【実施例】
【0053】
以下の各例においては、原料のコポリマー粉体に上述の「コポリマー浄化処理」を施すことによって硫黄含有量Sppm、残存ビニルピロリドンモノマー含有率VP
Rを調整したコポリマー組成物A〜Gを用意した。原料粉体におけるSppm、VP
Rの相違、およびコポリマー浄化処理での溶解と析出の操作回数の相違によって、種々のSppm、VP
Rを有するコポリマー組成物が得られた。
【0054】
《実施例1》
〔有機保護剤〕
有機保護剤として、ビニルピロリドンとジアリルジメチルアンモニウムナイトレイト(diallyldimethylammonium nitrate)のコポリマーで構成されるコポリマー組成物Aを用意した。このコポリマーの重合組成は、ビニルピロリドン99質量%、ジアリルジメチルアンモニウムナイトレイト1質量%である。以下の方法でこのコポリマー組成物の硫黄含有量Sppm、残存ビニルピロリドンモノマー含有率VP
R、重量平均分子量Mwを求めた。
【0055】
(硫黄含有量Sppm)
コポリマー組成物0.2gを秤量し、100mLメスフラスコに水で移し入れ、そこへ濃度60質量%の硝酸5gを添加し、水を加えて100mLに定容し、撹拌してサンプルを得た。このサンプルをアジレント・テクノロジー社製ICP発光分光分析装置720−ESで測定し、そのスペクトル強度から硫黄含有量Sppmを求めた。測定波長は181.972nmを採用した。
【0056】
(残存ビニルピロリドンモノマー含有率VP
R)
上掲の「残存ビニルピロリドンモノマー含有率の測定方法」に従い、NMRスペクトルから前記(1)式により残存ビニルピロリドンモノマー含有率VP
Rを求めた。NMRスペクトルの測定には、日本電子社製、JNM−LA400(400MHz)の1H−NMR装置を用いた。
【0057】
(重量平均分子量Mw)
コポリマーの重量平均分子量Mwは、GPC−MALLS法により、下記の条件にて分子量分布を測定することによって行った。
・装置:HLC−8320GPC EcoSEC(東ソー社製)
・カラム:TSKgel GMPWXL(×2)+G2500PWXL
・溶離液:100mM硝酸ナトリウム水溶液/アセトニトリル=80/20
・流速:1.0mL/min
・温度:40℃
・注入量:200μL
・多角度光散乱検出器:DAWN HELEOS II(Wyatt Technology社製)
・屈折率(RI)検出器:Optilab T−rEX(Wyatt Technology社製)
【0058】
以上の測定の結果、このコポリマー組成物Aの硫黄含有量Sppmは1100ppm、残存ビニルピロリドンモノマー含有率VP
Rは3.5%、重量平均分子量Mwは82,000であった。Sppm/Mwは0.0134となる。
【0059】
〔ナノワイヤ合成〕
常温にて、プロピレングリコール20.0g中に、塩化リチウムを1質量%含むプロピレングリコール溶液0.15g、臭化カリウムを0.25質量%含むプロピレングリコール溶液0.10g、水酸化リチウムを1質量%含むプロピレングリコール溶液0.20g、硝酸アルミニウム九水和物を2質量%含むプロピレングリコール溶液0.16g、および上記のコポリマー組成物からなる有機保護剤0.26gを添加して、撹拌を行って溶解させ、溶液Aをとした。これとは別の容器中で、プロピレングリコール6g中に硝酸銀0.21gを添加して溶解させ、溶液Bとした。溶液B中の硝酸銀濃度は0.20mol/Lである。溶液Aの全量をオイルバス中においてフッ素樹脂でコーティングされた撹拌子により300rpmで撹拌しながら常温から90℃まで昇温させたのち、溶液A中に、溶液Bの全量を1分かけて添加した。溶液Bの添加終了後、さらに撹拌状態を維持して90℃で24時間保持した。その後、反応液を常温まで冷却した。
【0060】
〔洗浄〕
常温まで冷却された上記反応液にアセトンを反応液の20倍量添加し、10分撹拌後に24時間静置を行った。静置後、濃縮物と上澄みが観察されたため、上澄み部分をピペットにて丁寧に除去し、濃縮物を得た。その濃縮物に160gの純水を添加し、12時間撹拌後、アセトンを20倍量添加し、10分撹拌後に24時間静置を行った。静置後、濃縮物と上澄みが観察されたため、上済み部分をピペットにて丁寧に除去し、濃縮物を得た。この純水分散、アセトン添加、静置、上澄み除去の工程を数回以上実施することで洗浄を終了し、洗浄後の濃縮物を得た。この濃縮物を、純水中に重量平均分子量55,000のPVP(ポリビニルピロリドン)0.5質量%を含有するPVP水溶液で希釈し、銀ナノワイヤと銀ナノ粒子を両方含む銀濃度が0.8質量%になる分散液を調整した。作業は、フッ素樹脂でコーティングされたガラス容器で行った。フッ素樹脂のコーティングは親水性のナノワイヤが容器表面に付着することを防止し、収率を高める効果がある。得られた分散液を「洗浄後の分散液」と呼ぶ。
【0061】
洗浄後の分散液から採取したサンプルのFE−SEM写真を
図4に示す。まだ後述の精製を行う前の段階であるが、短いワイヤや粒子状の生成物が非常に少ないことがわかる。これは、有機保護剤として、硫黄含有量が少なく、かつ残存ビニルピロリドンモノマー含有率が少ないコポリマー組成物を使用したことによる効果である。
【0062】
〔クロスフロー精製〕
上記のナノワイヤ合成工程および洗浄工程を40バッチ分実施して、合計1040gの「洗浄後の分散液」を得た。この分散液を銀濃度が0.08質量%となるように純水で希釈して7kgの銀ナノワイヤ分散液を得た。この分散液を
図3に示すような構成の循環経路でクロスフローろ過に供し、精製を行った。多孔質セラミックフィルタとして、水銀圧入法による平均細孔直径が5.8μmの多孔質セラミックからなる、長さ500mm、外径12mm、内径9mmの管状フィルタを1本使用した。このフィルタの入り口に導入される液の流量を12L/minとして循環させた。循環流路の容量(タンクを除く)は1.7Lであり、フィルタ上流側の圧力は0.025MPaであった。純水をタンクに補給しながら12時間循環し、銀ナノワイヤ分散液を得た。以上の合成、洗浄、クロスフロー精製の工程を4チャージ分行い、合計28kgの「補給精製後の分散液」を得た。
【0063】
〔濃縮精製〕
上記の「補給精製後の分散液」28kgを
図3に示す循環経路におけるタンク内に入れた。この分散液を、純水の補給を行わずに循環させ、多孔質セラミックフィルタからの「ろ液」の排出により液量が減少していくことを利用して濃縮を行った。このようにして長さ5.0μm以下のナノワイヤの個数割合を10%以下とすることを目標に、濃縮しながら精製を行って、濃縮された銀ナノワイヤ分散液を得た。この分散液を「濃縮精製後の分散液」と呼ぶ。
【0064】
〔濃縮精製後の分散液〕
上記のようにして得られた濃縮精製後の分散液中の銀濃度は0.4質量%であった。この分散液から採取したサンプルについて、SEM画像(長さ測定用:倍率2,500倍、直径測定用:倍率150,000倍)に基づき銀ナノワイヤの形状を測定した。画像処理ソフトウエアとして、プラスソフト社製;ドクターカンバスを用いた。その結果、銀ナノワイヤの平均長さは18.5μm、平均直径は25.5nm、平均アスペクト比は、18500(nm)/25.5(nm)≒725であった。下記(4)式による銀ナノワイヤの収率は34.0%であった。
収率(%)=濃縮精製後の分散液中の銀の総質量(g)/還元反応開始時に仕込んだ銀の総質量(g)×100 …(4)
【0065】
〔透明導電膜の作製〕
上記濃縮精製後の分散液から回収した固形分に、純水:イソプロピルアルコールの質量比が9:1である溶媒を添加し、増粘剤としてヒドロキシプロピルメチルセルロースを0.3質量%添加することにより銀ナノワイヤインクを得た。インク中の銀ナノワイヤ含有量は0.15質量%になるように調整した。この銀ナノワイヤインクを、巻線(スパイラル・ワイヤ)の番号がNo.3〜20のバーコーターで10cm×5cmサイズのPETフィルム(東レ社製、ルミラーUD48、厚さ100μm、透過率91.7%、ヘイズ1.5%)からなる基材の表面に塗布し、種々の厚さの塗膜を形成した。バーコーターの巻線番号はその巻線の線径(単位:mil、1mil=25.4μm)に対応しており、一般的に巻線番号が大きいバーコーターを使用するほど厚い塗膜が得られる。これらを120℃で1分間乾燥させた。各乾燥塗膜の表面抵抗(シート抵抗)を、三菱化学アナリテック社製、ロレスタGP MCP−T610にESPプローブを使い測定した。また、乾燥塗膜の全光線透過率を、日本電色工業社製、ヘーズメーターNDH 5000により測定した。全光透過率およびヘイズの値はPET基材の影響を除去するために、全光透過率に関しては、[基材を含む全光透過率]+(100%−[基材のみの透過率])、ヘイズに関しては、[基材を含むヘイズ]−[基材のみのヘイズ]の値を採用した。測定の結果、表面抵抗(シート抵抗)が47Ω/sqである透明導電膜において、ヘイズは0.52%、全光透過率は99.1%であった。すなわち、導電性と視認性の両方に優れた透明導電膜が得られた。
【0066】
《比較例1》
有機保護剤として、ビニルピロリドンとジアリルジメチルアンモニウムナイトレイト(diallyldimethylammonium nitrate)のコポリマーで構成されるコポリマー組成物Bを用意した。このコポリマーの重合組成は、ビニルピロリドン99質量%、ジアリルジメチルアンモニウムナイトレイト1質量%である。
実施例1と同様の方法で調べた結果、このコポリマー組成物Bの硫黄含有量Sppmは2350ppm、残存ビニルピロリドンモノマー含有率VP
Rは1.4%、重量平均分子量Mwは60,000であった。Sppm/Mwは0.0392となる。
【0067】
有機保護剤としてコポリマー組成物Bを使用したことを除き、実施例1と同様の方法でナノワイヤ合成および洗浄の工程を実施し、「洗浄後の分散液」を得た。
この洗浄後の分散液から採取したサンプルのFE−SEM写真を
図5に示す。実施例1(
図4)と比べ、短いワイヤやロッド状の生成物が多く存在していることがわかる。これは、有機保護剤として硫黄含有量が多いコポリマー組成物を使用したことによる差が顕著に現れたものである。
この例では、長い銀ナノワイヤが少ないため、クロスフロー精製後に十分な量の銀ナノワイヤ分散液が得られず、塗膜評価までは実施できなかった。
【0068】
《比較例2》
有機保護剤として、ビニルピロリドンとジアリルジメチルアンモニウムナイトレイト(diallyldimethylammonium nitrate)のコポリマーで構成されるコポリマー組成物Cを用意した。このコポリマーの重合組成は、ビニルピロリドン99質量%、ジアリルジメチルアンモニウムナイトレイト1質量%である。
実施例1と同様の方法で調べた結果、このコポリマー組成物Cの硫黄含有量Sppmは870ppm、残存ビニルピロリドンモノマー含有率VP
Rは10.7%、重量平均分子量Mwは110,000であった。Sppm/Mwは0.0079となる。
【0069】
有機保護剤としてコポリマー組成物Cを使用したことを除き、実施例1と同様の方法でナノワイヤ合成および洗浄の工程を実施し、「洗浄後の分散液」を得た。
この洗浄後の分散液から採取したサンプルのFE−SEM写真を
図6に示す。実施例1(
図4)と比べ、ロッド状あるいは粒子状の生成物が多く存在していることがわかる。これは、有機保護剤として残存ビニルピロリドンモノマー含有率が多いコポリマー組成物を使用したことによる差が顕著に現れたものである。
この例では、長い銀ナノワイヤが少ないため、クロスフロー精製後に十分な量の銀ナノワイヤ分散液が得られず、塗膜評価までは実施できなかった。
【0070】
《実施例2》
有機保護剤として、ビニルピロリドンとジアリルジメチルアンモニウムナイトレイト(diallyldimethylammonium nitrate)のコポリマーで構成されるコポリマー組成物Dを用意した。このコポリマーの重合組成は、ビニルピロリドン99質量%、ジアリルジメチルアンモニウムナイトレイト1質量%である。
実施例1と同様の方法で調べた結果、このコポリマー組成物Dの硫黄含有量Sppmは319ppm、残存ビニルピロリドンモノマー含有率VP
Rは0.3%、重量平均分子量Mwは81,744であった。Sppm/Mwは0.0039となる。
【0071】
〔銀ナノワイヤの合成〕
常温にて、プロピレングリコール7900g中に、塩化リチウム0.484g、臭化カリウム0.1037g、水酸化リチウム0.426g、硝酸アルミニウム九水和物含有量が20質量%であるプロピレングリコール溶液4.994g、ビニルピロリドンとジアリルジメチルアンモニウムナイトレイトのコポリマー83.875gを添加して溶解させ、溶液Aとした。これとは別の容器で、プロピレングリコール320g中に硝酸銀67.96gを添加して、室温で撹拌して溶解させ、銀を含有する溶液Bを得た。
【0072】
上記の溶液Aを反応容器に入れ、常温から90℃まで回転数175rpmで撹拌しながら昇温したのち、溶液Aの中に、溶液Bの全量を1分かけて添加した。溶液Bの添加終了後、さらに撹拌状態を維持して90℃で24時間保持した。その後、反応液を常温まで冷却することで、銀ナノワイヤを合成した。
【0073】
〔洗浄〕
常温まで冷却した上記反応液(合成された銀ナノワイヤを含有する液)を1L分取し、容量35LのPFAコートしたタンクに移液した。その後、アセトンを20kg添加し15分撹拌し、その後24時間静置することで、濃縮物を自然沈降させた。その後、上澄み部分の除去を行い、濃縮物を回収した。得られた濃縮物に、重量平均分子量55,000のPVPが2質量%の含有量で溶解しているPVP水溶液を20g添加し、3時間撹拌することにより銀ナノワイヤを再分散させた。再分散後の銀ナノワイヤ分散液にアセトンを2kg添加し、10分撹拌したのち静置することで、濃縮物を自然沈降させた。その後、上澄み部分の2回目の除去を行い、濃縮物を得た。得られた濃縮物に160gの純水を加え、銀ナノワイヤを再分散させた。再分散後の銀ナノワイヤ分散液にアセトンを2kg添加し、30分撹拌したのち静置することで、濃縮物を自然沈降させた。その後、上澄み部分の3回目の除去を行い、濃縮物を得た。得られた濃縮物に0.5質量%の重量平均分子量55,000のPVP水溶液を320g添加し、12時間撹拌し、「洗浄後の分散液」を得た。
【0074】
〔クロスフローろ過〕
上記洗浄後の分散液を純水で希釈し、銀ナノワイヤ濃度0.07質量%の銀ナノワイヤ分散液とした。この分散液を、多孔質セラミックフィルタの管を用いたクロスフローろ過に供した。このときに用いたセラミックフィルタの平均細孔径は5.9μmである。
【0075】
具体的には、まず、銀ナノワイヤ分散液を含む循環系全体の液量が52L、液の流量が150L/minになるように設定し、ろ液として排出される液量と同等の純水をタンクに補給しながら12時間循環し、「補給精製後の分散液」を得た。次に、純水の補給を止めた状態でクロスフロー濾過を12時間継続することにより、ろ液が排出され、徐々に液量が減少していくことを利用して銀ナノワイヤ分散液の濃縮を行った。このようにして「濃縮精製後の分散液」を得た。
【0076】
濃縮精製後の分散液から少量のサンプルを分取し、分散媒の水を観察台上で揮発させたのち高分解能FE−SEM(高分解能電界放出形走査電子顕微鏡)により観察した結果、銀ナノワイヤの平均長さは17.2μmであった。平均直径は27.0nm、平均アスペクト比は、17200/27.0≒637であった。上記(4)式による銀ナノワイヤの収率は41.9%であった。
【0077】
〔インク化〕
増粘剤として、HPMC(ヒドロキシプロピルメチルセルロース;信越化学社製)を用意した。撹拌機で強撹拌してある熱水中にHPMCの粉体を投入し、その後、強撹拌を継続しながら40℃まで自然冷却させたのち、チラーを用いて10℃以下まで冷却した。撹拌後の液を目開き100μmの金属メッシュでろ過することによりゲル状の不溶成分を除去し、HPMCが溶解している水溶液を得た。
【0078】
水とアルコールの混合溶媒とするために添加するアルコールとして、2−プロパノー(イソプロピルアルコール)を用意した。ウレタン樹脂として、大日精化工業株式会社製のレザミンD−4090を用意した。
【0079】
1つの蓋付き容器に、上記クロスフローろ過によって得られた銀ナノワイヤ分散液(媒体が水であるもの)1.2g、純水2.1g、上記HPMC水溶液0.2g、2−プロパノール0.4gおよびウレタン樹脂0.1gを順次入れ、銀ナノワイヤ分散液に各物質を入れたごとに、蓋を閉めた後、この容器を上下に100回シェイキングする手法にて撹拌混合して、銀ナノワイヤインクを得た。インク中に占める各物質の含有量(インク組成)は、質量%で2−プロパノール10.0%、銀0.15%、増粘剤(HPMC)0.133%、バインダー成分(ウレタン樹脂)0.10%であり、残部は水である。銀ナノワイヤの表面には有機保護剤が付着しているが、インク中に占める有機保護剤の含有量は上記各成分に比較して僅かであるため、インク組成としては無視しうる。
【0080】
〔透明導電膜の作製〕
厚さ100μm、寸法50mm×150mmのPETフィルム基材(東洋紡社製、コスモシャイン(登録商標)A4100、透過率90.2%、ヘイズ0.6%)を用意した。上記の銀ナノワイヤインクを、巻線の番号がNo.4〜12のバーコーターで上記PETフィルム基材の易接着層がコートされていないベア面に塗布し、種々の厚さの塗膜を形成した。これらを120℃で1分間大気中で乾燥させた。各乾燥塗膜のシート抵抗を、三菱化学アナリテック社製、ロレスタGP MCP−T610により測定した。また、この乾燥塗膜の全光線透過率を、日本電色工業社製、ヘーズメーターNDH 5000により測定した。全光透過率およびヘイズの値はPET基材の影響を除去するために、全光透過率に関しては、[基材込みの全光透過率]+(100%−[基材のみの透過率])、ヘイズに関しては、[基材込みのヘイズ]−[基材のみのヘイズ]の値を用いた。測定の結果、表面抵抗(シート抵抗)が51Ω/sqである透明導電膜において、ヘイズは0.57%、全光透過率は99.6%であった。
【0081】
《実施例3》
有機保護剤として、ビニルピロリドンとジアリルジメチルアンモニウムナイトレイト(diallyldimethylammonium nitrate)のコポリマーで構成されるコポリマー組成物Eを用意した。このコポリマーの重合組成は、ビニルピロリドン99質量%、ジアリルジメチルアンモニウムナイトレイト1質量%である。
実施例1と同様の方法で調べた結果、このコポリマー組成物Eの硫黄含有量Sppmは484ppm、残存ビニルピロリドンモノマー含有率VP
Rは0.5%、重量平均分子量Mwは92,000であった。Sppm/Mwは0.0053となる。
【0082】
〔銀ナノワイヤの合成〕
常温にて、プロピレングリコール8116.3g中に、塩化リチウムが10質量%であるプロピレングリコール溶液4.84g、臭化カリウム0.1037g、水酸化リチウム0.426g、硝酸アルミニウム九水和物含有量が20質量%であるプロピレングリコール溶液4.994g、ビニルピロリドンとジアリルジメチルアンモニウムナイトレイトのコポリマー83.875gを添加して溶解させ、溶液Aとした。これとは別の容器で、プロピレングリコール95.70gと純水8.00gの混合溶液中に硝酸銀67.96gを添加して、35℃で撹拌して溶解させ、銀を含有する溶液Bを得た。
【0083】
上記の溶液Aを反応容器に入れ、常温から90℃まで回転数175rpmで撹拌しながら昇温したのち、溶液Aの中に、溶液Bの全量を2個の添加口から1分かけて添加した。溶液Bの添加終了後、さらに撹拌状態を維持して90℃で24時間保持した。その後、反応液を常温まで冷却することで、銀ナノワイヤを合成した。
【0084】
〔洗浄〕
実施例2と同様の方法にて「洗浄後の分散液」を得た。
【0085】
〔クロスフローろ過〕
実施例2と同様の方法にて銀ナノワイヤ分散液を多孔質セラミックフィルタの管を用いたクロスフロー精製、濃縮精製を行い、「濃縮精製後の分散液」を得た。
【0086】
濃縮精製後の分散液から少量のサンプルを分取し、分散媒の水を観察台上で揮発させたのち高分解能FE−SEM(高分解能電界放出形走査電子顕微鏡)により観察した結果、銀ナノワイヤの平均長さは19.0μmであった。平均直径は26.8nm、平均アスペクト比は、19000/26.8≒709であった。上記(4)式による銀ナノワイヤの収率は51.1%であった。
【0087】
〔インク化〕
実施例2と同様の方法でインク化を実施した。
【0088】
〔透明導電膜の作製〕
実施例2と同様の方法で透明導電膜を作製し、特性を測定した。その結果、表面抵抗(シート抵抗)が54Ω/sqである透明導電膜において、ヘイズは0.62%、全光透過率は99.5%であった。
【0089】
《実施例4》
有機保護剤として、ビニルピロリドンとジアリルジメチルアンモニウムナイトレイト(diallyldimethylammonium nitrate)のコポリマーで構成されるコポリマー組成物Fを用意した。このコポリマーの重合組成は、ビニルピロリドン99質量%、ジアリルジメチルアンモニウムナイトレイト1質量%である。
実施例1と同様の方法で調べた結果、このコポリマー組成物Fの硫黄含有量Sppmは592ppm、残存ビニルピロリドンモノマー含有率VP
Rは0.2%、重量平均分子量Mwは83,000であった。Sppm/Mwは0.0071となる。
【0090】
〔銀ナノワイヤの合成〕
実施例3と同様の方法で銀ナノワイヤを合成した。
【0091】
〔洗浄〕
実施例2と同様の方法にて「洗浄後の分散液」を得た。
【0092】
〔クロスフローろ過〕
実施例2と同様の方法にて銀ナノワイヤ分散液を多孔質セラミックフィルタの管を用いたクロスフロー精製、濃縮精製を行い、「濃縮精製後の分散液」を得た。
【0093】
濃縮精製後の分散液から少量のサンプルを分取し、分散媒の水を観察台上で揮発させたのち高分解能FE−SEM(高分解能電界放出形走査電子顕微鏡)により観察した結果、銀ナノワイヤの平均長さは18.4μmであった。平均直径は26.8nm、平均アスペクト比は、18400/26.8≒687であった。上記(4)式による銀ナノワイヤの収率は62.5%であった。
【0094】
〔インク化〕
実施例2と同様の方法でインク化を実施した。
【0095】
〔透明導電膜の作製〕
実施例2と同様の方法で透明導電膜を作製し、特性を測定した。その結果、表面抵抗(シート抵抗)が49Ω/sqである透明導電膜において、ヘイズは0.57%、全光透過率は99.6%であった。
【0096】
《実施例5》
有機保護剤として、ビニルピロリドンとジアリルジメチルアンモニウムナイトレイト(diallyldimethylammonium nitrate)のコポリマーで構成されるコポリマー組成物Gを用意した。このコポリマーの重合組成は、ビニルピロリドン99質量%、ジアリルジメチルアンモニウムナイトレイト1質量%である。
実施例1と同様の方法で調べた結果、このコポリマー組成物Gの硫黄含有量Sppmは626ppm、残存ビニルピロリドンモノマー含有率VP
Rは1.2%、重量平均分子量Mwは80,028であった。Sppm/Mwは0.0078となる。
【0097】
〔銀ナノワイヤの合成〕
実施例3と同様の方法で銀ナノワイヤを合成した。
【0098】
〔洗浄〕
実施例2と同様の方法にて「洗浄後の分散液」を得た。
【0099】
〔クロスフローろ過〕
実施例2と同様の方法にて銀ナノワイヤ分散液を多孔質セラミックフィルタの管を用いたクロスフロー精製、濃縮精製を行い、「濃縮精製後の分散液」を得た。
【0100】
濃縮精製後の分散液から少量のサンプルを分取し、分散媒の水を観察台上で揮発させたのち高分解能FE−SEM(高分解能電界放出形走査電子顕微鏡)により観察した結果、銀ナノワイヤの平均長さは20.8μmであった。平均直径は27.9nm、平均アスペクト比は、20800/27.9≒746であった。上記(4)式による銀ナノワイヤの収率は61.8%であった。
【0101】
〔インク化〕
実施例2と同様の方法でインク化を実施した。
【0102】
〔透明導電膜の作製〕
実施例2と同様の方法で透明導電膜を作製し、特性を測定した。その結果、表面抵抗(シート抵抗)が53Ω/sqである透明導電膜において、ヘイズは0.55%、全光透過率は99.2%であった。