入浴ゲル、クリーム、ローション、日焼け止め剤、毛髪のクレンジング及びケアのための組成物、例えば液体又はフォーム形態のシャンプー、コンディショナー、ヘアゲル、整髪組成物及びその他の毛髪用クレンジング又はケア組成物、ヒトの身体へ塗布される装飾用組成物、例えば棒状化粧品、例えばリップスティック、リップケアスティック、コンシーリングスティック(コンシーラー)、頬紅、アイシャドウペンシル、リップライナーペンシル、アイライナーペンシル、アイブローペンシル、修正ペンシル、日焼け止めスティック、抗ニキビスティック及び同等の製品、並びにマニキュア液及びその他のネイルケア製品である。
【0191】
本発明による方法によって得られるフレグランスは、例えばオードトワレ、シャワーゲル、入浴ゲル及び身体用デオドラント等の香料における使用に特に適している。
【0192】
これらは、消費財又は実用品を芳香付けする上でも好適であり、これらに組み込まれる、又はこれらに適用されることで、心地良いフレッシュグリーンアクセントを付与する。消費財又は実用品の例として、室内空気のデオドラント(エアケア)、布用クリーニング組成物又はケア組成物(具体的には洗剤、衣類柔軟剤)、布処理組成物、例えばアイロンがけ補助剤、精練剤、クリーニング組成物、例えば家具、床、台所用品、ガラス枠及び窓並びにモニターを表面処理するためのケア組成物、漂白剤、トイレブロック、水垢リムーバー、肥料、建設資材、カビ取り、消毒剤、自動車及び乗り物用のケア製品等がある。
【0193】
以下の実施例は、本発明を説明する上で役立つが、決して限定されるものではない。
【実施例】
【0194】
以下の方法に従って、ガスクロマトグラフィー分析を実施した。
カラム:DB WAX 30m×0.32mm、
FD 0.25μm、
注入器温度:200℃、検出器温度280℃、
温度プログラム:開始温度:50℃、170℃まで3℃/分、230℃まで20℃/分、7分 等温線、
基準時間:
イソバレルアルデヒドtR=3.7分
シス-ジヒドロローズオキシドtR=8.4分
トランス-ジヒドロローズオキシドtR=9.6分
4,4-ジメチル-2-イソブチル-1,3-ジオキサンtR=11.9分
【0195】
結果として得られた未精製生成物の濃度(重量%)は、内部標準を使用したGC分析によって決定した。
【0196】
[実施例1]
(4,4-ジメチル-2-イソブチル-1,3-ジオキサンと酸性イオン交換体との反応)
4,4-ジメチル-2-イソブチル-1,3-ジオキサン(30g、純度99%超)を充填し、酸性イオン交換体Amberlyst 131 H wet(6g、4,4-ジメチル-2-イソブチル-1,3-ジオキサンに対して20重量%)で処理し、混合物を攪拌しながら還流下で加熱(86〜92℃)した。反応時間20時間の後、未精製生成物を以下の組成で得た。イソバレルアルデヒド: 14.9GC重量%(tR=3.6分)、ジヒドロピラン(III.1〜III.3): 15.2GC重量%(tR=9.4、11.0、11.5分)、イソプレノール: 0.7GC重量%(tR=9.7分)、4,4-ジメチル-2-イソブチル-1,3-ジオキサン: 13.8GC重量%(tR=11.3分)、2-イソブチル-4-ヒドロキシ-4-メチルテトラヒドロピラン: 35.4GC重量%(tR=27.2、28.6分)。
【0197】
[実施例2]
(イソバレルアルデヒドとイソプレノールとの反応からの反応混合物の分離において隔壁塔中で単離された低沸点化合物の反応)
イソバレルアルデヒド(0.5%)、イソプレノール(7.7%)、式(III.1)、(III.2)及び(III.3)のジヒドロピラン異性体(43.5%)、4,4-ジメチル-2-イソブチル-1,3-ジオキサン(29.7%)並びに2-イソブチル-4-ヒドロキシ-4-メチルテトラヒドロピラン(17.1%)の混合物(合計2000g)をオートクレーブ(最大充填3500ml)に充填し、Amberlyst 131 H wet(40g、使用した反応混合物に対して2重量%)で処理した。密閉した後、オートクレーブを120℃に加熱し、この温度で10時間攪拌した。室温に冷却した後、生産物を吸引漏斗に通して濾過した(孔の公称直径10〜16μm)。未精製生成物を以下の組成で得た。イソバレルアルデヒド: 7.0GC重量%(tR=3.6分)、ジヒドロピラン(III.1〜III.3): 51.2GC重量%(tR=9.3、11.1、11.6分)、イソプレノール: 0.3GC重量%(tR=9.9分)、4,4-ジメチル-2-イソブチル-1,3-ジオキサン: 0.7GC重量%(tR=11.3分)、2-イソブチル-4-ヒドロキシ-4-メチルテトラヒドロピラン: 21.2GC重量%(tR=27.2、28.5分)。
【0198】
[実施例3]
(イソバレルアルデヒドとイソプレノールとの反応からの反応混合物の分離において隔壁塔中で単離された低沸点化合物の反応)
イソバレルアルデヒド(0.3%)、イソプレノール(0.3%)、式(III.1)〜(III.3)のジヒドロピラン異性体(66.1%)、4,4-ジメチル-2-イソブチル-1,3-ジオキサン(17.8%)及び2-イソブチル-4-ヒドロキシ-4-メチルテトラヒドロピラン(12.7%)の混合物(合計60g)をAmberlyst 131 H wet(3g、使用した反応混合物に対して5重量%)で処理した。後続して、混合物を加熱還流し、13時間攪拌した。室温に冷却した後、生産物を吸引漏斗に通して濾過した(孔の公称直径10〜16μm)。未精製生成物を以下の組成で得た。イソバレルアルデヒド: 4.5GC重量%(tR=3.6分)、ジヒドロピラン(III.1〜III.3): 68.8GC重量%(tR=9.4、11.2、11.7分)、イソプレノール: 0.4GC重量%(tR=9.9分)、4,4-ジメチル-2-イソブチル-1,3-ジオキサン: 2.4GC重量%(tR=11.4分)、2-イソブチル-4-ヒドロキシ-4-メチルテトラヒドロピラン: 19.5GC重量%(tR=27.3、28.6分)。